説明

車両の排気管構造

【課題】本発明は、エンジンの振動吸収性能を改善し、かつ、排気管の耐久性を向上させることが出来る車両の排気管構造を提供することを目的としている。
【解決手段】このため、エンジンと変速機を連結したパワートレインをクランク軸が車幅方向に向くように配置し、パワートレインは慣性主軸の上方かつ、車幅方向両側部の一対のマウントとパワートレイン後部のマウントによって車体に支持され、排気マニホールドに車両底面に沿って車両後方へ延びる排気管を連結し、排気管は弾性部材を介して車体に支持し、排気管のエンジンに対する結合部と、結合部の最も近くの車体への支持部とに挟まれる管路にフレキシブルチューブを配置した構造のパワートレインを持つ車両の排気管構造において、結合部と支持部の間にて、管路の中心線を車両幅方向へクランク状に湾曲させ、フレキシブルチュ一ブの中心軸を車両幅方向に向くように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両の排気管構造に係り、特にエンジンの振動吸収性能を改善しつつ、排気管の耐久性の向上を図る車両の排気管構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に用いられる排気管は、車両前方に搭載されたパワートレインのエンジンから排出された排気ガスを、車両後方(リアバンパー下部等)まで導いて大気中に放出する部品である。
このため、通常、エンジン直下近傍の排気管は、車両の前後方向に向けてレイアウトされている場合が多い。
そして、前記排気管はその全長が長いことから、中間部(エンジン直下近傍)にエンジン搭載位置のバラツキや運転時のエンジン揺動を吸収できるような構造を必要とし、その方策としてフレキシブルチューブを用いる場合がある。
このフレキシブルチューブは、構造上、チューブの軸方向に比べ、軸直角方向(せん断方向)おいて、より柔軟な特性を持っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平7−107365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したエンジンレイアウトにおいて、従来のようにエンジン直下近傍を車両前後方向に通過するフレキシブルチューブレイアウトは、エンジンクランク軸方向の回転揺動に対して、フレキシブルチューブがエンジン揺動を規制するつっかえ棒の様な役割を果たしてしまい、エンジンマウント本来の機能・特性を妨げ、NVHを悪化させる要因となってしまうという不都合がある。
また、フレキシブルチューブは、揺動を吸収するという機能上、複数の部品で構成されており、単純なパイプよりも走行中の飛び石や塩害、融雪材の影響を受けて、破損し易いという不都合がある。
【0005】
追記すれば、従来の車両の排気管構造においては、図5に示す如く、車両100の前部にエンジン103と変速機104とを連結したパワートレイン101を搭載し、このパワートレイン101のエンジン103にフレキシブルチューブ114を介して排気管110を取り付け、車両後方に配設している。
つまり、前記排気管110は、第1排気管115と第2排気管116とマフラ117とを有している。
そして、第1排気管115は、上流側を前記フレキシブルチューブ114を介して前記エンジン103に取り付ける一方、下流側に前記第2排気管116とマフラ117とを順次配設している。
このとき、前記パワートレイン101は、図5〜図8に示す如く、前記エンジン1036のクランク軸105が車両の車幅方向に向くように配置している。
また、このパワートレイン101は、このパワートレイン101の慣性主軸の上方かつ、車幅方向両側部に配置される一対のマウントである左右側エンジンマウンチングとパワートレイン101後部に配置されるマウントであるリヤ側エンジンマウンチングとの3点によって車体に支持されている。
そして、前記エンジン103に配置される排気マニホールド109に車両底面に沿って車両後方へ延びる排気管110を連結している。
この排気管110は、弾性部材を介して車体に支持するとともに、前記排気管110のエンジン103に対する結合部と、この結合部の最も近くに配置される前記車体への支持部とに挟まれる管路にフレキシブルチューブ114を配置している。
このとき、前記排気管110は第1排気管115と第2排気管116とマフラ117とを有しており、前記排気マニホールド109の触媒管118に第1排気管115の上流側を連結する一方、この第1排気管115の下流側に第2排気管116の上流側を連結し、第2排気管116の下流側にマフラ117を接続している。
しかし、上述した車両の排気管構造のように、前記第1排気管は上流側では揺動するエンジンと連結し、下流側では車体に支持される弾性部材で揺動する前記第2排気管と連結している。
この結果、前記フレキシブルチューブの配設方向が適切でない場合、つまり図8に示す如く、フレキシブルチューブが、車両前後方向かつ車両前側から車両後側に向かって上昇するように傾斜した状態で取り付けられた場合に、例えばフレキシブルチューブが突っ張り棒のような存在になり、エンジン揺動を制限し、エンジンマウンチングチューブの機能に悪影響を及ぼし、エンジン振動が第2排気管を通じて車体に伝播し、車室内の振動・騒音性能の悪化を招くおそれがあるという不都合がある。
