説明

車両用イオン発生装置

【課題】比較的簡易な方法または構成で鉄道等の車両の乗客の数を推定し、且つ、その推定した乗客の数に応じてイオン供給部を制御することにより、車両の内部の空気を効率よく浄化することができる車両用イオン発生装置を提供する。
【解決手段】イオン発生装置2は、検知部5とイオン供給部20と制御部27とを備えている。検知部5は、車両の上部に設けられた複数の吊手のうちの少なくとも一つの吊手に設けられている。検知部5は、検知部5が設けられている吊手を乗客が把持しているか否かを検知する。イオン供給部20は、車両の内部にイオンを供給する。制御部27は、検知部5による検知に基づき、検知部5が設けられている吊手を乗客が把持しているか否かを判断する。また、制御部27は、検知部5が設けられている吊手を乗客が把持しているか否かの判断に応じてイオン供給部20を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用イオン発生装置およびそれを備えた鉄道等の車両に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道等の各種の車両には、汚れた外気に曝された乗客が出入りする。この際、車両に乗り込む乗客が外気に含まれる菌、花粉、埃等を車両の内部に持ち込んでしまうような状況が考えられる。特に、雨の日等は、車両に乗り込む乗客の靴または傘等が、濡れた状態のままで車両の内部に持ち込まれる。このため、車両の床面は、菌、花粉、埃等と雨水とが溜まった状態になる。
【0003】
菌、花粉、埃等は、目に見えない微小なものであって、通常は空気中を浮遊するものである。そして、菌、花粉、埃等は、時間の経過と共に自然落下し、最終的には床面または地面にまで落ちていく。そのため、車両の床面付近は、菌、花粉、埃等が非常に多い状態となっている。車両の床面付近に落下した後の菌は、車両の内部の環境条件によっては多く繁殖し、車両の床面に多数の菌が生息していることがある。特に、雨の日は車両の床面が濡れていることがあり、雨の日の車両の床面は菌の繁殖に絶好のコンディションとなってしまう。
【0004】
以上のように、車両の床面および床面付近には、菌、花粉、埃等が多く存在している。これらの菌等が車両に乗り込む乗客に付着する場合には、乗客に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0005】
例えば、特開2006−69427号公報(以下、特許文献1という)では、イオン制御車両が提案されている。特許文献1に係るイオン制御車両は、車両の内部にイオンを供給するイオン供給部を備えており、イオンの量等を車両の座席ごとに調整するようにイオン供給部を制御している。これにより、特許文献1に係るイオン制御車両では、車両の内部の空気を浄化することができる。
【0006】
ところで、鉄道等の車両は、通勤通学等の時間帯のように非常に混雑している場合もあれば、非常に空いている時間帯の場合もある。特開2005−82088号公報(以下、特許文献2という)には、車両の乗客の数を検出する手段を備えた空調制御システムが開示されている。また、特開2009−286196号公報(以下、特許文献3という)には、車両の乗客の数を推定する手段を備えた鉄道用車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−69427号公報
【特許文献2】特開2005−82088号公報
【特許文献3】特開2009−286196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
車両の内部が混雑しているときには、乗客が持ち込んだ浮遊菌、花粉、埃等が車両の内部に多く存在し、風邪を引いた乗客が乗車している場合にはウィルスも車両の内部を浮遊する。一方、乗客が少ないときには、車両の内部に浮遊する菌等が少なくなる。そのため、特許文献1に開示されるようなイオン供給部を用いて車両の内部の除菌または脱臭を行う際は、車両の乗客の数に応じてイオン供給部を制御することが望ましい。
【0009】
特許文献2に係る空調制御システムの乗客の数を検出する手段は、車両のエアサスに負荷される圧力によって乗客の数を推定するものである。また、特許文献3に係る鉄道用車両の乗客の数を推定する手段は、フレネルレンズを介して乗客から出力される赤外線を焦電素子で検出することに基づいている。このように、特許文献2に係る空調制御システムの手段または特許文献3に係る鉄道用車両の手段は、非常に複雑である。そのため、既存の鉄道等の車両を改造して特許文献2に係る空調制御システムの手段、または、特許文献3に係る鉄道用車両の手段を利用することは困難である。例えば在来線等の安価な鉄道車両については、比較的簡易な方法または構成によって乗客の数を推定することが望ましい。
【0010】
そこで、この発明の目的は、比較的簡易な方法または構成で鉄道等の車両の乗客の数を推定し、且つ、その推定した乗客の数に応じてイオン供給部を制御することにより、車両の内部の空気を効率よく浄化することができる車両用イオン発生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に従った車両用イオン発生装置は、検知部とイオン供給部と制御部とを備えている。検知部は、車両の上部に設けられた複数の吊手のうちの少なくとも一つの吊手に設けられている。検知部は、検知部が設けられている吊手を車両の乗客が把持しているか否かを検知する。イオン供給部は、車両の内部にイオンを供給する。制御部は、検知部による検知に基づき、検知部が設けられている吊手を車両の乗客が把持しているか否かを判断することに応じ、イオン供給部を制御する。
