説明

車両制御システム

【課題】車両と携帯機との間で無線通信を行うことのできない状況におけるユーザの操作性を確保しつつも、利便性を向上させることのできる車両制御システムを提供する。
【解決手段】この車両制御システムでは、車載装置10と携帯機20,30との間で無線通信を行うことにより携帯機20,30の電子的な認証を行うとともに、この電子的な認証に基づいて車両ドアのアンロックを行う。ここでは、各携帯機20,30にキーコードの異なるメカニカルキー26,36を付属させる。また、車載装置10には、解錠コードを変更することが可能な錠装置40を設ける。そして、携帯機30から車載装置10にキーコードの情報が送信された際に、車載装置10が、送信されたキーコードの情報に基づいて錠装置40の解錠コードを変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両と携帯機との間の無線通信を通じて車載装置の駆動を制御する車両制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子キーを所持したユーザが車両ドアに接近することにより車両ドアのアンロックが自動的に実行される車両制御システムが周知である。そして従来、このような車両制御システムとしては、例えば特許文献1に記載のシステムが知られている。図18に、この特許文献1に記載のシステムも含めて、従来一般に採用されている車両制御システムの概要を示す。
【0003】
同図18に示されるように、この車両制御システムでは、例えば車両ドアに設けられた送信装置81から車両ドアの周辺に設定された通信エリアAにリクエスト信号を送信する。またこの車両制御システムでは、上記送信装置81から送信されたリクエスト信号を受信するとともに、受信したリクエスト信号に対して識別コード(IDコード)等の情報を含む応答信号を送信する電子キー90をユーザが所持する。すなわち、電子キー90を所持したユーザが通信エリアAに進入することによって、同電子キー90から応答信号が送信される。そしてこのシステムにおいて、電子キー90から送信された応答信号は車室内に設けられた受信装置82によって受信されて、その旨が、車両にかかる各種制御を実行する車両制御装置83に伝達される。この車両制御装置83では、受信された応答信号に含まれている電子キーのIDコードと同制御装置83内のメモリに予め記憶されているIDコードとの照合を行い、この照合を通じて、例えば車両ドアに設けられているドアロック機構84をアンロックする。このような車両制御システムによれば、ユーザの直接的な手動操作によることなく車両ドアをアンロックすることができるため、車両の操作にかかる利便性が大きく向上するようになる。
【0004】
一方、近年は、例えば特許文献2に見られる車両制御システムのように、電子キーの機能を携帯電話機に組み込むといった方法も提案されている。このように電子キーの機能を携帯電話機に組み込むことにより、ユーザは、電子キーとして機能する専用の機器を所持することなく、自身の携帯電話機を通じて各種車両操作を行うことが可能となるため、同様に利便性の向上が図られるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−029385号公報
【特許文献2】特開2003−120097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような車両制御システムにあっては、車両オーナは、他人に車両を貸し出す際に、自身の携帯電話機を車両借用者に貸し出す必要がある。しかしながら、携帯電話機には各種個人情報が記憶されていることが多いため、車両オーナが携帯電話機の貸し出しを躊躇し、結局、車両の貸し出し自体を思い止まってしまうおそれがある。そこで、携帯電話機に搭載されている通信機能を利用することによって、携帯電話機が電子キーとして機能するために必要な電子キーデータ、例えば車両と無線通信をする際に必要となる通信アルゴリズムや上記IDコードなどのデータを車両オーナの携帯電話機から借用者の携帯電話機に譲渡するといった方法が考えられる。このような方法を採用すれば、車両オーナは、車両を貸し出す際に自身の携帯電話機を借用者に貸し出す必要がなくなるため、気軽に車両を貸し出すことができるようになる。
【0007】
ただし、このような車両制御システムにあっては、例えば車両のバッテリ電圧が低下したり、あるいは借用者の携帯電話機に電池切れなどの異常が生じると、車載装置と携帯電話機との間で無線通信を行うことができなくなる。すなわちこの場合には、借用者が携帯電話機を所持した状態で上記通信エリアAに進入したとしても車両ドアのアンロックが行われないため、借用者が車両に乗車することができなくなるなどの不都合が生じるおそれがある。
【0008】
なお、車両オーナは、通常、予備のメカニカルキーを所有しているため、このメカニカルキーを例えば車両ドアに設けられたキーシリンダに挿入することによって車両ドアをロック/アンロックさせることができる。したがって、車両オーナの携帯電話機から借用者の携帯電話に電子キーデータを譲渡する際に、車両オーナが借用者にメカニカルキーを貸し出せば、上述した不都合を解消することも可能ではある。しかしながら、こうしたメカニカルキーの貸し借りを車両オーナや借用者が煩わしく感じるおそれがあるため、実用上はなお課題を残すものとなっている。
【0009】
また、このような課題は、電子キーデータを特定の携帯電話機から他の携帯電話機に譲渡することが可能な車両制御システムに限らず、携帯電話機を含む複数の携帯機と車両との間の無線通信を通じて携帯機の電子的な認証を行う車両制御システムに共通する課題である。
【0010】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両と携帯機との間で無線通信を行うことのできない状況におけるユーザの操作性を確保しつつも、利便性を向上させることのできる車両制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1に記載の発明は、車両に設けられている車載装置と複数の携帯機との間で無線通信を行うことにより前記複数の携帯機の電子的な認証がそれぞれ行われるとともに、該電子的な認証に基づいて前記車載装置の駆動を制御する車両制御システムにおいて、前記携帯機は、各携帯機毎にそれぞれ異なるキーコードを有するメカニカルキーと、自身に付属のメカニカルキーのキーコードの情報が記憶されている記憶手段とを備えるものであり、前記車載装置は、解錠コードを変更可能な錠装置を備え、前記携帯機から前記キーコードの情報を取得するとともに、取得したキーコードの情報に基づいて前記錠装置の解錠コードを変更して且つ、同錠装置を通じて行われる前記メカニカルキーの機械的な認証に基づいて前記車載装置の駆動を制御することを要旨としている。
【0012】
同システムによれば、仮に車載装置と携帯機との間で無線通信を行うことができなくなったとしても、車両のユーザは、メカニカルキーを用いて錠装置を操作することによって車載装置を駆動させることができるため、ユーザの操作性を確保することができるようになる。また、ユーザは、錠装置を操作する際に、自身の携帯機に付属のメカニカルキーを用いればよいため、複数のユーザで1つのメカニカルキーを貸し借りする場合と比較すると、ユーザの利便性を向上させることができるようになる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両制御システムにおいて、前記車載装置は、前記携帯機の電子的な認証が成立することを条件に、前記携帯機から送信される前記キーコードの情報に基づく前記錠装置の前記解錠コードの変更を行うことを要旨としている。
