説明

車両整備用リフトの油圧回路

【課題】 左右の昇降台に加わる荷重が異なることでリフトアップ時に左右間で段差が発生しても、複雑な制御に頼らず段差を解消する。
【解決手段】 1台のモータ1の回転軸1aの両端に取り付けたギヤポンプ2a,2bにより左右一対の昇降台20に夫々圧油を供給し、昇降台20降下時に、油圧シリンダ10から排出されたオイルをオイルタンク3へ回収させる左右の油圧排出路6の夫々に、油圧の変化に対してオイル流量を反比例させる流量調整弁17を配置し、左右の昇降台20a,20bに加わる荷重に差が生じても、流量調整弁17が油圧シリンダ10から排出されるオイルの流量を調整して、昇降台20の降下状態では左右の昇降台20a,20bに差が生じないようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧シリンダを使用して車両をリフトアップする車両整備用リフトに関し、特に油圧シリンダに圧油を供給する油圧回路に関する。
【背景技術】
【0002】
車両をリフトアップする車両整備用リフトには、駆動源に油圧シリンダを使用したものが普及している。このような車両リフトの中に、左右一対の昇降台を備えて双方を連動させて車両をリフトアップする構成のものがあり、この場合は左右夫々の昇降台に油圧シリンダが配置されている(例えば、特許文献1参照)。
左右に昇降台を配置して夫々油圧シリンダにより駆動するこのようなリフトは、油圧シリンダを同調させて動作させる必要があるため、例えば特許文献2では、1つのモータの回転軸の両端に夫々油圧ポンプを取り付けて、左右の油圧シリンダの同調を図っている。
この特許文献2では、同調させた油圧ポンプにより独立した油圧シリンダを並列駆動させ、オイルタンクを左右分離して左右のオイルタンクの液面が異なる高さになった場合には、油圧ポンプとモータの間に設けた電磁クラッチを継断して同一になるように同調を図った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−315209号公報
【特許文献2】特開平8−231195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献2の技術は、左右の油圧ポンプが同調して駆動されるため、左右の昇降台に加わる荷重に差異がない場合は、左右の昇降台の昇降速度を確実に一致させることができた。また、左右の昇降台に加わる荷重が異なった場合は、昇降動の速度が異なる事態が発生するが、このような場合は電磁クラッチを継断制御することで、並列駆動させている油圧シリンダを同調させ、段差の発生を防いだ。
しかしながら、電磁クラッチを継断させる制御は、継断した際にモータの負荷が大きく変化するため制御が難しかったし、ポンプを切り離した際に惰性が発生するので、これも制御を複雑にしていた。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、モータの両端に油圧ポンプを取り付けた構成の車両整備用の油圧回路において、左右の昇降台に加わる荷重が異なることでリフトアップ時に左右間で段差が発生しても、複雑な制御に頼らず段差を解消することができる車両整備用リフトの油圧回路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、左右一対の昇降台を備えた車両整備用リフトを昇降動させるために左右対称に配置された少なくとも一対の油圧シリンダに、1台のモータの回転軸の両端に取り付けた油圧ポンプにより夫々に圧油を供給する車両整備用リフトの油圧回路であって、昇降台降下時に、油圧シリンダから排出されたオイルをオイルタンクへ回収させる左右の油圧排出路の夫々に、油圧の変化に対してオイル流量が反比例する特性を備えた圧力補償付流量調整弁を配置したことを特徴とする。
この構成によれば、一対の油圧ポンプを同調させて圧油を供給するので、左右の昇降台に加わる荷重が同一であれば上昇する左右昇降台の間で段差が発生することがない。そして、左右の昇降台に加わる荷重が異なり、上昇時に左右の昇降台間で段差が発生したとしても、降下する際には圧力補償付流量調整弁により、大きな荷重が加わり油圧が高い場合は流量を減少させるし荷重が小さく油圧が低い場合は流量を増加させるので、降下動作中に段差を解消させることが可能となる。
