説明

車両のサイドシル構造及びその製造方法

【課題】スカーフプレートに掛かる下向き荷重を支持すると共に、フロアマットの側端部を車体との間に挟み込んだ状態でスカーフプレートをクリップで確実にサイドシルに取り付けることが可能で、且つ、組付け作業性が良好なサイドシル構造を提供する。
【解決手段】サイドシル10と、サイドシル10等を覆うスカーフプレート20を備えた車両のサイドシル構造Sであって、サイドシル10に固定されると共にフロアマット40の側端部の穴部41と係合可能な起立部34を有する基部材30を備え、スカーフプレート20には、下向き荷重を支持するクリップ取付支柱部24が起立部34からハーネスを挟んで車両外側に立設され、クリップ取付支柱部24の先端にクリップ25が設けられ、サイドシル10には固定穴15が形成され、クリップ25が固定穴15に挿入されて、スカーフプレート20がサイドシル10に係止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のサイドシル構造及びその製造方法に係り、特にサイドシルに配設されたワイヤハーネス及びフロアマットの側端部がスカーフプレートによって覆われたサイドシル構造及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サイドシルに取り付けるためのクリップ取付支柱部及び荷重受け用の支柱が近接して形成されたスカーフプレートを用いてサイドシル上面を覆うサイドシル構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。図5に示すように、特許文献1に記載のスカーフプレート101には、その裏面から下方へ突出するようにクリップ取付支柱部102と支柱103が車幅方向に並設されている。支柱103は、クリップ取付支柱部102よりも車室側に形成されており、支柱103及びクリップ取付支柱部102は、スカーフプレート101と一体に形成されている。この支柱103とクリップ取付支柱部102との間の空間には、ワイヤハーネス104を配設可能である。
【0003】
スカーフプレート101は、クリップ取付支柱部102の先端部に取り付けられたクリップ105をサイドシル110に穿設された取付穴111に嵌め込むことにより、サイドシル110に取り付けられるように構成されている。
スカーフプレート101をサイドシル110に取り付けた状態では、支柱103は、その先端がフロアパネル120と当接し、クリップ取付支柱部102と共にスカーフプレート101に掛かる下向きの荷重を支持することができる。さらに、支柱103は、フロアパネル120を覆うフロアマット120の側端付近に穿設された穴122に差し込まれることにより、フロアマット121を保持することができるようになっている。
【0004】
特許文献1に記載のスカーフプレート101は、上述のような構成であるので、フロアマット121の穴122に支柱103を差し込み、クリップ105をサイドシル110の取付穴111に位置合わせした状態で、スカーフプレート101をサイドシル110に押し付ければスカーフプレート101をサイドシル110に取り付けることができる。
【0005】
また、従来、車両のサイドシル構造では、騒音や振動を抑制するために、ドア側に配設したシール部材を車体側のサイドシルに当接させていた。しかし、この構成では、ドアの開閉動作を繰り返すことにより、シール部材とサイドシルとの当たりが適切でなくなり、制振性能が低下してしまう。そこで、近年、サイドシルアウタとサイドシルインナとの接合部であるフランジにシール部材を配設し、ドアをこのシール部材に当接させる構成が採用されるようになってきた。このようにシール部材が大きな構造部材である車体に設けられると、制振性能等を保持することができる。
【0006】
【特許文献1】特開2006−298030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のサイドシル構造では、スカーフプレートをサイドシルに取り付ける際、作業者は、支柱がしっかりとフロアマットの穴に入っているか否かを最終確認することができなかった。このため、作業者は、支柱がフロアマットの穴から抜け出た状態でスカーフプレートを押し付けてしまうおそれがあった。
【0008】
このように支柱がフロアマットの穴から抜け出た状態だと、支柱とフロアパネルの間にフロアマットが挟み込まれてしまうおそれがあった。フロアマットは、クッション性等を付与するため所定の剛性及び厚さを有しているので、上述のようにフロアマットが挟み込まれると、スカーフプレートが取り付け不良を起こすという問題があった。
