説明

車両の衝撃吸収構造

【課題】 オフセット衝突において、反衝突側での衝撃エネルギーの吸収を好適に行うことができる車両の衝撃吸収構造を提供する。
【解決手段】 クラッシュボックス17は、車両の上下方向に開口する中空構造を有し、車両の前後方向一側端にバンパリインホースが取着されるとともに、車両の前後方向他側端にサイドメンバ取付フランジ17aを一体的に備えたクラッシュボックス本体21と、クラッシュボックス本体21に固着され、クラッシュボックス本体21の上方の開口端を閉塞するとともに、クラッシュボックス本体21の開口端に連続する両側面を挟む第1荷重調整プレート22と、クラッシュボックス本体21に固着され、クラッシュボックス本体21の下方の開口端を閉塞するとともに、クラッシュボックス本体21の開口端に連続する両側面を挟む第2荷重調整プレート23とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の衝撃吸収構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の衝撃吸収構造としては、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。以下、特許文献1から引用する部材の符号を括弧内の符号で表して、この車両の衝撃吸収構造について説明する。この衝撃吸収構造では、アルミニウム中空押出材からなるバンパリインホース(16)と車両の前後方向に伸びる一対のサイドメンバ(13)との間に、それぞれクラッシュボックス(17)が介在されている。このクラッシュボックス(17)は、車両の前後方向を押出方向とするアルミニウム押出材からなっている。
【0003】
このような衝撃吸収構造において、例えば他車両などとの衝突によりバンパリインホース(16)を介してクラッシュボックス(17)に車両前方からの荷重(軸圧縮荷重)が加わると、クラッシュボックスは塑性変形することでこれを吸収し、当該衝突における衝撃エネルギーを吸収する。
【特許文献1】特開2002−155980号公報(第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のクラッシュボックス(17)は、車両の前後方向を押出方向とするアルミニウム押出材からなるため、各開口端はバンパリインホース(16)側及びサイドメンバ(13)側に対向している。従って、図6に示されるように、クラッシュボックス(17)には、そのバンパリインホース(16)側の開口端を閉塞するブラケット91が溶接にて固着されている。このブラケット91は、クラッシュボックス(17)をバンパリインホース(16)に締結するためのものである。また、クラッシュボックス(17)には、そのサイドメンバ(13)側の開口端から外側に張り出すフランジ(18)が溶接にて固着されている。このフランジ(18)は、クラッシュボックス(17)をサイドメンバ(13)のブラケット(19)に締結するためのものである。
【0005】
このような衝撃吸収構造において、図7に示されるように、例えば対向する他車両Sとのオフセット衝突により一側のクラッシュボックス(17)にのみ車両前方からの荷重(軸圧縮荷重)が加わって著しい塑性変形が生じたとする。このとき、衝突側ではない他側(以下、「反衝突側」という)のクラッシュボックス(17)は、バンパリインホース(16)を介して引っ張られることで倒れてしまい、これに伴いフランジ(18)との溶接部W90に割れが発生することがある。従って、オフセット衝突において、反衝突側での衝撃エネルギーの吸収が十分にできなくなってしまう。
【0006】
本発明の目的は、オフセット衝突において、反衝突側での衝撃エネルギーの吸収を好適に行うことができる車両の衝撃吸収構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両の幅方向に伸びるバンパリインホースの両端部において、該バンパリインホースと車両の前後方向に伸びる一対のサイドメンバとの間にそれぞれ介在される一対のクラッシュボックスを備えた車両の衝撃吸収構造において、前記クラッシュボックスは、車両の上下方向に開口する中空構造を有し、車両の前後方向一側端に前記バンパリインホースが取着されるとともに、該車両の前後方向他側端に前記サイドメンバの取り付け用のフランジを一体的に備えたクラッシュボックス本体と、前記クラッシュボックス本体に固着され、該クラッシュボックス本体の上方及び/又は下方の開口端を閉塞するとともに、該クラッシュボックス本体の該開口端に連続する両側面を挟む荷重調整プレートとを備えたことを要旨とする。