よって、左右の昇降台に加わる荷重が異なることでリフトアップした状態で段差が発生した場合でも、リフトダウン状態では左右の昇降台の位置を一致させて平行な状態にすることができ、複雑な制御に頼ることなく自然に段差の発生を解消させることができる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、前記圧力補償付流量調整弁は、油圧が1MPa増加すると流量が0.01〜0.12L/min減少する特性を有することを特徴とする。
この構成によれば、左右の荷重差によりリフトアップ時に左右の昇降台間で段差が発生しても、リフトダウンした際にその段差が解消される。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の構成において、昇降台が上下2段で構成され、夫々に油圧シリンダを配置した車両整備用リフトの油圧回路にあっては、
昇降台降下時に、上下の油圧シリンダは共通の油圧排出路を介してオイルが排出され、同一の前記圧力補償付流量調整弁を通ることを特徴とする。
この構成によれば、2段から成る昇降台を左右に備えたリフトであっても、一対の圧力補償付流量調整弁により、左右の昇降台間で発生する段差を解消することができ、最小限の部材で良好な制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、左右の昇降台に加わる荷重が異なることでリフトアップした状態で段差が発生した場合でも、リフトダウン状態では左右の昇降台の位置を一致させることが可能となり、複雑な制御に頼ることなく自然に段差の発生を解消させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る車両整備用リフトの油圧回路の実施形態を示す回路図である。
【図2】図1の油圧回路により駆動される車両整備用リフトの斜視図である。
【図3】圧力補償付流量調整弁の流量−圧力特性を示す図である。
【図4】本発明に係る車両整備用リフトの油圧回路の他の例を示す回路図である。
【図5】図4の油圧回路により駆動される車両整備用リフトの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係る車両整備用リフトの油圧回路の実施形態の一例を示し、図2はこの油圧回路を備えた車両整備用リフトの斜視図を示している。
図2に示すように、リフトは左右一対の昇降台20(20a、20b)を備え、夫々油圧シリンダ10(左側油圧シリンダ10a,右側油圧シリンダ10b)により昇降動するよう構成されている。よって、このリフトの油圧回路は、図1に示すように一対の油圧シリンダ10に対して圧油を供給する構成となっている。
【0012】
左右の油圧シリンダ10a,10bには、1台のモータ1により駆動される2台の油圧ポンプであるギヤポンプ2(2a,2b)により夫々オイルが供給される。ギヤポンプ2は、モータ1の回転軸1aの両端に夫々接続され、オイルタンク3から吸い上げたオイルが夫々の油圧シリンダ10に供給される。オイルタンク3から吸い上げられたオイルが油圧シリンダ10に供給され、オイルタンク3に回収される油圧回路は、油圧供給のための油圧供給路4と、供給路と排出路を兼務する共通油圧路5と、排出のための油圧排出路6とで構成され、左右の油圧シリンダ10a,10bに対して対称に構成されている。
【0013】
油圧回路を具体的に説明する。油圧供給路4は、ギヤポンプ2がオイルタンク3から吸い上げたオイルの逆流を防止するチェックバルブ7を介し、リフトを停止操作した時に流路を閉鎖する電磁式シャットオフバルブ8に至る経路で形成されている。そして、その経路の途中に油圧排出路6との間に設けられたリリーフバルブ12、負圧を検知する第1の圧力スイッチ13、過負荷を検知する第2の圧力スイッチ14が設けられている。
電磁式シャットオフバルブ8から油圧シリンダ10に至る流路は、供給及び排出の共通油圧路5であり、フィルタ15、高圧ホースに破断等の異常発生時に流路を閉鎖するダウンセーフティバルブ16を介して油圧シリンダ10に接続されている。
【0014】
油圧排出路6は、電磁式シャットオフバルブ8の油圧ポンプ側から分岐されて形成され、圧力補償付流量調整弁(以下、単に流量調整弁とする。)17、電磁チェックバルブ18を介してオイルタンク3に至る経路で形成されている。尚、途中に降下バルブの故障を検知するための第3の圧力スイッチ19が設置されている。
【0015】
流量調整弁17は公知の構成のバルブであり、荷重が重く油圧が大きい場合は流量を抑える方向にオリフィスを調整し、油圧が小さい場合は流量を増加させる方向にオリフィスを調整するものであるが、この図1で使用している流量調整弁17はその特性が従来のものとは異なっている。
