説明

車両の上部車体構造

【課題】 車両のルーフパネルの中央部に大面積のガラスサンルーフを配置して車室の解放感を高めながら、車体剛性を確保する。
【解決手段】 ルーフパネル11の中央に形成した車体前後方向に長い開口11aの周縁にガラスサンルーフ12を固定したので、車室の解放感を高めることができるだけでなく、車体左右方向に延びる前部ガイドフレーム18、後部ガイドフレーム19および2本の中間ガイドフレーム20,21間に左右に分割された6枚のサンシェードを29L,29Rを左右摺動自在に配置したので、複数列シートの左右に着座した乗員に対して個別に採光することを可能にして快適性を高めることができる。しかも4本のガイドフレーム18〜21は左右のルーフサイドレール13L,13Rに接続されているので、ルーフパネル11に開口11aを形成したことによる車体剛性の低下を回避することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーフパネルの開口に固定したガラスサンルーフの下面を開閉する複数のサンシェードを備えた車両の上部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のルーフパネルに形成した5個の開口にそれぞれガラスサンルーフを取り付け、そのうち最前部のガラスサンルーフの除く4個のガラスサンルーフの下面に開閉自在なサンシェードを配置したものが、下記特許文献1および特許文献2により公知である。
【特許文献1】実用新案登録第2602926号公報
【特許文献2】実用新案登録第2581452号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで上記特許文献1に記載されたものは、5個のガラスサンルーフがルーフパネルの前部および左右両側部に沿うようにU字状に配置されているため、全てのサンシェードを開放してもルーフパネルの中央部に一纏まりになった大面積の採光部を構成することができず、車室の解放感を充分に高めることが困難であった。
【0004】
また上記特許文献2に記載されたものは、一纏まりになった4個のガラスサンルーフの車幅方向両側部が採光部とされ、車幅方向中央部がサンシェードを収納する遮蔽部とされているために採光部がルーフパネルの両側に分かれてしまい、やはり車室の解放感を充分に高めることが困難であった。しかもルーフにガラスサンルーフを装着する大面積の開口を形成したことにより、ルーフパネルの剛性が低下する可能性があった。
【0005】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、車両のルーフパネルの中央部に大面積のガラスサンルーフを配置して車室の解放感を高めながら、車体剛性を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、左右両側縁がルーフサイドレールに接続されたルーフパネルと、ルーフパネルの中央に形成した前後方向に長い開口の周縁に固定されたガラスサンルーフと、車体左右方向に延びて開口の前縁および左右のルーフサイドレールに接続された前部ガイドフレームと、車体左右方向に延びて開口の後縁および左右のルーフサイドレールに接続された後部ガイドフレームと、開口の前後方向中間部を横切るように車体左右方向に延びて左右のルーフサイドレールに接続された少なくとも1本の中間ガイドフレームと、前部ガイドフレームおよび中間ガイドフレーム間、ならびに後部ガイドフレームおよび中間ガイドフレーム間のそれぞれに左右摺動自在に支持されてガラスサンルーフの下面を覆う左右のサンシェードと、開口および左右のルーフサイドレール間に形成され、ガラスサンルーフの下面を開放したサンシェードを収納する左右のサンシェード収納部とを備えたことを特徴とする車両の上部車体構造が提案される。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の構成によれば、ルーフパネルの中央に形成した車体前後方向に長い開口の周縁にガラスサンルーフを固定したので、車室の解放感を高めることができるだけでなく、車体左右方向に延びる前部ガイドフレーム、後部ガイドフレームおよび少なくとも1本の中間ガイドフレーム間にそれぞれ左右に分割されたサンシェードを左右摺動自在に配置したので、少なくとも4枚のサンシェードをガラスサンルーフで下面を選択的に開閉することで、複数列シートの左右に着座した乗員に対して個別に採光することを可能にして快適性を高めることができる。しかも前部ガイドフレーム、後部ガイドフレームおよび中間ガイドフレームは左右のルーフサイドレールに接続されており、かつ前部ガイドフレームおよび後部ガイドフレームはルーフパネルの開口の前縁および後縁に接続されているので、ルーフパネルに開口を形成したことによる車体剛性の低下を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0009】
