説明

車両用アウトサイドミラー

【課題】車両が車線変更及び後進する場合、後方視野を効果的に確保できる車両用アウトサイドミラーを提供する。
【解決手段】車両の後方視野を確保するために車体の側部に設置される車両用アウトサイドミラーであって、前面ガラス100、前面ガラスの後面に装着され電気信号によって選択的に光を透過させる透過率可変ユニット200、透過率可変ユニットの後面に装着される後面ガラス300、及び透過率可変ユニットに電気信号を印加する制御部を含んでなり、透過率可変ユニット200は、前後側に配置された透明伝導膜210と、透明伝導膜の間に備えられる液晶分子220及びポリマー230とを含み、電源の印加の際、液晶分子220が電界方向に整列して光を通過することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用アウトサイドミラーに係り、より詳しくは電気信号の印加の有無によって平面ミラーと凸面ミラーを選択的に適用して後方視野を効果的に確保することができる車両用アウトサイドミラーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両には、運転手の後方視野を確保するためのアウトサイドミラーが装着される。そして、運転手は、車線変更の際、アウトサイドミラーによって変更すべき車線及び後方から進行している車両の有無を確認した後、方向指示灯を点灯して自車の進行方向を周囲の車両に知らせて車線を変更する。
【0003】
図5に示すとおり、車両用アウトサイドミラーは、車体の側部に装着されるミラーハウジング10と、ミラーハウジング10に装着され、運転手が後方及び側方を注視することができるミラー20とからなる。
ところで、従来のサイドミラーには、走行の際、車両の側後方から近づく車両を認識ができない死角が存在した。走行中、死角に隠れていた車両が急に現れた時、運転手は、車両の衝突事故を防ぐために、上身体を回すか首を捻って後方を見なければならない不便さがあるのはもちろんのこと、瞬間的に前方視線から目を離すことになり、歩行者または前方で進行する車両と衝突する危険性が増大する。
【0004】
一方、車両が後進する場合には、後方の下側視野を確保するために、手動でミラーを下方に調節するか、あるいはアクチュエータを利用してミラーを下方に調節する。
この場合、ミラーを操作した後、元の位置に正確に復帰操作することが難しく、また、アクチュエータには機械的な作動の故障発生の恐れがあるという問題があった。
【0005】
このような問題を解決するために、最近、ミラーの一側に凸面ミラーを設置することで、走行中の死角をなくしたり、後進の際の後方視野を確保しようとする技術が提案された(特許文献1〜3参照)。しかし、提案された従来技術は、ミラーの表面より凸面部が外部に突出する構造のため、凸面ミラーが外部環境によって損傷したり、脱落することが頻繁に発生していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−227233号公報
【特許文献2】特開2009−149272号公報
【特許文献3】特開平08−268168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記のような問題点を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、車両が車線変更あるいは後進しようとする場合、後方視野を効果的に確保できる車両用アウトサイドミラーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の車両用アウトサイドミラーは、車両の後方視野を確保するために車体の側部に設置される車両用アウトサイドミラーであって、前面ガラス、前記前面ガラスの後面に装着され電気信号によって選択的に光を透過させる透過率可変ユニット、前記透過率可変ユニットの後面に装着される後面ガラス、及び前記透過率可変ユニットに電気信号を印加する制御部を含むことを特徴とする。
【0009】
前記透過率可変ユニットは、前後側に配置された透明伝導膜と、前記透明伝導膜の間に備えられる液晶分子及びポリマーとを含み、電源の印加の際、液晶分子が電界方向に整列して光を通過することができる。
前記前面ガラスは車両の全体後方視野を確保するための平面ミラーを構成し、前記後面ガラスは、電気信号の印加の際、車両の部分的な後方視野を拡大するための凸面ミラーで構成されることがよい。
【0010】
前記制御部は、車両が車線変更する場合及び変速機レバーが後進段に位置する場合、前記透過率可変ユニットに電気信号を印加することができる。
前記前面ガラス及び後面ガラスは、EVAフィルムを介して透過率可変ユニットと接合されることがよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、次のような著しい効果が得られる。