【0009】
また、シール部材がフランジに配設されたサイドシル構造では、スカーフプレートの車幅方向外側の端部を、シール部材を越えて、つまり、フランジを越えて延設させることはできないため、クリップをフランジよりも車室側でサイドシルに係合させなければならず、クリップ取付支柱部、ハーネス及び支柱を配設できる幅が狭くなってしまう。配設できる幅が狭い場合、上述のように組付け時に支柱がフロアマットの穴から抜け出た状態だと、ハーネスとスカーフプレートの裏面との間等にフロアマットを挟み込んでしまうおそれがあった。このようにフロアマットが挟み込まれると、クリップが取付穴に届かず、クリップが取付穴に係合しないという組付け不良が生じてしまう。しかも、このような組付け不良は、スカーフプレートの組付け後に検出し難いという問題があった。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、スカーフプレートに掛かる下向きの荷重を支持することができると共に、フロアマットの側端部を車体との間に挟み込んだ状態でスカーフプレートをクリップで確実にサイドシルに取り付けることが可能で、且つ、組付け作業性が良好なサイドシル構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は、サイドシルと、このサイドシルの少なくとも一部,ハーネス,及び,フロアマットの側端部を覆うスカーフプレートと、を備えた車両のサイドシル構造であって、サイドシルに固定され、フロアマットの側端部に形成された穴部と係合可能な起立部を有する、スカーフプレートとは別部材である基部材を備え、スカーフプレートには、このスカーフプレートの上方から作用する荷重をサイドシルとの間で支持する支柱部が起立部からハーネスを挟んで車両外側に立設され、スカーフプレートには、支柱部の先端にクリップが設けられ、サイドシルには、ハーネスを挟んで起立部よりも車両外側に固定穴が形成され、スカーフプレートのクリップがサイドシルに形成された固定穴に挿入されて、スカーフプレートがサイドシルに係止されるように構成されていることを特徴としている。
【0012】
このように構成された本発明によれば、フロアマットが、スカーフプレートとは別部材の基部材によって係止されるため、フロアマットが基部材の起立部に係止されたことを視認しつつ、スカーフプレートをクリップでサイドシルに固定することができる。これにより、スカーフプレート内でフロアマットを適切な形態に保持することができ、フロアマットが支柱部やハーネス等と干渉することによるクリップの組付け不良を防止することができる。また、起立部と支柱部とが、ハーネスを挟んで離間する構成であるため、こうした干渉をより防止することができる。
【0013】
また、本発明において好ましくは、スカーフプレートには、起立部の上部に当接し荷重を支持する荷重受け部が形成されている。
このように構成された本発明によれば、スカーフプレートが乗員等に踏まれた場合にスカーフプレートに掛かる下向きの荷重を、支柱部と、荷重受け部及び起立部によって支持することができるので、スカーフプレートからの荷重によってスカーフプレートが変形してしまうことを抑制することできる。また、ハーネスは支柱部と起立部とに挟まれた位置に配設されているので、ハーネスに作用する荷重が低減され、ハーネスの損傷及び劣化を軽減することができる。しかも、荷重受け部は、起立部の上部と当接するため、起立部によって係止されたフロアマットの固定を確実にすることができる。
【0014】
本発明において好ましくは、更に、サイドシルと車両ドアとの遮蔽を行うシール部材を備え、このシール部材は、その固定部がサイドシルのフランジに取り付けられて車体側に固定されると共に、スカーフプレートの車両外側の端部により支持されている。
このように構成された本発明によれば、シール部材がドア側ではなく、車体側に固定されることにより、高い遮音性能及び制振性能等を有するシール構造を構成することができる。そして、このシール部材の固定部がスカーフプレートの車両外側の端部で支持されることにより、シール部材の固定を確実にして、さらに遮音性能等を高めることができる。
【0015】
本発明において好ましくは、フロアマットは、起立部より車両外側の端部がハーネスの車室側の側面に接触するように形成されている。
このように構成された本発明によれば、ハーネスとスカーフプレートとの間にフロアマットを挟み込むことを防止して、クリップを固定穴に確実に取り付けることができる。
