説明

車両周辺画像表示装置

【課題】車両周辺画像表示装置において、既に装着が一般的になっている撮像手段を兼用して、新たに撮像手段を増設することなく、停車状態から発進する時の車両床下の監視機能を付加することにある。
【解決手段】撮像手段(11)を車両(1)の内部に格納するように駆動するアクチュエータ(13)を設け、車両(1)の床下にレンズユニット(14)を設け、このレンズユニット(14)と格納位置にある撮像手段(11)との間を光ファイバケーブル(28)で結び、撮像手段(11)により車両床下の映像を撮像して表示手段(12)により表示する制御手段(15)を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両周辺画像表示装置に係り、特に車両床下を監視可能な車両周辺画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、多くの場合、自動車は、車両床下には「何もないものだ」という暗黙の前提で運行される。道路交通法では、運行前点検に、車両床下を目視で点検するという項目があるが、この点検動作には、車両から降りてしゃがみ、車両下面を覗き込むという動作が必要であり、運転する度に実施するには不便であった。
近年、安価になったために、様々な分野で遠隔監視に応用される小型電子カメラを、常に、車両床下を監視できるように設置し、それを映し出すモニタ装置を運転席に取り付けることで、この不便が解消されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−138720号公報
【特許文献2】特開平9−175272号公報
【特許文献3】特開2002−77895号公報
【0004】
特許文献1に係る障害物検出装置は、専用の撮影手段によって撮影した車両の床下の空間の画像を基に、車両下方に存在する障害物を検出手段によって検出するものである。
特許文献2に係る車両用監視カメラは、車体先端寄り床部にカメラ保持部材を設け、このカメラ保持部材の先端に専用の撮影手段である床下カメラを装着し、カメラ保持部材により、床下カメラを、常時では車体床面近傍に格納する一方、使用時には車体下方に移動させて、車体床下の監視範囲を広く確保させるものである。
特許文献3に係る車載用監視カメラ装置は、複数の結像光学系から出力される結合光をそれぞれ光ファイバーを通して光学的インターフェイス装置にまで伝送し、この光学的インターフェイス装置において任意に選択された1つ又は複数の光を選択して出力し、その光を1つの撮像素子へ入射し、信号処理回路により映像信号とし、モニタに表示するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来、撮像手段としての小型電子カメラによって車両床下を監視してモニタ装置に映し出す場合に、車両運行前のわずかな時間しか機能しない専用の装置を装着することは、費用及び効果を考えるとデメリットの方が多かった。
また、車両を発進させる際、自動車の床下と地面との間が完全に死角となっており、子供が遊びで潜り込んでいたり、あるいは、犬等の動物が潜り込んでいる等の他、駐車場のロック板が床下にあるタイプでは、「施錠」状態となっているか否か等の状況を、運転席からでは全く確認することができなかった。
更に、小型電子カメラの普及に伴って、自動車には、撮像手段として、バックカメラを始め、サイドカメラ、フロントサイドカメラ等を工場出荷時に装着してある車種が増えているが、これらのバックカメラ、フロントカメラ、サイドカメラ等の各種撮像手段を利用しても、確認できない死角のため、確認が必要な場合には、その都度、車両から降りて目視にて確認しなければならず、不便であった。
また、上記の特許文献1、2では、専用の撮像手段(カメラ)を増設することで、直接の課題である「死角の解消」については解決できるが、いたずらに撮像手段(カメラ)の設置数が増え、重量の増加、配線の複雑化を招き、発進直前しか必要でないわりに、車両の維持・使用全体に不便さを増す要因になっていた。
【0006】
そこで、この発明の目的は、既に装着が一般的になっている撮像手段を兼用して、新たに撮像手段を増設することなく、停車状態から発進する時の車両床下の監視機能を付加する車両周辺画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、車両前方を撮像する撮像手段と、この撮像手段により撮像された画像を表示する表示手段と、前記撮像手段を車両内部に格納するように駆動するアクチュエータとを備える車両周辺画像表示装置において、車両の床下にレンズユニットを設け、このレンズユニットと格納位置にある前記撮像手段との間を光ファイバケーブルで結び、前記撮像手段により車両床下の映像を撮像して前記表示手段により表示する制御手段を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明の車両周辺画像表示装置は、新たに撮像手段を増設することなく、停車状態から発進する時の車両床下の監視を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は車両周辺画像表示のフローチャートである。(実施例)
