車両の変速装置
【課題】簡単な構造及び制御で、走行フィーリングを向上させる。
【解決手段】奇数段の変速ギヤが設けられた第1の入力軸4と、リバースギヤを含む偶数段の変速ギヤが設けられた第2の入力軸5と、エンジン10の駆動軸11と第1の入力軸4とを接続及び切断に切換可能な第1のクラッチ2と、駆動軸11と第2の入力軸5とを接続及び切断可能な第2のクラッチ3と、を備えた車両の変速装置であって、3速用遊転ギヤ33bと6速用遊転ギヤ36bとの間を、ワンウェイクラッチ8を介して動力を一方向のみ伝達可能とした。
【解決手段】奇数段の変速ギヤが設けられた第1の入力軸4と、リバースギヤを含む偶数段の変速ギヤが設けられた第2の入力軸5と、エンジン10の駆動軸11と第1の入力軸4とを接続及び切断に切換可能な第1のクラッチ2と、駆動軸11と第2の入力軸5とを接続及び切断可能な第2のクラッチ3と、を備えた車両の変速装置であって、3速用遊転ギヤ33bと6速用遊転ギヤ36bとの間を、ワンウェイクラッチ8を介して動力を一方向のみ伝達可能とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の変速装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の変速装置の1つとして、デュアルクラッチトランスミッションが開発されている。
デュアルクラッチトランスミッションは2つのクラッチと2つの入力軸を備えており、クラッチを介して2つの入力軸に動力を交互に伝達し、夫々の入力軸に備えた変速ギヤを交互に接続して、出力軸に動力を伝達可能な構成となっている。このような構成のデュアルクラッチトランスミッションでは、変速時間を短縮することが可能となるとともに、トルクコンバータを使用せずに乾式クラッチを使用することができ、伝達効率を向上させることができる。
【0003】
ところで、デュアルクラッチトランスミッションにおいて、変速比の最も高い最低変速段(例えば1速)の変速ギヤと当該変速ギヤを支持する副軸との間にワンウェイクラッチを介装する方法が開発されている(特許文献1、2)。このように、最低変速段の変速ギヤとその支持軸(副軸)との間にワンウェイクラッチを介装することで、最低変速段用に同期装置(シンクロスリーブ)を必要とすることなく、変速装置の小型化を図ることができるとともに、発進時の変速ショックの発生を抑えることができる。
【0004】
また、副軸に支持された2つの変速ギヤ間にシフティングエレメントを備えたデュアルクラッチトランスミッションも提案されている(特許文献3)。このシフティングエレメントは、2つの変速ギヤを介して2つの入力軸を接続または切断に切換可能であって、クラッチや同期装置とともに作動制御されることで、各変速段の変速を実現可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−117007号公報
【特許文献2】特開2001−82554号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2010/0282019号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記デュアルクラッチトランスミッションのように、クラッチに乾式クラッチを用いた変速装置では、クラッチの耐久性を確保するためにクラッチの入力側と出力側との回転速度差を小さくする必要があるが、発進時に回転速度差が大きく発生してしまう虞がある。
そこで、発進時においてクラッチでの回転速度差を抑えるために、1速ギヤの減速比を高くする対処方法があるが、減速比の高い変速段ではエンジンブレーキが過度に発生し走行フィーリングを損ねるといった問題点が発生する。
【0007】
この問題点に対し、エンジンブレーキの発生量が適切になるように、クラッチの開放及びスリップ契合を制御する方法があるが、制御が複雑化してしまう。
また、上記特許文献1や特許文献2の変速装置では、前進側の最低変速段の変速ギヤにワンウェイクラッチが設けられているため、前進時及び後進時の両方で、クラッチでの回転速度差の抑制とエンジンブレーキの過度な発生の抑制とを両立させることが不可能である。
【0008】
後進時にも対応可能なように、リバースギヤにもワンウェイクラッチを備える方法が考えられるが、部品の増加により変速機の構造が複雑化して、コスト、重量、及び車両への搭載スペースの増加を招くといった問題点が発生する。
また、上記特許文献3のようにシフティングエレメントを備えた変速装置では、クラッチや同期装置と同様にシフティングエレメントの作動制御が必要となるため、制御の複雑化を招くこととなる。
【0009】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、簡単な構造及び制御で、前進及び後進の両方の発進時での変速ショックの発生を抑えるとともに、過度なエンジンブレーキを回避して、走行フィーリングが良好となる車両の変速装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、2つのグループに分けた複数の変速段のうちの第1のグループの変速段の変速ギヤが設けられた第1の入力軸と、複数の変速段のうちのリバースギヤを含む第2のグループ変速段の変速ギヤが設けられた第2の入力軸と、車両に搭載されたエンジンの駆動軸と第1の入力軸とを接続及び切断の切換可能な第1の接続切換手段と、駆動軸と第2の入力軸とを接続及び切断の切換可能な第2の接続切換手段と、第1のグループの変速段の変速ギヤ及び第2のグループの変速段の変速ギヤに選択的に接続可能な出力軸と、を備え、エンジンの駆動軸と車両の駆動輪との間の動力伝達路に介装される車両の変速装置であって、第1のグループのうちの1つの変速段の変速ギヤと、第2のグループのうちの1つの変速段の変速ギヤとの間を、ワンウェイクラッチを介して動力を一方向のみ伝達可能としたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項2の発明は、請求項1において、第1のグループ及び第2のグループは、何れか一方が奇数の変速段であり、他方が偶数の変速段であることを特徴とする。
また、請求項3の発明は、請求項2において、ワンウェイクラッチは、奇数の変速段のうち最も減速比の高い変速段の変速ギヤと、偶数の変速段のうち最も減速比の低い変速段の変速ギヤとの間で動力を伝達可能としたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1項において、第1の接続切換手段は、駆動軸と第1の入力軸との間に介装された第1のクラッチであり、第2の動力接続切換手段は、駆動軸と第2の入力軸との間に介装された第2のクラッチであることを特徴とする。
また、請求項5の発明は、請求項1〜3のいずれか1項において、第1の接続切換手段及び第2の接続切換手段は、第1の入力軸及び第2の入力軸のいずれか一方を駆動軸に選択的に接続する切換手段と、当該切換手段と駆動軸との間に介装された第3のクラッチにより構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1の車両の変速装置によれば、第1のグループの変速段の変速ギヤと、第2のグループの変速段の変速ギヤとの間を、ワンウェイクラッチを介して動力を一方向のみ伝達可能としたことで、当該2つの変速ギヤを利用して、駆動軸から出力軸に動力を伝達可能にしつつ、出力軸から駆動軸に動力を伝達不能として、所謂エンジンブレーキを不能とすることができる。
【0014】
これにより、第1のグループの変速ギヤと第2のグループの変速ギヤとを利用して変速比の高い変速を可能としつつ、エンジンブレーキを不能とすることができるので、車両発進時における変速ショックを抑えることができるとともに、変速比の高い変速段での過度なエンジンブレーキを回避して走行フィーリングを向上させることができる。
更に、ワンウェイクラッチを介して接続される2つの変速ギヤとリバースギヤとを利用することで、後進時においても発進時の変速ショック低減と過度なエンジンブレーキの回避を、簡単な構造及び制御で実現させることができる。
【0015】
また、本発明の請求項2の車両の変速装置によれば、第1のグループ及び第2のグループが、奇数の変速段と偶数の変速段とに分けられるので、いずれか一方のグループの変速段でエンジンにより走行している状態からその前後の変速段に変速する際に、第1の接続切換手段及び第2の接続切換手段の作動を切換えて他方のグループの変速段に変速することができる。したがって、変速段の切断をする前に次の目標変速段を接続するプレシフトが可能となり、迅速な変速を可能にすることができる。
【0016】
また、本発明の請求項3の車両の変速装置によれば、ワンウェイクラッチは、奇数の変速段のうち最も減速比の高い変速段の変速ギヤと、偶数の変速段のうち最も減速比の低い変速段の変速ギヤとの間に設けられているので、当該2つの変速ギヤを利用することで変速比を容易に高くすることができる。
また、本発明の請求項4の車両の変速装置によれば、第1の接続切換手段及び第2の接続手段が夫々クラッチであるので、所謂デュアルクラッチトランスミッションにおいて、簡単な構造及び制御で、前進及び後進の両方の発進時での変速ショックの発生を抑えるとともに、過度なエンジンブレーキを回避することが可能となる。
【0017】
また、本発明の請求項5の車両の変速装置によれば、第3のクラッチと切換手段によって、デュアルクラッチトランスミッションと同様にプレシフトが可能となり、簡単な構造及び制御で、前進及び後進の両方の発進時での変速ショックの発生を抑えるとともに、過度なエンジンブレーキを回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る変速装置の変速機部の模式図である。
【図2】第1の実施形態の変速機部内での1速時における動力の伝達状態を示す説明図である。
【図3】第1の実施形態の変速機部内での2速時における動力の伝達状態を示す説明図である。
【図4】第1の実施形態の変速機部内での3速時における動力の伝達状態を示す説明図である。
【図5】第1の実施形態の変速機部内での4速時における動力の伝達状態を示す説明図である。
【図6】第1の実施形態の変速機部内での5速時における動力の伝達状態を示す説明図である。
【図7】第1の実施形態の変速機部内での6速時における動力の伝達状態を示す説明図である。
【図8】第1の実施形態の変速機部内での7速時における動力の伝達状態を示す説明図である。
【図9】第1の実施形態の変速機部内でのリバース1速時における動力の伝達状態を示す説明図である。
【図10】第1の実施形態の変速機部内でのリバース2速時における動力の伝達状態を示す説明図である。
