説明

車両のフロントピラー構造

【課題】アウタモールの車体への取付強度及びウィンドシールドガラスの縦縁部に対するアウタモールの位置精度を確保する。
【解決手段】車両のフロントピラー構造10は、ウィンドシールドガラス16の縦縁部16Aに沿って長手状に設けられ、縦縁部16Aが固定されたフロントピラー14と、フロントピラー14の車両外側に設けられたアウタモール62とを備えている。フロントピラー14には、縦縁部16Aの裏側に対向壁部38が形成されており、この対向壁部38には、貫通孔76が形成されている。一方、アウタモール62は、縦縁部16Aに一体成形により形成されると共に、貫通孔76に対応する位置にクリップ72を有している。そして、貫通孔76にクリップ72が挿通された状態で、このクリップ72の先端側に形成された係止爪74が貫通孔76の周縁部76Aに形成されることにより、アウタモール62は、フロントピラー14に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロントピラー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ウィンドガラスの車両幅方向外側を貫通してフロントピラーの係合穴に係合された固定部を有すると共に、モール部材として機能する取付部材を備えた車両のウィンドガラス支持構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平2−96305号公報
【特許文献2】特開2006−182079号公報
【特許文献3】実開昭57−189975号公報
【特許文献4】実開平1−114346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この種の構造においては、アウタモールの車体への取付強度及びウィンドシールドガラスの縦縁部に対するアウタモールの位置精度が確保されることが望まれる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、アウタモールの車体への取付強度及びウィンドシールドガラスの縦縁部に対するアウタモールの位置精度を確保することができる車両のフロントピラー構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の車両のフロントピラー構造は、ウィンドシールドガラスの縦縁部に沿って長手状に設けられ、前記縦縁部が固定されたフロントピラーと、前記フロントピラーの車両外側に前記フロントピラーの長手方向に沿って設けられると共に、前記縦縁部に一体に取り付けられたアウタモールと、前記フロントピラーに形成された被係止部と、前記アウタモールに設けられると共に、前記被係止部に係止されて、前記アウタモールを前記フロントピラーに固定する係止部と、を備えている。
【0007】
この車両のフロントピラー構造によれば、ウィンドシールドガラスの縦縁部は、フロントピラーに固定されており、アウタモールは、この縦縁部に一体に取り付けられている。また、このアウタモールには、係止部が設けられており、この係止部がフロントピラーに形成された被係止部に係止されることにより、アウタモールは、フロントピラーに固定されている。従って、アウタモールがウィンドシールドガラス及びフロントピラーに固定されているので、アウタモールの取付強度を確保することができる。
【0008】
しかも、アウタモールは、上述のように、ウィンドシールドガラスの縦縁部に一体に取り付けられている。従って、ウィンドシールドガラスの縦縁部に対するアウタモールの位置精度も確保することができる。
【0009】
請求項2に記載の車両のフロントピラー構造は、請求項1に記載の車両のフロントピラー構造において、前記フロントピラーの車両内側に前記フロントピラーの長手方向に沿って設けられたインナガーニッシュを備え、前記アウタモールには、前記縦縁部の裏側に設けられると共に、車両幅方向内側に延出された延出部が形成され、前記延出部の先端部には、前記インナガーニッシュにおける前記縦縁部側の端末部を位置規制する位置規制部が形成された構成とされている。
【0010】
この車両のフロントピラー構造によれば、アウタモールには、ウィンドシールドガラスの縦縁部の裏側に設けられると共に、車両幅方向内側に延出された延出部が形成されており、インナガーニッシュにおける縦縁部側の端末部は、この延出部の先端部に形成された位置規制部によって位置規制されている。従って、ウィンドシールドガラスの縦縁部に対するインナガーニッシュの端末部の位置精度を確保することができる。
【0011】
