説明

車両用の案内及び地上での電気エネルギー取り込み装置、ならびにそのような装置を備える都市交通車両

【課題】人間は裸線に接近できないが、裸線経由で車両に電気エネルギー供給ができ、上部構造から解放された、車両用の地上での電気エネルギーの取り込み及び案内装置により、先行技術の装置の欠点を解決する。
【解決手段】車両(5)用の地上での電気エネルギーの取り込み及び案内装置が、車道(C)に形成され床板(3)で閉じられた溝(2)内に、印加された裸線(22)を備え、車両(5)に接続された取り込み手段(4)が床板(3)の裂け目(32)を通って裸線(22)と接触することで車両(5)が給電され、裸線(22)はレールから成り、取り込み手段(4)は、レール(22)上を走行し、レールにより案内されるワゴンから成り、該ワゴン(4)は関節接続式アーム(6)を介し車両(5)に機械的に接続されており、アーム(6)のワゴン(4)に対する変位の方向及び幅が測定され、車両(5)の方向装置の制御手段に伝送される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の地上での電気エネルギー取り込み及び案内装置、ならびに、そのような装置を備える都市交通車両に関するものである。
【0002】
本発明は、特に、自動または自動ではない、都市公共輸送分野に関するものである。
【背景技術】
【0003】
この都市公共輸送の分野では、多数の技術が公知であり、実現され、多くの成功を収めているものもそうでないものもある。これらの技術は、推進方法によって、及び/もしくは案内方法によって、ならびに/または電気エネルギー取り込み方法によって相違がある。
【0004】
推進は、一般的に電気であり、一方、案内は一つのレールまたは複数のレールを介して行われる。
【0005】
電気エネルギーの取り込み方法に関しては、最も頻繁に使用される技術は、車両の軌道上に架空ケーブルを配置して、そのケーブルに前記車両を接続することからなる。この技術の欠点は主に景観上のものであり、それを解決するために地下で給電する代替案が提案されてきた。
【0006】
地下給電の分野では多数のシステムが公知であるが、それらのシステムは全て、人に危険性を与えることなく、車両へのエネルギー供給を可能にするという同じ要請に応えなければならない。実際、給電は印加された裸線を介して行われるので、当然のことながらそれらの裸線に人間が接近可能であってはならない。
【0007】
最も普及している技術は、例えば、特許文献1及び特許文献2に記載のものであり、それによると、印加された裸線は、車道に形成され、床板によって閉じられた溝内に配置されており、一方、車両に結合された取り込み手段は前記床板に形成された裂け目を通って前記裸線と接触することになる。そのようなシステムは、取り込み手段が裸線と接触し続けるためには、車両の案内がその裸線に対して、したがって、前記溝に対して正確に行われることが必要であり、その結果、少なくとも一つの案内レールを使用することが必要不可欠である。
【0008】
特許文献1では、床板の両側に配置されたレールを介して案内が行われ、そのレールを移動車両が走行し、一方、特許文献2では、床板に形成された裂け目の位置で案内が行われている。
【0009】
ところが、レールによる案内は、都市区域ではカーブが急であるため、多数の欠点を有する。その欠点とは、車両の重量によってかかる圧力が大きいことによる、特に騒音、ならびに、レール及び/または車輪または軸受コロ(galet)の早期摩耗などである。この欠点を解消するためには、利用者の要望を顧みずに、極めて低速で一部の通行を行うことが不可欠である。
【0010】
また、特許文献3及び特許文献4によって、地中に埋められた案内及び動力装置が公知であり、その装置も同様に溝を備えており、その溝内を牽引車が移動することができ、それによって、路面で案内される車両を引っ張る。
【0011】
特許文献3では、牽引車は溝の側方の鉛直壁上を走行し、前記溝の内部に生成した力学的エネルギー源によって動かされる。そのような装置は、装置を構成する部品の摩耗に関係する欠点、及び、モータ手段が溝内に収容されており、機能不全の場合直接介入する可能性がほとんどないので安全性の欠点を有する。さらに、また、路面での車両のレールによる案内には、騒音と摩耗の欠点がある。
【0012】
特許文献4は、また、下部構造内を走行し、前進に必要なエネルギーを前記下部構造の天井板に沿って配置された裸線上で取り込む牽引車を記載しているが、一方で、路面車両はレール上を走行し、上記と同じ欠点を有している。
【0013】