(1)本発明は一つのアウトサイドミラーで平面ミラー及び凸面ミラーを選択的に利用することができるので、車両が車線を変更する場合あるいは後進する場合に後方視野の拡大を安定して確保でき、車両走行の安全性を高めることができる利点がある。
(2)本発明は電気信号を利用して平面ミラー及び凸面ミラーを選択的に採用することができるので、アクチュエータのような機械的な作動による故障発生を未然に防止して、製品の信頼感を得ることができる。
(3)本発明のアウトサイドミラーの前面ガラスは平面ミラーを構成するため、最近提案された前面ミラーの一側に凸面ミラーを設置したミラーのような突起物はなく、外部環境によって損傷を受けることがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(A)は本発明の一実施例による車両用アウトサイドミラーを示す斜視図であり、(B)は本発明の他の実施例による車両用アウトサイドミラーを示す斜視図である。
【図2】本発明による車両用アウトサイドミラーの透過率可変ユニットの構成を示す、図1(A)のA−A’断面図である。
【図3】(A)は電気信号が印加されていない透過率可変ユニットの状態を示す状態図であり、(B)は電気信号が印加されていない状態の車両用アウトサイドミラーの状態図である。
【図4】(A)は電気信号の印加された透過率可変ユニットの状態を示す状態図であり、(B)は電気信号が印加された状態の車両用アウトサイドミラーの状態図である。
【図5】従来の車両用アウトサイドミラーの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面に基づいて本発明の実施例を詳細に説明する。
図1(A)及び図2に示したとおり、本発明による車両用アウトサイドミラーは、電気信号によって選択的に作動する前面ガラス100及び後面ガラス300によって、車両が車線変更する場合及び後進する場合、後方視野を効果的に確保できるようにするものである。
【0014】
このようなアウトサイドミラーは、車体の側部に装着されるミラーハウジング510、ミラーハウジング510に装着される前面ガラス100、透過率可変ユニット200、後面ガラス300、EVAフィルム600及び制御部400を含んで構成される。ここで、アウトサイドミラーの前方とは、アウトサイドミラーを基準として車両の後方側を意味し、アウトサイドミラーの後方とはアウトサイドミラーを基準として車両の前方側を意味する。
【0015】
前面ガラス100はミラーハウジング510の外側、例えばアウトサイドミラーの前方側に設置されるガラスで、好ましくは車線変更のない通常の走行時に車両の全体的な後方視野をうつす平面ミラーを構成する。この前面ガラス100はEVAフィルム600を介して透過率可変ユニット200と接合される。
【0016】
ここで、EVAフィルム600は、エチレン酢酸ビニル樹脂(EVA:Ethylene Vinyl Acetate)で、透明性、柔軟性、接着力、耐候性などに優れたポリマーからなり、熱を加えれば無色透明になる。特に、EVAフィルム600は太陽光の損失が少なく、耐水性、耐紫外線等に優れる特徴を持つ。このEVAフィルム600はEVAポリマーを基材にして架橋剤、UV吸収剤、接着剤などを混合して、押出機あるいは圧延機によってフィルムに成形される。
【0017】
本実施例において、EVAフィルム600は、透過率可変ユニット200を前面ガラス100及び後面ガラス300にそれぞれ接合させ、電気信号によって熱が加わると無色透明になり、前面ガラス100を透過した光を透過率可変ユニット200に到達するようにする。
透過率可変ユニット200は、電気信号を印加すると、液晶分子が電界方向に整列して光を通過させる構造のもので、好ましくはポリマー組立LCD(Polymer Assembled LCD)で構成される。
【0018】
ポリマー組立LCDは、アウトサイドミラーの前方側と後方側に配置された透明伝導膜210と、透明伝導膜210の間に組み込まれて構成された液晶分子220及びポリマー230とを含む。このポリマー組立LCDは、電気信号が印加されていないときには、液晶分子220が無秩序に配列するため、光を散乱し、外見上は不透明になる。
一方、電気信号が印加されると、無秩序に配列していた液晶分子220が電界方向に従って整列するため、光を透過し、透明になる。
後面ガラス300はミラーハウジング510の内側、例えばアウトサイドミラーの後方側に設置されるガラスで、好ましくは後方視野を部分的に拡大させることができる凸面ミラーで構成される。そして、後面ガラス300はEVAフィルム600を介して透過率可変ユニット200と接合される。
【0019】
したがって、運転手が車線を変えるかあるいは後進して駐車する場合、制御部400からの電気信号が透過率可変ユニット200に印加され、前面ガラス100及び透過率可変ユニット200を通過した光は後面ガラス300の凸面ミラーで反射されて拡大された後方視野が確保される。
