説明

車両搭載に適するカメラ

【課題】道路及びフロントガラスの両方の光景を鮮明に再現するカメラを提供する。
【解決手段】自動車搭載に適するよう構成されたカメラ1であって、電子センサ2と、多焦点、特に2焦点光学デバイス3と、長距離視野に焦点を合わせた光学レンズ4とを有し、上記多焦点光学デバイス及び上記光学レンズが、長距離視野に焦点を合わせた第1の像、及び近距離視野に焦点を合わせた第2の像を上記センサ上に形成し、かつこれら第1及び第2の像が、それぞれ上記センサの異なる領域に位置するように構成されているカメラに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両搭載に適するように構成されたカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許出願公開第1,923,280号(特許文献1)は、種々の用途に供することができる感光性センサを開示している。
【0003】
現在、車両においては、フロントカメラとは別体の雨センサにより雨を検知している。これは、長距離の視野(約150 mまで)を必要とする運転補助手段として使用されている。
【0004】
このシステムを、現状よりコンパクトで、かつ低コスト化するために、自動車の多機能カメラに雨検知機能を組み込むことが考えられる。
【0005】
国際公開第2006/015905号(特許文献2)は、カメラの外部に設けた素子により、雨を検知する車両搭載用光モジュールを開示している。このシステムを装備するには、サイズと位置決めに関して問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1,923,280号明細書
【特許文献2】国際公開第2006/015905号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、単一のカメラを用いて、長距離視野(約150 m)における道路、及びフロントガラス(約30 mm)の両方の光景を再現させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、本発明の目的は、自動車搭載に適するよう構成されたカメラであって、
− 電子センサと、
− 多焦点、特に2焦点の光学デバイスと、
− 光学レンズ、特に長距離視野に焦点を合わせた光学レンズと
を有し、多焦点光学デバイス及び光学レンズが、長距離視野に焦点を合わせた第1の像、及び近距離視野に焦点を合わせた第2の像をセンサ上に形成することができ、かつこれら第1及び第2の像が、それぞれセンサの異なる領域に位置するように構成されたカメラを提供することである。
【0009】
換言すると、本発明によれば、これら第1及び第2の像は、完全に重なることはあり得ない。これらの像は部分的に重なることがあってもよい。これらの像は、実質的に重なることなく、並置していてもよい。
【0010】
本発明によるカメラは、雨、特に車両のフロントガラス上の雨滴の検知に使用するのが好ましく、さらに道路上の障害物検知、ヘッドライトの自動化、走行車線の検知、霧の検知、視程計測等のような運転補助手段として使用するのも好ましい。
【0011】
従って、本発明のカメラは多機能カメラである。
【0012】
所望に応じて、長距離視野に焦点を合わせた像は、近距離視野に焦点を合わせた像より、センサ上の面積を大きくしてもよい。
【0013】
例えば、長距離視野の像が、センサの面積の約80%を占め、近距離視野の像が、センサの面積の約20%を占めていてもよい。
【0014】
本発明によれば、必要に応じて、フロントガラス上に水滴が在る場合でも、道路光景の第2の鮮明な像と実質的に並列する、フロントガラス上の水滴の第1の鮮明な像(同じ像の背景では道路光景はぼやけている)が、センサ上で得られる。
【0015】
従って、無限遠の鮮明な映像、及び近距離視野の鮮明な映像の利点を、同時に得ることができる。
【0016】
検知アルゴリズムは、各々の像のゾーンに対し、必要に応じて、最適となるように適合させればよい。
【0017】
像の各部位は、ソフトウェアの各カテゴリにより、何らかの方法で最適化される。すなわち、近距離視野に焦点を合わせた像の部位での水滴の検知に対する最適化、及び無限遠に焦点を合わせた像の部位での長距離視野への適用に対する最適化である。
【0018】
本発明の一実施例では、多焦点デバイスは、センサとレンズの間に配置される。
【0019】
本発明により、小型化され、構成が比較的シンプルで、かつ十分に安価なカメラが得られる。
【0020】
