説明

車両制御装置

【課題】PCS制御が作動した場合において、自車両と当該自車両周囲の物体との衝突を想定した制御を行うことのできる車両制御装置を提供する。
【解決手段】自車両の周囲の物体を検出する物体検出手段と、自車両が右折または左折したか否かを判断する右左折判断手段と、物体検出手段によって検出された物体と自車両とが衝突する可能性を判断する衝突判断手段と、衝突判断手段が物体と自車両とが衝突する可能性が高いと判断した場合に第1の制御を行う第1の制御手段と、右左折判断手段によって自車両が右折または左折したと判断され、かつ衝突判断手段によって自車両が右折または左折した先に存在する物体と衝突する可能性が高いと判断された場合には第2の制御を行う第2の制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に関し、より特定的には、車両に搭載される車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自車両の周囲の物体(他車両など)を対象物として検出して、当該検出結果に基づいて自車両と物体との衝突の可能性が高いか否か等を判断し、当該判断結果に応じて自車両を制御する車両制御装置が実用化されている。
【0003】
なお、上記判断結果に応じて車両を制御するとは、具体的には、警報等によりドライバーに対して警告を行ったり、自車両に備わった各種装置を制御して当該自車両のブレーキを作動させたりする、いわゆる衝突被害低減制御や衝突回避制御と称される制御のことである(以下、PCS(Pre-Clash Safety)制御と称す)。
【0004】
例えば、上記制御を行う装置の一例として、特許文献1に開示されている技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−138748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に開示されている技術は、自車両が右折し対向車線を横切るときにおいて、当該自車両の前方で物体を検出した場合、上述したような制御を抑制する(行わない、または行いにくくする)ものである。これによって、自車両が対向車線を横切っている間に対向車線の中(例えば交差点内)で減速したり停止したりするのを回避して、対向車線を横切るときの自車両の制動を適切なものとするものである。
【0007】
ところで、自車両が右折することを想定した場合、以下に説明するような状況が発生することがある。例えば、自車両が対向車線を横切って進んだ先に、歩行者がいた場合を想定する。この場合、自車両に備わったレーダ装置等によって上記歩行者が検出されたとする。そして、車両制御装置が仮に当該歩行者と自車両との衝突の可能性は高い(接触する可能性が高い)と判断した場合、自車両のブレーキが作動することがある。
【0008】
なお、これによって歩行者との接触は避けられるが、一方で自車両のブレーキが作動したことにより、例えば自車両と同じ進路で進むことを想定していた(右折する予定である)後続車両や、対向車との衝突の可能性が高くなる。
【0009】
上記特許文献1に開示されている技術は、自車両が右折し対向車線を横切るときにおいて、当該自車両の前方において他車両を検出した場合、上記制御を抑制するものでるため、上述したような状況に対処できない。つまり、自車両が対向車線を横切っている間に対向車線の中(例えば交差点内)で減速したり停止したりするのを回避したとしても、横切った先(例えば右折した先)に歩行者がいた場合、自車両は停止することとなる。すなわち、例えば、自車両が交差点内で停止した場合、後続車両や、対向車との衝突を想定した制御を行うものではない。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、PCS制御が作動した場合において、自車両と当該自車両周囲の物体との衝突を想定した制御を行うことのできる車両制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。すなわち第1の発明は、自車両に搭載され、当該自車両と物体との衝突に備えた制御を行う車両制御装置である。
上記車両制御装置は、自車両の周囲の物体を検出する物体検出手段と、自車両が右折または左折したか否かを判断する右左折判断手段と、物体検出手段によって検出された物体と自車両とが衝突する可能性を判断する衝突判断手段と、衝突判断手段が物体と自車両とが衝突する可能性が高いと判断した場合に第1の制御を行う第1の制御手段と、右左折判断手段によって自車両が右折または左折したと判断され、かつ衝突判断手段によって自車両が右折または左折した先に存在する物体と衝突する可能性が高いと判断された場合には第2の制御を行う第2の制御手段とを備える。