【0008】
請求項2に記載の発明では、前記クラッシュボックス本体は、車両の上下方向を押出方向とするアルミニウム押出材からなることを要旨とする。また、請求項3に記載の発明では、前記荷重調整プレートは、車両の前後方向を押出方向とするアルミニウム押出材からなることを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
以上詳述したように、請求項1に記載の発明では、例えば他車両などとのオフセット衝突によりバンパリインホースの一側端部に取着された一側のクラッシュボックス(クラッシュボックス本体)にのみ車両の前後方向の荷重(軸圧縮荷重)が加わって著しい塑性変形が生じたとする。このとき、バンパリインホースの他側端部に取着された他側(反衝突側)のクラッシュボックス(クラッシュボックス本体)は、バンパリインホースを介して引っ張られることで倒れる。しかしながら、前記サイドメンバの取り付け用のフランジは前記クラッシュボックス本体に一体的に設けられて十分な剛性を有しているため、該クラッシュボックス本体はこの倒れによって断面変形(塑性変形)するものの、これに伴うフランジの破断は抑制される。従って、このオフセット衝突により反衝突側のクラッシュボックスがサイドメンバから外れたりすることは抑制される。
【0010】
また、前記クラッシュボックス本体は、前記荷重調整プレートによりその上方及び/又は下方の開口端が閉塞されるとともに各対応する開口端に連続する両側面が挟まれることで、反衝突側のクラッシュボックス本体の上記断面変形は抑制される。このため、オフセット衝突において、反衝突側のクラッシュボックスは、フランジを介して取り付けられたサイドメンバを車両の前後方向に引っ張ってこれを塑性変形させることにより、当該衝突における衝撃エネルギーは好適に吸収される。
【0011】
請求項2、3に記載の発明では、クラッシュボックス本体や荷重調整プレートをアルミニウム合金材の押出成形による極めて簡易な方法で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図3は、本発明が適用される自動車などの車両のフロント部分を概略的に示す斜視図である。同図に示されるように、このフロント部分には、バンパの骨格をなすバンパフレーム11と、車両の前後方向に伸びてボディの一部を構成する一対のサイドメンバ12とが配設されている。
【0013】
上記バンパフレーム11は、車両の幅方向に伸びるバンパリインホース16と、一対のクラッシュボックス17とを備えている。上記バンパリインホース16は、車両の幅方向を押出方向とするアルミニウム中空押出材からなっている。そして、上記一対のクラッシュボックス17は、バンパリインホース16の幅方向両端部において、同バンパリインホース16と前記一対のサイドメンバ12との間にそれぞれ介在されている。後述するように、各クラッシュボックス17は、その前端に前記バンパリインホース16が締結にて取着され、車両後方に伸びている。そして、各クラッシュボックス17の後端には、幅方向両側に突出するボルト締結用のフランジとしてのサイドメンバ取付フランジ17aが設けられている。
【0014】
前記サイドメンバ12は、車両の前後方向に相当する上記クラッシュボックス17の延出方向に略一致して軸線が伸びる四角筒状に形成されている。そして、このサイドメンバ12の前端には、上記クラッシュボックス17のサイドメンバ取付フランジ17aに対応してこれに対向するボルト締結用のブラケット18が設けられている。従って、バンパフレーム11は、クラッシュボックス17のサイドメンバ取付フランジ17aとサイドメンバ12のブラケット18とが締結されることで、ボディに固定されている。
【0015】
次に、上記クラッシュボックス17の構造について、図1及び図2に基づき更に詳述する。なお、本実施形態では、一対のクラッシュボックス17は、車両の幅方向において互いに対称(左右対称)であり、ここでは車両の右側に配置されるクラッシュボックス17を代表して図示している。同図において、図1(a)は、このクラッシュボックス17の平面図であり、図1(b)は、同正面図であり、図1(c)は、同側面図である。また、図2は、クラッシュボックス17の分解斜視図である。同図に示されるように、このクラッシュボックス17は、クラッシュボックス本体21と、第1荷重調整プレート22及び第2荷重調整プレート23とを備えている。なお、第1荷重調整プレート22及び第2荷重調整プレート23のいずれか一方のみが備えられていてもよい。
