説明

車両の操舵装置

【課題】転舵される一対の従動輪に回転速度差を生じさせて車両を操舵することができる車両の操舵装置を提供すること。
【解決手段】三輪自転車11は、ペダル17の踏み込みにより駆動される後輪13、及び従動輪としての左前輪22L及び右前輪22Rを有する。この三輪自転車11の操舵装置は、左前輪22Lと右前輪22Rに回転速度差を生じさせて回転させる無段変速装置30と、この無段変速装置30の変速比を調節する調節手段Rを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、三輪自転車は、2つの後輪(駆動輪)が1つの車軸で連結されるとともに、この車軸に固定されたチェーンギヤと、ペダル軸に固定されたチェーンギヤにチェーンが掛け渡されて構成されている。そして、三輪自転車は、ペダルの踏み込みにより後輪を駆動させることで前後進するようになっている。また、三輪自転車の1つの前輪を支持するフレームには、ハンドルが回動可能に支持され、このハンドルを操作することで前輪を転舵させて、三輪自転車を操舵するようになっている。ところで、このような三輪自転車では、2つの後輪が車軸で連結され、2つの後輪の回転速度は同じであるため、旋回し難いという問題があった。そこで、特許文献1には、両後輪の回転速度を制御可能にした三輪自転車が開示されている。この三輪自転車は、1つの前輪(従動輪)と、左右2つの後輪(駆動輪)とを有し、それら左右の後輪車軸の間にはべべルギヤが設けられている。そして、ベベルギヤを設けることで一対の後輪の回転速度を差動的に変化させ、旋回しやすくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭56−146692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に開示の三輪自転車において、その操舵は1つの従動輪たる前輪を転舵させて行っており、特許文献1には、転舵される一対の従動輪に回転速度差を生じさせる技術については何ら開示も示唆もない。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、転舵される一対の従動輪に回転速度差を生じさせて車両を操舵することができる車両の操舵装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、駆動源からの動力により駆動される駆動輪を有するとともに、左右方向へ揺動可能に支持された一対の従動輪を有する車両の操舵装置であって、前記一対の従動輪に回転速度差を生じさせる変速装置と、前記変速装置の変速比を調節する調節手段と、を備えることを要旨とする。
【0007】
上記発明によれば、変速装置の駆動により生じた一対の従動輪間の回転速度差により、回転速度の速い従動輪が、遅い従動輪より先に進む結果、一対の従動輪が転舵し、この転舵により車両を操舵することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両の操舵装置において、前記変速装置は、前記従動輪それぞれに動力伝達可能に連結される第1の回転軸と第2の回転軸を有するとともに、前記第1の回転軸の回転速度を、前記調節手段により決定された変速比に応じた回転速度に変更する変更手段を有し、前記変速装置は、前記変更手段により変更された回転速度で前記第2の回転軸を回転させることを要旨とする。
【0009】
上記発明によれば、変更手段により、変速比に応じた回転速度で第2の回転軸を回転させることができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両の操舵装置において、前記一対の従動輪の従動軸又は前記変速装置は、軸受部材を介して前記車両に設けられた支軸により左右方向へ揺動可能に支持されていることを要旨とする。
【0010】
上記発明によれば、支軸を揺動中心として一対の従動輪を左右方向へ揺動させることで、車両を操舵することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の車両の操舵装置において、前記駆動源と前記駆動輪とを動力伝達可能に連結する駆動機構を備え、前記駆動源はペダルであり、前記駆動機構は前記ペダルの駆動軸及び駆動輪の車軸それぞれに設けられたスプロケットと、それらスプロケットに掛け渡されたチェーンであることを要旨とする。
