説明

車両位置決め装置

【課題】車両に対して部品の着脱を行う際に、より迅速に作業を行うことを可能としかつエネルギの消費をより少なくすることを可能とする構造を得る。
【解決手段】車輪支持部9としての前後ローラ9A,9Bによって車幅方向に移動可能に支持されながら転動する車輪4を、ガイド部10としての縦ローラ10A〜10Cに当接させて、当該車輪4を目標位置TPに向かわせるように構成した。さらに、少なくともガイド部10としての縦ローラ10A〜10Cの車幅方向の位置を変化させる車幅方向位置可変機構12,13を設けることで、トレッドの異なる車両に対応できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両位置決め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車のバッテリを交換するに際し、電気自動車のバッテリ収納部の位置を検出し、その検出結果に基づいてバッテリを着脱する装置を移動させるようにした構造が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3530870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、バッテリを着脱する装置を車両の停車位置に合わせて移動させるため、その停車位置によってはバッテリを着脱する装置の移動距離が大きくなって、作業に時間がかかるとともに、装置を移動させる際のエネルギの消費が大きくなってしまうという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、車両に対して部品の着脱を行う際に、より迅速に作業を行うことを可能としかつエネルギの消費をより少なくすることを可能とする構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる車両位置決め装置にあっては、車輪支持部によって車幅方向に移動可能に支持されながら転動する車輪を、ガイド部に当接させて、当該車輪を目標位置に向かわせるように構成するとともに、少なくともガイド部の車幅方向の位置を変化させる車幅方向位置可変機構を設けたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、転動する車輪を目標位置に向けて移動案内することができるため、上記従来技術に比べて、部品の着脱作業をより迅速化することができる上、エネルギの消費をより少なくすることができる。また、車輪を目標位置に向けて案内するガイド部の位置を車幅方向に移動可能に構成したため、トレッドの異なる車両にも対応できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の実施形態にかかる車両位置決め装置の一部の斜視図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態にかかる車両位置決め装置の側面図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態にかかる車両位置決め装置の平面図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態にかかる車両位置決め装置の位置決め区間と位置決めされた車両とを示す側面図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態にかかる車両位置決め装置の位置決め区間を示す平面図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態にかかる車両位置決め装置に含まれる車輪位置決め機構に車輪が当接した初期の状態の一例を示す正面図(一部断面図)である。
【図7】図7は、本発明の実施形態にかかる車両位置決め装置に含まれる車輪位置決め機構に車輪が当接した初期の状態の一例を示す斜視図(一部断面図)である。
【図8】図8は、本発明の実施形態にかかる車両位置決め装置に含まれる車輪位置決め機構によって車輪が車幅方向に位置決めされた状態を示す正面図である。
【図9】図9は、本発明の実施形態にかかる車両位置決め装置に含まれる車輪位置決め機構によって車輪が車幅方向に位置決めされた状態を示す斜視図である。
【図10】図10は、本発明の実施形態にかかる車両位置決め装置に含まれる車輪位置決め機構によってガイドされる車輪の移動の一例を示す側面図である。