【0016】
図1(a)及び図2に示されるように、前記クラッシュボックス本体21は車両の上下方向に開口する略四角筒状に形成されており、その内部には延出方向を2分する隔壁部21aが設けられている。つまり、上記クラッシュボックス本体21は、基本的には上記隔壁部21aによって内部の隔成された日の字状の一定断面を有する中空構造を有している。また、上記クラッシュボックス本体21には、後端の壁部に連続して幅方向一側及び他側(図1(a)の右側及び左側)にそれぞれ突出する板状のフランジ21b,21cが一体形成されている。図1(b)に示されるように、上記フランジ21bは、先端側の尖った三角形状をなしており、その中央部には長孔状のボルト挿通孔21dが形成されている。また、フランジ21cは、角部の面取りされた長方形状をなしており、このフランジ21cには上下に並んだボルト挿通孔21e,21fが形成されている。これらフランジ21b,21cは、前記サイドメンバ取付フランジ17aを形成するものである。つまり、上記クラッシュボックス本体21は、前記サイドメンバ取付フランジ17a(フランジ21b,21c)を一体的に備えている。
【0017】
さらに、上記クラッシュボックス本体21の前端の壁部には、内壁面側から凹設された一対の溝部21g,21hが形成されている。各溝部21g,21hは、車両の上下方向に連通する一定断面を有しており、これら溝部21g,21hは、幅方向に並設されている。そして、溝部21gの対向する内壁面間の長さと溝部21hの対向する内壁面間の長さとは、互いに同等に設定されている。
【0018】
上記溝部21g,21hには、前記バンパリインホース16との組付用の複数(溝部21gに1個、溝部21hに2個の合計3個)のボルト24が挿通されている。詳述すると、図1(a)(b)に示されるように、上記ボルト24は、溝部21g,21hの対向する内壁面間の長さと同等の1辺の長さを有する正方形状の抜け止め部24aと、同抜け止め部24aに突設されたねじ部24bとが一体形成されている。そして、ボルト24は、クラッシュボックス本体21の内側からねじ部24bを対応する溝部21g,21hに貫通させ、抜け止め部24aを溝部21g,21hに嵌合させることにより、回転不能に係止された状態でクラッシュボックス本体21に挿通されている。また、溝部21g,21hを貫通したねじ部24bは、その周縁部においてクラッシュボックス本体21の前端面に凹設された複数(4つ)のカシメ部21iにより同クラッシュボックス本体21に保持されている。つまり、ボルト24は、抜け止め部24a及びカシメ部21iの協働によりクラッシュボックス本体21に対する軸方向及び周方向の移動が規制されている。
【0019】
なお、クラッシュボックス本体21(クラッシュボックス17)は、溝部21g,21hを貫通したねじ部24bが前記バンパリインホース16に挿通され、その内部においてナット25が締め付けられることで同バンパリインホース16に締結されている(図1(c)参照)。
【0020】
前記第1荷重調整プレート22は、例えばアルミニウム合金材を押出成形することで基本的にコの字状の一定断面を有するように成形されている。この第1荷重調整プレート22の成形時の押出方向は、クラッシュボックス17(バンパフレーム11)としてサイドメンバ12のブラケット18に締結された状態において車両の前後方向に一致している。そして、この第1荷重調整プレート22は、水平方向に広がる天板部22aと、同天板部22aの幅方向両端部から下方に突出する一対の第1突壁部22bとを有している。上記第1荷重調整プレート22は、車両の前後方向において前記クラッシュボックス本体21の延出方向の長さよりも若干、短い長さを有している。そして、上記一対の第1突壁部22bの対向面間の長さは、クラッシュボックス本体21の幅方向の長さと同等に設定されている。この第1荷重調整プレート22は、天板部22aによりクラッシュボックス本体21の上方の開口端を閉塞し、その第1突壁部22bにより同クラッシュボックス本体21の当該開口端に連続する両側面を挟み込む態様で組み付けられている。そして、上記第1荷重調整プレート22は、天板部22aの前端部の溶接部W1(図1(c)参照)、両第1突壁部22bの先端部の溶接部W2(図1(b)参照)により上記クラッシュボックス本体21に溶接されてこれに固着されている。
