説明

車両座席用の取り付けシステム

車両座席用の取り付けシステム
車両座席のための、特に、自動車座席のための取り付けシステムであって、円周方向に回転可能である軸方向に伸張するシャフト(7)と、回転可能に支持されるドライバ(21)が設けられる少なくとも1つの取り付け具(10)であって、前記取り付け具(10)を駆動又は解除するために、前記ドライバ(21)は固定要素(43)によって軸上に固定され、前記シャフト(7)は前記ドライバ(21)を回転させるために、円周方向に回転可能な固定方式で又は機械的に接続されて前記ドライバ(21)と協働する取り付け具(10)と、軸上の少なくとも1つの方向に前記シャフト(7)及びドライバ(21)の協働を固定するために、軸上で非可動式に前記シャフト(7)に据え付けられる少なくとも1つのクイックファスナ(50)とを備え、前記クイックファスナ(50)は、前記ドライバ(21)及び/又はその固定要素(43)と接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載の特徴を有する車両座席のための取り付けシステムに関する。
【0002】
この種類の取り付けシステムは、DE 103 52 630 B4から知られている。2つの取り付け具の一方において、シャフトがボスによって取り付け具の内側を支承し、一方で、シャフトに押し付けられるクイックファスナ(quick−fastener)は取り付け具の外側を支承する。従って、シャフトは、取り付け具に対して非可動式である。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、導入部で言及された種類の取り付けシステムを改良して、特に、軸の特殊変換(special transformation)を回避することである。この目的は、本発明に従えば、請求項1に記載の特徴を有する取り付けシステムによって達成される。従属項の主題は、有利な構成である。
【0004】
一方におけるクイックファスナと他方におけるドライバ及び/又はその固定要素とは、別個の構成要素(別個に構成される要素)である。従って、それらは異なる材料から、例えば、一方においてバネ鋼から及び他方において樹脂材料から成ることが可能であり、その結果、それぞれ異なる材料の最も好ましい特性が結合される。
【0005】
クイックファスナがドライバと及び/又はその固定要素と接続されることによって、シャフトの特定の変換の必要なしに、両方の軸方向においてシャフトの軸上の固定が得られる。クイックファスナは、一方向において、その取り付け具に対する支承のため、反対方向において、ドライバとの又はその固定要素との接続のため、シャフトの軸上安全装置として作用する。その結果、クイックファスナは、軸上の双方向においてシャフト7及びドライバ21の協働を固定する。2つの構成要素の何れによってクイックファスナが直接接続されるかは、ドライバ又は取り付け具の方向に依存する。両方向で、クイックファスナは、ドライバと間接的に接続される。
【0006】
円周方向に、シャフト及びドライバが回転可能に固定されるように接続され又は機械的に移動自在に接続されるので、クイックファスナとドライバ又はその固定要素との接続は、単純に構成され得る。例えば、フックによって形状適合式に協働するための軸方向に突出するフィンガ、特に、クリップ用のラグ(lug)が適切である。しかしながら、他の、好ましくは、自動閉鎖接続の可能性も選択され得る。このため、クイックファスナを取り付けるための時間は、実質的には変わらない。
【0007】
本発明は、ギア式取り付け具及び戻り止め取り付け具の双方で使用され得る。それは、車両座席の、又は車両座席の他の場所においても、背もたれ調節機構として使用され得る。クイックファスナは、取り付け具以外のアセンブリとも協働することが可能である。
【0008】
本発明は、以下に、図面に示される例示的な実施形態を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】クイックファスナが取り付けられる前の例示的な実施形態の斜視図を示す。
【図2】クイックファスナの斜視図を示す。
【図3】クイックファスナが取り付けられた後の例示的な実施形態の斜視図を示す。
【図4】クイックファスナの上面図を示す。
【図5】図4の線V−Vに沿ったクイックファスナの断面図を示す。
【図6】車両座席の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
