説明

車両制御装置、車両制御方法、及び車両制御プログラム

【課題】エンジンの始動や停止がタイヤのスリップ状態に与える影響に基づいて、エンジンの始動や停止の制御を行うことができる、車両制御装置、車両制御方法、及び車両制御プログラムを提供すること。
【解決手段】車両制御装置1は、エンジン及びモータを備えたハイブリッド車両の走行経路の先方走行区間において当該エンジンを始動又は停止させた場合における、タイヤのスリップ状態の変化量を予測するスリップ変化量予測部5aと、このスリップ変化量予測部5aにて予測されたタイヤのスリップ状態の変化量に基づいて、エンジンの始動又は停止を制御するエンジン制御部5bを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置、車両制御方法、及び車両制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジン及びモータを備えたハイブリッド車両において、車両の走行状況や、モータの駆動電源となる充電池の充電状態に応じて、エンジンの始動又は停止を自動的に制御することにより、燃費の向上を図ることが行われている。しかし、車両の走行状況によっては、エンジンの始動や停止を頻繁に繰り返し、燃費が却って低下する可能性がある。そこで、車両の走行状況を事前に推定し、エンジンの始動や停止が頻繁に繰り返される場合には、エンジンの始動や停止の基準になる閾値を変更することにより、無駄なエンジンの始動や停止を防止する車両制御装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−205000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の如き従来の車両制御装置では、エンジンの始動や停止がタイヤのスリップ状態に与える影響を何ら考慮していなかった。このため、例えば車両がコーナーを走行している途中でエンジンの始動や停止が自動的に行われた場合には、これらエンジンの始動や停止に伴う慣性モーメントの変化によってタイヤのスリップ状態が変化してしまい、横滑り防止装置(ESC:Electronic Stability Control)等にて行われるスリップ抑制のための自動制御や、運転者にて行われるステアリングの手動操作に、好ましくない影響を与える可能性があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、エンジンの始動や停止がタイヤのスリップ状態に与える影響に基づいて、エンジンの始動や停止の制御を行うことができる、車両制御装置、車両制御方法、及び車両制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の車両制御装置は、エンジン及びモータを備えたハイブリッド車両の走行経路の先方走行区間において当該エンジンを始動又は停止させた場合における、タイヤのスリップ状態の変化量を予測するスリップ変化量予測手段と、前記スリップ変化量予測手段にて予測されたタイヤのスリップ状態の変化量に基づいて、前記エンジンの始動又は停止を制御するエンジン制御手段とを備える。
【0007】
また、請求項2に記載の車両制御装置は、請求項1に記載の車両制御装置において、前記スリップ変化量予測手段は、前記先方走行区間のスリップ区間における前記車両のエンジン始動前のスリップ角およびエンジン始動後のスリップ角を予測するとともに、該予測したエンジン始動前のスリップ角およびエンジン始動後のスリップ角に基づいてスリップ状態の変化量を算出し、前記エンジン制御手段は、当該スリップ状態の変化量が所定の閾値未満の場合に、前記車両のエンジン制御を行なわず、当該スリップ状態の変化量が所定の閾値以上の場合に、前記車両のエンジン制御を行うか否かを判断する。
【0008】
また、請求項3に記載の車両制御装置は、請求項2に記載の車両制御装置において、前記エンジンの運動エネルギーにより回生充電される充電池であって、前記モータの駆動電源となる充電池における、前記先方走行区間における充電状態を予測する充電状態予測手段を備え、前記エンジン制御手段は、前記スリップ状態の変化量が所定の閾値以上の場合に、前記車両が前記先方走行区間に至る前に前記エンジンを始動した場合において、前記先方走行区間における前記充電池の充電量が所定の上限充電量に達しないことが前記充電状態予測手段にて予測された場合には、前記車両が前記先方走行区間に至る前に前記エンジンを始動させる。
【0009】
また、請求項4に記載の車両制御装置は、請求項2に記載の車両制御装置において、前記エンジン制御手段は、前記スリップ状態の変化量が所定の閾値以上の場合に、前記車両が前記先方走行区間を走行した後に前記エンジンを始動した場合において、前記先方走行区間における前記充電池の充電量が所定の下限充電量に達しないことが前記充電状態予測手段にて予測された場合には、前記車両が前記先方走行区間を走行した後に前記エンジンを始動させる。
【0010】