【0021】
前記第2荷重調整プレート23も、例えばアルミニウム合金材を押出成形することで基本的にコの字状の一定断面を有するように成形されている。この第2荷重調整プレート23の成形時の押出方向は、クラッシュボックス17(バンパフレーム11)としてサイドメンバ12のブラケット18に締結された状態において車両の前後方向に一致している。そして、この第2荷重調整プレート23は、水平方向に広がる底板部23aと、同底板部23aの幅方向両端部から上方に突出する一対の第2突壁部23bとを有している。上記第2荷重調整プレート23は、車両の前後方向において前記クラッシュボックス本体21の延出方向の長さよりも若干、短い長さを有している。そして、上記一対の第2突壁部23bの対向面間の長さは、クラッシュボックス本体21の幅方向の長さと同等に設定されている。この第2荷重調整プレート23は、底板部23aによりクラッシュボックス本体21の下方の開口端を閉塞し、その第2突壁部23bにより同クラッシュボックス本体21の当該開口端に連続する両側面を挟み込む態様で組み付けられている。そして、上記第2荷重調整プレート23は、底板部23aの前端部の溶接部W3(図1(c)参照)、両第2突壁部23bの先端部の溶接部W4(図1(b)参照)により上記クラッシュボックス本体21に溶接されてこれに固着されている。
【0022】
なお、本実施形態では、同一のクラッシュボックス本体21に固着される第1及び第2荷重調整プレート22,23は同一形状をなしている。そして、これら第1及び第2荷重調整プレート22,23は、実質的に同一部品として管理されている。
【0023】
ここで、上記クラッシュボックス本体21等の製造方法について概略的に説明する。この製造においては、例えばアルミニウム合金材を押出成形することで、一定断面を有する中空体を上記クラッシュボックス本体21の素材として製造する。このとき、前記隔壁部21a及び溝部21g,21hも併せて形成される。ただし、この素材の段階では、前記フランジ21b,21cへと加工される突出部P(図2参照)も長方形状に形成されて一定断面を有している。次に、この長方形状の突出部Pの角部に対し所要の面取りを行うとともにボルト挿通孔21d〜21f等を形成することでクラッシュボックス本体21の製造が完了する。つまり、クラッシュボックス本体21は、押出成形によりフランジ21b,21c等も含めてその全体が一体化されている。このクラッシュボックス本体21の成形時の押出方向は、クラッシュボックス17(バンパフレーム11)としてサイドメンバ12のブラケット18に締結された状態において車両の上下方向に一致していることはいうまでもない。
【0024】
なお、前記クラッシュボックス17は、このように製造されたクラッシュボックス本体21の溝部21g,21hに前記ボルト24が挿通等された状態で前記第1及び第2荷重調整プレート22,23が溶着されることで完成する。そして、前記バンパフレーム11は、前記ボルト24及びナット25により前記バンパリインホース16と各クラッシュボックス17とが締結されることで完成する。このバンパフレーム11は、前記クラッシュボックス17のサイドメンバ取付フランジ17a(フランジ21b,21c)と前記サイドメンバ12のブラケット18とが締結されることでボディに固定されることは既述のとおりである。
【0025】
このような構成を有する車両において、例えば他車両などとの衝突によりバンパリインホース16を介してクラッシュボックス17に車両前方からの荷重(軸圧縮荷重)が加わると、クラッシュボックス17はその延出方向に塑性変形することでこれを吸収し、当該衝突における衝撃エネルギーが吸収される。そして、ボディ(サイドメンバ12)を介して乗員へと伝達される衝撃が緩和される。
【0026】
