説明

車両のフロントバンパのカバー部材取付け構造

【課題】ベゼルの管理に手間がかからず、ベゼルの誤組付けが生じることがない車両のフロントバンパのカバー部材1取付け構造を提供する。
【解決手段】ランプ取付け部を備えたフロントバンパ3に、フロントバンパ3のランプ用第1開口の周縁部とランプの周縁部との間を塞ぐベゼル2を取付け、ランプの非取付け仕様でベゼル2のランプ用第2開口を塞ぐカバー部材1をフロントバンパ3に保持させ、カバー部材1に設けた係合部10を、ベゼル2に設けた被係合部20に係合してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両のフロントバンパのカバー部材取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両にはフロントバンパの取付け部へのフォグランプの取付け仕様(以下、「ランプ取付け仕様」)の車両と非取付け仕様(以下、「ランプ非取付け仕様」)の車両とがあり、両仕様でフロントバンパを共通化している。そして、ランプ取付け仕様の車両において、フロントバンパのランプ取付け部にフォグランプを取付ける場合、フロントバンパのランプ用第1開口の周縁部とランプとの間を塞ぐために、フォグランプ用開口を備えたベゼルをフロントバンパに取付けている。このベゼルはフロントバンパとは異なる色にされて、車両の外観意匠を構成する重要な部材となる。そこで、ランプ非取付け仕様の車両でもベゼルをフロントバンパに取付けている。
従来、フォグランプ用開口を備えたランプ取付け仕様のベゼルと、フォグランプ用開口を備えないランプ非取付け仕様のベゼルとの両者を製作して、前者のベゼルをランプ取付け仕様のフロントバンパに、後者のベゼルをランプ非取付け仕様のフロントバンパに取付けていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながらベゼルは比較的大物であり、このようなベゼルを2種類製作して使い分けすると、ベゼルの管理に手間がかかっていた。さらに、両者を取り違えて誤組付けするおそれもあった。
本発明の目的は、ベゼルの管理に手間がかからず、ベゼルの誤組付けが生じることがない車両のフロントバンパのカバー部材取付け構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の特徴は、
ランプ取付け部を備えたフロントバンパに、前記フロントバンパのランプ用第1開口の周縁部とランプの周縁部との間を塞ぐベゼルを取付け、
前記ランプの非取付け仕様で前記ベゼルのランプ用第2開口を塞ぐカバー部材を前記フロントバンパに保持させ、
前記カバー部材に設けた係合部を、前記ベゼルに設けた被係合部に係合してある点にある。
【0005】
この構成によれば、ランプの非取付け仕様でベゼルのランプ用第2開口を塞ぐカバー部材をフロントバンパに保持させ、カバー部材に設けた係合部を、ベゼルに設けた被係合部に係合してあるから、ランプ取付け仕様の車両とランプ非取付け仕様の車両とでベゼルを共通化することができる。従って、ランプ用第2開口を備えたランプ取付け仕様のベゼルと、ランプ用第2開口を備えないランプ非取付け仕様のベゼルとの両者を製作しなくても済む。その結果、ベゼルの管理にかかる手間を軽減でき、ベゼルの誤組付けをなくすことができる。カバー部材はベゼルに比べると小さな部品であり容易に製造することができて、製造コストを低廉化することができる。
【0006】
本発明において、
前記カバー部材を、前記ランプ用第2開口を塞ぐ第1前壁と、前記第1前壁の裏側から車両後方側に突出する第1筒状部とで構成し、
前記ベゼルを、前記ランプ用第2開口を備えた第2前壁と、前記ランプ用第2開口周りの第2前壁の裏側から車両後方側に突出する第2筒状部とで構成し、
前記第1筒状部に前記係合部を、前記第2筒状部に前記被係合部をそれぞれ設け、
前記第1筒状部を前記第2筒状部に挿入してあると、次の作用を奏することができる。
【0007】
カバー部材の第1筒状部に前記係合部を、ベゼルの第2筒状部に前記被係合部をそれぞれ設けてあるから、係合部と被係合部を車両前方側から見えにくくすることができて外観を良くすることができる。また、第1筒状部を第2筒状部に挿入してあるから、カバー部材とベゼルの互いの位置を正確に決めやすくすることができて、組付け性を向上させることができる。