また、請求項5に記載の車両制御方法は、エンジン及びモータを備えたハイブリッド車両の走行経路の先方走行区間において当該エンジンを始動又は停止させた場合における、タイヤのスリップ状態の変化量を予測するスリップ変化量予測ステップと、前記スリップ変化量予測ステップにおいて予測されたタイヤのスリップ状態の変化量に基づいて、前記エンジンの始動又は停止を制御するエンジン制御ステップとを含む。
【0011】
また、請求項6に記載の車両制御プログラムは、請求項5に記載の車両制御方法をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の車両制御装置、請求項5に記載の車両制御方法、及び請求項6に記載の車両制御プログラムによれば、エンジンを始動又は停止させた場合に予測されるタイヤのスリップ状態の変化量に基づいて、エンジンの始動又は停止を制御するので、エンジンを始動又は停止させることによるタイヤのスリップ状態の変化を軽減することができ、エンジンの始動又は停止が車両制御や運転感覚に与える影響を軽減することができる。
【0013】
また、請求項2に記載の車両制御装置によれば、スリップ状態の変化量が所定の閾値未満の場合に、車両のエンジン制御を行なわず、スリップ状態の変化量が所定の閾値以上の場合に、車両のエンジン制御を行うか否かを判断するので、スリップ状態の変化の程度に応じて車両のエンジン制御を行うか否かの判断の要否を決定でき、エンジンの始動又は停止に伴うスリップ状態の変化が車両制御や運転感覚に与える影響を軽減することができる。
【0014】
また、請求項3に記載の車両制御装置によれば、先方走行区間における充電池の充電量が所定の上限充電量に達しないことが予測された場合に、車両が先方走行区間に至る前にエンジンを始動させるので、先方走行区間でエンジン走行を行った場合であっても充電池の充電量が上限充電量に達することがないため、充電池の過充電を招くことなくエンジンを制御することができる。
【0015】
また、請求項4に記載の車両制御装置によれば、先方走行区間における充電池の充電量が所定の下限充電量に達しないことが予測された場合に、車両が先方走行区間を走行した後にエンジンを始動させるので、先方走行区間後にエンジン走行を行った場合であっても先方走行区間では充電池の充電量が下限充電量に達することがないため、充電池の過放電を招くことなくエンジンを制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両制御装置を例示するブロック図である。
【図2】車両制御処理のフローチャートである。
【図3】エンジンの始動が、タイヤに加わる垂直抗力に与える影響を説明するための概念図である。
【図4】スリップ角とコーナリングフォースとの関係を示すグラフである。
【図5】エンジン制御処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る車両制御装置、車両制御方法、及び車両制御プログラムの実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。ただし、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
(基本的概念)
本実施の形態では、エンジン及びモータを備えたハイブリッド車両の走行経路の先方走行区間において当該エンジンを始動又は停止させた場合における、タイヤのスリップ状態の変化量を予測し、予測されたタイヤのスリップ状態の変化量に基づいて、エンジンの始動又は停止を制御する。
タイヤのスリップ状態としては、「スリップ角」と「スリップ率」を挙げることができる。すなわち、縦置きレイアウトのエンジンの始動又は停止は、主としてスリップ角に影響を与え、横置きレイアウトのエンジンの始動又は停止は、主としてスリップ率に影響を与える。本実施の形態では、縦置きレイアウトのエンジンを備えた車両を対象に、スリップ角の変化量を予測する場合について説明する。
また、スリップ状態は、各タイヤ毎に異なることが考えられるが、本実施の形態では、操舵輪となるタイヤのスリップ状態を予測する場合について説明する。
また、タイヤのスリップ状態に対しては、エンジン始動とエンジン停止のいずれも影響を与え得るが、以下では、主として、エンジン始動による影響を考慮する場合について説明する。
【0019】
(構成)
最初に、実施の形態に係る車両制御装置の構成について説明する。図1は、本実施の形態に係る車両制御装置を例示するブロック図である。車両制御装置1は車両に搭載されており、図1に示すように、現在位置検出処理部2、車速センサ3、通信部4、制御部5、及びデータ記録部6を備えている。車両は、縦置きレイアウトのエンジンとモータとを備えたハイブリッド車両(プラグインハイブリッド車両を含む)として構成されている。
【0020】
(構成−車両制御装置−現在位置検出処理部)
現在位置検出処理部2は、車両制御装置1が搭載された車両の現在位置を検出する現在位置検出手段である。具体的には、現在位置検出処理部2は、GPS、地磁気センサ、距離センサ、又はジャイロセンサ(いずれも図示省略)の少なくとも一つを有し、現在の自車両の位置(座標)及び方位等を公知の方法にて検出する。
【0021】
(構成−車両制御装置−車速センサ)
