説明

車両の天井アセンブリ

【課題】 車両組立てライン等における吹出しグリルの脱落を防止しつつ、車両使用中の吹出しグリル不具合時には吹出しグリルのみを安価に取り替えることができる。
【解決手段】 吹出しグリル1の外周枠体11に係止部16を設けて、当該係止部16に、天井アセンブリを車両組立てラインに納入する際に吹出しグリル1を開口41に装着しておくためのクリップ部材2と、吹出しグリル1を交換する際に新たな吹出しグリル1を開口41に装着するための他のクリップ部材とを選択的に係止固定できるようにする。クリップ部材2は、その脚部22の先端221が天井材4の開口41縁裏面に当接することによって開口41に吹出しグリル1を係止するものであり、他のクリップ部材は、内方へ弾性変形可能で外方へ膨出するその脚部が天井材の開口縁裏面に当接することによって開口に吹出しグリルを係止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は天井材にダクトを一体に設けた車両の天井アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
図9に天井アセンブリの一例を示す。天井アセンブリは、天井材4の裏面に送風用のダクト5を一体に接合したもので、天井材4に設けた開口には吹出しグリル6が装着されている。これを図10でさらに説明すると、下方へ開放する半容器状のダクト5はその開口縁51が天井材4の裏面に接着固定してある。吹出しグリル6はその外周枠体61に上方へ突出するピン部611が形成されて当該ピン部611が天井材4の開口41周縁に設けた取付孔42内に挿入され、挿入されたピン部611の先端に上方から菊型ワッシャ62が圧嵌されて天井材4に固定されている。なお、特許文献1には、吹出しグリルを装着した天井材の裏面にダクトを一体に接合した天井アセンブリが示されている。
【特許文献1】特開2002−264634
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来の天井アセンブリでは、車両組立てラインへの搬入時や当該ラインにおけるハンドリング時等に吹出しグリル6が脱落しないように、上述のように菊型ワッシャ62で吹出しグリル6を天井材4に固定している。このため、車両の使用中に吹出しグリル6に不具合を生じた場合には、天井材4にダクト5が接合された状態では、吹出しグリル6だけを取り外して新たな吹出しグリル6を天井材4に装着することはできず、天井アセンブリ全体を取り替える必要があり、費用を要するという問題があった。
【0004】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、車両組立てライン等でのハンドリング時における吹出しグリルの脱落を防止しつつ、車両使用中の吹出しグリル不具合時には吹出しグリルのみを安価に取り替えることができる車両の天井アセンブリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明では、裏面にダクト(5)を一体に設けた天井材(4)の開口(41)に、ダクト(5)の内空間に連通する吹出しグリル(1)を装着した天井アセンブリにおいて、吹出しグリル(1)の外周枠体(11)に係止部(16)を設けて、当該係止部(16)に、天井アセンブリを車両組立てラインに納入する際に吹出しグリル(1)を開口(41)に装着するための第1クリップ部材(2)と、吹出しグリル(1)を交換する際に新たな吹出しグリル(1)を開口(41)に装着するための第2クリップ部材(3)とを選択的に係止固定できるようにする。ここで、第1クリップ部材(2)は、その脚部(22)の先端(221)が天井材(4)の開口(41)縁裏面に当接することによって開口(41)に吹出しグリル(1)を係止するものであり、第2クリップ部材(3)は、内方へ弾性変形可能で外方へ膨出するその脚部(32)が天井材(4)の開口縁(41)裏面に当接することによって開口(41)に吹出しグリル(1)を係止するものとすることができる。
【0006】
本発明においては、車両組立てラインに納入する際には吹出しグリルの係止部に第1クリップ部材を係止して、第1クリップ材によって、車両組立てラインへの搬入時等に吹出しグリルが脱落することがないようにこれを確実に天井材の開口に装着することができる。車両の使用中に吹出しグリルに不具合を生じた場合には、当該吹出しグリルを開口から取り外した後、新たな吹出しグリルの係止部に第2クリップ部材を係止し、第2クリップ部材によって吹出しグリルを天井材の開口に装着することができる。
【0007】
なお、上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車両の天井アセンブリによれば、車両組立てライン等でのハンドリング時における吹出しグリルの脱落を防止しつつ、車両使用中の吹出しグリル不具合時には吹出しグリルのみを安価に取り替えることができる。その際、本発明によれば、吹出しグリルに設けた同構造の係止部を第1クリップ部材と第2クリップ部材で共用できるから、吹出しグリルの共通化が可能であり、吹出しグリル製造コストの増大を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1には本発明の天井アセンブリに使用する吹出しグリル1の平面図を示し、図2には図1のII−II線に沿った断面図を示す。図において、吹出しグリル1は一定幅の円形リング板状の枠体11を備えており、その内周縁上には相対回転可能に円形支持リング12が載置されている。支持リング12の内空間にはこれを横切って平行に複数の長板状フィン13が配設してあり、各フィン13は両端の軸部131が、支持リング12の内周部に形成された軸受け121に回転可能に支持されている。各フィン13はその板面中央から延びる腕板14の先端が連結板15に回動可能に結合してあって、一体に起立姿勢(図2の実線)と傾倒姿勢(図2の鎖線)に姿勢変更可能である。
【0010】