特許文献5が目的とする車両は、二つの動力装置を備えるという特徴を有し、一方では燃焼モータを備え、他方では静寂が必要とされる場所及び/または排気ガスを放出してはいけない場所を通行するときには燃焼モータから交代するための電気エネルギーで作動する地下牽引車に接続されている。車両は側方のガイドレールを介して路面上を案内され、そのガイドレールに対して鉛直軸を有する側方車輪が回転する。この車両はレールによる案内という欠点を有してはいないが、ガイドレール付きの専用レーンを必要とするため依然として場所をふさぐ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
既存の車両用電気エネルギー取り込み及び案内装置は、主として地上の車両案内手段の点でいずれも欠点を有している。本発明は、人間が裸線に接近することはできないが、その裸線を介して車両に電気エネルギーを供給することができ、また、下部構造のみを必要とし、上部構造から解放されることができる、車両用の地上での電気エネルギー取り込み及び案内装置を提案して、上記の様々な問題点を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明による車両用の地上での電気エネルギー取り込み及び案内装置は、車道に形成され、床板によって閉じられた溝内に配置された印加された裸線を備えており、一方では取り込み手段は前記床板に形成された裂け目を通って前記裸線と接触し、他方では前記車両は、前記取り込み手段を介して給電され、前記車両を直接または間接的に動かすことができる電気モータを備えており、該装置は、前記裸線がレールから成り、前記取り込み手段が、前記レール上を走行し、レールによって案内されるのに適したワゴンから成ること、及び、前記ワゴンが関節接続式アームを介して前記車両に機械的に接続されており、前記ワゴンに対する前記アームの変位の方向及び幅を測定し、これらのデータを前記車両の方向装置の制御手段に伝送するのに適するように備えられた測定手段を備え、したがって、前記車両の軌道を修正することが可能であることを特徴とする。
【0016】
車両の案内は、車両の方向装置に作用することによって行われる。レールの方向が変化するとき、ワゴンはレールに従うが、車両は従わず、それによって、ワゴンに対して、さらに詳細には、前記ワゴンの移動主軸に対して関節接続式アームの変位が生じる。測定手段は、アームのこの変位の方向及び幅を感知し、これらのデータは方向装置の制御手段に伝送され、そのとき、制御手段は車両の軌道を修正する。
【0017】
本発明による地上での電気エネルギー取り込み及び案内装置の補足的な特徴によると、ワゴンは四つの車輪を備え、その各々が円錐形の回転体とガイド用フランジ付きであり、二つずつ回転式に接続されており、一方、レールはマッシュルーム型である。
【0018】
本発明による地上での電気エネルギー取り込み及び案内装置の補足的な別の特徴によると、ワゴンは関節接続式アームの前方に配置されており、車両によって押される。
【0019】
本発明による地上での電気エネルギー取り込み及び案内装置の補足的なまた別の特徴によると、ワゴンは関節接続式アームの後方に配置されており、車両によって引かれる。
【0020】
本発明による地上での電気エネルギー取り込み及び案内装置のさらに別の補足的な特徴によると、関節接続式アームはほぼ水平な部分を備えており、その一方の端部が玉継ぎ手型の第一のジョイントによって車両に接続され、もう一方の端部が玉継ぎ手型の第二のジョイントによって、ワゴンから立ち上がって縦方向の裂け目にはめ込まれている支柱に接続されており、前記第二のジョイントは車道に形成された溝を閉じる床板の上に配置されている。
【0021】
本発明による地上での電気エネルギー取り込み及び案内装置のさらにまた別の補足的な特徴によると、関節接続式アームは制御手段に結合されており、その制御手段は一方では前記アームと車両の長手方向の軸が形成する角度を測定するのに適した取り込み手段と、他方では比例的な軌道修正を可能にするのに適した前記車両の方向に作用する手段を備える。
【0022】
そのような地上での電気エネルギー取り込み及び案内装置は、都市交通の分野で特に用途があり、公共輸送用の自動または自動ではない軽量の車両を実現することができる。
【0023】
したがって、本出願は、また、ゴムタイヤ車輪すなわちタイヤ上に取り付けられ、床板によって閉じられた溝をまたいで車道を自由に走行し、上記のような地上での電気エネルギー取り込み及び案内装置によって電気エネルギーを供給され、案内される、都市公共輸送用の車両を目的とする。
【0024】
車両は、好ましくは、一定速度で回転する非同期または同期電気モータによって駆動される容量可変の油圧ポンプによって実現され、一つまたは複数の油圧モータを駆動する油圧型の推進装置を備える。
【0025】