【0011】
上記発明によれば、ペダルの踏み込み動作によって発生する動力で車両が駆動される際、その駆動に従動する一対の従動輪を変速装置を用いて転舵させ、車両を操舵している。よって、運転者の操舵負担を軽減して車両を操舵することができる。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜請求項4のうちいずれか一項に記載の車両の操舵装置において、前記変速装置は、前記変更手段としての少なくとも1つの転動体と、前記転動体が回転しつつ摺接する第1摺接面を有するとともに、前記第1の回転軸と一体回転する第1の支持部材と、前記転動体が回転しつつ摺接する第2摺接面を有するとともに、前記第2の回転軸と一体回転する第2の支持部材と、を有し、前記転動体を駆動させ、該転動体の回転軸を中心とした第1及び第2摺接面の作用半径を調節することで、前記第1の回転軸と第2の回転軸に回転速度差を生じさせるとともに、前記転動体が前記調節手段により駆動されることを要旨とする。
【0013】
上記発明によれば、転動体を駆動させることで、第1及び第2摺接面の作用半径を変更し、変速比を変更することができるため、変速比の変更を衝撃の無い、無段状態で行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、転舵される一対の従動輪に回転速度差を生じさせて車両を操舵することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施形態の操舵装置を備えた三輪自転車を示す模式図。
【図2】前輪及びセンターピボット機構を図3の2−2線から見た模式平面図。
【図3】前輪及び無段変速装置付近を模式的に示す正面図。
【図4】(a)は右進する場合を示す模式図、(b)は左進する場合を示す模式図。
【図5】第2の実施形態の操舵装置を示す模式図。
【図6】操舵装置により左右前輪を転舵させた状態を模式的に示す図。
【図7】第3の実施形態の三輪自転車を模式的に示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、本発明の操舵装置を、車両としての三輪自転車11の操舵装置に具体化した第1の実施形態を図1〜図4にしたがって説明する。なお、以下の説明において、「前」「後」「左」「右」は、三輪自転車を運転する運転者を基準とした「前」「後」「左」「右」として説明する。
【0017】
図1に示すように、三輪自転車11のフレーム12後部には、駆動輪としての後輪13に一体の車軸14が回転可能に支持されるとともに、この車軸14の右端部にはスプロケット15が固定されている。また、フレーム12の中央には、駆動軸16が回転可能に支持されるとともに、この駆動軸16の両端には駆動源としてのペダル17が固定されている。また、駆動軸16において、右側のペダル17より内側には駆動スプロケット18が固定されている。そして、駆動軸16の駆動スプロケット18と、車軸14のスプロケット15には、駆動チェーン19が掛け渡されるとともに、ペダル17の踏み込みにより、駆動チェーン19を介して後輪13が回転するようになっている。よって、本実施形態では、駆動スプロケット18、スプロケット15、及び駆動チェーン19により、ペダル17からの動力を後輪13に伝達する駆動機構を構成している。
【0018】
図2に示すように、フレーム12の前端には、支軸としてのピボット軸20aが上方へ突設されるとともに、このピボット軸20aは、軸受部材20bの軸方向中央に挿通されている。軸受部材20bは、ピボット軸20aを中心に左右方向へ揺動可能にフレーム12に支持されている。従動輪としての左前輪22Lは、その従動軸21Lが軸受部材20bにより回転可能に支持されることで、軸受部材20bに支持されるとともに、従動輪としての右前輪22Rは、その従動軸21Rが軸受部材20bにより回転可能に支持されることで、軸受部材20bに支持されている。軸受部材20bが、ピボット軸20aを中心として左右方向へ揺動することにより、左右両前輪22L,22Rが左右方向へ同時に揺動するようになっている。本実施形態では、ピボット軸20aと、軸受部材20bとからセンターピボット機構20が構成されている。
【0019】