また、この車両において、例えば他車両などとのオフセット衝突によりバンパリインホース16の一側端部に取着された一側のクラッシュボックス17(クラッシュボックス本体21)にのみ車両の前後方向の荷重(軸圧縮荷重)が加わって著しい塑性変形が生じたとする。このとき、図4に示されるように、バンパリインホース16の他側端部に取着された他側(反衝突側であってここでは車両の左側)のクラッシュボックス17(クラッシュボックス本体21)は、バンパリインホース16を介して引っ張られることで倒れる。しかしながら、前記サイドメンバ取付フランジ17a(フランジ21b,21c)は前記クラッシュボックス本体21に一体的に設けられて十分な剛性を有しているため、同クラッシュボックス本体21はこの倒れによって断面変形(塑性変形)するものの、これに伴うサイドメンバ取付フランジ17aの破断は抑制される。つまり、従来例(特許文献1)のように、バンパリインホースとクラッシュボックスとの間、クラッシュボックスとサイドメンバのブラケットとの間に溶接による接合部(溶接部W90等)がなくなることで溶接割れは生じ得ない。従って、このオフセット衝突により反衝突側のクラッシュボックス17がサイドメンバ12から外れたりすることは抑制される。
【0027】
また、図5に示されるように、前記クラッシュボックス本体21は、前記第1及び第2荷重調整プレート22,23によりそれぞれその上方及び下方の開口端が閉塞されるとともに各対応する開口端に連続する両側面が挟まれることで、反衝突側のクラッシュボックス本体21の上記断面変形は抑制される。このため、オフセット衝突において、反衝突側のクラッシュボックス17は、サイドメンバ取付フランジ17a(及びブラケット18)を介して取り付けられたサイドメンバ12を車両の前方に引っ張ってこれを塑性変形させることにより、当該衝突における衝撃エネルギーが好適に吸収される。そして、ボディ(サイドメンバ12)を介して乗員へと伝達される衝撃が緩和される。
【0028】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、オフセット衝突において、反衝突側での衝撃エネルギーの吸収を好適に行うことができる。
【0029】
(2)本実施形態では、一対のクラッシュボックス17は車両の幅方向において互いに対称であることで、基本的にこれらの製造工程を共通化することができ、当該工程を簡易化することができる。
【0030】
(3)本実施形態では、同一のクラッシュボックス17に設けられる、互いに同一構造を有する第1及び第2荷重調整プレート22,23を同一部品として管理することで、部品点数を低減することができる。
【0031】
(4)本実施形態では、前記クラッシュボックス本体21を、アルミニウム合金材の押出成形による極めて簡易な方法で製造することができる。
(5)本実施形態では、前記第1及び第2荷重調整プレート22,23を、アルミニウム合金材の押出成形による極めて簡易な方法で製造することができる。
【0032】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記実施形態において、前記バンパリインホース16に取着される一対のクラッシュボックス17は、互いに同一構造であってもよい。この場合、一対のクラッシュボックス17を単独の部品として管理することで、部品点数を削減することができる。また、これら一対のクラッシュボックス17をバンパリインホース16に取着する際に左右で識別する必要がなくなるため、製造工程を簡易化することができる。
【0033】
・前記実施形態において、同一のクラッシュボックス本体21に設けられる第1及び第2荷重調整プレート22,23は、互いに異なる構造であってもよい。この場合、設計の自由度を向上することができる。
【0034】
・前記実施形態において、クラッシュボックス本体21を田の字の一定断面を有する形状、四角形の一定断面を有する形状や目の字の一定断面を有する形状としてよい。要は、車両の上下方向に開口する中空構造を有していればよい。
【0035】
・前記実施形態においては、アルミニウム合金材の押出成形によりクラッシュボックス本体21を製造したが、例えば切削等のその他の製法により製造してもよい。
・前記実施形態においては、アルミニウム合金材の押出成形により第1及び第2荷重調整プレート22,23を製造したが、例えば板金の曲げ加工等のその他の製法により製造してもよい。
【0036】
・前記実施形態においては、アルミニウム合金材にてクラッシュボックス17(クラッシュボックス本体21、第1及び第2荷重調整プレート22,23)を製造したが、その他の材料を採用してもよい。
【0037】
・前記実施形態においては、自動車のフロント部分のバンパ(バンパフレーム11)に本発明を適用したが、リヤ部分のバンパに本発明を適用してもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
【0038】