【0014】
同システムによるように、携帯機の電子的な認証が成立することを条件に錠装置の解錠コードを変更することとすれば、第三者によって錠装置の解錠コードが変更されてしまうような事態を回避することができるようになる。このため、仮に第三者が錠装置の解錠コードを不正に変更しようとしたとしても、こうした不正行為を未然に防止することができるため、システムとしてのセキュリティ性を的確に確保することができるようになる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の車両制御システムにおいて、前記車両及び前記携帯機とは別に、前記電子的な認証を成立させるために必要な電子キーデータが記憶されているサーバを更に備え、該サーバは、前記電子キーデータを前記携帯機に送信した際に同携帯機から前記キーコードの情報を取得するとともに、取得したキーコードの情報を前記車載装置に送信するものであることを要旨としている。
【0016】
近年、1台の車両を複数のユーザが共同で使用する、いわゆるカーシェアリングシステムが周知である。そして、このようなカーシェアリングシステムに利用される車両にあっては、車両及び携帯機とは別にサーバを設けた上で、このサーバに記憶されている電子キーデータを車両利用者の携帯機及び車載装置に送信するといった構成を採用することが有効である。すなわち、このような構成を採用すれば、電子キーデータをサーバから各携帯機に送信することができるため、前回の車両利用者が次回の車両利用者に車両の鍵を渡す手間を省くことが可能となり、ひいては車両利用者の利便性を大幅に向上させることができるようになる。また、車両利用者の携帯機に記憶されているキーコードの情報をサーバを介して車載装置に送信することとすれば、車両利用者による何らの手動操作を必要とすることなく錠装置の解錠コードを変更することができるため、こうした点でも、車両利用者の利便性を向上させることができるようになる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の車両制御システムにおいて、前記サーバから前記携帯機に送信される前記電子キーデータは、前記電子的な認証を所定期間に限って成立させることが可能なものであって、前記車載装置は、前記所定期間が経過することに基づき前記錠装置を通じた前記機械的な認証を規制する規制手段を更に備えることを要旨としている。
【0018】
同システムによるように、他の携帯機に送信された電子キーデータに基づく電子的な認証を所定期間に限って成立させることとすれば、所定期間が経過したときに携帯機を用いて車載装置を駆動させることができなくなるため、前回の車両利用者が車載装置を不正に操作するような事態を回避することができるようになる。このため、システムとしてのセキュリティレベルを高めることができるようになる。また、所定期間が経過したときに、錠装置を機械的な認証を行うことのできない状態とすることとすれば、所定期間が経過して以降は、第三者による錠装置の不正な操作を未然に防止することができるため、システムとしてのセキュリティレベルを高めることができるようになる。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかる車両制御システムによれば、車両と携帯機との間で無線通信を行うことのできない状況におけるユーザの操作性を確保しつつも、利便性を向上させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明にかかる車両制御システムの第1の実施形態についてそのシステム構成を示すブロック図。
【図2】(a),(b)は、同第1の実施形態の車両制御システムについて携帯機に付属されるメカニカルキーの平面構造をそれぞれ示す平面図。
【図3】同メカニカルキーに形成されているコード孔の位置を模式的に示す平面図。
【図4】同第1の実施形態の車両制御システムが搭載される車両についてその斜視構造を示す斜視図。
【図5】同第1の実施形態の車両制御システムについてその錠装置の断面構造を示す断面図。
【図6】図5のA−A線に沿った断面構造を示す断面図。
【図7】(a),(b)は、同錠装置に設けられているピンの分解斜視構造及び正面構造をそれぞれ示す斜視図及び正面図。
【図8】(a),(b)は、同錠装置の動作例を示す正面図。
【図9】同錠装置の動作例を示す断面図。
【図10】同錠装置の動作例を示す断面図。
【図11】同錠装置の動作例を示す断面図。
【図12】同錠装置の動作例を示す断面図。
【図13】同第1の実施形態の車両制御システムについて車載装置と携帯機との間の無線通信を通じて車載装置の解錠コードが変更される様子を示すシーケンスチャート。
【図14】本発明にかかる車両制御システムの第2の実施形態についてそのシステム構成を示すブロック図。
【図15】同第2の実施形態の車両制御システムについてその錠装置の断面構造を示す断面図。
【図16】同錠装置の動作例を示す断面図。
【図17】同第2の実施形態の車両制御システムについて車載装置、携帯機、及びサーバの間の無線通信を通じて車載装置の解錠コードが変更される様子を示すシーケンスチャート。
【図18】従来の車両制御システムについてその構成を模式的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる車両制御システムの第1の実施形態について図1〜図13を参照して説明する。なお、本実施形態が適用対象とする車両制御システムの基本構成は、先の図18に例示した車両制御システムと同様である。図1は、こうした車両制御システムのシステム構成をブロック図として示したものであり、はじめに、同図1を参照して、この電子キーシステムの構成、動作をより具体的に説明する。
【0022】
同図1に示されるように、この車両制御システムでは、車両側に搭載された車載装置10と車両オーナが携帯所持する携帯機20との間で、無線通信による各種通信処理が実行される。
【0023】
ここで、車載装置10には、車両ドアの周辺に設定された通信エリアAに前述したリクエスト信号を送信するための送信装置11が設けられるとともに、携帯機20から送信される同じく前述した応答信号を受信するための受信装置12が設けられている。そして、送信装置11によるリクエスト信号の送信制御、及び受信装置12を介して受信される上記応答信号の処理が、マイクロコンピュータを中心に構成される車両制御装置13を通じて統括的に行われる。ちなみに、車両制御装置13は、例えば前述したドアロック機構14などの各種車載機器の駆動を制御する部分でもある。また、車両制御装置13に内蔵される記憶手段としてのメモリ13aには、マスタ識別コード(マスタIDコード)、及びリクエスト信号の送信方法や応答信号の処理方法などを示す通信アルゴリズムが予め記憶されている。
【0024】