【0008】
本発明において、
前記フロントバンパに、前記ランプ用第1開口を備えた第3前壁と、前記ランプ用第1開口周りの前記第3前壁の裏側から車両後方側に突出する第3筒状部とを設け、
前記第3筒状部の車両後方側の後端部に前記カバー部材に対する保持部を、前記第1筒状部の車両後方側の後端部に被保持部をそれぞれ設け、
前記第2筒状部を前記第3筒状部に挿入してあると、次の作用を奏することができる。
【0009】
第3筒状部の車両後方側の後端部にカバー部材に対する保持部を、第1筒状部の車両後方側の後端部に被保持部をそれぞれ設けてあるから、保持部と被保持部を車両前方側から見えにくくすることができて外観を良くすることができる。また、第2筒状部を第3筒状部を挿入してあるからベゼルとフロントバンパの互いの位置を正確に決めやすくすることができて、組付け性を向上させることができる。
【0010】
本発明において、
前記第1筒状部の後端部から径方向外方側に張出す張出し部を前記第1筒状部の周方向に複数分散配設して前記被保持部を構成し、
前記第3筒状部の後端部から径方向内方側に張出して前記張出し部を車両前後方向で挟み込む前後一対の保持壁を、前記第3筒状部の周方向に複数組分散配設して前記保持部を構成し、
前記第3筒状部に挿入した前記第2筒状部に前記第1筒状部を車両後方側から挿入し、前記第1筒状部をその軸芯周りに回転させて、各張出し部を各組の前後一対の保持壁間に入り込ませてあると、次の作用を奏することができる。
【0011】
フロントバンパの第3筒状部に設けた前後一対の保持壁で、カバー部材の第1筒状部に設けた張出し部を車両前後方向で挟み込むから、カバー部材をフロントバンパに対して車両前後方向で位置決めすることができる。そして、カバー部材をベゼルを介することなく車両前後方向で位置決できて、フロントバンパに対するカバー部材の位置をより正確に決めることができる。また、第3筒状部に挿入した第2筒状部に第1筒状部を車両後方側から挿入し、第1筒状部をその軸芯周りに回転させて、各張出し部を各組の前後一対の保持壁間に入り込ませるから、前後一対の保持壁で張出し部を容易に挟み込んだ状態にすることができるとともに、第2筒状部への第1筒状部の挿入の際には、第1筒状部及び第2筒状部の周方向での張出し部と前後一対の保持壁の位置を正確に決めなくても済み、組付け作業を簡単化することができる。しかも、第3筒状部に挿入した第2筒状部に第1筒状部を車両後方側から挿入してあるから、車両前方側からカバー部材を取り外しにくく、さらに、カバー部材がフロントバンパに保持されているから、車両前方側からカバー部材を取り外すことができなくなってカバー部材の盗難を防止することができる。
【0012】
本発明において、
前記前後一対の保持壁のうちの後ろ側の保持壁を、前記第3筒状部の後端部に設けた車両後方側に突出する突出壁の突出端部から径方向内方側に張り出させるとともに、前側の保持壁を前記後ろ側の保持壁に対して前記第3筒状部の周方向で位置ずれさせて、前記後ろ側の保持壁の車両前方側を開放させ、
前記第1筒状部の周方向で一方側に位置する張出し部部分に前記前側の保持壁が車両前方側から当接し、他方側に位置する張出し部部分に前記後ろ側の保持壁が車両後方側から当接して、前記前後一対の保持壁が前記張出し部を挟み込んでいると、次の作用を奏することができる。
【0013】
フロントバンパを成形型で成形する場合、車両前後方向すなわちフロントバンパに設けた第3筒状部の軸芯方向に型抜きしている。本発明の構成では、第3筒状部に設けた前後一対の保持壁が第3筒状部から径方向内方側に張出しており、この構造において、例えば両保持壁が前記軸芯方向で重なっていると、フロントバンパの成形工程でスライド型を用いる等の手段を取らなければ型抜きできないことになり、そのために成形型の構造が複雑化し、成形コストが高くなる。これに対して本発明の上記構成によれば、前側の保持壁を後ろ側の保持壁に対して第3筒状部の周方向で位置ずれさせて、後ろ側の保持壁の車両前方側を開放させてあるから、スライド型を採用しなくても型抜きできるようになって、成形型の構造を簡素化でき、成形コストを低廉化することができる。また、第1筒状部の周方向で一方側に位置する張出し部部分に前側の保持壁が車両前方側から当接し、他方側に位置する張出し部部分に後ろ側の保持壁が車両後方側から当接して、前後一対の保持壁が張出し部を挟み込むから、前後一対の保持壁で張出し部を安定して挟み込むことができる。