【0012】
この発明によれば、複数の吊手のうちの少なくとも一つの吊手に設けられた検知部による検知に基づき、制御部はその少なくとも一つの吊手を乗客が把持しているか否かを判断する。一般的に、車両が混雑しておらず座席が空いている場合は、乗客の多くは座席に座り、乗客が吊手を把持する状況は少ない。一方、車両が混在している場合は、乗客のうちの何人かは、車両の中で立って吊手を把持する。そのため、複数の吊手のうちの検知部が設けられた吊手を乗客が把持していることを制御部が判断する場合は、座席に座ることができないほどの数の乗客が車両に乗車し、車両の中が混雑していることが推測できる。一方、検知部が設けられた吊手を乗客が把持していないことを制御部が判断する場合は、車両の乗客の数が比較的少なく、車両の中がそれ程混雑していないことが推測できる。このように、少なくとも一つの吊手に検知部を設けることにより、車両の中が混雑しているか否かを推測することができ、この推測によって乗客の数を推定することができる。これにより、制御部は、推定された乗客の数に応じてイオン供給部を制御することができる。そのため、車両に設置された車両用イオン発生装置は、推定された乗客の数に応じて車両の内部の空気を効率よく浄化することができる。
【0013】
また、この発明によれば、少なくとも一つの吊手に検知部を設けるといった比較的簡易な方法または構成により、車両の中が混雑しているか否か、すなわち車両の乗客の数を推定することができる。
【0014】
この発明に従った車両用イオン発生装置は、第1の乗降ドアと第2の乗降ドアとが備えられた車両に設置されることが好ましい。第1の乗降ドアは、車両の幅方向の一側に配置されたものである。第2の乗降ドアは、第1の乗降ドアと車両の幅方向に関して同じ側に設けられている。第2の乗降ドアは、車両の長手方向に関して、第1の乗降ドアと隣り合い、第1の乗降ドアから距離を隔てて配置されている。また、この発明に従った車両用イオン発生装置では、検知部は、第1の吊手または第2の吊手に設置されていることが好ましい。第1の吊手は、複数の吊手のうちのいずれか一つの吊手である。第1の吊手と第1の乗降ドアとの間は、車両の長手方向に関して第1の距離で互いに離間している。第1の吊手と第2の乗降ドアとの間は、車両の長手方向に関して第2の距離で互いに離間している。第1の吊手は、第1の距離と第2の距離との差が複数の吊手のうちで最も小さい位置に配置されている。一方、第2の吊手は、第1の吊手と隣り合う吊手である。
【0015】
この発明によれば、車両用イオン発生装置に備えられる検知部の数は、必要最小限の数でよい。車両の中が乗客で混雑し始め、やがて座席が満席となった場合は、乗降ドアの周辺に乗客が立つような状況が一般的に多くなる。さらに乗客が増えて車両が混雑した状態となった場合は、乗降の際に不便であるような乗降ドアから離れた位置にも乗客が立つ状況が現れる。ところで、この発明に従った検知部は、第1の乗降ドアと第2の乗降ドアとの略中間位置に配置された吊手に設置されている。第1の乗降ドアと第2の乗降ドアとの略中間位置は、第1の乗降ドアと第2の乗降ドアとから離れている。そのため、検知部が設けられた吊手を乗客が把持する場合は、車両の中が混雑した状態であることが推測される。この推測により、乗客の数を推定することができる。すなわち、この発明によれば、必要最小限の数の検知部によって乗客の数を効率よく推定することができる。これにより、制御部は、推定された乗客の数に応じてイオン供給部を制御することができる。そのため、車両に設置された車両用イオン発生装置は、推定された乗客の数に応じて車両の内部の空気を効率よく浄化することができる。
【0016】
この発明に従った車両用イオン発生装置は、車両の長手方向の一端に配置された壁が備えられた車両に設置されることが好ましい。また、この発明に従った車両用イオン発生装置では、検知部は、第3の吊手または第4の吊手に設置されていることが好ましい。第3の吊手は、複数の吊手のうちのいずれか一つの吊手である。第3の吊手と壁との間は、車両の長手方向に関して第3の距離で互いに離間している。第3の吊手は、第3の距離が複数の吊手のうちで最も小さい位置に配置されていることが好ましい。一方、第4の吊手は、第3の吊手と隣り合う吊手である。
【0017】
この発明によれば、車両用イオン発生装置に備えられる検知部の数は、必要最小限の数でよい。この発明に従った検知部は、複数の吊手のうち壁との間隔が最も小さい位置に配置された第3の吊手または第3の吊手と隣り合う第4の吊手に設置されている。複数の吊手のうちで壁との間隔が最も小さい位置は、複数の吊手のうちで車両の長手方向の一端に最も近い位置である。そのため、検知部が設けられた吊手を乗客が把持する場合は、車両の中が混雑した状態であることが推測される。この推測により、乗客の数を推定することができる。すなわち、この発明によれば、必要最小限の数の検知部によって乗客の数を効率よく推定することができる。これにより、制御部は、推定された乗客の数に応じてイオン供給部を制御することができる。そのため、車両に設置された車両用イオン発生装置は、推定された乗客の数に応じて車両の内部の空気を効率よく浄化することができる。
【0018】
この発明に従った車両用イオン発生装置は、複数の吊手のそれぞれに把持部が含まれている車両に設置されることが好ましい。把持部は、吊手のうち乗客の手によって把持される部分である。この発明に従った検知部は、センサを有していることが好ましい。センサは、複数の吊手のうちの検知部が設けられた吊手の把持部を乗客が把持しているときと把持していないときとで、異なる出力を生じるように構成されていることが好ましい。