車速センサ3は、車両の車速を検出する車速検出手段であり、例えば車軸の回転数に比例する車速パルス信号等を制御部5に出力する。この車速センサ3としては、公知の車速センサを用いることができる。
【0022】
(構成−車両制御装置−通信部)
通信部4は、車両制御に必要な情報を受信する受信手段である。この通信部4は、例えば、道路情報を配信する道路情報センタとネットワークを介して無線通信を行ったり、他車両との間で車車間通信を行うものであり、公知の無線通信装置を用いることができる。
【0023】
(構成−車両制御装置−制御部)
制御部5は、車両制御装置1を制御する制御手段であり、具体的には、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを格納するためのRAMの如き内部メモリを備えて構成されるコンピュータである。特に、本実施の形態に係る車両制御プログラムは、任意の記録媒体又はネットワークを介して車両制御装置1にインストールされることで、制御部5の各部を実質的に構成する。
【0024】
この制御部5は、機能概念的に、スリップ変化量予測部5a、エンジン制御部5b、及び充電状態予測部5cを備えている。スリップ変化量予測部5aは、エンジン及びモータを備えたハイブリッド車両の走行経路の先方走行区間(車両の現在位置より先方の走行区間)において当該エンジンを始動又は停止させた場合における、タイヤのスリップ状態の変化量を予測するスリップ変化量予測手段である。エンジン制御部5bは、スリップ変化量予測部5aにて予測されたタイヤのスリップ状態の変化量に基づいて、エンジンの始動又は停止を制御するエンジン制御手段である。充電状態予測部5cは、エンジンの運動エネルギーにより回生充電される充電池であって、モータの駆動電源となる充電池における、先方走行区間における充電状態を予測する充電状態予測手段である。これらの制御部5の各部によって実行される処理の詳細については後述する。
【0025】
(構成−車両制御装置−データ記録部)
データ記録部6は、車両制御装置1の動作に必要なプログラム及び各種のデータを記録する記録手段であり、例えば、外部記憶装置としてのハードディスク(図示省略)の如き磁気的記録媒体を用いて構成されている。ただし、ハードディスクに代えてあるいはハードディスクと共に、フラッシュメモリの如き半導体型記憶媒体、又はDVDやブルーレイディスクの如き光学的記録媒体を含む、その他の任意の記録媒体を用いることができる。
【0026】
このデータ記録部6は、地図情報データベース(以下、データベースをDBと略記する)6aを備えている。この地図情報DB6aは、地図情報を格納する地図情報格納手段である。「地図情報」は、例えばリンクデータ(リンク番号、接続ノード番号、道路座標、道路種別、道路幅、車線数、走行規制等)、ノードデータ(ノード番号、座標)、地物データ(信号機、道路標識、ガードレール、建物等)、施設データ(各施設の位置、各施設の種別等)、地形データ、及び道路形状データ等を含んで構成されている。
【0027】
(車両制御処理)
次に、このように構成された車両制御装置1によって実行される車両制御処理について説明する。図2は車両制御処理のフローチャートである(以下の各処理の説明ではステップを「S」と略記する)。この車両制御処理は、例えば、車両制御装置1に電源が投入された後、所定の周期にて繰り返し起動される。なお、車両制御処理を実行する前提として、公知のナビゲーション装置により、車両の出発地から目的地までの走行経路が設定されているものとする。
【0028】
図2に示すように、車両制御処理が開始されると、スリップ変化量予測部5aは、車両の先方走行区間において、道路形状が所定量以上変化する区間(以下、スリップ区間)を特定する(SA1)。具体的には、スリップ変化量予測部5aは、現在位置検出処理部2により検出された車両の現在位置に基づき、先方走行区間の道路形状を地図情報DB6aから取得する。この際における先方走行区間は、例えば、車両の現在位置から所定距離(例えば3km)だけ先の位置までの区間や、車両の現在位置から所定時間(例えば5分)だけ先の位置までの区間とする。あるいは、車両の出発地から目的地までの走行経路を設定する際に、車両の出発地から目的地までの全区間を、先方走行区間としてもよい。また、この際における道路形状としては、例えば、タイヤのスリップ角の変化に影響を与える道路形状として、道路の曲率を取得する。この他にも、道路形状として、道路の勾配等を取得してもよい。道路形状が所定量以上変化する区間であるか否かの判断は、例えば、道路の曲率が所定の曲率(例えば、500m)以上である場合に、所定量以上変化する区間であると判断する。
【0029】
そして、スリップ変化量予測部5aは、当該特定したスリップ区間の摩擦係数を取得する(SA2)。具体的には、スリップ変化量予測部5aは、通信部4を介して、道路情報センタとネットワークを介して無線通信を行ったり、他車両との間で車車間通信を行ったりすることにより、スリップ区間の摩擦係数を取得する。あるいは、車両の現在位置の摩擦係数と、スリップ区間の摩擦係数とで、相互に大きな差異がないと考えられる場合には、車両が備える横滑り防止装置等の車両制御データから現在位置の摩擦係数を公知の方法により推定等し、この摩擦係数をスリップ区間の摩擦係数としてもよい。その他、地図情報DB6aに道路の摩擦係数が格納されている場合には、地図情報DB6aから摩擦係数を取得してもよい。また、このように取得した摩擦係数に対して、通信部4を介して気象センタ等から取得した気象情報に基づいて補正を行ってもよく、例えば、スリップ区間で降雨がある場合には、摩擦係数を所定値又は所定率だけ低減させてもよい。
