説明

車両の前端部構造

【課題】歩行者保護の向上を図ることの可能な車両の前端部構造を提供する。
【解決手段】バンパビーム部材(30)は、左右一対のフロントサイドメンバ部材(10)の各先端に車両前方に突出するよう取り付けられており、バンパビーム部材の上方には、ラジエータコアサポート(20)のアッパサポート部材(22)から車両前方に突出するとともに車幅方向に延びるようにして補助部材(50)が設けられてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前端部構造に係り、特に歩行者保護の向上を図る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の前端部において、車両の骨格をなすべく鋼板を加工してなる車体部材は、一般には左右一対のサイドメンバ部材の先端部分にラジエータコアサポート部材を接合させるとともにバンパビーム部材を取り付けるようにして構成されている。
このような車両の前端部は、歩行者との接触時において歩行者が受ける被害を最小限に留める必要があり、歩行者を保護する構造が種々開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、車両の前端構造をラジエータコアサポート部材の一部であるアッパメンバに対してラジエータが変位可能に構成し、アッパメンバがラジエータと比較して優先的に変形するようにして歩行者を保護する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−335263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、安全性向上の観点から、車両の前端部のデザインのさらなる改善が図られており、衝突時等に潰れるよう調整された衝撃吸収部材を介してバンパビーム部材をサイドメンバ部材の先端部分に取り付けた車両の前端部構造が開発されている。
このような構造では、バンパビーム部材がラジエータコアサポート部材よりも大きく前方に突き出すこととなり、バンパビーム部材の高さ位置が歩行者の膝の高さ位置に略等しいため、バンパビーム部材が歩行者の膝に当たった場合、膝上部を支持する車体部材が無いため、歩行者の上体が膝の関節周りに大きく車両後方に倒れ込むおそれがあり、歩行者を十分に保護できず、好ましいことではない。
【0006】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、歩行者保護の向上を図ることの可能な車両の前端部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1の車両の前端部構造は、左右一対のフロントサイドメンバ部材の各先端部上面にラジエータコアサポート部材が接合されて渡されるとともに、該左右一対のフロントサイドメンバ部材の各先端にバンパビーム部材が取り付けられて渡された車両の前端部構造であって、前記ラジエータコアサポート部材は、車両上方に延びる左右一対のサイドサポート部材及びこれら一対のサイドサポート部材の上端を繋ぐアッパサポート部材とからなり、前記バンパビーム部材は、前記左右一対のフロントサイドメンバ部材の各先端に車両前方に突出するよう取り付けられており、前記バンパビーム部材の上方には、前記アッパサポート部材から車両前方に突出するとともに車幅方向に延びるようにして補助部材が設けられてなることを特徴とする。
【0008】
請求項2の車両の前端部構造では、請求項1において、前記補助部材は、車両前方に延びるフランジを有し、断面がハット状に形成されてなることを特徴とする。
請求項3の車両の前端部構造では、請求項1において、前記フランジには、該フランジに沿って延びるビードが形成されてなることを特徴とする。
請求項4の車両の前端部構造では、請求項1乃至3のいずれかにおいて、前記バンパビーム部材は、前記左右一対のフロントサイドメンバ部材の各先端に、車両前方に突出するよう設けられ、潰れることで衝撃を吸収するクラッシュ部材を介して取り付けられてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1の車両の前端部構造によれば、バンパビーム部材の上方に、ラジエータコアサポート部材のアッパサポート部材から車両前方に突出し車幅方向に延びる補助部材を設けるようにしたので、歩行者の脚部が車両の前端部に接触した場合において、歩行者の脚上部が補助部材と当接することになり、歩行者の上体が膝の関節周りで車両後方に倒れ込むことが殆ど無くなる。
【0010】
従って、車両の前端部が歩行者と接触した場合であっても、歩行者が受ける被害を最小限に留めることができ、歩行者保護の向上を図ることができる。