一方、携帯機20は、いわゆる携帯電話機であって、音声情報を含む電波を授受するための送受信装置やマイク、スピーカ(それぞれ図示略)などを有して構成されている。ちなみに、この携帯機20には、赤外線通信やbluetooth通信などを通じて他の携帯機と各種データを授受するための通信手段としての近距離通信装置23や、例えば電話番号を入力するときなどにユーザによってプッシュ操作される入力部24が設けられている。また、この携帯機20には、車載装置10から送信されるリクエスト信号を受信するための受信装置21とともに、リクエスト信号の受信に基づき車載装置10に対して応答信号を送信するための送信装置22が設けられている。そして、受信装置21を介して受信されるリクエスト信号に基づく応答信号の生成、並びに同応答信号の上記送信装置22を通じての送信制御が、マイクロコンピュータを中心に構成される携帯機制御装置25を通じて統括的に行われる。また、この携帯機制御装置25は、上記入力部24の出力信号を取り込むとともに、取り込んだ出力信号に基づいて、例えば上記近距離通信装置23の通信制御などを実行する部分でもある。なお、携帯機制御装置25に内蔵される記憶手段としてのメモリ25aには、リクエスト信号の処理方法や応答信号の送信方法などを示す通信アルゴリズムと共に、上記マスターIDコードなどが予め記憶されている。
【0025】
ちなみに、携帯機としてのこうした構成は、車両オーナが所持する携帯機20以外の他の携帯機30でも同様である。すなわち、携帯機30も、受信装置31、送信装置32、近距離通信装置33、入力部34、及び携帯機制御装置35などを有して構成されている。ただし、この携帯機30は、内蔵される不揮発性のメモリ35aにマスタIDコードや通信アルゴリズムなどが記憶されていないといった点で上記携帯機20と相違する。
【0026】
このように構成された車両制御システムにあって、送信装置11から車両ドアの周辺に設定された通信エリアAに対してリクエスト信号が発せられているとするときに、車両オーナが所持する携帯機20が通信エリアAに進入したとすると、次のような態様にて車載装置10及び携帯機20の間で無線通信が実行される。すなわちこのシステムでは、送信装置11から送信されたリクエスト信号が受信装置21により受信されるとともに、このリクエスト信号が上記携帯機制御装置25に伝達される。携帯機制御装置25では、こうしてリクエスト信号が伝達されると、内蔵される不揮発性のメモリ25aに記憶されているマスタIDコードを含む応答信号を生成してこれを上記送信装置22に伝達することによって、この応答信号を上記車載装置10に送信する。このようにして応答信号が送信されることにより、上記受信装置12ではこれを受信するとともに、受信した応答信号を上記車両制御装置13に伝達する。これにより車両制御装置13では、前述のように、伝達された応答信号に含まれているマスタIDコードと同制御装置13が内蔵する不揮発性のメモリに予め記憶されているマスタIDコードとの照合を行い、この照合を通じて互いのIDコードが一致している旨が判断されることに基づいて、ドアロック機構14を通じて車両ドアをアンロックするなどの各種車両制御を実行する。
【0027】
また、本実施形態の車両制御システムでは、例えば車両オーナが他人に車両を貸し出すような場合、車両オーナの携帯機20と車両借用者の携帯機30との間で無線通信を行うことによって、電子キーとして機能するために必要な電子キーデータを携帯機20から携帯機30に譲渡することが可能となっている。具体的には、例えばいま、車両オーナが携帯機20の入力部24に対して電子キーデータを貸し出す際に必要な情報、例えば電子キーデータの貸し出し期間などを入力したとする。このとき、携帯機制御装置25は、この入力操作に基づき、上記マスターIDコードとは異なる貸し出し用IDコードをランダムに生成するとともに、生成した貸し出し用IDコードや上記貸し出し期間情報、通信アルゴリズムなどを含む電子キーデータ信号を生成してこれを上記近距離通信装置23を介して携帯機30に送信する。これにより、携帯機制御装置35では、近距離通信装置33を介してこの電子キーデータ信号を受信するとともに、受信した電子キーデータ信号に含まれている貸し出し用IDコードや通信アルゴリズムなどをメモリ35aに記憶させる。一方、携帯機制御装置25は、上述のように貸し出し用IDコードを生成した際には、貸し出し用IDコードや貸し出し期間情報などを含むIDコード登録信号を生成してこれを上記送信装置22を介して車載装置10に送信する。これにより、車両制御装置13では、上記受信装置12を介してこのIDコード登録信号を受信するとともに、同信号に含まれている貸し出し用IDコード及び貸し出し期間情報をメモリ13aに記憶させる。そして、こうした一連の処理を通じて、車載装置10及び携帯機30に貸し出し用IDコードがそれぞれ記憶された状態となる。
【0028】
なお、車載装置10と携帯機30との間で行われる通信処理は、基本的には、前述した車載装置10との携帯機20との間で行われる通信処理と同様である。ただし、携帯機制御装置35は、上記マスタIDコードに代えて、貸し出し用IDコードを応答信号に含めて送信する。また、車両制御装置13は、上記マスタIDコードに基づく照合に代えて、貸し出し用IDコードに基づく照合を行う。このような構成によれば、携帯機30が上記通信エリアAに進入した際にも車両ドアのアンロックが行われるようになるため、携帯機30も電子キーとして機能するようになる。
【0029】
ところで、このような車両制御システムにあっては、例えば車両のバッテリ電圧が低下したり、あるいは携帯機20,30に電池切れなどの異常が生じると、車載装置10と携帯機20,30との間で無線通信を行うことができなくなる。すなわちこの場合には、例えば携帯機30を所持した借用者が通信エリアAに進入したとしても車両ドアのアンロックが行われないため、借用者が車両に乗車することができなくなるなどの不都合が生じるおそれがある。
【0030】
そこで、本実施形態では、携帯機20,30にメカニカルキー26,36を付属させるとともに、これらメカニカルキー26,36を用いることで車両ドアのロック/アンロック操作を行うことのできる錠装置40を車両ドアに設けるようにしている。
【0031】
次に、図2を参照して、携帯機20,30に付属されているメカニカルキー26,36の構造について説明する。図2(a),(b)は、これらのメカニカルキー26,36の平面構造をそれぞれ示したものである。
【0032】
同図2(a),(b)に示されるように、メカニカルキー26,36は、例えば樹脂材料などからなるものであって、全体として長方形板状に形成されている。このメカニカルキー26,36には、その板厚方向に貫通する円形状の複数のコード孔26a,36aが形成されており、これらのコード孔26a,36aの配列パターンによってキーコードが形成されている。ちなみに、携帯機20,30に付属のメカニカルキー26,36を含めて、任意の携帯機に付属のメカニカルキーにおけるコード孔の配列パターンは、図3に二点鎖線で示すように、4行5列の格子の交点として定められる20ヶ所の位置Pのうち、適宜の位置にコード孔を形成することによって決定されている。また、図2(a)と図2(b)とを対比して明らかなように、メカニカルキー26に形成されているコード孔26aの配列パターンと、メカニカルキー36に形成されているコード孔36aの配列パターンとは、それぞれ異なった配列パターンとなっている。ちなみに、携帯機20,30に付属のメカニカルキー26,36を含めて、複数の携帯機に付属のメカニカルキーにおけるコード孔の配列パターンは、それぞれ異なった配列パターンとなっている。すなわち、各携帯機に付属のメカニカルキーのキーコードはそれぞれ異なったものとなっている。このように、コード孔の配列パターンを持ってキーコードを形成することとすれば、コード孔の位置を変更するだけでキーコードを変更することができるため、異なるキーコードを有する複数個のメカニカルキーを容易に成形することができるようになる。ちなみに、これらのメカニカルキーは、携帯機に予め形成された収容部に収容されたり、あるいはストラップとして携帯機に取り付けられることによって、複数の携帯機毎にそれぞれ付属されている。また、先の図1に示されるように、携帯機に付属のメカニカルキーのキーコードの情報は、各携帯機に内蔵されている不揮発性のメモリに予め記憶されている。