【図2】図2は車両周辺画像表示装置のシステム構成図である。(実施例)
【図3】図3は車両周辺画像表示装置を備えた車両の側面図である。(実施例)
【図4】図4は車両周辺画像表示装置の構成図である。(実施例)
【図5】図5は通常時の撮像手段の位置を示す斜視図である。(実施例)
【図6】図6は格納時の撮像手段の位置を示す斜視図である。(実施例)
【図7】図7は通常時の映像伝達機構の位置を示す斜視図である。(実施例)
【図8】図8は格納時の映像伝達機構の位置を示す斜視図である。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明は、新たに撮像手段を増設することなく、停車状態から発進する時の車両床下の監視を行う目的を、既に装着が一般的になっている撮像手段を兼用して実現するものである。
【実施例】
【0011】
図1〜図8は、この発明の実施例を示すものである。
図3、図4において、1は車両、2は前輪、3は後輪、4は車両床パネル、5は車体パネル、6はフロントバンパである。このフロントバンパ6には、前面でナンバープレート7が装着されているとともに、このナンバープレート7の直下方でカメラ用開口部8が形成されている。
車両1には、車体パネル5で形成される車両前部の空間9内でかつフロントバンパ6の直後方で、車両周辺画像表示装置10が配設される。
この車両周辺画像表示装置10は、車両前方を撮像する既存の小型電子カメラでフロントカメラからなる撮像手段(図面上では「カメラ」と記す)11と、この撮像手段11により撮像された画像を表示する、例えば車両に搭載されたナビゲーションシステムのモニタ装置からなる表示手段12と、撮像手段11を車両内部に格納するように駆動する小型のサーボモータからなるアクチュエータ13と、車両1の床下を写し撮るレンズユニット14と、アクチュエータ13を作動制御するカメラコントローラとしての制御手段15とを備える。
【0012】
制御手段15には、図2に示すように、上記の撮像手段11と表示手段12とアクチュエータ13とが連絡するとともに、運転席で操作可能な画像切替スイッチとしての撮像投影スイッチ16と撮像手段11が格納されたときの位置(床下監視位置)を検出する格納位置検出スイッチ17と電源(ACC)18とが連絡し、さらに、車速やシフト位置の信号を取り込むCANバス19とが連絡している。シフト位置は、図3に示すように、セレクトレバー20に連絡した変速機コントローラ21からの信号によって制御手段15に取り込まれる。
【0013】
以下に、撮像手段11の取り付け状態について説明する。
図4〜図6に示すように、フロントバンパ6の裏面には、断面U字形状の固定ブラケット22が固定されいる。この固定ブラケット22には、ギヤ軸23が回動可能に支持されている。このギヤ軸23には、先端部に撮像手段11を取り付けた揺動ブラケット24の基端部が固設されている。揺動ブラケット24の側面から突出したギヤ軸23の一端部には、ギヤ25が装着されている。このギヤ25には、所定の取付手段でフロントバンパ6の裏面に取り付けられたアクチュエータ13のピニオン軸26のピニオン27が噛み合っている。
このような構造により、アクチュエータ13のピニオン軸26が回転すると、このピニオン軸26の回転に伴うピニオン27の回転によってギヤ25を介してギヤ軸23が回転し、このギヤ軸23の回転と一体となって揺動ブラケット24が揺動して、この揺動ブラケット24の先端の撮像手段11が、通常時に、図5に示すように、ナンバープレート7の下方に形成したカメラ用開口部8にフロントバンパ6の裏側から挿入されて突出する(展開状態)一方、格納時には、図6に示すように、揺動ブラケット24がギヤ軸23と共に車両後方に揺動して、フロントバンパ6の後方の内側の所定位置に格納される(格納状態)。
【0014】
レンズユニット14と所定の格納位置にある撮像手段11との間は、光ファイバケーブル28で結ばれる。
図7、図8に示すように、撮像手段11には、光ファイバケーブル28が映像伝達機構29で接続される。
この映像伝達機構29は、光ファイバケーブル28が接続するとともに撮像手段11に対向して光通路30を形成する接続部材31と、この接続部材31の光通路30内で所定の焦点距離Eを確保するように所定箇所に配置されたレンズ32とを備えている。接続部材31は、保持具33によって車体パネル5に保持されている。
