説明

車両の側部車体構造

【課題】リヤピラーの前傾形状に左右されることなく、車体側面から後方に流れる走行風の乱流を防止し、走行風を適切な位置で剥離させて、車両デザインと空力性能とを両立させて、燃費性能を向上させる車両の側部車体構造を提供する。
【解決手段】上記リヤピラー6に、車両前方から走行風を取入れる取入れ口17と、取入れ口17から取入れた走行風を車両後方に排出する排出口18と、を備えた送風経路体13が車両上下方向にわたって設けられ、送風経路体13は、排出口18から排出される走行風の流速を上下方向で変化させる流速可変手段21を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の後部に配設されたバックドアの左右側部に車両側面時で前傾して配設されたリヤピラーを備えたような車両の側部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、燃費を向上させる方法には、エンジン性能を向上させること、車両の軽量化を図ること、車両の空気抵抗を小さくすること、の三つの方法がある。
空気抵抗を小さくする場合、車両の後部に配設されたバックドアの左右側部に車両側面視で前傾して配設されたリヤピラーの形状を変更することが考えられる。
【0003】
以下、この点について詳述する。図9は車両の平面図、図10は車両の側面図であって、車両後部にはバックドア91を配設し、バックドア91の左右両側部には、車両側面視で前傾して配設されたリヤピラー92,92を備えている。
【0004】
図9において、xは車両の走行時に車体側面から後方に流れる風を示し、図10において、yは車両の走行時にルーフ面から後方に流れる風を示し、zは車両の走行時に底下から後方に流れる風を示し、図9においてx,x内は負圧となり、また図10においてy,z内は負圧となって車両に対して後方に引っ張る力が作用することを示す。
【0005】
図9、図10に実線矢印で示すように、車両後方に流れる風を整流させると、空気抵抗は小さくなることが知られている。空気抵抗を小さくするためには、走行風がボディから離れる瞬間つまり剥離するポイント(剥離ポイント)を作ること、剥離ポイントを可及的車両の後方に設定すること、剥離の位置を上下で変化させないことが条件となる。
しかし、図9に示すように、車両のリヤピラー92には、同図に平面で切った断面形状を仮想線aで示すように、車両デザインの関係上、大きいコーナーアールが形成されているので、走行風が円滑に剥離せず、車両後面へ巻き込んで、乱流が発生する。これを改善して適切な剥離ポイントを形成するには、図9に点線bで示すように、リヤピラー92のコーナーアールを小さくして、該リヤピラー92を角張った形状とすればよい。
【0006】
図9の後部左側を図11に拡大して示すように、リヤピラー92が前傾していると、車体側面のリヤピラー上部から後方に流れる風x1は相対的に前側のポイントp1で剥離し、車体側面のリヤピラー下部から後方に流れる風x2は相対的に後側のポイントp2で剥離し、剥離の位置がリヤピラー92の高さ方向によって車両の前後方向にずれるので、空力性能が悪化する。これを改善して空力性能を向上させるには、図10に実線で示す前傾状態のリヤピラー92を、同図に点線cで示すように上下方向に真っ直ぐに立てるとよい。
【0007】
このように、リヤピラー92の形状を変更し、該リヤピラー92のコーナーアールを小さくすると共に、リヤピラー92を上下方向に真っ直ぐに立てると、空力性能の改善を図って、空気抵抗を小さくすることができるが、車両デザインを優先、重視する場合には、このようなリヤピラーの形状変更は不可能となる。
そこで、近年、車両デザインと空力性能とを両立させることが望まれている。
【0008】
ところで、特許文献1には、リヤピラーに、車両走行方向に貫通して車体の背部に走行風を導く整風用通気口を開設した構造が開示されているが、この構造はミニバンタイプの車両において、車体の背部における泥やほこりの巻き上げを防止するものであって、該特許文献1にはリヤピラーの上下方向で走行風の流速をコントロールして、空力性能を改善するという技術思想については何等の開示も示唆もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開昭62−184079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、この発明は、車両前方から走行風を取入れる取入れ口と、該取入れ口から取入れた走行風を車両後方に排出する排出口と、を備えた送風経路体を、