説明

車両のルーフ構造

【課題】本発明は、ルーフパネルとルーフリインフォースとの接着性の向上を図るとともに、ルーフリインフォースのコスト低減を図ることを目的とする。
【解決手段】本発明に係る車両のルーフ構造は、ルーフパネル20に車両前後方向に延びるプレスラインである前後ビード22が車幅方向に複数本形成されており、そのルーフパネル20が車幅方向に延びる梁状のルーフリインフォース40によって下方から支えられて、ルーフパネル20とルーフリインフォース40とが接着される構成の車両のルーフ構造であって、ルーフパネル20とルーフリインフォース40とが重なる位置では、ルーフパネル20の前後ビード22が途切れており、ルーフリインフォース40が接着されるルーフパネル20の接着面が平坦に形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーフパネルに車両前後方向に延びるプレスラインである前後ビードが車幅方向に複数本形成されており、そのルーフパネルが車幅方向に延びる梁状のルーフリインフォースによって下方から支えられて、前記ルーフパネルと前記ルーフリインフォースとが接着される構成の車両のルーフ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
前後ビードが設けられたルーフパネルを備える車両が特許文献1に記載されている。前記車両100では、図6に示すように、ルーフパネル102において前後ビード103が形成されている部分がルーフリインフォース105によって下方から支えられている。前記ルーフパネル102は、一般的に、図7(A)に示すように、その裏面102e(接着面102e)が接着剤107によってルーフリインフォース105の平坦な接着面106(図7(B)参照)に接着されている。前記ルーフパネル102は、複数本の前後ビード103によって凹凸を有する波板状に形成されているため、そのルーフパネル102の裏面102e(接着面102e)は凹凸を有している。このため、ルーフパネル102の凹凸の下端面のみがルーフリインフォース105の接着面106に接着されるようになる。したがって、ルーフパネル102のルーフリインフォース105との接着性が低いという問題がある。
この点を改善するために、図8(A)(B)に示すように、ルーフリインフォース105の接着面106をルーフパネル102の接着面102eの形状に合うように凹凸状に形成することが考えられる。これにより、ルーフパネル102の接着面102eとルーフリインフォース105の接着面106との平坦部(段差以外の部分)を接着剤107によって接着することができ、接着性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−294174号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した車両のルーフ構造では、ルーフリインフォース105の接着面106をルーフパネル102の接着面102eの形状に合わせて凹凸状に形成する必要がある。このため、図8(B)に示すように、ルーフリインフォース105の形状が複雑になる。さらに、ルーフリインフォース105をプレス成形する際に、接着面106の凸部の材料が凹部の材料よりも多く必要とされるため、図8(C)に示すように、プレス素材105pの端縁を凹凸状に形成する必要がある。このため、切れ端が多く発生して歩留まりが低下する。
また、ルーフパネル102、ルーフリインフォース105の接着面102e,106の平坦部のみを接着剤107によって接着する構成のため、接着面102e,106の全体を接着する場合と比較して接着性が低下する。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、ルーフパネルとルーフリインフォースとの接着性の向上を図るとともに、ルーフリインフォースのコスト低減を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、ルーフパネルに車両前後方向に延びるプレスラインである前後ビードが車幅方向に複数本形成されており、そのルーフパネルが車幅方向に延びる梁状のルーフリインフォースによって下方から支えられて、前記ルーフパネルと前記ルーフリインフォースとが接着される構成の車両のルーフ構造であって、前記ルーフパネルと前記ルーフリインフォースとが重なる位置では、前記ルーフパネルの前後ビードが途切れており、前記ルーフリインフォースが接着される前記ルーフパネルの接着面が平坦に形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、ルーフパネルとルーフリインフォースとが重なる位置では、前記ルーフパネルの前後ビードが途切れており、そのルーフパネルの接着面が平坦に形成されている。したがって、ルーフリインフォースの接着面もルーフパネルの接着面に合わせて平坦に形成することができる。このため、ルーフパネルとルーフリインフォースとの両接着面間に接着剤を挟んだ状態でその接着剤が接着面全体になじむようになり、ルーフパネルの接着面とルーフリインフォースの接着面の接着性が向上する。
さらに、ルーフリインフォースの接着面を平坦に形成できるため、従来のように接着面を凹凸に形成する場合と比較して、ルーフリインフォースの形状が単純化し、製作が容易になる。さらに、ルーフリインフォースの歩留まりが向上する。このため、ルーフリインフォースのコスト低減を図ることができる。
【0008】
請求項2の発明によると、ルーフパネルにおいて前後ビードが途切れている部分には、接着面と、その接着面に沿って車幅方向に延びる横ビードとが形成されていることを特徴とする。
このため、前後ビードが途切れることにより低下したルーフパネルの強度を横ビードにより補強することができる。