(イ)車両の幅方向に伸びるバンパリインホースの両端部において、該バンパリインホースと車両の前後方向に伸びる一対のサイドメンバとの間にそれぞれ介在される一対のクラッシュボックスを備えた車両の衝撃吸収構造において、
前記クラッシュボックスは、
車両の上下方向に開口する中空構造を有し、車両の前後方向一側端に前記バンパリインホースが取着されるとともに、該車両の前後方向他側端に前記サイドメンバの取り付け用のフランジを一体的に備えたクラッシュボックス本体と、
前記クラッシュボックス本体の上方の開口端を閉塞する天板部と、該クラッシュボックス本体の該開口端に連続する両側面を挟む一対の第1突壁部とを有して該クラッシュボックス本体に固着された第1荷重調整プレートと、
前記クラッシュボックス本体の下方の開口端を閉塞する底板部と、該クラッシュボックス本体の該開口端に連続する両側面を挟む一対の第2突壁部とを有して該クラッシュボックス本体に固着された第2荷重調整プレートとを備えたことを特徴とする車両の衝撃吸収構造。
【0039】
(ロ)請求項1〜3、上記(イ)のいずれか1項に記載の車両の衝撃吸収構造において、
前記一対のクラッシュボックスは、車両の幅方向において互いに対称であることを特徴とする車両の衝撃吸収構造。この技術的思想によれば、前記一対のクラッシュボックスは車両の幅方向において互いに対称であることで、基本的にこれらの製造工程を共通化することができ、当該工程を簡易化することができる。
【0040】
(ハ)上記(イ)に記載の車両の衝撃吸収構造において、
前記一対のクラッシュボックスの少なくともに一方に設けられる前記第1及び第2荷重調整プレートは、互いに同一構造を有していることを特徴とする車両の衝撃吸収構造。この技術的思想によれば、前記一対のクラッシュボックスの少なくともに一方に設けられる、互いに同一構造を有する前記第1及び第2荷重調整プレートを同一部品として管理することで、部品点数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】(a)(b)(c)は、本発明の一実施形態を示す平面図、正面図及び側面図。
【図2】同実施形態の斜視図。
【図3】自動車のフロント部分を示す斜視図。
【図4】同実施形態の動作を示す模式図。
【図5】同実施形態の動作を示す模式図。
【図6】従来形態を示す分解斜視図。
【図7】従来形態の動作を示す模式図。
【符号の説明】
【0042】
11…バンパフレーム、12…サイドメンバ、16…バンパリインホース、17…クラッシュボックス、17a…フランジとしてのサイドメンバ取付フランジ、21…クラッシュボックス本体、21b,21c…フランジ、22,23…荷重調整プレート(22…第1荷重調整プレート、23…第2荷重調整プレート)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の幅方向に伸びるバンパリインホースの両端部において、該バンパリインホースと車両の前後方向に伸びる一対のサイドメンバとの間にそれぞれ介在される一対のクラッシュボックスを備えた車両の衝撃吸収構造において、
前記クラッシュボックスは、
車両の上下方向に開口する中空構造を有し、車両の前後方向一側端に前記バンパリインホースが取着されるとともに、該車両の前後方向他側端に前記サイドメンバの取り付け用のフランジを一体的に備えたクラッシュボックス本体と、
前記クラッシュボックス本体に固着され、該クラッシュボックス本体の上方及び/又は下方の開口端を閉塞するとともに、該クラッシュボックス本体の該開口端に連続する両側面を挟む荷重調整プレートとを備えたことを特徴とする車両の衝撃吸収構造。
【請求項2】
前記クラッシュボックス本体は、車両の上下方向を押出方向とするアルミニウム押出材からなる請求項1記載の車両の衝撃吸収構造。
【請求項3】
前記荷重調整プレートは、車両の前後方向を押出方向とするアルミニウム押出材からなる請求項1又は2記載の車両の衝撃吸収構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−62561(P2006−62561A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−248660(P2004−248660)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000100791)アイシン軽金属株式会社 (137)
【Fターム(参考)】