自動車用の車両座席1は、座部3及び背もたれ4を有しており、背もたれ4の傾斜は座部3に対して調節可能である。背もたれ4の傾斜を調節するために、座部3と背もたれ4との間の移行領域に水平に配置されるシャフト7は、手動で、例えば、手動ハンドル5によって、又はモータ駆動式で、例えば、電気モータによって回転する。車両座席1の両側において、シャフト7は、回転可能に固定されるように取り付け具10に係合する。シャフト7は、円筒座標系の採用される方向データを定義する。シャフト7及び2つの取り付け具10は、背もたれ4の傾斜を調節するための取り付けシステムの構成要素である。
【0011】
各取り付け具10は、互いに対して回転可能な第1の取り付け部11及び第2の取り付け部12を有する。取り付け具10の取り付けによって、2つの取り付け部11及び12の一方は背もたれ4に割り当てられて、その構造と接続され、一方で、2つの取り付け部11及び12の他方は座部3に割り当てられて、その構造と固定的に接続される。2つの取り付け部11及び12の相対的な回転によって、背もたれ4の傾斜が調節される。
【0012】
ドライバ21は、取り付け具10の中央において回転可能に支持される。ドライバ21は、駆動軸7を受け入れるためのボアと共に中心に設けられる。ボアの外形は、駆動軸7の外形、この場合、スプラインシャフトの外形に一致する。シャフト7及びドライバは、好ましくは、回転可能に固定されるように結合される。しかしながら、円周方向において、シャフト7及びドライバ21は駆動することにより結合されるように、自由に移動することも出来る。好ましくは、ドライバ21は、一方の側において被覆ディスク又はフランジを有し、それによって、外側において2つの取り付け部11及び12の一方を支承し、2つの取り付け部11及び12の他方の側において、例えば、リング形状の、好ましくは、クリップオン式の固定要素43によって軸上に固定される。取り付け具10の更なる内部構造に関して、2つの基本的な種類が考えられる。
【0013】
第1の基本的な種類によれば、取り付け具10は、第1の取り付け部11及び第2の取り付け部12が位置の移動及び固定のためにギア装置によって、より正確には、この場合、例えば、DE 44 36 101 A1に記載された自己固定式である偏心遊星ギアシステムによって互いに接続されるギア式取り付け具として構成される。これに関連する開示は本明細書に明示的に組み込まれる。ギア装置を形成するために、外側歯車が第2の取り付け部12上に形成されて、内側歯付きリングが第1の取り付け部11上に形成される。この歯車及び歯付きリングは互いに噛み合う。歯車の外歯の歯先円の直径は、歯付きリングの内歯の歯元円の直径より少なくとも歯1本分の深さだけ小さい。少なくとも1つの歯の歯車及び歯付きリングの歯の数の対応する差によって、歯車上での歯付きリングの回転運動が可能になる。2つの取り付け部11及び12の一方は、好ましくは、ドライバ21に対する軸受けとして機能するカラーを有する。2つの取り付け部11及び12の他方を(その湾曲した外面で及び、好ましくは、滑動軸受けブシュによって)支持する2つの楔部が、(その湾曲した内面で)カラーに支持される。ドライバ21は、楔部の狭い側の間の隙間と係合するドライバ部を有する。楔部の相互に向かい合う広い側の各々は、円周方向に離れて楔部を押圧するバネの末端フィンガを受け入れる。
【0014】
楔部27(及びバネ)は、偏心方向の延長上で、歯車を係合部において歯付きリングの中に押し込む偏心器を画定する。(複数回)回転する回転シャフト7によって駆動が生ずると、まず最初にドライバ21上に、次に、ドライバ部によって、画定され且つ滑り軸受けブシュに沿って滑動する偏心器上に、トルクが伝達されて、偏心方向を移行させて、歯付きリングにおける歯車の係合部を移行させる。これは、揺動回転運動として、即ち、介在する揺動運動との相対的回転として表される。取り付け具10のこの駆動によって、背もたれ4の傾斜は、複数の使用位置間で連続して調節可能である。
【0015】
選択的に、一方では、背もたれ4の構造と固定的に接続され、他方では、座部3に割り当てられず且つそれによって開放可能に固定される取り付け部11又は12に対して枢動可能に支持される第3の取り付け部が設けられる。この構成は、背もたれ4の調節された傾斜を変更せずに、後部座席列へのアクセスを容易にするために、背もたれ4を自由に枢動可能にする。
【0016】
