説明

車両アクセサリ用多連スイッチ

【課題】多連スイッチの意匠性を向上させるとともに操作性の低下を抑制する。
【解決手段】共通の基板12と、共通のプッシュノブ16と、基板12とプッシュノブ16との間に設けられ、プッシュノブ16の押込み動作によってオンオフするプッシュスイッチ21と、プッシュノブ16と基板12との間に設けられる複数のタッチ電極15a〜15cと、各タッチ電極15a〜15cと人体との間の各静電容量の変化によって各タッチ電極15a〜15cに対応する各電気回路をオンオフする制御部とを含む多連タッチスイッチ10を備える車両アクセサリ用多連スイッチで制御部は、プッシュスイッチ21がオンの場合にのみ各電気回路のオンオフ動作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるアクセサリ用の多連スイッチの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、ヒータコントロールユニット、オーディオ装置、照明装置などのアクセサリ機器が搭載されており、これらの各アクセサリ機器の操作パネルには各アクセサリ機器の操作を行うためのスイッチが配置されている。例えば、ヒータコントロールユニットの操作パネルには空気の吹き出し位置を選択するスイッチや、換気口の開閉を選択するスイッチなどが配置されている(例えば、特許文献1参照)。また、オーディオ機器の操作パネルにはラジオの選局スイッチや音楽ソースの選択スイッチなどが配置されている。そして、これらの各スイッチは操作パネルに複数のプッシュボタンを並べて配置した多連スイッチが多く用いられている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
多連スイッチでは各プッシュボタンの間に隙間が設けられるが、この間は意匠デザインの上で形状を仕切る見切り線を形成する。したがって、プッシュボタンを使用した操作パネルをデザインする際には、必要となる操作スイッチの周囲に必ず見切り線があるデザインとすることが必要であった。
【0004】
これに対して、操作面が平面的なデザインが求められるようになってくると、操作パネルには特許文献1または特許文献2に記載されたような従来技術のプッシュボタンに代わって、人間がパネルの表面をタッチするだけでスイッチ回路のオンオフ動作の可能なタッチスイッチが用いられるようになってきている。このタッチスイッチは、操作パネルの表面或いは裏面に電極を取り付け、その電極と人間の指との間の静電容量の変化を検出してスイッチ回路のオンオフを行うものである(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】実開平3−33706号公報
【特許文献2】特開2002−150872号公報
【特許文献3】特開2008−143198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このタッチスイッチを用いて操作パネルを構成した場合、プッシュボタンが無いため、操作パネルの表面に見切り線ができることが無く、操作パネルのデザインを意匠性の高いデザイン、或いは、自由度の高いデザインとすることができる。
【0007】
ところが、特許文献3に記載された従来技術によるタッチスイッチは、電極の周囲の空気の温度、湿度などの状態が変化した場合にも電極の浮遊静電容量が変化してしまう場合があり、スイッチが誤動作する場合があるという問題があった。また、他の電子機器から発生する電磁波によって電極にノイズ電圧が誘起され、測定される静電容量の検出に誤差が生じ、この誤差によって誤動作が発生する場合があるという問題があった。
【0008】
また、タッチスイッチは、タッチした時点でスイッチのオンオフ動作が行われてしまうことから、人間がスイッチの位置を探している間に違うスイッチに触れてしまい誤操作となることがあった。また、タッチスイッチは、スイッチのオンオフの際にストロークが無いので、従来のプッシュスイッチのように押した感じ、或いはクリック感がなく、操作フィーリングに欠けるという問題があった。
【0009】
本発明は、多連スイッチの意匠性を向上させるとともに操作性の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の車両アクセサリ用多連スイッチは、共通の基板と、共通のプッシュノブと、基板とプッシュノブとの間に設けられ、プッシュノブの押込み動作によってオンオフする第1のスイッチと、プッシュノブと基板との間に設けられる複数のタッチ電極と、各タッチ電極と人体との間の各静電容量の変化によって各タッチ電極に対応する各電気回路をオンオフする制御部とを含む多連タッチスイッチと、を備える車両アクセサリ用多連スイッチであって、制御部は、第1のスイッチがオンの場合にのみ各電気回路のオンオフ動作を行うこと、を特徴とする。
【0011】