図1〜図7は本発明の一実施例を示すもので、図1は車両の全体斜視図、図2は図1の2方向矢視図、図3は図2の3−3線断面図、図4は図2の4−4線断面図、図5は図3の5部拡大図、図6は図5の6−6線断面図、図7はガイドフレームおよびサンシェードの斜視図である。
【0010】
図1および図2に示すように、RV(リクレーショナル・ビークル)型の車両Vのルーフパネル11の中央部に車体前後方向に長い矩形状の開口11aが形成されており、そこにガラスサンルーフ12が固定される。左右のルーフサイドレール13L,13Rは、フロントガラス14の上縁に沿う前部クロスメンバ15と、リヤガラス16の上縁に沿う後部クロスメンバ17と、開口11aの前縁に沿う前部ガイドフレーム18と、開口11aの後縁に沿う後部ガイドフレーム19と、開口11aを横切る第1、第2中間ガイドフレーム20,21とによって相互に接続される。前部ガイドフレーム18、後部ガイドフレーム19および第1、第2中間ガイドフレーム20,21は略等間隔で車体左右方向に平行に延びており、それらの左端寄りの位置と右端寄りの位置とが車体前後方向に延びる補強フレーム22L,22Rによって接続される。
【0011】
図3〜図5から明らかなように、左右のルーフサイドレール13L,13Rはアウターメンバ23およびインナーメンバ24を閉断面に溶接してなり、その車幅方向内端にルーフパネル11の側縁が溶接されるとともに、インナーメンバ24の下面に溶接したガセット25…の車幅方向内端と、インナーメンバ24の内側面との間に前部ガイドフレーム18、後部ガイドフレーム19および第1、第2中間ガイドフレーム20,21の端部が挟まれて溶接され、かつ補強フレーム22L,22Rの上面がルーフパネル11の下面に溶接される。
【0012】
ルーフパネル11の下面とルーフサイドレール13L,13Rのインナーメンバ24の下面とは、ルーフパネル11の開口11aを除く部分がルーフライニング26によって覆われる。ルーフサイドレール13L,13Rのアウターメンバ23とルーフパネル11の側縁との間にモール27が装着され、ルーフパネル11の開口11aとガラスサンルーフ12の周縁との間にダムラバー28が装着される。
【0013】
図6および図7を参照すると明らかなように、前部ガイドフレーム18、後部ガイドフレーム19および第1、第2中間ガイドフレーム20,21は断面H型の部材であって、それらの前後両側縁に形成されたガイド溝a,bにサンシェード29L…,29R…が左右摺動自在に係合する。即ち、ルーフパネル11の開口11aは前部ガイドフレーム18、後部ガイドフレーム19および第1、第2中間ガイドフレーム20,21によって前、中、後の三つの領域に区画されており、各々の領域に車体中心線Lを挟むように一対のサンシェード29L,29Rが左右対称に配置される。
【0014】
サンシェード29L,29Rは合成樹脂の板材で構成されており、その相対向する車幅方向内端部に沿って下向きに突出する断面三角形の突出部29a,29aが形成されるとともに、突出部29a,29aの下面中央に上向きに凹んだ手掛け29b,29bが形成される。またサンシェード29L,29Rの前後縁の各々では、閉位置用ノッチ29c,29cと開位置用ノッチ29d,29dとが形成される。ルーフパネル11の開口11aの側縁の近傍において、前部ガイドフレーム18、後部ガイドフレーム19および第1、第2中間ガイドフレーム20,21のガイド溝a,bを仕切る隔壁cに、スプリング30…の弾発力で突出方向に付勢されたストッパピン31…が装着される。
【0015】
左右のサンシェード29L,29Rを閉じたとき、それらの相互に対向する突出部29a,29aが車体中心線L上で当接し、このとき左右のサンシェード29L,29Rの前後縁に形成した閉位置用ノッチ29c,29cに前後のストッパピン31,31がスプリング30,30の弾発力で係合することで、振動等によるサンシェード29L,29Rの移動が阻止される。
【0016】
この状態からサンシェード29L,29Rを開くべく、突出部29a,29aの下面に設けた手掛け29b,29bに指を掛けて左右方向に引くと、例えば中間列のサンシェード29L,29Rの場合には、その前縁が第1中間ガイドフレーム20の後面のガイド溝bに案内され、その後縁が第2中間ガイドフレーム21の前面のガイド溝aに案内されることで、ガラスサンルーフ12の下面を覆う状態からルーフライニング26とルーフパネル11との間に形成されたサンシェード収納部32L,32R(図3参照)に収納される状態へと左右方向に摺動する。サンシェード29L,29Rがサンシェード収納部32L,32Rに完全に収納されると、サンシェード29L,29Rの前後縁に形成した開位置用ノッチ29d,29dに前後のストッパピン31,31がスプリング30,30の弾発力で係合することで、振動等によるサンシェード29L,29Rの移動が阻止される。
【0017】