【図11】第1の実施形態における各変速段でのワンウェイクラッチの偶数段側及び奇数段側の回転速度を示すグラフである。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る変速装置の変速機部の模式図である。
【図13】本発明の第3の実施形態に係る変速装置の変速機部の模式図である。
【図14】本発明の第4の実施形態に係る変速装置の変速機部の模式図である。
【図15】本発明の第5の実施形態に係る変速装置の変速機部の模式図である。
【図16】本発明の第6の実施形態に係る変速装置の変速機部の模式図である。
【図17】本発明の第7の実施形態に係る変速装置の変速機部の模式図である。
【図18】第7の実施形態の変速機部内での1速時における動力の伝達状態を示す説明図である。
【図19】第7の実施形態の変速機部内でのリバース1速時における動力の伝達状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づき説明する。
本発明の第1の実施形態の変速装置は、走行駆動源としてエンジン10を備えた車両に適用され、2個のクラッチ2、3を備えたデュアルクラッチ式の変速装置であって、前進7速及び後進2速の変速段を有する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る変速装置の変速機部1の模式図である。
【0020】
図1に示すように、変速機部1は、軸方向に並べて配置された2個の乾式クラッチ(第1のクラッチ2、第2のクラッチ3)と、2本の入力軸(第1の入力軸4、第2の入力軸5)と、2本の副軸(第1の副軸6、第2の副軸7)と、ワンウェイクラッチ8と、を備えている。
第1のクラッチ2(第1の接続切換手段)は、エンジン10の駆動軸11と第1の入力軸4との間に介装され、駆動軸11と第1の入力軸4との間の動力の伝達及び遮断を切換可能となっている。
【0021】
第2のクラッチ3(第2の接続切換手段)は、エンジン10の駆動軸11と第2の入力軸5との間に介装され、駆動軸11と第2の入力軸5との間の動力の伝達及び遮断を切換可能となっている。
第1の入力軸4は、第1のクラッチ2を挟んでエンジン10とは反対側に駆動軸11と同軸上に配置されており、エンジン10側の端部が第1のクラッチ2に接続されている。第2の入力軸5は、中空状に形成され、内部に第1の入力軸4が挿入されて第1の入力軸4と同軸に配置されるとともに、エンジン10側の端部が第2のクラッチ3に接続されている。
【0022】
第1の副軸6及び第2の副軸7は、第1の入力軸4及び第2の入力軸5と軸線が平行になるように夫々離間して配置されているとともに、デフ20及びドライブシャフト21(出力軸)を介して、図示しない車両の走行駆動輪に動力を伝達可能に構成されている。
第1の入力軸4には、3速用固定ギヤ33aと、5速及び7速用固定ギヤ35aとが第1の入力軸4と一体回転するように固定されている。第2の入力軸5には、2速用固定ギヤ32aと、4速及び6速用固定ギヤ34aとが第2の入力軸5と一体回転するように固定されている。
【0023】
また、第1の副軸6には、エンジン10側から順番に、リバース用遊転ギヤ38b、4速用遊転ギヤ34b及び5速用遊転ギヤ35bが第1の副軸6に対して相対回転可能に枢支されている。第2の副軸7には、エンジン10側から順番に、2速用遊転ギヤ32b、6速用遊転ギヤ36b、3速用遊転ギヤ33b及び7速用遊転ギヤ37bが第2の副軸7に対して相対回転可能に枢支されている。リバース用遊転ギヤ38bは、2速用遊転ギヤ32bに噛合するように配置されている。
【0024】
このようなギヤ配置により、2速用固定ギヤ32aと2速用遊転ギヤ32bとで2速ギヤ32を構成し、3速用固定ギヤ33aと3速用遊転ギヤ33bとで3速ギヤ33を構成し、4速および6速用固定ギヤ34aと4速用遊転ギヤ34bとで4速ギヤ34を構成し、5速及び7速用固定ギヤ35aと5速用遊転ギヤ35bとで5速ギヤ35を構成し、4速及び6速用固定ギヤ34aと6速用遊転ギヤ36bとで6速ギヤ36を構成し、5速及び7速用固定ギヤ35aと7速用遊転ギヤ37bとで7速ギヤ37を構成する。
【0025】
変速機部1には、4つのシンクロスリーブ41、42、43、44が備えられており、シンクロスリーブ41〜44は、図示しないシフトフォークによって第1の副軸6または第2の副軸7の軸線に沿ってスライド移動させられる。このうち第1のシンクロスリーブ41及び第2のシンクロスリーブ42は、第1の副軸6の軸線に沿ってスライド移動可能に設置されている。第3のシンクロスリーブ43及び第4のシンクロスリーブ44は、第2の副軸7の軸線に沿ってスライド移動可能に設置されている。
【0026】
これらのシンクロスリーブ41〜44をスライド移動させることで、第1のシンクロスリーブ41により5速用遊転ギヤ35bを、第2のシンクロスリーブ42により4速用遊転ギヤ34b及びリバース用遊転ギヤ38bを、夫々選択的に第1の副軸6に接続及び切断の切換可能になっているとともに、第3のシンクロスリーブ43により3速用遊転ギヤ33b及び7速用遊転ギヤ37bを、第4のシンクロスリーブ44により2速用遊転ギヤ32b及び6速用遊転ギヤ36bを、夫々選択的に第2の副軸7に接続及び切断の切換可能となっている。
【0027】
即ち、本実施形態の変速機部1では、エンジン10の駆動軸11から入力した動力が、第1のクラッチ2を介して第1の入力軸4に、第2のクラッチ3を介して第2の入力軸5に伝達する。第1の入力軸4には、3速、5速、7速、即ち奇数段(第1のグループ)の変速ギヤ33、35、37が設けられ、第2の入力軸5には、2速、4速、6速、即ち偶数段(第2のグループ)の変速ギヤ32、34、36が設けられている。よって、エンジン10は、2つのクラッチ2、3によって奇数段及び偶数段の変速ギヤに任意に接続可能となっている。
【0028】
更に、3速用遊転ギヤ33bと6速用遊転ギヤ36bとの間には、第2の副軸7に枢支されたワンウェイクラッチ8が設けられている。ワンウェイクラッチ8は、3速用遊転ギヤ33bから6速用遊転ギヤ36bに動力を伝達し、6速用遊転ギヤ36bから3速用遊転ギヤ33bへは動力を伝達不能とする機能を有している。
そして、本実施形態の変速機部1では、2速ギヤ32、3速ギヤ33及び6速ギヤ36を利用して1速を可能にしているとともに、2速ギヤ32、3速ギヤ33、6速ギヤ36及びリバース用遊転ギヤ38bを利用してリバース1速を、2速ギヤ32及びリバース用遊転ギヤ38bを利用してリバース2速を可能としている。
【0029】
各シンクロスリーブ41〜44、第1のクラッチ2及び第2のクラッチ3は、夫々図示しないアクチュエータにより作動され、当該アクチュエータは、シフトレバーの操作やエンジン10の運転状態等に基づいて作動制御される。
次に、図2〜10を用いて、各変速段選択時での変速機部1での作動及び動力の伝達状態を説明する。図2〜10は各変速段選択時での動力の伝達状態を示す説明図であり、図2は1速時、図3は2速時、図4は3速時、図5は4速時、図6は5速時、図7は6速時、図8は7速時、図9はリバース1速時、図10はリバース2速時を示す。なお、図2〜10において、変速機部1内でのエンジン10からの動力の伝達経路を太線にて示している。
【0030】
図2に示すように、1速時では、第2の副軸7と2速用遊転ギヤ32bとが接続するように第4のシンクロスリーブ44を作動するともに、第1のクラッチ2を接続する。これにより、エンジン10の駆動軸11から、第1のクラッチ2、第1の入力軸4、3速用固定ギヤ33a、3速用遊転ギヤ33b、ワンウェイクラッチ8、6速用遊転ギヤ36b、4速及び6速用固定ギヤ34a、第2の入力軸5、2速用固定ギヤ32a、2速用遊転ギヤ32b、第4のシンクロスリーブ44、第2の副軸7、デフ20を介してドライブシャフト21に動力が伝達される。このように、2速、3速及び6速の変速ギヤ32、33、36を利用して1速を構成するので、この各変速ギヤの変速比を合わせて総合的な変速比を大幅に大きくすることができる。また、動力伝達路の中にワンウェイクラッチ8を有するため、ドライブシャフト21からエンジン10の駆動軸11への動力の伝達が不能となる。したがって、1速ではエンジンブレーキが効かなくなる。
【0031】
図3に示すように、2速時では、第2の副軸7と2速用遊転ギヤ32bとが接続するように第4のシンクロスリーブ44を作動するともに、第2のクラッチ3を接続する。これにより、エンジン10の駆動軸11から、第2のクラッチ3、第2の入力軸5、2速用固定ギヤ32a、2速用遊転ギヤ32b、第4のシンクロスリーブ44、第2の副軸7、デフ20を介してドライブシャフト21に動力が伝達される。
【0032】
図4に示すように、3速時では、第2の副軸7と3速用遊転ギヤ33bとが接続するように第3のシンクロスリーブ43を作動するともに、第1のクラッチ2を接続する。これにより、エンジン10の駆動軸11から、第1のクラッチ2、第1の入力軸4、3速用固定ギヤ33a、3速用遊転ギヤ33b、第3のシンクロスリーブ43、第2の副軸7、デフ20を介してドライブシャフト21に動力が伝達される。
【0033】
図5に示すように、4速時では、第1の副軸6と4速用遊転ギヤ34bとが接続するように第2のシンクロスリーブ42を作動するともに、第2のクラッチ3を接続する。これにより、エンジン10の駆動軸11から、第2のクラッチ3、第2の入力軸5、4速及び6速用固定ギヤ34a、4速用遊転ギヤ34b、第2のシンクロスリーブ42、第1の副軸6、デフ20を介してドライブシャフト21に動力が伝達される。
【0034】
図6に示すように、5速時では、第1の副軸6と5速用遊転ギヤ35bとが接続するように第1のシンクロスリーブ41を作動するともに、第1のクラッチ2を接続する。これにより、エンジン10の駆動軸11から、第1のクラッチ2、第1の入力軸4、5速及び7速用固定ギヤ35a、5速用遊転ギヤ35b、第1のシンクロスリーブ41、第1の副軸6、デフ20を介してドライブシャフト21に動力が伝達される。
【0035】
図7に示すように、6速時では、第2の副軸7と6速用遊転ギヤ36bとが接続するように第4のシンクロスリーブ44を作動するともに、第2のクラッチ3を接続する。これにより、エンジン10の駆動軸11から、第2のクラッチ3、第2の入力軸5、4速及び6速用固定ギヤ34a、6速用遊転ギヤ36b、第4のシンクロスリーブ44、第2の副軸7、デフ20を介してドライブシャフト21に動力が伝達される。
【0036】
図8に示すように、7速時では、第2の副軸7と7速用遊転ギヤ37bとが接続するように第3のシンクロスリーブ43を作動するともに、第1のクラッチ2を接続する。これにより、エンジン10の駆動軸11から、第1のクラッチ2、第1の入力軸4、5速及び7速用固定ギヤ35a、7速用遊転ギヤ37b、第3のシンクロスリーブ43、第2の副軸7、デフ20を介してドライブシャフト21に動力が伝達される。
【0037】
