説明

車両のフロアパネル構造

【課題】この発明は、アクセルペダルの操作性に影響を及ぼすことなく、運転席の乗員の膝とセンターコンソールとの干渉を回避し、乗員の安楽姿勢を確実に確保できる車両のフロアパネル構造を提供することを目的とする。
【解決手段】ドライバーズシート5、パッセンジャーズシート6と、インストルメントパネル7と、アクセルペダル8、ブレーキペダル9と、センターコンソール14とを備えた車両のフロアパネル構造であって、フロアパネル2には、少なくともアクセルペダル8より後方からドライバーズシート5、パッセンジャーズシート6の前方に車幅方向に亘って配設されたインスツルメの下部近傍まで段上げ部40が配設されると共に、該段上げ部40は、センターコンソール14の側部から、後方面視でアクセルペダル8とブレーキペダル9との間まで配設された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両のフロアパネル上に配設された運転席、助手席と、インストルメントパネルと、アクセルペダル、ブレーキペダルと、センターコンソールとを備えた車両のフロアパネル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転席と助手席との間に配設されたセンターコンソールの上面部には、シフトレバーやパーキングレバーに加え、乗員の使い勝手を考慮して、アームレストやカップホルダー等がレイアウトされている。また、近年では、目的地までの走行路を案内するナビゲーション装置の操作手段としてナビゲーションコマンダがセンターコンソールの上面部にレイアウトされる場合もある。このため、センターコンソールについては、その上面幅が広いものが望まれていた。
【0003】
しかしながら、センターコンソールは、シフトレバー等の操作性とデザイン上の理由からその上面部が高い位置に設定される場合があり、上述のようにセンターコンソールの上面幅を広げると、以下に述べるような問題が生じていた。
【0004】
例えば、センターコンソールの上面部が高い位置に設定されたものにおいて、その幅を広くした場合、運転席の乗員がオートクルーズ走行時等にアクセルペダルから足を引いて安楽姿勢(具体的には、アクセルペダルから足を引いて両足を車幅方向に開いた所謂蟹股姿勢。)を取ろうとした時、乗員の膝がセンターコンソールに干渉し易くなるという問題があった。このため、乗員は、十分に足を開くことができず、結局は、安楽姿勢を取ることができなかった。
【0005】
ところで、従来、低身長の乗員、高身長の乗員の双方が最適な着座姿勢でアクセルペダルを操作できるように、運転席の乗員の体格に応じてフロアパネルを昇降駆動できるように構成したものが知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−203968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1に開示された従来構造は、あくまでもアクセルペダルを操作する足が最適位置となるようにすることを目的としており、上述したように、乗員の足とセンターコンソールとの干渉を回避するための構成については何らの開示も示唆もない。
【0008】
この発明は、アクセルペダルの操作性に影響を及ぼすことなく、運転席の乗員の膝とセンターコンソールとの干渉を回避し、乗員の安楽姿勢を確実に確保できる車両のフロアパネル構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の車両のフロアパネル構造は、車両のフロアパネル上に配設された運転席、助手席と、該運転席及び助手席の前方に車幅方向に亘って配設されたインストルメントパネルと、該インストルメントパネルの下方に配設されたアクセルペダル、ブレーキペダルとを備えると共に、前記インストルメントパネルから前記運転席と前記助手席との間を前後方向に亘って配設されたセンターコンソールを備えた車両であって、前記フロアパネルには、少なくとも前記アクセルペダルより後方から前記運転席の下部近傍まで段上げ部が配設されると共に、該段上げ部は、前記センターコンソールの側部から、後方面視で前記アクセルペダルと前記ブレーキペダルとの間まで配設されたものである。
【0010】
この構成によれば、センターコンソールの側部に段上げ部を配設することで、乗員は、アクセルペダルから引いた足を、アクセルペダルの後方に位置する段上げ部に乗せることが可能になり、この足を相対的に高い位置に置くことができる。このため、乗員の膝は、センターコンソールの上面部より高い位置に保持されることになり、膝とセンターコンソールとの干渉を回避することができる。このため、乗員は、センターコンソールよりも高い位置で足を車幅方向に開くことが可能になり、その結果、乗員の安楽姿勢を確保することができる。
【0011】
