説明

車両の内装構造

【課題】外観品質を向上させることができる車両の内装構造を提供する。
【解決手段】第1内装部材11の端部12Uが第2内装部材17の表面に当接して見切りラインを形成している車両の内装構造であって、前記見切りラインは縦方向に湾曲した湾曲部を有し、前記第2内装部材の表面に、前記見切りラインの湾曲部に近接して沿う突条27が形成されている。前記第2内装部材17は表皮材で覆われ、前記第1内装部材111の上下方向中間部に開口が形成され、第1内装部材11の開口の下方に車室内側に膨出する膨出部が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
第1内装部材の端部が第2内装部材の表面に当接して見切りラインを形成している車両の内装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の車両の内装構造の一例として特許文献1に記載された自動車用ドアトリムがある。この自動車用ドアトリムでは、ロアベース4(第1内装部材に相当)の上縁側のフランジ部4aに、剛性を持たせるためほぼ全長に亘って厚肉部4bを形成し、前記厚肉部4bに段差4cを設けてある。そして、フランジ部4aの上縁部にほぼ全長に亘って突条4dを形成すると共に、この突条4dをセンタベース3(第2内装部材に相当)に形成されたアームレスト部3aに下方より圧着させることにより、アームレスト部3aにフランジ部4aを線接触させて見切りラインを形成し、これにより、センタベース3やロアベース4に反りや変形があっても接合部に隙間が発生するのを防いでいる。前記見切りラインの近傍のアームレスト部3aの表面は平坦である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3579588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の構造によれば、見切りラインの近傍のアームレスト部の表面は平坦であるために、見切りラインが縦方向に湾曲した湾曲部を有している場合、見切りラインを形成するロアベースの端部の端縁が乗員から見えやすくなり外観品質が低下する。
本発明は上記実状に鑑みて成されたもので、その目的は、外観品質を向上させることができる車両の内装構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特徴は、
第1内装部材の端部が第2内装部材の表面に当接して見切りラインを形成している車両の内装構造であって、
前記見切りラインは縦方向に湾曲した湾曲部を有し、
前記第2内装部材の表面に、前記見切りラインの湾曲部に近接して沿う突条が形成されている点にある。(請求項1)
【0006】
この構成によれば、前記第2内装部材の表面に、前記見切りラインの湾曲部に近接して沿う突条が形成されているから、第1内装部材の端部の端縁を第2内装部材の突条により覆い隠すことができ、外観品質を向上させることができる。
また、乗員から目えやすい見切りラインの湾曲部のみを隠すことができる為、第2内装部材の重量を必要以上に増加させることが無く、ヒケの発生による製品寸法のバラつきも防ぐことができる。(請求項1)
【0007】
本発明において、
前記第2内装部材は表皮材で覆われ、
前記第1内装部材の上下方向中間部に開口が形成され、
前記第1内装部材の開口の下方に車室内側に膨出する膨出部が形成され、
前記第2内装部材の上側周縁部が裏側に折曲されて、前記第2内装部材の上側周縁部の下方の第2内装部材本体部が前記第1内装部材の開口に嵌め込まれるとともに、前記第2内装部材の上側周縁部が前記第1内装部材の開口の上側周縁部に固定され、
前記第1内装部材の端部は前記開口の上側周縁部であり、
前記突条の下方に位置する前記膨出部に艤装部材が上方から取り付けられていると、次の作用を奏することができる。(請求項2)
【0008】
第2内装部材の表面に突条が形成されているから、艤装部材を第1内装部材の膨出部に上方から取り付ける場合、表皮材で覆われて傷つきにくい第2内装部材の突条に艤装部材が当たりやすくなる。つまり、艤装部材が第1内装部材より先に第2内装部材の突条に当たり、第1内装部材及び第2内装部材の傷つきを防止することができて製品の仕上がり品質を向上させることができる。(請求項2)
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、外観品質を向上させることができ、軽量化を図ることができ、製品寸法のバラつきも防ぐことができる車両の内装構造を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ドアトリムアッシーを車室内側から見た側面図
【図2】(a)は図1のA−A断面図、(b)は図1のC−C断面図
【図3】ドアトリムアッシーをドアパネルに取付ける様子を示す分解斜視図
【図4】ドアトリムの分解斜視図