【0030】
次いで、スリップ変化量予測部5aは、スリップ区間におけるタイヤのスリップ角を予測する(SA3)。具体的には、SA1で取得した道路形状と車速センサ3から取得した車速とに基づいて、スリップ区間の各位置におけるタイヤの操舵角と旋回軌道を算定し、この旋回軌道を車両が旋回する際の横加速度を算定する。そして、この横加速度を発生させるために必要な横力を算定し、この横力、車両の現在の垂直荷重(以下、変化前垂直荷重)、及びSA2で取得した摩擦係数に基づいて、タイヤのスリップ角を算定する。これら各値の具体的な算定方法については公知の方法を適用することができるので、その詳細な説明は省略する。なお、変化前垂直荷重は、例えば、車両の車重をタイヤの数で単純に除算することで算定してもよく、あるいは、車両の乗車人数や積載荷重を車重に積算した値をタイヤの数で除算することで算定してもよい。これら各パラメータは、予めデータ記憶部に記憶させておき、必要に応じて呼び出して使用もよく、あるいは、必要に応じて運転者が車両制御装置1に入力してもよい。
【0031】
また、スリップ角の予測に際しては、運転者の運転指向を考慮してもよい。例えば、運転者の運転履歴情報をデータ記録部6に蓄積しておき、この運転履歴情報の中から、スリップ区間と同様の道路形状を過去に運転した際の車速を取得して旋回軌道等の算定に使用してもよい。この場合には、運転者の運転指向に応じたスリップ角を予測でき、スリップ角の予測精度を高めることが可能となる。
【0032】
また、スリップ角の予測に際しては、車両の制御内容を考慮してもよい。例えば、車両の横滑り防止装置の制御ロジックに基づき、スリップ区間におけるタイヤの操舵角の自動制御内容を予測し、この予測結果に基づいてタイヤの操舵角を補正してもよい。この場合には、車両の制御内容に応じたスリップ角を予測でき、スリップ角の予測精度を高めることが可能となる。
【0033】
次いで、スリップ変化量予測部5aは、エンジン始動による慣性モーメントの変動がスリップ角に与える影響を予測する(SA4)。このため、スリップ変化量予測部5aは、エンジン始動によるタイヤの垂直抗力の変化分を算定する。図3は、エンジンの始動が、タイヤに加わる垂直抗力に与える影響を説明するための概念図である。この図3に示すように、エンジン駆動部の慣性モーメント=I、エンジン駆動部の角速度=ω、エンジンの中心からタイヤの中心までの距離=rとすると、エンジン始動によるタイヤの垂直抗力の変化分=ΔFは、ΔF=I*(dω/dt)*rとして算定できる。これら各パラメータは、予めデータ記憶部に記憶させておき、必要に応じて呼び出して使用することができる。あるいは、エンジン始動に伴うタイヤの垂直抗力の変化分自体を、予め算定してデータ記憶部に記憶させておき、必要に応じて呼び出して使用してもよい。なお、実際には、エンジン始動によるタイヤの垂直抗力の変化分は、エンジンのマウント構造やサスペンション等によって減衰されることが考えられるため、この減衰量を公知の方法で特定してタイヤの垂直抗力の変化分を補正等してもよい。
【0034】
次いで、スリップ変化量予測部5aは、タイヤの垂直抗力の変化分に基づく、スリップ角の変化分を求める。図4は、スリップ角とコーナリングフォースとの関係を示すグラフ(マップ)である。この図4のグラフには、横軸をスリップ角(単位=度)、縦軸を車両のコーナリングフォース(単位=kgf)とし、これらスリップ角とコーナリングフォースとの関係を、車両が取り得る複数の垂直荷重(図4では、100kgf、200kgf、300kgf)毎に示している。このグラフは、予めデータ記憶部に記憶させておき、必要に応じて呼び出して使用することができる。具体的には、スリップ変化量予測部5aは、スリップ区間におけるコーナリングフォースを公知の方法により算定する。そして、スリップ変化量予測部5aは、変化前垂直荷重とコーナリングフォースに基づいて、図4のグラフから、スリップ区間におけるエンジン始動前のタイヤのスリップ角(以下、変化前スリップ角)を求める。また、スリップ変化量予測部5aは、エンジン始動後にタイヤに加わる垂直荷重(以下、変化後荷重)を算定する。この変化後荷重の算定は、変化前荷重から、先に算定したタイヤの垂直抗力の変化分を加算又は減算(図3に示すように、タイヤの垂直抗力の変化分が鉛直下方に加わるタイヤについては加算、タイヤの垂直抗力の変化分が鉛直上方に加わるタイヤについては減算)することで行う。そして、変化後垂直荷重とコーナリングフォースに基づいて、図4のグラフから、スリップ区間におけるエンジン始動後のタイヤのスリップ角(以下、変化後スリップ角)を求める。次いで、スリップ変化量予測部5aは、変化後スリップ角から変化前スリップ角を減算することにより、エンジンの始動によるタイヤのスリップ角の変化分を求める。例えば、変化前荷重=300、コーナリングフォース=300である場合、変化前スリップ角=約8となり、変化後荷重=200、コーナリングフォース=300である場合、変化後スリップ角=約11となるため、エンジンの始動によるタイヤのスリップ角の変化分=約3となる。
