車両の乗員保護装置
【課題】ラップベルト部と乗員との間で膨張するエアバッグの位置ずれを好適に抑制することのできる乗員保護装置を提供する。
【解決手段】乗員保護装置20は、車両の衝突時においてシートベルトのタングが装着されるバックル8と乗員Pとの間で膨張するエアバッグ22を備えている。エアバッグ22は、シートベルトのラップベルト部6bを境として、膨張時において車両の進行方向を基準とした前方部分22aと後方部分22bとの容積比が3/7〜7/3となるように形成されるとともに、少なくともシート1の背もたれ部3の前端部から座部2の略中央にまで膨張するように形成されている。
【解決手段】乗員保護装置20は、車両の衝突時においてシートベルトのタングが装着されるバックル8と乗員Pとの間で膨張するエアバッグ22を備えている。エアバッグ22は、シートベルトのラップベルト部6bを境として、膨張時において車両の進行方向を基準とした前方部分22aと後方部分22bとの容積比が3/7〜7/3となるように形成されるとともに、少なくともシート1の背もたれ部3の前端部から座部2の略中央にまで膨張するように形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両が衝突したときに、車両の乗員を保護する乗員保護装置に関し、特に乗員の腰部周辺の保護に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1又は2に記載されるように、車両の衝突時などにおいて、乗員の腰部周辺で膨張するエアバッグを備えた乗員保護装置がある。
特許文献1の乗員保護装置は、乗員の腰部前方においてシートの一側方から他側方に水平方向に架け渡されるシートベルトのラップベルト部にエアバッグモジュールが装着されている。このラップベルト部は、乗員の体を直接支持する第1部分と、この第1部分よりも乗員の体から離れて乗員の体を支持するとともにエアバッグモジュールを有する第2部分とを備えている。そして、車両の衝突時などには、エアバッグが第2部分から乗員の腰部前方で展開膨張して乗員を保護する。また、この乗員保護装置では、第2部分がエアバッグの反力により乗員から離れても、これにより第1部分が乗員をより強固にシートに締め付けるようになるため、乗員がシートベルトから潜り抜ける、いわゆるサブマリン現象を防止することができる。
【0003】
特許文献2に記載の乗員保護装置においても、エアバッグモジュールがラップベルト部に装着されている。この乗員保護装置では、エアバッグが、乗員の前方において乗員の体に沿うように、乗員の胴部に対応する胴部分と乗員の腿部に対応する腿部分とその間の腰部分とを有してL字状に展開膨張するように構成されている。
【特許文献1】特開2002−539012号公報
【特許文献2】特表2003−519040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1及び2の乗員保護装置は、エアバッグが乗員の腰部周辺で膨張するものの、いずれも乗員の腰部の前側を保護するためのものである。したがって、これらの乗員保護装置では、乗員の腰部の側方を保護することが困難であり、乗員の腰部をシートベルトのバックル、コンソールボックス及びドアトリムなどから十分に保護することができない虞がある。
【0005】
そこで、車両の衝突時に、乗員の腰部側方において膨張するエアバッグとして、例えば、乗員とシートベルトのラップベル部との間で膨張展開するエアバッグが考えられる。しかしながら、このようなエアバッグは膨張時にラップベルト部に押圧されるため、ラップベルト部の前方や後方へ押し出されるおそれがある。すなわち、エアバッグの形状や大きさによっては、ラップベルト部による位置ずれが生じて、乗員の腰部側方を好適に保護することができないおそれがある。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、乗員の腰部側方において、乗員とラップベルト部との間で膨張するエアバッグの位置ずれを好適に抑制することのできる乗員保護装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、車両の衝突時に、シートの一側方から他側方にかけて乗員の腰部前方を水平方向に架け渡されるシートベルトのラップベルト部と乗員との間において、前記一側方及び前記他側方の少なくとも何れかの側方で膨張するエアバッグを備えた車両の乗員保護装置であって、前記エアバッグは、シートベルトのラップベルト部を境として、膨張時において車両の進行方向を基準とした前方部分と後方部分との容積比が3/7〜7/3となるように形成されることを要旨とする。
【0008】
シートベルトのラップベルト部は、シートの一側方から他側方にかけて乗員の腰部前方を水平方向に架け渡される。ここで、乗員の腰部側方で膨張するエアバッグにおいて、このラップベルト部を境とする車両の進行方向を基準とした前方部分と後方部分との容積比が、例えば1:9(1/9)や2:8(2/8)などであると、このエアバッグがラップベルト部に押圧されてラップベルト部の後方へ押し出されるおそれがある。一方、このようなエアバッグにおいて、ラップベルト部を境とする車両の進行方向を基準とした前方部分と後方部分との容積比が、例えば9:1(9/1)や8:2(8/2)などであると、このエアバッグがラップベルト部に押圧されてラップベルト部の前方へ押し出されるおそれがある。すなわち、エアバッグの膨張時において、ラップベルト部に対して、このエアバッグが前方よりや後方よりに大きく偏っていると、エアバッグが前方や後方に押し出されるおそれがある。
【0009】
これに関し、本願発明者らの鋭意研究の結果、このようなエアバッグでは、ラップベルト部を境とする車両の進行方向を基準とした前方部分と後方部分との容積比が3:7〜7:3となれば、エアバッグがラップベルト部に押圧されても、このエアバッグがラップベルト部の前方や後方へ押し出されることなく、安定した状態で膨張することが見出された。つまり、上記構成によれば、ラップベルト部の押圧によるエアバッグの位置ずれを好適に抑制することができるため、乗員の腰部側方を好適に保護することができる。
【0010】
また、上記の構成によれば、ラップベルト部は、エアバッグの前後方向において、相対的に前側にも後ろ側にも大きく偏っておらず、中央部近傍に配置されることとなる。そして、エアバッグの中央部近傍は通常最も大きく膨張するため、ラップベルト部による乗員の拘束が、エアバッグの膨張時により効果的に行うことができる。また、例えば車両の前後方向に衝突時にこのエアバッグを膨張展開させるようにした場合、ラップベルト部がエアバッグに対して相対的に前側に移動したり後側に移動したりする場合があるが、ラップベルト部は、なおもエアバッグの中央部近傍に配置されるため、エアバッグがラップベルト部から抜け出すことがない。
【0011】
請求項2に記載の発明は、車両の衝突時に、シートの一側方から他側方にかけて乗員の腰部前方を水平方向に架け渡されるシートベルトのラップベルト部と乗員との間において、前記一側方及び前記他側方の少なくとも何れかの側方で膨張するエアバッグを備えた車両の乗員保護装置であって、前記エアバッグは、シートベルトのラップベルト部に対応する部位において膨張時に凹部が形成されることを要旨とする。
【0012】
シートベルトのラップベルト部は、シートの一側方から他側方にかけて乗員の腰部前方を水平方向に架け渡される。ここで、乗員の腰部側方で膨張するエアバッグが、ラップベルト部と対応する部位において、例えば突出していたり平坦に形成されていたりすると、このラップベルト部がエアバッグの表面上を相対的に滑りやすくなり、エアバッグがラップベルト部の前方や後方へ押し出されるおそれがある。この点、上記構成によれば、エアバッグの膨張時に形成される凹部にシートベルトのラップベルト部が嵌りこむため、エアバッグがラップベルト部を潜り抜けて前方や後方へ押し出されるおそれがない。すなわち、ラップベルト部によるエアバッグの位置ずれを好適に抑制することができるため、乗員の腰部側方を好適に保護することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、車両の衝突時に、シートの一側方から他側方にかけて乗員の腰部前方を水平方向に架け渡されるシートベルトのラップベルト部と乗員との間において、前記一側方及び前記他側方の少なくとも何れかの側方で膨張するエアバッグを備えた車両の乗員保護装置であって、前記エアバッグは、少なくともシートの背もたれ部の車両進行側の端部からシートの座部の車両進行方向を基準とした略中央にまで膨張するように形成されることを要旨とする。