制御手段15は、撮像手段11の格納状態・展開状態を、変速機のセレクトレバー20の位置と車両速度とによって自動的に制御し、運転席で操作可能な撮像投影スイッチ16のON・OFFにより、アクチュエータ13の作動によって撮像手段11を格納位置に移動させ、そして、レンズユニット14及び光ファイバケーブル28を通して撮像手段11により撮像された車両床下の映像R(図3、図4参照)を表示手段12に表示させる。これにより、運転者は、運転席に居ながらにして、車両1の床下の状況を確認することが可能になる。
よって、撮像手段11は、停車中にフロントバンパ6の後方に格納される機構を有し、この格納中には床下監視機能が稼動する。
【0015】
次に、この実施例に係る画像表示制御を、図1のフローチャートに基づいて説明する。
図1に示すように、制御手段15のプログラムがスタートすると(ステップA01)、先ず、車両速度が零(0km/h)か否かを判断し(ステップA02)、このステップA02がNOの場合には、この判断を継続する。
このステップA02がYESの場合には、セレクトレバー20の位置がニュートラル「N」か否かを判断し(ステップA03)、このステップA03がNOの場合には、前記ステップA02に戻す。
このステップA03がYESの場合には、アクチュエータ13の作動によって撮像手段11を格納位置(床下監視位置)に切り替え(ステップA04)、そして、撮像手段11の格納位置への切り替えが完了したか否かを判断し(ステップA05)、このステップA05がNOの場合には、この判断を継続する。
このステップA05がYESの場合には、映像投影スイッチ16がONかOFFかを判断する(ステップA06)。
このステップA06において映像投影スイッチ16がONと判断した場合には、その映像の信号を表示手段12に出力し(ステップA07)、この表示手段12においてカメラ映写モードに切り替えて車両1の床下の映像Rを表示する(ステップA08)。
一方、このステップA06において映像投影スイッチ16がOFFと判断した場合には、表示手段12においてナビゲーション表示モードに切り替える(ステップA09)。
前記ステップA08又は前記ステップA09の処理後は、前記ステップA02に戻す。
【0016】
この結果、この実施例においては、撮像手段11として既存のフロントカメラを利用することにより、専用のカメラを増設することなく、車両1の床下を撮像することができるので、車両重量の増加、配線の複雑化を避けることができる。
また、撮像手段11が格納位置にある時に、車両1の床下を撮像することが可能となり、よって、車両1の床下を撮像する専用のカメラを有しないため、カメラを駆動する構造を簡単にすることができる。
更に、運転者が車両1の床下を撮像したいときには、車両発進前が多く、車両発進前には、撮像手段11が格納位置にあり、既に車両1の床下を撮影可能な位置になっているため、車両1の床下の画像を直ぐに表示することが可能となる。
【0017】
なお、この発明においては、撮像手段としては、フロントカメラに限らず、前進走行中には使用しない他のカメラと兼用することも可能である。
また、建設機械のブルドーザ、構内用巨大トラック等の重機に応用すると、大きな利便性を付加できる。
更に、撮像手段として、カメラだけではなく、光を使う、例えば、レーザ測距センサにも応用でき、これにより、一つのセンサで様々な場所のセンシングが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
この発明の車両周辺画像表示装置を、各種車両に適用できる。
【符号の説明】
【0019】
1 車両
8 カメラ用開口部
10 車両周辺画像表示装置
11 撮像手段(カメラ)
12 表示手段
13 アクチュエータ
14 レンズユニット
15 制御手段
16 撮像投影スイッチ
17 格納位置検出スイッチ
28 光ファイバケーブル
29 映像伝達機構
30 光通路
31 接続部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前方を撮像する撮像手段と、この撮像手段により撮像された画像を表示する表示手段と、前記撮像手段を車両内部に格納するように駆動するアクチュエータとを備える車両周辺画像表示装置において、車両の床下にレンズユニットを設け、このレンズユニットと格納位置にある前記撮像手段との間を光ファイバケーブルで結び、前記撮像手段により車両床下の映像を撮像して前記表示手段により表示する制御手段を設けたことを特徴とする車両周辺画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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