なお、上記2速から7速までは、変速機部1内での動力伝達路にワンウェイクラッチ8を有しないので、ドライブシャフト21からエンジン10の駆動軸11への動力の伝達は可能となり、よってエンジンブレーキを効かせることが可能となる。
図9に示すように、リバース1速時では、第1の副軸6とリバース用遊転ギヤ38bとが接続するように第2のシンクロスリーブ42を作動するともに、第1のクラッチ2を接続する。これにより、エンジン10の駆動軸11から、第1のクラッチ2、第1の入力軸4、3速用固定ギヤ33a、3速用遊転ギヤ33b、ワンウェイクラッチ8、6速用遊転ギヤ36b、4速及び6速用固定ギヤ34a、第2の入力軸5、2速用固定ギヤ32a、2速用遊転ギヤ32b、リバース用遊転ギヤ38b、第2のシンクロスリーブ42、第1の副軸6、デフ20を介してドライブシャフト21に動力が伝達される。
【0038】
したがって、リバース1速も1速と同様に、2速、3速及び6速の変速ギヤ32、33、36を利用して構成されており、総合的な変速比を大幅に高くすることができる。また、リバース1速は、1速と同様に動力伝達路の中にワンウェイクラッチ8を有するため、ドライブシャフト21からエンジン10の駆動軸11への動力の伝達は遮断され、エンジンブレーキが効かなくなる。
【0039】
図10に示すように、リバース2速時では、第1の副軸6とリバース用遊転ギヤ38bとが接続するように第2のシンクロスリーブ42を作動するともに、第2のクラッチ3を接続する。これにより、エンジン10の駆動軸11から、第2のクラッチ3、第2の入力軸5、2速用固定ギヤ32a、2速用遊転ギヤ32b、リバース用遊転ギヤ38b、第2のシンクロスリーブ42、第1の副軸6、デフ20を介してドライブシャフト21に動力が伝達される。
【0040】
したがって、リバース2速は、2速〜7速と同様に動力伝達路の中にワンウェイクラッチ8を有しないため、ドライブシャフト21からエンジン10の駆動軸11への動力の伝達が可能となり、エンジンブレーキを効かせることができる。
以上のように、第1の実施形態の変速機部1では、2つのクラッチ2、3と4つのシンクロスリーブ41、42、43、44の作動制御をすることで、1速〜7速、リバース1速、及びリバース2速の変速を可能としている。
【0041】
本実施形態では、2つのクラッチ2、3を有するデュアルクラッチ式の変速装置において、ワンウェイクラッチ8を奇数段の3速用遊転ギヤ33bと偶数段の6速用遊転ギヤ36bとの間に設け、1速時に3速用遊転ギヤ33bから6速用遊転ギヤ36bへの1方向のみワンウェイクラッチ8を介して動力が伝達するように構成することで、エンジン10の駆動軸11からドライブシャフト21に動力を伝達可能としつつエンジンブレーキが効かない構成となっている。したがって、1速の変速比を高くすることが可能となり、前方発進時におけるクラッチ(第1のクラッチ2)の入力側(駆動軸11)と出力側(第1の入力軸4)の回転速度差を低く抑えることが可能となり、変速ショックを抑えるとともに第1のクラッチ2の耐久性を向上させることができる。そして、1速の変速比を高くしてもエンジンブレーキが効かないので、エンジンブレーキの過度な発生による走行フィーリングの低下を抑制することができる。
【0042】
また、本実施形態では、リバース1速時にも3速用遊転ギヤ33bから6速用遊転ギヤ36bへの1方向のみワンウェイクラッチ8を介して動力を伝達可能とする構成としたことで、リバース1速時にも1速時と同様にエンジンブレーキが効かないようになっている。したがって、リバース1速の減速比も高くして後進発進時での変速ショックの低減及び第1のクラッチ2の耐久性の向上が可能となるとともに走行フィーリングの低下を抑制することができる。
【0043】
このように、3速用遊転ギヤ36bと6速用遊転ギヤ36bとの間にワンウェイクラッチ8を設けることで、1つのワンウェイクラッチ8により1速時及びリバース1速時の両方でエンジンブレーキが効かないようにすることができ、部品の増加を抑え、変速機1の構造の複雑化を抑制し、コスト、重量、搭載スペースの増加を抑制することができる。
また、このように特定の変速段(1速及びリバース1速)でエンジンブレーキが効かないようにすることを1つのワンウェイクラッチ8を設けることで可能となっており、クラッチ2、3の制御によりエンジンブレーキの発生量を制御する必要がなく、制御の複雑化も回避することができる。
【0044】
更に、本実施形態では、1速及びリバース1速は、3速ギヤ33、6速ギヤ36を利用して動力を伝達するようにしており、1速用及びリバース1速用の変速ギヤを必要とせず、変速ギヤの枚数を抑制することができる。
なお、後進時にエンジンブレーキを効かせたい場合には、変速機部1内の動力伝達路にワンウェイクラッチ8を介さないリバース2速にすればよい。これにより、上り坂での後進時に車両の移動を抑え、運転を容易にすることができる。また、リバース1速及びリバース2速は、1つのリバース用遊転ギヤ38bを兼用しており、第1のクラッチ2と第2のクラッチ3とで接続を切換えることで容易かつ迅速に切換可能となっている。
【0045】
また、本実施形態の変速機部1は、クラッチ2、3を2個有するデュアルクラッチ式の変速装置であり、第1の入力軸4に奇数の変速段の変速ギヤ33、35、37、第2の入力軸7に偶数の変速段の変速ギヤ32、34、36が配置されているので、各変速段の切断前にその前後の変速段に接続するプレシフトが可能である。
図11は、第1の実施形態における各変速段でのワンウェイクラッチ8の偶数段側(6速用遊転ギヤ36b)及び奇数段側(3速用遊転ギヤ33b)の回転速度を示すグラフである。図中実線は偶数段側、破線は奇数段側の回転速度を示し、エンジン10の駆動軸11の回転速度を1とする速度比で表される。
【0046】
図11に示すように、1速に変速する際に、その前にプレシフトとして2速に接続した場合には、第2の入力軸7が回転していることから、ワンウェイクラッチ8の偶数段側と奇数段側の回転速度差が0になる(図中ポイントA)。また、リバース1速(R1)への変速時にプレシフトがリバース2速(R2)であっても、同様にワンウェイクラッチ8の偶数段側と奇数段側の回転速度差が0になる(図中ポイントE)。
【0047】
また、奇数段への変速時にプレシフトをしない(プレシフトをニュートラル(N)にする)場合には、ワンウェイクラッチ8の偶数段側と奇数段側の回転速度差が0になる(図中ポイントB、C、D)。
特に、本実施形態では、3速、5速及び7速の変速時には、前段の偶数段の接続時にワンウェイクラッチ8により6速の変速ギヤ36を介して第2の入力軸5も回転しているので、奇数段用のシンクロスリーブ(41、43)の係合時での回転速度差を低減することができ、プレシフトの同期時間を短縮することができる。
【0048】
次に、図12を用いて本発明の第2の実施形態について説明する。
本発明の第2の実施形態の変速装置は、第1の実施形態と同様にデュアルクラッチ式の変速装置であって、前進6速及び後進2速の変速段を有する。
図12に示すように、第2の実施形態の変速装置の変速機部51は、第1の実施形態の7速用遊転ギヤ37bをなくし、その位置に5速用遊転ギヤ35bを移動して配置している。これに伴い、第1のシンクロスリーブ41が不要となっている。
【0049】
本実施形態では、その他の構成が第1の実施形態と同様であり、よって1速時及びリバース1速時に動力伝達路の中にワンウェイクラッチ8を有し、ドライブシャフト21からエンジン10の駆動軸11への動力の伝達を不能として、1速時及びリバース1速時にエンジンブレーキが効かない構成となっている。
次に、図13を用いて本発明の第3の実施形態について説明する。
【0050】
本発明の第3の実施形態の変速装置は、第1及び第2の実施形態と同様にデュアルクラッチ式の変速装置であって、前進5速及び後進2速の変速段を有する。
図13に示すように、第3の実施形態の変速装置の変速機部61は、第2の実施形態の変速機部51から更に6速用遊転ギヤ36bをなくし、その位置に4速用遊転ギヤ34bを移動して配置している。これに伴いワンウェイクラッチ8は、3速用遊転ギヤ33bと4速用遊転ギヤ34bとの間に設けられている。
【0051】
第3の実施形態の変速機部61では、1速時及びリバース1速時に、3速ギヤ33及び4速ギヤ34を利用してワンウェイクラッチ8を介して動力が伝達するように構成しており、第1及び第2の実施形態と同様に1速時及びリバース1速時にエンジンブレーキが効かない構成となっている。
次に、図14を用いて本発明の第4の実施形態について説明する。
【0052】
本発明の第4の実施形態の変速装置は、ハイブリッド車用の変速装置であって、エンジン10からの動力の入力だけでなく、モータ70からの動力の入力を可能としている。
図14に示すように、第4の実施形態の変速装置の変速機部71は、第1の実施形態の変速機部1の4速及び6速用固定ギヤ34aにモータ70からの動力の入力が可能な構成となっている。
【0053】
このような構成により、第4の実施形態では、モータ70から動力を第2の入力軸5に伝達し、第2のシンクロスリーブ42及び第4のシンクロスリーブ44を作動制御することで、2速、4速、6速時にモータ70から動力をドライブシャフト21に出力可能となっている。
本実施形態も第1〜3の実施形態と同様に、1速時及びリバース1速時に動力伝達路の中にワンウェイクラッチ8を有し、ドライブシャフト21からエンジン10の駆動軸11への動力の伝達を不能として、1速時及びリバース1速時にエンジンブレーキが効かない構成となっている。
【0054】
また、ワンウェイクラッチ8により第1の入力軸4から第2の入力軸5に動力が伝達されるので、第1のクラッチ2及び第2のクラッチ3のいずれか一方が接続状態であれば、モータ70が制御停止状態であってもエンジン10により回転されるので、モータ力行開始時の始動電流を抑制できるとともに、エンジン単独走行からエンジン10とモータ70によるパラレル走行への移行時間を短縮することができる。
【0055】
次に、図15を用いて本発明の第5の実施形態について説明する。
本発明の第5の実施形態の変速装置は、第4の実施形態と同様にハイブリッド車用の変速装置である。
第5の実施形態の変速装置の変速機部81は、第1、第4の実施形態と同様に前進7速及び後進2速の変速段を有するが、2つのクラッチ(第1のクラッチ2及び第2のクラッチ3)の代わりに1つの乾式クラッチ(第3のクラッチ82)と動力伝達路の切換えを行う切換装置(切換手段)83とを備えている。
【0056】
エンジン10の駆動軸11には、第3のクラッチ82を介して動力伝達軸84の一端が接続されている。動力伝達軸84は、第3のクラッチ82から駆動軸11と反対側に同軸上に延びている。
第1の入力軸4’及び第2の入力軸5’は、いずれも中空状に形成されており、動力伝達軸84が挿入されて、第3のクラッチ82側から第2の入力軸5’、第1の入力軸4’の順に動力伝達軸84と同軸上に並べて配置されている。