【0012】
第2の発明は、上記第1の発明において、第2の制御手段が行う第2の制御は、自車両に搭載されている灯火類および警笛の少なくとも一方を制御して自車両の周囲の他車両に注意喚起を促すことを特徴とする。
【0013】
第3の発明は、上記第1の発明において、第2の制御手段が行う第2の制御は、自車両の装備品を制御して行う自車両の乗員を保護する衝突被害低減動作である。また、第2の制御手段が衝突被害低減動作を行うタイミングは右左折判断手段によって自車両が右折または左折したと判断されなかった場合に行う衝突被害低減動作よりも早いことを特徴とする。
【0014】
第4の発明は、上記第3の発明において、第2の制御手段は自車両のシートベルト、エアバッグ、およびシートの少なくとも何れか1つを制御して衝突被害低減動作を行うことを特徴とする。
【0015】
第5の発明は、上記第1の発明において、自車両のドライバーの運転操作を示す情報を取得し当該ドライバーの運転操作を示す情報に基づきドライバーは予め定められた操作を行ったか否かを判断しドライバーは予め定められた操作を行ったと判断した場合、第1の制御および第2の制御を解除する解除手段を、さらに備える。
【発明の効果】
【0016】
上記第1の発明によれば、自車両が右折または左折したと判断され、かつ当該自車両が右折または左折した先に存在する物体と衝突する可能性が高いと判断された場合には第2の制御を行うので、自車両と当該自車両周囲の物体との衝突を想定した制御を行うことができる。つまり、自車両が右左折した後に物体が検出され、PCS制御が作動し、当該自車両が停止した場合には様々なリスクが存在するところ、このような場合、上記第2の制御を行うので、衝突に備えることができる。
【0017】
上記第2の発明によれば、自車両周囲の他車両に対して、当該自車両の存在を予め報知することができるので、PCS制御によって自車両が停止したとしても、各他車両のドライバーは自車両に注意が向き早めのブレーキ操作を促すことができ、二次衝突を低減することができる。
【0018】
上記第3および上記第4発明によれば、PCS制御によって自車両が停止した場合、当該自車両前方の物体との衝突は避けられたけれども、自車両周囲の他車両との衝突の可能(二次衝突)は高くなる。この場合、仮に二次衝突が発生したとしても、その被害を低減することができる。
【0019】
上記第5の発明によれば、例えば、二次衝突の可能性が無くなった場合、ドライバー自身の操作により上記第2の制御を解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】自車両mvが右折する場合に想定される事故を説明するための図
【図2】一実施形態に係る車両制御装置の構成の一例を示すブロック図
【図3】一実施形態に係る車両制御装置の制御ECU1において行われる処理の流れの一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0021】
まず、本発明に係る車両制御装置の概要について簡単に説明する。なお、以下では、当該車両制御装置は車両(以下、自車両mvと称す)に搭載されているものとして説明する。さらに、以下では特に断りのない限り、自車両mv以外の車両のことを他車両と称す。
【0022】
上記車両制御装置は、自車両mvに搭載された物体検出装置(車載レーダ装置や車載カメラ等)により自車両mv周囲に存在する物体(他車両等)を検出する。そして、上記車両制御装置は、例えば、当該検出結果に基づいて自車両mvと物体との衝突の可能性を判断し、仮に衝突の可能性が高いと判断した場合、自車両mvのブレーキ装置を制御し衝突を回避したり、シートベルトを巻き取るなどして衝突した際の被害を軽減したりする。なお、上記車両制御装置が行う上述したような制御は、衝突被害低減制御や衝突回避制御と称され、以下の説明ではPCS(Pre-Clash Safety)制御と称す。
【0023】
ところで、自動車事故を車両の行動類型から考察したとき、自動車事故は車両が直進している場合に発生する場合が多く、次いで右左折の場合が多い。
【0024】
ここで、図1を用いて自車両mvが右折する場合に想定される事故を説明する。図1は、自車両mvが右折する場合に想定される事故を説明するための図である。
【0025】
図1に示すように、自車両mvは右折するために、図1で示したAの位置からBの位置に進行したと想定する(矢印ar1)。なお、自車両mvの対向車線には矢印ar2に示す方向に直進してくる他車両ov1が存在するものとする。
【0026】