この流量調整弁17は、図3に示すような圧力と流量の関係を有している。図3は、ギヤポンプ2の回転数が2000rpmの流量の変化の具体例を示し、油圧が3.4MPaの時の流量が7.7L/min(7.7リットル/分)、油圧が20.6MPaの時の流量が6.1L/minとなり、油圧が1MPa増加すると流量が0.093l/min減少する特性を有している。
【0016】
上記の如く構成された油圧回路により、車両(図示せず)を乗せたリフトの昇降動は次のように行われる。図示しない操作盤を操作してリフトアップ操作が成されると、モータ1が起動してギヤポンプ2はオイルタンク3からオイルを吸い上げ、油圧シリンダ10に対して圧油の供給が開始される。吸い上げられたオイルは、油圧供給路4、共通油圧路5を流れ、油圧シリンダ10に供給され、油圧シリンダ10は伸張動作し、昇降台20が上昇する。
【0017】
尚、リフト上昇時は電磁チェックバルブ18を閉じることにより、オイルが油圧排出路6に流れ出ることはない。また、異常発生時には圧力スイッチ13,14等が作動して、モータ1は停止する。
【0018】
この圧油の供給は、左右のギヤポンプ2a,2bは同一のモータ1の同一の回転軸で駆動されるので同調して動作し、左右の油圧シリンダ10a、10bには同一の油量が供給される。そのため、左右の下部昇降台20a,20bに荷重差があっても、上昇速度に大きな差が出ることが無く、発生する段差は僅かなものとなる。そして、停止操作すると電磁式シャットオフバルブ8がオイルの通過を遮断して油圧シリンダ10は停止し、昇降台20はその位置を保持する。
【0019】
一方、操作盤からリフトダウン操作が成されると、電磁式シャットオフバルブ8、電磁チェックバルブ18が開動作し、油圧シリンダ10から排出されたオイルが共通油圧路5から油圧排出路6に入り、オイルタンク3へ流れて回収される。こうして伸張状態にあった油圧シリンダ10は収縮し、昇降台20が降下する。
そして、この時加わる荷重と流量が反比例する流量調整弁17をオイルが通過するため、結果として左右の昇降台20a,20bに荷重差があって、リフトアップ状態で左右の昇降台20a,20b間に僅かな段差が発生しても、降下速度は加わる荷重の大きい方が遅くなるため、降下してリフトダウンが終了した時点では段差が解消される。
【0020】
このように、左右の油圧ポンプ2a,2bが同調して圧油を供給するので、上昇する左右の昇降台20a、20bの間で段差はほとんど発生しない。そして、左右の昇降台20a,20bに加わる荷重が異なり、上昇時に左右の昇降台間で段差が発生したとしても、降下する際には流量調整弁17により、大きな荷重が加わり油圧が高い場合は流量を減少させるし荷重が小さく油圧が低い場合は流量を増加させるので、降下動作中に段差を解消させることができる。
よって、左右の昇降台20a,20bに加わる荷重が異なることでリフトアップした状態で段差が発生した場合でも、リフトダウン状態では左右の昇降台20a,20bを一致させて平行な状態にすることができ、複雑な制御に頼ることなく自然に段差の発生を解消させることができる。
【0021】
尚、流量調整弁17として、油圧が1MPa増加すると流量が0.931l/min減少する特性のものを使用しているが、この数値はギアポンプ2の特性によっても最適値は変化する。但し、油圧が1MPa増加した場合に、流量が0.01〜0.12L/minの間で減少する特性のものを選択することで、リフトアップ時に発生した左右昇降台20a,20bの段差を自然に解消させることができる。
【0022】
図4は本発明に係る車両整備用リフトの油圧回路の他の例を示し、図5はこの油圧回路を備えた車両整備用リフトの斜視図を示している。図5に示すように、この車両整備用リフトの左右一対から成る昇降台40(40a,40b)は夫々2段に形成され、タイヤを含む車両全体をリフトアップするための下部昇降台41(左側下部昇降台41a,右側下部昇降台41b)と、この下部昇降台41の上で更に車両のタイヤを浮かせるために昇降動する上部昇降台42(左側上部昇降台42a,右側上部昇降台42b)を備えている。尚、左右昇降台40a,40bは左右対称に形成されている。
【0023】
下部昇降台41は前後に昇降機構部を有し、油圧シリンダ(以下、下段油圧シリンダ)30を夫々2台ずつ備え、計4台の下段油圧シリンダを備えている。一方、上部昇降台42には1台の油圧シリンダ(以下、上段油圧シリンダ)31が設けられている。この結果、油圧回路は図4に示すように、左右の昇降台40a,40bに対して、5台ずつ合計10台の油圧シリンダ30,31を備えた構成となっている。