【0057】
切換装置83は、第1の入力軸4’と第2の入力軸5’との間に配置されており、動力伝達軸84に対し第1の入力軸4’及び第2の入力軸5’を選択的に接続して動力を伝達する機能を有する。
そして、第1、4の実施形態における第1のクラッチ2を接続する代わりに、動力伝達軸84と第1の入力軸4’とを接続するように切換装置83を作動させて第3のクラッチ82を接続する。また、第2のクラッチ3を接続する代わりに、動力伝達軸84と第2の入力軸5’とを接続するように切換装置83を作動してクラッチ82を接続する。
【0058】
このような構成とすることで、第5の実施形態では、奇数段の変速ギヤ33、35、37と偶数段の変速ギヤ32、34、36に選択的に動力を伝達可能として、第1〜4の実施形態のようなクラッチを2個有するデュアルクラッチ式の変速装置と同様に、変速時に変速段の切断前に目標変速段を接続するプレシフトが可能となる。
次に、図16を用いて本発明の第6の実施形態について説明する。
【0059】
本発明の第6の実施形態の変速装置は、前進7速及び後進2速の変速段を有するFR車用の変速装置である。
以下、第1の実施形態の変速機部1と異なる点について説明する。
第6の実施形態の変速装置の変速機部91は、副軸92が1つであって、この副軸92に、エンジン10側から順番にリバース用遊転ギヤ38b、2速用遊転ギヤ32b、4速用遊転ギヤ34b、6速用遊転ギヤ36b、3速用遊転ギヤ33b及び7速用遊転ギヤ37bが回転可能に支持されている。
【0060】
第1の入力軸4には、3速用固定ギヤ33a及び7速用固定ギヤ37aが第1の入力軸4と一体回転するように固定されている。第2の入力軸5には、2速用固定ギヤ32a、4速用固定ギヤ34a、6速用固定ギヤ36a及びリバース用固定ギヤ38aが第2の入力軸5と一体回転するように固定されている。
第1の入力軸4の第1のクラッチ2とは反対側には、第1の入力軸4と同軸にプロペラシャフト93(出力軸)が設けられている。そして、第5のシンクロスリーブ45により第1の入力軸4とプロペラシャフト93とを接続及び切断の切換可能となっている。また、第6のシンクロスリーブ46により3速用遊転ギヤ33b及び7速用遊転ギヤ37bを、第7のシンクロスリーブ47により4速用遊転ギヤ34b及び6速用遊転ギヤ36bを、第8のシンクロスリーブ44により2速用遊転ギヤ32b及びリバース用遊転ギヤ38bを、夫々選択的に副軸92に接続及び切断の切換可能となっている。
【0061】
このような構成により、第6の実施形態の変速機部91では、エンジン10の駆動軸11と反対側にプロペラシャフト93が延び、更に副軸を1個に減少させて幅方向寸法(車幅方向寸法)を抑えて、FR車に適したものとなっている。
そして、第1の実施形態と同様に、2つのクラッチ2、3と4つのシンクロスリーブ45、46、47、48の作動制御をすることで、1速〜7速、リバース1速、及びリバース2速の変速を可能としている。そして、本実施形態でも、3速用遊転ギヤ33bと6速用遊転ギヤ36bとの間にワンウェイクラッチ8が設けられており、1速及びリバース1速でエンジンブレーキを効かなくすることができ、これらの変速段の変速比を高くして発進時における変速ショックを抑えつつ、エンジンブレーキの過度な発生による走行フィーリングの低下を抑制することができる。
【0062】
次に、図17、18及び19を用いて本発明の第7の実施形態について説明する。
本発明の第7の実施形態の変速装置は、前進5速及び後進2速の変速段を有する。
以下、第3の実施形態の変速機部61と異なる点について説明する。
図17に示すように、第7の実施形態の変速装置の変速機部101は、ワンウェイクラッチ8が第1の入力軸4に枢支されている。
【0063】
第3の実施形態の変速機部61の第1の入力軸4から、3速用固定ギヤ33a及び5速用固定ギヤ35aをなくし、その位置に第1の入力軸4に対して相対回転可能に5速用遊転ギヤ35c及び3速用遊転ギヤ33cが枢支されている。
また、第1の副軸6には、エンジン10側から順番に、リバース用遊転ギヤ38b、5速用遊転ギヤ35b及び3速用遊転ギヤ33bが第1の副軸6に対して相対回転可能に枢支されている。5速用遊転ギヤ35b及び3速用遊転ギヤ33bは互いに固定されている。第2の副軸7には、エンジン10側から順番に、2速用遊転ギヤ32b及び4速用遊転ギヤ34bが第2の副軸7に対して相対回転可能に枢支されている。
【0064】
このようなギヤ配置により、3速用遊転ギヤ33bと3速用遊転ギヤ33cとで3速ギヤ33を構成し、5速用遊転ギヤ35bと5速用遊転ギヤ35cとで5速ギヤ35を構成する。
そして、変速機部101には、第2のシンクロスリーブ42、第4のシンクロスリーブ44及び第9のシンクロスリーブ49が設けられている。第9のシンクロスリーブ49は、第1の入力軸4の軸線に沿ってスライド移動可能に設置されている。
【0065】
第2のシンクロスリーブ42をスライド移動させることで、5速用遊転ギヤ35bとリバース用遊転ギヤ38bとを、夫々選択的に第1の副軸6に接続及び切断の切換可能になっている。第4のシンクロスリーブ44をスライド移動させることで、第3の実施形態と同様に2速用遊転ギヤ32bと4速用遊転ギヤ34bとを、夫々選択的に第2の副軸7に接続及び切断の切換可能になっている。第9のシンクロスリーブ49をスライド移動させることで、5速用遊転ギヤ35cと3速用遊転ギヤ33cとを、夫々選択的に第1の入力軸4に接続及び切断の切換可能になっている。
【0066】
更に、ワンウェイクラッチ8は、4速用固定ギヤ34aと5速用遊転ギヤ35cとの間に設けられ、5速用遊転ギヤ35cから4速用固定ギヤ34aに動力を伝達し、4速用固定ギヤ34aから5速用遊転ギヤ35cへは動力を伝達不能とする。
図18は、変速機101内での1速時における動力の伝達状態を示す説明図である。
図18に示すように、変速機101において、1速時では、第1の入力軸4と3速用遊転ギヤ33cとが接続するように第9のシンクロスリーブ49を作動し、第2の副軸7と2速用遊転ギヤ32bとが接続するように第4のシンクロスリーブ44を作動するとともに、第1のクラッチ2を接続する。これにより、エンジン10の駆動軸11から、第1のクラッチ2、第1の入力軸4、第9のシンクロスリーブ49、3速用遊転ギヤ33c、3速用遊転ギヤ33b、5速用遊転ギヤ35b、5速用遊転ギヤ35c、ワンウェイクラッチ8、4速用固定ギヤ34a、第2の入力軸5、2速用固定ギヤ32a、2速用遊転ギヤ32b、第4のシンクロスリーブ44、第2の副軸7、デフ20を介してドライブシャフト21に動力が伝達される。
【0067】
図19は、変速機101内でのリバース1速時における動力の伝達状態を示す説明図である。
図19に示すように、変速機101において、リバース1速時では、第1の入力軸4と3速用遊転ギヤ33cとが接続するように第9のシンクロスリーブ49を作動し、第1の副軸6とリバース用遊転ギヤ38bとが接続するように第2のシンクロスリーブ42を作動するとともに、第1のクラッチ2を接続する。これにより、エンジン10の駆動軸11から、第1のクラッチ2、第1の入力軸4、第9のシンクロスリーブ49、3速用遊転ギヤ33c、3速用遊転ギヤ33b、5速用遊転ギヤ35b、5速用遊転ギヤ35c、ワンウェイクラッチ8、4速用固定ギヤ34a、第2の入力軸5、2速用固定ギヤ32a、2速用遊転ギヤ32b、リバース用遊転ギヤ38b、第2のシンクロスリーブ42、第1の副軸6、デフ20を介してドライブシャフト21に動力が伝達される。
【0068】
第7の実施形態の変速機部101では、2つのクラッチ2、3と3つのシンクロスリーブ42、44、49の作動制御をすることで、以上のように1速及びリバース1速の変速を可能にするとともに、2〜5速及びリバース2速の変速も可能としている。
そして、本実施形態では、4速用固定ギヤ34aと5速用遊転ギヤ35cとの間にワンウェイクラッチ8が設けられており、他の実施形態と同様に1速及びリバース1速では動力伝達路の中にワンウェイクラッチ8を有しているので、エンジンブレーキを効かなくすることができる。
【0069】
なお、本発明は以上の実施形態に限定するものではない。例えば、ワンウェイクラッチ8を奇数の変速段のうち最も減速比の高い変速段以外の変速段の変速ギヤと、偶数の変速段のうち最も減速比の低い変速段以外の変速段の変速ギヤとの間で動力を伝達可能とする構成であってもよい。また、上記実施形態と各変速ギヤの配置が異なる変速機においても、本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0070】
1、51、61、71、81、91、101 変速機部
2 第1のクラッチ
3 第2のクラッチ
4、4’ 第1の入力軸
5、5’ 第2の入力軸
8 ワンウェイクラッチ
10 エンジン
21 ドライブシャフト
82 第3のクラッチ
83 切換装置
93 プロペラシャフト
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の変速装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の変速装置の1つとして、デュアルクラッチトランスミッションが開発されている。
デュアルクラッチトランスミッションは2つのクラッチと2つの入力軸を備えており、クラッチを介して2つの入力軸に動力を交互に伝達し、夫々の入力軸に備えた変速ギヤを交互に接続して、出力軸に動力を伝達可能な構成となっている。このような構成のデュアルクラッチトランスミッションでは、変速時間を短縮することが可能となるとともに、トルクコンバータを使用せずに乾式クラッチを使用することができ、伝達効率を向上させることができる。
【0003】
ところで、デュアルクラッチトランスミッションにおいて、変速比の最も高い最低変速段(例えば1速)の変速ギヤと当該変速ギヤを支持する副軸との間にワンウェイクラッチを介装する方法が開発されている(特許文献1、2)。このように、最低変速段の変速ギヤとその支持軸(副軸)との間にワンウェイクラッチを介装することで、最低変速段用に同期装置(シンクロスリーブ)を必要とすることなく、変速装置の小型化を図ることができるとともに、発進時の変速ショックの発生を抑えることができる。
【0004】
また、副軸に支持された2つの変速ギヤ間にシフティングエレメントを備えたデュアルクラッチトランスミッションも提案されている(特許文献3)。このシフティングエレメントは、2つの変速ギヤを介して2つの入力軸を接続または切断に切換可能であって、クラッチや同期装置とともに作動制御されることで、各変速段の変速を実現可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−117007号公報