【0009】
請求項3の発明によると、ルーフリインフォースは、断面略U字形の溝状に形成されて、溝開口部分の両端縁にフランジ状の接着面が形成されており、ルーフパネルには、前記ルーフリインフォースの接着面に合うように一対の接着面が車幅方向に延びるように形成されており、前記ルーフパネルの横ビードは、そのルーフパネルの一対の接着面間に形成されていることを特徴とする。
このように、ルーフリインフォースは、断面略U字形の溝状に形成されて、溝開口部分の両端縁にフランジ状の接着面が形成される構成のため、ルーフパネルに横ビードを形成し易くなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、ルーフパネルとルーフリインフォースとの接着性が向上するとともに、ルーフリインフォースのコスト低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態1に係るルーフ構造を備える車両ボディの斜視図である。
【図2】図1のII部拡大図である。
【図3】図2のIII-III矢視断面図である。
【図4】図2のIV-IV矢視断面図である。
【図5】図4のV-V矢視断面図である。
【図6】従来のルーフ構造を備える車両ボディの斜視図である。
【図7】従来の車両のルーフ構造を表す縦断面図(A図)、及びルーフリインフォースの斜視図(B図)である。
【図8】従来の車両のルーフ構造を表す縦断面図(A図)、ルーフリインフォースの斜視図(B図)、及びルーフリインフォースのプレス素材の展開図(C図)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施形態1]
以下、図1から図5に基づいて本発明の実施形態1に係る車両のルーフ構造について説明する。
ここで、図中の前後左右、及び上下は、本実施形態に係るルーフ構造を備える車両の前後左右、及び上下に対応している。
【0013】
<ルーフ構造の概要について>
本実施形態に係る車両のルーフ構造は、ワンボックス車両10におけるルーフ構造である。
ワンボックス車両10のルーフ部分は、図1に示すように、前後に長い角形のルーフパネル20と、そのルーフパネル20の左右両側で前後方向に延びる中空閉断面状のルーフサイドレール30と、図3等に示すように、左右のルーフサイドレール30間に架け渡されてルーフパネル20を下方から支える複数本の梁状のルーフリインフォース40とから構成されている。そして、前記ルーフサイドレール30が、図1に示すように、ボディ15の前後左右、及び中央部分の支柱であるピラー16a,16b,16c,16dによって支持されている。
ルーフサイドレール30は、図3に示すように、アウタパネル32とインナパネル34とから構成されている。アウタパネル32とインナパネル34には幅方向両側にフランジ部32f,34fが形成されており、両パネル32,34のフランジ部32f,34fが互いに接合されることで、ルーフサイドレール30は中空閉断面状に形成される。なお、図3には左側のルーフサイドレール30のみが記載されているが、右側のルーフサイドレール30も左側のルーフサイドレール30と等しい構成で左右対称に形成されている。
【0014】
<ルーフパネル20について>
ルーフパネル20は、図3、及び図5の横断面図に示すように、車幅方向中央位置が最も高くなるように緩やかに上方に湾曲しており、そのルーフパネル20の車幅方向両側(左右両側)の端縁にフランジ部21が形成されている。そして、ルーフパネル20のフランジ部21が、図3に示すように、ルーフリインフォース40の支持板部41と共に、あるいは単独でルーフサイドレール30のフランジ部32f,34fに溶接等により固定されている。
ルーフパネル20はプレス成形品であり、そのルーフパネル20のパネル面に、図1、図2に示すように、車両前後方向に延びるプレスラインである前後ビード22が車幅方向に複数本(図1では6本)形成されている。前後ビード22は、図2に示すように、ルーフパネル20の表面側に突出するように形成されており、それらの前後ビード22の途中部分が各々のルーフリインフォース40と平面的に重なる位置で途切れている。即ち、ルーフパネル20において各々のルーフリインフォース40と重なる位置(重複位置)には前後ビード22が存在せず、その重複位置以外の位置に前後ビード22が形成されている。
そして、ルーフパネル20の重複位置には、前後方向における中央部分に車幅方向に延びる横ビード25が形成されている。また、ルーフパネル20の重複位置の裏面には、図4に示すように、横ビード25を前後方向から挟む位置にルーフリインフォース40のフランジ部43(接着面)が接着される接着面23が形成されている。
ここで、ルーフパネル20には、例えば、厚み寸法が約0.7mmの鋼板が使用される。
【0015】
ルーフリインフォース40は、図2、図4に示すように、横断面形状が略U字形の溝状に形成されており、その溝の開口部分の両端縁にフランジ部43がほぼ水平方向に折り曲げ成形されている。両フランジ部43は、上面がルーフパネル20の接着面23に接着される接着面となっており、そのルーフパネル20の接着面23の形状に合わせて平坦に形成されている。以後、ルーフリインフォース40の両フランジ部43を接着面43と呼ぶことにする。
さらに、ルーフリインフォース40の長手方向両端には、図3に示すように、ルーフパネル20のフランジ部21と共にルーフサイドレール30のフランジ部32f,34fに固定される支持板部41が形成されている。
ここで、ルーフリインフォース40には、例えば、厚み寸法が約0.9mmの鋼板が使用される。
そして、ルーフリインフォース40の接着面43に対してルーフパネル20の接着面23が、図4、図5に示すように、合成ゴムを主成分とした接着剤50によって接着されるようになっている。