そして、段上げ部をアクセルペダルより車両後方に配設したことで、アクセルペダル操作時の足の移動範囲外に段上げ部を配設することができる。このため、アクセルペダルの操作が必要とされる通常走行時において、段上げ部がアクセルペダルの操作性に影響を及ぼすことを防止できる。
【0012】
さらに、段上げ部をセンターコンソールの側部から後方面視でアクセルペダルとブレーキペダルとの間まで配設したことで、乗員がアクセルペダルから足を引いた時、乗員は、特別な意識をしなくとも、自身の足を自然と段上げ部に向かって移動させることになる。このため、乗員が足を引いた時、乗員は安楽姿勢を確実に取ることができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、前記段上げ部の前部に、該段上げ部の上面部に乗員の足を案内する傾斜部を備えたものである。
【0014】
この構成によれば、アクセルペダルから後方に引いた乗員の足を段上げ部の上面部に乗せる際、傾斜部によって足を上面部まで案内することができる。このため、足を容易に上面部に移動させることができる。
【0015】
一方、上面部に乗せた足をアクセルペダルに向かって移動させる際には、傾斜部によって足をアクセルペダルの近傍まで案内することもでき、これによって、足をアクセルペダルに向かって違和感無く移動させることができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、前記段上げ部が、車幅方向に配設されたクロスメンバの上面部と連結したものである。
【0017】
この構成によれば、段上げ部とクロスメンバとを連結することで、フロアパネルを補強することができる。このため、フロアパネルの剛性を向上させることができ、車体の捩れを防止できる。さらに、この場合、段上げ部に入力される荷重をクロスメンバに伝達、分散させることも可能であるため、段上げ部に入力される荷重に対する車体剛性も向上させることができる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、前記運転席が、車両前後方向にスライド可能に支持されたものであって、前記段上げ部は、車両前後方向において、少なくとも最後端位置にある前記運転席の前端部の位置から車両前方に延び、最前端位置にある前記運転席の前端部よりも前方まで延設されたものである。
【0019】
この構成によれば、運転席、助手席を乗員の体格に応じて前後に移動させた場合であっても、段上げ部に確実に足を乗せることができる。
【0020】
この発明の一実施態様においては、前記フロアパネルの前記助手席側に、助手席用段上げ部が配設され、該助手席用段上げ部は、前記センターコンソールの側部において前記助手席より前方に亘って配設されたものである。
【0021】
この構成によれば、運転席の乗員と同様、助手席の乗員の安楽姿勢も確保することができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、センターコンソールの側部に段上げ部を配設することで、乗員は、アクセルペダルから引いた足を段上げ部に乗せてこれを相対的に高い位置に置くことができる。このため、乗員の膝とセンターコンソールとの干渉を回避することができ、安楽姿勢を確保することができる。
【0023】
そして、段上げ部をアクセルペダルより車両後方に配設したことで、アクセルペダル操作時の足の移動範囲外に段上げ部を配設することができる。このため、アクセルペダルの操作が必要とされる通常走行時において、アクセルペダルの操作性に影響を及ぼすことを防止できる。
【0024】
さらに、段上げ部をセンターコンソールの側部から後方面視でアクセルペダルとブレーキペダルとの間まで配設したことで、乗員がアクセルペダルから足を引いた時、乗員は、特別な意識をしなくとも、自身の足を自然と段上げ部に向かって移動させることになる。このため、乗員が足を引いた時、乗員は安楽姿勢を確実に取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の実施形態に係るフロアパネル構造を適用した車両を示す平面図。
【図2】図1の側断面図。
【図3】図2のA−A線矢視断面図。
【図4】フロアパネル構造を示す斜視図。
【図5】ドライバーズシートが最前端位置にある状態を示す平面図。
【図6】この発明の他の実施形態に係るフロアパネル構造を適用した車両を示す平面図。
【図7】フロアパネル構造を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図1は、この発明の実施形態に係るフロアパネル構造を適用した車両を示す平面図である。なお、図中において矢印(F)は車体前方、矢印(R)は車体後方を示す。本実施形態では、図1に示すように車幅方向両側において車両前後方向に延びるようにサイドシル1、1が配設され、この左右のサイドシル1、1の間には、車室2のフロア面を形成するフロアパネル3が配設されている。
【0027】