【0014】
上記の構成において、このエアバッグが膨張するシートの背もたれ部の車両進行方向側の端部からシートの座部の略中央までとは、乗員が例えば標準的な体型の大人である場合、この乗員の腰部後端から大腿部中央に対応している。すなわち、このエアバッグは、乗員の腰部側方を比較的広範囲に亘って覆うほどの大きさに形成されているため、シートベルトのラップベルト部がこのエアバッグに対して相対的に移動しても、エアバッグがラップベルト部を完全に潜り抜けて前方や後方へ押し出されることがない。これにより、ラップベルト部によるエアバッグの位置ずれを好適に抑制することができるため、乗員の腰部側方を好適に保護することができる。
【0015】
また、上記の構成によれば、ラップベルト部は、エアバッグの前後方向において、相対的に前側にも後ろ側にも大きく偏っておらず、中央部近傍に配置されることとなる。そして、エアバッグの中央部近傍は通常最も大きく膨張するため、ラップベルト部による乗員の拘束が、エアバッグの膨張時により効果的に行うことができる。また、例えば車両の前後方向に衝突時にこのエアバッグを膨張展開させるようにした場合、ラップベルト部がエアバッグに対して相対的に前側に移動したり後側に移動したりする場合があるが、ラップベルト部は、なおもエアバッグの中央部近傍に配置されるため、エアバッグがラップベルト部から抜け出すことがない。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記エアバッグのシートベルトのラップベルト部に対応する部位の高さは乗員がシートベルトを装着したときのラップベルト部の高さよりも低く形成されることを要旨とする。
【0017】
上記構成によれば、エアバッグが膨張してもラップベルト部を押し上げることがないため、ラップベルト部が乗員の体から離間することがない。これにより、乗員がシートベルトを潜り抜ける、いわゆるサブマリン現象が起きることを抑制することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れかに記載の発明において、前記エアバッグは、膨張前にシートベルトのタングが装着されるバックルを有するバックル装置に収納されることを要旨とする。
【0019】
上記構成によれば、エアバッグは、バックルとラップベルト部と乗員との間で膨張する。そして、エアバッグは、膨張時に確実に乗員の腰部側方とバックル装置との間で膨張するため、乗員の腰部側方をバックルなどから確実に保護することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、乗員とラップベルト部との間で膨張するエアバッグの位置ずれを好適に抑制し、乗員の腰部側方を好適に保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、本発明の車両の乗員保護装置20を具体化した第1実施形態を図1〜図4に基づき説明する。なお、以下の説明では、車両の進行方向を前方と記載し、それを基準に前、後、上、下、左、右を規定し、シートの場合には、車両に装備された状態を基準に、車両の前記各方向と対応して前、後、上、下、左、右を規定している。
【0022】
図1は、本実施形態の車両の乗員保護装置20が適用された車両用シートの斜視図である。同図1に示すように、車両(図示略)の室内に配置された車両用シート(以下、単にシートと示す)1は、乗員の臀部から大腿部を支える座部2と、リクライニング可能に構成された背もたれ部3と、乗員の頭部を支えるヘッドレスト4と、シートベルト5を備えている。
【0023】
シートベルト5は、シート1に着座した乗員を拘束するために設けられた3点固定式シートベルトである。シートベルト5は、より詳細には、乗員を拘束する帯状のウェビング6と、該ウェビング6の長手方向に対して移動自在に取り付けられたタング7と、シート1の側方に配置されてタング7が装着されるバックル装置10とを備えている。ウェビング6の一端は、シート1においてバックル装置10が配設されていない側の側面に固定され、その他端はシートベルト巻取り装置(図示略)により巻き取られる構造とされており、拘束部分の長さが伸縮自在とされている。また、タング7は、ウェビング6が挿通されて該ウェビング6に沿って摺動する摺動部7aと、バックル装置10のバックル8と係合する係合部7bとを備えている。そして、この構成により、乗員の体型に応じてウェビング6の長さが適宜変更されるとともにウェビング6に対してタング7が適宜摺動し、タング7からシートベルト巻取り装置までの乗員の肩部を拘束するショルダベルト部6aと、ウェビング6の一端からタングまでの乗員の腰部を拘束するラップベルト部の長さが適宜変更される。すなわち、ショルダベルト部6aは、乗員着座時に肩から斜めに胸の前を経由して腰部の側方に架け渡されて乗員の肩部を拘束し、ラップベルト部6bは、シート1の一側方(図示しないアンカー側)から他側方(バックル8側)にかけて乗員の腰部前方を水平方向に架け渡されて乗員の腰部を拘束する。
【0024】
バックル装置10は、タング7と係合する箱状のバックル8と、シート1の側方にバックル装置10を取り付けるためのリテーナ9とを備えている。前記バックル8の一端には、シートベルト5のタング7を挿入されて係合される挿入口8aが形成されている。また、挿入口8aと反対側の端部には、板状の接続部8bが配設されている。そして、リテーナ9は、シート1の側面に固定されており、このリテーナ9に対して前記接続部8bの端部が回転自在に取り付けられている。
【0025】
そして、このバックル装置10には、乗員保護装置20が設けられている。図2は、このバックル装置10を拡大して示した図であり、(a)が斜視図、(b)が側面図である。この図2に示すように、乗員保護装置20は、ガス発生源であるインフレータ21と膨張可能な布製のエアバッグ22とを備えている。インフレータ21は、その内部に図示しないイグナイターとガス発生剤とを備えてエアバッグ22内に供給するガスを発生させるものであり、軸方向に長い円柱状に形成されて車両の前後方向が長手方向となるようにバックル装置10のリテーナ9に固定されている。また、エアバッグ22は、膨張前にはバックル8の内部においてシート1側寄りに収納されており、膨張時には、バックル8のシート1側の面からシート1に向って展開するように構成されている。具体的に、図示を省略するが、エアバッグ22は、膨張時に瞬時に膨張可能となるように、膨張前には例えば蛇腹に折り畳まれてバックル8内にコンパクトにまとまって収納されている。そして、インフレータ21は、袋状のエアバッグ22にガスを供給するための供給管21aを介してエアバッグ22と連結されている。
【0026】
次に、乗員保護装置20の作用について説明する。図3は、乗員の着座時におけるシート1の正面図であり、図4は、乗員の着座時におけるシート1の側面図である。また、図3及び図4の(a)はエアバッグ22の膨張前の状態を、(b)はエアバッグ22の膨張時の状態をそれぞれ示している。なお、図4に示すように、シート1のバックル装置10側の側方には、コンソールボックス30が設けられている。
【0027】
図示しない衝突検出手段(例えば、異常加速度検出手段)が衝突(異常加速度)を検出すると、図示しない制御手段がインフレータ21を作動させ、インフレータ21から高圧ガスがエアバッグ22内に供給される。なお、この際の衝突の検出は、車両の側面衝突のみを検出してもよいし、側面衝突及び前面衝突の何れをも検出するようにしてもよい。これにより、エアバッグ22の折り目が展開し、膨張し始める。そして、図3及び図4の(b)に示すように、エアバッグ22は、膨張時にバックル8から飛び出して、バックル8と乗員Pとラップベルト部6bと座部2との間にできる空間で展開し膨張する。エアバッグ22は、より詳細には、膨張時にバックル8の側面を覆うとともに、その前後方向の長さはシート1の背もたれ部3における前側の端部からシート1の座部2における略中央までの大きさとなるように形成されている。なお、エアバッグ22のこの前後方向の長さは、乗員Pが例えば標準的な体型の大人である場合、この乗員の腰部後端から大腿部中央に対応している。このようにエアバッグ22が、乗員の腰部側方が比較的広範囲に亘って覆う大きさに形成されているために、ラップベルト部6bがこのエアバッグ22に対して相対的に移動しても、このエアバッグ22がラップベルト部6bを完全に潜り抜けることがない。また、エアバッグ22の膨張時における高さは、背もたれ部3側から車両前方側にかけて漸次低くなるように形成されており、ラップベルト部6bに対応する部位では、このラップベルト部6bの高さと略同じ高さに形成されている。これにより、エアバッグ22はラップベルト部6bにより若干押圧される。