【図5】ドアとシートの位置関係を示す図
【図6】アームレストアッパーの前部を車室内側から見た側面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図3,図5に、自動車の車体の側部に設けられるフロントドア1を示してある。このフロントドア1は、窓用開口2Hが上部に形成されたドアパネル2と、複数のクリップなどによりドアパネル2に固定されて窓用開口2Hの下方のドアパネル2を覆うドアトリム3とを備えている。そして、前記窓用開口2Hにウインドガラス4が昇降自在に設けられている。
【0012】
[ドアパネル2の構造]
ドアパネル2は車室外側のアウタパネル9と車室内側のインナパネル10とから成る。アウタパネル9とインナパネル10は周縁部同士が接合され、周縁部よりも内方側の内方部同士が互いに間隔を空けて対向している。
【0013】
[ドアトリム3の構造]
図4に示すように、ドアトリム本体を構成するボード11(第1内装部材に相当)の上側の上下方向中間部に、ドア前方側Fr(ドアトリム前方側、車両前方側)になるにつれて上下方向の幅が狭くなる開口12が形成されている。この開口12の下側周縁部12Sは略水平に形成され、開口12の上側周縁部12Uはドア前方側Frほど下方に位置するように傾斜し、前記上側周縁部12Uの前部が縦方向に湾曲して下側周縁部12Sの前端に接続している。
【0014】
[アームレスト18の構造]
前記ボード11の開口12の下方に、車室内側に膨出するアームレスト本体14(膨出部に相当)が形成されている。アームレスト本体14の後部(ドア後方側Rrの部分)の上端部は開口し、アームレスト本体14の後部以外の部分(前部及びドア前後方向中間部)の上端部に上壁16が設けられている。この上壁16に、パワーウインドなどを入り切りするスイッチ類の収容口16Hが形成され、上壁16の下方のアームレスト本体14内に前記スイッチ類が収容されている。
【0015】
そして、図1,図3,図4に示すように、ボード11の開口12とアームレスト本体14の後部の上端部とに、表皮材で覆われたアームレストアッパー17(第2内装部材に相当)が取り付けられ、アームレスト本体14とアームレストアッパー17と後述のスイッチベゼル15とで乗員の腕を載せるアームレスト18を構成している。アームレスト18の腕載置面は略水平に設定されている。
【0016】
前記アームレストアッパー17は、前記開口12に対応する形状の側壁19と、側壁19の下側周縁部19Sの後部から車室内側に張り出す張り出し壁20とを備えている。図2(a),図4,図6に示すように、側壁19の上側周縁部19U(第2内装部材の上側周縁部に相当)は裏側(車室外側)に折曲され、前記上側周縁部19Uの車室外側の先端からフランジ状の複数の溶着部19Kが上側に突出している。また、前記張り出し壁20のドア前方側Frに位置する前記側壁19の下側周縁部19Sからフランジ状の複数の溶着部19Kが下側に突出している。溶着部19Kには貫通孔19A(図6参照)が形成されている。
【0017】
そして、前記側壁19の上側周縁部19Uと下側周縁部19Sの間の側壁本体部19H(上側周縁部の下方の第2内装部材本体部に相当)がボード11の開口12に車室外側から嵌め込まれ(図4参照)、側壁19の上側周縁部19Uの複数の溶着部19Kが、前記開口12の上側周縁部12Uの裏面に溶着固定され、側壁19の下側周縁部19Sの複数の溶着部19Kが、前記上壁16の車室外側の端部に溶着固定されている。さらに、張り出し壁20の車室内側の端部から下方に延びるフランジ20Fが、アームレスト本体14の車室内側の後部側壁14Sの上端部に溶着固定されている。
【0018】
これにより、ボード11の開口12の上側周縁部12U(第1内装部材の端部に相当)がアームレストアッパー17の側壁19の上側周縁部19Uの表面に当接して見切りラインL(図1参照)を形成している。前記見切りラインLは縦方向に湾曲した湾曲部L1を前部に有している。この湾曲部L1はドア前方側Frほど下方に位置している。
【0019】
上記のように、前記見切りラインLが縦方向に湾曲した湾曲部L1を前部に有しているデザインの場合、図5に示すように、湾曲部L1の後方に位置するシート7に着座した乗員から、前記湾曲部L1を形成するボード11の開口12(図4参照)の上側周縁部12Uの端縁が見えやすく、車室内の外観を損ねる虞がある。
特に、前記開口12の上側周縁部12Uを下側のアームレストアッパー17の側壁19の表面に当接させる構造では、前記開口12の上側周縁部12Uが浮き上がって車室内側に突出しやすい。前記上側周縁部12Uの端縁が下方を向いている個所(前記上側周縁部12Uのドア後方側Rrの部分)は多少の浮き上がりが生じていても前記上側周縁部12Uの端縁が下を向いており、前記シート7に着座した乗員から見えないため外観を損ねることはない。