【特許文献2】特開2001−82554号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2010/0282019号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記デュアルクラッチトランスミッションのように、クラッチに乾式クラッチを用いた変速装置では、クラッチの耐久性を確保するためにクラッチの入力側と出力側との回転速度差を小さくする必要があるが、発進時に回転速度差が大きく発生してしまう虞がある。
そこで、発進時においてクラッチでの回転速度差を抑えるために、1速ギヤの減速比を高くする対処方法があるが、減速比の高い変速段ではエンジンブレーキが過度に発生し走行フィーリングを損ねるといった問題点が発生する。
【0007】
この問題点に対し、エンジンブレーキの発生量が適切になるように、クラッチの開放及びスリップ契合を制御する方法があるが、制御が複雑化してしまう。
また、上記特許文献1や特許文献2の変速装置では、前進側の最低変速段の変速ギヤにワンウェイクラッチが設けられているため、前進時及び後進時の両方で、クラッチでの回転速度差の抑制とエンジンブレーキの過度な発生の抑制とを両立させることが不可能である。
【0008】
後進時にも対応可能なように、リバースギヤにもワンウェイクラッチを備える方法が考えられるが、部品の増加により変速機の構造が複雑化して、コスト、重量、及び車両への搭載スペースの増加を招くといった問題点が発生する。
また、上記特許文献3のようにシフティングエレメントを備えた変速装置では、クラッチや同期装置と同様にシフティングエレメントの作動制御が必要となるため、制御の複雑化を招くこととなる。
【0009】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、簡単な構造及び制御で、前進及び後進の両方の発進時での変速ショックの発生を抑えるとともに、過度なエンジンブレーキを回避して、走行フィーリングが良好となる車両の変速装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、2つのグループに分けた複数の変速段のうちの第1のグループの変速段の変速ギヤが設けられた第1の入力軸と、複数の変速段のうちのリバースギヤを含む第2のグループ変速段の変速ギヤが設けられた第2の入力軸と、車両に搭載されたエンジンの駆動軸と第1の入力軸とを接続及び切断の切換可能な第1の接続切換手段と、駆動軸と第2の入力軸とを接続及び切断の切換可能な第2の接続切換手段と、第1のグループの変速段の変速ギヤ及び第2のグループの変速段の変速ギヤに選択的に接続可能な出力軸と、を備え、エンジンの駆動軸と車両の駆動輪との間の動力伝達路に介装される車両の変速装置であって、第1のグループのうちの1つの変速段の変速ギヤと、第2のグループのうちの1つの変速段の変速ギヤとの間を、ワンウェイクラッチを介して動力を一方向のみ伝達可能としたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項2の発明は、請求項1において、第1のグループ及び第2のグループは、何れか一方が奇数の変速段であり、他方が偶数の変速段であることを特徴とする。
また、請求項3の発明は、請求項2において、ワンウェイクラッチは、奇数の変速段のうち最も減速比の高い変速段の変速ギヤと、偶数の変速段のうち最も減速比の低い変速段の変速ギヤとの間で動力を伝達可能としたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1項において、第1の接続切換手段は、駆動軸と第1の入力軸との間に介装された第1のクラッチであり、第2の動力接続切換手段は、駆動軸と第2の入力軸との間に介装された第2のクラッチであることを特徴とする。
また、請求項5の発明は、請求項1〜3のいずれか1項において、第1の接続切換手段及び第2の接続切換手段は、第1の入力軸及び第2の入力軸のいずれか一方を駆動軸に選択的に接続する切換手段と、当該切換手段と駆動軸との間に介装された第3のクラッチにより構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1の車両の変速装置によれば、第1のグループの変速段の変速ギヤと、第2のグループの変速段の変速ギヤとの間を、ワンウェイクラッチを介して動力を一方向のみ伝達可能としたことで、当該2つの変速ギヤを利用して、駆動軸から出力軸に動力を伝達可能にしつつ、出力軸から駆動軸に動力を伝達不能として、所謂エンジンブレーキを不能とすることができる。
【0014】
これにより、第1のグループの変速ギヤと第2のグループの変速ギヤとを利用して変速比の高い変速を可能としつつ、エンジンブレーキを不能とすることができるので、車両発進時における変速ショックを抑えることができるとともに、変速比の高い変速段での過度なエンジンブレーキを回避して走行フィーリングを向上させることができる。
更に、ワンウェイクラッチを介して接続される2つの変速ギヤとリバースギヤとを利用することで、後進時においても発進時の変速ショック低減と過度なエンジンブレーキの回避を、簡単な構造及び制御で実現させることができる。
【0015】
また、本発明の請求項2の車両の変速装置によれば、第1のグループ及び第2のグループが、奇数の変速段と偶数の変速段とに分けられるので、いずれか一方のグループの変速段でエンジンにより走行している状態からその前後の変速段に変速する際に、第1の接続切換手段及び第2の接続切換手段の作動を切換えて他方のグループの変速段に変速することができる。したがって、変速段の切断をする前に次の目標変速段を接続するプレシフトが可能となり、迅速な変速を可能にすることができる。
【0016】
また、本発明の請求項3の車両の変速装置によれば、ワンウェイクラッチは、奇数の変速段のうち最も減速比の高い変速段の変速ギヤと、偶数の変速段のうち最も減速比の低い変速段の変速ギヤとの間に設けられているので、当該2つの変速ギヤを利用することで変速比を容易に高くすることができる。
また、本発明の請求項4の車両の変速装置によれば、第1の接続切換手段及び第2の接続手段が夫々クラッチであるので、所謂デュアルクラッチトランスミッションにおいて、簡単な構造及び制御で、前進及び後進の両方の発進時での変速ショックの発生を抑えるとともに、過度なエンジンブレーキを回避することが可能となる。
【0017】
また、本発明の請求項5の車両の変速装置によれば、第3のクラッチと切換手段によって、デュアルクラッチトランスミッションと同様にプレシフトが可能となり、簡単な構造及び制御で、前進及び後進の両方の発進時での変速ショックの発生を抑えるとともに、過度なエンジンブレーキを回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る変速装置の変速機部の模式図である。
【図2】第1の実施形態の変速機部内での1速時における動力の伝達状態を示す説明図である。
【図3】第1の実施形態の変速機部内での2速時における動力の伝達状態を示す説明図である。
【図4】第1の実施形態の変速機部内での3速時における動力の伝達状態を示す説明図である。
【図5】第1の実施形態の変速機部内での4速時における動力の伝達状態を示す説明図である。
【図6】第1の実施形態の変速機部内での5速時における動力の伝達状態を示す説明図である。
【図7】第1の実施形態の変速機部内での6速時における動力の伝達状態を示す説明図である。
【図8】第1の実施形態の変速機部内での7速時における動力の伝達状態を示す説明図である。
【図9】第1の実施形態の変速機部内でのリバース1速時における動力の伝達状態を示す説明図である。
【図10】第1の実施形態の変速機部内でのリバース2速時における動力の伝達状態を示す説明図である。
【図11】第1の実施形態における各変速段でのワンウェイクラッチの偶数段側及び奇数段側の回転速度を示すグラフである。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る変速装置の変速機部の模式図である。
【図13】本発明の第3の実施形態に係る変速装置の変速機部の模式図である。
【図14】本発明の第4の実施形態に係る変速装置の変速機部の模式図である。
【図15】本発明の第5の実施形態に係る変速装置の変速機部の模式図である。
【図16】本発明の第6の実施形態に係る変速装置の変速機部の模式図である。
【図17】本発明の第7の実施形態に係る変速装置の変速機部の模式図である。
【図18】第7の実施形態の変速機部内での1速時における動力の伝達状態を示す説明図である。
【図19】第7の実施形態の変速機部内でのリバース1速時における動力の伝達状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づき説明する。
本発明の第1の実施形態の変速装置は、走行駆動源としてエンジン10を備えた車両に適用され、2個のクラッチ2、3を備えたデュアルクラッチ式の変速装置であって、前進7速及び後進2速の変速段を有する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る変速装置の変速機部1の模式図である。
【0020】
図1に示すように、変速機部1は、軸方向に並べて配置された2個の乾式クラッチ(第1のクラッチ2、第2のクラッチ3)と、2本の入力軸(第1の入力軸4、第2の入力軸5)と、2本の副軸(第1の副軸6、第2の副軸7)と、ワンウェイクラッチ8と、を備えている。
第1のクラッチ2(第1の接続切換手段)は、エンジン10の駆動軸11と第1の入力軸4との間に介装され、駆動軸11と第1の入力軸4との間の動力の伝達及び遮断を切換可能となっている。
【0021】
第2のクラッチ3(第2の接続切換手段)は、エンジン10の駆動軸11と第2の入力軸5との間に介装され、駆動軸11と第2の入力軸5との間の動力の伝達及び遮断を切換可能となっている。
第1の入力軸4は、第1のクラッチ2を挟んでエンジン10とは反対側に駆動軸11と同軸上に配置されており、エンジン10側の端部が第1のクラッチ2に接続されている。第2の入力軸5は、中空状に形成され、内部に第1の入力軸4が挿入されて第1の入力軸4と同軸に配置されるとともに、エンジン10側の端部が第2のクラッチ3に接続されている。
【0022】
第1の副軸6及び第2の副軸7は、第1の入力軸4及び第2の入力軸5と軸線が平行になるように夫々離間して配置されているとともに、デフ20及びドライブシャフト21(出力軸)を介して、図示しない車両の走行駆動輪に動力を伝達可能に構成されている。
第1の入力軸4には、3速用固定ギヤ33aと、5速及び7速用固定ギヤ35aとが第1の入力軸4と一体回転するように固定されている。第2の入力軸5には、2速用固定ギヤ32aと、4速及び6速用固定ギヤ34aとが第2の入力軸5と一体回転するように固定されている。
【0023】