【0028】
さらに、このエアバッグ22は、図4(b)の線Aに示すラップベルト部6bによる境界線を境として、座部2の前方側へ膨張展開する前方部分22aと、背もたれ部3側に膨張展開する後方部分22bとに分けて考えた場合、この前方部分22aと後方部分22bとの容積比が例えば4:6(4/6)となるように形成されている。すなわち、エアバッグ22は、ラップベルト部6bを境として若干後方側に偏っているものの、エアバッグ22が後方側に大きく偏っているわけではない。したがって、エアバッグ22がラップベルト部6bに押圧されても、その押圧力により後方へ押し出されることはない。
【0029】
なお、本願発明者らの鋭意研究の結果、エアバッグ22において、このラップベルト部6bを境とする前方部分22aと後方部分22bとの容積比が3/7〜7/3であれば、エアバッグ22は膨張時に安定した状態を保つことができることが見出された。したがって、エアバッグ22の前方部分22aと後方部分22bとの容積比は4/6に限定されるものではなく、この容積比を例えば乗員の保護したい部位などに応じて3/7〜7/3となる範囲内において適宜変更して設定してもよい。つまり、乗員Pの大腿部中央ではなく、膝側まで保護したい場合は、エアバッグ22がシート1の座部2の前側の端部まで膨張展開するように形成し、この場合は、この前方部分22aと後方部分22bとの容積比が例えば、7/3となるようしてもよい。
【0030】
このようにして、上記乗員保護装置20では、エアバッグ22がラップベルト部6bにより押圧されても、このエアバッグ22の位置ずれを好適に抑制することができる。したがって、このエアバッグ22により乗員の腰部側方をバックル8やコンソールボックス30などから好適に保護することができる。
【0031】
以上詳述したように、本実施形態は、以下の効果を有する。
(1)上記実施形態の乗員保護装置20では、車両の衝突時にバックル8と乗員との間で膨張するエアバッグ22を、シート1の背もたれ部3の前側の端部からシート1の座部2の略中央にまで膨張するように形成している。そして、このエアバッグ22は、乗員が例えば標準的な体型の大人である場合、乗員の腰部後端から大腿部中央に対応しており、このように比較的大きく形成されているために、ラップベルト部6bがこのエアバッグ22に対して相対的に移動してもエアバッグ22がラップベルト部6bを完全に潜り抜けて前方や後方へ押し出されることがない。このように、この乗員保護装置20では、エアバッグ22が乗員の腰部側方を比較的広範囲に亘って覆うことができるとともに、ラップベルト部6bによるエアバッグ22の位置ずれを好適に抑制することができることから、乗員の腰部側方を確実に保護することができる。
【0032】
また、図4に示すように、ラップベルト部6bは、エアバッグ22の前後方向において、相対的に前側にも後ろ側にも大きく偏っておらず、中央部近傍に配置されることとなる。そして、エアバッグ22の中央部近傍は通常最も大きく膨張するため、ラップベルト部6bによる乗員Pの拘束が、エアバッグ22の膨張時により効果的に行うことができる。また、例えば車両の前後方向に衝突時にこのエアバッグ22を膨張展開させるようにした場合、ラップベルト部6bがエアバッグ22に対して相対的に前側に移動したり後側に移動したりする場合もあるが、ラップベルト部6bは、なおもエアバッグ22の中央部近傍に配置されるため、エアバッグ22がラップベルト部6bから抜け出すことがない。
【0033】
(2)上記実施形態の乗員保護装置20では、車両の衝突時にバックル8と乗員との間で膨張するエアバッグ22を、シートベルト5のラップベルト部6bを境として前方部分22aと後方部分22bとの容積比を3:7(3/7)〜7:3(7/3)となるように形成している。具体的に、上記実施形態では、エアバッグ22のこの容積比を4/6としている。したがって、エアバッグ22は、ラップベルト部6bを境として後方側に若干偏っているものの、前方や後方に大きく偏っていないため、エアバッグ22が後方側に押し出されるおそれがない。すなわち、エアバッグ22がラップベルト部6bに押圧されても、安定した状態で膨張することができるため、ラップベルト部6bの押圧によるエアバッグ22の位置ずれを好適に抑制することができ、結果的に乗員の腰部側方を好適に保護することができる。
【0034】
(3)上記実施形態の乗員保護装置20では、前記エアバッグ22が、膨張前にバックル装置10のバックル8に収納するようにしている。これにより、エアバッグ22は、膨張時にバックル8の側面を覆うように乗員Pの腰部側方で膨張することから、乗員の腰部側方側に配置されるこのバックル8やコンソールボックス30などから確実に保護することができる。
【0035】
(第2実施形態)
次に、本発明の車両の乗員保護装置120を具体化した第2実施形態を図5に基づき説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同じ部材については、同じ符号を用いて説明する。
【0036】
図5は、本実施形態の乗員保護装置120を示す斜視図である。この図5に示すように、本実施形態の乗員保護装置120では、エアバッグ122の膨張時における形状が、第1実施形態のエアバッグ122と異なっている。具体的に、上記第1実施形態では、エアバッグ22の高さが背もたれ部3側から車両前方側にかけて漸次低くなり、ラップベルト部6bに対応する部位が平坦に形成されていたことに代わり、本実施形態では、エアバッグ122のラップベルト部6bに対応する部位に膨張時において凹部122cが形成されている。また、エアバッグ122におけるこのラップベルト部6bに対応する凹部122cの高さは、乗員がシートベルト5を装着したときのラップベルト部6bの高さよりも低く形成されている。
【0037】
ここで、このエアバッグ122において、ラップベルト部6bに対応する部位が突出していたり平坦に形成されていたりすると、ラップベルト部6bがエアバッグ122の表面上を相対的に滑りやすくなり、エアバッグ122がラップベルト部6bの前方や後方へ押し出されるおそれがある。しかしながら、本実施形態では、エアバッグ122の膨張時にラップベルト部6bがこの凹部122cに嵌りこむため、エアバッグ122がラップベルト部6bを潜り抜けて前方や後方へ押し出されることを抑制することができる。すなわち、ラップベルト部6bによるエアバッグ122の位置ずれを好適に抑制することができるため、乗員の腰部側方を好適に保護することができる。
【0038】
つまり、本実施形態では、エアバッグ122にこの凹部122cを形成しているために、第1実施形態のように、エアバッグ122自体の大きさや、ラップベルト部6bを境とした容積比を調整することなく、エアバッグ122の位置ずれを抑制することができる。すなわち、エアバッグ122がラップベルト部6bを境として前方部分122aと後方部分122bとの容積比が例えば2/8となって後方側に大きく偏っていたり、例えば、エアバッグ122が座部の前後方向の略中央まで達していなかったりしても、エアバッグの位置ずれを好適に抑制することができる。
【0039】
また、エアバッグ122のこの凹部122cの高さを、ラップベルト部6bの高さよりも低く形成したため、エアバッグ122が膨張してもラップベルト部6bを押し上げることがない。すなわち、ラップベルト部6bは、エアバッグ122の膨張により乗員の体から離間することなく、乗員を確実に拘束することができるため、乗員がシートベルト5を潜り抜ける、いわゆるサブマリン現象が起きることを抑制することができる。
【0040】
以上詳述したように、本実施形態は、第1実施形態の効果(3)に加えて、以下の効果を有する。
(4)上記実施形態の乗員保護装置120では、エアバッグ122のラップベルト部6bに対応する部位に膨張時に凹部122cが形成されるようにしている。これにより、エアバッグ122の膨張時に形成される凹部122cにラップベルト部6bが嵌りこむため、エアバッグ122がラップベルト部6bを潜り抜けて前方や後方へ押し出されるおそれがない。したがって、ラップベルト部6bによるエアバッグ122の位置ずれを好適に抑制することができるため、乗員の腰部側方を好適に保護することができる。