【0024】
そして、この昇降台40に圧油を供給する油圧回路は、油圧供給路4、油圧排出路6、共通油圧路50を備え、左右の昇降台40a,40bに対して対称に構成されている。油圧供給路4と油圧排出路6は上記図1と同様に構成され、油圧供給路4は1台のモータ1の回転軸1aの両端にギヤポンプ2(2a,2b)が接続され、第1の圧力スイッチ13、第2の圧力スイッチ14が設けられている。油圧排出路6は、流量調整弁17、電磁チェックバルブ18、第3の圧力スイッチ19が設けられ、油圧供給路4と油圧排出路6の間はリリーフバルブ12により連結されている。尚、上記図1と同一の構成要素には同一の符号を付与している。
【0025】
共通油圧路50は、電磁式シャットオフバルブ8から下段油圧シリンダ30、及び上段油圧シリンダ31までの油圧回路であり、下段油圧シリンダ30の油圧回路は、夫々ダウンセーフティバルブ16を介して全て連結され、フィルタ15を介して電磁式シャットオフバルブ8(8A)に接続されている。また、上段油圧シリンダ31は、ダウンセーフティバルブ16、フィルタ15を介して電磁式シャットオフバルブ8(8B)に接続されている。電磁式シャットオフバルブ8は、下部昇降台41用に1台、上部昇降台42用に1台設置され、このギヤポンプ側の油圧流路が連結され、油圧供給路4及び油圧排出路6に接続されている。
【0026】
このように2段に構成されたリフトの油圧回路は、次のようにリフトアップ/リフトダウン動作させる。図示しない操作盤を操作してリフトアップ操作が成されると、上記実施形態と同様にモータ1が起動してギヤポンプ2がオイルタンク3からオイルを吸い上げ、下段油圧シリンダ30、或いは上段油圧シリンダ31に対して圧油の供給が開始される。吸い上げられたオイルは、油圧供給路4、共通油圧路50を流れ、下段油圧シリンダ30、或いは上段油圧シリンダ31に供給される。
【0027】
尚、このリフトアップ操作時は電磁チェックバルブ18を閉じることにより、オイルが途中分岐されている油圧排出路に流れ出ることはない。また、下段油圧シリンダ30を駆動する場合は電磁式シャットオフバルブ8Aが開状態、上段油圧シリンダ31に接続された電磁式シャットオフバルブ8Bが閉状態となるし、上段油圧シリンダ31を駆動する場合は、逆に電磁式シャットオフバルブ8Aが閉状態、上段油圧シリンダ31に接続された電磁式シャットオフバルブ8Bが開状態となる。
【0028】
ここでは、リフトアップ動作は最初に下部昇降台41を上昇させ、その後上部昇降台42を上昇させる動作、リフトダウンは最初に上部昇降台42を降下させ、その後下部昇降台41を降下させる動作を説明する。
操作部から下部昇降台41の上昇操作が成されると、モータ1が起動して左右のギヤポンプ2は同一のモータ1の同一の回転軸で駆動されるので同調して動作する。よって、左右の夫々の下段油圧シリンダ30には同一の圧油が供給される。そのため、左右の下部昇降台41a,41bに荷重差があっても、上昇速度に大きな差が出ることが無く、発生する段差は僅かなものとなる。
そして、停止操作すると電磁式シャットオフバルブ8Aが閉状態となりオイルを遮断し、下段油圧シリンダ30は停止して昇降台40(下部昇降台41)は上昇した状態を保持する。
【0029】
この状態で上部昇降台42のリフトアップ操作が成されると、下段油圧シリンダ30が接続された電磁式シャットオフバルブ8Aが閉状態を維持して、上段油圧シリンダ32が接続された電磁式シャットオフバルブ8Bが開状態となり、ギヤポンプ2から供給される圧油により上段油圧シリンダ31が伸張動作し、上部昇降台42が上昇する。尚、異常発生時には圧力スイッチ13,14等が作動して、モータ1は停止する。
【0030】
この上部昇降台42の上昇動作も、左右のギヤポンプ2は同一のモータ1の同一の回転軸で駆動されるので、同調して動作し、左右の上段油圧シリンダ31には同一の圧油が供給される。そのため、左右の上部昇降台42a,42bに荷重差があっても、上昇速度に大きな差が出ることが無く、発生する段差は僅かなものとなる。
そして、停止操作すると電磁式シャットオフバルブ8Bが閉動作してオイルを遮断操作し、上段油圧シリンダ31は伸張した状態で停止し、上部昇降台42は上昇した状態を保持する。
【0031】