【0014】
本発明において、
前記張出し部は、前記第1筒状部の後端面よりも車両前方側に位置する張出し壁と、この張出し壁から車両後方側に立ち上がるリブ部とから成り、
前記リブ部は、前記第1筒状部の外周面から径方向外方側に延びる第1リブと、この第1リブの延出端部から前記第1筒状部の周方向に延びる円弧状の第2リブとから成り、
前記張出し壁の車両前方側の面に前記前側の保持壁が当接し、前記第2リブの頂面に前記後ろ側の保持壁が当接していると、次の作用を奏することができる。
【0015】
張出し部の前記第2リブの頂面に前記後ろ側の保持壁が当接していることで、当接面を小さくできて、挟み込みの圧力を大きくすることができる。これにより、前後一対の保持壁で張出し部を確実に保持することができる。また、第2リブが前記周方向に延びているから、第1筒状部の軸芯周りの回転で張出し部を前後一対の保持壁間に入り込ませるときに、第2リブが後ろ側の保持壁に対して円滑にスライド移動しやすくて、張出し部を前後一対の保持壁間に容易に入り込ませることができる。張出し壁の車両前方側の面には前側の保持壁が当接しているから、例えば、張出し壁の車両前方側の面にもリブ状の部分を当接させる構造よりも、前後一対の保持壁による張出し部の挟み込み状態を安定化することができる。さらに、第1リブは第1筒状部の後端部の外周面から径方向に延び、第2リブが第1リブの延出端部から第1筒状部の周方向に延びているから、第1リブと第2リブからなるリブ部を強い構造体に構成することができる。
【0016】
本発明において、
少なくとも一対の前記張出し部の第1リブをその張出し部の第2リブよりも車両後方側に長く立ち上げて、前記第1リブを、前記第1筒状部を軸芯周りに回転操作するためのつまみに構成してあると、カバー部材を回転操作しやすくすることができる。
【0017】
本発明において、
前記第3筒状部の内周面に前記第3筒状部の軸芯方向に延びる1又は2以上のガイド部を形成するとともに、前記第2筒状部の外周面に前記第2筒状部の軸芯方向に延びる1又は2以上の被ガイド部を形成し、
前記第2筒状部を前記第3筒状部に挿入するに伴って、前記被ガイド部が前記ガイド部に対してスライド移動しながら前記第3筒状部内に案内されるよう構成してあると、第2筒状部を前記第3筒状部に円滑に挿入することができる。
【0018】
本発明において、
前記被ガイド部とガイド部のいずれか一方をガイド溝に、他方を凸条に形成してあると、被ガイド部が設けられた第2筒状部と、ガイド部が設けられた第3筒状部との相対回転を防止することができる。
【0019】
本発明において、
前記第2筒状部の車両後方側の後端部から車両後方側に突出する突出片を前記第2筒状部の周方向に1又は2以上分散配設して前記被係合部を構成し、
前記第1筒状部の後端部の外周部から隆起して前記第1筒状部の周方向に間隔を空けて位置する一対の隆起部を、前記第1筒状部の周方向に1組又は2組以上分散配設して前記係合部を形成し、
各突出片を各組の一対の隆起部間に入り込ませて前記第1筒状部の周方向で係合させてあると、次の作用を奏することができる。
【0020】
各突出片を各組の一対の隆起部間に入り込ませて第1筒状部の周方向で係合させてあるから、カバー部材の第1筒状部をベゼルの第2筒状部に対して周方向で位置決めすることができる。また、第1筒状部が第2筒状部に対して、第1筒状部の周方向に回転するのを防止することができる。そして前記突出片は、第2筒状部の車両後方側の後端部から車両後方側に突出しているから、突出片を弾性変形させやすくて、前記一対の隆起部間に突出片を係合させやすくすることができる。
【0021】
本発明において、
一方の前記隆起部の外周面を、前記一対の隆起部間に近い側ほど前記第1筒状部の径方向外方側に位置する傾斜面に構成し、