【0016】
また、上記の目的を達成するために、本発明は、サイドシルと、このサイドシルの少なくとも一部,ハーネス,及び,フロアマットの側端部を覆うスカーフプレートと、を備えた車両のサイドシル構造の製造方法であって、フロアマットの側端部に形成された穴部と係合可能な起立部を有する、スカーフプレートとは別部材である基部材と、ハーネスとを、このハーネスの方が起立部よりも車両外側に位置するようにサイドシルに固定する工程と、フロアマットの穴部を起立部に係止する工程と、スカーフプレートに立設された荷重支持用の支柱部を、サイドシルのうちハーネスを挟んで起立部よりも車両外側に離間した位置に形成された固定穴に、支柱部の先端に設けられたクリップを挿入して係止し、スカーフプレートをサイドシルに固定する工程と、を備えたことを特徴としている。
【0017】
このように構成された本発明によれば、サイドシルに固定した基部材の起立部を、フロアマットの側端部に形成された穴部に挿入することによって、フロアマットを位置決め状態で配置することができる。そして、スカーフプレートをサイドシルに組付ける際に、フロアマットが基部材に係合していることを視認しながら、スカーフプレートをサイドシルに押し付けて取り付けることができる。したがって、本方法によれば、フロアマットがスカーフプレートの組付けに干渉することを抑制して、組付け不良の発生を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の車両のサイドシル構造及びその製造方法によれば、スカーフプレートに掛かる下向きの荷重を支持することができると共に、フロアマットの側端部を車体との間に挟み込んだ状態でスカーフプレートをクリップで確実にサイドシルに取り付けることが可能であり、且つ、組付け作業性を良好とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。図1は、本発明の実施形態のサイドシル構造Sを車室側から見た斜視図である。
図1に示すように、本実施形態のサイドシル構造Sは、車両1のドア開口部2の下縁部に設けられている。ドア開口部2の下縁部は、車両前後方向Lに沿ってスカーフプレート20で覆われている。また、車両1のフロアパネル3(図2参照)は、フロアマット40によって覆われており、フロアマット40の側端部はスカーフプレート20によって覆われている。
【0020】
図2は、図1のA−A線断面図である。車室床を形成するフロアパネル3の車幅方向Wの両端部には、サイドシル10が接合されている。サイドシル10は、サイドシルを構成する車体パネルであるサイドシルアウタ11とサイドシルインナ12とを対向させ、上下の各位置に形成されたフランジを相互に接合することにより、断面ほぼ矩形の閉断面構造に形成されている。図2には、ドア開口部2側に位置する接合端であるフランジ13が示されている。
【0021】
フランジ13は車両上方を向いており、サイドシルアウタ11及びサイドシルインナ12は、それぞれフランジ13から連続して車両外側及び車両内側に折れ曲がり、上面部11a,12aを形成している。サイドシルインナ12は、上面部12aの車室側の端部でさらに下方へ折れ曲がり、側壁部12bを形成している。フロアパネル3は、車幅方向Wの端部が、側壁部12bの車室側の側面に接合されている。
【0022】
フランジ13には、長手方向Lに沿って弾性部材で形成されたシール部材14が取り付けられている。シール部材14は、車外と車室内とを遮蔽する。シール部材14は、フランジ13に上側から差し込んで取り付け可能な固定部14aと、固定部14aから車両外側へ延びる首部14bと、首部14bの先端に設けられたシール部本体14cとを有している。首部14bは、固定部14a及びシール部本体14cよりも断面形状で細く形成されている。
【0023】
スカーフプレート20は、車両前後方向Lに沿って延びる長尺な部材であり、合成樹脂で形成されている。スカーフプレート20は、サイドシル10の上部を覆うほぼ矩形状のカバー部21と、カバー部21の車両外側の端部から下方へ延びる外壁部22と、カバー部21の車室側の端部から下方へ延びる内壁部23とを備えている。カバー部21,外壁部22,内壁部23は、それぞれ薄板形状であり、一体に形成されている。カバー部21の裏面(下面)には、さらに支柱部としてのクリップ取付支柱部24及び荷重受け部26が一体に形成されている。
【0024】