カメラは、支持体、特にセンサを載置するプリント回路基板を有するのが有利である。
【0021】
多焦点光学デバイスは、この支持体と一体であるのがよい。別の態様として、2焦点デバイスを、例えばレンズと接触及び/又は一体として、支持体から離隔させてもよいし、支持体及びレンズの両方から離隔させてもよい。
【0022】
カメラはセンサ保護ブレードを有しているのが好ましい。例えば多焦点光学デバイスを、この保護ブレードと並べて配置し、特にこの保護ブレードに接着するのが好ましい。
【0023】
必要に応じて、多焦点光学デバイスを、センサの直前に配置して、センサを保護させるのが好ましい。
【0024】
本発明の一実施例では、多焦点光学デバイスは、ブレード、特にプラスチック製又はガラス(例えばN-BK7)製のブレードを備えている。
【0025】
多焦点デバイスを、単一部品として構成するのが好ましい。
【0026】
変形例として、多焦点デバイスを、共に組立てることができる幾つかの素子からなるものとすることができる。
【0027】
本発明の一実施例では、多焦点デバイスは、例えばデバイスの実質的に平行な2つの主な面の間に形成された、長距離視野での第1の像に対応する光学的に中性のゾーンと、収束レンズにより形成された、近距離視野での第2の像に対応する光学的にアクティブなゾーンとを有している。
【0028】
光学的にアクティブなゾーンは、フロントガラスの十分な範囲の像を、センサ上に映すのに特に有用である。
【0029】
必要に応じて、光学的にアクティブなゾーンは、多焦点デバイスの縁部から離隔され、特にこのゾーンがブレード上に形成される場合には、常にブレードの縁部から離隔している。
【0030】
必要に応じて、レンズは光軸を有し、光学的にアクティブなゾーンは、レンズの光軸に対して偏位した光学的中心を有する。
【0031】
光学的には、光学的中心は、このポイントに当たる光線が逸れない、システムの特定のポイントを示している。そこで入射する分と射出する分は、互いに平行である。
【0032】
このように中心をずらすことにより、最も良い方法で、センサを仕切ることができる。
【0033】
必要に応じて、多焦点デバイスは、光学的に中性のゾーンと、光学的にアクティブなゾーンとを有し、光学的に中性のゾーンは、詳しくはデバイスの実質的に平行な2つの主な面の間に形成されており、光学的にアクティブなゾーンは、光学的に中性のゾーンとは異なる材料からなっている。
【0034】
2焦点デバイスの位置は、カメラのレンズとセンサの間であるのが好ましい。
【0035】
多焦点デバイスは、光学的に中性のゾーンと、光学的にアクティブなゾーンの間に、マスク形成領域を有しているのが有利である。この領域は、センサ上の第1及び第2の像の間での重なりを制限するためのマスクを形成している。
【0036】
このマスクは、多焦点デバイスのブレードに関連付けて設けてもよいし、別の態様として、ブレードに直接形成してもよい。
【0037】
このマスクにより、フロントガラスから入り、第1及び第2の像が重なるゾーンに入射する光線をカットして、2つの像を良好に並置させることができる。
【0038】
必要に応じて、多焦点デバイス、特にブレードを、等方性形状とはしないで、特に非円形とするのが好ましい。
【0039】
ブレードは、例えば矩形とするのが好ましい。
【0040】
本発明はまた、1つ以上の自動車フロントガラス用ワイパーの制御方法であって、
− 上記で定義したカメラを用いて、車両のフロントガラス上の雨の存在を検知し、
− フロントガラス上に雨が在る場合に、1つ以上のワイパーを作動させる
というステップを有する方法を提供することを目的としている。
【0041】
本発明によれば、雨の検知は、カメラとは別体のセンサを用いることなく、多機能カメラにより行うのが好ましい。
【0042】
本発明はさらに、上記で定義したカメラを用いる雨の検知方法を提供することを目的としている。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施例によるカメラの要素を略示する部分図である。
【図2】図1のカメラの要素を、異なる方向から見た部分図である。
【図3】図1及び図2のカメラの2焦点デバイスを示す部分図である。
【図4】カメラのセンサ上の像を示す図である。
【図5】本発明の別の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
添付の図面を参照して、本発明の非限定的な実施例に関する以下の詳細な説明を読むことにより、本発明をより良く理解することができると思う。