請求項2の車両の前端部構造によれば、補助部材がハット状の断面を有していることで、補助部材としてある程度の剛性を確保しつつ、歩行者と接触した場合に変形して衝撃力を吸収可能であり、車両前方に延びるフランジを有していることで、フランジが歩行者と接触した場合に変形することによって衝撃力を吸収可能である。
【0011】
請求項3の車両の前端部構造によれば、フランジに沿ってビードが形成されていることで、フランジが歩行者と接触した場合において容易に変形して衝撃力を吸収可能である。
請求項4の車両の前端部構造によれば、バンパビーム部材は、左右一対のフロントサイドメンバ部材の各先端に車両前方に突出するクラッシュ部材を介して取り付けられているので、クラッシュ部材が車両前方に大きく突出している場合であっても、バンパビーム部材の上方に補助部材を設けることで、歩行者保護の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る車両の前端部構造を示す斜視図である。
【図2】車両の前端部構造を図1の矢視A方向から見た図である。
【図3】図1のB−B線に沿う断面図である。
【図4】歩行者の脚部が車両の前端部に接触した場合の歩行者の脚部の挙動を示す図である。
【図5】本発明に係る車両の前端部構造の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明における車両の前端部構造の斜視図である。
同図に示すように、車両の前端部は、大きくは、左右一対のフロントサイドメンバ10、10、フロントサイドメンバ10、10の先端部上部に接合されたラジエータコアサポート20、フロントサイドメンバ10、10の先端部に取り付けられたバンパビーム30及び本発明に係るバンパリーンフォース40から車体が構成されている。
【0014】
なお、ここでは、車体部材であるフロントサイドメンバ10、10、ラジエータコアサポート20、バンパビーム30及び本発明に係るバンパリーンフォース40についてのみ説明するが、車両の前端部には、図示しないものの、フロントサイドメンバ10、10の車両外側に位置してそれぞれフロントフェンダが配設され、ラジエータコアサポート20及びバンパリーンフォース40の上側に位置してフードが配設され、バンパビーム30及びバンパリーンフォース40を覆うようにして樹脂製のバンパフェイシアが設けられている。なお、ラジエータコアサポート20は主として図示しないラジエータを支持するための部材である。
【0015】
詳しくは、フロントサイドメンバ10、10は、フロントサイドメンバ部材12、12の各先端にフランジ14が形成されて構成され、ラジエータコアサポート20は、アッパサポート部材22と左右一対のサイドサポート部材24、24から構成されている。また、バンパビーム30は、バンパビーム部材32の車両前方が隙間を有してバンパコア34で覆われるとともに、バンパビーム部材32の左右両端部に、車両前方に突出し、潰れることで衝撃を吸収する左右一対のクラッシュ部材36、36が接合され、このクラッシュ部材36、36の各後端に上記フランジ14に対応するフランジ38がそれぞれ形成されて構成されている。
【0016】
そして、車両の前端部は、基本的に、フロントサイドメンバ部材12、12の先端部上面にサイドサポート部材24、24が接合され、フロントサイドメンバ部材12、12の各先端のフランジ14がそれぞれクラッシュ部材36、36の各後端のフランジ38と接合されて構成されている。
本発明に係るバンパリーンフォース40は、左右一対のサイドブラケット42、42、一対の細長部材からなるステー44、44、バンパリーンフォース部材(補助部材)50から構成されている。詳しくは、バンパリーンフォース40は、バンパリーンフォース部材50の両端がサイドサポート部材24、24から車両前方に延びるサイドブラケット42、42の先端部に接合されるとともに、バンパリーンフォース部材50の中央部近傍とアッパサポート部材22とを連結するように、一対のステー44、44の先端がバンパリーンフォース部材50に接合され、後端がアッパサポート部材22に接合されている。
【0017】
図3を参照すると、図1のB−B線に沿う断面図が示されているが、バンパリーンフォース部材50は、断面がハット状をなし、平らな上面52と車両前方に延びるフランジ54を有している。
同図には、バンパフェイシア60とフード70とが合わせて示されているが、バンパリーンフォース40はバンパフェイシア60の上部を支持する機能を有し、バンパフェイシア60の上部が上面52に締結部材によって固定されている。これより、バンパフェイシア60は、上部がバンパリーンフォース40に固定され、下部が例えばバンパビーム30のバンパコア34の下面に締結部材によって固定されるようにして車両の前端部に設けられている。
【0018】