本発明の本実施例において、図1(A)に示したとおり、後面ガラス300は、前面ガラス100の一部の面積を占めるように前面ガラス100の一側に配置されているが、図1(B)に示すように、後面ガラス300が前面ガラス100の全面積を占めるように構成することもできる。
【0020】
透過率可変ユニット200に印加される電気信号は制御部400によって調節される。制御部400は、車両が車線を変更しようとする場合あるいは変速機レバーが後進段に位置する場合、透過率可変ユニット200に電気信号を印加することにより、後面ガラス300によって後方視野を拡大してうつすようにするものである。
このために、車両には、方向指示灯と連動して、車両の車線変更を感知する感知センサー(図示せず)と、後進段に位置する変速機レバーを感知するための感知センサー(図示せず)が設置される。これらの感知センサーは、車両の車線変更または後進を感知した後、該当感知信号を制御部400に伝達し、制御部400は感知センサーの感知信号を受けて透過率可変ユニット200に電気信号を印加する。
本実施例においては、車両が車線を変更する場合あるいは後進する場合を例として、透過率可変ユニット200の作動を説明したが、車両が車線変更する場合あるいは後進する場合の外にも、別の作動スイッチによって随意に電気信号を透過率可変ユニット200に印加する構成とすることも可能である。
【0021】
上記構成の本発明の車両用アウトサイドミラーの作動過程を以下に説明する。
図3(A)及び図3(B)に示したとおり、車線変更も後進もない通常走行時には、電気信号が透過率可変ユニット200に印加されない状態が維持される。よって、透過率可変ユニット200内の液晶分子220は無秩序に配置されて光を散乱し、透過率可変ユニット200は不透明な状態に維持される。
この状態で外部の光が前面ガラス100に入射すると、前面ガラス100に入射した光は透過率可変ユニット200の前面側で反射され、運転手は平面ミラーにうつる車両の後方の状況を認識することができる。
【0022】
一方、図4(A)及び図4(B)に示すように、車両が車線変更しようとする場合及び変速機レバーが後進段に位置する場合には、制御部400は透過率可変ユニット200に電気信号を印加する。すると透過率可変ユニット200内の液晶分子220は、電界方向に沿って整列して光を通過させ、透過率可変ユニット200は透明な状態となる。
この状態で、前面ガラス100に入射した外部の光は、透過率可変ユニット200を通過した後、後面ガラス300で反射され、凸面ミラーによって拡大され、本発明のアウトサイドミラーは、上記の平面ミラーにうつる車両の後方視野より更に広範囲の後方視野をうつすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、電気信号の印加の有無によって平面ミラーと凸面ミラーを選択的に使用して後方視野を効果的に確保することができるため、車両用アウトサイドミラーとして好適である。
【符号の説明】
【0024】
100 前面ガラス
200 透過率可変ユニット
210 透明伝導膜
220 液晶分子
230 ポリマー
300 後面ガラス
400 制御部
600 EVAフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後方視野を確保するために車体の側部に設置される車両用アウトサイドミラーであって、
前面ガラス(100)、
前記前面ガラス(100)の後面に装着され電気信号によって選択的に光を透過させる透過率可変ユニット(200)、
前記透過率可変ユニット(200)の後面に装着される後面ガラス(300)、及び
前記透過率可変ユニット(200)に電気信号を印加する制御部(400)
を含むことを特徴とする車両用アウトサイドミラー。
【請求項2】
前記透過率可変ユニット(200)は、前後側に配置された透明伝導膜(210)と、前記透明伝導膜(210)の間に備えられる液晶分子(220)及びポリマー(230)とを含み、電源の印加の際、前記液晶分子(220)が電界方向に整列して光を通過することを特徴とする請求項1に記載の車両用アウトサイドミラー。
【請求項3】
前記前面ガラス(100)は車両の全体後方視野を確保するための平面ミラーを構成し、前記後面ガラス(300)は、電気信号の印加の際、車両の部分的な後方視野を拡大するための前記凸面ミラーで構成されることを特徴とする請求項1に記載の車両用アウトサイドミラー。
【請求項4】
前記制御部(400)は、車両が車線変更する場合及び変速機レバーが後進段に位置する場合、前記透過率可変ユニット(200)に電気信号を印加することを特徴とする請求項1に記載の車両用アウトサイドミラー。
【請求項5】
前記前面ガラス(100)及び前記後面ガラス(300)は、EVAフィルム(600)を介して前記透過率可変ユニット(200)と接合されることを特徴とする請求項1に記載の車両用アウトサイドミラー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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