説明

車両の位置発信装置

【課題】入力装置を追加せず、かつ作業を繁雑にしないで、位置情報を予定の通知先に発信して、車両の追跡を可能にした車両の位置発信装置を提供する。
【解決手段】位置発信装置10は、車両1の異常状態を検知する異常検知部31と、自車位置情報を発信する発信手段4と、異常検知時に警報を発する警報装置30とを有する。イグニッションオンモードでは、周期T3で位置情報を発信する。イグニッションオフ時のスリープモードでは、長い周期T1で位置情報を発信するとともに、異常検知毎に警報装置30を駆動する。イグニッションオフ時の輸送モードでは、警報装置30の駆動レベルを引き下げるとともに、位置情報を周期T3よりも長く周期T1より短い周期T2で発信する。輸送モードへの切り換えはイグニッションスイッチ15を予定回数オン・オフしたりブレーキレバーを操作したりして行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の位置発信装置に関し、特に、車両が自車の位置情報を予定の通知先に発信することにより、該通知先では受信した位置情報に基づいて車両の現在位置や移動履歴を認識し、かつ必要に応じて該車両を追跡するために使用される車両の位置発信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の停車中に、車体に取り付けられた加速度センサやマイクロフォン等から所定値を超える信号が出力されると、車両が異常状態であると判定し、車両のホーンや灯火器等を作動させて警告するように構成されている異常検知および車両追跡装置が開示されている。
【0003】
この異常検知および車両追跡装置は、工場から販売店へトラックやキャリアカー等の搬送車両を使って車両を搬送中に、搬送車両から伝わる揺れや振動等によって無用な警報や車両追跡が行われるのを禁止するトランスポーテーションモードを備える。トランスポーテーションモードを備えることにより、警報機が鳴ることによる煩わしさやバッテリの消耗を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−208382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている装置を備えた車両をトラック等で搬送中は、バッテリ節約のためにトランスポーテーションモードに切り換えられる。しかし、このトランスポーテーションモードは、車載バッテリを外し、かつ内部バッテリの電力消費を禁止することによってバッテリを消費しないようにするモードであるので、トラック等で搬送中は、車両追跡を行うことができない。
【0006】
一方で、トラック等で搬送途中の停車中などに、搬送されている車両を第三者が移動させてしまうようなことが考えられるので、車両の追跡装置を全く停止させてしまうのも好ましくない。しかし、搬送中に通常モードを選択すると、警報が鳴ったり、バッテリを消耗させてしまったりするといったことが起きて、トランスポーテーションモードを設けた目的が達成できない。そこで、搬送中であっても車両追跡が可能であるとともに、消費電力を抑えることができる手法が望まれている。
【0007】
本発明の目的は、上記課題を解決し、搬送されている途中の車両の追跡が可能であるとともに、搬送中の消費電力を抑えてバッテリ消耗を抑えることができる車両の位置発信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、車両に生じた加速度変化に基づいて該車両が異常状態であることを検知した場合に、異常検知信号を出力する異常検知手段(31)と、前記車両の位置情報を予定の通知先へ発信する発信手段(4)と、前記異常検知信号に応答して警報を発する警報装置(30)とを有する車両の位置発信装置において、該位置発信装置の動作モードとして、イグニッションスイッチ(15)がオンの状態におけるイグニッションオンモードと、前記イグニッションスイッチ(15)がオフになっている状態では、前記発信手段(4)が第1の周期(T1)で前記位置情報を発信するとともに、前記異常検知信号が出力される毎に前記警報装置(30)を駆動するスリープモードと、前記イグニッションスイッチ(15)がオフになっている状態で、前記異常検知信号に応答して、前記スリープモードにおける出力よりも前記警報装置(30)の出力を弱めるとともに、前記発信手段(4)が前記第1の周期(T1)より短い第2の周期(T2)で前記位置情報を発信する輸送モードとが設けられており、車両の動作を制御する操作手段のうち、予め定めた操作手段が予め定めた操作パターンで操作されたときに前記輸送モードを選択する一方、前記スリープモードおよび輸送モードのそれぞれにおいて前記イグニッションスイッチ(15)がオン操作された場合には、前記イグニッションオンモードに切り換えるモード切換手段(34)を備えている点に第1の特徴がある。
