説明

車両の後部車体構造

【課題】上下の曲げに対して補強効果を十分に図ることのできる車両の後部車体構造を提供する。
【解決手段】車両の前後方向に延設されたリヤサイドメンバ10とホイルハウスインナとにより閉断面が構成され、リヤサイドメンバ10に傾斜部11が形成された車両の後部車体構造において、リヤサイドメンバ10の上壁部13と下壁部14とに当接するとともに、リヤサイドメンバ10の傾斜部11の前側屈曲部11Aから後側屈曲部11Bまで延びる補強部材20を前記閉断面内に設け、この補強部材20の一側部分をリヤサイドメンバ10の側壁に当接させ、他側部分を前記ホイルハウスインナに当接させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、リヤサイドメンバとホイルハウスインナとにより閉断面を構成した車両の後部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、閉断面を形成したリヤサイドメンバにレインホースを設けて車両後部の補強を図った車両の後部車体構造が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
かかる後部車体構造は、リヤサイドメンバの閉断面内に、リヤサイドメンバの傾斜部の前後に亘って断面がU字形のレインホースを設け、このレインホースの両側壁部をリヤサイドメンバの両側壁部に接合し、レインホースの先端側の上端部をリヤサイドメンバの上壁部に接合し、レインホースの後端部側の底壁部をリヤサイドメンバの底壁部に接合したものである。
【特許文献1】特開2003−2231号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような後部車体構造にあっては、レインホースが前後方向に延びていることによりリヤサイドメンバの圧縮方向荷重に対する補強効果を有するが、レインホースがリヤサイドメンバの上壁部と下壁部との間を支える構造となっていないことにより、車体剛性における主要変形モードとなるリヤサイドメンバの上下の曲げ荷重に対して補強効果が小さいという問題があった。
【0005】
この発明の目的は、リヤサイドメンバの上下の曲げ荷重に対して補強効果を十分に図ることのできる車両の後部車体構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、車両の前後方向に延設されたリヤサイドメンバとホイルハウスインナとにより閉断面が構成され、前記リヤサイドメンバに傾斜部が形成された車両の後部車体構造において、
前記リヤサイドメンバの上壁部と下壁部とに当接するとともに、リヤサイドメンバの傾斜部の前側屈曲部から後側屈曲部まで延びる補強部材を前記閉断面内に設け、
この補強部材の一側部分を前記リヤサイドメンバ内側面に当接させ、他側部分を前記ホイルハウスインナに当接させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、リヤサイドメンバの上下の曲げ荷重に対して補強効果を十分に図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明に係る車両の後部車体構造を実施の形態である実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0009】
図1および図2に示す車両の後部車体構造は、車両の前後方向に延設された鉄板からなるリヤサイドメンバ10と、このリヤサイドメンバ10内に配置された鉄板からなるレインホース20とを備えている。
【0010】
リヤサイドメンバ10は、前側(図2において左側)が下がっている傾斜部11を有するとともに、図3および図4に示すように断面がコ字状に形成されており、このコ字状を形成する側壁部12と、この側壁部12の上下に一体形成された上壁部13と下壁部14とを有している。上下壁部13,14の一端にはフランジ13a,14aが形成されている。
【0011】
そして、このリヤサイドメンバ10のフランジ13a,14aにホイルハウスインナ15が接合され、このホイルハウスインナ15とリヤサイドメンバ10とで図3に示すように閉断面16が形成されている。なお、図1において、17はサイドシル、18はクロスメンバである。
【0012】
レインホース20は、リヤサイドメンバ10の傾斜部11の前側屈曲部11Aから後側屈曲部11Bまで車両の前後方向に延びているとともに、図4に示すように所定の高さを有する長尺状の補強板部21を有している。この補強板部21の上下部にフランジ22,23が形成され、このフランジ22,23は図3に示すようにリヤサイドメンバ10の上下壁部13,14に接合される。補強板21は図1に示すように車両の前後方向に対する車幅方向の傾きは小さく設定されている。