前記第2筒状部に挿入させた前記第1筒状部をその軸芯周りに回転させるに伴って、前記突出片が前記傾斜面を乗り越えて前記一対の隆起部間に案内されるよう構成してあると、前記突出片を一対の隆起部間に係合させやくすることができる。
【0022】
本発明において、
前記一対の隆起部間と、前記第1筒状部の周方向で前記一方の隆起部の外方側とを切欠いてあると、一方の隆起部を径方向に弾性変形しやすくすることができる。その結果、第1筒状部をその軸芯周りに回転させるに伴って、突出片が一方の隆起部の傾斜面を乗り越えるときに、前記隆起部を弾性変形させやすくすることができて、突出片が一方の隆起部の傾斜面を乗り越えやすくすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ベゼルの管理に手間がかからず、ベゼルの誤組付けが生じることがない車両のフロントバンパのカバー部材取付け構造を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1〜図3に示すように、ランプ取付け部4を備えたフロントバンパ3に、フロントバンパ3のランプ用第1開口41の周縁部と、フォグランプ(図示せず。以下、「ランプ」)の周縁部との間を塞ぐベゼル2を取付けてある。そして、ランプの非取付け仕様でベゼル2のランプ用第2開口42を塞ぐカバー部材1をフロントバンパ3に保持させ、カバー部材1に設けた係合部10(図11,図15(a),図15(b)参照)を、ベゼル2に設けた被係合部20に係合して自動車用フロントバンパのカバー部材取付け構造を構成してある。
【0025】
フロントバンパ3はランプの非取付け仕様と取付け仕様とで共通化され、取付け仕様ではカバー部材1に換えてランプがランプ取付け部4に取付けられる。カバー部材1とベゼル2とフロントバンパ3とは成形型を用いて樹脂により成形されている。
【0026】
[カバー部材1の構造]
図2,図8〜図11,図13(a),図13(b)等に示すようにカバー部材1は、ランプ用第2開口42を塞ぐ第1前壁11と、この第1前壁11の裏側から車両後方側Rに突出する断面円形の直胴状の第1筒状部21とから成る。第1前壁11の前面11Mは車両前方側Fに凸(一部分が凹)の球面状の意匠面になっている。
【0027】
そして、第1筒状部21の車両後方側Rの後端部21Bの外周部から隆起して第1筒状部21の周方向に間隔を空けて位置する一対の隆起部5,6を、第1筒状部21の周方向に2組分散配設して前記係合部10を形成してある。一組の隆起部5,6と別の1組の隆起部5,6とは、第1筒状部21の軸芯O1に対して点対称に位置する。また、一方の隆起部5の外周面を、前記周方向で一対の隆起部5,6間に近い側ほど第1筒状部21の径方向外方側に位置する傾斜面5Mに構成し、一対の隆起部5,6間と、第1筒状部21の周方向で一方の隆起部5の外方側とを四角形状に切欠くとともに、一方の隆起部5の内側面に段部7を形成してある。
【0028】
第1筒状部21の後端部21Bに、フロントバンパ3の後述の保持部30に保持される被保持部40を設けてある。詳しくは、第1筒状部21の後端部21Bから径方向外方側に張出す張出し部8を第1筒状部21の周方向に4個、不等分に分散配設して前記被保持部40を構成してある。4個の張出し部8のうちの一対の張出し部8は第1筒状部21の軸芯O1に対して点対称に位置し、別の一対の張出し部8は前記軸芯O1に対して点対称に位置している。そして、周方向で隣合う一対の張出し部8の間隔を広く、別の隣合う一対の張出し部8の間隔を狭く設定して、広い間隔と狭い間隔とを周方向で交互に配置してある。前記係合部10は、前記周方向で広い間隔を空けて隣合う一対の張出し部8の間の中心に位置する。
【0029】
張出し部8は、第1筒状部21の後端面21C(図10参照)よりも車両前方側Fに位置する張出し壁9と、この張出し壁9から車両後方側Rに立ち上がるリブ部14とから成る。リブ部14は、第1筒状部21の外周面から径方向外方側に延びる直線状の第1リブ51と、この第1リブ51の延出端部から第1筒状部21の周方向に延びる円弧状の第2リブ52とから成る。第2リブ52の延出端部の頂部は面取りされている。
【0030】