【0009】
また、本発明は、前記イグニッションオンモードが、前記第2の周期(T2)より短い第3の周期(T3)で前記位置情報を発信するモードである点に第2の特徴がある。
【0010】
また、本発明は、前記輸送モードでは、前記異常検知手段(31)および前記警報装置(30)の動作を停止させる点に第3の特徴がある。
【0011】
また、本発明は、前記スリープモードおよび前記輸送モードのそれぞれに入った際に、アンサーバックが行われるように構成した点に第4の特徴がある。
【0012】
また、本発明は、前記アンサーバックが、前記前記スリープモードへ入った際と前記輸送モードに入った際とでは、それぞれ異なる態様で駆動される点に第5の特徴がある。
【0013】
また、本発明は、前記アンサーバックが、警報装置を使用して行われる点に第6の特徴がある。
【0014】
また、前記警報装置(30)がホーン(13)もしくは灯火装置(14)である点に第7の特徴がある
【発明の効果】
【0015】
第1、第2の特徴を有する本発明によれば、車両の搬送中であっても搬送車両の振動等を拾って警報が鳴ってしまうようなことがないので、無駄に電力が消費されない上に、車両が移動されたとしても追跡が可能な新たな輸送モードを設定することができる。さらに、新たな輸送モードでは、自車位置情報の発信周期をイグニッションオンモード時よりも長くしているので電力消費を最小限に抑えることができる。また、さらに、新たな輸送モードの設定においては、車両の動作を制御する操作手段を予定の操作パターンで操作して輸送モードに移行させることができるので、その設定が簡単で容易な上に、予定の操作手段や操作パターンを知り得ない第三者が動作モードを輸送モードへ切り換えて、異常検知部や警報駆動部をオフにすることもできない。
【0016】
第1、第2の特徴を有する本発明によれば、予定の操作手段や操作パターンを知り得ない第三者が動作モードを輸送モードへ切り換えて、異常検知部や警報駆動部をオフにすることはできない。
【0017】
特に、第3の特徴を有する本発明によれば、輸送モードで異常検知や警報動作を停止させるので、消費電力をさらに抑えることができる。
【0018】
第4の特徴を有する本発明によれば、モードが切り換わったことを容易に認識することができる。特に第5の特徴を有する本発明によれば、アンサーバックによってどのモードに切り換わったかを認識することができる。
【0019】
第6、7の特徴を有する本発明によれば、車両に既設の装置を異常検知時の警報装置として使用できるので、追加の装置を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る位置発信装置を搭載した自動二輪車を含むシステム構成図である。
【図2】自動二輪車の電装システムの構成図である。
【図3】位置発信装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図4】各動作モードの機能を示す図である。
【図5】位置発信装置のイグニッションオンモードとスリープモードの動作を示すタイミングチャートである。
【図6】位置発信装置のイグニッションオンモードと輸送モードの動作を示すタイミングチャートである。
【図7】位置発信装置のイグニッションオンモードと輸送モードの変形例に係る動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る位置発信装置を自動二輪車に適用したシステムの構成図である。位置発信装置10は、スイッチやボタン等の操作手段を持たない制御装置であり、例えば、幅100mm×長さ100mm×厚さ20mm程の略直方体の樹脂ケースに収納されて自動二輪車1のシート11の下部や燃料タンク12の下部等、第三者が容易にアクセスしにくい位置に配置される。ここでは、位置発信装置10はシート11の下部の2箇所に配置した例を示しているが、位置発信装置10はいずれか1箇所に設けてあればよい。