さらに、自車両mvの後方には後続車両として他車両ov2が存在するものとし、当該他車両ov2は、自車両mvと同じ進路をとるものとする(矢印ar3)。つまり、他車両ov2も自車両mvと同じく右折するものとする。
【0027】
ここで、図1に示したように、自車両mvが右折した先に、道路を横切っている歩行者obが存在するものとする。そして、自車両mvに備わった物体検出装置によって上記歩行者obが検出され、車両制御装置が当該歩行者obと自車両mvとの衝突の可能性が高い(接触する可能性が高い)と判断したと仮に想定する。この場合、車両制御装置は、例えば、自車両mvに備わったブレーキ装置を制御してブレーキをかけるなどして、自車両mvは例えば図1で示したBの位置で停止する。
【0028】
このとき、直進している他車両ov1のドライバーは自車両mvが急に止まったと感じ、ブレーキ操作が遅れることがある。そして、結果として他車両ov1と自車両mvとが衝突してしまう可能性があり、これが車両の右左折時に発生する事故の一例と言える(他車両ov2についても同様)。そこで、本発明に係る車両制御装置は、自車両mvが右左折しPCS制御が作動した場合に、衝突に備えた支援を行うものである。
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明するが、これら実施の形態で説明した態様は、単に具体例を示すものであり、本願発明の技術的範囲を何ら限定するものではない。よって、本願の効果を奏する範囲において、任意の構成を採用することが可能である。
【0030】
図2は、本発明の一実施形態に係る車両制御装置の構成の一例を示すブロック図である。なお、以下の説明においても当該車両制御装置は車両(以下、自車両mvと称す)に搭載されているものとして説明する。そして、以下でも特に断りのない限り、自車両mv以外の車両のことを他車両と称す。
【0031】
図2において、車両制御装置は、制御ECU(Electrical Control Unit)1を備えている。この制御ECU1には、物体検出装置2、車両情報取得装置3、ブレーキECU(Electrical Control Unit)4、表示装置5、音声出力装置6、および車室内装置7等が接続されている。
【0032】
上記物体検出装置2は、典型的には、レーダ装置であり、より具体的にはミリ波レーダ装置、レーザーレーダ装置等である。なお、物体検出装置2がレーダ装置であった場合、当該物体検出装置2は、自車両mvの前部や側部に設置され、当該自車両mvの前方外側や側方外側に向けて電磁波を照射し、自車両mvの周囲を監視する。
【0033】
なお、上記物体検出装置2(レーダ装置)は、自車両mvの後部に設置され、当該自車両mvの後方外側に向けて電磁波を照射し、自車両mv後方を監視してもよい。
【0034】
具体的には、例えば、物体検出装置2がレーダ装置であった場合、自車両mvの外側に向けて電磁波を照射し、当該レーダ装置の検出範囲内に存在する物体(具体的には他車両や、歩行者や、自転車を含む二輪車等)を検出する。そして、レーダ装置は、例えば、自車両mv周囲に存在する物体を検出し、当該物体を検出したことを示す信号を、制御ECU1に出力する。
【0035】
なお、上記物体検出装置2は、カメラ(単眼、ステレオの別は問わない)であってもよく、具体的には例えば、CCDカメラ、CMOSカメラ、赤外線カメラ等を挙げることができる。なお、物体検出装置2がカメラであった場合、当該物体検出装置2は、自車両mvの前部や側部に設置され、例えば、所定時間間隔で自車両mvの前方や側方を撮像し、当該撮像した画像を制御ECU1に出力する。
【0036】
また、物体検出装置2(カメラ)は、自車両mvの後部に設置され、例えば、所定時間間隔で自車両mvの後方を撮像し、当該撮像した画像を制御ECU1に出力してもよい。
【0037】
上記車両情報取得装置3は、自車両mvの走行に関する情報を取得する。なお、車両情報取得装置3の一例として、例えば、自車両mvが走行している際の車速を検出する車速検出装置や、自車両mvのステアリングハンドルのステアリングロッドに取り付けられ当該ステアリングハンドルに与えられた操舵トルクを検出する操舵トルク検出装置や、操舵角を検出する操舵角検出装置等を挙げることができる。
【0038】
また、上記車両情報取得装置3は、自車両mvのドライバーがブレーキペダルを踏んだことを示す情報やアクセルペダルを踏んだことを示す情報なども取得する。
【0039】
さらに、上記PCS制御を行わせるためのスイッチが自車両mvに備わっている場合、上記車両情報取得装置3は、当該スイッチが押下されたことを示す情報(ON/OFFを示す情報)を取得してもよい。
【0040】