しかしながら、前記見切りラインLが縦方向に湾曲する箇所においては、上側周縁部12Uの端縁がドア後方側Rrを向く為、後方のシート7に着座する乗員の目に触れることになる。
【0020】
そこで、図2(b),図6に示すように、前記アームレストアッパー17の側壁19の上側周縁部19Uの表面に、前記見切りラインLの湾曲部L1に近接して沿う突条27が形成され、この突条27で前記湾曲部L1を車室内側から覆い隠している。前記突条27は断面において頂部が丸みを帯びたくの字状に形成されている。
【0021】
また、前記突条27の下方に位置するアームレスト本体14の上壁16にスイッチベゼル15(艤装部材に相当)が上方から取り付けられ、スイッチベゼル15の後端部がアームレスト本体14の張り出し壁20の前端部に突き合わされている。
【0022】
スイッチベゼル15の周部15Sは下方にフランジ状に折曲され、前記周部の下端から下方に複数の係合爪15Tが突出している。そして、複数の係合爪15Tが、前記アームレスト本体14の上壁16に形成された複数の係合孔16Kに上方から各別に挿入係合されている。
【0023】
[オーナメント29の構造]
前記開口12の後半部の上方のボード上部に、ドア前後方向に細長く、ドア後方側Rrほど上下方向の幅が短いオーナメント29が車室内側から重ね合わされ、オーナメント29の複数の係合爪29Tがボード上部の複数の係合孔11Hに各別に係合している。これにより、図2(a)に示すように、オーナメント29がアームレストアッパー17の側壁19に上から被さる合わせ構造になり、アームレストアッパー17の後端部の上側コーナー部17C(図1参照)が鋭角に尖った意匠になっている。オーナメント29はメッキ塗装され、乗員がオーナメント29からより高い質感を得るよう構成されている。
【0024】
上記の構成により、
(1) 前記アームレストアッパー17の側壁19の表面に、前記見切りラインLの湾曲部L1に近接して沿う突条27が形成されているから、ボード11の開口12の上側周縁部12Uの端縁をアームレストアッパー17の突条27により覆い隠すことができ、外観品質を向上させることができる。
また、乗員から目えやすい見切りラインLの湾曲部L1のみを隠すことができる為、アームレストアッパー17の重量を必要以上に増加させることが無く、ヒケの発生による製品寸法のバラつきも防ぐことができる。
【0025】
(2) スイッチベゼル15をボード11のアームレスト本体14に上方から取り付ける場合、表皮材で覆われて傷つきにくいアームレストアッパー17の突条27にスイッチベゼル15が当たりやすくなる。
つまり、スイッチベゼル15がボード11より先にアームレストアッパー17の突条27に当たり、ボード11及びアームレストアッパー17の傷つきを防止することができて製品の仕上がり品質を向上させることができる。
特に、アームレストアッパー17の前端の様に尖っているデザインにおいては、スイッチベゼル15の前端がボード11に上下方向で近接している為、アームレストアッパー17の側壁19の表面が扁平であると、組み付け動作によってはスイッチベゼル15の係合爪15Tがボード11に当たりやすいが、本発明の上記の構成によれば、上記のように、ボード11及びアームレストアッパー17の傷つきを防止することができる。
【符号の説明】
【0026】
11 第1内装部材(ボード)
12 開口(第1内装部材の開口)
12U 第1内装部材の端部(第1内装部材の開口の上側周縁部)
14 膨出部(アームレスト本体)
15 艤装部材(スイッチベゼル)
17 第2内装部材(アームレストアッパー)
19H 第2内装部材本体部(側壁本体部)
19U 第2内装部材の上側周縁部
27 突条
L 見切りライン
L1 湾曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1内装部材の端部が第2内装部材の表面に当接して見切りラインを形成している車両の内装構造であって、
前記見切りラインは縦方向に湾曲した湾曲部を有し、
前記第2内装部材の表面に、前記見切りラインの湾曲部に近接して沿う突条が形成されている車両の内装構造。
【請求項2】
前記第2内装部材は表皮材で覆われ、
前記第1内装部材の上下方向中間部に開口が形成され、
前記第1内装部材の開口の下方に車室内側に膨出する膨出部が形成され、
前記第2内装部材の上側周縁部が裏側に折曲されて、前記第2内装部材の上側周縁部の下方の第2内装部材本体部が前記第1内装部材の開口に嵌め込まれるとともに、前記第2内装部材の上側周縁部が前記第1内装部材の開口の上側周縁部に固定され、
前記第1内装部材の端部は前記開口の上側周縁部であり、
前記突条の下方に位置する前記膨出部に艤装部材が上方から取り付けられている請求項1記載の車両の内装構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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