【図11】図11は、本発明の実施形態にかかる車両位置決め装置に含まれる車輪位置決め機構によってガイドされる車輪の移動の一例を示す平面図である。
【図12】図12は、本発明の実施形態にかかる車両位置決め装置に含まれる車幅方向位置可変機構の動作を示す斜視図である。
【図13】図13は、本発明の実施形態にかかる車両位置決め装置に含まれる車幅方向位置可変機構の制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図中、車両上方をUP、車両前方をFR、車幅方向をWDと記す。
【0010】
車両1は、車輪駆動用の電動モータ(図示せず)と、当該電動モータに電力を供給するバッテリを複数一体に含むバッテリアセンブリ(図示せず)と、が搭載された電気自動車(燃料電池自動車、ハイブリッド自動車等も含む)であり、車両位置決め装置2は、この車両1の例えば床下等に搭載されるバッテリアセンブリ(図示せず)の着脱作業を、例えば下方から行う際に用いられる。すなわち、車両位置決め装置2を用いて車両1を目標位置(図1,図4等に示す車両1の位置)に配置することで、車両1(車体)に対するバッテリアセンブリの取り外しや取り付けの作業を、より円滑にかつより確実に行うことができるようになる。なお、本発明は、バッテリアセンブリの着脱用途に限定されるものではなく、バッテリアセンブリ以外の車両用部品の着脱に利用するものとして構成してもよい。
【0011】
本実施形態にかかる車両位置決め装置2は、比較的低速で走行する車両1を、主として車幅方向にガイドして目標位置に到達させるものであり、位置決めの目的としては、目標位置に向けて車両1を能動的に移動させる駆動機構を備えていない。よって、本実施形態にかかる車両位置決め装置2は、比較的小型、軽量で、かつエネルギ消費の比較的少ない装置として構成することができる。
【0012】
車両位置決め装置2は、後輪用の車輪位置決め機構3R(3)と、前輪用の車輪位置決め機構3F(3)とを備えている。この車両位置決め装置2では、ドライバが車輪4を所定の軌道P上に乗せつつ車両1を比較的低速で前進または後退(本実施形態では前進)させることにより、転動する後輪4R(4)が後輪用の車輪位置決め機構3Rで車幅方向に位置決めされ、かつ転動する前輪4F(4)が前輪用の車輪位置決め機構3Fで車幅方向に位置決めされる。また、この車両位置決め装置2には、車輪4(本実施形態では後輪4R)を陥入させる車輪陥入部5が設けられており、ドライバが車両1を前進させて車輪4を車輪陥入部5に陥入させ、その位置で車両1を停止させることによって、車両1が前後方向に位置決めされるようになっている。すなわち、本実施形態では、車輪陥入部5が車両の前後方向位置決め部に相当する。
【0013】
軌道Pは、本実施形態では、少なくとも車輪4(タイヤ)よりも広い幅の上面6aを有して相互に平行に直線状に延伸する一対の軌道部材6,6によって構成されている。一対の軌道部材6,6およびガイドレール7の間隔は、車両1のトレッドに応じて可変設定できるようになっている。そして、一対の軌道部材6,6間のスペースSpから、バッテリアセンブリの取り外しや取り付けの作業が行われる。
【0014】
また、図2に示すように、軌道Pは、少なくとも車両1の位置決めが行われる位置決め区間S2では、平坦に形成するのが好ましい。本実施形態では、軌道Pは、位置決め区間S2の手前側の導入区間S1では上り坂となり、位置決め区間S2の先方側の導出区間S3では下り坂となっているが、これら導入区間S1および導出区間S3ともに平坦に形成してもよい。なお、導入区間S1を上り坂とすれば、車両1を減速させやすいという利点がある。また、図1にも示すように、軌道Pの車幅方向外側の縁には、車両1の進行方向に沿ってガイドレール7が延設され、車輪4が軌道Pから離脱するのが抑制されている。
【0015】
車輪陥入部5は、図1,図4,図5等に示すように、例えば、軌道Pの上面6a上に、軌道Pの延伸方向(車両前後方向)と直交する方向(車幅方向)に沿う一対の平行なビーム8,8を設けることによって構成することができ、車輪4が陥入位置から前方および後方へ移動するのを抑制する所謂輪止めとして機能するものである。もちろん、所定の作業が終了した際には、ドライバが車両1を前進または後退させる操作を行うことで、車輪4が車輪陥入部5から前方または後方に脱出できるようになっている。ビーム8は、具体的には、断面L字状のアングル材を、その角部8aが上方となる姿勢で軌道Pの上面6a上に配置したものとして構成することができる。なお、ビーム8は、本実施形態では、二つの軌道部材6,6間で架設されているが、架設することは必須ではなく、少なくとも車輪4に対応する部分(本実施形態の場合は軌道部材6上)に形成されていればよい。また、車輪陥入部5は、軌道Pの上面6aを凹設した凹部として形成することもできる。