【0041】
(5)上記実施形態の乗員保護装置120では、エアバッグ122のラップベルト部6bに対応する部位の高さが、乗員がシートベルトを装着したときのラップベルト部6bの高さよりも低く形成している。これにより、エアバッグ122が膨張してもラップベルト部6bを押し上げることがないため、ラップベルト部6bが乗員の体から離間することがなく、乗員がシートベルトを潜り抜ける、いわゆるサブマリン現象が起きることを抑制することができる。
【0042】
なお、本発明は次に示す変形例に具体化することができる。
・図6は、第1の変形例の乗員保護装置220を示す斜視図である。上記第1実施形態では、バックル装置10のバックル8に膨張前のエアバッグ22を収納するようにしているが、この変形例では、図6に示すように、バックル装置10が膨張前のエアバッグ22を収納するためのケース23をバックル8とは別部材として備えている。そして、このケース23は、例えばバックル装置210の接続部8bのシート1側に取り付けられている。このような構成により、バックル装置210のバックル8は、従来から用いているバックルをそのまま適用することができる。また、本実施形態においても、バックル装置210からエアバッグ22が飛び出すことから、膨張時に確実に乗員の腰部側方とバックル装置210との間で膨張し、乗員の腰部側方をバックル8などから確実に保護することができる。
【0043】
・図7は、第2の変形例の乗員保護装置320を示す斜視図である。上記第1実施形態では、バックル装置10からエアバッグ22が展開膨張するようにしているが、この変形例は、図7に示すように、シートの座部2におけるバックル装置310側の端部に乗員保護装置320を収納し、エアバッグ22の膨張時には、エアバッグがシートの座部2を突き破って、上方へ展開するようにしたものである。このような構成であっても、エアバッグは、乗員とバックル8との間で膨張することから、乗員の腰部側方を保護することができる。
【0044】
・図8は、第3の変形例の乗員保護装置420を示す斜視図である。上記第1実施形態では、乗員保護装置20のインフレータ21を車両の前後方向が長手方向となるように取り付けたが、この変形例は、インフレータ21の長手方向が上下方向となるように取り付けるようにしたものである。このような構成であっても、第1実施形態と同様の効果を奏する。なお、インフレータ21の形状は特に限定されず、円柱状ではなく例えば直方体状に形成してもよい。
【0045】
なお、図6〜図8を示して説明したこれらの変形例は、便宜上、第1実施形態と同じ形状のエアバッグ22に適用して説明しているが、第2実施形態と同じ形状のものにこれらの変形例を同様に適用するようにしてもよい。
【0046】
・上記第1実施形態の乗員保護装置20では、エアバッグ22にラップベルト部6bが嵌りこむための凹部が形成されていなかったが、第1実施形態の構成のエアバッグ22において第2実施形態のようにラップベルト部6bに対応する部位に凹部を設けてもよい。この場合、上記第1実施形態の効果(1)〜(3)と、第2実施形態の効果(4)及び(5)の効果をともに奏することができる。
【0047】
・上記第1実施形態の乗員保護装置20では、エアバッグ22のラップベルト部6bに対応する部位を、ラップベルト部6bとほぼ同じ高さとしたが、第2実施形態と同様に、エアバッグ22におけるこのラップベルト部6bに対応する部位の高さをラップベルト部6bより低くするようにしてもよい。これにより、エアバッグ22が膨張してもラップベルト部6bを押し上げることを確実に抑制することができるため、いわゆるサブマリン現象が起きることを確実に抑制することができる。また、第2実施形態では、エアバッグ122の凹部122cが、ラップベルト部6bより低くなるようにしたが、この凹部122cをラップベルト部6bの高さ以上としてもよい。そのような場合であっても、エアバッグ122には凹部122cが形成されているため、エアバッグ122のラップベルト部6bによる位置ずれを抑制することができる。
【0048】
・上記第1実施形態では、エアバッグ22が背もたれ部3の前方側の端部から座部2の略中央にまで膨張し、且つエアバッグ22のラップベルト部6bを境として前方部分22aと後方部分22bとの容積比を3/7〜7/3とするようにしたが、これらの大きさや容積比によって特定される構成の何れかを採用するようにしてもよい。そのような場合であっても、エアバッグ22のラップベルト部6bによる位置ずれを好適に抑制することができる。
【0049】
・上記各実施形態の乗員保護装置は、ラップベルト部6bの他側方であるバックル側において膨張するエアバッグを備えるようにしたが、エアバックは、ラップベルト部6bの一側方であるアンカー側で膨張するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる乗員保護装置が適用された車両用シートの斜視図。
【図2】同乗員保護装置を拡大して示した図であり、(a)は斜視図、(b)は正面図。
【図3】同車両用シートに乗員が着座した状態を示す図であり、(a)はエアバッグの膨張前の正面図、(b)は膨張時の正面図。
【図4】同車両用シートに乗員が着座した状態を示す図であり、(a)はエアバッグの膨張前の車両左側から乗員を見た側面図、(b)は膨張時の車両左側から乗員を見た側面図。
【図5】本発明の第2実施形態にかかる乗員保護装置が適用された車両用シートの斜視図。
【図6】本発明の第1の変形例にかかる乗員保護装置が適用された車両用シートの斜視図。
【図7】本発明の第2の変形例にかかる乗員保護装置が適用された車両用シートの斜視図。
【図8】本発明の第3の変形例にかかる乗員保護装置が適用された車両用シートの斜視図。
【符号の説明】
【0051】
1…車両用シート、2…座部、3…背もたれ部、4…ヘッドレスト、5…シートベルト、6…ウェビング、6a…ショルダベルト部、6b…ラップベルト部、7…タング、7a…摺動部、7b…係合部、8…バックル、8a…挿入口、8b…接続部、9…リテーナ、10,210,310…バックル装置、20,120,220,320,420…乗員保護装置、21…インフレータ、21a…供給管、22,122…エアバッグ、22a,122a…前方部分、22b,122b…後方部分、23…ケース、30…コンソールボックス、122c…凹部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両が衝突したときに、車両の乗員を保護する乗員保護装置に関し、特に乗員の腰部周辺の保護に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1又は2に記載されるように、車両の衝突時などにおいて、乗員の腰部周辺で膨張するエアバッグを備えた乗員保護装置がある。
特許文献1の乗員保護装置は、乗員の腰部前方においてシートの一側方から他側方に水平方向に架け渡されるシートベルトのラップベルト部にエアバッグモジュールが装着されている。このラップベルト部は、乗員の体を直接支持する第1部分と、この第1部分よりも乗員の体から離れて乗員の体を支持するとともにエアバッグモジュールを有する第2部分とを備えている。そして、車両の衝突時などには、エアバッグが第2部分から乗員の腰部前方で展開膨張して乗員を保護する。また、この乗員保護装置では、第2部分がエアバッグの反力により乗員から離れても、これにより第1部分が乗員をより強固にシートに締め付けるようになるため、乗員がシートベルトから潜り抜ける、いわゆるサブマリン現象を防止することができる。
【0003】
特許文献2に記載の乗員保護装置においても、エアバッグモジュールがラップベルト部に装着されている。この乗員保護装置では、エアバッグが、乗員の前方において乗員の体に沿うように、乗員の胴部に対応する胴部分と乗員の腿部に対応する腿部分とその間の腰部分とを有してL字状に展開膨張するように構成されている。
【特許文献1】特開2002−539012号公報
