説明

車両搭載用のターボ過給機付エンジン

【課題】エンジン本体2の側面に2つのターボ過給機3,4及び排気浄化装置5をコンパクトに配置し、エンジン周辺機器のレイアウトを容易にする。
【解決手段】エンジン本体2の側面において、ターボ過給機3,4をクランク軸方向の片側に寄せて、且つ大型ターボ過給機4が上になり小型ターボ過給機3が下になるように上下に配置し、クランク軸方向反対側の空いたスペースに排気浄化装置5をその排気入口が上になり排気出口が下になるように竪置き状態で配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両搭載用のターボ過給機付エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載するエンジン本体に、小型ターボ過給機、大型ターボ過給機及び排気浄化装置が支持されているターボ過給機付エンジンは従来より知られている。例えば、特許文献1には、クランク軸方向が車両の車軸方向になるように配置された横置きエンジンにおいて、そのエンジン本体の車両前後方向における後側に、小型ターボ過給機、大型ターボ過給機及びDPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)を配置したものが記載されている。
【0003】
この特許文献1のエンジンでは、大型ターボ過給機とDPFとは、共に軸線がクランク軸方向に延びる横置きとされ、且つエンジン本体側面において略同じ高さでクランク軸方向に並ぶように配置されて、タービン出口がDPFの排気入口に直結されている。小型ターボ過給機は、軸線がクランク軸方向に延びる横置きとされて、DPFの上方(大型ターボ過給機よりも高位置)に配置されている。
【0004】
排気マニホールドには、2つの排気出口が設けられて、一方の排気出口が小型ターボ過給機のタービンに接続され、他方の排気出口が小型ターボ過給機をバイパスするバイパス管によって大型ターボ過給機のタービンに接続されている。小型ターボ過給機のタービン出口に接続された排気管は、上方へ延びてから下方の大型ターボ過給機に向かって曲がり下って上記バイパス管に接続されている。
【0005】
上記ターボ過給機付エンジンの場合、大小の両ターボ過給機がエンジン本体の近傍に配設されるため、排気エネルギの損失が少なくなり、過給性能が向上する。さらに、DPFが大型ターボ過給機のタービン出口に直結されているため、温度が高い排気がDPFに供給され、フィルタの再生効率が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−70878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
大型ターボ過給機と排気浄化装置としてのDPFとを共に横置きとしてクランク軸方向に並べて直結すると、上述の利点があるものの、排気浄化装置が大型になると、大型ターボ過給機と排気浄化装置とを合わせたクランク軸方向の全長が長くなり、その両端がエンジン本体のクランク軸方向両側に大きくはみ出してくる。このことは、冷却水ポンプ、オルタネータなどエンジン補機類のレイアウトを難しくし、或いはエンジンルーム内でのエアクリーナ、インタークーラ、EGR系の配管、バッテリ等のレイアウト、さらには、車両用ブレーキを構成するマスターバックのレイアウトを難しく一因となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明では、大型ターボ過給機と小型ターボ過給機とをエンジン本体側面のクランク軸方向の片側に寄せて上下に配置し、反対側のスペースに排気浄化装置を排気入口が上になり排気出口が下になる竪置きにして配置することにより、排気浄化装置が大型になっても、大小の両ターボ過給機、排気浄化装置及び吸排気管をエンジン本体の片側の側面にコンパクトに配置できるようにした。以下、具体的に説明する。
【0009】
上記課題を解決する手段は、エンジン本体の片側の側面に、排気マニホールド出口にタービンが接続された小型ターボ過給機と、該小型ターボ過給機のタービン出口にタービンが接続された大型ターボ過給機と、該大型ターボ過給機のタービン出口に接続された排気浄化装置とが設けられている車両搭載用のターボ過給機付エンジンにおいて、