図3に示すように、左右両従動軸21L,21Rそれぞれには従動スプロケット23L,23Rが各従動軸21L,21Rと一体回転可能に固定されている。ピボット軸20aの先端には、変速装置としての無段変速装置30が図示しない軸受を介してピボット軸20aに対し回動可能に支持されている。この無段変速装置30の第1の支持部材を形成する入力ディスク32と、第2の支持部材を形成する出力ディスク34との間には、変更手段及び転動体として2つのボール31が回転可能(転動可能)に支持されている。ボール31は、入力ディスク32の入力側支持面32aと、出力ディスク34の出力側支持面34aに支持されている。また、各ボール31は回転することで、入力側支持面32aの周縁に湾曲形成された第1摺接面32bと、出力側支持面34aの周縁に形成された第2摺接面34bに対し摺接可能になっている。
【0020】
各ボール31の回転軸をボール回転軸31aとして図示すると、ボール回転軸31aはボール31の回転に伴い傾きが変更されるようになっている。また、入力ディスク32には、第1の回転軸としての入力軸33が一体回転可能に連結されるとともに、出力ディスク34には、第2の回転軸としての出力軸35が一体回転可能に連結されている。また、無段変速装置30の入力軸33にはコントローラ27が接続されるとともに、このコントローラ27にはワイヤWが接続されている。無段変速装置30は、コントローラ27に対するワイヤWの抜き差しによって、ボール回転軸31aの傾きを調節可能になっている。
【0021】
図4に示すように、ワイヤWには、その操作用の操作レバー36が固定されている。そして、操作レバー36の操作により、ワイヤWがコントローラ27に対して抜き差しされると、無段変速装置30内のネジ機構が駆動されてボール31が回転する結果、ボール回転軸31aの傾きが調節されるようになっている。ボール回転軸31aの傾きが変更されると、ボール回転軸31aから、第1及び第2摺接面32b,34bの周縁への接触部に至るまでの距離である第1及び第2摺接面32b,34bの作用半径r1,r2が変更される。その結果、無段変速装置30の変速比が変更され、入力軸33の回転速度が、変速比に応じた回転速度に変更されて出力軸35に伝達されるようになっている。なお、ボール回転軸31aが傾いておらず、第1摺接面32bと第2摺接面34bの作用半径r1,r2が同じ場合は、出力軸35には、入力軸33の回転速度がそのまま伝達されるようになっている。よって、本実施形態では、コントローラ27、ワイヤW、及び操作レバー36により、無段変速装置30の変速比を調節する調節手段Rが構成されている。
【0022】
無段変速装置30における入力軸33には、入力用スプロケット37が固定されるとともに、出力軸35には出力用スプロケット38が固定されている。無段変速装置30における入力軸33の入力用スプロケット37と、右前輪22Rの従動軸21Rに固定された従動スプロケット23Rとには、出力チェーン42Rが掛け渡されている。そして、入力軸33の回転は、出力チェーン42Rを介して従動軸21Rに伝達され、右前輪22Rが回転するようになっている。また、無段変速装置30における出力軸35の出力用スプロケット38と、左前輪22Lの従動軸21Lに固定された従動スプロケット23Lとには、出力チェーン42Lが掛け渡されている。そして、出力軸35の回転は、出力チェーン42Lを介して従動軸21Lに伝達され、左前輪22Lが回転するようになっている。本実施形態では、無段変速装置30と、調節手段Rとから操舵装置が構成されている。
【0023】
次に、上記構成の三輪自転車11の動力伝達経路について説明する。上記構成の三輪自転車11において、ペダル17の踏み込みにより生じた動力が駆動スプロケット18、駆動チェーン19、及びスプロケット15を介して車軸14に伝達される。そして、三輪自転車11を前進させる場合は、ペダル17踏み込みに伴う後輪13の駆動による推力で左右従動軸21L,21Rが回転し、その結果、左右前輪22L,22Rが回転する。一方、三輪自転車11を後進させる場合は、後輪13が駆動輪として回転するとともに、左右前輪22L,22Rが引きずられるようにして回転する。
【0024】
次に、上記三輪自転車11の右進動作及び左進動作について説明する。