【0022】
位置発信装置10は、自動二輪車1の停車中に外部から加えられた力による振動や衝撃等によって加速度変化が生じたときに車両が異常状態であることを検知する機能を有する。異常検知手段は、具体的には加速度センサおよび該加速度センサで検知される加速度が閾値以上のレベルであって大きさや方向が変化していることを判断するマイクロコンピュータの機能(つまりソフトウェア)として実現できる。加速度センサは位置発信装置10の内部に設けてもよいし、自動二輪車1内で位置発信装置10とは離れて設け、検知信号を位置発信装置10に供給するようにしてあってもよい。
【0023】
位置発信装置10は自動二輪車1の位置情報(自車位置情報)を予め定めた通知先に発信する位置発信手段と、異常状態のときにホーン13やウィンカランプ14等、予め警報装置として設定した装置を駆動させる警報駆動手段とを備える。警報装置はホーン13や灯火器14等に限らず音や振動によって自動二輪車1の異常状態を警報できるものであればよい。また、ホーン13や灯火器14等は、後述する動作モードの切り換え時の、アンサーバック装置としても使用される。
【0024】
位置発信装置10は無線の送受信装置(図示せず)を備えており、該送受信装置を駆動して自車位置情報を発信させる。発信された自車位置情報は公共電話局(基地局)2を介して車両外に設けられる通信端末3に送信される。通信端末3は、自車位置情報の通知先として予め登録されたパーソナルコンピュータや携帯電話機等であり、自車位置情報に基づいて音声や地図で自動二輪車1の位置情報を表示する音声出力手段や地図表示機能を備える。ここでは、通知先の通信端末3として携帯電話機を想定している。
【0025】
自車位置情報は、車載のナビゲーションシステムを制御するGPS(全地球側位システム)、ジャイロ、加速度センサおよび車速センサ等の検知情報によって周知の手法で得ることができる。ナビゲーションシステムに使用される加速度センサは自車両の異常検知手段における加速度センサと共用できるものであってもよい。
【0026】
図2は、自動二輪車の電装システムの構成図である。図2において、電装システムは電源としてのバッテリ6を有する。交流発電機7は図示しないエンジンに連結され、エンジンを駆動源として回転し、交流を発生する。レギュレータ8は交流発電機7で発電した交流を直流に変換するとともに、電圧調節する。バッテリ6はレギュレータ8から出力される直流で充電される。
【0027】
レギュレータ8の出力側およびバッテリ6のプラス側はメインヒューズF1を介してイグニッションスイッチ15に接続される。メインヒューズF1とイグニッションスイッチ15との間に接続される分岐ラインL1はヒューズF2を介してECU16に接続される。さらにイグニッションスイッチ15の出力側は二つに分岐し、一方の分岐ラインL2はヒューズF3を介してECU16に接続され、他方の分岐ラインL3はヒューズF4およびストップスイッチ17を介してECU16に接続される。
【0028】
ヒューズF4とストップスイッチ17との間から分岐するラインL4は、ホーンリレー18、ハザードリレー19およびウィンカリレー20の電源ラインとして配線される。ストップスイッチ17は、前輪ブレーキ操作部および後輪ブレーキ操作部にそれぞれ対応して並列に二つ設けられ、自動二輪車1に設けられる前後ブレーキ操作装置(ブレーキレバーおよびフットブレーキ)のオン・オフ操作を検知する。ストップスイッチ17の出力側はECU16およびストップランプ141に接続される。
【0029】
ホーンリレー18のコイルの一端はラインL4に接続され、他端はECU16に接続される。同様に、ハザードリレー19のコイルの一端はラインL4に接続され、他端はECU16に接続される。ホーンリレー18の接点は、一端がラインL4に接続され、他端がホーン13を介して接地される。ホーンリレー18の接点に並列にホーンスイッチ22が設けられる。ホーン13はホーンスイッチ22が押されるか、またはECU16からの指令でホーンリレー18がオンになると駆動される。
【0030】