【0045】
図1及び図2は、自動車搭載に適するよう構成された本発明の一実施例によるカメラ1の異なる要素を示す。
【0046】
このカメラは、
− 光電池を母体とする感光性電子センサ2と、
− 実質的に矩形の2焦点光学デバイス3と、
− 長距離視野に焦点を合わせた光学レンズ4と
を有する。
【0047】
2焦点光学デバイス3及び光学レンズ4は、図4に示すように、長距離視野に焦点を合わせた第1の像IM1、及び近距離視野に焦点を合わせた第2の像IM2を、センサ2上に形成することができるよう構成されている。
【0048】
カメラは、車両中における、ワイパーで拭かれる領域に配置するのが有利である。
【0049】
カメラは、例えば、車両のフロントガラスに対向するよう、車内のバックミラーの後ろに配置される。
【0050】
第1及び第2の像IM1,IM2は、それぞれセンサ2における別個の領域R1,R2に位置している。
【0051】
換言すると、本発明によれば、これらの第1及び第2の像IM1,IM2は、完全には重ならない。これらの像は、部分的に重なってもよい。別の態様として、これらの像を、実質的に重ならないように並置させてもよい。
【0052】
カメラ1は、雨、特に車両のフロントガラス上の雨滴の検知に使用され、また道路上の障害物検知、ヘッドライトの自動化、走行車線の検知、霧の検知、視程計測等のような1つ以上の他の運転補助手段として使用される。
【0053】
従って、カメラ1は、多機能カメラである。
【0054】
所望に応じて、長距離視野に焦点を合わせた像IM1は、近距離視野に焦点を合わせた像IM2より、センサ上の面積を多く占めるようにしてもよい。
【0055】
例えば、長距離視野の像IM1は、センサ2の面積の約80%を占め、近距離視野の像IM2は、センサ2の面積の約20%を占めるようにしてもよい。
【0056】
本発明によれば、フロントガラス上に水滴が在る場合でも、道路光景の第2の鮮明な像IM1と実質的に並列する、フロントガラス上の水滴の第1の鮮明な像IM2(同じ像の背景では道路光景はぼやけている)が、センサ2上で得られる。
【0057】
この実施例では、2焦点デバイス3は、センサ2とレンズ4の間に配置されている。
【0058】
本発明の非限定的な実施例では、カメラ1は、特にセンサ2を載置するプリント回路基板を有する支持体5を備えている。
【0059】
図1に示すように、2焦点光学デバイス3は、支持体5と一体であるのがよい。
【0060】
変形例として、2焦点デバイス3を、レンズ4に対して接触及び/又は一体とすることもある。
【0061】
さらに別の態様として、2焦点デバイス3を、支持体5のセンサ2及びレンズ4のいずれとも一体としないで、センサ2とレンズ4の間に配置することもある。
【0062】
図1及び図2に示す実施例では、2焦点光学デバイス3は、センサ2の直前に配置され、センサ2を保護するようになっている。
【0063】
2焦点光学デバイス3は、N-BK7からなるブレード7を備えている。
【0064】
この2焦点デバイス3は、デバイスの実質的に平行な2つの主要な面11の間に形成された光学的に中性のゾーン10(IM1に対応している)、及び光学的にアクティブなゾーン12(IM2に対応している)を有する。この光学的にアクティブなゾーン12は、例えば、収束レンズからなっている。
【0065】
光学的にアクティブなゾーン12は、2焦点デバイスの縁部15から離隔しており、特にこのゾーン12がブレード7上に形成されている場合には常にブレードの縁部から離隔しているのが好ましい。
【0066】
このゾーン12は、例えば凸型を呈している。
【0067】
レンズ4は光軸Oxを有し、光学的にアクティブなゾーン12は、レンズの光軸Oxに対して偏位した光学的中心COを有する。
【0068】
補完的な一実施例においては、レンズ4は、無限遠に焦点を合わせて像を形成するようになっているレンズのセットからなっている。レンズ4は、交差した光学的要素群を考慮して、レンズセットの焦点がセンサ2上に位置するよう配置すると有利である。
【0069】
2焦点デバイス3は、光学的に中性のゾーン10と光学的にアクティブなゾーン12の間に配置されたマスク17の形成領域を有する。この領域は、センサ上の第1及び第2の像IM1,IM2の間での重なりを制限するマスク17を形成している。
【0070】
勿論、本発明は以上説明した実施例に限定されない。
【0071】
例えば、2焦点デバイス3は、別体であって、組立てられる2個の要素からなっていてもよい。
【0072】