【0033】
次に、図4及び図5を参照して、上記錠装置40の構造について説明する。図4は、車両の斜視構造を、また、図5は、錠装置40の断面構造をそれぞれ示したものである。
同図4に示されるように、この錠装置40は、スリット43が形成されたハウジング41を有するとともに、このハウジング41の一側面が車両ドア15の外周面と面一となる態様にて同車両ドア15に埋設されている。そして、スリット43に正規のメカニカルキーを挿入することによって、車両ドアのロック/アンロック操作を行うことが可能な構造となっている。
【0034】
ここで、図5に併せ示されるように、ハウジング41の内部には、メカニカルキーの挿入方向(図中の矢印aで示す方向)にスライド移動可能に作動体42が収容されている。ちなみに、この作動体42は、図示しない付勢手段によって矢印aで示す方向と逆方向に付勢されることによって、図中に示す位置を基準位置として同基準位置に保持されている。また、作動体42には、上記ドアロック機構14が機械的に連結されており、作動体42が基準位置から矢印aで示す方向にスライド移動することによって、ドアロック機構14を通じて車両ドア15のロック/アンロックが行われる。具体的には、車両ドア15がロック状態であるときに作動体42が基準位置から矢印aで示す方向に変位したとすると、車両ドア15はアンロックされる。また、車両ドア15がアンロック状態であるときに作動体42が基準位置から矢印aで示す方向に変位したとすると、車両ドア15はロックされる。
【0035】
一方、ハウジング41及び作動体42には、ハウジング41の一側面から作動体42の内部まで延びるかたちで上記スリット43が形成されるとともに、同スリット43に連通するかたちで矢印aで示す方向と直交する方向(図中の矢印b1,b2で示す方向)に延びる長穴44が形成されている。ここで、図5のA−A線に沿った断面構造を図6に示すように、この長穴44は、上記メカニカルキーに形成されているコード孔が存在し得る全ての位置に対応するかたちで、4行5列の格子の交点に位置するように合計20個形成されている。そして、図5に示されるように、この長穴44には、スリット43に近い側から順に、磁性材料により形成されて上記メカニカルキーのコード孔に係合するボール51,61と、作動体42の矢印aで示す方向への移動を規制する複数のピン52,62と、これらピン52,62を矢印b2で示す方向に付勢するためのコイルスプリング53,63とがそれぞれ収容されている。これらのうち、ピン52,62は、スリット43側に配置されるキーピン52a,62aと、コイルスプリング53,63側に配置されるドライバピン52b,62bとの分割体としてそれぞれ構成されている。ちなみに、ピン52におけるキーピン52a及びドライバピン52bの境界は、ハウジング41及び作動体42の境界Bに一致するように設定されている。すなわち、スリット43にメカニカルキーが挿入されている状態では、キーピン52a及びドライバピン52bの境界は、メカニカルキーのコード孔にボールが挿入されている状態であることを条件に、ハウジング41及び作動体42の境界Bに一致することとなる。これに対し、ピン62におけるキーピン62a及びドライバピン62bの境界は、メカニカルキー26の厚さの分だけハウジング41及び作動体42の境界Bよりもボール61側にずれた位置に設定されている。すなわち、スリット43にメカニカルキーが挿入されている状態では、キーピン62a及びドライバピン62bの境界は、メカニカルキーのコード孔にボールが挿入されていないことを条件に、ハウジング41及び作動体42の境界Bに一致することとなる。そして、全てのキーピン52a,62a及びドライバピン52b,62bがハウジング41及び作動体42の境界Bに一致しているときに、ハウジング41に対する作動体42のスライド移動が許容される。
【0036】
次に、図7を参照して、ピン52,62の構造について更に詳述する。
図7(a),(b)は、ピン52の斜視構造及び正面構造をそれぞれ示したものである。なお、ピン52及びピン62はそれぞれほぼ同様の構造を有しているため、以下では、便宜上、ピン52の構造についてのみ説明する。また、図7では、上記矢印aで示す方向及び矢印b1,b2で示す方向の双方に直交する方向を矢印c1,c2で示している。
【0037】
図7(a),(b)に示されるように、ピン52を構成するキーピン52aの上部には、上記矢印aで示す方向と直交する断面の形状がT字状の突出部52cが形成されるのに対し、同じくピン52を構成するドライバピン52bの下部には、矢印aで示す方向と直交する方向の断面がT字状の溝部52dが形成されている。そして、突出部52cが溝部52dに係合することによって、キーピン52a及びドライバピン52bが矢印aで示す方向にスライド移動可能に互いに連結されている。また、キーピン52aの下部には、図示しない磁石が設けられており、この磁石によって上記ボール51が吸着されている。さらに、ドライバピン52bの側面には、矢印aで示す方向と直交する方向の断面の形状が台形状に切り欠かれた部分と、矩形状に切り欠かれた部分とからなる切り欠き部54が形成されている。
【0038】
一方、錠装置40には、このピン52を矢印b1で示す方向に移動させるためのリフトアップ機構が設けられている。
図8(a),(b)は、このリフトアップ機構の概要を模式的に示したものである。
【0039】
同図8(a)に示されるように、このリフトアップ機構55は、上記切り欠き部54の台形状に形成された部分の傾斜面54aに当接するニードル55aと、同ニードル55aを矢印c1,c2で示す方向に往復動させる電磁アクチュエータ55bとから構成されている。なお、この電磁アクチュエータ55bは、例えば電磁ソレノイドなどによって構成されている。そして、このリフトアップ機構55では、電磁アクチュエータ55bによってニードル55aを矢印c1で示す方向に突出させたとすると、ニードル55aの先端部が切り欠き部54の傾斜面54aを摺動し、これによってドライバピン52bが矢印b1で示す方向にリフト動作する。なおこのとき、前述した係合構造を介してドライバピン52bに連結されているキーピン52aや、同キーピン52aに吸着されているボール51もドライバピン52bと一体となってリフト動作する。そして、図8(b)に示されるように、ニードル55aが切り欠き部54の矩形状に形成された部分に挿入されると、ボール51が上記ハウジング41及び作動体42の境界Bよりも矢印b1で示す方向に変位した状態で保持される。また、このリフトアップ機構55では、図8(b)に示した状態から電磁アクチュエータ55bによってニードル55aを矢印c2で示す方向に後退させたとすると、上記コイルスプリング53の付勢力によってボール51及びピン52が矢印b2で示す方向に移動し、ボール51及びピン52が元の位置に復帰する。ちなみに、電磁アクチュエータ55bの駆動は、上記車両制御装置13を通じて制御される。また、このようなリフトアップ機構55は、上記ピン62を含めて、上記長穴44に挿入されている全てのピンに対してそれぞれ設けられている。