上記ブレーキECU4は、自車両mvのマスターシリンダやディスクブレーキにおける油圧や空気圧等を制御し、制御ECU1からの指示に従って、例えば、ドライバーのブレーキ操作がなくともブレーキを作動させる。
【0041】
上記表示装置5は、自車両mvの運転席に着席したドライバーから視認可能な位置(運転席前面の計器盤等の中等)に設けられる、液晶ディスプレイ、発光ダイオード(LED)、有機ELディスプレイなどの表示媒体である。また、上記表示装置5は、ハーフミラー(反射ガラス)を運転席前面のフロントガラスの一部に設け、当該ハーフミラーに情報等の虚像を蛍光表示するヘッドアップディスプレイ(Head-Up Display)等、他の表示装置であってもよい。これによって、自車両mvのドライバーは、運転席に着席し正面(走行方向)を向いたまま、表示装置5に表示された情報を確認することができる。
【0042】
また、本実施形態に係る車両制御装置における上記表示装置5は、制御ECU1からの指示に応じた表示をドライバーに対して行うことのできる装置だけではなく、例えば他車両に対して自車両mvの存在を知らせることのできる装置も含む。
【0043】
ここで、他車両に対して自車両mvの存在を知らせることのできる装置として、例えば、自車両mvの後部に装着された赤光色の標識灯(いわゆるテールランプ)や、進行方向変更を点滅表示するために自車両mvの前部および後部に装着された信号灯(いわゆるウィンカー)や、ヘッドライト等を挙げることができる。
【0044】
なお、他車両に対して自車両mvの存在を知らせることのできる装置として、上述した装置に限られるものではない。つまり、他車両に自車両mvの存在を示すための表示装置であれば特にテールランプやウィンカーなどに限られるものではない。
【0045】
上記音声出力装置6は、各種情報を音声で自車両mvのドライバーに提供するものである。具体的には、音声出力装置6は、制御ECU1からの指示に応じた警告や情報をドライバーに報知する。また、音声出力装置6は、具体的には、自車両mvに備わっているスピーカー等である。
【0046】
また、本実施形態に係る車両制御装置における上記音声出力装置6は、制御ECU1からの指示に応じた警告をドライバーに報知する装置だけではなく、外部に警報等を報知する、例えば自車両mvの警笛(いわゆるクラクション、ホーン)も含む。
【0047】
上記車室内装置7は、具体的には、自車両mvのシートベルトを駆動させるための装置や、シート(運転席や助手席、後部座席等)を駆動させるための装置や、エアバッグ(フロント、ニー、カーテンシールド等)を駆動させるための装置などのことである。そして、これら装置は制御ECU1の指示に従って、シートを駆動させたり、シートベルトを巻き取ったりすることにより自車両mvの乗員の拘束性を高めたり、エアバッグのセーフィング解除をしたりして、衝突被害を低減する。なお、これら装置の一例であって、衝突した際に自車両mvの乗員の被害を軽減する装置であればこれに限られるものではない。
【0048】
次に、図3を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る車両制御装置の制御ECU1において行われる処理の流れの一例を説明する。
【0049】
図3は、本発明の一実施形態に係る車両制御装置の制御ECU1において行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0050】
なお、図3に示すフローチャートは、例えば、制御ECU1が当制御ECU1内に備えられている図示しない記憶部に記憶されている所定のプログラムを実行することにより行われる。また、図3に示すフローチャートの処理は、制御ECU1の電源がON(例えば自車両mvの始動/停止スイッチがON)されることによって開始される。
【0051】
まず、図3のステップS11において、制御ECU1は、スイッチ(SW)がONであるか否かを判断する。そして、SWがONであると判断した場合(YES)、次のステップS12に処理を進める。一方、制御ECU1は、SWがONではない、つまりSWがOFFであると判断した場合(NO)、当該フローチャートでの処理を終了する。
【0052】
ステップS12において、制御ECU1は、車両情報取得装置3から自車両mvの車両情報を取得する。なお、当該ステップS12において、制御ECU1が車両情報取得装置3から取得する車両情報とは、例えば、上記PCS制御を行わせるためのスイッチが、ドライバーによって押下されているか否かを示す情報などである。そして、制御ECU1は、次のステップS13に処理を進める。
【0053】