本発明の車両アクセサリ用多連スイッチにおいて、複数のタッチ電極は、プッシュノブのプッシュ面と反対側の面に配列され、人体のプッシュ面に接しながらの配列方向に沿った移動方向を検出し、制御部は、検出した移動方向に基づいて各タッチ電極に対応する各電気回路以外の他の電気回路を動作させること、としても好適であるし、第1のスイッチは、プッシュスイッチであること、としても好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、多連スイッチの意匠性を向上させるとともに操作性の低下を抑制することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1に示すように、本実施形態の多連スイッチ10は、開放箱型のケーシング11と、基板12と、ガイド13と、電極基板14と、タッチ電極15a,15b,15cと、プッシュノブ16と、カバー17と、を備えている。
【0014】
ケーシング11の底部の内面には基板12が固定されている。ガイド13は樹脂製で、開放箱型のベース部13bに四角形状のガイド板13aが一体形成されており、ガイド13のベース部13bの外面はケーシング11のスカート部11aの内面に嵌まり込むよう構成されている。また、基板12の外形寸法は、ガイド13のベース部13bの内面寸法よりも小さいため、ガイド13のベース部13bをケーシング11に嵌め込んだ際に、基板12はガイド13のベース部13bの内面に入り込む。基板12の表面には電気回路が構成されており、プッシュスイッチ21とプッシュノブ16のインジケータ照明用のLED23a,23b,23cが取り付けられている。
【0015】
電極基板14は透光性樹脂等の誘電体の薄板を階段状に成形或いは折り曲げ加工したもので、図1(a)に示すように、一方の面にタッチ電極15a,15b,15cが形成されている。タッチ電極15a〜15cは、透光性の電極で酸化インジュウム(ITO)或いはポリエチレンジオキシチオフェン等の導電性高分子を、印刷、塗装などによって電極基板14の表面に形成したものである。電極基板14のタッチ電極15a〜15cの形成されている面の大きさは、ガイド13のガイド板13aによって囲まれる四角の大きさよりも少しだけ大きくなっており、電極基板14はガイド板13aの端面に支持される。また電極基板14のガイド13側には取り付け用のアーム19が延びており、アームはガイド13のベース部13bに設けられた孔13cを通って基板12に達している。各タッチ電極15a〜15cに接続された配線18はアーム19の表面に沿ってアーム19の延びる方向に伸びて基板12に電気的に接続される。
【0016】
プッシュノブ16はそのスカート部16a内面の寸法がガイド13のガイド板13aによって構成される四角の外形よりも若干大きくなっており、ガイド13のガイド板13aの外面に嵌まり込んでガイド板13aに沿ってスライドすることができるよう構成されている。また、プッシュノブ16の四隅にはガイド13の孔13cに差し込まれてその位置を規定する取り付け脚16cが設けられている。また、プッシュノブ16にはガイド13のベース部13bに設けられた孔13cを貫通して延びて基板12に取り付けられたプッシュスイッチ21を押し付ける押し棒16bが設けられている。プッシュノブ16の表面16eにはスイッチの種類を示すインジケータが設けられている。本実施形態では、このインジケータは電極基板14、タッチ電極15a〜15cと共に透明な材料で形成されており、多連スイッチ10がオンになった際にLED23a,23b,23cによって照明されるよう構成されている。
【0017】
カバー17は、その内径がケーシング11のスカート部11aの外形寸法よりも少し大きく、ケーシング11の外側から多連スイッチ10全体をカバーするものである。カバー17にはプッシュノブ16の外形寸法よりも少し小さいサイズの窓17aが形成されている。ケーシング11と、基板12と、ガイド13と、電極基板14と、プッシュノブ16と、カバー17とは、一体に組みたてられ、多連スイッチ10を構成する。
【0018】
図2に示すように、多連スイッチ10の各タッチ電極15a〜15cとプッシュスイッチ21は基板12の上に構成された制御部30に接続されている。制御部30は内部にCPUとメモリとを備えるコンピュータまたは制御回路が組み込まれたICである。車室内を照明するための照明装置のバルブ22a,22b,22cをオンオフ駆動するための各トランジスタ31a,31b,31cの各ベースは制御部30に接続され、各トランジスタ31a,31b,31cのコレクタ側には各バルブ22a,22b,22cの一端が接続されている。また、各バルブ22a,22b,22cの他端は電源32に接続されている。また、各バルブ22a,22b,22cにはそれぞれ並列にLED23a,23b,23cが接続されている。各トランジスタ31a,31b,31cはそれぞれ各タッチ電極15a,15b,15cに対応する電気回路を形成しており、タッチ電極15aによって検出された静電容量の変化によってトランジスタ31aが動作し、タッチ電極15bによって検出された静電容量の変化によってトランジスタ31bが動作し、タッチ電極15cによって検出された静電容量の変化によってトランジスタ31cが動作する。各タッチ電極15a〜15cと制御部30とは多連タッチスイッチを構成する。また、プッシュスイッチ21は第1のスイッチを構成する。