リヤピラーに車両の上下方向にわたって設け、上記送風経路体が、排出口から排出される走行風の流速を上下方向で変化させる流速可変手段を備えることで、リヤピラーの前傾形状に左右されることなく、車体側面から後方に流れる走行風の乱流を防止することができ、走行風を適切な位置で剥離させることができて、車両デザインと空力性能とを両立させて、燃費性能を向上させることができる車両の側部車体構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明による車両の側部車体構造は、車両の後部に配設されたバックドアの左右側部に車両側面視で前傾して配設されたリヤピラーを備えた車両の側部車体構造であって、上記リヤピラーに、車両前方から走行風を取入れる取入れ口と、該取入れ口から取入れた走行風を車両後方に排出する排出口と、を備えた送風経路体が車両上下方向にわたって設けられ、上記送風経路体は、上記排出口から排出される走行風の流速を上下方向で変化させる流速可変手段を備えたものである。
上述の送風経路体とは、送風経路を形成する部材(送風経路形成部材)を意味するものである。
【0012】
上記構成によれば、上記送風経路体の流速可変手段が、上述の排出口から排出される走行風の流速を上下方向で変化させるので、リヤピラーの前傾形状に左右されることなく、車体側面から後方に流れる走行風の乱流を防止することができて、該走行風を適切な位置で剥離させ、空力性能の向上を図ることができる。
つまり、車両側面視で前傾して配設されたリヤピラーを用いつつ、空力性能の向上を図るので、車両デザインと空力性能とを両立させて、燃費性能を向上させることができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記流速可変手段は、上記排出口から排出される走行風の流速を下方より上方が速くなるように構成されたものである。
上記構成によれば、リヤピラーが前傾した形状であっても、流速可変手段で排出口から排出される走行風の流速を下方に対して上方が速くなるように構成したので、リヤピラーの上下方向において剥離ポイントが前後にずれるのを防止し、かつ上下方向の剥離ポイントを可及的後方にコントロールすることができて、空力性能の向上を図ることができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記流速可変手段は、上記送風経路体の内部に車両前後方向に向けて配設されたリブにより構成されたものである。
上記構成によれば、送風経路体の内部に前後方向に向けてリブを配設することにより、簡単な構成でありながら、排出口から排出される走行風の流速をコントロールすることができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記取入れ口は、後方に向かって先細り形状を成した導風部を備えたものである。
上記構成によれば、取入れ口が、後方に向けて先細り形状の導風部を備えているので、走行風がボディに吸い付くように流れる性質を利用して、車体側面に流れる走行風を、積極的に送風経路体の取入れ口に導入することができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、上記送風経路体は、上記リヤピラーの外側から脱着可能に取付けられたものである。
上記構成によれば、上述の送風経路体を外付けすることができると共に、リヤピラーと別体で形成することができる。このため、リヤピラーおよび送風経路体の製造が容易となり、また安価に形成することができると共に、該送風経路体の交換も可能となる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、車両前方から走行風を取入れる取入れ口と、該取入れ口から取入れた走行風を車両後方に排出する排出口と、を備えた送風経路体を、リヤピラーに車両の上下方向にわたって設け、上記送風経路体が、排出口から排出される走行風の流速を上下方向で変化させる流速可変手段を備えたので、リヤピラーの前傾形状に左右されることなく、車体側面から後方に流れる走行風の乱流を防止することができ、走行風を適切な位置で剥離させることができて、車両デザインと空力性能とを両立させて、燃費性能を向上させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の車両の側部車体構造を示す外観斜視図
【図2】図1の要部の拡大側面図
【図3】図2のA−A線矢視断面図
【図4】図2のB−B線矢視断面図
【図5】車両の側部車体構造の他の実施例を示す要部の側面図