上記小型ターボ過給機は、上記エンジン本体側面におけるクランク軸方向の片側寄りに配置され、
上記大型ターボ過給機は、上記小型ターボ過給機と同じく、上記エンジン本体側面におけるクランク軸方向の片側寄りにおいて、上記小型ターボ過給機の上方に配置され、且つタービン出口が上記クランク軸方向の上記片側とは反対側を向くように設けられ、
上記排気浄化装置は、上記エンジン本体側面において、上記クランク軸方向の片側寄りに配置された両ターボ過給機とは上記クランク軸方向の反対側に配置され、且つ排気入口が上になり排気出口が下になるように竪置きにされ、その排気入口が上記大型ターボ過給機のタービン出口に接続され、その排気出口が排気管に接続されていることを特徴とする。
【0010】
すなわち、エンジン本体側面において、大小のターボ過給機をクランク軸方向の片側に寄せて上下に配置し、そのことによって、クランク軸方向の反対側の空いたスペースに排気浄化装置を竪置き状態で配置したから、排気浄化装置が大型になっても、これら大小のターボ過給機及び排気浄化装置が、エンジン本体のクランク軸方向両側に大きくはみ出すことなくコンパクトにまとまることになる。よって、エンジン補機類のレイアウトやエンジンルームに配置される他の機器のレイアウトの自由度が高くなる。
【0011】
そして、小型ターボ過給機の上側に大型ターボ過給機を配置して、そのタービン出口が排気浄化装置の方を向くようにしたから、このタービン出口と排気浄化装置の排気入口とを短距離で結ぶことができる。また、大小のターボ過給機がクランク軸方向の片側に寄せて上下に配置されているから、この両ターボ過給機のタービン同士やコンプレッサ同士を結ぶ吸排気通路の短縮も図れることになる。このように大小のターボ過給機及び排気浄化装置三者間を結ぶ管路が短くなるということは、軽量化が図れるだけでなく、その管路の熱による伸びが小さくなることを意味し、よって、フレキシブル管の使用を少なくしてそれら管路を簡素にすることができ、さらにはこれら大小のターボ過給機及び排気浄化装置のエンジン本体への支持も容易になる。
【0012】
好ましい実施形態では、上記エンジン本体は、そのクランク軸方向が当該車両の車軸方向になるように横置きにされ、
上記小型ターボ過給機、大型ターボ過給機及び排気浄化装置は、車両前後方向における上記エンジン本体の後側に配置され、
当該車両のブレーキ装置を構成するマスターバックが、上記クランク軸方向において、上記小型ターボ過給機及び大型ターボ過給機を間に挟んで上記排気浄化装置の反対側に、または、上記クランク軸方向において、上記排気浄化装置を間に挟んで上記小型ターボ過給機及び大型ターボ過給機の反対側に、配置されていることを特徴とする。
【0013】
すなわち、横置きエンジンの場合、エンジン本体がエンジンルーム内のスペースを車両の車軸方向に幅広く占めることになるため、ブレーキ装置のマスターバックと干渉を避けるべく、エンジン本体の背部(後側)に配設される周辺機器は車軸方向に大きく広がらないように配置する必要がある。これに対して、当該実施形態によれば、2つのターボ過給機をエンジン本体背部においてクランク軸方向の片側に寄せて上下に配置し、その反対側の空いたスペースに排気浄化装置を竪置きで配置したから、これらがエンジン本体のクランク軸方向両側に大きくはみ出すことが避けられ、マスターバックのレイアウトが容易になる。
【0014】
好ましい実施形態では、上記エンジン本体は、そのクランク軸方向が当該車両の車軸方向になるように横置きにされ、
上記小型ターボ過給機、大型ターボ過給機及び排気浄化装置は、車両前後方向における上記エンジン本体の後側に配置され、
車体フロア前部に幅方向中央部位を車体前後方向に延びて前端がエンジンルームに開口した鞍型の排気管収容部が設けられ、
上記排気浄化装置の排気出口に接続された上記排気管が上記排気管収容部に収容されていることを特徴とする。
【0015】
すなわち、排気浄化装置を排気入口が上になり排気出口が下になるように竪置きにしたから、その排気出口に接続する排気管をエンジンルーム内で曲がりくねらせることなく車体フロア前部の鞍型の排気管収容部に通すことが容易になり、排気抵抗の低減に有利になる。
【0016】