【0016】
上記構成の車両位置決め装置2において、車両1が導入区間S1を通過して位置決め区間S2に進入すると、まずは前輪4Fが後輪用の車輪位置決め機構3Rを通過する。このとき、前輪4Fは後輪用の車輪位置決め機構3Rによって車幅方向にある程度位置決めされる。
【0017】
そして、本実施形態では、前後二つの車輪位置決め機構3F,3Rの配置を適宜に設定することで、後輪用の車輪位置決め機構3Rによる後輪4Rの位置決めが完了した後、前輪用の車輪位置決め機構3Fによる前輪4Fの位置決めが完了し、後輪4Rが車輪陥入部5に陥入して車両1が停止することによって車両1が前後方向にも位置決めされる。その結果、車両1が車幅方向ならびに前後方向ともに位置決めされるようになっている。具体的には、後輪4Rが後輪用の車輪位置決め機構3Rから前方に抜け出して車輪陥入部5の手前側のビーム8に乗り上げている状態で、まだ前輪用の車輪位置決め機構3Fによる前輪4Fの位置決めが完了していない状態があり、前輪4Fの位置決めが完了した後あるいは完了するのとほぼ同時に、後輪4Rが車輪陥入部5に陥入して、車両1が停止するようになっている。
【0018】
車両1では、一般的に、二輪操舵の場合には、前輪4Fが操舵輪となって後輪4Rが非操舵輪となり、また、四輪操舵の場合には、後輪4Rの転舵角度範囲より前輪4Fの転舵角度範囲が大きく設定される。よって、後輪4Rに比べて前輪4Fはより大きく切れた状態(直進姿勢からより大きく転舵した状態)となる確率が高く、前輪4Fを基準として位置決めを行うと位置決め精度が低下してしまうおそれがある。そこで、本実施形態では、まずは後輪4R(非操舵輪、あるいは転舵角の小さい車輪)を位置決めし、それ以降(同時または後に)前輪4F(操舵輪、あるいは転舵角の大きい車輪)を位置決めすることで、車両1の車幅方向の位置決め精度の低下を抑制している。
【0019】
また、車両1の位置決めが完了した後は、全ての車輪4が車幅方向の位置決め機構3の少なくとも車輪支持部9から離間し、車輪4と軌道Pの上面6aとのフリクションによって、車幅方向に位置決めされた状態を維持するようにしている。
【0020】
図4〜図11に示すように、車輪位置決め機構3は、転動する車輪4を車幅方向に移動可能に支持する車輪支持部9と、当該車輪支持部9に支持されつつ転動する車輪4の側面等に当接して当該車輪4を目標位置TP(図10,図11参照)に向かわせるガイド部10と、を有している。すなわち、車輪支持部9によって車輪4を軌道Pの上面6aから浮かせて車幅方向に移動可能に支持することで当該車輪4ひいては車両1(少なくとも車両1の前部または後部)を車幅方向に動かしやすい状態とし、車輪4の側面等をガイド部10に当接させて車輪4をガイド部10に沿わせながら目標位置TPへ向けて転動させるようにしている。本実施形態では、図11に示すように、車輪4の車幅方向の目標位置TPは、ガイド部10としてのローラ10A,10Bの車幅方向最内側の側面に車輪4の外側面が接触した状態における車輪4の位置として規定される。
【0021】
なお、車輪位置決め機構3は、本実施形態では、四つの車輪4の全てに対応して設けられているが、前輪4Fおよび後輪4Rのうちいずれか一方のみについて設けてもよい。ただし、その場合は非操舵輪または操舵角の小さい車輪に対応して設けるのが好ましい。また、左右の車輪4のうちいずれか一方について設けてもよい。また、本実施形態では、ガイド部10をいずれも対応する車輪4の車幅方向外側に設けているが、車輪4の車幅方向内側に設けてもよい。
【0022】
車輪支持部9は、本実施形態では、車両1の進行方向(車両前後方向)に沿う回動軸回りに回動する円柱状の横たわった前後ローラ9A,9Bとして設けられている。図6,図8等に示すように、前後ローラ9A,9Bの上部は、軌道Pの上面6aより上方に突出しており、車輪4が前後ローラ9A,9Bに乗り上げると、車輪4が軌道Pの上面6aから離間するようになっている。また、前後ローラ9A,9Bは、スラストベアリングを設けるなどして、回動軸方向(前後方向、特に進行方向の逆方向)には移動しないように構成されている。すなわち、前後ローラ9A,9Bが車輪4の転動反力を受けるため、車輪4は前後ローラ9A,9Bに乗り上げた状態で進行方向(前方または後方)に転動することができる。なお、前後ローラ9A,9Bは前後に複数並べて設けてもよい。