ハザードリレー19の接点は、一端がラインL4に接続され、他端はダイオードD1、D2のアノードに接続される。ダイオードD1のカソードは左ウィンカランプ142に接続される。ダイオードD2のカソードは右ウィンカランプ143に接続される。
【0031】
ウィンカリレー20のプラス側はラインL4に接続され、マイナス側はダイオードD3を介してウィンカスイッチ23の共通接点に接続される。ウィンカスイッチ23の左接点は左ウィンカランプ142に接続され、ウィンカスイッチ23の右接点は右ウィンカランプ143に接続される。左ウィンカランプ142には、左インジケータ241が、右ウィンカランプ143には、右インジケータ242が、それぞれ並列に接続される。左インジケータ241および右インジケータ242はいずれも自動二輪車1の前部に設けられるメータ24内に設けられ、運転者はこれら左右のインジケータの点灯によって左ウィンカランプ142および右ウィンカランプ143の動作を確認できる。
【0032】
左右ウィンカランプ142、143はウィンカスイッチ23およびウィンカリレー20を介して駆動されるか、ハザードリレー19がECU16からの指令でオンになることによって駆動される。ウィンカリレー20は方向指示のための点滅周期でオン動作し、ハザードリレー19はハザード表示のための点滅周期でオン動作する。ホーンリレー18およびハザードリレー19の点滅周期はECU16によって決定される。
【0033】
分岐ラインL2はECU16内で、ジャンパラインL5によって図示しない点火装置(CDI)への出力端子に接続される。ECU16には、送受信装置としてのGSMモジュール4およびGPSレシーバ26が内蔵される。GSMモジュール4は、携帯電話の規格であるGSM(Global System for Mobile Communications)を適用して、自動二輪車1の自車位置情報を予定の通知先である通信端末3に送信することができる。ECU16には、加速度センサ27が接続される。ECU16には内部電源25を有することができる。
【0034】
図3は、位置発信装置10の構成を示すブロック図である。図3において、図2と同符号は同一または同等部分を示す。ECU16は、GSMモジュール4およびGPSレシーバ26と、マイクロコンピュータの機能としてソフトウェアで実現される位置検知部28、異常検知部31、位置発信指示部32、警報駆動部33、モード切換部34、およびモード設定部35とを含んでいる。位置検知部28は、GPSレシーバ26で受信したGPS情報を使って自動二輪車1の現在位置つまり自車位置を算出し、マイクロコンピュータの記憶部に記憶することができる。
【0035】
ECU16の入力側には、自動二輪車1に設けられるイグニッションスイッチ15と、加速度センサ27と、ストップスイッチ17とが接続される。ECU16の出力側には、警報装置30としてのホーン13および灯火装置14(前記ウィンカランプ142、143等)が接続される。
【0036】
異常検知部31は、加速度センサ27で感知される加速度に変化が生じたとき、つまり加速度の大きさや方向の変化が検知されたときに、自動二輪車1に振動や衝撃等が加えられたとみなして異常検知信号を出力する。異常検知信号は警報駆動部33に入力され、警報駆動部33は異常検知信号に応答して警報装置30であるホーン13および灯火装置14を駆動する。異常検知部31による動作は、イグニッションスイッチ15がオンの間は禁止され、イグニッションスイッチ15がオフのときに検知動作が許可される。
【0037】
位置発信指示部32は位置検知部28で算出した自動二輪車1の現在位置を示す自車位置情報と、発信周期を含む発信指示とをGSMモジュール4に入力する。GSMモジュール4は自車位置情報を所定の通信規格に従って変調し、通信端末3に発信する。発信された自車位置情報は、公共電話局2を経由して自動二輪車1の外部に設けられる通信端末3で受信され、通信端末3の表示画面上に、例えば地図情報として自車位置が表示される。
【0038】
モード設定部35には、イグニッションオンモードと、スリープモードおよび輸送モードとが設定される。イグニッションオンモードは、イグニッションスイッチ15がオンになっているとき、予め設定された第3の周期T3(例えば、7分周期)で自動二輪車1の位置情報を発信する。イグニッションオンモードでは異常検知部31と警報駆動部33はオフにしてそれぞれの動作を禁止する。