【0019】
以上のように構成された多連スイッチ10の動作について図3から図4を参照しながら説明する。なお、図3、図4は動作を説明するために必要ない部材については記載を省略してある。図3に示すように、多連スイッチ10が押込まれていない状態では、プッシュノブ16はプッシュスイッチ21の中に取り付けられているスプリングによって押し棒16bと共に上に押し上げられ、電極基板14とプッシュノブ16の内面16fとの間には隙間ができている。この状態では、人間がプッシュノブ16の表面16eにタッチしたのみでは、電極基板14の表面に形成されたタッチ電極15a〜15cと人間の指先60との距離が大きく、タッチ電極15a〜15cと指先60との間の静電容量の変化は少なく、図2に示した制御部30はいずれのトランジスタ31a,31b,31cも動作させない。したがって、いずれのバルブ22a,22b,22cもLED23a,23b,23cも点灯しない。
【0020】
次に人間が指先60でブッシュノブ16の表面16eのインジケータBの部分を押し下げ始めると、次第に指先60とタッチ電極15bとの距離が短くなり、それにつれてタッチ電極15bの静電容量の変化信号が制御部30に入力され始める。しかし、押し下げ動作の途中では、プッシュスイッチ21が十分に押し下げられず、オフの状態を保っていることから、制御部30はトランジスタ31bを動作させない。
【0021】
図4に示すように、更に人間が指先60でプッシュノブ16の表面16eのインジケータBの部分を押し下げると、プッシュノブ16の押し棒16bがプッシュスイッチ21を更に押し下げ、プッシュスイッチ21がオンの状態となり、プッシュスイッチ21のオンの信号は制御部30に入力される。また、プッシュノブ16の内面16fは電極基板14の上に形成されているタッチ電極15a〜15cの表面に接触する。この状態になると、タッチ電極15bと人間の指先60との距離が近くなるので、タッチ電極15bの検出する静電容量は大きく変化する。そして、この静電容量の変化は制御部30に入力される。制御部30はプッシュスイッチ21からのオンの信号と、タッチ電極15bの静電容量の変化の信号の双方の信号が入力されるので、タッチ電極15bに対応するトランジスタ31bのベースに電流を送り、トランジスタ31bをオンの状態とする。トランジスタ31bがオンとなると、電源32からの電気がバルブ22bとLED23bとに流れ、車室内照明のバルブ22bが点灯すると共に、LED23bによりプッシュノブ16のインジケータが点灯する。
【0022】
以上述べたように、本実施形態では、制御部30は人間がプッシュノブ16を押込んで、プッシュスイッチ21がオンとなった場合にのみ各トランジスタ31a〜31cを動作させるので、多連スイッチ10の誤動作を防止することができるという効果を奏する。また、プッシュスイッチ21によってプッシュノブ16を押込む動作とスイッチングの際のクリック感を出すことができることから、多連スイッチ10の操作性を向上させることができる。更に、プッシュノブ16を多連タッチスイッチに対して共通とすることができるので、プッシュノブ16の表面16eに見切り線が無くなり、意匠デザインを向上させることができるという効果を奏する。
【0023】
次に図5、図6を参照しながら他の実施形態について説明する。先に説明した実施形態と同様の部分には同様の符号を付して説明は省略する。図5に示すように、本実施形態の多連スイッチ10は、電極基板14がなく、タッチ電極15a〜15cはプッシュノブ16の内面16fに形成されている。この実施形態も先に説明した実施形態と同様、人間の指先60がプッシュノブ16の表面16eに接触しても、プッシュノブ16を押し下げてプッシュスイッチ21がオンとならないと各トランジスタ31a〜31cが動作しないので、先に説明した実施形態と同様の効果を奏する。
【0024】
本実施形態では、タッチ電極15a〜15cがプッシュノブ16の内面16fに形成されているので、プッシュスイッチ21のオンオフにかかわり無く各タッチ電極15a〜15cの静電容量の変化検出することができる。本実施形態では、各タッチ電極15a〜15cを並べて配列し、人間の指先60がタッチ電極15a〜15cの配列のどちらの方向に向いて移動したかを検出することができるよう構成されている。
【0025】
図6に示すように、本実施形態の多連スイッチ10は、先の実施形態にて説明した各トランジスタ31a〜31c以外の別の電気回路である電源32からの電流の大きさを増減するコントローラ35を備えている。このコントローラ35はプッシュスイッチ21のオンオフ動作とは関係なく制御部30の指令によって駆動することができる様に構成されている。
【0026】