【0023】
ガイド部10は、本実施形態では、軌道Pの上面6aより上方に突出し、上下方向に略沿う回動軸回りに回動する起立した縦ローラ10A〜10Cとして設けられている。図6〜図11等に示すように、縦ローラ10A〜10Cには、それぞれ、下側の円柱部分10aと、当該円柱部分10aの上側で上方に向かうにつれて細くなるテーパ部分10bと、が形成されている。本実施形態では、ガイド部10は、各車輪4の車幅方向外側に設けられており、車両1が目標位置TPに対して車幅方向の一方側にずれていた場合には、当該一方側のガイド部10の縦ローラ10A〜10Cに対しては車輪4が当接し、他方側のガイド部10の縦ローラ10A〜10Cには車輪4は当接しないことになる。
【0024】
前輪4Fおよび後輪4Rともに、車幅方向の位置決めは同様に行われる。ここで、車幅方向一方側(本実施形態では左舷側)にずれた車両1における後輪4Rの車幅方向の位置決めについて、図6〜図11を参照しながら例示する。
【0025】
まず、後輪4Rは、ガイド部10に当接する前に、車輪支持部9の前後ローラ9B上に乗り上げる。これにより、後輪4Rは前後ローラ9Bに支持されて車幅方向に比較的容易に移動可能な状態となる。
【0026】
その状態で、後輪4Rは前方へ転動し、ガイド部10に当接する車幅方向一方側(すなわち車幅方向にずれている側、左舷側)の後輪4Rは、図6,図7に示すように、まず車幅方向一方側の縦ローラ10Cのテーパ部分10bの、回動軸より進行方向手前側(すなわち前進の場合は後側)の部分に当接し、当該テーパ部分10bの傾斜した側面に沿って落下しながらあるいはほぼ水平に車幅方向他方側に向けて移動する。後輪4Rは、ずれ量が大きい場合はテーパ部分10bに乗り上げるが、ずれ量がそれほど大きく無い場合はテーパ部分10bに乗り上げることなくほぼ水平な状態のまま斜め前方に移動することになる。
【0027】
このとき、本実施形態では、車幅方向他方側の後輪4R、および縦ローラ10Cに当接する車幅方向一方側の後輪4Rともに、対応する前後ローラ9A,9B上に乗っていて、前後ローラ9A,9Bの回動とともに車両1が車幅方向に比較的容易に移動しやすい状態となっている。さらに、本実施形態では、ガイド部10が縦ローラ10Cとして構成されているため、車幅方向一方側の後輪4Rは縦ローラ10Cの回動とともに斜め前方(本実施形態では車幅方向内側かつ前方)に比較的容易に移動しやすい状態となっている。すなわち、かかる構成により、車幅方向一方側の後輪4Rが当接する縦ローラ10Cのテーパ部分10bに沿って転動しながら車幅方向他方側(車幅方向内側)に向けて比較的円滑に移動し、車幅方向他方側の後輪4Rも前後ローラ9B上に乗って車幅方向他方側(車幅方向外側)に向けて比較的円滑に移動する。
【0028】
そして、車幅方向一方側の後輪4Rが目標位置TPに向けて車幅方向に移動すると、当該車幅方向一方側の後輪4Rの最下部の側面が円柱部分10aに当接する状態になるとともに、車幅方向他方側の後輪4Rの最下部の側面も対応する縦ローラ10Cの円柱部分10aに当接する状態となる。かくして、図8,図9に示すように、後輪4Rが車幅方向に位置決めされた状態が得られる。
【0029】
前輪4Fについても、後輪4Rとほぼ同様の位置決めが行われるが、本実施形態では、前輪4F用の車輪位置決め機構3Fは、ガイド部10として、前後に並ぶ複数(本実施形態では二つ)の縦ローラ10A,10Bを備えている。このように、縦ローラローラ10A,10Bを前後に複数並べることで、より大きな車輪4のずれを修正しやすくなるとともに、ガイド部10によって車輪4をガイドする区間の長さをより長くすることができるようになる。ガイド区間を前後に長くするのは、他の車輪4(本実施形態では後輪4R)を位置決めするタイミングを調整しやすくなる点や、ホイルベースの異なる車両に対応しやすくなる点等で有利である。また、本実施形態では、前輪4Fおよび後輪4Rのうち、操舵輪あるいは操舵角の大きい車輪4としての前輪4Fに対応する車輪位置決め機構3Fの縦ローラ10A,10Bの数を、非操舵輪あるいは操舵角の小さい車輪4としての後輪4Rに対応する車輪位置決め機構3Rの縦ローラ10Cの数より多くして前後に沿って並べている。操舵輪および操舵角の大きい車輪4は、非操舵輪および操舵角の小さい車輪4に比べて、車輪4が切れやすく(直進状態から回動しやすく)、ずれが大きくなりやすいため、かかる構成が有利である。
【0030】