第2の基本的な種類によれば、取り付け具10は、戻り止め取り付け具として構成される。ここで、第1の取り付け部11及び第2の取り付け部12は、例えば、DE 10 2006 015 560 B3に記載されたように、互いに対して固定可能である。この関連する開示は、本明細書に明示的に組み込まれる。第2の取り付け部12は、直線的な誘導面で、一対に横方向で半径方向に1つの固定部ごとに誘導する誘導部を有する。固定部は、半径方向の外端部において、中空歯車として構成される第1の取り付け部11の歯付きリングと係合可能な待歯が設けられる。歯付きリング及び固定部が協働すると、取り付け具10は固定される。誘導部分は、各々の湾曲した支承面で、第1の取り付け部11の歯付きリング17を支承して、それにより、2つの取り付け部11及び12は互いに支持する。取り付け部11及び12の間に画定される取り付け空間に配置される偏心器が、回転可能な固定方式でドライバ21上に据え付けられ、又は少なくとも機械的にそれと接続される。バネ配置が、半径方向に移動可能な複数の固定部に影響を与え且つそれらに作用する偏心器に対して作用し、その結果、歯付きリングに係合するために、それらは半径方向に外側に押される。好ましくは、偏心器に又はドライバ21に回転可能な固定方式で据え付けられる制御ディスクが、固定部を元に戻すために、即ち、歯付きリングから半径方向に内側に引っ張るために、固定部と協働し、それにより、取り付け具10を解除して、2つの取り付け部11及び12は、ドライバ21、及びそれによって駆動される制御ディスクの偏心器の(小さい角度の)回転中に、互いに対して回転可能になる。従って、背もたれ4の傾斜は、複数の使用位置の間で着座用に調節可能である。
【0017】
双方の基本の種類に共通することは、クイックファスナ50が、シャフト7上で、その外側端部上から、取り付け具10まで、好ましくは、双方の取り付け具10の場合において、押されることである。取り付けシステムの更なる構成要素を構築するクイックファスナ50は、軸上に非可動式でその取り付け後に、シャフト7に据え付けられる。このために、円周方向に分散される複数(この場合、6個)の舌部50bが、クイックファスナ50の基体50aから半径方向に内側に(且つ取り付け具10から離れた方を向く方向で軸方向に)突出し、このような基体は、リング形状にシャフト7を少なくとも部分的に取り囲む。例えば、バネ鋼から構成されるクイックファスナ50の舌部50bは、付勢を受けてシャフト7を支承する。この摩擦抵抗のため、取り付け具10から離れた方を向く方向におけるシャフト7に対するクイックファスナ50の移動は、即ち、使用中に作用する力を考慮すると工具なしでは、実質的に不可能であり、且つクイックファスナ50が押し付けられている反対方向(取り付け具10の方を向く)において、それは非常に困難であって、取り付け具10に対するその支承のため、同様に不可能である。更に、舌部50b及びシャフト7のスプラインシャフト外形は、円周方向に形状適合する。
【0018】
また、取り付け具10、ひいてはドライバ21に対するシャフト7の移動を防ぐために、2つの可能な方向の一方のみにおいて取り付け具を支承するクイックファスナ50によって確実にされることであって、本発明によれば、クイックファスナ50は、取り付け具10の何れの側がシャフト7の外端部の方を向くかによって、ドライバ21と又はその固定要素43と接続される。従って、クイックファスナ50は、双方向において軸上でシャフト7及びドライバ21の協働を固定する。この接続のため、クイックファスナ50は、基体50aから軸方向に突出し、円周方向に分散され、且つ取り付け具10の方を向く、少なくとも1つの、好ましくは、複数(この場合、6個)のフィンガ50cを有する。フィンガ50cは、好ましくは、ドライバ21と、又は固定要素43と形状適合方式で協働する。それらは、例えば、ドライバ21又は固定要素43の後方に係合し、例えば、半径方向に内側を向くラグ50dとドライバ21の連続的な溝で係合するフック等として構成され得る。フィンガ50cの間で、好ましくは、交互に、更なる(この場合、6個の)軸方向に突出する部分50eが設けられ、それは、ドライバ21に対するクイックファスナ50の位置決めを容易にすることが出来る。
【符号の説明】
【0019】
1 車両座席
3 座部
4 背もたれ
5 手動ハンドル
7 シャフト
10 取り付け具
11 第1の取り付け部
12 第2の取り付け部
21 ドライバ
43 固定要素
50 クイックファスナ
50a 基体
50b 舌部
50c フィンガ
50d ラグ