例えば、光学的にアクティブなゾーンを、中性のゾーンから分離したレンズ上に形成してもよい。
【0073】
図5に示すように、カメラは、センサ2の保護ブレード19を有してもよく、多焦点光学デバイス3を、例えばこの保護ブレード19と並べて配置して、接着するのが好ましい。
【符号の説明】
【0074】
1・・・カメラ
2・・・感光性電子センサ
3・・・2焦点光学デバイス
4・・・光学レンズ
5・・・支持体
7・・・ブレード
10・・・光学的に中性のゾーン
11・・・デバイスの主要面
12・・・光学的にアクティブなゾーン
15・・・デバイスの縁部
17・・・マスク
19・・・保護ブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車搭載に適するよう構成されたカメラ(1)であって、
電子センサ(2)と、
多焦点光学デバイス、特に2焦点のもの(3)と、
長距離視野に焦点を合わせた光学レンズ(4)とを有し、
前記多焦点光学デバイス及び光学レンズが、長距離視野に焦点を合わせた第1の像(IM1)、及び近距離視野に焦点を合わせた第2の像(IM2)を前記センサ上に形成し、かつこれら第1及び第2の像が、それぞれ前記センサの異なる領域に位置するように構成されていることを特徴とするカメラ。
【請求項2】
前記多焦点デバイス(3)は、前記センサとレンズの間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のカメラ。
【請求項3】
前記カメラは、支持体(5)、特に前記センサを載置するプリント回路基板を有し、かつ前記多焦点光学デバイスは、この支持体と一体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のカメラ。
【請求項4】
前記カメラはセンサ保護ブレードを有し、前記多焦点光学デバイス及びこの保護ブレードが併置されたことを特徴とする請求項3に記載のカメラ。
【請求項5】
前記多焦点光学デバイスは、前記センサ(2)の直前に配置され、前記センサを保護し得るようになっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のカメラ。
【請求項6】
前記多焦点光学デバイスは、ガラス製のブレードを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のカメラ。
【請求項7】
前記多焦点デバイスは、前記デバイスの実質的に平行な2つの主な面の間に形成された、光学的に中性のゾーン(10)と、収束レンズにより形成された、光学的にアクティブなゾーン(12)とを有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のカメラ。
【請求項8】
前記光学的にアクティブなゾーンは、前記多焦点デバイスの縁部から離隔していることを特徴とする請求項7に記載のカメラ。
【請求項9】
前記レンズは光軸(Ox)を有し、前記光学的にアクティブなゾーンは、前記レンズ光軸に対して偏位した光学的中心を有することを特徴とする請求項7又は8に記載のカメラ。
【請求項10】
前記多焦点デバイスは、光学的に中性のゾーンと光学的にアクティブなゾーンの間に位置するマスク(17)形成領域を有し、この領域は、前記センサ上の前記第1及び第2の像の間での重なりを制限するようになっているマスクを形成していることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のカメラ。
【請求項11】
1つ以上の自動車フロントガラス用ワイパーの制御方法であって、
請求項1〜10のいずれか1項に記載のカメラを用いて、前記車両のフロントガラス上の雨の存在を検知し、かつ
前記フロントガラス上に雨が存在する場合に、前記1つ以上のワイパーを作動させる
工程を有することを特徴とする方法。
【請求項12】
雨の検知は、カメラから分離したセンサを用いずに、多機能カメラにより行うことを特徴とする請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−201529(P2011−201529A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−45877(P2011−45877)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(391011607)ヴァレオ ビジョン (133)
【氏名又は名称原語表記】VALEO VISION
【Fターム(参考)】