また、本実施形態では、前輪4Fに対応する縦ローラ10A,10Bのうち、前側の縦ローラ10Aの前側に隣接して、前後方向に伸びるガイドバー11が設けられている。このガイドバー11の車幅方向内側の端部(母線)の位置は、縦ローラ10Aの円柱部分10aの車幅方向内側の端部(母線)の位置と、車幅方向に揃えられている。すなわち、縦ローラ10Aによって位置決めされた前輪4Fは、縦ローラ10Aから離れた後、ガイドバー11に沿って前方に転動することにより、車幅方向に位置決めされた状態が維持されるようになっている。また、このガイドバー11によって、操舵輪あるいは操舵角の大きい車輪4としての前輪4Fの姿勢を真っ直ぐに規制する効果を得ることができる。
【0031】
なお、本実施形態では、車輪位置決め機構3F,3Rや、ガイドレール7、ガイドバー11等の各部品はいずれも軌道部材6に取り付けられているが、かかる構成には限定されない。
【0032】
そして、本実施形態では、ガイド部10の車幅方向の位置を変化させる車幅方向位置可変機構12,13を設け、これにより、車両位置決め装置2をトレッドの違う車両1について共用できるようにしてある。
【0033】
第一の車幅方向位置可変機構12は、図4,図5,図12等に示すように、縦ローラ10A,10Bおよびガイドバー11を支持する可動ベース12aと、可動ベース12aを車幅方向に移動可能に支持するレール12bと、可動ベース12aをレール12bに沿って動かすエアシリンダ等のアクチュエータ12cと、を備えている。アクチュエータ12cによって、可動ベース12aの位置をレール12bに沿って車幅方向に動かして、縦ローラ10A,10Bおよびガイドバー11を、車両1のトレッドに対応する適切な位置に移動させるようになっている。
【0034】
また、第二の車幅方向位置可変機構13は、図3,図12等に示すように、少なくとも一方の軌道部材6を車幅方向に移動可能に支持するレール13aと、軌道部材6をレール13aに沿って動かすエアシリンダ等のアクチュエータ13bと、を備えている。アクチュエータ13bによって、軌道部材6の位置をレール13aに沿って車幅方向に動かすことで、軌道部材6並びに当該軌道部材6に設けられた構造(車輪位置決め機構3F,3R、ガイドレール7等)を、車両1のトレッドに対応する車幅方向の適切な位置に移動させるようになっている。
【0035】
アクチュエータ12c,13bの動作は、図13に示すような制御装置14によって制御される。制御装置14は、データを入力する入力部14a(例えば、キーボードや、タッチパネル、操作ボタン、ダイヤル、マイク等)と、入力部14aで入力されたデータに基づいてアクチュエータ12c,13bの動作量を演算してアクチュエータ12c,13bを制御する制御部14bと、を備えている。制御部14bは、演算部や、演算制御部、メモリ(ROM,RAM等)等を有するコンピュータとして構成されており、所定のプログラムにしたがって諸機能を実現するように動作する。また、制御装置14は、入力部14aでの入力を促す出力や入力されたデータ等の出力を行う出力部14c(例えば、ディスプレイや、ランプ、LED、スピーカ、ブザー等)と、各種データを記憶する記憶部14d(例えば、ハードディスク等)と、を備えている。
【0036】
入力部14aや出力部14c等を含む制御装置14の一部は、図3に示すように、位置決め区間S2の手前(例えば導入区間S1やその手前)で車両1の乗員が操作して車種あるいはトレッドの数値等を入力する操作盤15として構成することができる。この操作盤15は、オペレータがいる場合には、オペレータが操作してもよい。車種を示すデータが入力された場合には、制御部14bは車種に対応するデータを例えば記憶部14dから取得して、対象となる車両1のトレッドに対応するよう、アクチュエータ12c,13bの動作を制御することができる。
【0037】
また、図13に示すように、左右の車輪の間隔を計測するセンサ14e(例えば赤外線、レーザ光等を用いた非接触式の距離センサ等)を設け、制御部14bがセンサ14eによる計測結果に基づいて、対象となる車両1のトレッドに対応するよう、アクチュエータ12c,13bの動作を制御するようにしてもよい。
【0038】
また、図13に示すように、車両1の画像(例えば正面、背面、あるいは下方等からの画像)をカメラ14fで取得して、制御部14bがカメラ14fで取得された画像データに基づいて左右の車輪4の間隔(例えば車幅方向外側の側面間の距離)を判別し、その判別結果に基づいて、対象となる車両1のトレッドに対応するよう、アクチュエータ12c,13bの動作を制御することができる。また、上述した複数の手段を組み合わせることで、アクチュエータ12c,13bの動作を制御するようにしてもよい。