【0019】
この発明によれば、検知部は、複数の吊手のうちの検知部が設けられた吊手の把持部を乗客が把持しているか否かをセンサによって検知することができる。そのため、センサが設けられた吊手を乗客が把持する場合は、車両の中が混雑した状態であることが推測される。この推測により、乗客の数を推定することができる。これにより、制御部は、推定された乗客の数に応じてイオン供給部を制御することができる。そのため、車両に設置された車両用イオン発生装置は、推定された乗客の数に応じて車両の内部の空気を効率よく浄化することができる。
【0020】
この発明に従った車両用イオン発生装置は、吊手を懸架する支持部材が備えられ、且つ、複数の吊手のそれぞれに把持部と連結部とが含まれている車両に設置されることが好ましい。把持部は、吊手のうち乗客の手によって把持される部分である。連結部は、吊手のうち支持部材と把持部とを連結する部分である。この発明に従った検知部は、プッシュ式のスイッチを有していることが好ましい。プッシュ式のスイッチは、複数の吊手のうちの検知部が設けられた吊手の把持部を乗客が把持しているときと把持していないときとで、異なる出力を生じるように構成されていることが好ましい。また、プッシュ式のスイッチは、把持部または支持部材と、連結部との間に配置されていることが好ましい。
【0021】
この発明によれば、検知部は、複数の吊手のうちの検知部が設けられた吊手の把持部を乗客が把持しているか否かをスイッチによって検知することができる。そのため、スイッチが設けられた吊手を乗客が把持する場合は、車両の中が混雑した状態であることが推測される。この推測により、乗客の数を推定することができる。これにより、制御部は、推定された乗客の数に応じてイオン供給部を制御することができる。そのため、車両に設置された車両用イオン発生装置は、推定された乗客の数に応じて車両の内部の空気を効率よく浄化することができる。
【0022】
この発明に従った車両用イオン発生装置では、イオン供給部は、ケースと吹出口とを有していることが好ましい。イオン発生器は、イオンを発生させるものである。ケースは、イオン発生器を覆うものである。吹出口は、ケースから外方に向かって開口し、発生したイオンが吹き出されるものである。また、複数の吊手のうちの検知部が設けられた吊手を乗客が把持していることを制御部が判断する場合は、制御部は、イオン発生器が発生させるイオンの量を増加させるようにイオン発生器を制御することが好ましい。
【0023】
この発明によれば、車両の中が混雑していることが推定される場合に、イオン供給部が発生させるイオンの量を増加させることができる。これにより、混雑した車両の空間により多くのイオンが放出され、車両の内部の空気をさらに効率よく浄化することができる。
【0024】
この発明に従った車両用イオン発生装置では、イオン供給部は、ケースと吹出口と送風機とを有していることが好ましい。イオン発生器は、イオンを発生させるものである。ケースは、イオン発生器を覆うものである。吹出口は、ケースから外方に向かって開口し、発生したイオンが吹き出されるものである。送風機は、風を発生させるものであり、イオン発生器が発生させたイオンを吹出口から吹き出させる。また、複数の吊手のうちの検知部が設けられた吊手を乗客が把持していることを制御部が判断する場合は、制御部は、送風機が発生させる風量を増加させるように送風機を制御することが好ましい。
【0025】
この発明によれば、車両の中が混雑していることが推定される場合に、送風機が発生させる風量を増加させることにより、イオン供給部の吹出口から吹き出されるイオンの量を増加させることができる。これにより、混雑した車両の空間により多くのイオンが放出され、車両の内部の空気をさらに効率よく浄化することができる。
【0026】
この発明に従った車両は、車両用イオン発生装置を備えた車両であることが好ましい。
【0027】
この発明に従った車両用イオン発生装置では、少なくとも一つの吊手に検知部を設けるといった比較的簡易な方法または構成によって車両の乗客の数を推定することができる。このとき、既存の車両に係る改造は、車両用イオン発生装置を車両に設置し、且つ、いずれかの吊手に検知部を設けるというように、比較的簡易な改造である。また、この発明に従った車両用イオン発生装置を備えた車両は、推定された乗客の数に応じて車両の内部の空気を効率よく浄化することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、この発明によれば、比較的簡易な方法で鉄道等の車両の乗客の数を推定し、且つ、推定した乗客の数に応じてイオン供給部を制御することにより、車両の内部の空気を効率よく浄化することができる車両用イオン発生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】車両の座席周辺の断面図である。
【図2】車両の内部の一部を車両の側方から見た図である。
【図3】車両の内部の一部の平面図である。
【図4】イオン発生装置の断面図である。
【図5】イオン発生器の正面図である。
【図6】イオン発生装置の制御ブロック図である。
【図7】複数の吊手のうち検知部が設けられた吊手であって第1実施形態に係る吊手の正面図である。
【図8】複数の吊手のうち検知部が設けられた吊手であって第2実施形態に係る吊手の正面図である。