請求項3に記載の車両のフロントピラー構造は、請求項1又は請求項2に記載の車両のフロントピラー構造において、前記アウタモールには、前記縦縁部を表側から押え付ける押付部と、前記押付部の車両幅方向外側に形成され、サイドドアに設けられたウェザストリップが車両後側から押し当てられる当て部と、前記当て部における車両幅方向外側の端部から車両幅方向内側に延出されると共に、その先端側が前記押付部に対する前記縦縁部と反対側に前記押付部と離間して設けられたモール部と、が形成され、前記押付部、前記当て部、及び、前記モール部によって、車両幅方向内側に開口する排水溝が前記フロントピラーの長手方向に沿って形成された構成とされている。
【0012】
この車両のフロントピラー構造によれば、アウタモールに形成された押付部、当て部、及び、モール部によって、車両幅方向内側に開口する排水溝がフロントピラーの長手方向に沿って形成されている。従って、ウィンドシールドガラスの表面から流れるウォッシャ液や雨水を、この排水溝によって処理することができるので、ウィンドシールドガラスの排水性能を確保することができる。
【0013】
請求項4に記載の車両のフロントピラー構造は、請求項3に記載の車両のフロントピラー構造において、前記排水溝の底部が、前記当て部によって構成されると共に、前記縦縁部の裏面の車両幅方向外側への延長線よりも車両後側に位置された構成とされている。
【0014】
この車両のフロントピラー構造によれば、この排水溝の底部は、当て部によって構成されると共に、縦縁部の裏面の車両幅方向外側への延長線よりも車両後側に位置されているので、排水溝の断面積を拡大させることができる。これにより、ウィンドシールドガラスの排水性能をより確保することができる。
【0015】
請求項5に記載の車両のフロントピラー構造は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の車両のフロントピラー構造において、前記フロントピラーには、前記縦縁部の裏側に前記縦縁部と対向して設けられた対向壁部が形成され、前記アウタモールには、前記縦縁部と前記対向壁部との間に介在された介在部が形成された構成とされている。
【0016】
この車両のフロントピラー構造によれば、ウィンドシールドガラスの縦縁部とフロントピラーの対向壁部との間に、アウタモールに形成された介在部が介在されることにより、フロントピラーに対してウィンドシールドガラスを位置決めすることができる。従って、例えば、別途、スペーサ等を用いなくても、フロントピラーに対してウィンドシールドガラスの位置決めをすることができるので、部材点数の増加を抑制して、コストダウンすることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上詳述したように、本発明によれば、アウタモールの車体への取付強度及びウィンドシールドガラスの縦縁部に対するアウタモールの位置精度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両のフロントピラー構造が適用された車両におけるフロントピラー周辺部の構成を示す側面図である。
【図2】図1の2−2線拡大断面図である。
【図3】図2の要部拡大断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る車両のフロントピラー構造の変形例を示す図3に対応する拡大断面図である。
【図5】図3に示される係合溝と位置規制部との変形例を示す要部拡大断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る車両のフロントピラー構造の変形例を示す図3に対応する拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
【0020】
なお、各図において示される矢印UP、矢印FR、矢印OUTは、車両上下方向上側、車両前後方向前側、車両幅方向外側(左側)をそれぞれ示している。また、以下には、一例として、本発明の一実施形態に係る車両のフロントピラー構造が左ハンドル車に適用された例を説明する。
【0021】
図1に示されるように、本発明の一実施形態に係る車両のフロントピラー構造10が適用された車両12は、フロントピラー14を備えている。このフロントピラー14は、ウィンドシールドガラス16の縦縁部16A、及び、後述するサイドドア40に備えられたサイドガラス44の前縁部44Aに沿って長手状に設けられている。
【0022】
このフロントピラー14は、図2に示されるように、アウタパネル18及びインナパネル20を有して構成されている。このアウタパネル18及びインナパネル20には、図示しないフロントシート側(矢印A側)へ延びる側壁部22,24がそれぞれ形成されており、一方の側壁部22におけるフロントシート側の端部には、サイドガラス44と略平行に延びるフランジ26が形成されている。
【0023】
一方、他方の側壁部24におけるフロントシート側には、フロントシート側に凸を成す車内側壁部28が形成されており、この車内側壁部28における側壁部22側の端部には、フランジ26に沿って延びるフランジ30が形成されている。このフランジ30は、フランジ26と互いに重ね合わされた状態で溶接されている。