図11,図12に示すように、前記軸芯O1に対して点対称に位置する一対の張出し部8の第1リブ51を、その張出し部8の第2リブ52よりも車両後方側Rに長く立ち上げて、前記第1リブ51を、第1筒状部21を軸芯O1周りに回転操作するための板状のつまみ15に構成してある(後述するように第1筒状部21は組付け時に回転操作される)。別の一対の張出し部8の第1リブ51も上記と同様のつまみ15に構成してもよい。
【0031】
狭い間隔を空けて前記周方向で隣合う一対の張出し部8の間には張出し壁9に連なるフランジ16が形成されている。このフランジ16の張出し長さは張出し壁9の張出し長さよりも短く設定されている。つまり、フランジ16は張出し壁9の付け根部に連なっている。また、傾斜面5Mが形成されていない側の他方の隆起部6と、周方向でこれに隣合う張出し壁9との間にも、張出し長さが張出し壁9の張出し長さよりも短いフランジ16が形成されている。
【0032】
[ベゼル2の構造]
図2,図4〜図6に示すようにベゼル2は、ランプ用第2開口42を備えた第2前壁12と、ランプ用第2開口42周りの第2前壁12の裏側から車両後方側Rに突出する第2筒状部22とから成る。第2前壁12は、車幅方向外方側ほど車両後方側Rに位置する緩やかなテーパ曲面に形成されて、その前面12Mが意匠面になっている。第2前壁12の周縁部17は車両後方側Rに折り曲げられている。この周縁部17に、車両後方側Rに突出する複数の係合爪18を分散配設してある。係合爪18は車両後方側Rに延びる断面コの字状の爪本体部19と、爪本体部19の後端部に形成された断面三角形のくさび状の爪部24とから成る。爪部24はフロントバンパ3の後述の係合孔25に挿入されて弾性係合する(図7参照)。
【0033】
第2筒状部22は、車両前方側Fに広がるテーパ状の前側筒部分26と、これよりも小径の後ろ側筒部分27とから成る。また、後ろ側筒部分27の車両後方側Rの後端部から車両後方側Rに突出する突出片28を第2筒状部22の周方向に一対分散配設して前記被係合部20を構成してある。一対の突出片28は、第2筒状部22の軸芯O2に対して点対称に位置している。突出片28を前記周方向に1個又は3個以上分散配設した構造であってもよい。
【0034】
第2筒状部22の外周面にその軸芯方向に延びる一対の被ガイド部29を形成してある。被ガイド部29の車両後方側Rの端部は突出片28の背面部に形成されている。この被ガイド部29は前記背面部側から車両前方側Fに長く延びて前側筒部分26の後端部に達している。被ガイド部29は角形のガイド溝から成るが、凸条から成っていてもよい。
【0035】
[フロントバンパ3の構造]
図1,図2,図8〜図11に示すように、フロントバンパ3に、ランプ用第1開口41を備えた第3前壁13と、ランプ用第1開口41周りの第3前壁13の裏側から車両後方側Rに突出する第3筒状部23とを設け、第3筒状部23の車両後方側Rの後端部に、カバー部材1に対する保持部30を設けてある。つまり、第3筒状部23の後端部から径方向内方側に張出して前記張出し部8を車両前後方向で挟み込む前後一対の保持壁35F,35Rを、第3筒状部23の周方向に4組、不等分に分散配設して前記保持部30を構成してある。前後一対の保持壁35F,35Rのうちの後ろ側の保持壁35Rは、第3筒状部23の後端部に設けた車両後方側Rに突出する突出壁37の突出端部から径方向内方側に張り出している。第3筒状部23の周方向の突出壁37の一端部からは、径方向内方側に側壁36が延びており、側壁36の後端部が後ろ側の保持壁35Rの前面に連なっている。
【0036】
4個の後ろ側の保持壁35Rのうちの一対の後ろ側の保持壁35Rは、第3筒状部23の軸芯O3に対して点対称に位置し、別の一対の後ろ側の保持壁35Rは前記軸芯O3に対して点対称に位置している。そして、周方向で隣合う一対の後ろ側の保持壁35Rの間隔を広く、別の一対の後ろ側の保持壁35Rの間隔を狭く設定して、広い間隔と狭い間隔とを周方向で交互に配置してある。
【0037】
さらに、前側の保持壁35Fを後ろ側の保持壁35Rに対して第3筒状部23の周方向で位置ずれさせて、後ろ側の保持壁35Rの車両前方側Fを開放させてある。符号38(図12参照)が開放空間である。フロントバンパ3の成形工程で型抜きする場合、成形型は第3筒状部23の軸芯方向(車両前後方向)に型抜きされるが、本発明の構造によれば、上記のように後ろ側の保持壁35Rの車両前方側Fを開放させてあるから、スライド型を用いることなく型抜きすることができる。