ステップS13において、制御ECU1は、PCS制御モードに入るか否かを判断する。そして、制御ECU1は、当該ステップS13での判断を肯定(YES)した場合、次のステップS14に処理を進め、判断を否定(NO)した場合、ステップS12に処理を戻す。つまり、制御ECU1により当該ステップS13での判断が肯定された場合、PCS制御を開始する。
【0054】
なお、ここでいうPCS制御の開始とは、自車両mv前方の他車両や歩行者などを検出して、仮に自車両mvが当該他車両などと衝突の可能性が高い場合に上述したようなPCS制御を行うことのできる状態であることをいう。
【0055】
ステップS14の処理に進んで、制御ECU1は、自車両mvの右左折方向で物体を検出したか否かを判断する。
【0056】
まず、「条件1」として、制御ECU1は、自車両mvは右左折したか否かを判断する。例えば、制御ECU1は、上記車両情報取得装置3からの情報、すなわち、操舵角検出装置が検出し、当該操舵角検出装置から出力された自車両mvの操舵角を示す情報に基づいて、自車両mvは右左折したか否かを判断する。なお、制御ECU1は、例えば、自車両mvの操舵角が予め定められた値を超えている時間が所定時間継続しているか否かで判断すればよい。
【0057】
また、自車両mvに、カーナビゲーションシステム(いわゆるカーナビ)が搭載されている場合、当該カーナビゲーションシステムからの情報に基づき自車両mvは右左折したか否かを判断してもよい。
【0058】
次いで、「条件2」として制御ECU1は、物体を検出したか否かを判断する。例えば、自車両mvに搭載されている物体検出装置2がレーダ装置であった場合、制御ECU1は、当該レーダ装置から出力される信号を取得する。なお、自車両mv前方で当該レーダ装置が物体を検出しなかった場合、当該レーダ装置は制御ECU1に対してターゲットは0(ターゲットは無し)であることを示す信号を出力する。言い換えると、制御ECU1はレーダ装置から物体を検出したことを示す情報を取得した場合、当該制御ECU1は物体を検出したと判断する。
【0059】
なお、上記「条件2」の判断として、自車両mvに搭載されている物体検出装置2がレーダ装置であった場合を例に説明したが、物体検出装置2はカメラであってもよい。例えば、自車両mvに搭載されている物体検出装置2がカメラであった場合、制御ECU1は、カメラから得られた画像に基づき物体を検出したか否かを判断してもよい。以下、制御ECU1は、カメラ2から得られた自車両mvの前方の画像から物体を検出する場合を説明する。
【0060】
一例として、制御ECU1は、カメラから得られた画像の所定方向にソーベルフィルタ処理を施し、処理後のソーベル画像内における輝度の差を用いて、当該ソーベル画像内からエッジ点を抽出する処理を行う。そして、制御ECU1は、当該ソーベル画像から抽出したエッジ点を用いて、ソーベル画像内における輝度の差を用いて、濃淡エッジを強調させたエッジ画像(画像内の各点を輝度値とした白黒白エッジ画像)を作成する。その後、制御ECU1は、図示しない記憶部に記憶されている様々な物体の画像パターンのテンプレート画像を用いて、エッジラインが抽出された画像に対するパターンマッチング処理を行って、物体は存在するか否か、つまり物体を検出したか否かを判断する。
【0061】
なお、このとき、制御ECU1は、図示しない記憶部に記憶されている様々な物体の画像パターンのテンプレート画像を用いて、エッジラインが抽出された画像に対するパターンマッチング処理を行い物体を検出すると共に、当該検出された物体の種類(他車両、歩行者、自転車、バイク等)を特定してもよい。
【0062】
そして、上述した「条件1」および「条件2」を満たした場合、つまり自車両mvは右左折し、かつ右左折した方向において物体を検出したと制御ECU1が判断した場合、ステップS14の判断は肯定(YES)される。
【0063】
なお、図1に示した場面においては、自車両mvは右折するために図1で示したAの位置からBの位置に進行し、かつ当該進行した先には物体(図1の例では歩行者ob)が存在する。そのため、図1に示した場面においては、上記ステップS14での判断は肯定(YES)される。
【0064】
一方、上記ステップS14において、制御ECU1は、上述した「条件1」および「条件2」を満たしていないと判断した場合、当該ステップS14の判断を否定(NO)する。
【0065】
ステップS15の説明に進んで、制御ECU1は、衝突の可能性があるか否かを判断する。例えば、図1で示した場面では、制御ECU1は、自車両mvと歩行者obとが接触する可能性はあるか否かを判断する。
【0066】