【0040】
そして、この錠装置40では、こうしたリフトアップ機構55を通じてピン52,62をリフト動作させることによって、当該錠装置40の解錠コードを変更させる。
次に、図9〜図12を参照して、このような構成を有する錠装置40の動作について説明する。
【0041】
図9に示されるように、この錠装置40では、通常は、例えば上記リフトアップ機構55を通じてピン62をリフト動作させることによって、その解錠コードが上記メカニカルキー26のキーコードに対応した解錠コードに設定されている。すなわちこの場合、スリット43にメカニカルキー26が挿入されたとすると、全てのキーピン52a,62a及びドライバピン52b,62bの境界がハウジング41及び作動体42の境界Bに一致する。したがって、ハウジング41に対する作動体42のスライド移動が許容された状態となるため、図10に示すように、ユーザによってメカニカルキー26が矢印aで示す方向に押圧操作されると、作動体42がスライド移動して車両ドアのロック/アンロックが行われることとなる。
【0042】
一方、図11に示されるように、この錠装置40では、例えば先の図9に示した状態から上記リフトアップ機構55によるピン62のリフトアップを解除するとともに、ピン52をリフト動作させることによって、その解錠コードが上記メカニカルキー36のキーコードに対応した解錠コードとなる。すなわちこの場合、スリット43にメカニカルキー36が挿入されたとすると、全てのキーピン52a,62a及びドライバピン52b,62bの境界がハウジング41及び作動体42の境界Bに一致する。したがって、ハウジング41に対する作動体42のスライド移動が許容された状態となるため、図12に示すように、ユーザによってメカニカルキー36が矢印aで示す方向に押圧操作されると、作動体42がスライド移動して車両ドアのロック/アンロックが行われることとなる。
【0043】
このように、本実施形態の錠装置40では、リフトアップ機構55を通じてピン52,62をリフト動作させることによって、その解錠コードを任意に変更することが可能となっている。
【0044】
そして、上述のように、本実施形態の車両制御システムでは、通常は、錠装置40の解錠コードが上記メカニカルキー26のキーコードに対応した解錠コードに設定されている。また、この車両制御システムでは、車載装置10及び携帯機30の間で無線通信が行われた際に、携帯機30から車載装置10にメカニカルキー36のキーコードの情報を送信するとともに、この送信されたキーコードの情報に基づいて錠装置40の解錠コードを変更するようにしている。
【0045】
図13は、車載装置10と携帯機30との間の無線通信を通じて錠装置40の解錠コードが変更される様子を示したシーケンスチャートである。
同図13に示されるように、また上述のように、この車両制御システムでは、携帯機30が上記通信エリアAに進入したとすると、携帯機30と車載装置10との間でリクエスト信号及び応答信号の授受が行われる。そして、車両制御装置13は、応答信号に含まれている貸し出し用IDコードに基づいて携帯機30の認証が成立した旨を判断すると(ステップS1)、貸し出し用IDコードに基づく認証が初めて成立した状況であるか否かを判断する(ステップS2)。このステップS2の処理では、具体的には、上記携帯機20から貸し出し用IDコードが送信された後に、この送信された貸し出し用IDコードに基づく認証が初めて成立したことをもって、貸し出し用IDコードに基づく認証が初めて行われた状況である旨を判断する。ここで、車両制御装置13は、貸し出し用IDコードに基づく認証が初めて行われた状況でない旨を判断した場合には(ステップS2:NO)、上記ドアロック機構14を通じて車両ドアのアンロックを行う(ステップS4)。
【0046】
一方、車両制御装置13は、貸し出し用IDコードに基づく認証が初めて行われた状況である旨を判断した場合には(ステップS2:YES)、携帯機30に対してキーコードの送信を要求する信号を生成してこれを上記送信装置22を介して携帯機30に送信する。そうすると、携帯機制御装置35では、このキーコード要求信号を受信装置12を介して受信するとともに、同信号の受信に基づき、内蔵されるメモリ35aに記憶されているキーコードの情報を含むキーコード応答信号を生成してこれを送信装置11を介して車載装置10に送信する。そして、車両制御装置13では、このキーコード応答信号を受信装置12を介して受信すると、同信号に含まれているキーコードの情報に基づいて上記リフトアップ機構55を所要に駆動させることによって、錠装置40の解錠コードを変更するとともに(ステップS3)、上記ドアロック機構14を通じて車両ドアのアンロックを行う(ステップS4)。
【0047】
車両制御システムとしてのこうした構成によれば、仮に車載装置10と携帯機20,30との間で無線通信を行うことができなくなったとしても、車両オーナ及び車両借用者は、メカニカルキー26,36を用いて錠装置40を操作すれば、車両ドアをアンロックすることができる。このため、車両オーナ及び車両借用者の操作性を確保することができるようになる。また、車両オーナや車両借用者は、錠装置40を操作する際に、自身の携帯機20,30に付属のメカニカルキー26,36を用いればよいため、複数のユーザで1つのメカニカルキーを貸し借りする場合と比較すると、車両オーナや車両借用者の利便性を向上させることができるようになる。
【0048】
また、貸し出し用IDコードに基づく携帯機30の認証が成立することを条件に錠装置40の解錠コードを変更することとすれば、第三者によって錠装置の解錠コードが変更されてしまうような状況を回避することができるようになる。このため、仮に第三者が錠装置40の解錠コードを不正に変更しようとしたとしても、こうした不正行為を未然に防止することができるため、システムとしてのセキュリティ性を的確に確保、維持することができるようになる。
【0049】
なお、上記車両制御装置13は、メモリ13aに記憶されている貸し出し期間情報に基づいて貸し出し期間が経過した旨を判断したとき、錠装置40の解錠コードを、メカニカルキー36のキーコードに対応した解錠コードからメカニカルキー26のキーコードに対応した解錠コードに戻す処理も行う。これにより、車両オーナの直接的な手動操作によることなく、貸し出し期間が経過すればメカニカルキー26を用いての錠装置40の操作が可能となるため、車両オーナの利便性を向上させることができるようになる。
【0050】
以上説明したように、本実施形態にかかる車両制御システムによれば、以下のような効果が得られるようになる。
(1)キーコードの異なるメカニカルキー26,36を各携帯機20,30に付属させるとともに、付属されているメカニカルキー26,36のキーコードの情報を携帯機20,30に内蔵されているメモリ25a,35aに記憶させるようにした。また、解錠コードを変更することが可能な錠装置40を車両に設けた上で、携帯機30から送信されるキーコードの情報に基づいて錠装置40の解錠コードを変更するようにした。そして、錠装置40を通じてメカニカルキー26,36の機械的な認証を行うとともに、同機械的な認証が成立することに基づいて車両ドアのアンロックを行うようにした。これにより、仮に車載装置10と携帯機20,30との間で無線通信を行うことができなくなったとしても、車両オーナ及び車両借用者は、車両ドアをアンロックすることができるため、車両オーナ及び車両借用者の操作性を確保することができるようになる。また、車両オーナや車両借用者は、車両ドアをアンロックする際に、自身の携帯機20,30に付属のメカニカルキー26,36を用いればよいため、複数のユーザで1つのメカニカルキーを貸し借りする場合と比較すると、車両オーナや車両借用者の利便性を向上させることができるようになる。