そして、バンパリーンフォース40は、車両の前端部が歩行者と接触した場合に、歩行者を保護する機能をも有している。即ち、バンパビーム30の高さ位置が歩行者の膝の高さ位置に略等しいため、バンパビーム30が歩行者の膝に当たった場合、歩行者の上体が膝の関節周りに大きく車両後方に倒れ込むおそれがあるのであるが、バンパリーンフォース40のバンパリーンフォース部材50が、歩行者の脚上部を支え、かかる歩行者の上体の車両後方への倒れ込みを防止する機能を有している。
【0019】
図4を参照すると、図3に加え、歩行者の脚部100が車両の前端部に接触した場合の歩行者の脚部100の挙動が示されているが、同図に示すように、歩行者の脚部100は、略同時に膝102がバンパビーム30の位置でバンパフェイシア60と接触するとともに、脚上部104がバンパリーンフォース部材50の位置でバンパフェイシア60と接触する(二点鎖線)。
【0020】
そして、車両が前方に走行している場合、歩行者の脚部100がバンパフェイシア60に接触した後、脚上部104はバンパリーンフォース部材50と当接することになる(実線)。
このように脚上部104がバンパリーンフォース部材50と当接すると、歩行者の上体は膝102の関節周りに車両後方に倒れ込むことが殆ど無くなり、車両の前端部が歩行者と接触した場合であっても、歩行者が受ける被害を最小限に留めることができ、歩行者保護の向上を図ることができる。
【0021】
特に、バンパリーンフォース部材50は、ハット状の断面を有していることからある程度の剛性が確保されているが、下面が開放されているので、歩行者と接触した場合に変形して衝撃力を吸収可能である。また、一対のステー44、44は細長部材からなるので、ステー44、44が座屈することによっても衝撃力を吸収可能であり、歩行者の受ける衝撃を良好に緩和することができる。
【0022】
さらに、本実施形態では、バンパリーンフォース部材50は車両前方に延びるフランジ54を有していることから、フランジ54が歩行者と接触した場合に変形することによっても衝撃力を吸収可能であり、歩行者の受ける衝撃をさらに緩和することができる。
この場合において、フランジ54の長さを適宜設定することにより、歩行者の膝102の曲げ角度を規制することが可能である。
【0023】
また、図5を参照すると、本発明に係る車両の前端部構造の変形例が図3と同様に示されており、同図に示すように、バンパリーンフォース部材50に代えて、フランジ54’に当該フランジ54’に沿って延びるビード56を形成したバンパリーンフォース部材50’を採用するようにしてもよい。
このようにフランジ54’にビード56が形成されていると、フランジ54’が歩行者と接触した場合において容易に変形して衝撃力を吸収可能であり、歩行者の受ける衝撃をより一層緩和することができる。これにより、さらなる歩行者保護の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0024】
10 フロントサイドメンバ
20 ラジエータコアサポート
30 バンパビーム
40 バンパリーンフォース
42 サイドブラケット
44 ステー
50、50’ バンパリーンフォース部材(補助部材)
54、54’ フランジ
56 ビード
60 バンパフェイシア
70 フード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対のフロントサイドメンバ部材の各先端部上面にラジエータコアサポート部材が接合されて渡されるとともに、該左右一対のフロントサイドメンバ部材の各先端にバンパビーム部材が取り付けられて渡された車両の前端部構造であって、
前記ラジエータコアサポート部材は、車両上方に延びる左右一対のサイドサポート部材及びこれら一対のサイドサポート部材の上端を繋ぐアッパサポート部材とからなり、
前記バンパビーム部材は、前記左右一対のフロントサイドメンバ部材の各先端に車両前方に突出するよう取り付けられており、
前記バンパビーム部材の上方には、前記アッパサポート部材から車両前方に突出するとともに車幅方向に延びるようにして補助部材が設けられてなることを特徴とする車両の前端部構造。
【請求項2】
前記補助部材は、車両前方に延びるフランジを有し、断面がハット状に形成されてなることを特徴とする、請求項1記載の車両の前端部構造。
【請求項3】
前記フランジには、該フランジに沿って延びるビードが形成されてなることを特徴とする、請求項2記載の車両の前端部構造。
【請求項4】
前記バンパビーム部材は、前記左右一対のフロントサイドメンバ部材の各先端に、車両前方に突出するよう設けられ、潰れることで衝撃を吸収するクラッシュ部材を介して取り付けられてなることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか記載の車両の前端部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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