【0038】
また、第3筒状部23の内周面に第3筒状部23の軸芯方向に延びる一対のガイド部31を形成してある(図8,図13(a)参照)。ガイド部31は凸条から成るが、ガイド溝から成っていてもよい。
【0039】
第3前壁13の周縁部には、ベゼル2の第2前壁12の周縁部17の折曲された周縁部分が挿入される環状溝34を形成するとともに(図8,図9参照)、係合爪18の爪部24を挿入させる複数の係合孔25を分散配設してある。前記折曲された周縁部分は環状溝34に車両前方側Fから挿入される。前記ランプ取付け部4はフロントバンパ3に形成した複数のスクリュー孔等から成る。
【0040】
[フロントバンパ3へのベゼル2とカバー部材1の取付けの手順、及びその取付け構造]
(1) ベゼル2の第2筒状部22をフロントバンパ3の第3筒状部23に車両前方側Fから挿入する。この挿入に伴って、被ガイド部29がガイド部31に対してスライド移動しながら第3筒状部23内に案内される。前記係合爪18の爪部24は係合孔25に挿入されて弾性係合し、ベゼル2の第2前壁12がフロントバンパ3の第3前壁13に車両前方側Fから重なり、ベゼル2の第2前壁12の周縁部17の折曲された周縁部分が、第3前壁13の周縁部の環状溝34に車両前方側Fから挿入される。ベゼル2の一対の突出片28はフロントバンパ3の第3筒状部23の後端部よりも車両後方側Rに突出した状態になる。
【0041】
(2) 図13(a),図13(b)に示すように、カバー部材1の一対の隆起部5,6(係合部10)と張出し部8(被保持部40)との間にベゼル2の突出片28(被係合部20)が位置するように位置合わせして、カバー部材1の第1筒状部21をベゼル2の第2筒状部22に車両後方側Rから挿入し、カバー部材1の張出し壁9をフロントバンパ3の前側保持壁35Fに当接させる。この挿入の際に、前記突出片28の一側部に第1リブ51の側面を当接させて、突出片28に案内させながらカバー部材1を挿入させることができる。これにより挿入を簡単に行うことができる。図13(a),図13(b)は第1筒状部21をベゼル2の第2筒状部22に車両後方側Rから挿入した第1状態を示している。
【0042】
(3) 図14(a),図14(b)に示すように、第1筒状部21を軸芯O1周り(時計周り)に回転させて、各張出し部8を各組の前後一対の保持壁35F,35R間に入り込ませる(図15(a),図15(b))。ベゼル2のガイド溝状の前記被ガイド部29に、フロントバンパ3の凸条の前記ガイド部31が入り込んで嵌合しているので、第1筒状部21を軸芯周りに回転させても、ベゼル2の第2筒状部21が回転することはない。図14(a),図14(b)は第1状態から第1筒状部21を軸芯O1周り(時計周り)に15°回転させた第2状態を示し、図15(a),図15(b)は、第2状態から第1筒状部21をさらに15°回転させた回転完了(組付け完了)の第3状態を示している。第2筒状部22に挿入させた第1筒状部21を軸芯O1周りに回転させるに伴って、突出片28が一方の隆起部5の傾斜面5Mを乗り越えて一対の隆起部5,6間に案内される。そして、突出片28が一対の隆起部5,6間に入り込んで周方向で係合し、一方の隆起部5の内側面の段部7が突出片28の一側部を受止める。第1筒状部21と第2筒状部22と第3筒状部23とは同芯状に位置する。
【0043】
図12に示すように、フロントバンパ3の前側の保持壁35Fは、第1筒状部21の周方向で一方側に位置する張出し部部分8Aに車両前方側Fから当接し、後ろ側の保持壁35Rは、前記周方向で他方側に位置する張出し部部分8Bに車両後方側Rから当接している。詳しくは、張出し壁9の車両前方側Fの面9Aにフロントバンパ3の前側の保持壁35Fが当接し、第2リブ52の頂面52Tにフロントバンパ3の後ろ側の保持壁35Rが当接している。これにより前後一対の保持壁35F,35Rが張出し部8を車両前後方向で挟み込んでいる。
【0044】
[別実施形態]
(1) 上記の実施形態で挙げた数値は一例であり別の数値であってもよい。