【0024】
また、一方の側壁部22におけるフランジ26と反対側には、ウィンドシールドガラス16側へ延びる当て壁部32が形成されており、この当て壁部32におけるウィンドシールドガラス16側の端部には、車両幅方向内側に延出されたフランジ34が形成されている。一方、他方の側壁部24におけるウィンドシールドガラス16側の端部には、車両幅方向外側に延出されたフランジ36が形成されている。このフランジ34,36は、互いに重ね合わされた状態で溶接されており、対向壁部38を構成している。この対向壁部38は、縦縁部16Aの裏側に縦縁部16Aと対向して設けられている。
【0025】
また、このフロントピラー14では、上述の一対の側壁部22,24、車内側壁部28、当て壁部32、対向壁部38によって閉断面部39が構成されている。この閉断面部39は、一対の側壁部22,24が延びる方向に沿った縦幅W1よりも該延びる方向から見た横幅W2の方が狭く形成されている。つまり、このフロントピラー14は、全体的には、横幅が狭く縦長の細幅化された構成とされている。
【0026】
サイドドア40は、図示しないヒンジを介してフロントピラー14にスイング可能に連結されており、ドアフレーム42とサイドガラス44とを備えている。ドアフレーム42には、その長手方向に沿ってガラスラン46が設けられており、サイドガラス44は、このガラスラン46を介してドアフレーム42に昇降可能に支持されている。
【0027】
また、ドアフレーム42には、フランジ26側に突出する突出部48が形成されており、フランジ26には、ウェザストリップ50(オープニングウェザストリップ)が取り付けられている。ウェザストリップ50は、サイドガラス44側に膨出するシール部52と、このシール部52と反対側に延出するリップ部54とを有している。シール部52は、サイドドア40が閉状態とされたときには、上述の突出部48に弾性圧縮された状態で密着される構成とされており、リップ部54は、後述するインナガーニッシュ86の端末部86Dに密着されている。
【0028】
一方、ドアフレーム42におけるガラスラン46と反対側には、ウェザストリップ56(ドアウェザストリップ)が取り付けられている。ウェザストリップ56は、当て壁部32、及び、後述するアウタモール62に形成された当て部78に向けて膨出するシール部58と、当て部78に向けて延びるリップ部60とを有して構成されている。シール部58は、サイドドア40が閉状態とされたときには、弾性圧縮された状態で当て壁部32及び当て部78に密着される構成とされており、リップ部60は、サイドドア40が閉状態とされたときには、車両後側から当て部78に押し当てられて弾性変形される構成とされている。
【0029】
また、縦縁部16Aには、樹脂製のアウタモール62が一体成形により形成されている。このアウタモール62は、フロントピラー14の車両外側にフロントピラー14の長手方向に沿って設けられており、より具体的には、図3に示されるように、押付部64と、介在部66と、延出部68とを有している。
【0030】
押付部64は、縦縁部16Aの表面16A1に沿って形成されており、この縦縁部16Aを表側から押え付けている。また、介在部66は、縦縁部16Aと対向壁部38(フランジ34)との間に介在されており、延出部68は、この介在部66から縦縁部16Aの裏面16A2に沿って車両幅方向内側に延出されている。
【0031】
そして、この押付部64と、介在部66及び延出部68とが縦縁部16Aを挟持することにより、アウタモール62は、縦縁部16Aに固定されている。また、延出部68が対向壁部38に接着剤70によって接着されることにより、縦縁部16Aは、フロントピラー14に固定されている。
【0032】
また、介在部66には、縦縁部16Aと反対側に突出する係止部としてのクリップ72が形成されており、このクリップ72の先端側には、係止爪74が形成されている。一方、対向壁部38(フランジ34)には、クリップ72と対応する位置に貫通孔76が形成されている。
【0033】
そして、介在部66が対向壁部38に当接されると共に、クリップ72が貫通孔76に挿通された状態で、このクリップ72の先端側に形成された係止爪74が対向壁部38を挟んだ介在部66と反対側から被係止部としての貫通孔76の周縁部76Aに係止されることにより、アウタモール62は、フロントピラー14に固定されている。
【0034】
また、このアウタモール62には、当て部78と、モール部80とが形成されている。当て部78は、押付部64及び介在部66の車両幅方向外側に形成されており、フロントピラー14よりも車両幅方向外側に突出されている。一方、モール部80は、当て部78における車両幅方向外側の端部から車両幅方向内側に延出されており、その先端側は、押付部64に対する縦縁部16Aと反対側に押付部64と離間して設けられている。