本発明による地上での電気エネルギー取り込み及び案内装置の利点及び特徴は、以下の添付図面を参照して行う説明からより明らかになるものであり、該添付図面には実施態様が記載されているが、本発明を何ら限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による地上での電気エネルギー取り込み及び案内装置の概略的な横断面図である。
【図2】同一装置の一部の概略的な平面図である。
【図3】同一装置の概略的な側面の部分図である。
【図4】本発明による地上での電気エネルギー取り込み及び案内装置を備える車両の概略的な側面図である。
【図5】同一の車両の概略的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1を参照すると、車道Cに配置されるための本発明による地上での電気エネルギー取り込み及び案内装置1が図示されている。
【0028】
この装置1は、コンクリートで形成された溝2を備えており、その溝の上部は縦方向の裂け目32によって分離された二つの部分30及び31によって形成された床板3によって閉じられており、その裂目の幅は人の手が入ることのできないものであり、したがって、溝2に接近することはできない。
【0029】
溝2は、下部で縦方向に堀20を有し、その堀20の両側の側面で、その真ん中の高さに二つの凸出部21が配置されており、それらの凸出部は各々レール22及び、凸出部21とレール22との間に差し込まれた電気絶縁性材料製の部品23を支持している。
【0030】
溝2は、また、凸出部21の高さの上方に、側方及び縦方向に形成された切り欠き24を備えており、その切り欠きは、図示していないが溝2に環状に配置された変圧器に給電することのできる高圧導体25を収容している。そのような変圧器は、裸線を構成するレール22に印加するためのものである。
【0031】
また図2を参照すると、レール22上には、四つの車輪41に取り付けられたシャーシ40を備えるワゴン4が配置されているのが分かる。
【0032】
車輪41は、鉄道型であり、金属製で、円錐形の回転体42及びガイド用フランジ43を備えており、レール22はマッシュルーム型である。
【0033】
また図3を参照すると、ワゴン4は、関節接続式アーム6を介して、溝2の上方で、車道Cを走行する車両5に連結されている。アーム6はほぼ水平な部分60を備え、その端部の一方が玉継ぎ手61を介して車両5に接続されており、もう一方の端部が玉継ぎ手62を介してワゴン4に、より正確にはワゴン4に固定して連結された支柱44の端部に接続されている。その支柱は、床板3の裂け目32を通って、溝2から鉛直に突き出している。
【0034】
床板は、オプションとして可撓性の材料製のふた部品33を備え、そのふた部品は図1に示した裂け目32を覆うのに適し、支柱44が通過するときには引っ込む。
【0035】
関節接続式アーム6は図示していないが導電体を収容しており、それにより、車両5にレール22上で車輪41によって取り込まれた電気エネルギーを伝導することができる。この電気エネルギーは、車両5の移動を駆動するのに適したモータ手段に給電するために使用される。
【0036】
好ましい一実施態様によると、レールは、50Hzの単相で、1000V未満の低圧電流によって給電され、一定速度で回転する非同期または同期電気モータに給電し、容量可変の油圧ポンプを駆動し、油圧ポンプ自体は一つまたは複数の油圧モータに給電する。
【0037】
電気モータ、油圧ポンプ及び一つまたは複数の油圧モータは、図4及び図5に図示したような車両5内に設置されている。この車両5は、ゴムタイヤ車輪50すなわちタイヤ上に取り付けられており、車両5が接続されたワゴン4に案内されて、車道上を自由に走行するように設計されている。
【0038】
そのため、車両5は、操舵輪である車輪50に作用する方向装置を備え、それらの方向装置は制御手段によって管理されており、該制御手段は、関節接続式アーム6の部分60が例えば車両の長手方向の軸と形成する角度差、すなわち、操舵輪である車輪50の向いている方向を測定することができる手段を備え、したがって、図5に示したように、車両の軌道を修正するために方向装置に作用する。
【0039】
ワゴン4は、電気エネルギーの取り込みに加えて、レール22に車輪41の応力を全くかけずに、車両5を確実に案内することができ、したがって、大きな騒音も接触部品の摩耗もほとんど起こらないことがわかる。
【0040】
ワゴン4は、車両5によってレール22上で押されているが、ワゴン4が引かれる別の形態を考えることももちろん可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 電気エネルギー取り込み及び案内装置
2 溝
20 堀
21 凸出部
22 レール
24 切り欠き
3 床板
32 裂け目
4 ワゴン
41 車輪
40 シャーシ
42 回転体
43 ガイド用フランジ
44 支柱
5 車両
6 アーム