(2) 上記の実施形態ではフロントバンパ3の左側のランプ周りの構造について説明したが、右側のランプ周りの構造は左側のランプ取付け部周りの構造と同一であり、本発明を右側のランプ周りの構造にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】フロントバンパの正面図
【図2】フロントバンパの左側の部分の分解斜視図
【図3】フロントバンパの左側下部の斜視図
【図4】ベゼルの後面図
【図5】ベゼルの側面図
【図6】ベゼルの平面図
【図7】図15(a)のE−E断面図
【図8】図15(a)のD−D断面図
【図9】図15(a)のK−K断面図
【図10】図15(a)のG−G断面図
【図11】カバー部材の第1筒状部をベゼルの第2筒状部に挿入した組付け状態を示し、第1筒状部を回転操作する前の組付け状態を斜め後方から見た斜視図
【図12】図15(a)のF−F断面図
【図13】(a)は、カバー部材の第1筒状部をベゼルの第2筒状部に挿入した組付途中の状態を示し、第1筒状部を回転操作する前の状態を示す後面図、(b)は(a)の断面図
【図14】(a)は、カバー部材の第1筒状部をベゼルの第2筒状部に挿入した組付途中の状態を示し、第1筒状部を15°だけ回転操作した状態を示す後面図、(b)は(a)の断面図
【図15】(a)は、カバー部材の第1筒状部をベゼルの第2筒状部に挿入し、第1筒状部を30°回転操作した組付け完了状態を示す後面図、(b)は(a)の断面図
【符号の説明】
【0046】
1 カバー部材
2 ベゼル
3 フロントバンパ
4 ランプ取付け部
5 隆起部(一方の隆起部)
5M 傾斜面
6 隆起部(他方の隆起部)
8 張出し部
8A 第1筒状部の周方向で一方側に位置する張出し部部分
8B 第1筒状部の周方向で他方側に位置する張出し部部分
9 張出し壁
9A 張出し壁の車両前方側の面
10 係合部
11 第1前壁
12 第2前壁
13 第3前壁
14 リブ部
15 つまみ
20 被係合部
21 第1筒状部
21B 第1筒状部の後端部
21C 第1筒状部の後端面
22 第2筒状部
23 第3筒状部
28 突出片
29 被ガイド部
30 保持部
31 ガイド部
35F 前側の保持壁
35R 後ろ側の保持壁
37 突出壁
40 被保持部
41 ランプ用第1開口
42 ランプ用第2開口
51 第1リブ
52 第2リブ
52T 第2リブの頂面
F 車両前方側
R 車両後方側
O1 軸芯(第1筒状部の軸芯)
O2 軸芯(第2筒状部の軸芯)
O3 軸芯(第3筒状部の軸芯)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランプ取付け部を備えたフロントバンパに、前記フロントバンパのランプ用第1開口の周縁部とランプの周縁部との間を塞ぐベゼルを取付け、
前記ランプの非取付け仕様で前記ベゼルのランプ用第2開口を塞ぐカバー部材を前記フロントバンパに保持させ、
前記カバー部材に設けた係合部を、前記ベゼルに設けた被係合部に係合してある車両用フロントバンパのカバー部材取付け構造。
【請求項2】
前記カバー部材を、前記ランプ用第2開口を塞ぐ第1前壁と、前記第1前壁の裏側から車両後方側に突出する第1筒状部とで構成し、
前記ベゼルを、前記ランプ用第2開口を備えた第2前壁と、前記ランプ用第2開口周りの第2前壁の裏側から車両後方側に突出する第2筒状部とで構成し、
前記第1筒状部に前記係合部を、前記第2筒状部に前記被係合部をそれぞれ設け、
前記第1筒状部を前記第2筒状部に挿入してある請求項1記載の車両用フロントバンパのカバー部材取付け構造。
【請求項3】
前記フロントバンパに、前記ランプ用第1開口を備えた第3前壁と、前記ランプ用第1開口周りの前記第3前壁の裏側から車両後方側に突出する第3筒状部とを設け、
前記第3筒状部の車両後方側の後端部に前記カバー部材に対する保持部を、前記第1筒状部の車両後方側の後端部に被保持部をそれぞれ設け、
前記第2筒状部を前記第3筒状部に挿入してある請求項2記載の車両用フロントバンパのカバー部材取付け構造。
【請求項4】
前記第1筒状部の後端部から径方向外方側に張出す張出し部を前記第1筒状部の周方向に複数分散配設して前記被保持部を構成し、