【0051】
(2)貸し出し用IDコードに基づいて携帯機30の認証が成立することを条件に錠装置40の解錠コードを変更するようにした。これにより、第三者による錠装置の解錠コードの変更を未然に防止することができるため、システムとしてのセキュリティ性を的確に確保することができるようになる。
【0052】
(3)貸し出し用IDコードや通信アルゴリズムなどの電子キーデータを携帯機20から携帯機30に譲渡することができるようにした。これにより、車両オーナは車両を貸し出す際に自身の携帯機20を車両借用者に貸し出す必要がなくなるため、車両を気軽に貸し出すことができるようになる。
【0053】
(4)貸し出し期間が経過したときに、錠装置40の解錠コードをメカニカルキー26のキーコードに対応した解錠コードに自動的に戻すようにした。これにより、車両オーナの直接的な手動操作によることなく、貸し出し期間が経過すればメカニカルキー26を通じた錠装置40の操作が可能となるため、車両オーナの利便性を向上させることができるようになる。
【0054】
(5)メカニカルキーをカード状に形成するとともに、同メカニカルキーに形成されているコード孔の配列パターンをもってキーコードを形成するようにした。これにより、メカニカルキーに形成されているコード孔の配列パターンを変更するだけでキーコードを変更することができるため、異なるキーコードを有する複数のメカニカルキーを容易に成形することができるようになる。
【0055】
(6)錠装置40では、ピン52,62による作動体42のスライド移動の規制を強制的に解除する解除手段としてリフトアップ機構55を設けるようにした。これにより、錠装置40の解錠コードの変更を容易に行うことができるようになる。
【0056】
(第2の実施形態)
続いて、本発明にかかる車両制御システムの第2の実施形態について図14〜図17を参照して説明する。
【0057】
近年、1台の車両を複数のユーザが共同で使用する、いわゆるカーシェアリングシステムが周知である。図14は、こうしたカーシェアリングシステムに用いて有益な車両制御システムのシステム構成をブロック図として示したものである。なお、この第2の実施形態にかかる車両制御システムもその基本構成は先の図1に例示した構成に準ずるものである。またこの図14において、先の図1に示した要素と同一の要素にはそれぞれ同一の符号を付すことにより重複する説明を割愛し、以下では、両者の相違点を中心に説明する。
【0058】
同図14に示されるように、この車両制御システムでは、カーシェアリングシステムを提供する業者に設けられているサーバ70と車載装置10との間、及びサーバ70と携帯機30との間で各種通信処理が行われる。
【0059】
ここで、車載装置10及び携帯機30には、通信ネットワークを介してサーバ70と通信を行うためのインターネット通信装置16,37がそれぞれ設けられている。
一方、サーバ70には、通信ネットワークを介して車載装置10及び携帯機30と通信を行うためのインターネット通信装置71とともに、上記貸し出し用IDコードや通信アルゴリズムなどの電子キーデータが記憶されたデータベース72が設けられている。ちなみに、インターネット通信装置71を通じた通信制御やデータベース72に記憶されている各種情報の読み出し、並びにデータベース72への各種情報の書き込みは、マイクロコンピュータを中心に構成されるサーバ制御装置53を通じて行われる。
【0060】
次に、図15を参照して、錠装置40の構造について説明する。図15は、先の図5に対応する図として、錠装置40の断面構造を示したものである。
同図15に示されるように、この錠装置40には、同錠装置40を通じた機械的な認証を許容あるいは規制すべく、スリット43の開口部を開閉させるための開閉機構45が設けられている。この開閉機構45は、矢印b1,b2で示す方向に往復動することによってスリット43内に進入したり、あるいはスリット43から退出する閉塞板45aと、同閉塞板45aを矢印b1,b2で示す方向に往復動させるための電磁アクチュエータ45bとから構成されている。なお、この電磁アクチュエータ45bは、例えば電磁ソレノイドなどによって構成されている。そして、この錠装置40では、図16に示すように、電磁アクチュエータ45bを通じて閉塞板45aをスリット43内に進入させることによってスリット43の開口部を閉塞させる。これにより、スリット43内にメカニカルキー26,36を挿入することができなくなるため、錠装置40を通じた機械的な認証が規制されるようになる。ちなみに、電磁アクチュエータ45bの駆動は、上記車両制御装置13を通じて制御される。
【0061】
そして、本実施形態の車両制御システムでは、車両を利用しているユーザがいない期間にあっては、上記開閉機構45を通じてスリット43の開口部を閉塞することによって第三者による錠装置40の不正な操作を防止するようにしている。一方、このシステムでは、車両の利用者がサーバ70に記憶されている電子キーデータを携帯機30にダウンロードすることによって携帯機30が電子キーとして機能するようになる。またこのとき、携帯機30に記憶されているキーコードの情報がサーバ70を介して車載装置10に送信される。さらに、車載装置10は、送信されたキーコードの情報に基づいて錠装置40の解錠コードを変更するとともに、開閉機構45を通じてスリット43の開口部を開放する。
【0062】
図17は、車両の利用者がサーバ70に記憶されている電子キーデータを携帯機30にダウンロードする際に車載装置10、携帯機30、及びサーバ70を通じて行われる通信処理の内容をシーケンスチャートで示したものである。
【0063】
例えばいま、車両利用者が携帯機30の入力部34を操作して車両を利用するために必要な情報、具体的には車両の利用期間などの利用申請情報を入力したとする。このとき、図17に示されるように、携帯機制御装置35は、入力された利用申請情報や電子キーデータの送信を要求する指令などを含む電子キーデータ要求信号を生成してこれをインターネット通信装置37を介してサーバ70に送信する。これにより、サーバ制御装置53では、この電子キーデータ要求信号をインターネット通信装置71を介して受信するとともに、同信号に含まれている利用申請情報をデータベース72に記憶させる(ステップS11)。またこのとき、サーバ制御装置53は、貸し出し用IDコードをランダムに生成するとともに(ステップS12)、生成した貸し出し用IDコード、及びデータベース72に記憶されている通信アルゴリズムなどを含む電子キーデータ信号を生成してこれをインターネット通信装置37を介して携帯機30に送信する。そして、携帯機制御装置35では、電子キーデータ信号をインターネット通信装置37を介して受信すると、同信号に含まれている貸し出し用IDコードや通信アルゴリズムなどをメモリ35aに記憶させるとともに(ステップS13)、メモリ35aに記憶されているキーコードの情報を含むキーコード応答信号を生成してこれをサーバ70に送信する。これにより、サーバ70では、このキーコード応答信号をインターネット通信装置71を介して受信するとともに、同信号に含まれているキーコードの情報をデータベース72に記憶させる(ステップS14)。また、サーバ70は、データベース72に記憶されている貸し出し用IDコード、利用申請情報、及びキーコードの情報を含むIDコード登録信号を生成するとともに、この生成したIDコード登録信号をインターネット通信装置71を介して車載装置10に送信する。このようにしてIDコード登録信号が送信されることにより、車両制御装置13では、このIDコード登録信号をインターネット通信装置16を介して受信するとともに、受信したIDコード登録信号に含まれている貸し出し用IDコードなどをメモリ13aに記憶させる(ステップS15)。また、車両制御装置13は、このIDコード登録信号に含まれているキーコードの情報に基づいて錠装置40の解錠コードを変更するとともに(ステップS16)、上記開閉機構45を通じてスリット43の開口部を開放する(ステップS17)。