カバー部21は、フランジ13をわずかに車両外側に越えた位置から、上面部12aの車室側の端部付近まで車幅方向Wに延びており、サイドシルインナ12の上面部12aのほぼ全面を主に覆っている。なお、カバー部21がサイドシルインナ12を覆うだけでなく、サイドシルアウタ11をさらに覆う構成であってもよい。
【0025】
外壁部22は、その先端部がフランジ13に取り付けられたシール部材14に係合している。詳しくは、スカーフプレート20は、カバー部21が固定部14aを覆ってさらにフランジ13よりも車両外側に延び、カバー部21と連続する外壁部22が、シール部材14の固定部14aとシール部本体14cの間に形成された溝に上側から嵌り込んで、外壁部22の先端を首部14bに当接させている。
【0026】
内壁部23は、カバー部21の車室側の端部から、上面部12aとフロアパネル3の間の中間位置まで、サイドシル10の側壁部12bとほぼ平行に延びている。内壁部23は、側壁部12bとの間にフロアマット40を挟持した状態で、フロアパネル3側から側壁部12bに沿ってスカーフプレート20内に延びるフロアマット40を覆っている。
【0027】
クリップ取付支柱部24は、スカーフプレート20をサイドシル10に取り付けると共に、乗員等がスカーフプレート20を踏んだ際の荷重を支持するための突出した形状の支柱である。クリップ取付支柱部24は、外壁部22の近傍に車両前後方向Lに離間して複数立設されている。隣接するクリップ取付支柱部24は約20cm離間している。
クリップ取付支柱部24は、カバー部21から下方に所定長さに延びる3つの縦壁と、3つの縦壁の先端を連結する矩形の底壁を有している。3つの縦壁は互いに縁部が連結されている。これにより、クリップ取付支柱部24は、車両前後方向Lの一方側が開口したボックス形状に形成されている。
【0028】
クリップ取付支柱部24の先端部には、クリップ25が取り付けられる。サイドシルインナ12には、クリップ25に対応して固定穴15が穿設されている(図4参照)。スカーフプレート20は、クリップ25を固定穴15に差し込むことによって、サイドシル10に取り付けることができる。
【0029】
クリップ25は、弾性部材で形成されており、クリップ取付支柱部24の底壁に取り付け可能な基部と、固定穴15よりも幅広な挿入部とを有する。クリップ25は、挿入部がクリップ取付支柱部24の長手方向に沿って延びた状態で、クリップ取付支柱部24の先端に取り付けられる。クリップ25は、挿入部が弾性変形することにより固定穴15に挿入可能であり、挿入部が固定穴15に挿入されると、スカーフプレート20はサイドシル10に固定される。
【0030】
スカーフプレート20がサイドシル10に固定された状態では、クリップ取付支柱部24の先端部(底壁)がサイドシルインナ12の上面部12aと直接当接している。クリップ取付支柱部24は、上述のようにボックス形状に形成されているので、スカーフプレート20のカバー部21を介して伝達される下向きの外力を、カバー部21とサイドシルインナ12との間で支持することが可能である。
【0031】
荷重受け部26は、カバー部21の内壁部23側に形成された突出部であり、ハーネス50を挟んでクリップ取付支柱部24よりも車室側に位置している。この荷重受け部26は、後述する基部材30と当接して、カバー部21を介して伝達される下向きの外力をカバー部21とサイドシル10との間で、基部材30と共に支持する。これにより、スカーフプレート20の変形が抑制される。
【0032】
上述のように、サイドシルインナ12の上面部12aの車室側端部付近には、合成樹脂製の基部材30が取り付けられている。本実施形態の基部材30の斜視図を図3に示す。図3に示すように、基部材30は、サイドシルインナ12に取り付けられる平板状の取付部31と、取付部31の車室側の端部から上方にほぼ垂直に延びる起立部34とを有する。
【0033】
図2,図3に示すように、取付部31には、車両前後方向Lに離間した2箇所で車両下方へ延びるように取付片32が形成されている。サイドシルインナ12の上面部12aには、車両前後方向Lに隣合う固定穴15のほぼ中間位置で、車室側端部付近に取付穴16が穿設されている(図2,図4参照)。基部材30は、取付片32を取付穴16に差し込むことによってサイドシル10に固定されている。本実施形態では、取付片32の側面に形成された係止爪が車両前後方向Lに弾性的に広がって取付穴16に弾性係合するようになっている。
【0034】