【0035】
そして、このアウタモール62では、押付部64、当て部78、及び、モール部80によって、車両幅方向内側に開口する断面略U字状の排水溝82が形成されている。この排水溝82は、フロントピラー14の長手方向に沿って形成されている。なお、この排水溝82は、押付部64、当て部78、及び、モール部80の肉厚や形状を適宜設定することにより、その断面積を変更可能である。
【0036】
また、延出部68の先端部には、縦縁部16Aに対して車両内側に突出されるように、突起状の位置規制部84が形成されている。一方、図2に示されるように、フロントピラー14の車両内側には、側壁部24及び車内側壁部28を車両内側から覆う樹脂製のインナガーニッシュ86がフロントピラー14の長手方向に沿って設けられている。このインナガーニッシュ86の縦縁部16A側の端末部86Aには、図3に示されるように、縦縁部16A側に開口する係合溝88が形成されている。
【0037】
そして、係合溝88が位置規制部84に係合されることにより、インナガーニッシュ86の端末部86Aは、縦縁部16Aに対して車両幅方向(縦縁部16Aに沿う方向)に位置規制されている。
【0038】
また、図2に示されるように、インナガーニッシュ86とフロントピラー14との間には、空間部90が形成されており、この空間部90には、例えば、ワイヤーハーネス、アンテナケーブル、排水ホースなどの配索部材92が収容されている。各配索部材92は、フロントピラー14の長手方向に沿って配索されている。
【0039】
また、縦縁部16Aの裏面16A2には、不透明(黒色)のセラミック部94が形成されており、インナガーニッシュ86の側面部86Bは、セラミック部94の車両幅方向内側端94Aと図示しない運転者の頭部とを結ぶ線L1に対して平行に設けられている。さらに、モール部80の先端80Aは、上述の線L1に対して車両幅方向外側に設けられている。
【0040】
なお、この場合の運転者とは、運転席を車両前後方向中央のスライド位置に設定すると共に、標準体格で且つ正しい運転姿勢の者を想定している。
【0041】
次に、本発明の一実施形態の作用及び効果について説明する。
【0042】
この車両のフロントピラー構造10によれば、フロントピラー14の閉断面部39は、縦幅W1よりも横幅W2の方が狭く形成されており、これにより、フロントピラー14は、全体的に横幅が狭く縦長の細幅化された構成とされている。従って、このフロントピラー14及びその周辺部によって構成されたフロントピラー部100の幅、すなわち、この場合、上述の線L1と、この線L1と平行でガラスラン46の先端を通る線L2との成す幅W3を狭めることができるので、車室からの視界を向上させることができる(特に、運転席に対する視界の妨害角を狭めることができる)。
【0043】
また、図3に示されるように、ウィンドシールドガラス16の縦縁部16Aは、フロントピラー14に固定されており、アウタモール62は、この縦縁部16Aに一体成形により形成されている。また、介在部66が対向壁部38と当接されると共に、クリップ72の先端側に形成された係止爪74が貫通孔76の周縁部76Aに係止されることにより、アウタモール62は、フロントピラー14に固定されている。従って、アウタモール62がウィンドシールドガラス16及びフロントピラー14に固定されているので、フロントピラー14が細幅化されることで取付スペースが限られていても、アウタモール62の取付強度を確保することができる。
【0044】
しかも、限られた取付スペースを有効活用するため、アウタモール62は、上述のように、縦縁部16Aに一体成形により形成されている。従って、フロントピラー14の細幅化を実現しつつ、縦縁部16Aに対するアウタモール62の位置精度、特に、モール部80の先端80Aと、セラミック部94の車両幅方向内側端94Aとの位置精度も確保することができる。
【0045】
また、アウタモール62とウィンドシールドガラス16との一体成形時に、クリップ72がアウタモール62に一体に形成されるので、アウタモール62に対するクリップ72の位置精度、ひいては、フロントピラー14に対するウィンドシールドガラス16の位置精度も確保することができる。
【0046】
さらに、アウタモール62には、縦縁部16Aの裏側に設けられると共に、車両幅方向内側に延出された延出部68が形成されており、インナガーニッシュ86における縦縁部16A側の端末部86Aは、この延出部68の先端部に形成された位置規制部84によって車両幅方向に位置規制されている。従って、縦縁部16Aに対するインナガーニッシュ86の端末部86Aの位置精度、特に、この端末部86Aの先端86Cと、インナガーニッシュ86の側面部86Bと、セラミック部94の車両幅方向内側端94Aとの位置精度も確保することができる。
【0047】