三輪自転車11を右進させる場合、運転者は、ペダル17を踏み込んで前進しながら、操作レバー36を右に旋回させる。すると、図4(a)に示すように、ワイヤWがコントローラ27から引き出されて無段変速装置30の変速比が変更されると、ワイヤWの移動量に応じてボール31が回転するとともにボール回転軸31aが傾き、第2摺接面34bの作用半径r2が第1摺接面32bの作用半径r1より大きくなる。すると、出力軸35の回転速度は、入力軸33の回転速度より速くなる。その結果、左前輪22Lと右前輪22Rが互いに異なる回転速度で回転し、左前輪22Lの回転速度が、右前輪22Rの回転速度より速くなる。この左右前輪22L,22Rの回転速度差により、左右前輪22L,22Rに動力差が生じて、軸受部材20bがピボット軸20aを揺動中心として揺動し、左右前輪22L,22Rが転舵して三輪自転車11は右進する。
【0025】
一方、三輪自転車11が左進させる場合は、運転者は、ペダル17を踏み込みながら、操作レバー36を左に旋回させる。すると、図4(b)に示すように、ワイヤWがコントローラ27から引き出されて無段変速装置30の変速比が変更されると、ワイヤWの移動量に応じてボール31が回転するとともにボール回転軸31aが傾き、第1摺接面32bの作用半径r1が第2摺接面34bの作用半径r2より大きくなる。すると、出力軸35の回転速度は、入力軸33の回転速度より遅くなる。その結果、左前輪22Lと右前輪22Rが互いに異なる回転速度で回転し、左前輪22Lの回転速度が、右前輪22Rの回転速度より遅くなる。この左右前輪22L,22Rの回転速度差により、左右前輪22L,22Rに動力差が生じて、軸受部材20bがピボット軸20aを揺動中心として揺動し、左右前輪22L,22Rが転舵して三輪自転車11は左進する。
【0026】
また、三輪自転車11を左進から直進に戻す場合、又は右進から直進に戻す場合、操作レバー36を左進又は右進操作の状態から元に戻す。すると、ワイヤWがコントローラ27に戻され無段変速装置30の変速比が変更され、第1摺接面32bの作用半径r1と、第2摺接面34bの作用半径r2が同じになる。すると、出力軸35の回転速度と、入力軸33の回転速度が同じになる結果、左前輪22Lと右前輪22Rが同じ回転速度で回転し、左右前輪22L,22Rの動力差が無くなり、軸受部材20bがピボット軸20aを揺動中心として揺動し、左右前輪22L,22Rが直進状態に戻り、三輪自転車11は直進する。
【0027】
上記第1の実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)操舵装置として、従動輪としての左右前輪22L,22Rに回転速度差を生じさせる無段変速装置30と、この無段変速装置30の変速比を調節可能とする調節手段Rとを設けた。そして、無段変速装置30の駆動により生じた左右前輪22L,22Rの回転速度差に基づき左右前輪22L,22Rを転舵させることができ、三輪自転車11を操舵することができる。
【0028】
(2)そして、運転者は、ペダル17を踏み込みながら三輪自転車11を運転した状態で、調節手段Rの操作レバー36を操作するだけで三輪自転車11を操舵することができる。したがって、運転者が、例えば左右前輪22L,22Rに直結されたハンドルを直接操作して三輪自転車11を操舵する場合と比べると、運転者の操舵負担を軽減することができる。その結果として、例えば、手の力が弱かったり、腕を動かせなかったりするといった上肢不自由者であっても、三輪自転車11を操舵することができる。
【0029】
(3)例えば、左右前輪22L,22Rのうち右前輪22Rを駆動輪とした場合、その右前輪22Rにペダル17からの動力が直接入力されたとき、右進の際、左前輪22Lには、右前輪22Rに入力された動力より大きな動力が無段変速装置30により付与される。一方、左進の際、左前輪22Lには、右前輪22Rに入力された動力より小さな動力が無段変速装置30により付与される。この結果、右進速度は増速されるが、左進速度は減速され、右進が左進よりも高速になってしまう。しかし、本実施形態によれば、ペダル17からの動力が入力される駆動輪を後輪13とするとともに、従動輪である左右前輪22L,22Rを転舵させて三輪自転車11を操舵するようにした。そして、無段変速装置30により左右前輪22L,22Rの間で回転速度差を変更可能にしたため、右進及び左進時の速度差が生じることを防止することができ、右進が左進より高速になることがない。
【0030】