【0039】
イグニッションスイッチ15がオンになっている状態では、自動二輪車1は走行していて、短時間で長い距離を移動していることが考えられるので、短い周期で自車位置情報を通知先に発信して自動二輪車1の追跡が可能なようにしている。イグニッションオンモードでは交流発電機7はエンジンで駆動可能であって、十分に電源は確保できるので、自車位置情報を頻繁に発信できる。自車位置情報が短時間で発信されることにより、自動二輪車1がユーザ以外の第三者が移動させた場合でも、正確に自動二輪車1の位置を追跡することができる。また、ユーザが自動二輪車1を移動させている場合でも、異常検知部31および警報駆動部33はオフにしているので、警報装置30は駆動されることがないので、ユーザは余計な警報音を聞くことがない。
【0040】
スリープモードはイグニッションスイッチ15がオフになっているとき、前記第3の周期T1より長い第1の周期T1(例えば、20時間周期)で自車位置情報を発信し、かつ車両の異常時に警報装置30を駆動できるように異常検知部31および警報駆動部33をオンにしているモードである。スリープモードは、自動二輪車1が停車して運転者が車両から離れている状況を想定している。スリープモードでは、自動二輪車1が停車していて、自動二輪車1が短時間で遠くまで移動していることはないし、ユーザ以外の第三者が移動すれば警報装置30は駆動される。したがって、自車位置の発信周期は長くしてバッテリ6の消耗をできるだけ避けている。
【0041】
輸送モードは、自動二輪車1がトラックやキャリアカー等で自動二輪車1が輸送されている状況であって、イグニッションスイッチ15がオフになっている状況を想定している。輸送モードでは、イグニッションスイッチ15がオフになっているとき、前記第3の周期T3より長いが、第1の周期T2より短い第2の周期T2(例えば、30分周期)で自車位置情報を発信し、かつ車両の異常時に警報装置30の出力を弱めるか、または駆動レベルを低下させる。
【0042】
輸送モードでは自動二輪車1は輸送中であるので、自車位置情報を比較的頻繁に発信して追跡を可能にしているとともに、異常検知部31や警報駆動部33は出力を弱めてバッテリ6の消耗程度を少なくしている。
【0043】
警報装置30の「出力を弱める」または「駆動レベルを低下させる」とは、ホーン13では音量を下げることを意味し、灯火装置14では光量を下げることを意味する。また、「出力を弱める」または「駆動レベルを低下させる」には、音量および光量をゼロまで下げること、つまり停止させることも含める。
【0044】
モード設定部35は、GSMモジュール4による位置情報の送出周期T1、T2およびT3を設定する周期設定部351と、警報装置30の警報態様を設定する警報態様設定部352とを有する。警報態様としては、ホーン13の音量や灯火装置14の出力光量の低下(音量ゼロ、光量ゼロも含む)を想定する。ホーン13の音量は、例えば、ホーンリレー18の駆動デューティを変化させることによって制御し、灯火装置14の光量は、例えば、ハザードリレー19の駆動デューティを変化させることによって制御できる。なお、ホーン13の音量は、ホーン13に印加する電圧を変化することによっても可能である。例えば、ホーンリレー18とホーン13との間に可変抵抗を設け、この可変抵抗をECU16からの指令によって調節することでホーン13への印加電圧を調節できる。
【0045】
モード切換部34は、イグニッションスイッチ15がオンであるかオフであるかによって、イグニッションオンモードとスリープモードおよび輸送モードとを切り分ける。さらに、自動二輪車1に設けられている操作部材のうち予め定められている操作部材が予め定められたパターンで操作されたことをモード切換部34が検知したときにイグニッションオンモードから輸送モードへの切り換えを行う。操作のパターンとは、操作部材の操作回数や、複数の操作部材の場合は操作回数および操作順序の組み合わせをいう。本実施形態では、モード切り換え用の操作部材としてイグニッションスイッチ15およびストップスイッチ17を想定し、これらイグニッションスイッチ15およびストップスイッチ17に予定の操作パターンで操作が加えられたときに、スリープモードから輸送モードへの切り換えが行われる。
【0046】