好ましい実施形態では、上記排気マニホールド出口から上記小型ターボ過給機をバイパスして排気を上記大型ターボ過給機に導入するための第1バイパス通路と、上記大型ターボ過給機をバイパスして排気を上記排気浄化装置に導入するための第2バイパス通路とを備え、
上記第1及び第2の両バイパス通路各々には、上記排気浄化装置の温度が排気を浄化する所定の活性温度に達していないときに、各々のバイパス通路を開とする開閉弁が設けられていることを特徴とする。
【0017】
従って、排気浄化装置が活性化していないときには、両バイパス通路が開となることにより、排気マニホールドから排出される排気が、小型ターボ過給機及び大型ターボ過給機による温度低下を招くことなく、高い温度のまま排気浄化装置に流入することになり、該排気浄化装置の早期活性化に有利になる。
【0018】
好ましい実施形態では、上記大型ターボ過給機と小型ターボ過給機とが上記排気マニホールド出口を挟んで上下に配置され、
上記排気マニホールド出口から上下に分かれて上記大小両ターボ過給機各々のタービンに延びる二股状の排気管部を備え、該排気管部の上記大型ターボ過給機に延びる上側の分岐部が上記第1バイパス通路を構成していることを特徴とする。
【0019】
従って、第1バイパス通路長の短縮が図れ、排気が排気マニホールドから排気浄化装置に達するまでに逃げる熱量が少なくなり、排気浄化装置の早期活性化に有利になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、エンジン本体側面において、大小のターボ過給機をクランク軸方向の片側に寄せて上下に配置し、クランク軸方向反対側の空いたスペースに排気浄化装置を竪置き状態で配置するとともに、小型ターボ過給機の上側に大型ターボ過給機を配置してそのタービン出口を排気浄化装置の方を向けたから、排気浄化装置が大型になっても、大小のターボ過給機及び排気浄化装置が、エンジン本体のクランク軸方向両側に大きくはみ出すことなくコンパクトにまとまり、エンジン補機類のレイアウトやエンジンルームに配置される他の機器のレイアウトの自由度が高くなり、しかも、大小のターボ過給機及び排気浄化装置三者間を結ぶ管路の短縮に有利になり、管路の熱による伸びも小さくなり、大小のターボ過給機及び排気浄化装置のエンジン本体への支持も容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係るターボ過給機付エンジンの正面図(車両後方側から視た正面図)である。
【図2】同エンジンの平面図である。
【図3】同エンジンの右側面図である。
【図4】同エンジンの冷却水及びオイルの配管の一部、並びに排気浄化装置を除いて示す右側面図である。
【図5】同エンジンの一部を示す左側面図である。
【図6】同エンジンのターボ過給機の吸排気系統を模式的に示す図である。
【図7】同エンジンのターボ過給機の冷却水配管を示す正面図である。
【図8】同エンジンのターボ過給機の冷却水及びオイルの配管を示す右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0023】
図1は車両に搭載するターボ過給機付の多気筒ディーゼルエンジン1を車両前後方向の後側から視た図である。エンジン本体2は、そのクランク軸方向が当該車両の車軸方向になるように横置きにされ、小型ターボ過給機3、大型ターボ過給機4及び排気浄化装置5が、車両前後方向におけるエンジン本体2の後側の側面に配置されている。
【0024】
同図において、6はフロアパネル、7は車室とその前方のエンジンルームとを仕切るダッシュパネルである。フロアパネル6の車幅方向中央部には前後方向に延びるフロアトンネル部材8が設けられており、このトンネル部材8が車体フロア前部において前端がエンジンルームに開口した鞍型の排気管収容部9を形成している。ダッシュパネル7には車両のブレーキ装置を構成するマスターバック11aが取付けられるようなっている。図1及び図2において、左側のマスターバック11aは左ハンドルのときに設けられるものであり、右側のマスターバック11aは右ハンドルのときに設けられるものである。
<ターボ過給機及び排気浄化装置の配置・支持構造>