(4)無段変速装置30は、右前輪22Rの従動軸21Rに動力連結された入力軸33を備えるとともに、左前輪22Lの従動軸21Lに動力連結された出力軸35を備え、さらに、調節手段Rによって回転することでボール回転軸31aの傾きを変更させるボール31を備える。そして、調節手段Rの操作レバー36の操作量に応じたボール31の回転に基づき、入力軸33の回転速度に対して変速された回転数が出力軸35に伝達される。このため、無段変速装置30を用いることで、調節手段Rの操作レバー36の操作量に応じた右進及び左進を実現することができる。
【0031】
(5)無段変速装置30は、入力軸33が一体化された入力ディスク32と、出力軸35が一体化された出力ディスク34と、両ディスク32,33の間に介在されたボール31とを備える。そして、ボール31を回転させ、そのボール回転軸31aの傾きを調節することで、入力ディスク32における第1摺接面32bの作用半径r1、及び出力ディスク34における第2摺接面34bの作用半径r2を変更することができる。よって、無段変速装置30を用いることで、変速比の変更を衝撃の無い、無段状態で行うことができる。さらには、変速比の値は、ボール31の回転(ボール回転軸31aの傾き)に伴う各摺接面32b,34bの作用半径r1,r2が直接反映されるため、操作レバー36の操作量を直接反映した操舵を行うことができる。
【0032】
(6)左右の従動軸21L,21Rは、フレーム12に設けられたセンターピボット機構20に支持され、このセンターピボット機構20は、フレーム12から突設されたピボット軸20aと、このピボット軸20aを揺動中心として揺動するとともに、両従動軸21L,21Rを回転可能に支持する軸受部材20bとからなる。そして、無段変速装置30により、左右前輪22L,22Rに回転速度の差が生じると、その差に基づいて軸受部材20bを揺動させ、左右前輪22L,22Rを円滑に転舵させることができる。
【0033】
(7)ペダル17からの動力は、ペダル17の駆動軸16に固定された駆動スプロケット18、駆動チェーン19、及び車軸14に固定されたスプロケット15を介して後輪13に伝達される。そして、三輪自転車11は、ペダル17の踏み込みによって発生する動力で駆動され、従動する左右前輪22L,22Rを無段変速装置30で操舵している。よって、操作レバー36の操作以外は、手による動作を必要せずに三輪自転車11を操舵することができる。
【0034】
(8)無段変速装置30の入力軸33と、右前輪22Rの従動軸21Rとは、各スプロケット23R,37及び出力チェーン42Rにより動力伝達可能に連結され、出力軸35と左前輪22Lの従動軸21Lとは、各スプロケット23L,38及び出力チェーン42Lにより動力伝達可能に連結されている。このため、入力軸33と右前輪22R、及び出力軸35と左前輪22Lを、前後進方向への回転を伝達可能に容易に連結することができる。
【0035】
(第2の実施形態)
次に、本発明の操舵装置を、車両としての三輪自転車51の操舵装置に具体化した第2の実施形態を図5〜図6にしたがって説明する。なお、以下の説明において、「前」「後」「左」「右」は、三輪自転車を運転する運転者を基準とした「前」「後」「左」「右」として説明する。また、第1の実施形態の操舵装置と同一構成について同一符号を付すなどし、その重複する説明を省略又は簡略する。
【0036】
図5に示すように、フレーム12の前部からは一対のサイドフレーム12a,12bが延設されるとともに、両サイドフレーム12a,12bの間からはセンターフレーム12cが延設されている。各サイドフレーム12a,12bの先端には各センターピボット機構52L,52Rを介して一対の従動軸53L,53Rが支持されるとともに、両従動軸53L,53Rは、第1の実施形態と同様に、ピボット軸52aと、軸受部材52bとからなるセンターピボット機構52L,52Rを回動中心として一軸状態で回動可能になっている。
【0037】
図6に示すように、左側の従動軸53Lには、従動輪としての左前輪54Lが一体に固定されるとともに、右側の従動軸53Rには、従動輪としての右前輪54Rが一体に固定されている。また、左右両従動軸53L,53Rそれぞれには従動スプロケット55L,55Rが各従動軸53L,53Rと一体回転可能に固定されている。
【0038】
センターフレーム12cの前端上には、第1の実施形態と同様に無段変速装置30が支持されている。入力軸33の入力用スプロケット37と、従動軸53Rの従動スプロケット55Rには出力チェーン56Rが掛け渡されるとともに、出力軸35の出力用スプロケット38と、従動軸53Lの従動スプロケット55Lには出力チェーン56Lが掛け渡されている。