モード切り換え用の操作部材は二つに限らず、一つであってもよいし、三つ以上であってもよい。但し、操作部材が増えすぎると操作が繁雑になるので、二つ以下の操作部材を組み合わせてモード切り換え用とするのが好ましい。
【0047】
図4は、動作モードの内容を示す図である。図4に示すように、イグニッションオンモードでは、イグニッションスイッチ15がオンであり、異常検知部31および警報駆動部33はいずれもオフにしている(動作停止している)。位置発信指示部32は動作しており、自車位置情報を短周期(第3の周期T3)で送信指示する。
【0048】
スリープモードでは、イグニッションスイッチ15はオフであり、異常検知部31および警報駆動部33はいずれもオンにしている(動作している)。位置発信指示部32は動作しており、自車位置情報を長周期(第1の周期T1)で送信指示している。
【0049】
輸送モードでは、イグニッションスイッチ15はオフであり、異常検知部31および警報駆動部33はオフ、または異常検知部31は駆動し、警報駆動部33は警報装置30の駆動レベルを低下させて駆動される(出力を弱める)。自車位置情報は中周期(第2の周期T2)で送信される。
【0050】
前記各モードにおける動作を図5、図6および図7を参照して説明する。図5はイグニッションオンモードとスリープモードの動作を示すタイミングチャート、図6および図7はイグニッションオンモードと輸送モードの動作を示すタイミングチャートである。各モードにおける動作中、ECU16を含む位置発信装置10にはバッテリ6から電圧が印加されている。
【0051】
図5において、位置発信装置10は、イグニッションスイッチ15がオンの期間はイグニッションオンモード(IGN ON MODE)で動作し、イグニッションスイッチ15がオフになっている期間はスリープモード(SLEEP MODE)で動作する。但し、イグニッションオンモードからスリープモードに切り換わる際には、イグニッションスイッチ15がオフになった後、スリープモードに移行するまでに遅延時間を設けている。すなわち、時点t1でイグニッションスイッチ16がオフにされると、時間T10(例えば1分)が経過した時点t2でスリープモードに切り換えられ、それまではイグニッションオンモードが維持される。時間T10は、ユーザが、自動二輪車1を停車させてイグニッションスイッチ15をオフにした後、ヘルメットを荷室に収納したり、荷台に取り付けてあった荷物を取り外したり、車両にカバーをかけたりする動作が行われて、すぐに車両を離れないことがあるのを考慮して設けた切り換え時間である。
【0052】
イグニッションオンモードでは、異常検知部31はオフであり、検知動作は禁止される。イグニッションオンモードからスリープモードに切り換わると異常検知部31はオンになり、検知動作が許可される。スリープモードに切り換わった時点t2では、警報駆動部33が予定の短時間(1秒程度)だけ警報装置30を駆動してモード切り換えを合図する指示を出力する。警報装置30はこのモード切り換えの合図に応答してホーン13および灯火装置14の少なくとも一方を瞬時駆動してアンサーバックを行う。
【0053】
加速度センサ27の検知信号は、例えば1分以上10分未満の値に設定された周期で検知動作を行うのがよい。周期が短いとバッテリ6の消耗が大きくなるし、周期が長いと精度の高い異常検知ができないからである。検知信号の加速度変化によって車体が振動または衝撃を受けたとみなされると、そのつど、この例では、タイミングt3、t4で警報駆動部33が警報装置30を駆動させるアラーム指示を時間B1の間出力する。
【0054】
GPSレシーバ26は、第3の周期T3(例えば7分)でGPS情報を取得して位置検知部28に入力し、位置検知部28は、入力されたGPS情報に基づいて自車位置情報を検出し、記憶する。検出された自車位置情報と発信周期を含む発信指示は位置検知部28からGSMモジュール4に供給される。イグニッションオンモードでは、GSMモジュール4は常時オンになっていて、第3の周期T3で位置発信指示部32から発信指示が入力されると、自車位置情報を発信可能である。
【0055】
スリープモードでは、前記切り換え時間T10の間に、GPSレシーバ26をオンにしてGPS情報を取得し、位置検知部28に入力する。位置検知部28はGPS情報に基づいて自車位置を検出し、位置発信指示部32に入力する。位置発信指示部32は、スリープモードの間、第3の周期T3より大幅に長い第1の周期T1(例えば20時間)で、自車位置情報と送信指示をGSMモジュール4に供給する。