ターボ過給機3,4及び排気浄化装置5の配置について説明する。小型ターボ過給機3は、エンジン本体2の側面におけるクランク軸方向の片側寄りに配置されている。大型ターボ過給機4は、小型ターボ過給機3と同じく、エンジン本体2の側面におけるクランク軸方向の片側寄りにおいて、小型ターボ過給機3の上方に配置されている。ターボ過給機3,4は共に、各々のタービン3a,4aの出口がクランク軸方向の反対側を向くように、その軸線がクランク軸方向に延びる横置きにされている。
【0025】
排気浄化装置5は、エンジン本体2の側面において、両ターボ過給機3,4とはクランク軸方向の反対側に配置され、且つ排気入口が上になり排気出口が下になるように竪置きにされている。この排気浄化装置5は、酸化触媒とDPFとを前者が上(上流側)になり後者が下(下流側)になるように容器に収容されたものである。図3にも示すように、排気浄化装置5の下側の出口管部5bは下流側排気管12に接続され、下流側排気管12は鞍型の排気管収容部9に収容されている。
【0026】
ターボ過給機3,4及び排気浄化装置5の支持構造について説明する。排気浄化装置5は、図2及び図3に示すように、上端部がシリンダヘッドカバー13より側方に突出した上ブラケット14に支持され、図1及び図3に示すように、下端部がシリンダブロック15より側方に突出した下ブラケット16に支持されている。上ブラケット14にはクランク軸方向に延びる支軸が設けられ、排気浄化浄化装置5の上端部はその支軸に支持されている。排気浄化装置5は、その下面が下ブラケット16に結合されて該下ブラケット16で受けられており、下ブラケット16との結合を外すと、上ブラケット14の支軸を中心に下部が前後に回動する。
【0027】
上下のターボ過給機3,4は後述の吸気管及び排気管によって互いに連結されていて、図1及び図4に示すように、下側の小型ターボ過給機3がシリンダブロック15より側方に突出したブラケット17に結合されて該ブラケット17で受けられている。また、ターボ過給機3,4は、図4に示すシリンダヘッド18に結合された後述の上流側排気管22を介して該シリンダヘッド18に支持されている。
<吸排気系の構成>
排気系について説明する。図2に示すように、エンジン本体2では、各気筒の排気口から出る排気を合流させて排出する排気マニホールド21がシリンダヘッドに一体に形成されている。
【0028】
図4に示すように、シリンダヘッド18の排気マニホールド出口に上流側排気管22が接続されている。小型ターボ過給機3と大型ターボ過給機4とは排気マニホールド出口を挟んで上下に配置されている。上流側排気管22は途中で上下二股に分岐し、上方に延びる上分岐部22aは、大型ターボ過給機4のタービン4aの入口に、排気を流入させるべく接続されている。下方に延びる下分岐部22bは、小型ターボ過給機3のタービン3aの入口に、排気を流入させるべく接続されている。
【0029】
小型ターボ過給機3のタービン3aの出口と大型ターボ過給機4のタービン4aの入口とは、小型ターボ過給機3から大型ターボ過給機4に排気を流入させるべく、タービン接続管23によって接続されている。タービン接続管23は、その中間に熱膨張・収縮を吸収するフレキシブル管23aを有する。
【0030】
上流側排気管22の上分岐部22aは、小型ターボ過給機3のタービン3aをバイパスして排気を大型ターボ過給機4に流入させる第1バイパス通路を構成するものであり、図1に示すアクチュエータ24によって駆動されるレギュレートバルブ(図6の符号25)を備えている。上分岐部22aとタービン接続管23とは1本の通路になるように合わさって大型ターボ過給機4のタービン4aの入口に接続されている。
【0031】
大型ターボ過給機4のタービン4aの出口からタービン下流管26が側方へ延び、排気浄化装置5の上側の入口管部5aに接続されている。また、上分岐部22aとタービン接続管23との接続部から、大型ターボ過給機4のタービン4aをバイパスして排気をタービン下流管26に導く分岐通路(第2バイパス通路)が設けられている。その分岐部には、図2に示すアクチュエータ27によって駆動されるウェストゲートバルブ(図6の符号28)が設けられている。
【0032】
吸気系について説明する。図1に示すように、大型ターボ過給機4のコンプレッサ4bの入口にはエアクリーナー(図示省略)から延びる吸気流入管30が接続されている。大型ターボ過給機4のコンプレッサ4bの出口と小型ターボ過給機3のコンプレッサ3bの入口とは、大型ターボ過給機4から小型ターボ過給機3に吸気を流入させるべく、図5に示すコンプレッサ接続管31によって接続されている。