【0039】
さて、第2の実施形態において、三輪自転車11を左進させる場合、運転者は、ペダル17を踏み込みながら、操作レバー36を左に旋回させる。すると、図6に示すように、無段変速装置30により、右前輪54Rの回転速度が左前輪54Lの回転速度より速くなるように左右前輪54L,54Rに回転速度差が生じ、左右前輪54L,54Rが各センターピボット機構52L,52Rを介して回動し、左右前輪54L,54Rが転舵して三輪自転車11は左進する。なお、図示しないが、三輪自転車11を右進させる場合には、操作レバー36を右に旋回させると、無段変速装置30により、左前輪54Lの回転速度が右前輪54Rの回転速度より速くなるように左右前輪54L,54Rに回転速度差が生じ、左右前輪54L,54Rが転舵して三輪自転車11は右進する。
【0040】
したがって、上記第2の実施形態によれば、第1の実施形態の(1)〜(5)、(7)〜(8)と同様の効果に加え、以下のような効果を得ることができる。
(9)左右前輪54L,54Rそれぞれをセンターピボット機構52L,52Rを介して回動可能に支持した。このため、左右前輪54L,54Rは、独立して転舵されるため、より円滑な操舵を可能にすることができる。
【0041】
(第3の実施形態)
次に、本発明の操舵装置を、車両としての三輪自転車61の操舵装置に具体化した第3の実施形態を図7にしたがって説明する。なお、以下の説明において、「前」「後」「左」「右」は、三輪自転車を運転する運転者を基準とした「前」「後」「左」「右」として説明する。また、第1の実施形態の操舵装置と同一構成について同一符号を付すなどし、その重複する説明を省略又は簡略する。
【0042】
図7に示すように、三輪自転車61において、従動輪としての左前輪63Lは、その従動軸64Lを介して無段変速装置30の出力軸35に一体回転可能に固定されるとともに、従動輪としての右前輪63Rは、その従動軸64Rを介して無段変速装置30の入力軸33に一体回転可能に固定されている。無段変速装置30のケーシングには、軸受部材62bを介してピボット軸62aの下部が回動可能に支持されるとともに、このピボット軸62aの上端はフレーム12の前端に固定されている。そして、ピボット軸62aと、軸受部材62bとからセンターピボット機構62が構成されるとともに、無段変速装置30は、軸受部材62b及びピボット軸62aを介してフレーム12に支持されている。また、無段変速装置30は、ピボット軸62aを揺動中心として左右方向へ揺動可能に支持されている。
【0043】
したがって、上記第3の実施形態によれば、第1の実施形態の(1)〜(5)、(7)〜(8)と同様の効果に加え、以下のような効果を得ることができる。
(10)無段変速装置30をセンターピボット機構62を介して揺動可能にフレーム12に支持した。このため、無段変速装置30によって左右前輪63L,63Rに回転速度差が生じたとき、その回転速度差に応じて無段変速装置30そのものが左右に揺動するため、無段変速装置30に一体化された左右前輪63L,63Rを円滑に転舵させることができる。
【0044】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・ 第2の実施形態において、出力チェーン56L,56Rに張力を付与するテンショナをフレーム12に設けてもよい。
【0045】
・ 第1及び第2の実施形態において、入力軸33と従動軸21R,53R、及び出力軸35と従動軸21L,53Lは、チェーンの代わりにベルトを用いて動力伝達可能に連結されていてもよい。
【0046】
・ 各実施形態では、ペダル17の踏み込みにより生じる動力によって三輪自転車11,51,61を駆動させたが、電動モータや内燃機関等の外部駆動源からの動力により三輪自転車11,51,61を駆動させてもよい。
【0047】
・ 各実施形態では、変速装置として無段変速装置30に具体化したが、左前輪22L,54L,63Lと右前輪22R,54R,63Rの2つの車輪に回転速度差を付与することができるのであれば、変速装置としてはその他の形式の変速装置に代えてもよい。
【0048】
・ 各実施形態では、無段変速装置30によって左右前輪22L,22R,54L,54R,63L,63Rに回転速度差を生じさせて操舵可能にしたが、無段変速装置30によって回転速度差を生じさせる一対の車輪を一対の後輪としてもよい。この場合、駆動輪となる前輪は一対であってもよいし、1つであってもよい。