サンシェード29L,29Rを閉位置から開位置への移動開始時、あるいは開位置から閉位置への移動開始時には、閉位置用ノッチ29c,29cあるいは開位置用ノッチ29d,29dの傾斜面d(図6参照)がストッパピン31,31の先端を押すことで、ストッパピン31,31をスプリング30,30の弾発力に抗して後退させ、閉位置用ノッチ29c,29cあるいは開位置用ノッチ29d,29dを乗り越すことができる。
【0018】
以上のように、前列シート、中央列シートおよび後列シートに対応して、左右一対のサンシェード29L,29Rが前後方向に3列に配置されており、かつ左右のサンシェード29L,29Rを各々独立して開閉することができるので、全ての乗員に対して個別に採光することを可能にして快適性を高めることができる。しかも全てのサンシェード29L…,29R…を開放するとルーフパネル11の中央に一纏まりになった大面積の採光部が形成されるので、車室の解放感を効果的に高めることができる。
【0019】
また車体左右方向に延びる前部ガイドフレーム18、後部ガイドフレーム19および第1、第2中間ガイドフレーム20,21の両端部を左右のルーフサイドレール13L,13Rに接続し、かつ前部ガイドフレーム18および後部ガイドフレーム19をルーフパネル11の開口11aの前縁および後縁に接続したので、ルーフパネル11に開口11aを形成したことによる車体剛性の低下を回避することができる。
【0020】
更に、車体左右方向に延びる前部ガイドフレーム18、後部ガイドフレーム19および第1、第2中間ガイドフレーム20,21を車体前後方向に延びる左右の補強フレーム22L,22Rで一体に結合したので車体剛性が効果的に高められるだけでなく、サブアセンブリとして予め組み立てた前部ガイドフレーム18、後部ガイドフレーム19、第1、第2中間ガイドフレーム20,21および補強フレーム22L,22Rを一括して左右のルーフサイドレール13L,13Rに接続することを可能にして組み付け性の向上に寄与することができる。
【0021】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0022】
例えば、実施例では前部ガイドフレーム18および後部ガイドフレーム19の間に第1、第2中間ガイドフレーム20,21を設けているが、中間ガイドフレームの数は2本に限定されず、1本あるいは3本以上であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】車両の全体斜視図
【図2】図1の2方向矢視図
【図3】図2の3−3線断面図
【図4】図2の4−4線断面図
【図5】図3の5部拡大図
【図6】図5の6−6線断面図
【図7】ガイドフレームおよびサンシェードの斜視図
【符号の説明】
【0024】
11 ルーフパネル
11a 開口
12 ガラスサンルーフ
13L ルーフサイドレール
13R ルーフサイドレール
18 前部ガイドフレーム
19 後部ガイドフレーム
20 第1中間ガイドフレーム(中間ガイドフレーム)
21 第2中間ガイドフレーム(中間ガイドフレーム)
29L サンシェード
29R サンシェード
32L サンシェード収納部
32R サンシェード収納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右両側縁がルーフサイドレール(13L,13R)に接続されたルーフパネル(11)と、
ルーフパネル(11)の中央に形成した車体前後方向に長い開口(11a)の周縁に固定されたガラスサンルーフ(12)と、
車体左右方向に延びて開口(11a)の前縁および左右のルーフサイドレール(13L,13R)に接続された前部ガイドフレーム(18)と、
車体左右方向に延びて開口(11a)の後縁および左右のルーフサイドレール(13L,13R)に接続された後部ガイドフレーム(19)と、
開口(11a)の前後方向中間部を横切るように車体左右方向に延びて左右のルーフサイドレール(13L,13R)に接続された少なくとも1本の中間ガイドフレーム(20,21)と、
前部ガイドフレーム(18)および中間ガイドフレーム(20,21)間、ならびに後部ガイドフレーム(19)および中間ガイドフレーム(20,21)間のそれぞれに左右摺動自在に支持されてガラスサンルーフ(12)の下面を覆う左右のサンシェード(29L,29R)と、
開口(11a)および左右のルーフサイドレール(13L,13R)間に形成され、ガラスサンルーフ(12)の下面を開放したサンシェード(29L,29R)を収納する左右のサンシェード収納部(32L,32R)と、
を備えたことを特徴とする車両の上部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−151084(P2006−151084A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−341821(P2004−341821)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】