図2は、図1の側断面図、図3は、図2のA−A線矢視断面図であり、図4は、フロアパネル構造を示す斜視図である。フロアパネル3は、図1〜図4に示すように、車室2のフロア面となる左右の一般面3aと、車幅方向中央部において一般面3aから車室2側(上側)に膨出するトンネル部3bとを有している。
【0028】
フロアパネル3では、一般面3aの前端部が図2に示すようにダッシュロアパネル4の下端部から後下がりに傾斜している一方、前端部の後方では、一般面3aが車両の後方に向かって略平坦に延びている。そして、略平坦に延びる一般面3a上には、図1、図2に示すようにドライバーズシート5、パッセンジャーズシート6が配設されている。
【0029】
また、ドライバーズシート5、パッセンジャーズシート6の前方には、インストルメントパネル7が車幅方向に亘って延びるように配設されている。そして、ドライバーズシート5側では、インストルメントパネル7の下方に、乗員X(図2参照)により操作されるアクセルペダル8とブレーキペダル9とが配設されている。なお、本実施形態では、ドライバーズシート5が車室2の左側に位置しており、これに対応してインストルメントパネル7の左側には、不図示のメータ類を覆うメータフード10(図2参照)が配設されている。さらに、インストルメントパネル7の左側後方には、ステアリングホイール11が配設されている。但し、本発明は、ドライバーズシート5が左側に配設されていることに必ずしも限定されるものではなく、右側に配設されていてもよい。
【0030】
また、インストルメントパネル7の面上には、例えば、その車幅方向中央部7aにおいて、空調用エア等を車室2内の中央部に吹き出すための吹出グリル12や、ナビゲーション装置、オーディオといった各種車載電装機器の操作表示画面13が配置されている。
【0031】
また、車室2には、フロアパネル3のトンネル部3bの上方に、インストルメントパネル7の車幅方向中央部7aから、ドライバーズシート5とパッセンジャーズシート6との間を通って車両前後方向に延びるセンターコンソール14が配設されている。
【0032】
このセンターコンソール14は、その左右両側部に縦壁部14Aを有すると共に、該縦壁部14A、14A間に上面部14Bを有している。ここで、上面部14Bには、コンソールボックス15が設けられ、その上部のコンソールリッド16が、ドライバーズシート5、パッセンジャーズシート6の乗員兼用のアームレストとして使用可能となっている。また、上面部14Bには、シフトレバー17と、パーキングブレーキレバー18と、ドライバーズシート5、パッセンジャーズシート6の乗員兼用のカップホルダー19とが配設されている。
【0033】
また、フロアパネル3上には、車幅方向に延びてサイドシル1とフロアトンネル3bとを連結するクロスメンバ20、21が配設されている。
【0034】
このうち、車両前側のクロスメンバ20は、図1、図4に示すように左右一対のサイドシル1、1間でトンネル部3bを跨ぐように配設されている。そして、クロスメンバ20は、図2、図4に示すように断面略ハット状をなすと共に、その縁部にフランジ部20aを有しており、このフランジ部20aが、サイドシル1、1、一般面3a、及びトンネル部3bに接合されている。そして、フロアパネル3とクロスメンバ20との間には、車幅方向に延びる閉断面20Aが形成されている。
【0035】
一方、車両後側のクロスメンバ21、21は、図1、図4に示すようにトンネル部3bを挟むようにして左右に配設され、サイドシル1とトンネル部3bとの間で車幅方向に延設されている。そして、クロスメンバ21は、図2、図4に示すように断面略ハット状をなすと共に、その縁部にフランジ部21aを有しており、このフランジ部21aが、サイドシル1、トンネル部3bの側面、及び一般面3aに接合されている。そして、フロアパネル3とクロスメンバ20との間には、車幅方向に延びる閉断面21Aが形成されている。
【0036】
また、車室2には、図1、図2に示すように、ドライバーズシート5、パッセンジャーズシート6を車両前後方向にスライド可能に支持するシートスライドレール30、30が配設されている。ここで、上述したクロスメンバ20、21の間には、シートスライドレール30のロアレール31が配設され、このロアレール31は、ドライバーズシート5、パッセンジャーズシート6の車幅方向両側にて車両前後方向に延びるように平行に2本配設されている。そして、ロアレール31は、その前端部がクロスメンバ20の上面部に固定される一方、後端部が、クロスメンバ21の上面部に固定されている。
【0037】
また、ドライバーズシート5、パッセンジャーズシート6は、図1、図2に示すように、それぞれシートクッション5C、6Cと、シートバック5B、6Bと、ヘッドレスト5H、6Hとを有しており、そのうちシートクッション5C、6Cの底面部には、図2に示すようにシートスライドレール30のアッパレール32が取付けられている。ここで、図1、図2では、ドライバーズシート5、パッセンジャーズシート6が最後端位置にある状態を示している。なお、図2では、便宜上ドライバーズシート5のみを図示しているが、シートスライドレール30及びその周辺の構造は、パッセンジャーズシート6側も同様である。