また、取付部31の上面には、車両前後方向Lの中央部にリブ33が形成されている。リブ33は、取付部31の上面から起立部34の中間付近の高さまで延び、且つ、起立部34と連続する所定厚さの壁である。このリブ33は、ハーネス50が起立部34側に移動することを規制すると共に、起立部34を支持している。
【0035】
起立部34は、フロアマット40の側端部付近に形成された穴部41に挿入され、フロアマット40の側端部を保持するものである。起立部34は、板状の起立部本体34aと、車両上下方向に延びるスリットを介して起立部本体34aの車両前後方向Lの両側に各々形成された係止部34bとを備えている。係止部34bは、取付部31から上方へ延びており、車両前後方向Lに弾性的に撓むことが可能である。係止部34bの先端部には、起立部本体34aから離れる方向に突出するように爪部34cが形成されている。
【0036】
図4は、サイドシル10に基部材30を取り付け、さらに基部材30にフロアマット40を係合させた状態を示している。フロアマット40の側端部には、上下面を貫通する所定形状の穴部41が基部材30の配設位置に合わせて形成されている。図4に示すように、フロアマット40は、サイドシル10に取り付けられた基部材30の起立部34を穴部41に挿入することによって、側部を位置決めした状態で車両内に配設することができる。このとき、フロアマット40は、リブ33と爪部34cとで上下方向に挟まれた状態で固定される。そして、基部材30は、車両前後方向Lに延びる爪部34cによってフロアマット40を抜け止めするので、フロアマット40が撓んだとしても側端部を確実に保持することができる。
【0037】
また、図2,図4から分かるように、起立部34の周辺で且つ車両外側にクリップ取付支柱部24が配設されている。そして、図2に示すように、起立部34とクリップ取付支柱部24との間には、ワイヤがバンドルされたハーネス50が車両前後方向Lに沿って配索されている。サイドシルインナ12の上面部12aには取付穴17が穿設されており、ハーネス50は、取付穴17に固定されたクランプ部材51によって支持されている。なお、クランプ部材51は、ハーネス50の径に応じて適宜に選択することができる。本実施形態では、取付穴17は、クリップ取付支柱部24の固定穴15の車室側に隣接して形成されている。
【0038】
なお、クリップ取付支柱部24,ハーネス50を支持するクランプ部材51,基部材30は、この順に車両外側から車室内側に向けて配置されればよい。クリップ取付支柱部24,クランプ部材51,基部材30は、別部材であるので、車両前後方向Lの任意の位置に配置することが可能であり、図4に示す車両前後方向Lの位置関係に限らず、他の位置関係で配置してもよい。
【0039】
次に、本実施形態のサイドシル構造Sの組付け方法について説明する。
まず、所定位置に固定穴15,取付穴16,取付穴17が形成されたサイドシル10に、基部材30及びハーネス50を取り付ける。
次に、穴部41が側端部に沿って形成されたフロアマット40をフロアパネル3上に配設する。このとき、基部材30の起立部34を穴部41に差し込んでフロアマット40を係止し、フロアマット40を位置決めする。これにより、フロアマット40の側端部が基部材30によって抜け止め状態で保持されるので、その後のフロアマット40の取扱いが容易になり作業性が向上する。
【0040】
フロアマット40は、基部材30に取り付けられた状態で、側端部がハーネス50の側面と当接するように側端部の長さが設定されている(図2参照)。したがって、フロアマット40は、穴部41から側端部までの距離が確保され、側部の強度を保持することができる。そして、ハーネス50が前の工程で先に取り付けられているので、フロアマット40の側端部は、ハーネス50の下側に潜り込むことなくハーネス50の側面と当接する。
【0041】
次に、フランジ13にシール部材14が取り付けられた状態で、スカーフプレート20をサイドシル10上に位置決めして載置し、スカーフプレート20をサイドシル10に向けて押し付ける。これにより、クリップ取付支柱部24の先端に取り付けられたクリップ25が、固定穴15に差し込まれ、スカーフプレート20はサイドシル10に取り付けられる。クリップ25が固定穴15に差し込まれた状態では、スカーフプレート20の外壁部22がシール部材14と係合する。また、荷重受け部26が基部材30の起立部34の上部と当接する。以上のようにして、サイドシル構造Sが形成される。
【0042】
次に、上述した実施形態による車両のサイドシル構造の作用を説明する。
【0043】