【0056】
図5の例では、スリープモードに切り換わる前の切り換え時間T10において自車位置を取得して記憶し、スリープモードでは、この自車位置を第1の周期T1で発信する。しかし、本発明はこれに限らず、位置検知部28はスリープモード内で所定の周期(例えば第3の周期T3)で自車位置を取得して、その取得した自車位置を位置発信指示部32に供給するようにしてもよい。
【0057】
図6では、イグニッションオンモードと輸送モードの動作を示す。イグニッションオンモードの動作は図5に示したのと同様である。しかし、イグニッションオンモードから輸送モード(TRCK MODE)へは、単にイグニッションスイッチ15がオフになっただけでは切り換わらない。イグニッションスイッチ15がオフからオンへ切り換える操作が予定回数(図6の例では5回)行われた後、オフになった時点t10で輸送モードに切り換えが行われる。すなわち、自動二輪車1に設けられる操作手段のうち、予め定めたもの、この例ではイグニッションスイッチ15が予め定められた態様でン・オフ操作された場合に輸送モードへの切り換えが行われる。輸送モードへの切り換えはイグニッションスイッチ15の操作に限らず、ストップスイッチ17やイグニッションスイッチ15の単独の操作または複数の操作の組み合わせを契機としてもよい。例えば、イグニッションスイッチ15を5回オン・オフ操作し、かつブレーキレバーを1回操作してストップスイッチ17をオンにさせるという組み合わせが可能である。
【0058】
輸送モードでは、異常検知部31を停止させている(オフにさせている)ので、異常検知信号も得られない(オフである)。異常検知信号が得られないので、異常検知信号に応答する警報駆動部33の動作もオフであるが、アンサーバックは行われる。警報駆動部33はタイミングt10でアンサーバックを指示している。
【0059】
輸送モードでは、GPSレシーバ26は、第3の周期T3(7分)よりは長いが第1の周期T1(20時間)よりは短い第2の周期T2(30分)で自動二輪車1の位置情報を検出し、位置検知部28に記憶させる。例えば時点t20で位置情報を検出し、時点t30で位置情報を記憶させるとともに、位置検出部28に供給する。位置発信指示部32は、位置検出部28から供給された自車位置情報を第2の周期T2でGSMモジュール4に発信指示する。GPSレシーバ26およびGSMモジュール4は、位置発信指示部32と同じ周期(第2の周期T2)でオンになり、自車位置情報の発信に寄与する。
【0060】
図7は、輸送モードにおいて警報装置30による警報を弱める例に係る図であり、図6と同等部分は同一または同様の動作を示す。図7に示す例では、輸送モードに切り換えられたときに警報駆動部33は警報装置30にアンサーバックを指示する。これととともに、スリープモードと同様、加速度センサ27によって異常が検出される毎に警報駆動部33は警報装置30を駆動する指示を出力する。そして、この駆動指示には、スリープモードにおけるよりも警報を弱める指示を含める。例えば、警報駆動部33から出力される駆動指示パルスの幅B2をスリープモードの幅B1より短くする。図7に示す例では、図6に示した例と同様、自車位置情報の発信周期が第2の周期T2であることに変わりはないし、イグニッションオンモードの動作も同様である。
【0061】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明はこの実施形態に限定されず、請求項に記載した範囲で種々変形が可能である。例えば、輸送モードへの切り換え操作は、イグニッションスイッチやストップスイッチ等の車載操作部材を用いたものに限らない。車外から車両を操作するイモビライザ用のリモコンスイッチや、携帯電話機あるいは無線LANを用いた遠隔操作装置等による操作であってもよい。要は、操作可能なユーザが限定される装置を用いて、車両に対する予め定めた操作で切り換え操作が行えればよい。
【0062】
また、自車位置情報の発信周期T1、T2およびT3は、T1>T2>T3の関係を維持していれば、具体的な周期は任意に変更できる。
【0063】