【図9】複数の吊手のうち検知部が設けられた吊手であって第3実施形態に係る吊手の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0031】
(第1実施形態)
以下、一般的な在来線の鉄道車両の例としての車両1と、車両1に備えられるイオン発生装置2とについて説明する。ただし、車両1はバスであってもよい。図1には、車両1の座席11周辺の断面図を示す。また、図2には、車両1の内部の一部を車両1の側方から見た図を示す。図3には、車両1の内部の一部の平面図を示す。図1と図3とに示す矢印Wは、車両1の幅方向を指している。また、図2と図3とに示す矢印Lは、車両1の長手方向を指している。また、図1および図2に示す矢印Uは、車両1の上方の方向を指し、矢印Dは、車両1の下方の方向を指している。
【0032】
網棚13は、座席11の上方に設置されている。車両1は、吊手用の支持部材であるパイプ14を備えている。パイプ14は、車両1の上部1uに設置されている。パイプ14には、複数の吊手10が懸架されている。つまり、吊手10は、車両1の上部1uに設置されている。パイプ14は、天井16に取り付けられている。
【0033】
図1に示すように、車両1には、イオン発生装置2が備えられている。イオン発生装置2は、車両1の上部1uのうち、網棚13の上方に配置されている。ただし、車両1において、イオン発生装置2が配置される位置は、特に限定されない。
【0034】
図6に示すように、イオン発生装置2は、イオン供給部20を有している。イオン供給部20は、車両1の内部にイオンを供給する。また、図4に示すように、イオン発生装置2は、ケース28と吹出口23とを有している。ケース28は、イオン発生装置2の外枠の一部を形成し、イオン発生器22を覆っている。吹出口23は、ケース28の側面に配置されており、ケース28から外方に向かって開口している。吹出口23は、車両1の内部の空間6に通じている。また、イオン発生装置2は、吸込口24とフィルタ25とを有している。吸込口24は、ケース28の下部に配置されている。フィルタ25は、吸込口24に配置されている。イオン発生装置2の内部に流入する空気に含まれる粉塵等は、フィルタ25に付着する。イオン発生装置2の内部には、通風経路26が形成されている。通風経路26は、イオン発生装置2の内部に流入する空気が吸込口24から吹出口23まで通過するときの経路である。
【0035】
送風機21は、通風経路26に配置されている。送風機21は、例えばクロスフローファンである。通風経路26での空気の通流方向に関して送風機21と吹出口23との間には、イオン発生器22が配置されている。イオン発生器22は、イオンを発生させ、送風機21と吹出口23との間の通風経路26にイオンを放出する。送風機21は、風を発生させるものであり、イオン発生器22が発生させたイオンと通風経路26を通る空気とを吹出口23から吹き出させる。通風経路26を通流する空気等は、図4に示す矢印の方向に通風経路26を通流する。イオンを含んだ空気は、吹出口23から車両1の内部の空間6(図1参照)に放出される。吹出口23には、ルーバ29が設けられている。ルーバ29の作動により、イオンを含んだ空気が吹出口23から吹き出されるときの方向を自在に変更することができる。
【0036】
車両1では、イオン発生装置2の側方は車両1の側方と同一の方向である。すなわち、図2では、イオン発生装置2の側方を正面から見たものが示されている。イオン発生装置2が発生させたイオンは、車両1の幅方向の外方から内方に向かって車両1の内部の空間6に放出される。車両1では、イオン発生装置2は、イオン発生装置2の正面が車両1の長手方向を向くように天井16に配置されている。ただし、車両1に対してイオン発生装置2が配置される位置と方向とは、特に限定されない。
【0037】
図5に示すように、イオン発生器22は、正イオン発生部51と負イオン発生部52とを有している。イオン発生器22の外枠には、開口51aと開口52aとが開口している。開口51aおよび開口52aは、略円形状を有している。開口51aおよび開口52aは、通風経路26に面している。また、開口51aと開口52aとは、通風経路26を通る空気の通流方向と略垂直に交差する方向で互いに離間している。正イオン発生部51と負イオン発生部52とは、それぞれ放電電極および対向電極を有している。対向電極は、尖鋭形状を有する放電電極を取り囲んでいる。放電電極と対向電極とは、イオン発生器22の内方に配置されている。正イオン発生部51は、プラスのイオンを発生させ、イオン発生器22の内部から開口51aが開口している側に、発生させたイオンを放出する。負イオン発生部52は、マイナスのイオンを発生させ、イオン発生器22の内部から開口52aが開口している側に、発生させたイオンを放出する。正イオン発生部51と負イオン発生部52とで発生するイオンは、通風経路26に放出される。
【0038】
イオン発生装置2が作動しているときは、送風機21によって車両1の空間6の空気が吸込口24から吸い込まれ、イオン発生器22にて発生するイオンが通風経路26に放出される。イオンを含んだ空気は、イオン発生装置2の吹出口23から吹き出され、車両1の空間6に拡散される。これらのプラスイオンとマイナスイオンとにより、車両1の空間6または床面1f(図1参照)を除菌すること等ができる。
【0039】
ところで、車両1は、通常、空気調和機を備えている。空気調和機は、一般的に車両1の上部1uに配置されている。空気調和機の吹出口からは、調和された空気が吹き出される。車両1に空気調和機が備えられている場合は、イオン発生装置2の吹出口23から吹き出されるイオンを含んだ空気は、この調和された空気に乗ることにより、車両1の内部の空間6に広範囲にわたって拡散される。