スカーフプレート20の組み付けの際に、スカーフプレート20をサイドシル10に向けて押し付けたとき、フロアマット40が基部材30から抜け出ていた場合には、フロアマット40がスカーフプレート20内部でハーネス50やクリップ取付支柱部24等と取付作業を妨げるように干渉してしまう。例えば、フロアマット40は、クリップ取付支柱部24とサイドシルインナ12との間,カバー部21と起立部34の間,カバー部21とハーネス50の間に挟み込まれてしまう。
【0044】
しかしながら、本実施形態のサイドシル構造Sでは、フロアマット40をスカーフプレート20とは別体の基部材30によって予め適正な位置に保持しておくことができ、且つ、フロアマット40が基部材30に係止されていることを目視で確認しながら、スカーフプレート20をサイドシル10に取り付けることができる。したがって、上述のようなフロアマット40及びスカーフプレート20の組付け不良を防止することができる。
【0045】
また、所定の厚み及び剛性を有するフロアマット40が、カバー部21と起立部34の間や、カバー部21とハーネス50の間に挟み込まれると、クリップ25が固定穴15へ届かずに正しく固定穴15に挿入されないという組付け不良が生じてしまう。しかもこのような不具合は、組付け後に検出し難い。
【0046】
しかしながら、本実施形態のサイドシル構造Sでは、フロアマット40の側端部が基部材30に適正に保持された状態で、スカーフプレート20を組付けることができるので、フロアマット40の側端部の挟み込みを防止して、クリップ25を確実に固定穴15に係合させることができる。
【0047】
また、本実施形態のサイドシル構造Sでは、フロアマット40とハーネス50とが、上下方向に重ならないように構成されているので、サイドシルインナ12の上面部12aとスカーフプレート20のカバー部21との距離を短く保持して、カバー部21の高さを低く抑えることができる。
【0048】
また、本実施形態のサイドシル構造Sでは、図2に示すように、スカーフプレート20が取り付けられた状態では、起立部34の上部先端面が荷重受け部26と当接可能となる。これにより、フロアマット40は、起立部34に係止された状態で確実に保持される。さらに、スカーフプレート20が取り付けられると、荷重受け部26及び起立部34は、スカーフプレート20側からの下向きの荷重を支持することができる。また、大きな荷重が起立部34に掛かっても、リブ33が起立部34を側部から支持しているので、起立部34は起立した状態で大きな荷重を支持可能である。
【0049】
また、本実施形態のサイドシル構造Sでは、ハーネス50を挟んで車両外側及び車両内側で、それぞれクリップ取付支柱部24,起立部34及び荷重受け部26が、スカーフプレート20に掛かる下向きの荷重を支持することができる。詳しくは、クリップ取付支柱部24,起立部34及び荷重受け部26は、それぞれ独立して、スカーフプレート20のカバー部21に掛かった下向きの外力を、サイドシルインナ12の上面部12aに対して直線的に伝達するように構成されている。したがって、サイドシル構造Sは、良好な耐荷重性を確保することができると共に、クリップ取付支柱部24と基部材30の間に配索されたハーネス50,スカーフプレート20,基部材30を破損・劣化させることなく、確実にカバー部21に掛かる下向きの外力を支持することが可能である。
【0050】
また、本実施形態のサイドシル構造Sでは、ドア4を閉めた状態で、ドア4の側面がシール部本体14cを車室側に押圧し、シール部本体14cが弾性変形した状態でドア4と当接する。このようにサイドシル構造Sでは、車体側に設けたシール部材14にドア4を当接させる構造によって、高い遮音性能や制振性能を安定的に保持することができる。
【0051】
さらに、スカーフプレート20の外壁部22の先端部は、フランジ13に取り付けられたシール部材14に係合し、カバー部21及び外壁部22が固定部14a及び首部14bを支持している。これにより、スカーフプレート20は、シール部材14をフランジ13に確実に固定することができると共に、より遮音性能及び制振性能を高めることができる。
【0052】
上記実施形態では、クリップ25はクリップ取付支柱部24と別体の構成であるが、これに限らず、これらが一体の構成であってもよい。また、クリップ25は、固定穴15に上方から挿入して係合することができる構成であれば上記構成に限らない。