【0035】
その後、図2において、スリップ変化量予測部5aは、エンジン始動がスリップ角に与える影響が大きいか否かを判定する(SA5)。具体的には、SA4で算定したスリップ角の変化分が所定の閾値(例えば、0.5度)以上である場合に、エンジン始動がスリップ角に与える影響が大きいものと判定する。ここで、影響が大きくないと判定された場合(SA5、No)、エンジン制御を行う必要がないものとし、車両制御処理を終了する。
【0036】
なお、SA3からSA5までの処理は、操舵輪となるタイヤ毎に行い、いずれか一つのタイヤのスリップ角の変化分が所定の閾値以上である場合には、エンジン始動がスリップ角に与える影響が大きいものと判定する。ただし、操舵輪となるタイヤの全てのスリップ角の変化分が所定の閾値以上である場合に、エンジン始動がスリップ角に与える影響が大きいものと判定してもよい。あるいは、操舵輪となるタイヤのスリップ角の変化分の平均値に基づいて、エンジン始動がスリップ角に与える影響が大きいか否かを判定してもよい。
【0037】
そして、エンジン始動がスリップ角に与える影響が大きくない(所定の閾値未満)と判定された場合(SA5、No)、エンジン制御を行う必要がないものとし、車両制御処理を終了する。
一方、エンジン始動がスリップ角に与える影響が大きい(所定の閾値以上)と判定された場合(SA5、Yes)、スリップ変化量予測部5aは、スリップ区間でエンジン始動が行われるか否かを予測する(SA6)。具体的には、スリップ変化量予測部5aは、車両の充電池から取得した現在の充電状態(SOC:State Of Charge)、SA1で取得したスリップ区間における道路形状、及び車速センサ3から取得した車速と、車両のハイブリッドシステムにおいてエンジン始動が行われる所定条件とに基づいて、スリップ区間でエンジン始動が行われるか否かを予測する。例えば、スリップ区間において充電池の充電量が所定の下限充電量値以下になる場合には、スリップ区間でエンジン始動が行われるものと予測する。そして、エンジン始動が行われないと判定された場合(SA7、No)、エンジン制御を行う必要がないものとし、車両制御処理を終了する。一方、エンジン始動が行われると判定された場合(SA7、Yes)、エンジン制御を行うべく、エンジン制御処理(SA8)を実行する。
【0038】
(車両制御処理−エンジン制御処理)
次に、エンジン制御処理(SA8)について説明する。図5は、エンジン制御処理のフローチャートである。この処理において、充電状態予測部5cは、エンジン始動を早めた場合における、スリップ区間での充電池の充電状態を予測する(SB1)。エンジン始動を早めた場合とは、スリップ区間に至る直前の区間(例えば、スリップ区間の始点よりも、エンジン始動が可能な所定距離だけ前方の区間。以下、直前区間)にエンジン始動させた場合を意味する。具体的には、地図情報DB6aから取得した直前区間及びスリップ区間の道路形状と、車速センサ3から取得した車速とに基づいて、スリップ区間におけるモータによる電力消費量と、同区間において車両の回生ブレーキで回生される充電量を算定し、これら電力消費量及び充電量と、車両の充電池から取得した現在の充電状態とに基づいて、スリップ区間における充電池の充電状態を予測する。すなわち、充電池には保護のために充電量の上限充電量と下限充電量が設定されており、充電量が上限充電量以上である場合には、モータのみによる走行を行うことで充電量を低下させ、充電量が下限充電量以下である場合には、エンジンのみによる走行を行うことで発電機を駆動して充電量を上昇させ、充電量がこれら上限充電量と下限充電量の間の範囲にある場合には、走行状態に応じてエンジンとモータを組み合わせて走行する。このため、エンジン始動を制御する上では、充電池の充電状態を考慮する必要があるため、このステップにおいて充電池の充電状態を予測し、この予測結果に基づいて以降の各判定を行う。
【0039】
そして、充電状態予測部5cは、SB1で予測した充電池の充電状態に基づいて、スリップ区間において充電池の充電量が所定の上限充電量に達するか否かを判定する(SB2)。そして、上限充電量に達しない場合には(SB2、No)、直前区間においてエンジン始動させた場合であっても、スリップ区間では充電池の充電量が上限充電量に達しないことからエンジン停止する必要がないため、エンジン制御部5bは、直前区間においてエンジン始動させるためのスケジュール制御を行う(SB3)。例えば、スケジュール制御は、エンジン制御を行う位置の座標(ここでは、直前区間の座標)と、エンジン制御の内容(ここでは、エンジン始動)とを、相互に対応付けてデータ記録部6に記録しておく。そして、エンジン制御部5bは、所定間隔で、現在位置検出処理部2により検出された車両の現在位置と、データ記録部6に記録されたエンジン制御を行う位置の座標とに基づいて、エンジン制御を行うべき位置に車両が到達したか否かを判定し、到達したと判定された場合には、エンジン制御を行う(以下、各スケジュール制御において同じ)。これにてエンジン制御処理を終了して、図2の車両制御処理に戻る。