以下、本実施形態の多連スイッチ10の動作について説明する。人間の指先60がプッシュノブ16の表面16eに触れると、制御部30にはタッチ電極15a〜15cの静電容量の変化が入力される。そして、人間が指先60を図5に示すようにインジケータAからCに向かって移動させると、制御部30にはタッチ電極15a、15b,15cの順に静電容量の増加信号が入力される。すると、制御部30は指先がタッチ電極15aから15cの方向、すなわちインジケータAからCの方向に移動していると判断する。そして、制御部30は、例えば、指先60がインジケータのAからCに向かって移動した際には、バルブ22a〜22cに流れる電流の大きさを大きくし、逆にインジケータのCからAの方向に移動していると判断した場合には、バルブ22a〜22cに流れる電流の大きさを小さくする動作を行うことかできる。
【0027】
以上述べたように、本実施形態の多連スイッチ10は、先に説明した実施形態と同様の効果を奏すると共に、1つの多連スイッチ10を多機能スイッチとすることかでき、スペースの節約と操作性の向上を図ることが出来るという効果を奏する

【0028】
以上、本発明の実施形態は、本発明を車室内の照明の点灯スイッチに適用した場合について説明したが、ヒートコントロールユニットのスイッチやオーディオ装置のスイッチについて適用してもよい。また、本実施形態では、第1のスイッチとしてプッシュスイッチ21を用いることとして説明したが、図3に示した実施形態でタッチ電極15a〜15cの静電容量が閾値を越えることを判断して第1のスイッチとしてもよい。また、プッシュスイッチ21を第1のスイッチとして適用する場合には、プッシュスイッチ21はプッシュされた状態をそのまま保つものであってもよいし、人間が指先60を離したら元の位置まで戻ってくるタイプを用いてもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態における多連スイッチの構造を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態における多連スイッチの電気系統を示す回路図である。
【図3】本発明の実施形態における多連スイッチの動作を説明する断面図である。
【図4】本発明の実施形態における多連スイッチの動作を説明する断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態における多連スイッチの動作を説明する断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態における多連スイッチの電気系統を示す回路図である。
【符号の説明】
【0030】
10 多連スイッチ、11 ケーシング、11a スカート部、12 基板、13 ガイド、13a ガイド板、13b ベース部、13c 孔、14 電極基板、15a,15b,15c タッチ電極、16 ブッシュノブ、16a スカート部、16b 押し棒、16c 脚、16f 内面、16e 表面、17 カバー、17a 窓、18 配線、19 アーム、21 プッシュスイッチ、22a,22b,22c バルブ、23a,23b,23c LED、30 制御部、31a,31b,31c トランジスタ、32 電源、35 コントローラ、60 指先。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通の基板と、
共通のプッシュノブと、
基板とプッシュノブとの間に設けられ、プッシュノブの押込み動作によってオンオフする第1のスイッチと、
プッシュノブと基板との間に設けられる複数のタッチ電極と、各タッチ電極と人体との間の各静電容量の変化によって各タッチ電極に対応する各電気回路をオンオフする制御部とを含む多連タッチスイッチと、を備える車両アクセサリ用多連スイッチであって、
制御部は、第1のスイッチがオンの場合にのみ各電気回路のオンオフ動作を行うこと、
を特徴とする車両アクセサリ用多連スイッチ。
【請求項2】
請求項1に記載の車両アクセサリ用多連スイッチであって、
複数のタッチ電極は、プッシュノブのプッシュ面と反対側の面に配列され、人体のプッシュ面に接しながらの配列方向に沿った移動方向を検出し、
制御部は、検出した移動方向に基づいて各タッチ電極に対応する各電気回路以外の他の電気回路を動作させること、
を特徴とする車両アクセサリ用多連スイッチ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両アクセサリ用多連スイッチであって、
第1のスイッチは、プッシュスイッチであること、
を特徴とする車両アクセサリ用多連スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−123470(P2010−123470A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297590(P2008−297590)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【Fターム(参考)】