【0038】
シートスライドレール30では、ロアレール31にアッパレール32が嵌合し、アッパレール32は、ロアレール31によって車両前後方向にスライド可能に支持されている。このため、アッパレール32を前後にスライドさせることで、シートクッション5C、6Cを含むドライバーズシート5、パッセンジャーズシート6を車両前後方向にスライドさせることが可能になっている。
【0039】
また、センターコンソール14の両側部には、図1〜図4に示すように、上面部40a、41aが一般面3aより高い位置に設定された左右一対の段上げ部40、41が配設され、フロアパネル3との間に閉断面42、43(図2、図3参照)を形成している。
【0040】
段上げ部40、41は、略水平に延びる上面部40a、41aと、フロアパネル3の一般面3aから上面部40a、41aに向かって後上がりに傾斜した前面部40b、41bと、側面部40c、41cとを有し、図1、図2に示すように、車両前後方向において、アクセルペダル8より後方からドライバーズシート5、パッセンジャーズシート6の下部近傍まで配設されている。特に、上面部40a、41aは、最後端位置にあるドライバーズシート5、パッセンジャーズシート6(図1、図2参照)の前端部(シートクッション5C、6Cの前端部)の位置から車両前方に延び、最前端位置にあるドライバーズシート5(図5参照)、パッセンジャーズシート6の前端部よりも前方まで延設されている。
【0041】
また、ドライバーズシート5側の段上げ部40について見てみると、段上げ部40は、図1、図3に示すように、センターコンソール14の側部から後方面視でアクセルペダル8とブレーキペダル9との間まで配設されている。
【0042】
そして、段上げ部40、41は、複数のフランジ部40d〜40f、41d〜41fを有している。段上げ部40、41では、フランジ部40d、41dが一般面3aに接合される他、フランジ部40e、41eがトンネル部3b、フランジ部40f、41fがクロスメンバ20の上面部にそれぞれ接合されている。ここで、段上げ部40、41の上面部40a、41aとクロスメンバ20の上面部とは、略同じ高さに設定されており、本実施形態では、上述したようにフランジ部40f、41fをクロスメンバ20の上面部に接合することで、上面部40a、41aとクロスメンバ20の上面部とが略連続している。
【0043】
このように、本実施形態では、ドライバーズシート5側において、センターコンソール14の側部に段上げ部40を配設したことで、例えば、車両のオートクルーズ走行によってアクセルペダル8の操作が不要となった時、ドライバーズシート5の乗員Xは、図2、図3にて太い二点鎖線で示すように、アクセルペダル8から引いた足Xaを、アクセルペダル8の後方に位置する段上げ部40の上面部40aに乗せることが可能になっている。
【0044】
この時、アクセルペダル8から引いた乗員Xの足Xaは、図3にて細い二点鎖線で示すようにフロアパネル3の一般面3a上に足Xa′を乗せた時に比べて相対的に高い位置にある。このため、乗員Xの膝Xbは、センターコンソール14の上面部14Bより高い位置に保持されることになり、膝Xbとセンターコンソール14との干渉を回避することができる。このため、乗員Xは、センターコンソール14よりも高い位置で足Xaを車幅方向に開くことが可能になり、その結果、乗員Xの安楽姿勢を確保することができる。
【0045】
そして、段上げ部40をアクセルペダル8より車両後方に配設したことで、アクセルペダル8を操作する時の足Xaの移動範囲外に段上げ部40を配設することができる。このため、アクセルペダル8の操作が必要とされる通常走行時において、段上げ部40がアクセルペダル8の操作性に影響を及ぼすことを防止できる。
【0046】
さらに、段上げ部40をセンターコンソール14の側部から後方面視でアクセルペダル8とブレーキペダル9との間まで配設したことで、乗員Xがアクセルペダル8から足Xaを引いた時、乗員Xは、特別な意識をしなくとも、自身の足Xaを自然と段上げ部40に向かって移動させることになる。このため、乗員Xが足Xaを引いた時、乗員Xは安楽姿勢を確実に取ることができる。
【0047】
ところで、乗員Xの膝Xbとセンターコンソール14との干渉を回避するために、フロアパネル3の一般面3aを全体的に段上げ部40の上面部40aと同じ高さに段上げすることも考えられる。しかしながら、この場合、一般面3aが高い位置に設定されることで、車両のルーフ部までの上下幅が狭くなり、ドライバーズシート5、パッセンジャーズシート6の乗員のスムーズな乗降が阻害される虞がある。そこで、本実施形態では、センターコンソール14の側部に段上げ部40を配設することとし、乗員Xの膝Xbとセンターコンソール14との干渉を回避するために必要とされる最低限の領域のみを段上げしている。このため、本実施形態では、乗員の乗降のし易さを確保しながらも、膝Xbとセンターコンソール14との干渉を回避することを可能にしている。