【特許文献2】特表2003−519040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1及び2の乗員保護装置は、エアバッグが乗員の腰部周辺で膨張するものの、いずれも乗員の腰部の前側を保護するためのものである。したがって、これらの乗員保護装置では、乗員の腰部の側方を保護することが困難であり、乗員の腰部をシートベルトのバックル、コンソールボックス及びドアトリムなどから十分に保護することができない虞がある。
【0005】
そこで、車両の衝突時に、乗員の腰部側方において膨張するエアバッグとして、例えば、乗員とシートベルトのラップベル部との間で膨張展開するエアバッグが考えられる。しかしながら、このようなエアバッグは膨張時にラップベルト部に押圧されるため、ラップベルト部の前方や後方へ押し出されるおそれがある。すなわち、エアバッグの形状や大きさによっては、ラップベルト部による位置ずれが生じて、乗員の腰部側方を好適に保護することができないおそれがある。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、乗員の腰部側方において、乗員とラップベルト部との間で膨張するエアバッグの位置ずれを好適に抑制することのできる乗員保護装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、車両の衝突時に、シートの一側方から他側方にかけて乗員の腰部前方を水平方向に架け渡されるシートベルトのラップベルト部と乗員との間において、前記一側方及び前記他側方の少なくとも何れかの側方で膨張するエアバッグを備えた車両の乗員保護装置であって、前記エアバッグは、シートベルトのラップベルト部を境として、膨張時において車両の進行方向を基準とした前方部分と後方部分との容積比が3/7〜7/3となるように形成されることを要旨とする。
【0008】
シートベルトのラップベルト部は、シートの一側方から他側方にかけて乗員の腰部前方を水平方向に架け渡される。ここで、乗員の腰部側方で膨張するエアバッグにおいて、このラップベルト部を境とする車両の進行方向を基準とした前方部分と後方部分との容積比が、例えば1:9(1/9)や2:8(2/8)などであると、このエアバッグがラップベルト部に押圧されてラップベルト部の後方へ押し出されるおそれがある。一方、このようなエアバッグにおいて、ラップベルト部を境とする車両の進行方向を基準とした前方部分と後方部分との容積比が、例えば9:1(9/1)や8:2(8/2)などであると、このエアバッグがラップベルト部に押圧されてラップベルト部の前方へ押し出されるおそれがある。すなわち、エアバッグの膨張時において、ラップベルト部に対して、このエアバッグが前方よりや後方よりに大きく偏っていると、エアバッグが前方や後方に押し出されるおそれがある。
【0009】
これに関し、本願発明者らの鋭意研究の結果、このようなエアバッグでは、ラップベルト部を境とする車両の進行方向を基準とした前方部分と後方部分との容積比が3:7〜7:3となれば、エアバッグがラップベルト部に押圧されても、このエアバッグがラップベルト部の前方や後方へ押し出されることなく、安定した状態で膨張することが見出された。つまり、上記構成によれば、ラップベルト部の押圧によるエアバッグの位置ずれを好適に抑制することができるため、乗員の腰部側方を好適に保護することができる。
【0010】
また、上記の構成によれば、ラップベルト部は、エアバッグの前後方向において、相対的に前側にも後ろ側にも大きく偏っておらず、中央部近傍に配置されることとなる。そして、エアバッグの中央部近傍は通常最も大きく膨張するため、ラップベルト部による乗員の拘束が、エアバッグの膨張時により効果的に行うことができる。また、例えば車両の前後方向に衝突時にこのエアバッグを膨張展開させるようにした場合、ラップベルト部がエアバッグに対して相対的に前側に移動したり後側に移動したりする場合があるが、ラップベルト部は、なおもエアバッグの中央部近傍に配置されるため、エアバッグがラップベルト部から抜け出すことがない。
【0011】
請求項2に記載の発明は、車両の衝突時に、シートの一側方から他側方にかけて乗員の腰部前方を水平方向に架け渡されるシートベルトのラップベルト部と乗員との間において、前記一側方及び前記他側方の少なくとも何れかの側方で膨張するエアバッグを備えた車両の乗員保護装置であって、前記エアバッグは、シートベルトのラップベルト部に対応する部位において膨張時に凹部が形成されることを要旨とする。
【0012】
シートベルトのラップベルト部は、シートの一側方から他側方にかけて乗員の腰部前方を水平方向に架け渡される。ここで、乗員の腰部側方で膨張するエアバッグが、ラップベルト部と対応する部位において、例えば突出していたり平坦に形成されていたりすると、このラップベルト部がエアバッグの表面上を相対的に滑りやすくなり、エアバッグがラップベルト部の前方や後方へ押し出されるおそれがある。この点、上記構成によれば、エアバッグの膨張時に形成される凹部にシートベルトのラップベルト部が嵌りこむため、エアバッグがラップベルト部を潜り抜けて前方や後方へ押し出されるおそれがない。すなわち、ラップベルト部によるエアバッグの位置ずれを好適に抑制することができるため、乗員の腰部側方を好適に保護することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、車両の衝突時に、シートの一側方から他側方にかけて乗員の腰部前方を水平方向に架け渡されるシートベルトのラップベルト部と乗員との間において、前記一側方及び前記他側方の少なくとも何れかの側方で膨張するエアバッグを備えた車両の乗員保護装置であって、前記エアバッグは、少なくともシートの背もたれ部の車両進行側の端部からシートの座部の車両進行方向を基準とした略中央にまで膨張するように形成されることを要旨とする。
【0014】
上記の構成において、このエアバッグが膨張するシートの背もたれ部の車両進行方向側の端部からシートの座部の略中央までとは、乗員が例えば標準的な体型の大人である場合、この乗員の腰部後端から大腿部中央に対応している。すなわち、このエアバッグは、乗員の腰部側方を比較的広範囲に亘って覆うほどの大きさに形成されているため、シートベルトのラップベルト部がこのエアバッグに対して相対的に移動しても、エアバッグがラップベルト部を完全に潜り抜けて前方や後方へ押し出されることがない。これにより、ラップベルト部によるエアバッグの位置ずれを好適に抑制することができるため、乗員の腰部側方を好適に保護することができる。
【0015】
また、上記の構成によれば、ラップベルト部は、エアバッグの前後方向において、相対的に前側にも後ろ側にも大きく偏っておらず、中央部近傍に配置されることとなる。そして、エアバッグの中央部近傍は通常最も大きく膨張するため、ラップベルト部による乗員の拘束が、エアバッグの膨張時により効果的に行うことができる。また、例えば車両の前後方向に衝突時にこのエアバッグを膨張展開させるようにした場合、ラップベルト部がエアバッグに対して相対的に前側に移動したり後側に移動したりする場合があるが、ラップベルト部は、なおもエアバッグの中央部近傍に配置されるため、エアバッグがラップベルト部から抜け出すことがない。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記エアバッグのシートベルトのラップベルト部に対応する部位の高さは乗員がシートベルトを装着したときのラップベルト部の高さよりも低く形成されることを要旨とする。
【0017】
上記構成によれば、エアバッグが膨張してもラップベルト部を押し上げることがないため、ラップベルト部が乗員の体から離間することがない。これにより、乗員がシートベルトを潜り抜ける、いわゆるサブマリン現象が起きることを抑制することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れかに記載の発明において、前記エアバッグは、膨張前にシートベルトのタングが装着されるバックルを有するバックル装置に収納されることを要旨とする。
【0019】
上記構成によれば、エアバッグは、バックルとラップベルト部と乗員との間で膨張する。そして、エアバッグは、膨張時に確実に乗員の腰部側方とバックル装置との間で膨張するため、乗員の腰部側方をバックルなどから確実に保護することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、乗員とラップベルト部との間で膨張するエアバッグの位置ずれを好適に抑制し、乗員の腰部側方を好適に保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、本発明の車両の乗員保護装置20を具体化した第1実施形態を図1〜図4に基づき説明する。なお、以下の説明では、車両の進行方向を前方と記載し、それを基準に前、後、上、下、左、右を規定し、シートの場合には、車両に装備された状態を基準に、車両の前記各方向と対応して前、後、上、下、左、右を規定している。