【図6】走行風の乱流発生を抑制する作用の説明図
【図7】図5のC−C線矢視断面図
【図8】図5のD−D線矢視断面図
【図9】車体側面からの走行風の流れを示す平面図
【図10】ルーフ面および底下からの走行風の流れを示す側面図
【図11】リヤピラー前傾の場合の剥離ポイントのずれを示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
リヤピラーの前傾形状に左右されることなく、車体側面から後方に流れる走行風の乱流を防止することができ、走行風を適切な位置で剥離させることができて、車両デザインと空力性能とを両立させて、燃費性能を向上させるという目的を、車両の後部に配設されたバックドアの左右側部に車両側面視で前傾して配設されたリヤピラーを備えた車両の側部車体構造において、上記リヤピラーに、車両前方から走行風を取入れる取入れ口と、該取入れ口から取入れた走行風を車両後方に排出する排出口と、を備えた送風経路体が車両上下方向にわたって設けられ、上記送風経路体が、上記排出口から排出される走行風の流速を上下方向で変化させる流速可変手段を備えるという構成にて実現した。
【実施例1】
【0020】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両の側部車体構造を示し、図1はその外観斜視図、図2は図1の要部の側面図、図3は図2のA−A線矢視断面図、図4は図2のB−B線矢視断面図である。
【0021】
図1、図3において、車両1の後部にはバックドア2が配設されている。このバックドア2は、バックドアアウタパネル3と、このバックドアアウタパネル3の車両前部側に接合固定されたバックドアインナパネル4と、バックウインドガラス5とを有し、荷室の後部開口を開閉可能に覆うものである。
上述のバックドア2の左右両側部(但し、図面では左側部のみを示す)には、車両側面視で前高後低状に前傾して配設されたリヤピラー6が設けられている。
【0022】
このリヤピラー6はリヤピラーアウタパネル7とリヤピラーインナパネル8とを接合固定して、上下方向に延びるリヤピラー閉断面9を有する車体剛性部材であって、図1に示すように、該リヤピラー6は、ルーフパネル10の側部のルーフサイドレールアウタ11とリヤサイドパネルアウタ12とを上下方向に連結している。
【0023】
上述のリヤピラー6の車体側には送風経路体(送風経路を形成する部材としての送風経路形成部材)13を取付けるが、図4に示すように、ルーフサイドレールアウタ11と該送風経路体13とリヤサイドパネルアウタ12とが上下方向で段差なく面一状に連続するように、上述のリヤピラーアウタパネル7の上下両部には、車幅方向の内方に窪む凹状の取付け座7a,7aを一体形成し、これら上下の取付け座7a,7a間のリヤピラーアウタパネル7をさらに車幅方向の内方に窪ませて凹部7bを一体形成している。
【0024】
図2、図3、図4に示すように、上述の送風経路体13(いわゆる樹脂パーツ)はリヤピラーアウタパネル7の外側から脱着可能に取付けられている。すなわち、図3、図4に示すように、送風経路体13の裏面(車幅方向内側の面)には、その上側と下側とに複数のボルト14を接着固定しており、リヤピラーインナパネル8に形成された開口部15(図3参照)から、ナットランナ(図示せず)を用いて、上述のボルト14にナット16を締付けることで、送風経路体13をリヤピラー6に対して取外し可能に固定したものである。
【0025】
なお、ボルト14、ナット16による固定構造に代えて、送風経路体13の裏面に複数のクリップを一体形成し、リヤピラーアウタパネル7にはクリップを係止する開口部を開口形成して、該クリップによる固定構造を採用してもよい。
上述の送風経路体13は図1に示すように車両の上下方向、詳しくは、リヤピラーアウタパネル7に沿って上下方向にわたって設けられたものであって、図3に示すように、該送風経路体13は、車両前方から走行風を取入れる取入れ口17と、該取入れ口17から取入れた走行風を車両後方に排出する排出口18と、取入れ口17の直前部に一体形成された導風部19と、を備えている。
【0026】
この導風部19の前端部は図3に示すように、クオータウインド20の後端面に当接するように配置されると共に、該導風部19は、クオータウインド20のウインド面(外面後端)から後方に向かって先細り形状(いわゆるテーパ形状)に形成されている。これにより、走行風がボディに吸い付くように流れる性質を利用して、車体側面に流れる走行風を、積極的に送風経路体13の取入れ口17に導入するものである。