【0048】
また、段上げ部40の前面部40bを、フロアパネル3の一般面3aから上面部40aに向かって後上がりに傾斜した傾斜部とすることで、アクセルペダル8から後方に引いた乗員Xの足Xaを上面部40aに乗せる際、前面部40cの傾斜によって足Xaを上面部40aまで案内することができる。このため、足Xaを容易に上面部40aに移動させることができる。
【0049】
一方、上面部40aに乗せた足Xaをアクセルペダル8に向かって移動させる際には、前面部40cの傾斜によって足Xaをアクセルペダル8の近傍まで案内することもでき、これによって、足Xaをアクセルペダル8に向かって違和感無く移動させることができる。
【0050】
ところで、従来より、本実施形態のようにフロアパネル3の車幅方向中央部にトンネル部3bを形成した場合、車体剛性の低下によって車両走行時に車体が捩れ易くなるという問題があった。
【0051】
そこで、本実施形態では、車幅方向に延設されたクロスメンバ20の上面部に、段上げ部40、41のフランジ部40f、41fを接合して、両者を連結している。この場合、段上げ部40、41とクロスメンバ20とを連結することで、フロアパネル3を補強することができる。このため、フロアパネル3の剛性を向上させることができ、上述した車体の捩れを防止できる。さらに、この場合、段上げ部40、41に入力される荷重をクロスメンバ20に伝達、分散させることも可能であるため、段上げ部40、41に入力される荷重に対する車体剛性も向上させることができる。
【0052】
また、段上げ部40、41の上面部40a、41aが、最後端位置にあるドライバーズシート5、パッセンジャーズシート6(図1、図2参照)の前端部(シートクッション5C、6Cの前端部)の位置から車両前方に延び、最前端位置にあるドライバーズシート5(図5参照)、パッセンジャーズシート6の前端部よりも前方に延設されることで、ドライバーズシート5、パッセンジャーズシート6を乗員Xの体格に応じて前後に移動させた場合であっても、上面部40a、41a上に確実に足Xaを乗せることができる。
【0053】
ここで、乗員Xの体格を考えた場合、大柄な体格である程、アクセルペダル8から足Xaを引いた時、膝Xbがセンターコンソール14と干渉し易い傾向にある。そこで、大柄な体格に応じてドライバーズシート5、パッセンジャーズシート6が最後端位置に設定された時には、本実施形態のように、段上げ部40、41の上面部40a、41aをよりシートクッション5C、6Cの前方に延出させるようにして、足Xaをより確実に上面部40a、41a上に乗せられるようにするのが好ましい。
【0054】
また、ドライバーズシート5側のみならず、パッセンジャーズシート6側にも段上げ部41を配設したことで、ドライバーズシート5の乗員Xと同様、パッセンジャーズシート6の乗員の安楽姿勢も確保することができる。
【0055】
なお、上述した実施形態では、フロアパネル3とは別部材の段上げ部40、41を別途配設することとしたが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、図6、図7に示すように、フロアパネル53の一部を主面(一般面)53aから上方に膨出させることによって、段上げ部53cを一体的に形成してもよい。
【0056】
図6は、この発明の他の実施形態に係るフロアパネル構造を適用した車両を示す平面図であり、図7は、フロアパネル構造を示す斜視図である。なお、図6、図7において、図1〜図5に示す最初の実施形態と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。フロアパネル53は、車室2のフロア面において主面となる左右の一般面53aと、車幅方向中央部において一般面53aから車室2側(上側)に膨出するトンネル部53bとを有すると共に、センターコンソール14の両側部には、一般面53aより高い位置に上面部53cを有する左右一対の段上げ部53A、53Bが一体成形されている。
【0057】
段上げ部53A、53Bには、略水平に延びる上面部53cと、一般面53aから上面部53cに向かって後上がりに傾斜した前面部53dと、側面部53eと、一般面53aから上面部53cに向かって前上がりに傾斜した後面部53fとが形成されている。そして、本実施形態では、段上げ部53A、53Bが、車両前後方向において、アクセルペダル8より後方から前後のクロスメンバ70、21の間まで配設されている。
【0058】
また、ドライバーズシート5側の段上げ部53Aについて見てみると、該段上げ部53Aは、センターコンソール14の側部から後方面視でアクセルペダル8とブレーキペダル9との間まで延びている。