【0022】
図1は、本実施形態の車両の乗員保護装置20が適用された車両用シートの斜視図である。同図1に示すように、車両(図示略)の室内に配置された車両用シート(以下、単にシートと示す)1は、乗員の臀部から大腿部を支える座部2と、リクライニング可能に構成された背もたれ部3と、乗員の頭部を支えるヘッドレスト4と、シートベルト5を備えている。
【0023】
シートベルト5は、シート1に着座した乗員を拘束するために設けられた3点固定式シートベルトである。シートベルト5は、より詳細には、乗員を拘束する帯状のウェビング6と、該ウェビング6の長手方向に対して移動自在に取り付けられたタング7と、シート1の側方に配置されてタング7が装着されるバックル装置10とを備えている。ウェビング6の一端は、シート1においてバックル装置10が配設されていない側の側面に固定され、その他端はシートベルト巻取り装置(図示略)により巻き取られる構造とされており、拘束部分の長さが伸縮自在とされている。また、タング7は、ウェビング6が挿通されて該ウェビング6に沿って摺動する摺動部7aと、バックル装置10のバックル8と係合する係合部7bとを備えている。そして、この構成により、乗員の体型に応じてウェビング6の長さが適宜変更されるとともにウェビング6に対してタング7が適宜摺動し、タング7からシートベルト巻取り装置までの乗員の肩部を拘束するショルダベルト部6aと、ウェビング6の一端からタングまでの乗員の腰部を拘束するラップベルト部の長さが適宜変更される。すなわち、ショルダベルト部6aは、乗員着座時に肩から斜めに胸の前を経由して腰部の側方に架け渡されて乗員の肩部を拘束し、ラップベルト部6bは、シート1の一側方(図示しないアンカー側)から他側方(バックル8側)にかけて乗員の腰部前方を水平方向に架け渡されて乗員の腰部を拘束する。
【0024】
バックル装置10は、タング7と係合する箱状のバックル8と、シート1の側方にバックル装置10を取り付けるためのリテーナ9とを備えている。前記バックル8の一端には、シートベルト5のタング7を挿入されて係合される挿入口8aが形成されている。また、挿入口8aと反対側の端部には、板状の接続部8bが配設されている。そして、リテーナ9は、シート1の側面に固定されており、このリテーナ9に対して前記接続部8bの端部が回転自在に取り付けられている。
【0025】
そして、このバックル装置10には、乗員保護装置20が設けられている。図2は、このバックル装置10を拡大して示した図であり、(a)が斜視図、(b)が側面図である。この図2に示すように、乗員保護装置20は、ガス発生源であるインフレータ21と膨張可能な布製のエアバッグ22とを備えている。インフレータ21は、その内部に図示しないイグナイターとガス発生剤とを備えてエアバッグ22内に供給するガスを発生させるものであり、軸方向に長い円柱状に形成されて車両の前後方向が長手方向となるようにバックル装置10のリテーナ9に固定されている。また、エアバッグ22は、膨張前にはバックル8の内部においてシート1側寄りに収納されており、膨張時には、バックル8のシート1側の面からシート1に向って展開するように構成されている。具体的に、図示を省略するが、エアバッグ22は、膨張時に瞬時に膨張可能となるように、膨張前には例えば蛇腹に折り畳まれてバックル8内にコンパクトにまとまって収納されている。そして、インフレータ21は、袋状のエアバッグ22にガスを供給するための供給管21aを介してエアバッグ22と連結されている。
【0026】
次に、乗員保護装置20の作用について説明する。図3は、乗員の着座時におけるシート1の正面図であり、図4は、乗員の着座時におけるシート1の側面図である。また、図3及び図4の(a)はエアバッグ22の膨張前の状態を、(b)はエアバッグ22の膨張時の状態をそれぞれ示している。なお、図4に示すように、シート1のバックル装置10側の側方には、コンソールボックス30が設けられている。
【0027】
図示しない衝突検出手段(例えば、異常加速度検出手段)が衝突(異常加速度)を検出すると、図示しない制御手段がインフレータ21を作動させ、インフレータ21から高圧ガスがエアバッグ22内に供給される。なお、この際の衝突の検出は、車両の側面衝突のみを検出してもよいし、側面衝突及び前面衝突の何れをも検出するようにしてもよい。これにより、エアバッグ22の折り目が展開し、膨張し始める。そして、図3及び図4の(b)に示すように、エアバッグ22は、膨張時にバックル8から飛び出して、バックル8と乗員Pとラップベルト部6bと座部2との間にできる空間で展開し膨張する。エアバッグ22は、より詳細には、膨張時にバックル8の側面を覆うとともに、その前後方向の長さはシート1の背もたれ部3における前側の端部からシート1の座部2における略中央までの大きさとなるように形成されている。なお、エアバッグ22のこの前後方向の長さは、乗員Pが例えば標準的な体型の大人である場合、この乗員の腰部後端から大腿部中央に対応している。このようにエアバッグ22が、乗員の腰部側方が比較的広範囲に亘って覆う大きさに形成されているために、ラップベルト部6bがこのエアバッグ22に対して相対的に移動しても、このエアバッグ22がラップベルト部6bを完全に潜り抜けることがない。また、エアバッグ22の膨張時における高さは、背もたれ部3側から車両前方側にかけて漸次低くなるように形成されており、ラップベルト部6bに対応する部位では、このラップベルト部6bの高さと略同じ高さに形成されている。これにより、エアバッグ22はラップベルト部6bにより若干押圧される。
【0028】
さらに、このエアバッグ22は、図4(b)の線Aに示すラップベルト部6bによる境界線を境として、座部2の前方側へ膨張展開する前方部分22aと、背もたれ部3側に膨張展開する後方部分22bとに分けて考えた場合、この前方部分22aと後方部分22bとの容積比が例えば4:6(4/6)となるように形成されている。すなわち、エアバッグ22は、ラップベルト部6bを境として若干後方側に偏っているものの、エアバッグ22が後方側に大きく偏っているわけではない。したがって、エアバッグ22がラップベルト部6bに押圧されても、その押圧力により後方へ押し出されることはない。
【0029】
なお、本願発明者らの鋭意研究の結果、エアバッグ22において、このラップベルト部6bを境とする前方部分22aと後方部分22bとの容積比が3/7〜7/3であれば、エアバッグ22は膨張時に安定した状態を保つことができることが見出された。したがって、エアバッグ22の前方部分22aと後方部分22bとの容積比は4/6に限定されるものではなく、この容積比を例えば乗員の保護したい部位などに応じて3/7〜7/3となる範囲内において適宜変更して設定してもよい。つまり、乗員Pの大腿部中央ではなく、膝側まで保護したい場合は、エアバッグ22がシート1の座部2の前側の端部まで膨張展開するように形成し、この場合は、この前方部分22aと後方部分22bとの容積比が例えば、7/3となるようしてもよい。
【0030】
このようにして、上記乗員保護装置20では、エアバッグ22がラップベルト部6bにより押圧されても、このエアバッグ22の位置ずれを好適に抑制することができる。したがって、このエアバッグ22により乗員の腰部側方をバックル8やコンソールボックス30などから好適に保護することができる。
【0031】
以上詳述したように、本実施形態は、以下の効果を有する。
(1)上記実施形態の乗員保護装置20では、車両の衝突時にバックル8と乗員との間で膨張するエアバッグ22を、シート1の背もたれ部3の前側の端部からシート1の座部2の略中央にまで膨張するように形成している。そして、このエアバッグ22は、乗員が例えば標準的な体型の大人である場合、乗員の腰部後端から大腿部中央に対応しており、このように比較的大きく形成されているために、ラップベルト部6bがこのエアバッグ22に対して相対的に移動してもエアバッグ22がラップベルト部6bを完全に潜り抜けて前方や後方へ押し出されることがない。このように、この乗員保護装置20では、エアバッグ22が乗員の腰部側方を比較的広範囲に亘って覆うことができるとともに、ラップベルト部6bによるエアバッグ22の位置ずれを好適に抑制することができることから、乗員の腰部側方を確実に保護することができる。