【0033】
コンプレッサ接続管31の途中からはインタークーラー(図示省略)を介して吸気をエンジン本体2に送る吸気送り管32が分岐している。この吸気送り管32に、図2等に示すアクチュエータ35によって駆動される吸気カットバルブ(図6の符号33)が設けられている。図1に示すように、小型ターボ過給機3のコンプレッサ3bの出口にはコンプレッサ下流管34が接続され、このコンプレッサ下流管34は、吸気をインタークーラーに送るべく、吸気カットバルブ33よりも下流側において吸気送り管32に接続されている。
【0034】
図6は上記吸排気系の構成を模式的に示したものである。すなわち、エンジン本体2から延びる上流側排気管22が途中で二股に分岐し、その一方(下分岐部22b)が小型ターボ過給機3のタービン3aに接続されている。他方(上分岐部22a)は、ターボ過給機3,4のタービン間を結ぶタービン接続管23に接続されて、レギュレートバルブ25を有する第1バイパス通路を構成している。タービン接続管23から大型ターボ過給機4のタービン下流管26に、ウェストゲートバルブ28を有する第2バイパス通路29が延びている。
【0035】
エアクリーナー36から延びる吸気流入管30が大型ターボ過給機4のコンプレッサ4bに接続され、該コンプレッサ4bと小型ターボ過給機3のコンプレッサ3bとがコンプレッサ接続管31で結ばれ、コンプレッサ接続管31から分岐した吸気送り管32に吸気カットバルブ33が設けられている。小型ターボ過給機3のコンプレッサ3bの出口から延びるコンプレッサ下流管34が、吸気カットバルブ33よりも下流側において吸気送り管32に接続されている。
【0036】
この場合、エンジンの低速ないし中速運転域では、吸気カットバルブ33及びウェストゲートバルブ28が閉じられ、レギュレートバルブ25による第1バイパス通路22aの開度制御によって目標過給圧とされる。エンジンの高速運転域では、吸気カットバルブ33及びレギュレートバルブ25が開とされ、ウェストゲートバルブ28による第2バイパス通路29の開度制御によって目標過給圧とされる。また、排気浄化装置5の酸化触媒の温度が所定の活性温度に達していないときには、レギュレートバルブ25及びウェストゲートバルブ28が開とされ、排気マニホールド21から排出される排気が第1及び第2の両バイパス通路22a,29を経由して排気浄化装置5に流入し、ターボ過給機3,4による温度低下のない高温の排気によって酸化触媒の活性化が促進される。
<冷却水及びオイルの配管>
ターボ過給機3,4の冷却水配管について説明する。図7に示すように、エンジン本体2のシリンダヘッド18から冷却水供給管41が小型ターボ過給機3のセンターハウジング3cに延びており、センターハウジング3cはエンジン冷却水によって冷却される。小型ターボ過給機3のセンターハウジング3cから上方に延びる冷却水送り管42が大型ターボ過給機4のセンターハウジング4cに接続されており(図1及び図8参照)、センターハウジング4cは小型ターボ過給機3のセンターハウジング3cを通過した冷却水によって冷却される。
【0037】
大型ターボ過給機4のセンターハウジング4cからは冷却水をシリンダブロック15に戻す冷却水戻し管43が延びている。この冷却水戻し管43は、図8にも示すように一旦下方に導かれた後に立ち上げられ、クランク軸方向の片側において図1及び図2に示すブローバスガス管44に沿わせられ、クランク軸方向の反対側に延びてシリンダブロック15に接続されている。ブローバイガス管44は、ブローバイガスを吸気側に戻すべく、シリンダヘッドカバー13より突出したガス管45に一端が接続され、他端は吸気流入管30に接続されている。冷却水戻し管43がブローバスガス管44に沿うように配管された部分は、この両管43,44が離れないようにカバー46で覆われて保持されている。この場合、ブローバイガス管44が冷却水戻し管43を通る高温の冷却水によって加熱されるため、ブローバイガス中の水分が氷結するアイシングが抑制される。
【0038】
ターボ過給機3,4のオイル配管について説明する。図2及び図5に示すように、シリンダヘッド18におけるクランク軸方向片側の端部に、ターボ過給機3,4の軸受部の潤滑及び冷却のためにエンジンオイルを取り出すオイル取出部51が設けられている。