しかも、上述の送風経路体13は、図2〜図4に示すように、上記排出口18から排出される走行風の流速を上下方向で変化、詳しくは、排出口18から排出される走行風の流速を上方が速くなるように成す流速可変手段としてのリブ21,22を備えている。
【0027】
図2〜図4に示すように、上下の各リブ21,22は送風経路体13の内部に、車幅方向内方に向けて突出され、かつ車両前後方向に向けて配設されている。この実施例では、送風経路体13は合成樹脂で形成されるので、上述の導風部19、リブ21,22は送風経路体13を形成するその本体に対して一体形成されている。
【0028】
図2に示すように、上下2つのリブ21,22により取入れ口17を上下3分割すると共に、排出口18も上下方向に3分割している。
上下に3分割された取入れ口17A,17B,17Cにおいて、上側の取入れ口17Aの上下長さは取入れ口17全体の50%(つまり1/2)に設定し、中間の取入れ口17Bの上下長さは取入れ口17全体の33%(つまり1/3)に設定し、下側の取入れ口17Cの上下長さは取入れ口17全体の17%(つまり1/6)に設定する一方で、上下に3分割された排出口18A,18B,18Cはそれぞれ上下均等に設定している。
【0029】
図4に示すように、取入れ口17Aと排出口18Aとを前後方向に連通する送風経路23を形成し、同様に、取入れ口17Bと排出口18Bとを前後方向に連通する送風経路24を形成し、また、取入れ口17Cと排出口18Cとを前後方向に連通する送風経路25を形成している。
【0030】
このように構成することにより、上側の取入れ口17Aから送風経路23を通って排出口18Aに排出される走行風の流速は、排出口18Aで絞り込まれて速くなり、下側の取入れ口17Cから送風経路25を通って排出口18Cに排出される走行風の流速は、送風経路25で広がって遅くなり、中間の取入れ口17Bから送風経路24を通って排出口18Bに排出される走行風の流速は、変化することなく、中間の値となる。
つまり、排出口18Aの風速が大、排出口18Bの風速が中、排出口18Cの風速が小となる。
【0031】
このように、排出口18A,18B,18Cから排出される走行風の流速を大、中、小に設定することで、流速が速い上部においては、排出口18Aから流出する風(図3の矢印d参照)で、送風経路体13の車外側面を流れる風(図3の矢印e参照)に対抗できるので、走行風の車両後面への巻き込み(乱流)の発生が抑制されると共に、剥離ポイントが後方に移行し、同様に、流速が中間の中間部においては剥離ポイントがやや後方に移行し、流速が遅い下部においては剥離ポイントは移行しないので、あたかもリヤピラーを上下方向に真っ直ぐに立てた場合と同様に、剥離ポイントが上下方向のほぼ同一の位置に形成され、車両後方に流れる走行風が整流されて、空力特性の向上を図ることができる。
また、排出口18から後方に向けて排出される走行風は、エアカーテン状になるので、走行風の車両後面への巻き込みを、より一層適切に防止することができる。
【0032】
なお、図1において、26はリヤスポイラ、27はリヤコンビネーションランプである。また、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印INは車両内方を示し、矢印OUTは車両外方を示す。
【0033】
このように、図1〜図4で示した実施例の車両の側部車体構造は、車両1の後部に配設されたバックドア2の左右側部に車両側面視で前傾して配設されたリヤピラー6を備えた車両の側部車体構造であって、上記リヤピラー6に、車両前方から走行風を取入れる取入れ口17と、該取入れ口17から取入れた走行風を車両後方に排出する排出口18と、を備えた送風経路体13が車両上下方向にわたって設けられ、上記送風経路体13は、上記排出口18から排出される走行風の流速を上下方向で変化させる流速可変手段(リブ21,22参照)を備えたものである(図2〜図4参照)。
【0034】
この構成によれば、上記送風経路体13の流速可変手段(リブ21,22参照)が、上述の排出口18から排出される走行風の流速を上下方向で変化させるので、リヤピラー6の前傾形状に左右されることなく、車体側面から後方に流れる走行風の乱流を防止することができて、該走行風を適切な位置で剥離させ、空力性能の向上を図ることができる。
つまり、車両側面視で前傾して配設されたリヤピラー6を用いつつ、空力性能の向上を図るので、車両デザインと空力性能とを両立させて、燃費性能を向上させることができる。
【0035】
また、上記流速可変手段(リブ21,22参照)は、上記排出口18から排出される走行風の流速を下方より上方が速くなるように構成されたものである(図2参照)。