【0016】
<ルーフ部分の組付けについて>
先ず、ルーフリインフォース40の両側(前後)の接着面43に接着剤50が塗布された状態で、そのルーフリインフォース40の前後の接着面43がルーフパネル20の重複位置にある前後の接着面23に合わせられる。そして、図5に示すように、ルーフリインフォース40の長手方向両側に位置する支持板部41がルーフパネル20の左右のフランジ部21に位置合わせされた状態で、そのルーフリインフォース40が前記ルーフパネル20に対して押圧される。前述のように、ルーフリインフォース40の接着面43とルーフパネル20の接着面23とは平坦に形成されているため、接着剤50が両接着面23,43間に挟まれた状態で、その接着剤50が両接着面23,43の全体になじむようになる。
このようにして、全てのルーフリインフォース40がルーフパネル20の所定位置に接着された状態で、前記ルーフパネル20のフランジ部21が、図3に示すように、ルーフリインフォース40の支持板部41と共に、あるいは単独でルーフサイドレール30のフランジ部32f,34fに溶接等により固定される。
【0017】
<本実施形態に係るルーフ構造の長所について>
本実施形態に係るルーフ構造によると、ルーフパネル20とルーフリインフォース40とが重なる位置では、ルーフパネル20の前後ビード22が途切れて、そのルーフパネル20の接着面23が平坦に形成されている。このため、ルーフリインフォース40の接着面43もルーフパネル20の接着面23に合わせて平坦に形成することができる(図4、図5参照)。したがって、ルーフパネル20とルーフリインフォース40との両接着面23,43間に接着剤50を挟んだ状態でその接着剤50が接着面23,43全体になじむようになる。このため、ルーフパネル20の接着面23とルーフリインフォース40の接着面43の接着性が向上する。
さらに、ルーフリインフォース40の接着面43を平坦に形成できるため、従来のように接着面を凹凸に形成する場合と比較して、ルーフリインフォース40の形状が単純化し、製作が容易になる。さらに、ルーフリインフォース40の歩留まりが向上する。このため、ルーフリインフォース40のコスト低減を図ることができる。
【0018】
また、ルーフパネル20において前後ビード22が途切れている部分には、接着面23と、その接着面23に沿って車幅方向に延びる横ビード25とが形成されているため、前後ビード22が途切れることにより低下したルーフパネル20の強度を横ビード25により補強することができる。
また、ルーフリインフォース40は、断面略U字形の溝状に形成されて、溝開口部分の両端縁にフランジ状の接着面43が形成される構成のため、ルーフパネル20に横ビード25を形成し易くなる。
さらに、前記横ビード25により雨水をルーフパネル20の左右両側に導き易くなる。
【0019】
<変更例>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。本実施形態では、ルーフリインフォース40を断面略U字形の溝状に形成し、溝開口部分の両端縁にフランジ状の接着面43を設け、ルーフパネル20にはルーフリインフォース40の断面略U字形の溝部分に重なる位置に横ビード25を形成する例を示した。しかし、ルーフリインフォース40を、例えば、角筒状に形成してその上面を接着面43にし、ルーフパネル20にはルーフリインフォース40に沿うように横ビード25を形成する構成でも可能である。さらに、ルーフリインフォース40の本数等は適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0020】
20・・・・ルーフパネル
22・・・・前後ビード
23・・・・接着面
25・・・・横ビード
40・・・・ルーフリインフォース
43・・・・接着面
50・・・・接着剤


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーフパネルに車両前後方向に延びるプレスラインである前後ビードが車幅方向に複数本形成されており、そのルーフパネルが車幅方向に延びる梁状のルーフリインフォースによって下方から支えられて、前記ルーフパネルと前記ルーフリインフォースとが接着される構成の車両のルーフ構造であって、
前記ルーフパネルと前記ルーフリインフォースとが重なる位置では、前記ルーフパネルの前後ビードが途切れており、前記ルーフリインフォースが接着される前記ルーフパネルの接着面が平坦に形成されていることを特徴とする車両のルーフ構造。
【請求項2】
請求項1に記載された車両のルーフ構造であって、
前記ルーフパネルにおいて前後ビードが途切れている部分には、前記接着面と、その接着面に沿って車幅方向に延びる横ビードとが形成されていることを特徴とする車両のルーフ構造。
【請求項3】
請求項2に記載された車両のルーフ構造であって、
前記ルーフリインフォースは、断面略U字形の溝状に形成されて、溝開口部分の両端縁にフランジ状の接着面が形成されており、
前記ルーフパネルには、前記ルーフリインフォースの接着面に合うように一対の接着面が車幅方向に延びるように形成されており、
前記ルーフパネルの横ビードは、そのルーフパネルの一対の接着面間に形成されていることを特徴とする車両のルーフ構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−116420(P2012−116420A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270063(P2010−270063)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】