また、第1の副軸6には、エンジン10側から順番に、リバース用遊転ギヤ38b、4速用遊転ギヤ34b及び5速用遊転ギヤ35bが第1の副軸6に対して相対回転可能に枢支されている。第2の副軸7には、エンジン10側から順番に、2速用遊転ギヤ32b、6速用遊転ギヤ36b、3速用遊転ギヤ33b及び7速用遊転ギヤ37bが第2の副軸7に対して相対回転可能に枢支されている。リバース用遊転ギヤ38bは、2速用遊転ギヤ32bに噛合するように配置されている。
【0024】
このようなギヤ配置により、2速用固定ギヤ32aと2速用遊転ギヤ32bとで2速ギヤ32を構成し、3速用固定ギヤ33aと3速用遊転ギヤ33bとで3速ギヤ33を構成し、4速および6速用固定ギヤ34aと4速用遊転ギヤ34bとで4速ギヤ34を構成し、5速及び7速用固定ギヤ35aと5速用遊転ギヤ35bとで5速ギヤ35を構成し、4速及び6速用固定ギヤ34aと6速用遊転ギヤ36bとで6速ギヤ36を構成し、5速及び7速用固定ギヤ35aと7速用遊転ギヤ37bとで7速ギヤ37を構成する。
【0025】
変速機部1には、4つのシンクロスリーブ41、42、43、44が備えられており、シンクロスリーブ41〜44は、図示しないシフトフォークによって第1の副軸6または第2の副軸7の軸線に沿ってスライド移動させられる。このうち第1のシンクロスリーブ41及び第2のシンクロスリーブ42は、第1の副軸6の軸線に沿ってスライド移動可能に設置されている。第3のシンクロスリーブ43及び第4のシンクロスリーブ44は、第2の副軸7の軸線に沿ってスライド移動可能に設置されている。
【0026】
これらのシンクロスリーブ41〜44をスライド移動させることで、第1のシンクロスリーブ41により5速用遊転ギヤ35bを、第2のシンクロスリーブ42により4速用遊転ギヤ34b及びリバース用遊転ギヤ38bを、夫々選択的に第1の副軸6に接続及び切断の切換可能になっているとともに、第3のシンクロスリーブ43により3速用遊転ギヤ33b及び7速用遊転ギヤ37bを、第4のシンクロスリーブ44により2速用遊転ギヤ32b及び6速用遊転ギヤ36bを、夫々選択的に第2の副軸7に接続及び切断の切換可能となっている。
【0027】
即ち、本実施形態の変速機部1では、エンジン10の駆動軸11から入力した動力が、第1のクラッチ2を介して第1の入力軸4に、第2のクラッチ3を介して第2の入力軸5に伝達する。第1の入力軸4には、3速、5速、7速、即ち奇数段(第1のグループ)の変速ギヤ33、35、37が設けられ、第2の入力軸5には、2速、4速、6速、即ち偶数段(第2のグループ)の変速ギヤ32、34、36が設けられている。よって、エンジン10は、2つのクラッチ2、3によって奇数段及び偶数段の変速ギヤに任意に接続可能となっている。
【0028】
更に、3速用遊転ギヤ33bと6速用遊転ギヤ36bとの間には、第2の副軸7に枢支されたワンウェイクラッチ8が設けられている。ワンウェイクラッチ8は、3速用遊転ギヤ33bから6速用遊転ギヤ36bに動力を伝達し、6速用遊転ギヤ36bから3速用遊転ギヤ33bへは動力を伝達不能とする機能を有している。
そして、本実施形態の変速機部1では、2速ギヤ32、3速ギヤ33及び6速ギヤ36を利用して1速を可能にしているとともに、2速ギヤ32、3速ギヤ33、6速ギヤ36及びリバース用遊転ギヤ38bを利用してリバース1速を、2速ギヤ32及びリバース用遊転ギヤ38bを利用してリバース2速を可能としている。
【0029】
各シンクロスリーブ41〜44、第1のクラッチ2及び第2のクラッチ3は、夫々図示しないアクチュエータにより作動され、当該アクチュエータは、シフトレバーの操作やエンジン10の運転状態等に基づいて作動制御される。
次に、図2〜10を用いて、各変速段選択時での変速機部1での作動及び動力の伝達状態を説明する。図2〜10は各変速段選択時での動力の伝達状態を示す説明図であり、図2は1速時、図3は2速時、図4は3速時、図5は4速時、図6は5速時、図7は6速時、図8は7速時、図9はリバース1速時、図10はリバース2速時を示す。なお、図2〜10において、変速機部1内でのエンジン10からの動力の伝達経路を太線にて示している。
【0030】
図2に示すように、1速時では、第2の副軸7と2速用遊転ギヤ32bとが接続するように第4のシンクロスリーブ44を作動するともに、第1のクラッチ2を接続する。これにより、エンジン10の駆動軸11から、第1のクラッチ2、第1の入力軸4、3速用固定ギヤ33a、3速用遊転ギヤ33b、ワンウェイクラッチ8、6速用遊転ギヤ36b、4速及び6速用固定ギヤ34a、第2の入力軸5、2速用固定ギヤ32a、2速用遊転ギヤ32b、第4のシンクロスリーブ44、第2の副軸7、デフ20を介してドライブシャフト21に動力が伝達される。このように、2速、3速及び6速の変速ギヤ32、33、36を利用して1速を構成するので、この各変速ギヤの変速比を合わせて総合的な変速比を大幅に大きくすることができる。また、動力伝達路の中にワンウェイクラッチ8を有するため、ドライブシャフト21からエンジン10の駆動軸11への動力の伝達が不能となる。したがって、1速ではエンジンブレーキが効かなくなる。
【0031】
図3に示すように、2速時では、第2の副軸7と2速用遊転ギヤ32bとが接続するように第4のシンクロスリーブ44を作動するともに、第2のクラッチ3を接続する。これにより、エンジン10の駆動軸11から、第2のクラッチ3、第2の入力軸5、2速用固定ギヤ32a、2速用遊転ギヤ32b、第4のシンクロスリーブ44、第2の副軸7、デフ20を介してドライブシャフト21に動力が伝達される。
【0032】
図4に示すように、3速時では、第2の副軸7と3速用遊転ギヤ33bとが接続するように第3のシンクロスリーブ43を作動するともに、第1のクラッチ2を接続する。これにより、エンジン10の駆動軸11から、第1のクラッチ2、第1の入力軸4、3速用固定ギヤ33a、3速用遊転ギヤ33b、第3のシンクロスリーブ43、第2の副軸7、デフ20を介してドライブシャフト21に動力が伝達される。
【0033】
図5に示すように、4速時では、第1の副軸6と4速用遊転ギヤ34bとが接続するように第2のシンクロスリーブ42を作動するともに、第2のクラッチ3を接続する。これにより、エンジン10の駆動軸11から、第2のクラッチ3、第2の入力軸5、4速及び6速用固定ギヤ34a、4速用遊転ギヤ34b、第2のシンクロスリーブ42、第1の副軸6、デフ20を介してドライブシャフト21に動力が伝達される。
【0034】
図6に示すように、5速時では、第1の副軸6と5速用遊転ギヤ35bとが接続するように第1のシンクロスリーブ41を作動するともに、第1のクラッチ2を接続する。これにより、エンジン10の駆動軸11から、第1のクラッチ2、第1の入力軸4、5速及び7速用固定ギヤ35a、5速用遊転ギヤ35b、第1のシンクロスリーブ41、第1の副軸6、デフ20を介してドライブシャフト21に動力が伝達される。
【0035】
図7に示すように、6速時では、第2の副軸7と6速用遊転ギヤ36bとが接続するように第4のシンクロスリーブ44を作動するともに、第2のクラッチ3を接続する。これにより、エンジン10の駆動軸11から、第2のクラッチ3、第2の入力軸5、4速及び6速用固定ギヤ34a、6速用遊転ギヤ36b、第4のシンクロスリーブ44、第2の副軸7、デフ20を介してドライブシャフト21に動力が伝達される。
【0036】
図8に示すように、7速時では、第2の副軸7と7速用遊転ギヤ37bとが接続するように第3のシンクロスリーブ43を作動するともに、第1のクラッチ2を接続する。これにより、エンジン10の駆動軸11から、第1のクラッチ2、第1の入力軸4、5速及び7速用固定ギヤ35a、7速用遊転ギヤ37b、第3のシンクロスリーブ43、第2の副軸7、デフ20を介してドライブシャフト21に動力が伝達される。
【0037】
なお、上記2速から7速までは、変速機部1内での動力伝達路にワンウェイクラッチ8を有しないので、ドライブシャフト21からエンジン10の駆動軸11への動力の伝達は可能となり、よってエンジンブレーキを効かせることが可能となる。
図9に示すように、リバース1速時では、第1の副軸6とリバース用遊転ギヤ38bとが接続するように第2のシンクロスリーブ42を作動するともに、第1のクラッチ2を接続する。これにより、エンジン10の駆動軸11から、第1のクラッチ2、第1の入力軸4、3速用固定ギヤ33a、3速用遊転ギヤ33b、ワンウェイクラッチ8、6速用遊転ギヤ36b、4速及び6速用固定ギヤ34a、第2の入力軸5、2速用固定ギヤ32a、2速用遊転ギヤ32b、リバース用遊転ギヤ38b、第2のシンクロスリーブ42、第1の副軸6、デフ20を介してドライブシャフト21に動力が伝達される。
【0038】
したがって、リバース1速も1速と同様に、2速、3速及び6速の変速ギヤ32、33、36を利用して構成されており、総合的な変速比を大幅に高くすることができる。また、リバース1速は、1速と同様に動力伝達路の中にワンウェイクラッチ8を有するため、ドライブシャフト21からエンジン10の駆動軸11への動力の伝達は遮断され、エンジンブレーキが効かなくなる。
【0039】
図10に示すように、リバース2速時では、第1の副軸6とリバース用遊転ギヤ38bとが接続するように第2のシンクロスリーブ42を作動するともに、第2のクラッチ3を接続する。これにより、エンジン10の駆動軸11から、第2のクラッチ3、第2の入力軸5、2速用固定ギヤ32a、2速用遊転ギヤ32b、リバース用遊転ギヤ38b、第2のシンクロスリーブ42、第1の副軸6、デフ20を介してドライブシャフト21に動力が伝達される。
【0040】
したがって、リバース2速は、2速〜7速と同様に動力伝達路の中にワンウェイクラッチ8を有しないため、ドライブシャフト21からエンジン10の駆動軸11への動力の伝達が可能となり、エンジンブレーキを効かせることができる。
以上のように、第1の実施形態の変速機部1では、2つのクラッチ2、3と4つのシンクロスリーブ41、42、43、44の作動制御をすることで、1速〜7速、リバース1速、及びリバース2速の変速を可能としている。
【0041】
本実施形態では、2つのクラッチ2、3を有するデュアルクラッチ式の変速装置において、ワンウェイクラッチ8を奇数段の3速用遊転ギヤ33bと偶数段の6速用遊転ギヤ36bとの間に設け、1速時に3速用遊転ギヤ33bから6速用遊転ギヤ36bへの1方向のみワンウェイクラッチ8を介して動力が伝達するように構成することで、エンジン10の駆動軸11からドライブシャフト21に動力を伝達可能としつつエンジンブレーキが効かない構成となっている。したがって、1速の変速比を高くすることが可能となり、前方発進時におけるクラッチ(第1のクラッチ2)の入力側(駆動軸11)と出力側(第1の入力軸4)の回転速度差を低く抑えることが可能となり、変速ショックを抑えるとともに第1のクラッチ2の耐久性を向上させることができる。そして、1速の変速比を高くしてもエンジンブレーキが効かないので、エンジンブレーキの過度な発生による走行フィーリングの低下を抑制することができる。