また、前記第1排気管及び前記第2排気管へエンジン揺動が伝達することによって、部品の耐久性が低下するおそれがあるという不都合がある。
【0006】
この発明は、エンジンの振動吸収性能を改善し、かつ、排気管の耐久性を向上させることが出来る車両の排気管構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、この発明は、上述不都合を除去するために、エンジンと変速機とを連結したパワートレインをエンジンのクランク軸が車両の車幅方向に向くように配置し、前記パワートレインはこのパワートレインの慣性主軸の上方かつ、車幅方向両側部に配置される一対のマウントとパワートレイン後部に配置されるマウントによって車体に支持され、前記エンジンに配置される排気マニホールドに車両底面に沿って車両後方へ延びる排気管を連結し、この排気管は弾性部材を介して車体に支持するとともに、前記排気管のエンジンに対する結合部と、この結合部の最も近くに配置される前記車体への支持部とに挟まれる管路にフレキシブルチューブを配置した構造のパワートレインを持つ車両の排気管構造において、前記結合部と前記支持部との間にて、前記管路の中心線を車両幅方向へクランク状に湾曲させ、前記フレキシブルチュ一ブの中心軸を車両幅方向に向くように配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上詳細に説明した如くこの発明によれば、フレキシブルチューブの特性として、引張り圧縮方向(中心軸方向)よりも、せん断方向(円周の法線方向)のほうがばね定数が低いため、フレキシブルチューブの中心軸をクランク軸と同方向に向けることで、エンジン揺動時にフレキシブルチューブにせん断力が働くため、フレキシブルチューブが柔軟に変形して、マウントがより効果的にエンジン揺動を吸収でき、車両の振動騒音性能が向上する。
また、排気管への振動伝達が少なくなるため、排気管の耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は車両に搭載されるパワートレインのエンジンに排気管を取り付けた状態を斜め後方から視た概略斜視図である。(実施例)
【図2】図2は車両に搭載されるパワートレインの平面図である。(実施例)
【図3】図3は車両に搭載されるパワートレインの背面図である。(実施例)
【図4】図4は車両に搭載されるパワートレインの側面図である。(実施例)
【図5】図5はこの発明の従来技術を示すものであり、車両に搭載されるパワートレインとこのパワートレインのエンジンに取り付けられる排気管とを示す概略側面図である。
【図6】図6は車両に搭載されるパワートレインの平面図である。(従来例)
【図7】図7は車両に搭載されるパワートレインの背面図である。(従来例)
【図8】図8は車両に搭載されるパワートレインの側面図である。(従来例)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下図面に基づいてこの発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例】
【0011】
図1〜図4はこの発明の実施例を示すものである。
図1〜図4において、1は車両(図示せず)に搭載されるパワートレイン、2は車両の車体(図示せず)に固定されるサスペンションフレームである。
前記パワートレイン1は、図1〜図4に示す如く、エンジン3とこのエンジン3に連結される変速機4とにより構成している。
そして、前記パワートレイン1は、エンジン3のクランク軸5が車両の車幅方向に向くように配置される。
また、前記サスペンションフレーム2は、主にサスペンション部材を集中的に取り付けるための強度部材であり、前記パワートレイン1の車両後側に配置される。
このとき、前記サスペンションフレーム2は、後述するリヤ側エンジンマウンチング8と排気管支持用の弾性部材取付用パイプ20とを備えている。
更に、前記パワートレイン1はこのパワートレイン1の慣性主軸の上方かつ、車幅方向両側部に配置される一対のマウントである左右側エンジンマウンチング6、7とパワートレイン1後部に配置されるマウントであるリヤ側エンジンマウンチング8との3点によって車体に支持される。
そして、前記エンジン3に配置される排気マニホールド9に車両底面に沿って車両後方へ延びる排気管10を連結する。
この排気管10は弾性部材11を介して車体に支持するとともに、前記排気管10のエンジン3に対する結合部12と、この結合部12の最も近くに配置される前記車体への支持部13とに挟まれる管路にフレキシブルチューブ14を配置している。
このとき、前記排気管10は、図1〜図4に示す如く、第1排気管15と第2排気管16とマフラ17とを有しており、前記排気マニホールド9の触媒管18に第1排気管15の上流側を連結する一方、この第1排気管15の下流側に第2排気管16の上流側を連結し、第2排気管16の下流側にマフラ17を接続している。
このため、前記エンジン3から排出された排気ガスは、前記触媒管18を通過した後に、前記第1排気管15、前記第2排気管16、前記マフラ17を経て、車体後方より排出される。
追記すれば、前記第1排気管15は上流側端部を前記触媒管18と前記エンジン3のオイルパン19直下で結合され、前記第1排気管15の下流側端部を前記サスペンションフレーム2後端近傍で前記第2排気管16と結合され、車体に支持する点は無く、両端部でそれぞれの相手側部品に結合して支持されているだけである。