【0040】
一方、上限充電量に達する場合(SB2、Yes)、充電状態予測部5cは、車両の現在位置からスリップ区間に至るまでの区間(以下、道路形状変化前区間)において充電池の充電電力を消費させる制御を実施した場合において、スリップ区間において充電池の充電量が上限充電量に達するか否かを判定する(SB4)。つまり、充電池の充電量を事前に低下させることで、スリップ区間において充電池の充電量が上限充電量に達することを回避できるか否かを判定する。例えば、道路形状変化前区間において、充電池の電力によって発電機を力行させてエンジンを燃焼を伴わない範囲で回転させることにより、充電池の充電電力を消費させることを想定する(特開平8−79914参照)。そして、この場合における充電池の電力消費量を算定し、この電力消費量と、車両の充電池から取得した現在の充電状態とに基づいて、スリップ区間において充電池の充電量が上限充電量に達するか否かを判定する。
【0041】
そして、上限充電量に達しない場合には(SB5、No)、SB3と同様に、スリップ区間では充電池の充電量が上限充電量に達しないことからエンジン停止する必要がないため、エンジン制御部5bは、道路形状変化前区間において充電量を低下させる制御を実施すると共に、直前区間においてエンジン始動させるためのスケジュール制御を行う(SB6)。
【0042】
一方、上限充電量に達する場合(SB5、Yes)、充電状態予測部5cは、エンジン始動を遅らせた場合における、スリップ区間での充電池の充電状態を予測する(SB7)。エンジン始動を遅らせた場合とは、スリップ区間を通過した直後の区間(例えば、スリップ区間の終点よりも、エンジン始動が可能な所定距離だけ後方の区間。以下、直後区間)にエンジン始動させた場合を意味する。つまり、SB1からSB5は、直前区間でエンジン始動することによって、スリップ区間でエンジン始動することを回避するための処理であるが、このような回避ができないことがSB2及びSB5の判定結果から分かるため、次に、直後区間でエンジン始動することによって、スリップ区間でエンジン始動することを回避することを試みる。具体的には、地図情報DB6aから取得したスリップ区間の道路形状と、車速センサ3から取得した車速とに基づいて、スリップ区間におけるモータによる電力消費量と、同区間において車両の回生ブレーキで回生される充電量を算定し、これら電力消費量及び充電量と、車両の充電池から取得した現在の充電状態とに基づいて、スリップ区間における充電池の充電状態を予測する。
【0043】
そして、充電状態予測部5cは、SB7で予測した充電池の充電状態に基づいて、スリップ区間において充電池の充電量が所定の下限充電量に達するか否かを判定する(SB8)。そして、下限充電量に達しない場合には(SB8、No)、直後区間においてエンジン始動させた場合であっても、スリップ区間では充電池の充電量が下限充電量に達しないことからエンジン始動する必要がないため、エンジン制御部5bは、スリップ区間ではエンジン始動させず、直後区間においてエンジン始動させるためのスケジュール制御を行う(SB9)。これにてエンジン制御処理を終了して、図2の車両制御処理に戻る。
【0044】
一方、下限充電量に達する場合(SB8、Yes)、充電状態予測部5cは、道路形状変化前区間において充電池の充電量を増加させる制御を実施した場合において、スリップ区間において充電池の充電量が下限充電量に達するか否かを判定する(SB10)。つまり、充電池の充電量を事前に増加させることで、スリップ区間において充電池の充電量が下限充電量に達することを回避できるか否かを判定する。例えば、減速時の回生充電量を公知の方法により増加させることを想定する。
【0045】
そして、この場合における充電池の電力消費量を算定し、この電力消費量と、車両の充電池から取得した現在の充電状態とに基づいて、スリップ区間において充電池の充電量が下限充電量に達するか否かを判定する(SB11)。下限充電量に達しない場合には(SB11、No)、SB8と同様に、スリップ区間では充電池の充電量が下限充電量に達しないことからエンジン始動する必要がないため、エンジン制御部5bは、道路形状変化前区間において充電量を増加させる制御を実施すると共に、直後区間においてエンジン始動させるためのスケジュール制御を行う(SB12)。これにてエンジン制御処理を終了して、図2の車両制御処理に戻る。
【0046】
一方、下限充電量に達する場合(SB11、Yes)、図2の車両制御処理のSA5で判定を行う際に使用する閾値を、所定値だけ大きくする(例えば、閾値を0.6度とする)(SB13)。つまり、これまでの処理ではスリップ区間におけるエンジン始動を回避できないため、エンジン始動がスリップ角に与える影響が大きいか否かを判定するための閾値を緩和した上で、エンジン制御処理を終了して、図2の車両制御処理に戻る。
【0047】