【0032】
また、図4に示すように、ラップベルト部6bは、エアバッグ22の前後方向において、相対的に前側にも後ろ側にも大きく偏っておらず、中央部近傍に配置されることとなる。そして、エアバッグ22の中央部近傍は通常最も大きく膨張するため、ラップベルト部6bによる乗員Pの拘束が、エアバッグ22の膨張時により効果的に行うことができる。また、例えば車両の前後方向に衝突時にこのエアバッグ22を膨張展開させるようにした場合、ラップベルト部6bがエアバッグ22に対して相対的に前側に移動したり後側に移動したりする場合もあるが、ラップベルト部6bは、なおもエアバッグ22の中央部近傍に配置されるため、エアバッグ22がラップベルト部6bから抜け出すことがない。
【0033】
(2)上記実施形態の乗員保護装置20では、車両の衝突時にバックル8と乗員との間で膨張するエアバッグ22を、シートベルト5のラップベルト部6bを境として前方部分22aと後方部分22bとの容積比を3:7(3/7)〜7:3(7/3)となるように形成している。具体的に、上記実施形態では、エアバッグ22のこの容積比を4/6としている。したがって、エアバッグ22は、ラップベルト部6bを境として後方側に若干偏っているものの、前方や後方に大きく偏っていないため、エアバッグ22が後方側に押し出されるおそれがない。すなわち、エアバッグ22がラップベルト部6bに押圧されても、安定した状態で膨張することができるため、ラップベルト部6bの押圧によるエアバッグ22の位置ずれを好適に抑制することができ、結果的に乗員の腰部側方を好適に保護することができる。
【0034】
(3)上記実施形態の乗員保護装置20では、前記エアバッグ22が、膨張前にバックル装置10のバックル8に収納するようにしている。これにより、エアバッグ22は、膨張時にバックル8の側面を覆うように乗員Pの腰部側方で膨張することから、乗員の腰部側方側に配置されるこのバックル8やコンソールボックス30などから確実に保護することができる。
【0035】
(第2実施形態)
次に、本発明の車両の乗員保護装置120を具体化した第2実施形態を図5に基づき説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同じ部材については、同じ符号を用いて説明する。
【0036】
図5は、本実施形態の乗員保護装置120を示す斜視図である。この図5に示すように、本実施形態の乗員保護装置120では、エアバッグ122の膨張時における形状が、第1実施形態のエアバッグ122と異なっている。具体的に、上記第1実施形態では、エアバッグ22の高さが背もたれ部3側から車両前方側にかけて漸次低くなり、ラップベルト部6bに対応する部位が平坦に形成されていたことに代わり、本実施形態では、エアバッグ122のラップベルト部6bに対応する部位に膨張時において凹部122cが形成されている。また、エアバッグ122におけるこのラップベルト部6bに対応する凹部122cの高さは、乗員がシートベルト5を装着したときのラップベルト部6bの高さよりも低く形成されている。
【0037】
ここで、このエアバッグ122において、ラップベルト部6bに対応する部位が突出していたり平坦に形成されていたりすると、ラップベルト部6bがエアバッグ122の表面上を相対的に滑りやすくなり、エアバッグ122がラップベルト部6bの前方や後方へ押し出されるおそれがある。しかしながら、本実施形態では、エアバッグ122の膨張時にラップベルト部6bがこの凹部122cに嵌りこむため、エアバッグ122がラップベルト部6bを潜り抜けて前方や後方へ押し出されることを抑制することができる。すなわち、ラップベルト部6bによるエアバッグ122の位置ずれを好適に抑制することができるため、乗員の腰部側方を好適に保護することができる。
【0038】
つまり、本実施形態では、エアバッグ122にこの凹部122cを形成しているために、第1実施形態のように、エアバッグ122自体の大きさや、ラップベルト部6bを境とした容積比を調整することなく、エアバッグ122の位置ずれを抑制することができる。すなわち、エアバッグ122がラップベルト部6bを境として前方部分122aと後方部分122bとの容積比が例えば2/8となって後方側に大きく偏っていたり、例えば、エアバッグ122が座部の前後方向の略中央まで達していなかったりしても、エアバッグの位置ずれを好適に抑制することができる。
【0039】
また、エアバッグ122のこの凹部122cの高さを、ラップベルト部6bの高さよりも低く形成したため、エアバッグ122が膨張してもラップベルト部6bを押し上げることがない。すなわち、ラップベルト部6bは、エアバッグ122の膨張により乗員の体から離間することなく、乗員を確実に拘束することができるため、乗員がシートベルト5を潜り抜ける、いわゆるサブマリン現象が起きることを抑制することができる。
【0040】
以上詳述したように、本実施形態は、第1実施形態の効果(3)に加えて、以下の効果を有する。
(4)上記実施形態の乗員保護装置120では、エアバッグ122のラップベルト部6bに対応する部位に膨張時に凹部122cが形成されるようにしている。これにより、エアバッグ122の膨張時に形成される凹部122cにラップベルト部6bが嵌りこむため、エアバッグ122がラップベルト部6bを潜り抜けて前方や後方へ押し出されるおそれがない。したがって、ラップベルト部6bによるエアバッグ122の位置ずれを好適に抑制することができるため、乗員の腰部側方を好適に保護することができる。
【0041】
(5)上記実施形態の乗員保護装置120では、エアバッグ122のラップベルト部6bに対応する部位の高さが、乗員がシートベルトを装着したときのラップベルト部6bの高さよりも低く形成している。これにより、エアバッグ122が膨張してもラップベルト部6bを押し上げることがないため、ラップベルト部6bが乗員の体から離間することがなく、乗員がシートベルトを潜り抜ける、いわゆるサブマリン現象が起きることを抑制することができる。
【0042】
なお、本発明は次に示す変形例に具体化することができる。
・図6は、第1の変形例の乗員保護装置220を示す斜視図である。上記第1実施形態では、バックル装置10のバックル8に膨張前のエアバッグ22を収納するようにしているが、この変形例では、図6に示すように、バックル装置10が膨張前のエアバッグ22を収納するためのケース23をバックル8とは別部材として備えている。そして、このケース23は、例えばバックル装置210の接続部8bのシート1側に取り付けられている。このような構成により、バックル装置210のバックル8は、従来から用いているバックルをそのまま適用することができる。また、本実施形態においても、バックル装置210からエアバッグ22が飛び出すことから、膨張時に確実に乗員の腰部側方とバックル装置210との間で膨張し、乗員の腰部側方をバックル8などから確実に保護することができる。
【0043】
・図7は、第2の変形例の乗員保護装置320を示す斜視図である。上記第1実施形態では、バックル装置10からエアバッグ22が展開膨張するようにしているが、この変形例は、図7に示すように、シートの座部2におけるバックル装置310側の端部に乗員保護装置320を収納し、エアバッグ22の膨張時には、エアバッグがシートの座部2を突き破って、上方へ展開するようにしたものである。このような構成であっても、エアバッグは、乗員とバックル8との間で膨張することから、乗員の腰部側方を保護することができる。
【0044】
・図8は、第3の変形例の乗員保護装置420を示す斜視図である。上記第1実施形態では、乗員保護装置20のインフレータ21を車両の前後方向が長手方向となるように取り付けたが、この変形例は、インフレータ21の長手方向が上下方向となるように取り付けるようにしたものである。このような構成であっても、第1実施形態と同様の効果を奏する。なお、インフレータ21の形状は特に限定されず、円柱状ではなく例えば直方体状に形成してもよい。
【0045】
なお、図6〜図8を示して説明したこれらの変形例は、便宜上、第1実施形態と同じ形状のエアバッグ22に適用して説明しているが、第2実施形態と同じ形状のものにこれらの変形例を同様に適用するようにしてもよい。
【0046】