【0040】
図6に示すように、イオン発生装置2は、制御部27を備えている。制御部27は、イオン供給部20を制御する。つまり、制御部27は、少なくともイオン発生器22と送風機21とを制御する。制御部27には、後述する検知部5が接続されている。検知部5は、後述するように複数の吊手10のうちの少なくとも一つの吊手10に設けられている。検知部5は、複数の吊手10のうちの検知部5が設けられている吊手10を車両1の乗客が把持しているか否かを検知する。
【0041】
検知部5は、車両1の複数の吊手10のうち、例えば吊手10a(図2および図3参照)に設置されている。図3に示すように、車両1は、乗降ドア12を備えている。図2に示すように、車両1の幅方向の一側には、例えば乗降ドア12aと乗降ドア12bとが設けられている。乗降ドア12aと乗降ドア12bとは、車両1の長手方向に関して互いに隣り合っている。また、乗降ドア12aと乗降ドア12bとは、車両1の長手方向に関して所定の間隔Leだけ互いに離間している。乗降ドア12aと乗降ドア12bとの間には、窓17が設けられている。図2に示すように、吊手10aは、複数の吊手10のうちのいずれか一つの吊手と乗降ドア12aとの車両1の長手方向に関する間隔Le1と、複数の吊手10のうちのいずれか一つの吊手と乗降ドア12bとの車両1の長手方向に関する間隔Le2との差が最も小さい位置に配置された吊手10である。このとき、乗降ドア12aと吊手10aとの車両1の長手方向に関する間隔Le1と、乗降ドア12bと吊手10aとの車両1の長手方向に関する間隔Le2との和は、所定の間隔Leである。すなわち、吊手10aは、複数の吊手10のうち、乗降ドア12aと乗降ドア12bとから最も遠い位置に配置されている。
【0042】
検知部5は、車両1の長手方向の一端に位置する吊手10dに設置されていてもよい。車両1は、壁7を備えている。壁7は、車両1の長手方向の一端に位置している。図示は省略するが、壁7は、車両1の長手方向の他の一端にも配置されている。吊手10dは、複数の吊手10のうち、いずれか一つの吊手と壁7との間隔Le3が最も小さい位置に配置されている吊手10である。
【0043】
ただし、検知部5は、吊手10aに隣り合う吊手10bまたは吊手10cに設置されていてもよく、吊手10aと吊手10bまたは吊手10cとに設置されていてもよい。また、検知部5は、吊手10dに隣り合う吊手10eに設置されていてもよく、吊手10dと吊手10eとに設置されていてもよい。さらに、検知部5は、吊手10aと吊手10eとに設置されていてもよい。
【0044】
図2に示す車両1の内部では、乗降ドア12aと乗降ドア12bとの間に設けられた吊手10の数量が奇数である。ただし、車両1の内部において、乗降ドア12aと乗降ドア12bとの間に設けられた吊手10の数量は、偶数であってもよい。図示は省略するが、図2に示す車両1の内部において、吊手10aが設けられておらず乗降ドア12aと乗降ドア12bとの間に偶数個の吊手10が設けられている例を説明する。この例において、第1の吊手は、複数の吊手10のうち、吊手10bと吊手10cとのどちらかである。例えば、吊手10bと乗降ドア12aとの間は、車両1の長手方向に関して第1の距離で互いに離間している。一方、吊手10bと乗降ドア12bとの間は、車両1の長手方向に関して第2の距離で互いに離間している。吊手10bは、第1の距離と第2の距離との差が複数の吊手のうちで最も小さい位置に配置されている。さらに、この例において、検知部5は、複数の吊手10のうちの吊手10bと隣り合う吊手10であって車両1の長手方向に関して吊手10cの反対側に配置された吊手10に設けられていてもよい。また、例えば、吊手10cと乗降ドア12aとの間は、車両1の長手方向に関して他の第1の距離で互いに離間している。一方、吊手10cと乗降ドア12bとの間は、車両1の長手方向に関して他の第2の距離で互いに離間している。吊手10cは、他の第1の距離と他の第2の距離との差が複数の吊手10のうちで最も小さい位置に配置されている。さらに、この例において、検知部5は、複数の吊手10のうちの吊手10cと隣り合う吊手10であって車両1の長手方向に関して吊手10bの反対側に配置された吊手10に設けられていてもよい。
【0045】
制御部27は、検知部5の検知に基づき、乗客が吊手10aを把持しているか否かを判断する。図7に示すように、吊手10aは、乗客の手によって把持される把持部18を有している。また、吊手10aは、パイプ14と把持部18とを接続する連結部15を有している。図示は省略するが、複数の吊手10のそれぞれは、把持部18と連結部15と鞘19とを有している。本実施形態に係る検知部5は、センサ3を有している。センサ3は、吊手10aの把持部18に設けられている。センサ3は、吊手10aの把持部18を乗客が把持しているときと、吊手10aの把持部18を乗客が把持していないときとで、異なる出力を生じるように構成されている。図7では、センサ3を示すものとして把持部18にハッチングが施されている。このハッチングは、把持部18の断面を示すものではない。センサ3は、静電容量センサ等によって構成されている。センサ3は、感圧センサによって構成されていてもよい。センサ3としての感圧センサは、乗客によって把持部18が把持されるときの把持部18に負荷される圧力を検知する。
【0046】