【0042】
また、本実施形態では、リバース1速時にも3速用遊転ギヤ33bから6速用遊転ギヤ36bへの1方向のみワンウェイクラッチ8を介して動力を伝達可能とする構成としたことで、リバース1速時にも1速時と同様にエンジンブレーキが効かないようになっている。したがって、リバース1速の減速比も高くして後進発進時での変速ショックの低減及び第1のクラッチ2の耐久性の向上が可能となるとともに走行フィーリングの低下を抑制することができる。
【0043】
このように、3速用遊転ギヤ36bと6速用遊転ギヤ36bとの間にワンウェイクラッチ8を設けることで、1つのワンウェイクラッチ8により1速時及びリバース1速時の両方でエンジンブレーキが効かないようにすることができ、部品の増加を抑え、変速機1の構造の複雑化を抑制し、コスト、重量、搭載スペースの増加を抑制することができる。
また、このように特定の変速段(1速及びリバース1速)でエンジンブレーキが効かないようにすることを1つのワンウェイクラッチ8を設けることで可能となっており、クラッチ2、3の制御によりエンジンブレーキの発生量を制御する必要がなく、制御の複雑化も回避することができる。
【0044】
更に、本実施形態では、1速及びリバース1速は、3速ギヤ33、6速ギヤ36を利用して動力を伝達するようにしており、1速用及びリバース1速用の変速ギヤを必要とせず、変速ギヤの枚数を抑制することができる。
なお、後進時にエンジンブレーキを効かせたい場合には、変速機部1内の動力伝達路にワンウェイクラッチ8を介さないリバース2速にすればよい。これにより、上り坂での後進時に車両の移動を抑え、運転を容易にすることができる。また、リバース1速及びリバース2速は、1つのリバース用遊転ギヤ38bを兼用しており、第1のクラッチ2と第2のクラッチ3とで接続を切換えることで容易かつ迅速に切換可能となっている。
【0045】
また、本実施形態の変速機部1は、クラッチ2、3を2個有するデュアルクラッチ式の変速装置であり、第1の入力軸4に奇数の変速段の変速ギヤ33、35、37、第2の入力軸7に偶数の変速段の変速ギヤ32、34、36が配置されているので、各変速段の切断前にその前後の変速段に接続するプレシフトが可能である。
図11は、第1の実施形態における各変速段でのワンウェイクラッチ8の偶数段側(6速用遊転ギヤ36b)及び奇数段側(3速用遊転ギヤ33b)の回転速度を示すグラフである。図中実線は偶数段側、破線は奇数段側の回転速度を示し、エンジン10の駆動軸11の回転速度を1とする速度比で表される。
【0046】
図11に示すように、1速に変速する際に、その前にプレシフトとして2速に接続した場合には、第2の入力軸7が回転していることから、ワンウェイクラッチ8の偶数段側と奇数段側の回転速度差が0になる(図中ポイントA)。また、リバース1速(R1)への変速時にプレシフトがリバース2速(R2)であっても、同様にワンウェイクラッチ8の偶数段側と奇数段側の回転速度差が0になる(図中ポイントE)。
【0047】
また、奇数段への変速時にプレシフトをしない(プレシフトをニュートラル(N)にする)場合には、ワンウェイクラッチ8の偶数段側と奇数段側の回転速度差が0になる(図中ポイントB、C、D)。
特に、本実施形態では、3速、5速及び7速の変速時には、前段の偶数段の接続時にワンウェイクラッチ8により6速の変速ギヤ36を介して第2の入力軸5も回転しているので、奇数段用のシンクロスリーブ(41、43)の係合時での回転速度差を低減することができ、プレシフトの同期時間を短縮することができる。
【0048】
次に、図12を用いて本発明の第2の実施形態について説明する。
本発明の第2の実施形態の変速装置は、第1の実施形態と同様にデュアルクラッチ式の変速装置であって、前進6速及び後進2速の変速段を有する。
図12に示すように、第2の実施形態の変速装置の変速機部51は、第1の実施形態の7速用遊転ギヤ37bをなくし、その位置に5速用遊転ギヤ35bを移動して配置している。これに伴い、第1のシンクロスリーブ41が不要となっている。
【0049】
本実施形態では、その他の構成が第1の実施形態と同様であり、よって1速時及びリバース1速時に動力伝達路の中にワンウェイクラッチ8を有し、ドライブシャフト21からエンジン10の駆動軸11への動力の伝達を不能として、1速時及びリバース1速時にエンジンブレーキが効かない構成となっている。
次に、図13を用いて本発明の第3の実施形態について説明する。
【0050】
本発明の第3の実施形態の変速装置は、第1及び第2の実施形態と同様にデュアルクラッチ式の変速装置であって、前進5速及び後進2速の変速段を有する。
図13に示すように、第3の実施形態の変速装置の変速機部61は、第2の実施形態の変速機部51から更に6速用遊転ギヤ36bをなくし、その位置に4速用遊転ギヤ34bを移動して配置している。これに伴いワンウェイクラッチ8は、3速用遊転ギヤ33bと4速用遊転ギヤ34bとの間に設けられている。
【0051】
第3の実施形態の変速機部61では、1速時及びリバース1速時に、3速ギヤ33及び4速ギヤ34を利用してワンウェイクラッチ8を介して動力が伝達するように構成しており、第1及び第2の実施形態と同様に1速時及びリバース1速時にエンジンブレーキが効かない構成となっている。
次に、図14を用いて本発明の第4の実施形態について説明する。
【0052】
本発明の第4の実施形態の変速装置は、ハイブリッド車用の変速装置であって、エンジン10からの動力の入力だけでなく、モータ70からの動力の入力を可能としている。
図14に示すように、第4の実施形態の変速装置の変速機部71は、第1の実施形態の変速機部1の4速及び6速用固定ギヤ34aにモータ70からの動力の入力が可能な構成となっている。
【0053】
このような構成により、第4の実施形態では、モータ70から動力を第2の入力軸5に伝達し、第2のシンクロスリーブ42及び第4のシンクロスリーブ44を作動制御することで、2速、4速、6速時にモータ70から動力をドライブシャフト21に出力可能となっている。
本実施形態も第1〜3の実施形態と同様に、1速時及びリバース1速時に動力伝達路の中にワンウェイクラッチ8を有し、ドライブシャフト21からエンジン10の駆動軸11への動力の伝達を不能として、1速時及びリバース1速時にエンジンブレーキが効かない構成となっている。
【0054】
また、ワンウェイクラッチ8により第1の入力軸4から第2の入力軸5に動力が伝達されるので、第1のクラッチ2及び第2のクラッチ3のいずれか一方が接続状態であれば、モータ70が制御停止状態であってもエンジン10により回転されるので、モータ力行開始時の始動電流を抑制できるとともに、エンジン単独走行からエンジン10とモータ70によるパラレル走行への移行時間を短縮することができる。
【0055】
次に、図15を用いて本発明の第5の実施形態について説明する。
本発明の第5の実施形態の変速装置は、第4の実施形態と同様にハイブリッド車用の変速装置である。
第5の実施形態の変速装置の変速機部81は、第1、第4の実施形態と同様に前進7速及び後進2速の変速段を有するが、2つのクラッチ(第1のクラッチ2及び第2のクラッチ3)の代わりに1つの乾式クラッチ(第3のクラッチ82)と動力伝達路の切換えを行う切換装置(切換手段)83とを備えている。
【0056】
エンジン10の駆動軸11には、第3のクラッチ82を介して動力伝達軸84の一端が接続されている。動力伝達軸84は、第3のクラッチ82から駆動軸11と反対側に同軸上に延びている。
第1の入力軸4’及び第2の入力軸5’は、いずれも中空状に形成されており、動力伝達軸84が挿入されて、第3のクラッチ82側から第2の入力軸5’、第1の入力軸4’の順に動力伝達軸84と同軸上に並べて配置されている。
【0057】
切換装置83は、第1の入力軸4’と第2の入力軸5’との間に配置されており、動力伝達軸84に対し第1の入力軸4’及び第2の入力軸5’を選択的に接続して動力を伝達する機能を有する。
そして、第1、4の実施形態における第1のクラッチ2を接続する代わりに、動力伝達軸84と第1の入力軸4’とを接続するように切換装置83を作動させて第3のクラッチ82を接続する。また、第2のクラッチ3を接続する代わりに、動力伝達軸84と第2の入力軸5’とを接続するように切換装置83を作動してクラッチ82を接続する。
【0058】
このような構成とすることで、第5の実施形態では、奇数段の変速ギヤ33、35、37と偶数段の変速ギヤ32、34、36に選択的に動力を伝達可能として、第1〜4の実施形態のようなクラッチを2個有するデュアルクラッチ式の変速装置と同様に、変速時に変速段の切断前に目標変速段を接続するプレシフトが可能となる。
次に、図16を用いて本発明の第6の実施形態について説明する。
【0059】
本発明の第6の実施形態の変速装置は、前進7速及び後進2速の変速段を有するFR車用の変速装置である。
以下、第1の実施形態の変速機部1と異なる点について説明する。
第6の実施形態の変速装置の変速機部91は、副軸92が1つであって、この副軸92に、エンジン10側から順番にリバース用遊転ギヤ38b、2速用遊転ギヤ32b、4速用遊転ギヤ34b、6速用遊転ギヤ36b、3速用遊転ギヤ33b及び7速用遊転ギヤ37bが回転可能に支持されている。
【0060】
第1の入力軸4には、3速用固定ギヤ33a及び7速用固定ギヤ37aが第1の入力軸4と一体回転するように固定されている。第2の入力軸5には、2速用固定ギヤ32a、4速用固定ギヤ34a、6速用固定ギヤ36a及びリバース用固定ギヤ38aが第2の入力軸5と一体回転するように固定されている。
第1の入力軸4の第1のクラッチ2とは反対側には、第1の入力軸4と同軸にプロペラシャフト93(出力軸)が設けられている。そして、第5のシンクロスリーブ45により第1の入力軸4とプロペラシャフト93とを接続及び切断の切換可能となっている。また、第6のシンクロスリーブ46により3速用遊転ギヤ33b及び7速用遊転ギヤ37bを、第7のシンクロスリーブ47により4速用遊転ギヤ34b及び6速用遊転ギヤ36bを、第8のシンクロスリーブ44により2速用遊転ギヤ32b及びリバース用遊転ギヤ38bを、夫々選択的に副軸92に接続及び切断の切換可能となっている。
【0061】
このような構成により、第6の実施形態の変速機部91では、エンジン10の駆動軸11と反対側にプロペラシャフト93が延び、更に副軸を1個に減少させて幅方向寸法(車幅方向寸法)を抑えて、FR車に適したものとなっている。