【0064】
車両制御システムとしてのこのような構成によれば、電子キーデータをサーバ70から利用者が所持する携帯機に送信することができるため、前回の車両利用者が次回の車両利用者に車両の鍵を渡す手間を省くことができる。このため、車両利用者の利便性を大幅に向上させることができるようになる。また、車両利用者の携帯機30に記憶されているキーコードの情報をサーバ70を介して車載装置10に送信することとすれば、車両利用者による何らの手動操作を必要とすることなく錠装置40の解錠コードを変更することができるため、こうした点でも、車両利用者の利便性を向上させることができるようになる。
【0065】
なお、上記車両制御装置13は、メモリ13aに記憶されている利用申請情報に基づいて利用期間が経過した旨を判断したとき、上記開閉機構45を通じて錠装置40のスリット43を閉塞させる。すなわち、錠装置40を機械的な認証を行うことのできない状態とする。これにより、利用期間が経過して以降は、第三者による不正な操作を未然に防止することができるため、システムとしてのセキュリティレベルを高めることができるようになる。
【0066】
以上説明したように、本実施形態にかかる車両制御システムによれば、先の第1の実施形態による上記(1),(5),(6)のそれぞれの効果に加え、上記(2)〜(4)の効果に代わる効果として以下の効果が得られるようになる。
【0067】
(7)車両及び携帯機30とは別に、電子キーデータが記憶されているサーバ70を設けるようにした。そして、電子キーデータをサーバ70から携帯機30に送信した際にサーバ70が携帯機30からキーコードの情報を取得するとともに、取得したキーコードの情報をサーバ70から車載装置10に送信するようにした。これにより、電子キーデータをサーバ70から各利用者の携帯機に送信することができるため、前回の車両利用者が次回の車両利用者に車両の鍵を渡す手間を省くことが可能となり、ひいては車両利用者の利便性を大幅に向上させることができるようになる。また、車両利用者による何らの手動操作を必要とすることなく錠装置の解錠コードを変更することができるため、こうした点でも、車両利用者の利便性を向上させることができるようになる。
【0068】
(8)利用期間が経過したときに錠装置40のスリット43を閉塞することによって、錠装置40を機械的な認証を行うことができない状態とするようにした。これにより、利用期間が経過して以降は、第三者による錠装置40の不正な操作を未然に防止することができるため、システムとしてのセキュリティレベルを高めることができるようになる。
【0069】
(他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・上記第1の実施形態では、貸し出し期間が経過したときに錠装置40の解錠コードをメカニカルキー26のキーコードに対応した解錠コードに自動的に戻すようにした。これに代えて、例えば貸し出し期間が経過して以降、車載装置10と携帯機20との間で初めて無線通信が行われたときに錠装置40の解錠コードをメカニカルキー26のキーコードに対応した解錠コードに戻すようにしてもよい。このような構成によれば、貸し出し期間が経過した後に車両オーナが車両を使用する際にはメカニカルキー26を通じた錠装置40の操作が可能となるため、車両オーナの利便性を向上させることができるようになる。
【0070】
・上記第2の実施形態及びその変形例では、錠装置40を通じた機械的な認証を許容あるいは規制するために開閉機構45を設けるようにしたが、このような開閉機構45を省略することも可能である。このような構成によれば、開閉機構45を省略した分だけ錠装置40の構造の簡素化を図ることができるようになる。
【0071】
・上記第2の実施形態では、錠装置40を通じた機械的な認証を許容あるいは規制する規制手段として開閉機構45を設けるようにしたが、これに代えて、例えば錠装置40の解錠コードを、携帯機に付属されている全てのメカニカルキーのキーコードに対応しない解錠コードに変更することによって錠装置40を通じた機械的な認証を規制するようにしてもよい。このような構成を採用すれば、開閉機構45を設ける必要がなくなるため、開閉機構45を省略した分だけ錠装置40の構造の簡素化を図ることができるようになる。
【0072】
・上記第2の実施形態では、携帯機30に記憶されているキーコードの情報をサーバ70を介して車載装置10に送信するようにしたが、これに代えて、例えば第1の実施形態と同様の構成を採用することによって、キーコードの情報を携帯機30から車載装置10に直接送信するようにしてもよい。このような構成を採用すれば、上記(2)の効果に準じた効果を得ることができるようになる。
【0073】
・上記各実施形態では、コード孔26a,36aの配列パターンを変更することによってメカニカルキー26,36のキーコードを変更するようにしたが、これに代えて、例えばコード孔26a,36aの孔の大きさを変更したり、あるいはそれらの形状を変更することによってメカニカルキー26,36のキーコードを変更するようにしてもよい。
【0074】
・上記各実施形態では、携帯機20,30に付属のメカニカルキー26,36として、コード孔26a,36aが形成されたカード状のメカニカルキーを採用したが、これに代えて、例えばピンタンブラ錠などのシリンダ錠に用いられるメカニカルキーを採用してもよい。なおこの場合には、上記錠装置40をキーコード可変型のシリンダ錠に変更する必要があることは言うまでもない。
【0075】
・上記各実施形態では、携帯機20,30が携帯電話機からなるものであったが、例えば上記車両制御システムで用いられる専用の機器であってもよい。
・上記各実施形態では、ユーザによって錠装置40が操作されたときに車両ドアのロック/アンロックを行うようにしたが、これに代えて、例えば錠装置40を車両のインストルメントパネルに設けた上で、ユーザによる錠装置40の操作を通じて車載エンジンを始動/停止させるようにしてもよい。要は、錠装置40を通じてメカニカルキーの機械的な認証を行うとともに、同機械的な認証に基づいて所定の車載装置の駆動を制御するものであればよい。
(付記)
次に、上記実施形態及びその変形例から把握できる技術的思想について追記する。
【0076】
(イ)請求項2に記載の車両制御システムにおいて、前記携帯機は、前記複数の携帯機同士で無線通信を行うための通信手段をそれぞれ有するものであり、前記複数の携帯機のうち、前記電子的な認証を行うために必要な電子キーデータが前記記憶手段に記憶されている特定の携帯機は、前記通信手段を通じて、前記電子キーデータが記憶されていない他の携帯機に前記電子キーデータを送信することを特徴とする車両制御システム。同システムによれば、例えば車両オーナは、車両を貸し出す際に自身の携帯電話機を車両借用者に貸し出す必要がなくなるため、車両を気軽に貸し出すことができるようになる。