50e 部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両座席のための、特に、自動車座席のための取り付けシステムであって、
a)円周方向に回転可能である軸方向に伸張するシャフト(7)と、
b)回転可能に支持されるドライバ(21)が設けられる少なくとも1つの取り付け具(10)であって、前記取り付け具(10)を駆動又は解除するために、前記ドライバ(21)は固定要素(43)によって軸上に固定され、前記シャフト(7)は前記ドライバ(21)を回転させるために、円周方向に回転可能な固定方式で又は機械的に接続されて前記ドライバ(21)と協働する取り付け具(10)と、
c)軸上の少なくとも1つの方向に前記シャフト(7)及びドライバ(21)の協働を固定するために、軸上で非可動式に前記シャフト(7)に据え付けられる少なくとも1つのクイックファスナ(50)と
を備え、
d)前記クイックファスナ(50)は、前記ドライバ(21)及び/又はその固定要素(43)と接続される
ことを特徴とする取り付けシステム。
【請求項2】
前記クイックファスナ(50)は、特に、リング形状に構成される基体(50a)及び前記シャフト(7)を少なくとも部分的に取り囲み、及び前記基体(50a)から軸方向に突出し且つ前記取り付け具(10)の方を向く少なくとも1つのフィンガ(50c)が設けられることを特徴とする、請求項1に記載の取り付けシステム。
【請求項3】
設けられた前記フィンガ(50c)は、形状適合式に前記ドライバ(21)と又は前記固定要素(43)と協働することを特徴とする、請求項2に記載の取り付けシステム。
【請求項4】
設けられた前記フィンガ(50c)は、前記ドライバ(21)又は前記固定要素(43)の後方に係合するフックとして構成されることを特徴とする、請求項2又は3に記載の取り付けシステム。
【請求項5】
設けられた前記フィンガ(50c)は、半径方向に内側を向くラグ(50d)を有することを特徴とする、請求項2乃至4の何れか1項に記載の取り付けシステム。
【請求項6】
前記クイックファスナ(50)は、前記フィンガ(50c)の間に部分(50e)が設けられ、前記部分(50e)は前記基体(50a)から軸方向に突出することを特徴とする、請求項2乃至5の何れか1項に記載の取り付けシステム。
【請求項7】
前記クイックファスナ(50)は、前記基体(50a)から半径方向に内側に突出し且つ、特に、付勢を受けて、前記シャフト(7)を支承する舌部(50b)が設けられることを特徴とする、請求項2乃至6の何れか1項に記載の取り付けシステム。
【請求項8】
前記取り付け具(10)は、互いに対して回転可能である取り付け部(11、12)が設けられ、前記取り付け部(11、12)は、歯付きリング及びこれと噛み合う歯車によって、互いとギア式で接続されており、前記ドライバ(21)によって駆動される回転偏心器(27)のために相対的な回転運動を実行し、又は前記取り付け部(11、12)は、前記取り付け部(11、12)の一方によって誘導され且つ前記取り付け部(11、12)の他方の歯付きリングと協働するためにバネ荷重され、回転可能に支持される偏心器が作用可能であり、且つ前記ドライバ(21)の回転によって元に戻され得る、半径方向に移動可能な固定部によって互いと固定可能であることを特徴とする、請求項1乃至7の何れか1項に記載の取り付けシステム。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載の取り付けシステムを有する車両座席、特に自動車座席。
【請求項10】
請求項1乃至8の何れか1項に記載の取り付けシステムのためのクイックファスナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−513512(P2013−513512A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542584(P2012−542584)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際出願番号】PCT/EP2011/000120
【国際公開番号】WO2011/088969
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(511007886)カイパー ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー (16)
【Fターム(参考)】