なお、検知部5が例えば吊手10dに設置されている場合は、センサ3は吊手10dの把持部18に設けられ、制御部27は乗客が吊手10dを把持しているか否かを判断する。検知部5が例えば吊手10bに設置されている場合は、センサ3は吊手10bの把持部18に設けられている。
【0047】
吊手10は、ベルト状の連結部15がパイプ14に巻き掛けられ且つ連結部15の下部が把持部18に巻き掛けられることにより、パイプ14に懸架されている。センサ3は、把持部18の下部18bに設けられている。センサ3からの出力信号を伝達する配線は、把持部18の内部と連結部15の内側とパイプ14の上部を通って制御部27に接続されている。なお、センサ3からの出力信号を伝達する配線は、制御部27とセンサ3とに直接的に接続されていなくてもよい。センサ3からの出力信号は、パイプ14の上部等に設置された図示しない無線送信機器と、イオン発生装置2に設置された図示しない無線受信機器とにより、伝達されるものであってもよい。
【0048】
把持部18は、略円環形状を有している。把持部18のうちのセンサ3が設置されている側と上下方向の反対側、すなわち把持部18の上部18aは、突起形状を有している。把持部18の上部18aには、鞘19が被せられている。これにより、把持部18は、略円環形状を有する把持部18の中心を中心とした円の円周方向への回転が制限される。そのため、センサ3は把持部18の下部18bに配置されている。乗客は、把持部18のうち、一般的に把持部18の下部18bを把持する可能性が高い。なお、把持部18の円周方向への回転を制限する構造は、把持部18の上部18aの突起形状に限定されない。例えば、三角形状を有する把持部18を用いることにより、把持部18の円周方向への回転を制限することができる。
【0049】
制御部27は、検知部5が設けられている吊手10aを乗客が把持していることを判断する場合は、送風機21が発生させる風量を増加させるように送風機21を制御する。この場合は、混雑した車両1の空間6により多くのイオンが放出され、車両1の空間6または床面1fに存在する菌等を効率よく除菌することができる。
【0050】
例えば、吊手10のうちの検知部5が設けられている吊手10が吊手10aと吊手10bまたは吊手10cとである場合は、吊手10aまたは吊手10bもしくは吊手10cを乗客が把持していることを制御部27が判断する。制御部27は、吊手10aまたは吊手10bもしくは吊手10cを乗客が把持していることを判断するときは、送風機21が発生させる風量を増加させるように送風機21を制御する。
【0051】
制御部27は、検知部5が設けられている吊手10aを乗客が把持していることを判断する場合は、イオン発生器22が発生させるイオンの量を増加させるようにイオン発生器22を制御する。この場合は、混雑した車両1の空間6により多くのイオンが放出され、車両1の空間6または床面1fに存在する菌等を効率よく除菌することができる。例えば、イオン発生器22の単位時間当たりの放電回数が増加すること等により、イオン発生装置2はより多くのイオンを発生させることができる。
【0052】
例えば、吊手10のうちの検知部5が設けられている吊手10が吊手10dと吊手10eとである場合は、吊手10dまたは吊手10eを乗客が把持していることを制御部27が判断する。制御部27は、吊手10dまたは吊手10eを乗客が把持していることを判断するときは、イオン発生器22が発生させるイオンの量を増加させるようにイオン発生器22を制御する。
【0053】
制御部27は、検知部5が設けられている吊手10aを乗客が把持していることを判断する場合は、吹出口23の開口度を変更するようにルーバ29を制御する。この場合は、混雑した車両1の空間6により多くのイオンが放出され、車両1の空間6または床面1fに存在する菌等を効率よく除菌することができる。
【0054】
例えば、吊手10のうちの検知部5が設けられている吊手10が吊手10aと吊手10bまたは吊手10cとである場合は、吊手10aまたは吊手10bもしくは吊手10cを乗客が把持していることを制御部27が判断する。制御部27は、吊手10aまたは吊手10bもしくは吊手10cを乗客が把持していることを判断するときは、ルーバ29を制御する。ルーバ29が吹出口23の開口度を広げる場合は、吹出口23から吹き出されるイオンの量が増加する。
【0055】
以上のように、本実施形態に係るイオン発生装置2は、検知部5とイオン供給部20と制御部27とを備えている。検知部5は、車両1の上部1uに設けられた複数の吊手10のうちの少なくとも一つの吊手10に設けられている。検知部5は、検知部5が設けられている吊手10を乗客が把持しているか否かを検知する。イオン供給部20は、車両1の内部にイオンを供給する。制御部27は、検知部5による検知に基づき、検知部5が設けられている吊手10を乗客が把持しているか否かを判断する。また、制御部27は、検知部5が設けられている吊手10を乗客が把持しているか否かの判断に応じてイオン供給部20を制御する。
【0056】