なお、当該ステップS15の判断においては、例えば、自車両mvに搭載されている物体検出装置2がレーダ装置であった場合、当該レーダ装置から取得した信号を用いて、自車両mvに対する、歩行者obの相対距離、相対速度の情報を算出する。具体的には、制御ECU1は、レーダ装置が照射した電磁波と受信した反射波との和および差や送受信タイミング等を用いて、自車両mvに対する、歩行者obの相対距離、相対速度の情報を算出する。
【0067】
また、当該ステップS15の判断においては、例えば、自車両mvに搭載されている物体検出装置2がカメラであった場合、当該カメラが撮像した自車両mvの前方画像を用いて自車両mvに対する、歩行者obの相対距離、相対速度等の情報を算出してもよい。具体的には、図1で示した場面では、カメラが撮像した自車両mv前方の画像から歩行者obを検出し、自車両mvの前方を所定時間間隔で撮像し、当該撮像された複数の画像や自車両mvの走行速度等から自車両mvに対する、歩行者obの相対距離、相対速度等の情報を算出してもよい。
【0068】
そして、制御ECU1は、例えば上述した方法で算出された相対距離、相対速度等の情報に基づき、自車両mvと歩行者obとが接触する可能性はあるか否かを判断する。
【0069】
なお、自車両mvと歩行者obとが接触する可能性はあるか否かの判断にあたっては、制御ECU1は、自車両mvの速度や舵角等から推定される当該自車両mvの軌道から、自車両mvと歩行者obとが接触する可能性はあるか否かを判断してもよい。
【0070】
さらに、制御ECU1は、当該ステップS15の判断においては、物体検出装置2から出力される情報に基づき、自車両mvに対する、当該自車両mv周囲の他車両(図1の例であると他車両ov1や他車両ov2)の相対距離、相対速度の情報を算出してもよい。
【0071】
また、物体検出装置2として一例として、レーダ装置、カメラを例に説明したが、上述したステップS14およびステップS15の処理において、レーダ装置またはカメラを用いて処理を行ってもよいし、レーダ装置とカメラとを併用して処理を行ってもよい。
【0072】
そして、ステップS15において、制御ECU1は、自車両mvと歩行者obとが接触する可能性はあると判断した場合(YES)、次のステップS16に処理を進める。一方、制御ECU1は、自車両mvと歩行者obとが接触する可能性はないと判断した場合(NO)、ステップS12に処理を戻す。
【0073】
ステップS16において、制御ECU1は、PCS制御を開始する。以下、本発明の一実施形態に係る車両制御装置が行うPCS制御について説明する。
【0074】
上述したように、当該ステップS16に処理が進むのは、上記ステップS15において、制御ECU1が、自車両mvと歩行者obとが衝突する可能性がある(接触する可能性がある)と判断した場合である。
【0075】
ここで、図1を再度参照しつつ説明すると、自車両mvは右折するために、図1で示したAの位置からBの位置に進行したとする(矢印ar1)。そして、制御ECU1によって、自車両mvと歩行者obとが接触する可能性があると判断された場合である。つまり、本来であれば、自車両mvのドライバーは右折した先の歩行者等の存在を確認して右折するものであるが、例えば、よそ見などをしており、右折した先の歩行者に気付かなかった場合等が考えられる。
【0076】
この場合、制御ECU1は、例えばブレーキECU4に指示しブレーキ装置を制御し、自車両mvを停止させたり、音声出力装置6(具体的には自車両mvに備わっているスピーカー)を制御して自車両mvのドライバーに危険を報知したりする。なお、このようなPCS制御のことを本説明では、便宜上、一般的なPCS制御と称す。
【0077】
なお、上記ステップS14において、制御ECU1は、検出された物体の種類(他車両、歩行者、自転車、バイク等)が特定されていれば、ドライバーに危険を報知する際に、どのような種類の物体を衝突の危険があるかなどを示す情報を表示や音声や情報を、表示装置5や音声出力装置6を制御してドライバーに報知してもよい。
【0078】
そして、本発明の一実施形態に係る車両制御装置が行うPCS制御については、上記一般的なPCS制御に加えて、以下の制御もさらに行う。
【0079】
(I)周囲の他車両への報知
制御ECU1は、上記一般的なPCS制御とともに、周囲の他車両へ報知を行う。具体的には、制御ECU1は、表示装置5を制御して自車両mvのウィンカー、テールランプ、ヘッドライトなどを点滅、点灯させたり、音声出力装置6を制御して警笛を鳴らしたりする。つまり、図1で示した場面を例に説明すると、他車両ov1や他車両ov2に自車両mvの存在を予め報知することで、各他車両のドライバーに対して自車両mvに注意を向けさせる。これによって、PCS制御によって自車両mvが停止したとしても、各他車両のドライバーは自車両mvに注意が向き早めのブレーキ操作を促すことができる。