こうして上昇した上部昇降台42のリフトダウン操作が成されると、油圧回路は上段油圧シリンダ31の電磁式シャットオフバルブ8Bと、電磁チェックバルブ18が開動作し、上段油圧シリンダ31から排出されたオイルが共通油圧路50、油圧排出路6を経由してオイルタンク3へ排出される。
そして、この時加わる荷重と流量が反比例する流量調整弁17をオイルが通過するため、結果として左右の上部昇降台42a,42bに荷重差があって、リフトアップ状態で左右の上部昇降台42a,42b間に僅かな段差が発生しても、降下速度は加わる荷重の大きい方が遅くなるため、降下が終了した時点で段差は解消される。
【0032】
次に、下部昇降台41のリフトダウン操作が成されると、油圧回路は下段油圧シリンダ30の電磁式シャットオフバルブ8Aと、電磁チェックバルブ18が開動作し、下段油圧シリンダ30から排出されたオイルが共通油圧路50、油圧排出路6を経由してオイルタンク3へ排出される。
この際、上部昇降台42の降下と同様に加わる荷重と流量が反比例する流量調整弁17をオイルが通過するため、結果として左右の昇降台41a,41bに荷重差があって、リフトアップ状態で左右の昇降台41a,41b間に僅かな段差が発生しても、降下速度は加わる荷重の大きい方が遅くなるため、降下してリフトダウンが終了した時点では段差が解消される。
【0033】
このように、ギヤポンプ2を同調させて圧油を供給できるので、上昇する左右の昇降台40a,40bの間で段差はほとんど発生しない。そして、左右の昇降台40a,40bに加わる荷重が異なり、上昇時に左右の昇降台間で段差が発生したとしても、降下する際には流量調整弁17により、大きな荷重が加わり油圧が高い場合は流量を減少させるし荷重が小さく油圧が低い場合は流量を増加させるので、降下動作中に段差を解消させることができる。
そして、2段から成る昇降台40を左右に備えたリフトであっても、一対の流量調整弁17により、左右の昇降台間で発生する段差を解消することができ、最小限の部材で良好な制御を行うことができる。
【0034】
尚、2段構成された昇降台40の昇降操作は、下部昇降台41を上昇させずに上部昇降台42のみ上昇させても良い。この場合、下部昇降台41に接続された電磁式シャットオフバルブ8Aは閉状態のままとなる。また下部昇降台41は、前後一対の昇降機構を備えているが、第1実施形態で示した図2の構成のように1つの昇降機構で構成しても良い。
【符号の説明】
【0035】
1・・モータ、2・・ギヤポンプ(油圧ポンプ)、3・・オイルタンク、4・・油圧供給路、5・・共通油圧路、6・・油圧排出路、8,8A,8B・・電磁式シャットオフバルブ、10・・油圧シリンダ、17・・流量調整弁(圧力補償付流量調整弁)、18・・電磁チェックバルブ、20・・昇降台、30・・下段油圧シリンダ(油圧シリンダ)、31・・上段油圧シリンダ(油圧シリンダ)、40・・昇降台、41・・下部昇降台、42・・上部昇降台、50・・共通油圧路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の昇降台を備えた車両整備用リフトを昇降動させるために左右対称に配置された少なくとも一対の油圧シリンダに、1台のモータの回転軸の両端に取り付けた油圧ポンプにより夫々に圧油を供給する車両整備用リフトの油圧回路であって、
昇降台降下時に、油圧シリンダから排出されたオイルをオイルタンクへ回収させる左右の油圧排出路の夫々に、油圧の変化に対してオイル流量が反比例する特性を備えた圧力補償付流量調整弁を配置したことを特徴とする車両整備用リフトの油圧回路。
【請求項2】
前記圧力補償付流量調整弁は、油圧が1MPa増加すると流量が0.01〜0.12L/min減少する特性を有することを特徴とする請求項1記載の車両整備用リフトの油圧回路。
【請求項3】
昇降台が上下2段で構成され、夫々に油圧シリンダを配置した車両整備用リフトの油圧回路にあっては、
昇降台降下時に、上下の油圧シリンダは共通の油圧排出路を介してオイルが排出され、同一の前記圧力補償付流量調整弁を通ることを特徴とする請求項1又は2記載の車両整備用リフトの油圧回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−57436(P2011−57436A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212262(P2009−212262)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(390018326)株式会社スギヤス (35)
【Fターム(参考)】