本実施形態によれば、複数の吊手10のうちの少なくとも一つの吊手10に設けられた検知部5による検知に基づき、制御部27はその少なくとも一つの吊手10を乗客が把持しているか否かを判断する。一般的に、車両1が混雑しておらず座席11が空いている場合は、乗客の多くは座席11に座り、乗客が吊手10を把持する状況は少ない。一方、車両1が混在している場合は、乗客のうちの何人かは、車両1の中で立って吊手10を把持する。そのため、複数の吊手10のうちの検知部5が設けられた吊手10を乗客が把持していることを制御部27が判断する場合は、座席11に座ることができないほどの数の乗客が車両1に乗車し、車両1の中が混雑していることが推測できる。一方、検知部5が設けられた吊手10を乗客が把持していないことを制御部27が判断する場合は、車両1の乗客の数が比較的少なく、車両1の中がそれ程混雑していないことが推測できる。このように、少なくとも一つの吊手10に検知部5を設けることにより、車両1の中が混雑しているか否かを推測することができ、この推測によって乗客の数を推定することができる。これにより、制御部27は、推定された乗客の数に応じてイオン供給部20を制御することができる。そのため、車両1に設置されたイオン発生装置2は、推定された乗客の数に応じて車両1の内部の空気を効率よく浄化することができる。
【0057】
本実施形態によれば、少なくとも一つの吊手10に検知部5を設けるといった比較的簡易な方法または構成により、車両1の乗客の数を推定することができる。
【0058】
以上のように、本実施形態によれば、比較的簡易な方法で鉄道等の車両1の乗客の数を推定し、且つ、推定した乗客の数に応じてイオン供給部20が制御される。これにより、イオン発生装置2は、車両1の内部の空気を効率よく浄化することができる。したがって、本実施形態によれば、比較的簡易な方法で鉄道等の車両1の乗客の数を推定し、且つ、推定した乗客の数に応じてイオン供給部20を制御することにより、車両1の内部の空気を効率よく浄化することができる車両用のイオン発生装置2を提供することができる。
【0059】
本実施形態に係るイオン発生装置2は、乗降ドア12aと乗降ドア12bとが備えられた車両1に設置されている。乗降ドア12aは、車両1の幅方向の一側に配置されている。乗降ドア12bは、乗降ドア12aと車両1の幅方向に関して同じ側に設けられている。乗降ドア12bは、車両1の長手方向に関して、乗降ドア12aと隣り合い、乗降ドア12aから間隔Leだけ隔てて配置されている。また、イオン発生装置2では、検知部5は、吊手10aまたは吊手10bもしくは吊手10cに設置されている。図2に示すように、吊手10aは、複数の吊手10のうちのいずれか一つの吊手であって、乗降ドア12aと吊手10aとの車両1の長手方向に関する間隔Le1と、乗降ドア12bと吊手10aとの車両1の長手方向に関する間隔Le2と、の差が最も小さい位置に配置されている。吊手10bまたは吊手10cは、吊手10aと隣り合う吊手10である。
【0060】
本実施形態によれば、イオン発生装置2に備えられる検知部5の数は、必要最小限の数でよい。車両1の中が乗客で混雑し始め、やがて座席11が満席となった場合は、乗降ドア12の周辺に乗客が立つような状況が一般的に多くなる。さらに乗客が増えて車両1が混雑した状態となった場合は、乗降の際に不便であるような乗降ドア12から離れた位置にも乗客が立つ状況が現れる。ところで、検知部5は、乗降ドア12aと乗降ドア12bとの略中間位置に配置された吊手10aに設置されている。乗降ドア12aと乗降ドア12bとの略中間位置は、乗降ドア12aと乗降ドア12bとの両方から離れている。そのため、検知部5が設けられた吊手10aまたは吊手10bもしくは吊手10cを乗客が把持する場合は、車両1の中が混雑した状態であることが推測される。この推測により、乗客の数を推定することができる。すなわち、本実施形態によれば、必要最小限の数の検知部5によって、乗客の数を効率よく推定することができる。そのため、車両1に設置されたイオン発生装置2は、推定された乗客の数に応じて車両1の内部の空気を効率よく浄化することができる。したがって、本実施形態によれば、比較的簡易な方法で鉄道等の車両1の乗客の数を推定し、且つ、推定した乗客の数に応じてイオン供給部20を制御することにより、車両1の内部の空気を効率よく浄化することができる車両用のイオン発生装置2を提供することができる。
【0061】
車両1には、車両1の長手方向の一端に配置された壁7が備えられている。本実施形態に係る検知部5は、吊手10dまたは吊手10dと隣り合う吊手10eに設置されている。吊手10dは、複数の吊手10のうちのいずれか一つの吊手であって、壁7と吊手10dとの間隔Le3が最も小さい位置に配置されている。
【0062】
本実施形態によれば、イオン発生装置2に備えられる検知部5の数は、必要最小限の数でよい。検知部5は、複数の吊手10のうち壁7との間隔Le3が最も小さい位置に配置された吊手10dまたは吊手10eに設置されている。複数の吊手10のうち壁7との間隔Le3が最も小さい位置は、複数の吊手10のうちで車両1の長手方向の一端に最も近い位置である。そのため、検知部5が設けられた吊手10を乗客が把持する場合は、車両1の中が混雑した状態であることが推測される。この推測により、乗客の数を推定することができる。すなわち、本実施形態によれば、必要最小限の数の検知部5によって、乗客の数を効率よく推定することができる。そのため、車両1に設置されたイオン発生装置2は、推定された乗客の数に応じて車両1の内部の空気を効率よく浄化することができる。したがって、本実施形態によれば、比較的簡易な方法で鉄道等の車両1の乗客の数を推定し、且つ、推定した乗客の数に応じてイオン供給部20を制御することにより、車両1の内部の空気を効率よく浄化することができる車両用のイオン発生装置2を提供することができる。
【0063】
複数の吊手10のそれぞれには、把持部18が含まれている。把持部18は、吊手10のうち乗客の手によって把持される部分である。本実施形態に係る検知部5は、センサ3を有している。センサ3は、複数の吊手10のうちの検知部5が設けられた吊手10の把持部18を乗客が把持しているときと把持していないときとで、異なる出力を生じるように構成されている。