【0059】
ところで、本実施形態では、車両後側のクロスメンバ21が、上述した最初の実施形態と同様の構成をなす一方で、車両前側のクロスメンバ70は、左右一対のサイドシル1、1間でトンネル部53b及び段上げ部53A、53Bを跨ぐように配設され、フロアパネル53とクロスメンバ70との間には一部閉断面70Aが形成されている。
【0060】
そして、クロスメンバ70は、その縁部に複数のフランジ部70a〜70dを有している。クロスメンバ70では、フランジ部70aがサイドシル1、1及び一般面53aに接合される他、フランジ部70bがトンネル部53b、フランジ部70cが上面部53c、フランジ部70dが段上げ部53A、53Bの側面部53eにそれぞれ接合されている。
【0061】
このように、段上げ部53A、53Bがフロアパネル53に一体成形された場合であっても、最初の実施形態と同様、乗員の足を上面部53cに乗せることにより、乗員の膝をセンターコンソール14の上面部14Bより高い位置に保持することができ、膝とセンターコンソール14との干渉を回避することができる。このため、乗員は、センターコンソール14よりも高い位置で足を車幅方向に開くことが可能になり、乗員の安楽姿勢を確保することができる。
【0062】
なお、上述した各実施形態では、ドライバーズシート5側、パッセンジャーズシート6側の双方に、段上げ部40、41を配設するか、または段上げ部53A、53Bを一体的に形成することとしたが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、少なくともドライバーズシート5側に段上げ部を備えていればよい。
【0063】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の、運転席は、ドライバーズシート5に対応し、
以下同様に、
助手席は、パッセンジャーズシート6に対応し、
段上げ部は、段上げ部40、53Aに対応し、
傾斜部は、前面部40b、53dに対応し、
助手席用段上げ部は、段上げ部41、53Bに対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【符号の説明】
【0064】
3、53…フロアパネル
5…ドライバーズシート
6…パッセンジャーズシート
7…インストルメントパネル
8…アクセルペダル
9…ブレーキペダル
14…センターコンソール
20、21…クロスメンバ
40、41、53A、53B…段上げ部
40b、41b、53d…前面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロアパネル上に配設された運転席、助手席と、
該運転席及び助手席の前方に車幅方向に亘って配設されたインストルメントパネルと、
該インストルメントパネルの下方に配設されたアクセルペダル、ブレーキペダルとを備えると共に、
前記インストルメントパネルから前記運転席と前記助手席との間を前後方向に亘って配設されたセンターコンソールを備えた車両であって、
前記フロアパネルには、少なくとも前記アクセルペダルより後方から前記運転席の下部近傍まで段上げ部が配設されると共に、
該段上げ部は、前記センターコンソールの側部から、後方面視で前記アクセルペダルと前記ブレーキペダルとの間まで配設された
車両のフロアパネル構造。
【請求項2】
前記段上げ部の前部に、該段上げ部の上面部に乗員の足を案内する傾斜部を備えた
請求項1記載の車両のフロアパネル構造。
【請求項3】
前記段上げ部は、車幅方向に配設されたクロスメンバの上面部と連結した
請求項1または2記載の車両のフロアパネル構造。
【請求項4】
前記運転席は、車両前後方向にスライド可能に支持されたものであって、
前記段上げ部は、車両前後方向において、少なくとも最後端位置にある前記運転席の前端部の位置から車両前方に延び、最前端位置にある前記運転席の前端部よりも前方まで延設された
請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両のフロアパネル構造。
【請求項5】
前記フロアパネルの前記助手席側には、助手席用段上げ部が配設され、
該助手席用段上げ部は、前記センターコンソールの側部において前記助手席より前方に亘って配設された
請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両のフロアパネル構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−61913(P2012−61913A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206484(P2010−206484)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】