【0080】
なお、図2のブロック図での図示は省略したが、自車両mv、他車両ov1、他車両ov2に、いわゆる車車間通信を行うことのできる装置がそれぞれ搭載されている場合、当該装置によって、自車両mvは前方に歩行者obと接触する可能性があり、停止する可能性がある旨の情報を、車両ov1、他車両ov2に報知してもよい。
【0081】
(II)各種作動閾値の変更
制御ECU1は、上記一般的なPCS制御とともに、具体的には車室内装置7の作動閾値を変更する。具体的には、制御ECU1は、エアバッグの作動閾値を、より作動しやすい作動閾値に変更する。例えば、通常、センサが検知した加速度が50m/ss以上であった場合にエアバッグが作動するところを、一例として30m/ssに変更する。
【0082】
また、自車両mvの変形量、自車両mvへの圧力(例えば歪みゲージによる計測)の値に基づいてエアバッグの作動閾値が設定してある場合、よりエアバッグが作動やすい値に変更する。さらに、エアバッグの作動閾値が、TTC(Time To Collision)に基づいて設定してある場合、例えば、TTCが0.2sec下回った場合にエアバッグが作動するところを、0.5secに変更する。
【0083】
なお、上記TTCとは、図1の例で説明すると、例えば、自車両mvと他車両ov2との衝突予測時間のことである。また、当該TTCの算出においては、上記ステップS15において相対速度、相対距離を算出した場合、当該相対速度および相対距離から算出することができる。
【0084】
さらに、シートを駆動させたり、シートベルトを巻き取ったりすることにより自車両mvの乗員の拘束性を高めることにより、衝突被害を低減するための作動閾値をTTC(Time To Collision)に基づいて設定してある場合、制御ECU1は、これら作動閾値を、より大きな値に変更する。つまり、例えば、作動閾値としてTTCが2secを下回った場合に上述したような衝突の被害を低減するような動作を行うと設定されている場合、作動閾値を3secとする。
【0085】
すなわち、衝突した際に自車両mvの乗員の被害を軽減する装置の作動閾値を、より作動しやすい閾値に変更する。
【0086】
つまり、PCS制御によって自車両mvが停止したとしても、上記(I)によって、各他車両のドライバーは自車両mvに注意が向き早めのブレーキ操作を促すことができる。言い換えると、図1の例であれば、PCS制御によって自車両mvが停止し、歩行者obとの接触が避けることはできたとしても、他車両ov1や他車両ov2のドライバーは自車両mvが単に急に止まったものであると感じて、次に他車両ov1や他車両ov2と自車両mvとの衝突の可能がある。従って、上記(I)によって、各他車両に報知することにより各他車両のドライバーに対して自車両mvに注意を向けさせ早めのブレーキ操作を促すことができる。
【0087】
また、図1の例において、PCS制御によって自車両mvが停止し、歩行者obとの接触が避けられた後は、自車両mvのドライバーは自身の運転操作によって、例えば歩行者obとの距離を置くなどして安全に交差点を通過することが望まれる。しかしながら、右折した先の道路が狭い場合など、歩行者obとの距離を置き安全に交差点を通過することが困難な場合も想定される。
【0088】
言い換えると、例えば図1に示したような交差点において、PCS制御によって自車両mvが停止した場合、歩行者obとの接触は避けられたけれども、他車両ov1や他車両ov2と自車両mvとの衝突の可能は高くなる。
【0089】
つまり、二次衝突(車両ov1や他車両ov2と自車両mvとの衝突)に備えて、上記(II)のように作動閾値を変更することにより、仮に二次衝突が発生したとしても、その被害を低減することができる。
【0090】
図2のフローチャートの説明に戻って、ステップS17において、制御ECU1は上記ステップS16において実行したPCS制御を解除するか否かを判断する。具体的には、当該ステップS17において、制御ECU1は、例えば、上記車両情報取得装置3から、自車両mvのドライバーがブレーキペダルを踏んだことを示す情報やアクセルペダルが踏まれたことを示す情報などを取得し、ブレーキペダルやアクセルペダルが踏まれた場合、PCS制御を解除する。
【0091】
つまり、例えば、ドライバーがアクセルペダルを踏んだ場合、図1の例であると、歩行者obと距離を置き安全に交差点を通過したことが予想される。そして、上述した二次衝突の可能性は低くなったと判断し、制御ECU1は、当該ステップS17の判断を肯定し(YES)、ステップS19においてPCS制御を解除する。