【0013】
補強板21の後部21Aには、図5に示すように、車幅方向に折れ曲がった平面視がV字形の屈曲部21Aaが形成されている。なお、この後部21Aにはフランジ22,23は形成されていない。
【0014】
また、後部21Aの後端には接合板部24が一体形成され、この接合板部24は、補強板21の高さより上下方向に長くなっており、後部21Aの上下端から上下方向に突出している。そして、接合板部24の一側端(図5において右側端)には、補強板21と同じ高さの連結部(補強壁部)25が車幅方向に延びるように一体形成され、この連結部25が図6に示すように車幅方向(左右方向)に延びるように閉断面16内に配置されている。また、連結部25の先端部には後方(図5において右方)へ突出した当接部26が形成され、この当接部26の高さは連結部25と同じ高さとなっている。
【0015】
そして、レインホース20の接合板部24は、図2および図6に示すようにリヤサイドメンバ10のフランジ13a,14aに接合されるとともに、ホイルハウスインナ15に接合されている。そして、連結部25が閉断面16内で車幅方向に延びていて閉断面16の両内壁面に接合された状態となっている。レインホース20の当接部26はリヤサイドメンバ10の側壁部12に接合され、この当接部26の接合位置は図1に示すようにクロスメンバ18の右側面18aの位置に合わせられている。
【0016】
また、補強板21の先端部21B(図4において左端部)には、図7に示すように当接部27が形成され、この当接部27は補強板21と同一高さを有している。この当接部27はリヤサイドメンバ10の側壁部12に接合されている。なお、先端部21Bにはフランジ13a,14aは形成されていない。
【0017】
当接部27の先端には車幅方向に延びた連結部(補強壁部)28が一体形成され、この連結部28が図8に示すように閉断面16内に車幅方向(左右方向)に延びるように配置さている。
【0018】
連結部28の高さは当接部27と同一高さを有し、この連結部28の先端には車両の前方(図7において左方)へ延びた接合板部29が一体形成されている。この接合板部29の高さは補強板21の高さより上下方向に長くなっており、先端部21Bの上下端から上下方向に突出している。
【0019】
そして、レインホース20の接合板部29は、図2および図8に示すようにリヤサイドメンバ10のフランジ13a,14aに接合されるとともに、ホイルハウスインナ15に接合されている。そして、連結部28は閉断面16の両内壁面に接合された状態となっている。また、レインホース20の補強板21はリヤサイドメンバ10の傾斜部11の前側屈曲部11Aから後側屈曲部11Bまで延びるとともに、リヤサイドメンバ10のフランジ13a,14aと側壁12との間に架設された状態となっている。
【0020】
次に、上記のように構成される後部車体構造の作用について説明する。
【0021】
レインホース20は、リヤサイドメンバ10の傾斜部11の前側屈曲部11Aから後側屈曲部11Bまでに亘って配置されるとともにレインホース20のフランジ22,23がリヤサイドメンバ10の上下壁部13,14に接合されていることにより、リヤサイドメンバ10に後面衝突荷重が作用した際、そのリヤサイドメンバ10の傾斜部11の変形が防止される。さらに、リヤサイドメンバ10の上下方向の曲げ荷重をレインホース20が受けるので、リヤサイドメンバ10の上下の曲げ方向の変形を抑制することができ、その上下の曲げ方向に対する補強効果を十分に図ることができる。
【0022】
また、レインホース20は車両の前後方向に延びているとともに、車両の車幅方向に対してオフセットの小さい荷重伝達経路を形成するものであるから、すなわち、車両の前後方向に対するレインホース20の補強板21の傾きが小さいことにより、リヤサイドメンバ10の圧縮方向の荷重に対して補強効果を十分に図ることができる。
【0023】
このように、1つのレインホース20によってリヤサイドメンバ10の上下の曲げ方向に対する補強効果と、リヤサイドメンバ10の圧縮方向の荷重に対する補強効果を十分に図ることができる。
【0024】
レインホース20の前後端部でリヤサイドメンバ10の剛性が急激に変化するため、衝突荷重などがリヤサイドメンバ10に入力した際、レインホース20の前後端部の近傍でリヤサイドメンバ10が折れ易く、このためリヤサイドメンバ10は断面が潰れながら折れていくが、レインホース20の前後端部で連結部28,25がリヤサイドメンバ10の閉断面16内に配置されるとともに、連結部28,25がリヤサイドメンバ10の側壁部12とホイルハウスインナ15とに接合されている状態となっていることにより、リヤサイドメンバ10の折れを防止することができる。