再び、図2の車両制御処理において、エンジン制御処理(SA8)が終了した後、スリップ変化量予測部5aは、エンジン始動がスリップ角に与える影響を再度判定する必要があるか否かを判定する(SA9)。ここでは、図5のエンジン制御処理のSB10で閾値が所定値だけ大きくされた場合には、再度判定する必要があると判定し(SA9、Yes)、SA5に移行して、SB10で大きくされた閾値に基づく判定を行う。一方、図5のエンジン制御処理がSB3、SB6、SB9、又はSB12を経て終了した場合には、再度判定する必要はないと判定し(SA9、No)、車両制御処理を終了する。
【0048】
(効果)
このように本実施の形態によれば、エンジンを始動又は停止させた場合に予測されるタイヤのスリップ状態の変化量に基づいて、エンジンの始動又は停止を制御するので、エンジンを始動又は停止させることによるタイヤのスリップ状態の変化を軽減することができ、エンジンの始動又は停止が車両制御や運転感覚に与える影響を軽減することができる。
【0049】
また、スリップ状態の変化量が所定の閾値未満の場合に、車両のエンジン制御を行なわず、スリップ状態の変化量が所定の閾値以上の場合に、車両のエンジン制御を行うか否かを判断するので、スリップ状態の変化の程度に応じて車両のエンジン制御を行うか否かの判断の要否を決定でき、エンジンの始動又は停止に伴うスリップ状態の変化が車両制御や運転感覚に与える影響を軽減することができる。
【0050】
また、先方走行区間における充電池の充電量が所定の上限充電量に達しないことが予測された場合に、車両が先方走行区間に至る前にエンジンを始動させるので、先方走行区間でエンジン走行を行った場合であっても充電池の充電量が上限充電量に達することがないため、充電池の過充電を招くことなくエンジンを制御することができる。
【0051】
また、先方走行区間における充電池の充電量が所定の下限充電量に達しないことが予測された場合に、車両が先方走行区間を走行した後にエンジンを始動させるので、先方走行区間後にエンジン走行を行った場合であっても先方走行区間では充電池の充電量が下限充電量に達することがないため、充電池の過放電を招くことなくエンジンを制御することができる。
【0052】
〔実施の形態に対する変形例〕
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0053】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、上述の内容に限定されるものではなく、発明の実施環境や構成の細部に応じて異なる可能性があり、上述した課題の一部のみを解決したり、上述した効果の一部のみを奏することがある。例えば、エンジンの始動や停止がステアリング操作に与える影響を完全に排除できていない場合であっても、この影響を従来に比べて軽減できている限りにおいて、本発明の課題は解決されている。
【0054】
(車両について)
上記実施の形態では、縦置きレイアウトのエンジンを備えたハイブリッド車両を例示したが、本発明は、横置きレイアウトのエンジンを備えたハイブリッド車両や、内燃機関とフライホイールを組み合わせたハイブリッド車両にも、適用することができる。例えば、横置きレイアウトのエンジンを備えたハイブリッド車両の場合には、上記の説明における「スリップ角」を「スリップ率」に読み替えた上で、スリップ角の予測方法を公知のスリップ率の予測方法で代替することにより、説明できる。また、内燃機関とフライホイールを組み合わせたハイブリッド車両の場合には、フライホイールの向きに応じて、スリップ角への影響を軽減するための車両制御と、スリップ率への影響を軽減するための車両制御のうち、エンジンの始動や停止に伴う影響の大きい方を軽減する車両制御を採用することができる。
【0055】
(エンジンの停止制御について)
上記実施の形態では、スリップ区間におけるエンジン始動を回避するためのエンジン制御を行う例について説明したが、スリップ区間におけるエンジン停止を回避するためのエンジン制御を行ってもよい。後者の制御は、前者の制御と同様に行うことができるが、以下の点において異なる。すなわち、図2の車両制御処理のSA4では、エンジン停止による慣性モーメントの変動がスリップ角に与える影響を予測する。具体的には、エンジン停止によるタイヤの垂直抗力の変化分を算定する。この変化分は、エンジン始動によるタイヤの垂直抗力の変化分を正負逆転させた値となる。また、SA6では、スリップ区間でエンジン停止が行われるか否かを予測し、SA7では、エンジン停止が行われる場合に、エンジン制御処理を実行する。このエンジン制御処理において、SB1では、エンジン停止を早めた場合の充電池の充電状態を予測し、SB2では、充電量が下限充電量に達するか否かを判定し、下限充電量に達しない場合には、SB3において、直前区間でエンジンを停止するようにスケジュール制御を行う。一方、下限充電量に達する場合、SB4において、道路形状変化前区間において充電池の充電電力を増加させる制御を実施した場合における、スリップ区間の充電池の充電量を予測し、SB5において、充電量が下限充電量に達するか否かを判定する。そして、下限充電量に達しない場合には、SB6において、直前区間でエンジンを停止すると共に、道路形状変化前区間において充電池の充電電力を増加させる制御を行うように、スケジュール制御を行う。