このとき、前記エンジン3と前記第2排気管16間の揺動差を吸収するために前記第1排気管15の管路途中には前記フレキシブルチューブ14が組み込まれている。
また、前記第2排気管16は上流側端部を前記第1排気管15と結合され、第2排気管16の下流側端部を前記マフラ17と結合される。
【0012】
また、前記結合部12と前記支持部13との間にて、前記管路の中心線を車両幅方向へクランク状に湾曲させ、前記フレキシブルチューブ14の中心軸を車両幅方向に向くように配置する。
詳述すれば、前記結合部12は、図1〜図4に示す如く、前記エンジン3下部の前記オイルパン19の陰に隠れており、明確に視認できる状態となってはいないが、正確には、図4に示す如く、前記排気管10の第1排気管15と前記排気マニホールド9の触媒管18とを結合する部位を指している。
また、前記支持部13においては、図1及び図2に示す如く、前記サスペンションフレーム2のエンジン3と反対側、かつ、対峙する内側部位に弾性部材取付用パイプ20を夫々配設し、これらの端部に前記弾性部材11を夫々取り付ける。
そして、これらの弾性部材11間に前記支持部13を配設し、前記排気管10の第1排気管15と第2排気管16との接続部位近傍を車両下方から支持している。
このとき、前記結合部12と前記支持部13との間において、図1〜図4に示す如く、前記管路の中心線、つまり前記第1排気管15をクランク状に湾曲させ、前記フレキシブルチューブ14の中心軸を車両幅方向に向くように、つまりフレキシブルチューブ14の中心軸が前記エンジン3のクランク軸5の軸方向と平行となるように配置するものである。
これにより、前記フレキシブルチューブ14の特性として、引張り圧縮方向(中心軸方向)よりも、せん断方向(円周の法線方向)のほうがばね定数が低いため、フレキシブルチューブ14の中心軸をクランク軸5と同方向に向けることで、エンジン揺動時にフレキシブルチューブ14にせん断力が働くため、フレキシブルチューブ14が柔軟に変形して、エンジンマウンチング6〜8がより効果的にエンジン揺動を吸収でき、車両の振動騒音性能が向上する。
また、前記排気管10への振動伝達が少なくなるため、この排気管10の耐久性が向上する。
【0013】
また、前記フレキシブルチューブ14の中心軸は、車両前後方向において、前記エンジン3のクランク軸5と前記支持部13との中間点よりクランク軸5寄りに配設する。
つまり、前記フレキシブルチューブ14を配設する際に、このフレキシブルチューブ14の中心軸は、図1〜図3に示す如く、前記エンジン3のクランク軸5と前記支持部13との中間点である前記排気管10の第1排気管15と第2排気管16との接続部位近傍との間において、エンジン3のクランク軸5寄りに配設している。
これにより、前記フレキシブルチューブ14の中心軸を前記エンジン3のクランク軸5に近づけることで、クランク軸5に近いほうがエンジン揺動幅が少ないため、そこにフレキシブルチューブ14を配置することにより、フレキシブルチューブ14ヘのエンジン揺動による入力振幅が抑えられ、排気管10の振動・騒音の伝達が低下し、車両の振動騒音性能が向上する。
また、前記排気管10へのエンジン3の前後方向の揺動である振動伝達が少なくなるため、排気管10の耐久性が向上する。
【符号の説明】
【0014】
1 パワートレイン
2 サスペンションフレーム
3 エンジン
4 変速機
5 クランク軸
6、7 左右側エンジンマウンチング
8 リヤ側エンジンマウンチング
9 排気マニホールド
10 排気管
11 弾性部材
12 結合部
13 支持部
14 フレキシブルチューブ
15 第1排気管
16 第2排気管
17 マフラ
18 触媒管
19 オイルパン
20 弾性部材取付用パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと変速機とを連結したパワートレインをエンジンのクランク軸が車両の車幅方向に向くように配置し、前記パワートレインはこのパワートレインの慣性主軸の上方かつ、車幅方向両側部に配置される一対のマウントとパワートレイン後部に配置されるマウントによって車体に支持され、前記エンジンに配置される排気マニホールドに車両底面に沿って車両後方へ延びる排気管を連結し、この排気管は弾性部材を介して車体に支持するとともに、前記排気管のエンジンに対する結合部と、この結合部の最も近くに配置される前記車体への支持部とに挟まれる管路にフレキシブルチューブを配置した構造のパワートレインを持つ車両の排気管構造において、前記結合部と前記支持部との間にて、前記管路の中心線を車両幅方向へクランク状に湾曲させ、前記フレキシブルチュ一ブの中心軸を車両幅方向に向くように配置することを特徴とする車両の排気管構造。
【請求項2】
前記フレキシブルチューブの中心軸は、車両前後方向において、前記エンジンのクランク軸と前記支持部との中間点よりクランク軸寄りに配設することを特徴とする請求項1に記載の車両の排気管構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−40573(P2013−40573A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176544(P2011−176544)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】