枠体11には外周の複数個所に図3に示すように係止突起16が突出形成されている。係止突起16は矩形の板状体で(図4)、その板面には上下方向中間部の左右位置に矩形の取付け開口161が形成されるとともに、下端の中央位置には干渉回避用の矩形開口162が形成されている。
【0011】
図5には、天井アセンブリを車両組立てラインに納入する際に使用する第1クリップ部材2を示し、図5(A)はその断面図、図5(B)はその正面図、図5(C)はその裏面図である。第1クリップ部材2は金属板体よりなり、矩形の本体部21の上端中央部から裏面側の下方へ、狭幅の脚部22を略逆U字形に折り返し延出させてある。脚部22の下端221は本体部21の下端よりも上方に位置して対向方向外方へ屈曲している。本体部21の上端左右位置からは狭幅の装着部23が裏面下方へ略逆U字形に折り返されており、各装着部23の先端は板面を切り離して傾斜屈曲させて、係止片231としてある。本体部21の板面にはこれら係止片231に対応させて左右位置に干渉回避用の矩形の切欠き24が形成されている。
【0012】
図6には、吹出しグリル1を交換する際に新たな吹出しグリル1を天井材4(図9)に装着するのに使用する第2クリップ部材3を示し、図6(A)はその断面図、図6(B)はその正面図、図6(C)はその裏面図である。第2クリップ部材3は金属板体よりなり、矩形の本体部31の上端中央部から裏面側の下方へ、狭幅の脚部32を略逆U字形に折り返し延出させてある。脚部32は下方に向けて漸次対向方向外方へ膨出し、その後、対向方向内方へ湾曲して、その下端は本体部31の下端よりも上方に位置している。本体部31の上端左右位置からは狭幅の装着部33が裏面下方へ略逆U字形に折り返されており、各装着部33の先端は板面を切り離して傾斜屈曲させて、係止片331としてある。本体部31の板面には左右の係止片331と脚部32の下端部に対応させて干渉回避用の矩形の切欠き34および開口35が形成されている。
【0013】
このような構造において、車両組立てラインに納入する際には図7に示すように、天井材4の開口41縁に下方から吹出しグリル1の枠体11を当て、天井材4の上方へ突出する係止突起16に、上方からクリップ部材2を差し込む。クリップ部材2はその係止片231が取付け開口161内へ進入して係止突起16に係止される(図3の鎖線)。この状態で、外方へ屈曲する脚部22の下端221が天井材4の上面(裏面)に当接して、車両組立てラインへの搬入時や当該ラインにおけるハンドリング時等に吹出しグリル1が脱落することがないようにこれを確実に天井材4の開口41に係止する。この後、上方から半容器状のダクト5を被せてその開口縁51を天井材4に接着固定し、天井アセンブリとする。
【0014】
車両の使用中に吹出しグリル1に不具合を生じた場合には、天井材4と吹出しグリル1の枠体11との間隙から工具を差し込んで係止突起16を折損させたのち、当該吹出しグリル1を下方へ引っ張って開口41から取り外す。そして、新たな吹出しグリル1の枠体11の係止突起16に上方からクリップ部材2を差し込む(図8の黒矢印)。クリップ部材3はその係止片331が取付け開口161内へ進入して係止突起16に係止される。その後、クリップ部材3の脚部32を内方へ弾性変形させつつ天井材4の開口41内へ挿入すると(白矢印)、開口41縁の上方で脚部32が原形に復して膨出した脚部32が天井材4の裏面に当接し、吹出しグリル1を開口41縁に係止する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態を示す、吹出しグリルの全体平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿った断面図である。
【図3】図1のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】係止突起設置部の正面図である。
【図5】第1クリップ部材の断面図、正面図、裏面図で、断面図は図5(B)のV−V線に沿った断面図である。
【図6】第2クリップ部材の断面図、正面図、裏面図で、断面図は図6(B)のVI−VI線に沿った断面図である。
【図7】天井アセンブリの要部分解断面図である。
【図8】天井アセンブリの要部分解断面図である。
【図9】従来例を示す天井アセンブリの部分断面斜視図である。
【図10】従来例を示す天井アセンブリの要部断面図で、図9のX−X線に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0016】
1...吹出しグリル、11...外周枠体、16...係止部、2...第1クリップ部材、22...脚部、221...下端、3...第2クリップ部材、32...脚部、4...天井材、41...開口、5...ダクト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面にダクトを一体に設けた天井材の開口に、前記ダクトの内空間に連通する吹出しグリルを装着した天井アセンブリにおいて、吹出しグリルの外周枠体に係止部を設けて、当該係止部に、天井アセンブリを車両組立てラインに納入する際に吹出しグリルを開口に装着するための第1クリップ部材と、吹出しグリルを交換する際に新たな吹出しグリルを開口に装着するための第2クリップ部材とを選択的に係止固定できるようにしたことを特徴とする車両の天井アセンブリ。
【請求項2】
前記第1クリップ部材は、その脚部の先端が天井材の開口縁裏面に当接することによって前記開口に吹出しグリルを係止するものであり、前記第2クリップ部材は、内方へ弾性変形可能で外方へ膨出するその脚部が天井材の開口縁裏面に当接することによって前記開口に吹出しグリルを係止するものである請求項1に記載の車両の天井アセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−56385(P2006−56385A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−240182(P2004−240182)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】