また、このように、アウタモール62及びインナガーニッシュ86のウィンドシールドガラス16に対する位置精度を確保することにより、熱や経時に伴ってアウタモール62及びインナガーニッシュ86に位置ずれが生じたり、アウタモール62及びインナガーニッシュ86の位置が製造時にばらついたりすることを抑制することができる。これにより、図2に示されるフロントピラー部100の幅W3をより狭めることができるので、車室からの視界をより向上させることができる。
【0048】
また、セラミック部94の車両幅方向内側端94Aと図示しない運転者の頭部とを結ぶ線L1に対してインナガーニッシュ86の側面部86Bが平行に設けられているので、車室からの視界と見栄えとを両立させることができる。
【0049】
また、ウィンドシールドガラス16に対して精度良く組み付けられたアウタモール62に当て部78が形成されているので、この当て部78とドアフレーム42との間の隙間の精度も確保することができる。これにより、ウェザストリップ56のシール性と見栄えを向上させることができる。
【0050】
また、図3に示されるように、アウタモール62に形成された押付部64、当て部78、及び、モール部80によって、車両幅方向内側に開口する排水溝82がフロントピラー14の長手方向に沿って形成されている。従って、ウィンドシールドガラス16の表面から流れるウォッシャ液や雨水を、この排水溝82によって処理することができるので、フロントピラー14が細幅化されていても、ウィンドシールドガラス16の排水性能を確保することができる。
【0051】
また、縦縁部16Aと対向壁部38との間に、アウタモール62に形成された介在部66が介在されることにより、フロントピラー14に対してウィンドシールドガラス16を位置決めすることができる。従って、例えば、別途、スペーサ等を用いなくても、フロントピラー14に対してウィンドシールドガラス16の位置決めをすることができるので、部材点数の増加を抑制して、コストダウンすることができる。
【0052】
また、アウタモール62には、この介在部66の他に、排水溝82や、当て部78や、位置規制部84などの各機能部が付加されている。従って、より一層コストダウンすることができる。
【0053】
さらに、アウタモール62は、上述のように、縦縁部16Aに一体成形により形成されているので、アウタモール62とウィンドシールドガラス16との組付作業も不要とすることができる。これにより、さらにコストダウンすることができる。
【0054】
また、接着剤70が塗布される延出部68は、その長さが車両幅方向に十分に確保されており、しかも、この延出部68の車両幅方向外側には、介在部66が形成されているので、接着剤70の車両幅方向外側へのはみ出しも抑制することができる。これにより、フロントピラー部100の見栄えをより向上させることができる。
【0055】
また、当て部78は、縦縁部16Aと対向壁部38との間に介在されると共に肉厚が厚く剛性の高い介在部66と、フロントピラー14に固定されたクリップ72との近傍に形成されている。従って、ウェザストリップ56からの反力を当て部78で十分に受け止めることができる。
【0056】
次に、本発明の一実施形態に係る車両用ドア構造の変形例について説明する。
【0057】
図3に示されるように、クリップ72は、アウタモール62に一体に形成されていたが、図4に示されるように、アウタモール62と別体に構成されていても良い。
【0058】
また、この場合に、クリップ72は、アウタモール62に形成された係合溝102に移動可能に係合された係合部104を有していても良い。そして、この係合部104が係合溝102を移動できる範囲において、縦縁部16Aの位置をフロントピラー14に対して調節可能とされていても良い。
【0059】
また、この位置調節可能な構成は、左右のアウタモール62に対して適用されても良く、また、左右のアウタモール62の一方にのみ適用されても良い。
【0060】
また、図3に示されるように、クリップ72がアウタモール62に一体に形成された場合においても、例えば、貫通孔76がクリップ72の外形よりも大径に形成されることにより、縦縁部16Aの位置がフロントピラー14に対して調節可能とされていても良い。
【0061】
また、クリップ72は、アウタモール62にアウトサート成形又は後付けにより一体に組み付けられても良い。
【0062】
また、図5に示されるように、係合溝88は、位置規制部84よりも大径に形成されても良い。また、係合溝88の底部88Aは、位置規制部84の先端84Aと離間されていても良い。このように構成されていると、インナガーニッシュ86が熱膨張又は熱収縮した場合でも、これを吸収することができる。
【0063】
また、図5に示されるように、インナガーニッシュ86の端末部86Aにおける係合溝88よりも車両幅方向外側の部分には、延出部68側へ向かうに従って位置規制部84側へ向かうテーパ面106が形成されていても良い。