【0049】
・ 各実施形態では、無段変速装置30に2つのボール31を設けたタイプとしたが、ボール31の数は任意に変更してもよい。また、変更手段としては、ボール31の代わりに、ディスクを用いてもよい。
【0050】
・ 各実施形態では、操舵装置を三輪自転車11,51,61に適用したが、四輪自転車、四輪自動車、左右二輪の原動機に適用してもよい。
・ 各実施形態では、操作レバー36の操作によりワイヤW及びコントローラ27を操作して無段変速装置30の変速比を調節可能にしたが、調節手段は変更してもよい。例えば、三輪自転車11の運転者の腰の角度に連動して無段変速装置30の変速比を調節可能にしたり、ペダル17の左右の踏み込み量に連動して無段変速装置30の変速比を調節可能にしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
r1,r2…作用半径、R…調節手段、W…調節手段を構成するワイヤ、11,51,61…車両としての三輪自転車、13…駆動輪としての後輪、14…車軸、15…駆動機構を構成するスプロケット、16…駆動軸、17…駆動源としてのペダル、18…駆動機構を構成する駆動スプロケット、19…駆動機構を構成する駆動チェーン、20a,52a,62a…支軸としてのピボット軸、20b,52b,62b…軸受部材、21L,21R,53L,53R,64L,64R…従動軸、22L,54L,63L…従動輪としての左前輪、22R,54R,63R…従動輪としての右前輪、27…調節手段としてのコントローラ、30…変速装置としての無段変速装置、31…変更手段及び転動体としてのボール、31a…回転軸としてのボール回転軸、32…第1の支持部材としての入力ディスク、32b…第1摺接面、33…第1の回転軸としての入力軸、34…第2の支持部材としての出力ディスク、34b…第2摺接面、35…第2の回転軸としての出力軸、36…調節手段としての操作レバー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源からの動力により駆動される駆動輪を有するとともに、左右方向へ揺動可能に支持された一対の従動輪を有する車両の操舵装置であって、
前記一対の従動輪に回転速度差を生じさせる変速装置と、
前記変速装置の変速比を調節する調節手段と、
を備えることを特徴とする車両の操舵装置。
【請求項2】
前記変速装置は、前記従動輪それぞれに動力伝達可能に連結される第1の回転軸と第2の回転軸を有するとともに、前記第1の回転軸の回転速度を、前記調節手段により決定された変速比に応じた回転速度に変更する変更手段を有し、前記変速装置は、前記変更手段により変更された回転速度で前記第2の回転軸を回転させることを特徴とする請求項1に記載の車両の操舵装置。
【請求項3】
前記一対の従動輪の従動軸又は前記変速装置は、軸受部材を介して前記車両に設けられた支軸により左右方向へ揺動可能に支持されている請求項1又は請求項2に記載の車両の操舵装置。
【請求項4】
前記駆動源と前記駆動輪とを動力伝達可能に連結する駆動機構を備え、前記駆動源はペダルであり、前記駆動機構は前記ペダルの駆動軸及び駆動輪の車軸それぞれに設けられたスプロケットと、それらスプロケットに掛け渡されたチェーンである請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の車両の操舵装置。
【請求項5】
前記変速装置は、前記変更手段としての少なくとも1つの転動体と、
前記転動体が回転しつつ摺接する第1摺接面を有するとともに、前記第1の回転軸と一体回転する第1の支持部材と、
前記転動体が回転しつつ摺接する第2摺接面を有するとともに、前記第2の回転軸と一体回転する第2の支持部材と、を有し、
前記転動体を駆動させ、該転動体の回転軸を中心とした第1及び第2摺接面の作用半径を調節することで、前記第1の回転軸と第2の回転軸に回転速度差を生じさせるとともに、前記転動体が前記調節手段により駆動される請求項2〜請求項4のうちいずれか一項に記載の車両の操舵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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