また、上記実施形態では、シール部材を車体側に設けているが、これに限らず、シール部材をドア側に設けた構成であってもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、クリップ取付支柱部24の先端部がサイドシルインナ12と当接し、クリップ取付支柱部24によって下向き荷重を支持する構成であるが、これに限らず、クリップ取付支柱部24とサイドシルインナ12との間にクリップ25を介在させ、クリップ取付支柱部24及びクリップ25によって荷重を支持する構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施形態の車両のサイドシル構造の斜視図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】基部材の斜視図である。
【図4】基部材にフロアマットを係止した状態の斜視図である。
【図5】従来技術の車両のサイドシル構造の断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 車両
3 フロアパネル
10 サイドシル
11 サイドシルアウタ
12 サイドシルインナ
13 フランジ
14 シール部材
14a 固定部
15 固定穴
16 取付穴
17 取付穴
20 スカーフプレート
21 カバー部
22 外壁部
23 内壁部
24 クリップ取付支柱部
25 クリップ
26 荷重受け部
30 基部材
34 起立部
40 フロアマット
41 穴部
50 ハーネス
51 クランプ部材
S サイドシル構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドシルと、このサイドシルの少なくとも一部,ハーネス,及び,フロアマットの側端部を覆うスカーフプレートと、を備えた車両のサイドシル構造であって、
前記サイドシルに固定され、前記フロアマットの側端部に形成された穴部と係合可能な起立部を有する、前記スカーフプレートとは別部材である基部材を備え、
前記スカーフプレートには、このスカーフプレートの上方から作用する荷重をサイドシルとの間で支持する支柱部が前記起立部から前記ハーネスを挟んで車両外側に立設され、
前記スカーフプレートには、前記支柱部の先端にクリップが設けられ、前記サイドシルには、前記ハーネスを挟んで前記起立部よりも車両外側に固定穴が形成され、前記スカーフプレートのクリップが前記サイドシルに形成された固定穴に挿入されて、前記スカーフプレートが前記サイドシルに係止されるように構成されていることを特徴とする車両のサイドシル構造。
【請求項2】
前記スカーフプレートには、前記起立部の上部に当接し前記荷重を支持する荷重受け部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両のサイドシル構造。
【請求項3】
更に、前記サイドシルと車両ドアとの遮蔽を行うシール部材を備え、
このシール部材は、その固定部が前記サイドシルのフランジに取り付けられて車体側に固定されると共に、前記スカーフプレートの車両外側の端部により支持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両のサイドシル構造。
【請求項4】
前記フロアマットは、前記起立部より車両外側の端部が前記ハーネスの車室側の側面に接触するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両のサイドシル構造。
【請求項5】
サイドシルと、このサイドシルの少なくとも一部,ハーネス,及び,フロアマットの側端部を覆うスカーフプレートと、を備えた車両のサイドシル構造の製造方法であって、
前記フロアマットの側端部に形成された穴部と係合可能な起立部を有する、前記スカーフプレートとは別部材である基部材と、前記ハーネスとを、このハーネスの方が前記起立部よりも車両外側に位置するように前記サイドシルに固定する工程と、
前記フロアマットの穴部を前記起立部に係止する工程と、
前記スカーフプレートに立設された荷重支持用の支柱部を、前記サイドシルのうち前記ハーネスを挟んで前記起立部よりも車両外側に離間した位置に形成された固定穴に、前記支柱部の先端に設けられたクリップを挿入して係止し、前記スカーフプレートを前記サイドシルに固定する工程と、を備えたことを特徴とする車両のサイドシル構造の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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