61、62 玉継ぎ手
C 車道
【先行技術文献】
【特許文献】
【0042】
【特許文献1】特開昭62−181929号公報
【特許文献2】欧州特許第1694525号明細書
【特許文献3】仏国特許発明第2613305号明細書
【特許文献4】独国特許発明第76067号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第3601128号明細書

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(5)用の地上での電気エネルギー取り込み及び案内装置であって、車道(C)に形成され、床板(3)によって閉じられた溝(2)内に配置された印加された裸線(22)を備えており、一方では取り込み手段(4)は前記床板(3)に形成された裂け目(32)を通って前記裸線(22)と接触し、他方ではエネルギーは前記取り込み手段(4)を介して供給され、前記車両(5)を直接または間接的に動かすことができる装置において、前記裸線がレール(22)から成り、前記取り込み手段が、前記レール(22)上を走行し、レールによって案内されるのに適したワゴン(4)から成ること、及び、前記ワゴンが関節接続式アーム(6)を介して前記車両に機械的に接続されており、前記ワゴン(4)に対する前記アーム(6)の変位の方向及び幅を測定し、これらのデータを前記車両(5)の方向装置の制御手段に伝送するのに適するように備えられた測定手段を備え、したがって、該車両の軌道を修正することが可能であることを特徴とする装置。
【請求項2】
ワゴン(4)が四つの車輪(41)を備え、その各々が円錐形の回転体(42)とガイド用フランジ(43)付きであり、二つずつ回転式に接続されており、一方、レール(22)がマッシュルーム型であることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
ワゴン(4)が関節接続式アーム(6)の前方に配置されており、車両(5)によって押されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の装置。
【請求項4】
ワゴン(4)が関節接続式アーム(6)の後方に配置されており、車両(5)によって引かれることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の装置。
【請求項5】
関節接続式アーム(6)がほぼ水平な部分(60)を備えており、その一方の端部が玉継ぎ手型の第一のジョイント(61)によって車両(5)に接続され、もう一方の端部が玉継ぎ手型の第二のジョイント(62)によって、ワゴン(4)から立ち上がって縦方向の裂け目(32)にはめ込まれている支柱(44)に接続されており、前記第二のジョイント(62)は車道(C)に形成された溝(2)を閉じる床板(3)の上に配置されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項6】
関節接続式アーム(6)が制御手段に結合されており、その制御手段が一方では前記アーム(6)と車両(5)の長手方向の軸が形成する角度を測定するのに適した取り込み手段と、他方では比例的な軌道修正を可能にするのに適した前記車両(5)の方向に作用する手段を備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
ゴムタイヤ車輪(50)すなわちタイヤ上に取り付けられ、床板(3)によって閉じられた溝(2)をまたいで車道(C)を自由に走行する都市公共輸送用車両であって、請求項1〜6のいずれか一つに記載された地上での電気エネルギー取り込み及び案内装置(1)によって電気エネルギーを供給され、案内されることを特徴とする車両。
【請求項8】
一定速度で回転する非同期または同期電気モータによって駆動される容量可変の油圧ポンプによって実現され、一つまたは複数の油圧モータを駆動する油圧型の推進装置を備えることを特徴とする、請求項7に記載の車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2010−538600(P2010−538600A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523574(P2010−523574)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【国際出願番号】PCT/FR2008/051592
【国際公開番号】WO2009/044057
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(510062103)
【氏名又は名称原語表記】LEVIDAC TWO
【Fターム(参考)】