さらに、スリープモードが選択された場合と、輸送モードが選択された場合とで、アンサーバックの態様を異ならせてもよい。例えば、ホーンの音色、音高や音量、または灯火装置の点灯光量や点滅周期等によりアンサーバックの態様に違いをもたせることができる。また、アンサーバックはホーン13や灯火装置14等、当初から車両に設けられている警報装置30によって行うものに限らず、例えば、任意の音を発することができるようにした後付けのスピーカを使って行ってもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…自動二輪車、 3…端末装置、 4…送受信装置(GSMモジュール)、 10…位置発信装置、 13…ホーン、 14…灯火装置、 15…イグニッションスイッチ、 16…ECU、 17…ストップスイッチ、 18…ホーンリレー、 19…ハザードリレー、 20…ウィンカリレー、 24…メータ、 26…GPSレシーバ、 27…加速度センサ、 28…位置検知部、 30…警報装置、 31…異常検知部、 32…位置発信指示部、 33…警報駆動部、 34…モード切換部、 35…モード設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に生じた加速度変化に基づいて該車両が異常状態であることを検知した場合に、異常検知信号を出力する異常検知手段(31)と、
前記車両の位置情報を予定の通知先へ発信する発信手段(4)と、
前記異常検知信号に応答して警報を発する警報装置(30)とを有する車両の位置発信装置において、
該位置発信装置の動作モードとして、
イグニッションスイッチ(15)がオンの状態におけるイグニッションオンモードと、
前記イグニッションスイッチ(15)がオフになっている状態では、前記発信手段(4)が第1の周期(T1)で前記位置情報を発信するとともに、前記異常検知信号が出力される毎に前記警報装置(30)を駆動するスリープモードと、
前記イグニッションスイッチ(15)がオフになっている状態で、前記異常検知信号に応答して、前記スリープモードにおける出力よりも前記警報装置(30)の出力を弱めるとともに、前記発信手段(4)が前記第1の周期(T1)より短い第2の周期(T2)で前記位置情報を発信する輸送モードとが設けられており、
車両の動作を制御する操作手段のうち、予め定めた操作手段が予め定めた操作パターンで操作されたときに前記輸送モードを選択する一方、前記スリープモードおよび輸送モードのそれぞれにおいて前記イグニッションスイッチ(15)がオン操作された場合には、前記イグニッションオンモードに切り換えるモード切換手段(34)を備えていることを特徴とする車両の位置発信装置。
【請求項2】
前記イグニッションオンモードが、前記第2の周期(T2)より短い第3の周期(T3)で前記位置情報を発信するモードであることを特徴とする請求項1記載の車両の位置発信装置。
【請求項3】
前記輸送モードでは、前記異常検知手段(31)および前記警報装置(30)の動作を停止させることを特徴とする請求項1または2に記載された車両の位置発信装置。
【請求項4】
前記スリープモードおよび前記輸送モードに入った際に、それぞれアンサーバックが行われるように構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載された車両の位置発信装置。
【請求項5】
前記アンサーバックが、前記前記スリープモードへ入った際と前記輸送モードに入った際とでは、それぞれ異なる態様で駆動されることを特徴とする請求項4に記載された車両の位置発信装置。
【請求項6】
前記アンサーバックが、警報装置を使用して行われることを特徴とする請求項4または5に記載された車両の位置発信装置。
【請求項7】
前記警報装置(30)がホーン(13)もしくは灯火装置(14)であることを特徴とする請求項6に記載された車両の位置発信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−37501(P2013−37501A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172438(P2011−172438)
【出願日】平成23年8月6日(2011.8.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】