・上記第1実施形態の乗員保護装置20では、エアバッグ22にラップベルト部6bが嵌りこむための凹部が形成されていなかったが、第1実施形態の構成のエアバッグ22において第2実施形態のようにラップベルト部6bに対応する部位に凹部を設けてもよい。この場合、上記第1実施形態の効果(1)〜(3)と、第2実施形態の効果(4)及び(5)の効果をともに奏することができる。
【0047】
・上記第1実施形態の乗員保護装置20では、エアバッグ22のラップベルト部6bに対応する部位を、ラップベルト部6bとほぼ同じ高さとしたが、第2実施形態と同様に、エアバッグ22におけるこのラップベルト部6bに対応する部位の高さをラップベルト部6bより低くするようにしてもよい。これにより、エアバッグ22が膨張してもラップベルト部6bを押し上げることを確実に抑制することができるため、いわゆるサブマリン現象が起きることを確実に抑制することができる。また、第2実施形態では、エアバッグ122の凹部122cが、ラップベルト部6bより低くなるようにしたが、この凹部122cをラップベルト部6bの高さ以上としてもよい。そのような場合であっても、エアバッグ122には凹部122cが形成されているため、エアバッグ122のラップベルト部6bによる位置ずれを抑制することができる。
【0048】
・上記第1実施形態では、エアバッグ22が背もたれ部3の前方側の端部から座部2の略中央にまで膨張し、且つエアバッグ22のラップベルト部6bを境として前方部分22aと後方部分22bとの容積比を3/7〜7/3とするようにしたが、これらの大きさや容積比によって特定される構成の何れかを採用するようにしてもよい。そのような場合であっても、エアバッグ22のラップベルト部6bによる位置ずれを好適に抑制することができる。
【0049】
・上記各実施形態の乗員保護装置は、ラップベルト部6bの他側方であるバックル側において膨張するエアバッグを備えるようにしたが、エアバックは、ラップベルト部6bの一側方であるアンカー側で膨張するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる乗員保護装置が適用された車両用シートの斜視図。
【図2】同乗員保護装置を拡大して示した図であり、(a)は斜視図、(b)は正面図。
【図3】同車両用シートに乗員が着座した状態を示す図であり、(a)はエアバッグの膨張前の正面図、(b)は膨張時の正面図。
【図4】同車両用シートに乗員が着座した状態を示す図であり、(a)はエアバッグの膨張前の車両左側から乗員を見た側面図、(b)は膨張時の車両左側から乗員を見た側面図。
【図5】本発明の第2実施形態にかかる乗員保護装置が適用された車両用シートの斜視図。
【図6】本発明の第1の変形例にかかる乗員保護装置が適用された車両用シートの斜視図。
【図7】本発明の第2の変形例にかかる乗員保護装置が適用された車両用シートの斜視図。
【図8】本発明の第3の変形例にかかる乗員保護装置が適用された車両用シートの斜視図。
【符号の説明】
【0051】
1…車両用シート、2…座部、3…背もたれ部、4…ヘッドレスト、5…シートベルト、6…ウェビング、6a…ショルダベルト部、6b…ラップベルト部、7…タング、7a…摺動部、7b…係合部、8…バックル、8a…挿入口、8b…接続部、9…リテーナ、10,210,310…バックル装置、20,120,220,320,420…乗員保護装置、21…インフレータ、21a…供給管、22,122…エアバッグ、22a,122a…前方部分、22b,122b…後方部分、23…ケース、30…コンソールボックス、122c…凹部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の衝突時に、シートの一側方から他側方にかけて乗員の腰部前方を水平方向に架け渡されるシートベルトのラップベルト部と乗員との間において、前記一側方及び前記他側方の少なくとも何れかの側方で膨張するエアバッグを備えた車両の乗員保護装置であって、
前記エアバッグは、シートベルトのラップベルト部を境として、膨張時において車両の進行方向を基準とした前方部分と後方部分との容積比が3/7〜7/3となるように形成される
ことを特徴とする車両の乗員保護装置。
【請求項2】
車両の衝突時に、シートの一側方から他側方にかけて乗員の腰部前方を水平方向に架け渡されるシートベルトのラップベルト部と乗員との間において、前記一側方及び前記他側方の少なくとも何れかの側方で膨張するエアバッグを備えた車両の乗員保護装置であって、
前記エアバッグは、シートベルトのラップベルト部に対応する部位において膨張時に凹部が形成される
ことを特徴とする車両の乗員保護装置。
【請求項3】
車両の衝突時に、シートの一側方から他側方にかけて乗員の腰部前方を水平方向に架け渡されるシートベルトのラップベルト部と乗員との間において、前記一側方及び前記他側方の少なくとも何れかの側方で膨張するエアバッグを備えた車両の乗員保護装置であって、
前記エアバッグは、少なくともシートの背もたれ部の車両進行側の端部からシートの座部の車両進行方向を基準とした略中央にまで膨張するように形成される
ことを特徴とする車両の乗員保護装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項において、
前記エアバッグのシートベルトのラップベルト部に対応する部位の高さは乗員がシートベルトを装着したときのラップベルト部の高さよりも低く形成される
ことを特徴とする車両の乗員保護装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項において、
前記エアバッグは、膨張前にシートベルトのタングが装着されるバックルを有するバックル装置に収納される
ことを特徴とする車両の乗員保護装置。
【請求項1】
車両の衝突時に、シートの一側方から他側方にかけて乗員の腰部前方を水平方向に架け渡されるシートベルトのラップベルト部と乗員との間において、前記一側方及び前記他側方の少なくとも何れかの側方で膨張するエアバッグを備えた車両の乗員保護装置であって、
前記エアバッグは、シートベルトのラップベルト部を境として、膨張時において車両の進行方向を基準とした前方部分と後方部分との容積比が3/7〜7/3となるように形成される
ことを特徴とする車両の乗員保護装置。
【請求項2】
車両の衝突時に、シートの一側方から他側方にかけて乗員の腰部前方を水平方向に架け渡されるシートベルトのラップベルト部と乗員との間において、前記一側方及び前記他側方の少なくとも何れかの側方で膨張するエアバッグを備えた車両の乗員保護装置であって、
前記エアバッグは、シートベルトのラップベルト部に対応する部位において膨張時に凹部が形成される
ことを特徴とする車両の乗員保護装置。
【請求項3】
車両の衝突時に、シートの一側方から他側方にかけて乗員の腰部前方を水平方向に架け渡されるシートベルトのラップベルト部と乗員との間において、前記一側方及び前記他側方の少なくとも何れかの側方で膨張するエアバッグを備えた車両の乗員保護装置であって、
前記エアバッグは、少なくともシートの背もたれ部の車両進行側の端部からシートの座部の車両進行方向を基準とした略中央にまで膨張するように形成される
ことを特徴とする車両の乗員保護装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項において、
前記エアバッグのシートベルトのラップベルト部に対応する部位の高さは乗員がシートベルトを装着したときのラップベルト部の高さよりも低く形成される
ことを特徴とする車両の乗員保護装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項において、
前記エアバッグは、膨張前にシートベルトのタングが装着されるバックルを有するバックル装置に収納される
ことを特徴とする車両の乗員保護装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2008−143273(P2008−143273A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−330896(P2006−330896)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
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