一方、下限充電量に達する場合、SB7において、エンジン停止を遅らせた場合の充電池の充電状態を予測し、SB8では、充電量が上限充電量に達するか否かを判定し、上限充電量に達しない場合には、SB9において、直後区間でエンジンを停止するようにスケジュール制御を行う。一方、上限充電量に達する場合、SB10において、道路形状変化前区間において充電池の充電電力を低下させる制御を実施した場合における、スリップ区間の充電池の充電量を予測し、SB11において、充電量が上限充電量に達するか否かを判定し、上限充電量に達しない場合には、SB12において、直後区間でエンジンを停止すると共に、道路形状変化前区間において充電池の充電電力を低下させる制御を行うように、スケジュール制御を行う。上限充電量に達する場合には、SB13において、スリップ角の閾値を上げる。
【0056】
(エンジン制御処理について)
上記実施の形態では、エンジン制御処理において、充電池の充電状態に基づく制御を行っているが、この充電状態に代えて、あるいは充電状態と共に、他の要素に基づく制御を行ってもよい。例えば、充電池の充電状態を考慮する必要がない場合において、スリップ区間でのエンジン始動が予測される場合には、単純に、直前区間でエンジン始動を行うようにしてもよく、あるいは、直後区間でエンジン始動を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 車両制御装置
2 現在位置検出処理部
3 車速センサ
4 通信部
5 制御部
5a スリップ変化量予測部
5b エンジン制御部
5c 充電状態予測部
6 データ記録部
6a 地図情報DB

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン及びモータを備えたハイブリッド車両の走行経路の先方走行区間において当該エンジンを始動又は停止させた場合における、タイヤのスリップ状態の変化量を予測するスリップ変化量予測手段と、
前記スリップ変化量予測手段にて予測されたタイヤのスリップ状態の変化量に基づいて、前記エンジンの始動又は停止を制御するエンジン制御手段と、
を備える車両制御装置。
【請求項2】
前記スリップ変化量予測手段は、前記先方走行区間のスリップ区間における前記車両のエンジン始動前のスリップ角およびエンジン始動後のスリップ角を予測するとともに、該予測したエンジン始動前のスリップ角およびエンジン始動後のスリップ角に基づいてスリップ状態の変化量を算出し、
前記エンジン制御手段は、当該スリップ状態の変化量が所定の閾値未満の場合に、前記車両のエンジン制御を行なわず、当該スリップ状態の変化量が所定の閾値以上の場合に、前記車両のエンジン制御を行うか否かを判断する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記エンジンの運動エネルギーにより回生充電される充電池であって、前記モータの駆動電源となる充電池における、前記先方走行区間における充電状態を予測する充電状態予測手段を備え、
前記エンジン制御手段は、前記スリップ状態の変化量が所定の閾値以上の場合に、前記車両が前記先方走行区間に至る前に前記エンジンを始動した場合において、前記先方走行区間における前記充電池の充電量が所定の上限充電量に達しないことが前記充電状態予測手段にて予測された場合には、前記車両が前記先方走行区間に至る前に前記エンジンを始動させる、
請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記エンジン制御手段は、前記スリップ状態の変化量が所定の閾値以上の場合に、前記車両が前記先方走行区間を走行した後に前記エンジンを始動した場合において、前記先方走行区間における前記充電池の充電量が所定の下限充電量に達しないことが前記充電状態予測手段にて予測された場合には、前記車両が前記先方走行区間を走行した後に前記エンジンを始動させる、
請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項5】
エンジン及びモータを備えたハイブリッド車両の走行経路の先方走行区間において当該エンジンを始動又は停止させた場合における、タイヤのスリップ状態の変化量を予測するスリップ変化量予測ステップと、
前記スリップ変化量予測ステップにおいて予測されたタイヤのスリップ状態の変化量に基づいて、前記エンジンの始動又は停止を制御するエンジン制御ステップと、
を含む車両制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法をコンピュータに実行させる車両制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−52693(P2013−52693A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190168(P2011−190168)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】