【0039】
図5に示すように、オイル取出部51から上方に延びるオイル供給管52が、図2及び図8に示すように、大型ターボ過給機4のセンターハウジング4cの上面に接続されている。図8に示すように、該センターハウジング4cの下面からオイルをシリンダブロック15に戻すオイル戻し管53が下方へ延び、図1に示すように、シリンダブロックのオイル戻し部54に接続されている。また、図5に示すように、オイル取出部51から下方に延びるオイル供給管55が、図8に示すように、小型ターボ過給機3のセンターハウジング3cの上面に接続されている。該センターハウジング3cの下面からオイル戻し管56が下方へ延び、図1に示すように、シリンダブロックのオイル戻し部54に接続されている。
<実施形態の効果>
上記実施形態においては、要するに、図1に示すように、エンジン本体2の側面において、ターボ過給機3,4をクランク軸方向の片側に寄せて上下に配置し、クランク軸方向反対側の空いたスペースに排気浄化装置5を竪置き状態で配置している。このため、排気浄化装置5が大型になっても、ターボ過給機3,4及び排気浄化装置5が、エンジン本体2のクランク軸方向両側に大きくはみ出すことなくコンパクトにまとまり、エンジンルーム内に配置されるエアクリーナ、インタークーラ、EGR系の配管、バッテリ、燃料ポンプ、その他のエンジン周辺機器のレイアウトの自由度が高まる。
【0040】
特に、大型の排気浄化装置5をエンジン本体2のクランク軸方向反対側の端からはみ出さないように配置したから、このクランク軸方向反対側のエンジン本体端面に配置されてクランク軸で駆動されるオルタネータ、冷却水ポンプ等の補機類や空調用コンプレッサとの干渉が避けられ、それらのレイアウトが容易になる。また、ターボ過給機3,4及び排気浄化装置5が、エンジン本体2のクランク軸方向両側に大きくはみ出すことなくコンパクトにまとまっているから、図1及び図2に示すように、横置きエンジンでありながら、左ハンドル用及び右ハンドル用いずれのブレーキ装置を設ける場合でも、そのブレーキ装置を構成するマスターバック11a、マスターシリンダ11b及びリザーバタンク11cも支障なくレイアウトすることができる。
【0041】
小型ターボ過給機3の上側に大型ターボ過給機4を配置して、そのタービン出口が竪置き排気浄化装置5の上部を向くようにしたから、大型ターボ過給機4のタービン下流管26と排気浄化装置5の上側の入口管部5aとを直結して短距離で結ぶことができる。また、2つのターボ過給機3,4をクランク軸方向の片側に寄せて上下に配置したから、この両ターボ過給機3,4のタービン同士やコンプレッサ同士を結ぶ吸排気管も短くなる。このようにターボ過給機3,4及び排気浄化装置5の三者間を結ぶ管路が短くなり、その熱による伸びが小さくなるから、フレキシブル管の使用も少なくすることができ、ターボ過給機3,4及び排気浄化装置5のエンジン本体2への支持も容易になる。
【0042】
また、ターボ過給機3,4を、排気マニホールド出口を挟んで上下に配置し、上流側排気管22を途中で上下に分岐させ、上分岐部22aを第1バイパス通路として上側の大型ターボ過給機4のタービン4aに接続している。従って、レギュレートバルブ25及びウェストゲートバルブ28を開としたとき、排気マニホールド出口から排気浄化装置5までのバイパス通路22a,29による通路長が極めて短くなる。よって、排気浄化装置5の酸化触媒が活性化していないとき、バイパス通路22a,29を通して温度が高い排気を排気浄化装置5に流入させることができ、酸化触媒の早期活性化に有利になる。
【0043】
また、排気浄化装置5をその排気出口が下になるように竪置きにして横置きエンジン本体2の背面に支持したから、その出口管部5bを後方に曲げて延ばすだけで鞍型排気管収容部9の下流側排気管12に接続することができる。すなわち、排気浄化装置5から鞍型排気管収容部9に至る間の排気管をエンジンルーム内で曲がりくねらせる必要がなくなり、排気抵抗の低減に有利になる。
【符号の説明】
【0044】
1 ターボ過給機付エンジン
2 エンジン本体
3 小型ターボ過給機
3a タービン
3b コンプレッサ
4 大型ターボ過給機
4a タービン
4b コンプレッサ
5 排気浄化装置
5a 入口管部
5b 出口管部
6 フロアパネル
7 ダッシュパネル