【0039】
そして、上述したような制御装置14等を用いた車幅方向位置可変機構12,13によるガイド部10の車幅方向の位置の可変設定は、車輪4が車輪位置決め機構3に到達する前に行われる。これをより確実に行うため、軌道Pの上面6aから突出するなどして車輪4あるいは車両1の進行(前進または後退)を妨げる可動ストッパ18を設け(図13参照)、車幅方向位置可変機構12,13によるガイド部10の車幅方向の位置の可変設定が完了した後に可動ストッパ18を退入させて、車両1の導入区間S1あるいは位置決め区間S2への進入を許可するようにしてもよい。この可動ストッパ18の動作は、図13に示すように、制御部14bによって制御することができる。
【0040】
以上、説明したように、本実施形態では、車輪支持部9によって車幅方向に移動可能に支持されながら転動する車輪4をガイド部10に当接させて、当該車輪4を目標位置TPに向かわせるように構成するとともに、少なくともガイド部10の車幅方向の位置を変化させる車幅方向位置可変機構12,13を設けた。
【0041】
すなわち、転動する車輪4を目標位置TPに向けて移動案内することで、従来のように停車した車両の位置に合わせて部品を着脱する装置を移動させる場合に比べて当該部品を着脱する装置の移動距離をより小さくして、部品の着脱作業をより迅速化することができる上、エネルギの消費をより少なくことができる。また、車幅方向位置可変機構12,13を設けて、車輪4を目標位置TPに向けて案内するガイド部10の位置を車幅方向に移動可能に構成したため、トレッドの異なる車両1にも対応できるようになり、車両位置決め装置2をトレッド毎に設けた場合に比べて、設置スペースを狭くすることができるとともに、設置の手間ならびに設置費用を減らすことができる。
【0042】
また、本実施形態では、車幅方向位置可変機構12,13は、車輪4がガイド部10に当接する前に、当該ガイド部10の車幅方向の位置を変化させるようにした。よって、車輪位置決め機構3による車輪4の車幅方向の位置決め、ひいては車両1の車幅方向の位置決めを、より確実にかつより円滑に行うことができる。
【0043】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。車輪支持部は、車輪を支持して車幅方向に移動可能とするものであればよく、例えば車幅方向に移動可能なベルトコンベアとするなど、ローラとして構成することは必須ではない。また、ガイド部は、車輪に当接して当該車輪を目標位置に向けて移動案内するものであればよく、例えば側壁面を有する固定部材とするなど、ローラとして構成することは必須ではない。また、ガイド部をローラとして構成する場合、当該ローラを全体的に円柱状としたり、曲面状に傾斜する側面を有する回転体状としたり、回転軸を傾斜させたりするなど、形状を適宜に変更してもよい。また、アクチュエータとして、例えばモータとギヤとの組み合わせや、油圧シリンダなど、エアシリンダ以外の機構を採用することが可能である。また、可動ストッパは、シャッタ、ドア等、種々の形態で具現化することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 車両
2 車両位置決め装置
3,3F,3R 車輪位置決め機構
4 車輪
4F 前輪
4R 後輪
9 車輪支持部
10 ガイド部
12,13 車幅方向位置可変機構
TP 目標位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を車幅方向に移動可能に支持する車輪支持部と、当該車輪支持部に支持されつつ転動する前記車輪に当接して当該車輪を目標位置に向かわせるガイド部と、を有する車輪位置決め機構と、
少なくとも前記ガイド部の車幅方向の位置を変化させる車幅方向位置可変機構と、
を備えることを特徴とする車両位置決め装置。
【請求項2】
前記車幅方向位置可変機構は、車輪が前記ガイド部に当接する前に、当該ガイド部の車幅方向の位置を変化させることを特徴とする請求項1に記載の車両位置決め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−31814(P2011−31814A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181736(P2009−181736)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】