そして、第1の実施形態と同様に、2つのクラッチ2、3と4つのシンクロスリーブ45、46、47、48の作動制御をすることで、1速〜7速、リバース1速、及びリバース2速の変速を可能としている。そして、本実施形態でも、3速用遊転ギヤ33bと6速用遊転ギヤ36bとの間にワンウェイクラッチ8が設けられており、1速及びリバース1速でエンジンブレーキを効かなくすることができ、これらの変速段の変速比を高くして発進時における変速ショックを抑えつつ、エンジンブレーキの過度な発生による走行フィーリングの低下を抑制することができる。
【0062】
次に、図17、18及び19を用いて本発明の第7の実施形態について説明する。
本発明の第7の実施形態の変速装置は、前進5速及び後進2速の変速段を有する。
以下、第3の実施形態の変速機部61と異なる点について説明する。
図17に示すように、第7の実施形態の変速装置の変速機部101は、ワンウェイクラッチ8が第1の入力軸4に枢支されている。
【0063】
第3の実施形態の変速機部61の第1の入力軸4から、3速用固定ギヤ33a及び5速用固定ギヤ35aをなくし、その位置に第1の入力軸4に対して相対回転可能に5速用遊転ギヤ35c及び3速用遊転ギヤ33cが枢支されている。
また、第1の副軸6には、エンジン10側から順番に、リバース用遊転ギヤ38b、5速用遊転ギヤ35b及び3速用遊転ギヤ33bが第1の副軸6に対して相対回転可能に枢支されている。5速用遊転ギヤ35b及び3速用遊転ギヤ33bは互いに固定されている。第2の副軸7には、エンジン10側から順番に、2速用遊転ギヤ32b及び4速用遊転ギヤ34bが第2の副軸7に対して相対回転可能に枢支されている。
【0064】
このようなギヤ配置により、3速用遊転ギヤ33bと3速用遊転ギヤ33cとで3速ギヤ33を構成し、5速用遊転ギヤ35bと5速用遊転ギヤ35cとで5速ギヤ35を構成する。
そして、変速機部101には、第2のシンクロスリーブ42、第4のシンクロスリーブ44及び第9のシンクロスリーブ49が設けられている。第9のシンクロスリーブ49は、第1の入力軸4の軸線に沿ってスライド移動可能に設置されている。
【0065】
第2のシンクロスリーブ42をスライド移動させることで、5速用遊転ギヤ35bとリバース用遊転ギヤ38bとを、夫々選択的に第1の副軸6に接続及び切断の切換可能になっている。第4のシンクロスリーブ44をスライド移動させることで、第3の実施形態と同様に2速用遊転ギヤ32bと4速用遊転ギヤ34bとを、夫々選択的に第2の副軸7に接続及び切断の切換可能になっている。第9のシンクロスリーブ49をスライド移動させることで、5速用遊転ギヤ35cと3速用遊転ギヤ33cとを、夫々選択的に第1の入力軸4に接続及び切断の切換可能になっている。
【0066】
更に、ワンウェイクラッチ8は、4速用固定ギヤ34aと5速用遊転ギヤ35cとの間に設けられ、5速用遊転ギヤ35cから4速用固定ギヤ34aに動力を伝達し、4速用固定ギヤ34aから5速用遊転ギヤ35cへは動力を伝達不能とする。
図18は、変速機101内での1速時における動力の伝達状態を示す説明図である。
図18に示すように、変速機101において、1速時では、第1の入力軸4と3速用遊転ギヤ33cとが接続するように第9のシンクロスリーブ49を作動し、第2の副軸7と2速用遊転ギヤ32bとが接続するように第4のシンクロスリーブ44を作動するとともに、第1のクラッチ2を接続する。これにより、エンジン10の駆動軸11から、第1のクラッチ2、第1の入力軸4、第9のシンクロスリーブ49、3速用遊転ギヤ33c、3速用遊転ギヤ33b、5速用遊転ギヤ35b、5速用遊転ギヤ35c、ワンウェイクラッチ8、4速用固定ギヤ34a、第2の入力軸5、2速用固定ギヤ32a、2速用遊転ギヤ32b、第4のシンクロスリーブ44、第2の副軸7、デフ20を介してドライブシャフト21に動力が伝達される。
【0067】
図19は、変速機101内でのリバース1速時における動力の伝達状態を示す説明図である。
図19に示すように、変速機101において、リバース1速時では、第1の入力軸4と3速用遊転ギヤ33cとが接続するように第9のシンクロスリーブ49を作動し、第1の副軸6とリバース用遊転ギヤ38bとが接続するように第2のシンクロスリーブ42を作動するとともに、第1のクラッチ2を接続する。これにより、エンジン10の駆動軸11から、第1のクラッチ2、第1の入力軸4、第9のシンクロスリーブ49、3速用遊転ギヤ33c、3速用遊転ギヤ33b、5速用遊転ギヤ35b、5速用遊転ギヤ35c、ワンウェイクラッチ8、4速用固定ギヤ34a、第2の入力軸5、2速用固定ギヤ32a、2速用遊転ギヤ32b、リバース用遊転ギヤ38b、第2のシンクロスリーブ42、第1の副軸6、デフ20を介してドライブシャフト21に動力が伝達される。
【0068】
第7の実施形態の変速機部101では、2つのクラッチ2、3と3つのシンクロスリーブ42、44、49の作動制御をすることで、以上のように1速及びリバース1速の変速を可能にするとともに、2〜5速及びリバース2速の変速も可能としている。
そして、本実施形態では、4速用固定ギヤ34aと5速用遊転ギヤ35cとの間にワンウェイクラッチ8が設けられており、他の実施形態と同様に1速及びリバース1速では動力伝達路の中にワンウェイクラッチ8を有しているので、エンジンブレーキを効かなくすることができる。
【0069】
なお、本発明は以上の実施形態に限定するものではない。例えば、ワンウェイクラッチ8を奇数の変速段のうち最も減速比の高い変速段以外の変速段の変速ギヤと、偶数の変速段のうち最も減速比の低い変速段以外の変速段の変速ギヤとの間で動力を伝達可能とする構成であってもよい。また、上記実施形態と各変速ギヤの配置が異なる変速機においても、本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0070】
1、51、61、71、81、91、101 変速機部
2 第1のクラッチ
3 第2のクラッチ
4、4’ 第1の入力軸
5、5’ 第2の入力軸
8 ワンウェイクラッチ
10 エンジン
21 ドライブシャフト
82 第3のクラッチ
83 切換装置
93 プロペラシャフト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのグループに分けた複数の変速段のうちの第1のグループの変速段の変速ギヤが設けられた第1の入力軸と、
前記複数の変速段のうちのリバースギヤを含む第2のグループ変速段の変速ギヤが設けられた第2の入力軸と、
車両に搭載されたエンジンの駆動軸と前記第1の入力軸とを接続及び切断の切換可能な第1の接続切換手段と、
前記エンジンの駆動軸と前記第2の入力軸とを接続及び切断の切換可能な第2の接続切換手段と、
前記第1のグループの変速段の変速ギヤ及び前記第2のグループの変速段の変速ギヤに選択的に接続可能な出力軸と、を備え、
前記エンジンの駆動軸と前記車両の駆動輪との間の動力伝達路に介装される車両の変速装置であって、
前記第1のグループのうちの1つの変速段の変速ギヤと、前記第2のグループのうちの1つの変速段の変速ギヤとの間を、ワンウェイクラッチを介して動力を一方向のみ伝達可能とした車両の変速装置。
【請求項2】
前記第1のグループ及び前記第2のグループは、何れか一方が奇数の変速段であり、他方が偶数の変速段であることを特徴とする請求項1に記載の車両の変速装置。
【請求項3】
前記ワンウェイクラッチは、前記奇数の変速段のうち最も減速比の高い変速段の変速ギヤと、前記偶数の変速段のうち最も減速比の低い変速段の変速ギヤとの間で動力を伝達可能としたことを特徴とする請求項2に記載の車両の変速装置。
【請求項4】
前記第1の接続切換手段は、前記駆動軸と前記第1の入力軸との間に介装された第1のクラッチであり、
前記第2の動力接続切換手段は、前記駆動軸と前記第2の入力軸との間に介装された第2のクラッチであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の変速装置。
【請求項5】
前記第1の接続切換手段及び前記第2の接続切換手段は、前記第1の入力軸及び前記第2の入力軸のいずれか一方を前記駆動軸に選択的に接続する切換手段と、当該切換手段と前記駆動軸との間に介装された第3のクラッチにより構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の変速装置。
【請求項1】
2つのグループに分けた複数の変速段のうちの第1のグループの変速段の変速ギヤが設けられた第1の入力軸と、
前記複数の変速段のうちのリバースギヤを含む第2のグループ変速段の変速ギヤが設けられた第2の入力軸と、
車両に搭載されたエンジンの駆動軸と前記第1の入力軸とを接続及び切断の切換可能な第1の接続切換手段と、
前記エンジンの駆動軸と前記第2の入力軸とを接続及び切断の切換可能な第2の接続切換手段と、
前記第1のグループの変速段の変速ギヤ及び前記第2のグループの変速段の変速ギヤに選択的に接続可能な出力軸と、を備え、
前記エンジンの駆動軸と前記車両の駆動輪との間の動力伝達路に介装される車両の変速装置であって、
前記第1のグループのうちの1つの変速段の変速ギヤと、前記第2のグループのうちの1つの変速段の変速ギヤとの間を、ワンウェイクラッチを介して動力を一方向のみ伝達可能とした車両の変速装置。
【請求項2】
前記第1のグループ及び前記第2のグループは、何れか一方が奇数の変速段であり、他方が偶数の変速段であることを特徴とする請求項1に記載の車両の変速装置。
【請求項3】
前記ワンウェイクラッチは、前記奇数の変速段のうち最も減速比の高い変速段の変速ギヤと、前記偶数の変速段のうち最も減速比の低い変速段の変速ギヤとの間で動力を伝達可能としたことを特徴とする請求項2に記載の車両の変速装置。
【請求項4】
前記第1の接続切換手段は、前記駆動軸と前記第1の入力軸との間に介装された第1のクラッチであり、
前記第2の動力接続切換手段は、前記駆動軸と前記第2の入力軸との間に介装された第2のクラッチであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の変速装置。
【請求項5】
前記第1の接続切換手段及び前記第2の接続切換手段は、前記第1の入力軸及び前記第2の入力軸のいずれか一方を前記駆動軸に選択的に接続する切換手段と、当該切換手段と前記駆動軸との間に介装された第3のクラッチにより構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の変速装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2013−19424(P2013−19424A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149402(P2011−149402)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】
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