前記第3筒状部の後端部から径方向内方側に張出して前記張出し部を車両前後方向で挟み込む前後一対の保持壁を、前記第3筒状部の周方向に複数組分散配設して前記保持部を構成し、
前記第3筒状部に挿入した前記第2筒状部に前記第1筒状部を車両後方側から挿入し、前記第1筒状部をその軸芯周りに回転させて、各張出し部を各組の前後一対の保持壁間に入り込ませてある請求項3記載の車両用フロントバンパのカバー部材取付け構造。
【請求項5】
前記前後一対の保持壁のうちの後ろ側の保持壁を、前記第3筒状部の後端部に設けた車両後方側に突出する突出壁の突出端部から径方向内方側に張り出させるとともに、前側の保持壁を前記後ろ側の保持壁に対して前記第3筒状部の周方向で位置ずれさせて、前記後ろ側の保持壁の車両前方側を開放させ、
前記第1筒状部の周方向で一方側に位置する張出し部部分に前記前側の保持壁が車両前方側から当接し、他方側に位置する張出し部部分に前記後ろ側の保持壁が車両後方側から当接して、前記前後一対の保持壁が前記張出し部を挟み込んでいる請求項4記載の車両用フロントバンパのカバー部材取付け構造。
【請求項6】
前記張出し部は、前記第1筒状部の後端面よりも車両前方側に位置する張出し壁と、この張出し壁から車両後方側に立ち上がるリブ部とから成り、
前記リブ部は、前記第1筒状部の外周面から径方向外方側に延びる第1リブと、この第1リブの延出端部から前記第1筒状部の周方向に延びる円弧状の第2リブとから成り、
前記張出し壁の車両前方側の面に前記前側の保持壁が当接し、前記第2リブの頂面に前記後ろ側の保持壁が当接している請求項5記載の車両用フロントバンパのカバー部材取付け構造。
【請求項7】
少なくとも一対の前記張出し部の第1リブをその張出し部の第2リブよりも車両後方側に長く立ち上げて、前記第1リブを、前記第1筒状部を軸芯周りに回転操作するためのつまみに構成してある請求項6記載の車両用フロントバンパのカバー部材取付け構造。
【請求項8】
前記第3筒状部の内周面に前記第3筒状部の軸芯方向に延びる1又は2以上のガイド部を形成するとともに、前記第2筒状部の外周面に前記第2筒状部の軸芯方向に延びる1又は2以上の被ガイド部を形成し、
前記第2筒状部を前記第3筒状部に挿入するに伴って、前記被ガイド部が前記ガイド部に対してスライド移動しながら前記第3筒状部内に案内されるよう構成してある請求項3〜7のいずれか一つに記載の車両用フロントバンパのカバー部材取付け構造。
【請求項9】
前記被ガイド部とガイド部のいずれか一方をガイド溝に、他方を凸条に形成してある請求項8記載の車両用フロントバンパのカバー部材取付け構造。
【請求項10】
前記第2筒状部の車両後方側の後端部から車両後方側に突出する突出片を前記第2筒状部の周方向に1又は2以上分散配設して前記被係合部を構成し、
前記第1筒状部の後端部の外周部から隆起して前記第1筒状部の周方向に間隔を空けて位置する一対の隆起部を、前記第1筒状部の周方向に1組又は2組以上分散配設して前記係合部を形成し、
各突出片を各組の一対の隆起部間に入り込ませて前記第1筒状部の周方向で係合させてある請求項2〜9のいずれか一つに記載の車両用フロントバンパのカバー部材取付け構造。
【請求項11】
一方の前記隆起部の外周面を、前記一対の隆起部間に近い側ほど前記第1筒状部の径方向外方側に位置する傾斜面に構成し、
前記第2筒状部に挿入させた前記第1筒状部をその軸芯周りに回転させるに伴って、前記突出片が前記傾斜面を乗り越えて前記一対の隆起部間に案内されるよう構成してある請求項10記載の車両用フロントバンパのカバー部材取付け構造。
【請求項12】
前記一対の隆起部間と、前記第1筒状部の周方向で前記一方の隆起部の外方側とを切欠いてある請求項10又は11記載の車両用フロントバンパのカバー部材取付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−247363(P2008−247363A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−95050(P2007−95050)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】