この構成によれば、リヤピラー6が前傾した形状であっても、流速可変手段(リブ21,22参照)で排出口18から排出される走行風の流速を下方に対して上方が速くなるように構成したので、リヤピラー6の上下方向において剥離ポイントが前後にずれるのを防止し、かつ上下方向の剥離ポイントを可及的後方にコントロールすることができて、空力性能の向上を図ることができる。
【0036】
さらに、上記流速可変手段は、上記送風経路体13の内部に車両前後方向に向けて配設されたリブ21,22により構成されたものである(図2〜図4参照)。
この構成によれば、送風経路体13の内部に前後方向に向けてリブ21,22を配設することにより、簡単な構成でありながら、排出口18から排出される走行風の流速をコントロールすることができる。なお、上記実施例においては、車幅方向内方へ突出し、かつ車両の前後方向に延びる上下2本のリブ21,22を例示したが、リブの本数および形状は上記実施例のものに限定されるものではない。
【0037】
さらにまた、上記取入れ口17は、後方に向かって先細り形状を成した導風部19を備えたものである(図3参照)。
この構成によれば、取入れ口17が、後方に向けて先細り形状の導風部19を備えているので、走行風がボディに吸い付くように流れる性質を利用して、車体側面に流れる走行風を、積極的に送風経路体13の取入れ口17に導入することができる。
【0038】
加えて、上記送風経路体13は、上記リヤピラー6の外側から脱着可能に取付けられたものである(図3、図4参照)。
この構成によれば、上述の送風経路体13を外付けすることができると共に、リヤピラー6と別体で形成することができる。このため、送風経路体13の製造が容易となり、また安価に形成することができると共に、該送風経路体13の交換も可能となる。
【実施例2】
【0039】
図5〜図8は車両の側部車体構造の他の実施例を示し、図5は車両の要部の側面図、図6は走行風の乱流発生を抑制する作用の説明図、図7は図5のC−C線矢視断面部、図8は図5のD−D線矢視断面部である。なお、図5〜図8において前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略している。
【0040】
図5〜図8に示すように、この実施例2においても、車両1の後部にバックドア2を配設し、該バックドア2の左右側部にリヤピラー6を設け、該リヤピラー6は車両側面視で前高後低状となるように前傾して配設されている。
【0041】
上述のリヤピラー6におけるリヤピラーアウタパネル7には、その車外側から送風経路体30(送風経路31を形成する部材である送風経路形成部材)を脱着可能に取付けている。
上述の送風経路体30を、図5に示すように、車両上下方向にわたって設け、詳しくは、リヤピラーアウタパネル7の上下方向にわたって設けた時、送風経路体30とリヤピラーアウタパネル7との間には、送風経路31が形成されると共に、これら両者7,30間には、車両前方から走行風を取入れる取入れ口17と、該取入れ口17から取入れた走行風を、送風経路31を介して車両後方に排出する排出口18とが形成される。換言すれば、送風経路体30は取入れ口17と排出口18とを備えたものである。
【0042】
上述の送風経路体30は合成樹脂で形成されると共に、軽量化を目的として内部中空に形成されており、図5のC−C断面を図7に示すように、その上部においては排出口18近傍におけるリヤピラーアウタパネル7の外面と、送風経路体30の内面とが互に平行に形成され、かつ両者7,30間の隙間G1が相対的に狭く形成されている。
【0043】
図5のD−D断面を図8に示すように、送風経路体30の下部においても排出口18近傍におけるリヤピラーアウタパネル7の外面と、送風経路体30の内面とが互に平行に形成されるが、下部においては両者7,30間の隙間G2が相対的に広く形成されている。
【0044】
ここで、上述の隙間G1,G2は、送風経路体30の上部から下部にかけて漸増するように形成されたものである。また、上述の取入れ口17(クオータウインド20の外面と送風経路体30の前端内面と段差参照)は上下方向においてその開口面積に大差がないように形成されている。
上述の隙間G1,G2により排出口18から排出される走行風の流速を上下方向で変化させたものであり、詳しくは、排出口18から排出される走行風の流速を、下方に対して上方が速くなるように構成したものである。
【0045】