8 トンネル部材
9 排気管収容部
11a マスターバック
12 下流側排気管
21 排気マニホールド
22 上流側排気管
22a 上分岐部(第1バイパス通路)
22b 下分岐部
25 レギュレートバルブ
28 ウェストゲートバルブ
29 第2バイパス通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン本体の片側の側面に、排気マニホールド出口にタービンが接続された小型ターボ過給機と、該小型ターボ過給機のタービン出口にタービンが接続された大型ターボ過給機と、該大型ターボ過給機のタービン出口に接続された排気浄化装置とが設けられている車両搭載用のターボ過給機付エンジンにおいて、
上記小型ターボ過給機は、上記エンジン本体側面におけるクランク軸方向の片側寄りに配置され、
上記大型ターボ過給機は、上記小型ターボ過給機と同じく、上記エンジン本体側面におけるクランク軸方向の片側寄りにおいて、上記小型ターボ過給機の上方に配置され、且つタービン出口が上記クランク軸方向の上記片側とは反対側を向くように設けられ、
上記排気浄化装置は、上記エンジン本体側面において、上記クランク軸方向の片側寄りに配置された両ターボ過給機とは上記クランク軸方向の反対側に配置され、且つ排気入口が上になり排気出口が下になるように竪置きにされ、その排気入口が上記大型ターボ過給機のタービン出口に接続され、その排気出口が排気管に接続されていることを特徴とする車両搭載用のターボ過給機付エンジン。
【請求項2】
請求項1において、
上記エンジン本体は、そのクランク軸方向が当該車両の車軸方向になるように横置きにされ、
上記小型ターボ過給機、大型ターボ過給機及び排気浄化装置は、車両前後方向における上記エンジン本体の後側に配置され、
上記クランク軸方向において、上記小型ターボ過給機及び大型ターボ過給機を間に挟んで上記排気浄化装置の反対側に、当該車両のブレーキ装置を構成するマスターバックが配置されていることを特徴とする車両搭載用のターボ過給機付エンジン。
【請求項3】
請求項1において、
上記エンジン本体は、そのクランク軸方向が当該車両の車軸方向になるように横置きにされ、
上記小型ターボ過給機、大型ターボ過給機及び排気浄化装置は、車両前後方向における上記エンジン本体の後側に配置され、
上記クランク軸方向において、上記排気浄化装置を間に挟んで上記小型ターボ過給機及び大型ターボ過給機の反対側に、当該車両のブレーキ装置を構成するマスターバックが配置されていることを特徴とする車両搭載用のターボ過給機付エンジン。
【請求項4】
請求項1において、
上記エンジン本体は、そのクランク軸方向が当該車両の車軸方向になるように横置きにされ、
上記小型ターボ過給機、大型ターボ過給機及び排気浄化装置は、車両前後方向における上記エンジン本体の後側に配置され、
車体フロア前部に幅方向中央部位を車体前後方向に延びて前端がエンジンルームに開口した鞍型の排気管収容部が設けられ、
上記排気浄化装置の排気出口に接続された上記排気管が上記排気管収容部に収容されていることを特徴とする車両搭載用のターボ過給機付エンジン。
【請求項5】
請求項1において、
上記排気マニホールド出口から上記小型ターボ過給機をバイパスして排気を上記大型ターボ過給機に導入するための第1バイパス通路と、上記大型ターボ過給機をバイパスして排気を上記排気浄化装置に導入するための第2バイパス通路とを備え、
上記第1及び第2の両バイパス通路各々には、上記排気浄化装置の温度が排気を浄化する所定の活性温度に達していないときに、各々のバイパス通路を開とする開閉弁が設けられていることを特徴とする車両搭載用のターボ過給機付エンジン。
【請求項6】
請求項5において、
上記大型ターボ過給機と小型ターボ過給機とが上記排気マニホールド出口を挟んで上下に配置され、
上記排気マニホールド出口から上下に分かれて上記大小両ターボ過給機各々のタービンに延びる二股状の排気管部を備え、該排気管部の上記大型ターボ過給機に延びる上側の分岐部が上記第1バイパス通路を構成していることを特徴とする車両搭載用のターボ過給機付エンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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