【0064】
このように構成されていると、インナガーニッシュ86を車両幅方向内側からフロントピラー14に組み付ける際に、テーパ面106が位置規制部84を容易に乗り越えるので、インナガーニッシュ86のフロントピラー14への組付性を向上させることができる。
【0065】
また、図6に示されるように、この排水溝82の底部82Aは、当て部78によって構成されると共に、縦縁部16Aの裏面16A2の車両幅方向外側への延長線L3よりも車両後側(矢印B側)に位置されていても良い。
【0066】
このように構成されていると、排水溝82の断面積を拡大させることができるので、ウィンドシールドガラス16の排水性能をより確保することができる。
【0067】
また、アウタモール62は、縦縁部16Aに一体成形により一体に取り付けられていたが、予め成形された上で例えば接着や溶着により一体に取り付けられ(後付され)ていても良い。
【0068】
なお、上記変形例のうち組み合わせ可能な変形例は、適宜、組み合わされて実施可能である。
【0069】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能である。
【0070】
次に、特許請求の範囲に記載された発明以外に、上記実施形態から把握できる技術的思想について、以下にその効果と共に記載する。
【0071】
つまり、前記フロントピラーは、フロントシート側へ延びると共に該延びる方向に沿った縦幅よりも該延びる方向から見た横幅の方が狭く形成された閉断面部を有している請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の車両のフロントピラー構造である。
【0072】
この構成によれば、フロントピラーは、横幅が狭く縦長の細幅化された構成とされるので、車室からの視界を向上させることができる。
【符号の説明】
【0073】
10 車両のフロントピラー構造
14 フロントピラー
16 ウィンドシールドガラス
16A 縦縁部
22,24 側壁部
38 対向壁部
40 サイドドア
56 ウェザストリップ
62 アウタモール
64 押付部
66 介在部
68 延出部
72 クリップ(係止部)
76 貫通孔
76A 周縁部(被係止部)
78 当て部
80 モール部
82 排水溝
82A 底部
84 位置規制部
86 インナガーニッシュ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウィンドシールドガラスの縦縁部に沿って長手状に設けられ、前記縦縁部が固定されたフロントピラーと、
前記フロントピラーの車両外側に前記フロントピラーの長手方向に沿って設けられると共に、前記縦縁部に一体に取り付けられたアウタモールと、
前記フロントピラーに形成された被係止部と、
前記アウタモールに設けられると共に、前記被係止部に係止されて、前記アウタモールを前記フロントピラーに固定する係止部と、
を備えた車両のフロントピラー構造。
【請求項2】
前記フロントピラーの車両内側に前記フロントピラーの長手方向に沿って設けられたインナガーニッシュを備え、
前記アウタモールには、前記縦縁部の裏側に設けられると共に、車両幅方向内側に延出された延出部が形成され、
前記延出部の先端部には、前記インナガーニッシュにおける前記縦縁部側の端末部を位置規制する位置規制部が形成されている、
請求項1に記載の車両のフロントピラー構造。
【請求項3】
前記アウタモールには、前記縦縁部を表側から押え付ける押付部と、
前記押付部の車両幅方向外側に形成され、サイドドアに設けられたウェザストリップが車両後側から押し当てられる当て部と、
前記当て部における車両幅方向外側の端部から車両幅方向内側に延出されると共に、その先端側が前記押付部に対する前記縦縁部と反対側に前記押付部と離間して設けられたモール部と、が形成され、
前記押付部、前記当て部、及び、前記モール部によって、車両幅方向内側に開口する排水溝が前記フロントピラーの長手方向に沿って形成されている、
請求項1又は請求項2に記載の車両のフロントピラー構造。
【請求項4】
前記排水溝の底部は、前記当て部によって構成されると共に、前記縦縁部の裏面の車両幅方向外側への延長線よりも車両後側に位置されている、
請求項3に記載の車両のフロントピラー構造。
【請求項5】
前記フロントピラーには、前記縦縁部の裏側に前記縦縁部と対向して設けられた対向壁部が形成され、
前記アウタモールには、前記縦縁部と前記対向壁部との間に介在された介在部が形成されている、
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の車両のフロントピラー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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