【0077】
(ロ)付記イに記載の車両制御システムにおいて、前記特定の携帯機から前記他の携帯機に送信される前記電子キーデータは、前記電子的な認証を所定期間に限って成立させることが可能なものであって、前記車載装置は、前記所定期間が経過することに基づき、前記錠装置の解錠コードを、前記特定の携帯機が備えるメカニカルキーのキーコードに対応する解錠コードに変更することを特徴とする車両制御システム。同システムによるように、他の携帯機に送信された電子キーデータに基づく電子的な認証を所定期間に限って成立させることとすれば、所定期間が経過したときに他の携帯機を用いて車載装置を駆動させることができなくなるため、他の携帯機を所持する車両利用者が車載装置を不正に操作するような事態を防ぐことができるようになる。このため、システムとしてのセキュリティレベルを高めることができるようになる。また、所定期間が経過したときに、錠装置の解錠コードを、特定の携帯機が備えるメカニカルキーのキーコードに対応する解錠コードに変更することとすれば、所定期間が経過したときに自動的に特定の携帯機に付属のメカニカルキーを用いて錠装置を操作することが可能となるため、特定の携帯機を所持する車両オーナの利便性を向上させることができるようになる。
【0078】
(ハ)請求項1〜4、付記イ、及び付記ロのいずれか一項に記載の車両制御システムにおいて、前記メカニカルキーは、カード状に形成されるとともに、その厚さ方向に沿って形成された複数のコード孔の配列パターンをもって前記キーコードが形成されてなることを特徴とする車両制御システム。同システムによれば、コード孔の位置を変更するだけでキーコードを変更することができるため、異なるキーコードを有する複数のメカニカルキーを容易に成形することができるようになる。
【0079】
(ニ)請求項1〜4、及び付記イ〜ハのいずれか一項に記載の車両制御システムにおいて、前記錠装置は、スリットが形成された作動体と、該作動体をスライド移動可能に内部に収容するハウジングと、該ハウジング及び前記作動体の間に設けられて、正規の配列パターンを有していないメカニカルキーが前記スリットに挿入されたときに前記ハウジングに対する前記作動体のスライド移動を規制するとともに、正規の配列パターンを有するメカニカルキーが前記スリットに挿入されたときに前記ハウジングに対する前記作動体のスライド移動を許容する複数のピンと、該ピンによる前記作動体のスライド移動の規制を強制的に解除する解除手段とを備え、前記作動体のスライド移動が許容されているか否かに基づいて前記機械的な認証を行う一方、前記解除手段を通じて前記ピンによる前記ハウジング及び前記作動体の規制を個々に解除することによって、その解錠コードを変更することが可能なものであることを特徴とする車両制御システム。錠装置は、一般に、スリットが形成された作動体と、同作動体を内部に収容するハウジングと、このハウジングに対する作動体のスライド移動を許容あるいは規制するピンとから構成されるものが多い。この点、上記システムによれば、ピンによる作動体のスライド移動の規制を強制的に解除する解除手段を設けるだけでその解除コードを変更することができるため、上述した発明を容易に実現することができるようになる。
【0080】
(ホ)請求項1〜4、及び付記イ〜ニのいずれか一項に記載の車両制御システムにおいて、前記車載装置は、車両ドアのロック/アンロックを行うドアロック機構であることを特徴とする車両制御システム。上述のように、このような車両制御システムにあっては、車両のバッテリ電圧が低下した場合や、携帯機の電池切れなどの異常が生じた場合に、車両ドアをロック/アンロックさせたいという強い要望がある。したがって、上記システムによるように、車両と携帯機との間の無線通信を通じて車両ドアのロック/アンロックを行う車両制御システムに請求項1〜4、及び付記イ〜ニのいずれか一項に記載の車両制御システムを適用することの意義は大きい。
【符号の説明】
【0081】
10…車載装置、11,22,32,81…送信装置、12,21,31,82…受信装置、13,83…車両制御装置、13a,25a,35a…メモリ、14…ドアロック機構、15…車両ドア、16,37,71…インターネット通信装置、20,30…携帯機、23,33…近距離通信装置、24,34…入力部、25,35…携帯機制御装置、26,36…メカニカルキー、26a,36a…コード孔、40…錠装置、41…ハウジング、42…作動体、43…スリット、44…長穴、45…開閉機構、45a…閉塞板、45b,55b…電磁アクチュエータ、51…ボール、52…ピン、52a…キーピン、52b…ドライバピン、52c…突出部、52d…溝部、53…サーバ制御装置、53…コイルスプリング、54…切り欠き部、54a…傾斜面、55…リフトアップ機構、55a…ニードル、61…ボール、62…ピン、62a…キーピン、62b…ドライバピン、63…コイルスプリング、70…サーバ、72…データベース、84…ドアロック機構、90…電子キー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられている車載装置と複数の携帯機との間で無線通信を行うことにより前記複数の携帯機の電子的な認証がそれぞれ行われるとともに、該電子的な認証に基づいて前記車載装置の駆動を制御する車両制御システムにおいて、
前記携帯機は、各携帯機毎にそれぞれ異なるキーコードを有するメカニカルキーと、自身に付属のメカニカルキーのキーコードの情報が記憶されている記憶手段とを備えるものであり、前記車載装置は、解錠コードを変更可能な錠装置を備え、前記携帯機から前記キーコードの情報を取得するとともに、取得したキーコードの情報に基づいて前記錠装置の解錠コードを変更して且つ、同錠装置を通じて行われる前記メカニカルキーの機械的な認証に基づいて前記車載装置の駆動を制御する
ことを特徴とする車両制御システム。
【請求項2】
前記車載装置は、前記携帯機の電子的な認証が成立することを条件に、前記携帯機から送信される前記キーコードの情報に基づく前記錠装置の前記解錠コードの変更を行う
請求項1に記載の車両制御システム。
【請求項3】
請求項1に記載の車両制御システムにおいて、
前記車両及び前記携帯機とは別に、前記電子的な認証を成立させるために必要な電子キーデータが記憶されているサーバを更に備え、該サーバは、前記電子キーデータを前記携帯機に送信した際に同携帯機から前記キーコードの情報を取得するとともに、取得したキーコードの情報を前記車載装置に送信するものである
ことを特徴とする車両制御システム。
【請求項4】
前記サーバから前記携帯機に送信される前記電子キーデータは、前記電子的な認証を所定期間に限って成立させることが可能なものであって、前記車載装置は、前記所定期間が経過することに基づき前記錠装置を通じた前記機械的な認証を規制する規制手段を更に備える
請求項3に記載の車両制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−162966(P2011−162966A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24633(P2010−24633)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】