図6に示す作用説明図を参照して、乱流発生の抑制について説明すると、取入れ口17から、リヤピラー6と送風経路体30との間の送風経路31に流入した走行風は、隙間Gで絞られてその流速が速くなり、排出口18からも流出する流速の速い風(図6の矢印m参照)で、送風経路体30の車外側面を流れる風(図6の矢印n参照)に対抗できるので、走行風の車両後面への巻き込み(乱流)の発生が抑制されると共に、剥離ポイントが後方に移行する。
【0046】
排出口18から排出される走行風の流速が速い程、剥離ポイントはより後方に移行するので、上述の各隙間G1,G2の形成により、実際のリヤピラー6は前傾していても、あたかもリヤピラー6を上下方向に真っ直ぐに立てた場合と同様に剥離ポイントが上下方向のほぼ同一の位置に形成され、車両後方に流れる走行風が整流されて、空力特性の向上を図ることができる。
【0047】
このように、図5〜図8で示した実施例2の車両の側部車体構造は、車両1の後部に配設されたバックドア2の左右側部に車両側面視で前傾して配設されたリヤピラー6を備えた車両の側部車体構造であって、上記リヤピラー6に、車両前方から走行風を取入れる取入れ口17と、該取入れ口17から取入れた走行風を車両後方に排出する排出口18と、を備えた送風経路体30が車両上下方向にわたって設けられ、上記送風経路体30は、上記排出口18から排出される走行風の流速を上下方向で変化させる流速可変手段(隙間G1、G2参照)を備えたものである(図5〜図8参照)。
【0048】
この構成によれば、上記送風経路体30の流速可変手段(隙間G1、G2参照)が、上述の排出口18から排出される走行風の流速を上下方向で変化させるので、リヤピラー6の前傾形状に左右されることなく、車体側面から後方に流れる走行風の乱流を防止することができて、該走行風を適切な位置で剥離させ、空力性能の向上を図ることができる。
つまり、車両側面視で前傾して配設されたリヤピラー6を用いつつ、空力性能の向上を図るので、車両デザインと空力性能とを両立させて、燃費性能を向上させることができる。
【0049】
しかも、上記流速可変手段(隙間G1,G2参照)は、上記排出口18から排出される走行風の流速を下方より上方が速くなるように構成されたものである(図7、図8参照)。
この構成によれば、リヤピラー6が前傾した形状であっても、流速可変手段(隙間G1,G2参照)で排出口18から排出される走行風の流速を下方に対して上方が速くなるように構成したので、リヤピラー6の上下方向において剥離ポイントが前後にずれるのを防止し、かつ上下方向の剥離ポイントを可及的後方にコントロールすることができて、空力性能の向上を図ることができる。
【0050】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の流速可変手段は、実施例1のリブ21,22と、実施例2の隙間G1,G2に対応するも、
この発明は上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0051】
1…車両
2…バックドア
6…リヤピラー
13,30…送風経路体
17…取入れ口
18…排出口
19…導風部
21,22…リブ(流速可変手段)
G1,G2…隙間(流速可変手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後部に配設されたバックドアの左右側部に車両側面視で前傾して配設されたリヤピラーを備えた車両の側部車体構造であって、
上記リヤピラーに、車両前方から走行風を取入れる取入れ口と、該取入れ口から取入れた走行風を車両後方に排出する排出口と、を備えた送風経路体が車両上下方向にわたって設けられ、
上記送風経路体は、上記排出口から排出される走行風の流速を上下方向で変化させる
流速可変手段を備えたことを特徴とする
車両の側部車体構造。
【請求項2】
上記流速可変手段は、上記排出口から排出される走行風の流速を下方より上方が速くなるように構成された
請求項1記載の車両の側部車体構造。
【請求項3】
上記流速可変手段は、上記送風経路体の内部に車両前後方向に向けて配設されたリブにより構成された
請求項2記載の車両の側部車体構造。
【請求項4】
上記取入れ口は、後方に向かって先細り形状を成した導風部を備えた
請求項1〜3の何れか1項に記載の車両の側部車体構造。
【請求項5】
上記送風経路体は、上記リヤピラーの外側から脱着可能に取付けられた
請求項1〜4の何れか1項に記載の車両の側部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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