【0092】
一方、当該ステップS17の判断が否定(NO)された場合でも、制御ECU1は、PCS制御を実行してから一定時間が経過しかた否かを判断する。そして、制御ECU1は、PCS制御を実行してから一定時間(例えば5秒)が経過した場合、上述した二次衝突の可能性は低くなったと判断し、当該ステップS18の判断を肯定し(YES)、ステップS19においてPCS制御を解除する。
【0093】
なお、ステップS19において、制御ECU1は、PCS制御を解除するとともに、上記(II)で変更した作動閾値を元の値に戻す。
【0094】
ステップS110において、制御ECU1は、自車両のSWがOFFされたか否かを判断する。そして、制御ECU1は、SWがOFFであると判断した場合(YES)、当該フローチャートでの処理を終了する。一方、制御ECU1は、自車両のSWがOFFされていないと判断した場合(NO)、上記ステップS12に処理を戻す。
【0095】
なお、上述では自車両mvが右折する場合に想定される事故を想定して説明したが(図1参照)、同様の考え方で自車両mvが左折する場合に想定される事故についても適応可能である。さらには、図1では、車両が左側通行である国(例えば日本国内)の走行路面を想定して示したが、これに限られず車両が右側通行である国(例えば米国、欧州など)の走行路面においても適応可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明に係る車両制御装置は、PCS制御が作動した場合において、自車両と当該自車両周囲の車両との衝突を想定した制御を行うことのできる、車両に搭載される車両制御装置等として有用である。
【符号の説明】
【0097】
1…制御ECU
2…物体検出装置
3…車両情報取得装置
4…ブレーキECU
5…表示装置
6…音声出力装置
7…車室内装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両に搭載され、当該自車両と物体との衝突に備えた制御を行う車両制御装置であって、
前記自車両の周囲の物体を検出する物体検出手段と、
前記自車両が右折または左折したか否かを判断する右左折判断手段と、
前記物体検出手段によって検出された物体と前記自車両とが衝突する可能性を判断する衝突判断手段と、
前記衝突判断手段が前記物体と前記自車両とが衝突する可能性が高いと判断した場合に第1の制御を行う第1の制御手段と、
前記右左折判断手段によって前記自車両が右折または左折したと判断され、かつ前記衝突判断手段によって前記自車両が右折または左折した先に存在する物体と衝突する可能性が高いと判断された場合には第2の制御を行う第2の制御手段とを備える、車両制御装置。
【請求項2】
前記第2の制御手段が行う前記第2の制御は、前記自車両に搭載されている灯火類および警笛の少なくとも一方を制御して前記自車両の周囲の他車両に注意喚起を促すことを特徴とする、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記第2の制御手段が行う前記第2の制御は、前記自車両の装備品を制御して行う前記自車両の乗員を保護する衝突被害低減動作であり、
前記第2の制御手段が前記衝突被害低減動作を行うタイミングは前記右左折判断手段によって前記自車両が右折または左折したと判断されなかった場合に行う前記衝突被害低減動作よりも早いことを特徴とする、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記第2の制御手段は前記自車両のシートベルト、エアバッグ、およびシートの少なくとも何れか1つを制御して前記衝突被害低減動作を行うことを特徴とする、請求項3に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記自車両のドライバーの運転操作を示す情報を取得し当該ドライバーの運転操作を示す情報に基づき前記ドライバーは予め定められた操作を行ったか否かを判断し前記ドライバーは予め定められた操作を行ったと判断した場合、前記第1の制御および第2の制御を解除する解除手段を、さらに備える請求項1に記載の車両制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−180055(P2012−180055A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45376(P2011−45376)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】