【0025】
さらに、車両に左右方向の荷重が作用した際、リヤサイドメンバ10とクロスメンバ18からなるラーメン構造でその荷重を受けるが、リヤサイドメンバ10の閉断面16内にレインホース20の連結部28,25が配置されるとともに、リヤサイドメンバ10の側壁部12とホイルハウスインナ15とに接合されている状態となっていることにより、ラーメン構造の結合部の断面変化を抑えることができ、その結合部を強化することができる。
【0026】
また、後面衝突荷重がリヤサイドメンバ10に作用した際、図9に示すようにレインホース20の屈曲部21Aaが潰れることにより、その衝突エネルギーを吸収することができる。また、その屈曲部21Aaより前側に位置するレインホース20の補強板21は車両の前後方向に対して小さい傾きの荷重伝達経路を形成するものであるから、リヤサイドメンバ10の傾斜部11の変形を防止することができる。
【0027】
さらに、屈曲部21Aaが潰れることにより後面衝突で潰したい範囲と車体剛性で保護したい範囲をリヤサイドメンバ10上に設定することができる。また、後面衝突時にリヤサイドメンバ10の潰れモードをコントロールすることができる。
【0028】
また、屈曲部21Aaの稜線が上下方向に延びていることにより、リヤサイドメンバ10の上下方向の曲げに対して折れのきっかけとなることはない。なお、屈曲部21Aaが形成されていなくともリヤサイドメンバ10の上下の曲げ方向に対する補強効果と、リヤサイドメンバ10の圧縮方向の荷重に対する補強効果を十分に図ることができる。
【0029】
この発明は、上記実施例に限定されるものではなく、発明を逸脱しない範囲で種々に設計変更できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明に係る車両の後部車体構造を示した平面図である。
【図2】図1に示す車両の後部車体構造の側面図である。
【図3】図2のA−A線に沿う断面図である。
【図4】図1に示す後部車体構造のリヤサイドメンバとレインホースを示した斜視図である。
【図5】図4に示すレインホースの後部を示した拡大斜視図である。
【図6】リヤサイドメンバとレインホースの後部との接合状態を示した説明図である。
【図7】レインホースの先端部を示した拡大平面図である。
【図8】リヤサイドメンバとレインホースの先端部との接合状態を示した説明図である。
【図9】後面衝突荷重がリヤサイドメンバに加わった状態を示した説明図である。
【符号の説明】
【0031】
10 リヤサイドメンバ
11 傾斜部
11A 前側屈曲部
11B 後側屈曲部
13 上壁部
14 下壁部
20 レインホース(補強部材)
21 補強板
22 フランジ
23 フランジ
24 接合板部
29 接合板部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前後方向に延設されたリヤサイドメンバとホイルハウスインナとにより閉断面が構成され、前記リヤサイドメンバに傾斜部が形成された車両の後部車体構造において、
前記リヤサイドメンバの上壁部と下壁部とに当接するとともに、リヤサイドメンバの傾斜部の前側屈曲部から後側屈曲部まで延びる補強部材を前記閉断面内に設け、
この補強部材の一側部分を前記リヤサイドメンバ内側面に当接させ、他側部分を前記ホイルハウスインナに当接させることを特徴とする車両の後部車体構造。
【請求項2】
前記補強部材の前後に、車両の車幅方向に延びるとともに前記閉断面の両内壁面に接合する補強壁部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の車両の後部車体構造。
【請求項3】
車両の前後方向に対して車幅方向へ屈曲する屈曲部を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両の後部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−283844(P2007−283844A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−111552(P2006−111552)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】