【0064】
本実施形態によれば、検知部5は、複数の吊手10のうちの検知部5が設けられた吊手10の把持部18を乗客が把持しているか否かをセンサ3によって検知することができる。そのため、センサ3が設けられた吊手10を乗客が把持する場合は、車両1の中が混雑した状態であることが推測される。この推測により、乗客の数を推定することができる。そのため、車両1に設置されたイオン発生装置2は、推定された乗客の数に応じて車両1の内部の空気を効率よく浄化することができる。したがって、本実施形態によれば、比較的簡易な方法で鉄道等の車両1の乗客の数を推定し、且つ、推定した乗客の数に応じてイオン供給部20を制御することにより、車両1の内部の空気を効率よく浄化することができる車両用のイオン発生装置2を提供することができる。
【0065】
本実施形態に係るイオン発生装置2では、イオン供給部20は、ケース28と吹出口23とを有している。イオン発生器22は、イオンを発生させる。ケース28は、イオン発生器22を覆っている。吹出口23は、ケース28から外方に向かって開口し、発生したイオンが吹き出される。検知部5が設けられた吊手10を乗客が把持していることを制御部27が判断する場合は、制御部27は、イオン発生器22が発生させるイオンの量を増加させるようにイオン発生器22を制御する。
【0066】
本実施形態によれば、車両1の中が混雑していることが推定される場合に、イオン供給部20が発生させるイオンの量を増加させることができる。これにより、混雑した車両1の空間6により多くのイオンが放出され、車両1の内部の空気を効率よく浄化することができる。そのため、車両1に設置されたイオン発生装置2は、推定された乗客の数に応じて車両1の内部の空気をさらに効率よく浄化することができる。したがって、本実施形態によれば、比較的簡易な方法で鉄道等の車両1の乗客の数を推定し、且つ、推定した乗客の数に応じてイオン供給部20を制御することにより、車両1の内部の空気を効率よく浄化することができる車両用のイオン発生装置2を提供することができる。
【0067】
本実施形態に係るイオン発生装置2では、イオン発生器22は、イオンを発生させる。イオン供給部20は、ケース28と吹出口23と送風機21とを有している。ケース28は、イオン発生器22を覆っている。吹出口23は、ケース28から外方に向かって開口し、イオン発生器22にて発生したイオンが吹き出される。送風機21は、風を発生させ、イオン発生器22が発生させたイオンを吹出口23から吹き出させる。また、検知部5が設けられた吊手10を乗客が把持していることを制御部27が判断する場合は、制御部27は、送風機21が発生させる風量を増加させるように送風機21を制御する。
【0068】
本実施形態によれば、車両1の中が混雑していることが推定される場合に、送風機21が発生させる風量を増加させることにより、イオン供給部20の吹出口23から吹き出されるイオンの量を増加させることができる。これにより、混雑した車両1の空間6により多くのイオンが放出され、車両1の内部の空気をさらに効率よく浄化することができる。したがって、本実施形態によれば、比較的簡易な方法で鉄道等の車両1の乗客の数を推定し、且つ、推定した乗客の数に応じてイオン供給部20を制御することにより、車両1の内部の空気を効率よく浄化することができる車両用のイオン発生装置2を提供することができる。
【0069】
上述のように、本実施形態に係るイオン発生装置2では、少なくとも一つの吊手10に検知部5を設けるといった比較的簡易な方法または構成によって車両1の乗客の数が推定される。一方、車両1は、一般的な在来線の鉄道車両の例である。既存の車両1に係る改造は、イオン発生装置2を車両1に設置し且ついずれかの吊手10に検知部5を設けるというように、比較的簡易な改造である。また、本実施形態に係るイオン発生装置2を備えた車両1は、推定された乗客の数に応じて車両1の内部の空気を効率よく浄化することができる。
【0070】
車両1に設置される全ての吊手10に検知部5が設けられ、乗客が把持している吊手10の割合によって車両1の乗客の数を推定し、イオン発生装置2を制御することは可能である。しかしながら、全ての吊手10に検知部5を設けることは、費用的な観点から鑑みて望ましくない。また、既存の鉄道等の車両1にイオン発生装置2を設置する場合には、吊手10を改造しなければならないため、改造される吊手10の数がより少ない方が改造は簡易である。したがって、本実施形態に係るイオン発生装置2を既存の鉄道等の車両1に簡易に設置することができる。
【0071】
(第2実施形態)
イオン発生装置2の他の例について、以下に説明する。
なお、前記実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0072】
図8に示すように、イオン発生装置2の検知部5(図6参照)は、プッシュ式のスイッチ4を有している。スイッチ4は、複数の吊手10のうちの検知部5が設けられた把持部18を乗客が把持しているときと、複数の吊手10のうちの検知部5が設けられた把持部18を乗客が把持していないときとで、異なる出力を生じるように構成されている。スイッチ4は、把持部18と連結部15との間に設けられている。詳細には、スイッチ4は、略円環形状の把持部18の上部18aのうち、半径方向の内側に配置されている。把持部18の上部18aのうちの半径方向の内側の部位に連結部15の下部が巻き掛けられている。これにより、乗客が把持部18を下向きに引っ張る場合は、連結部15と把持部18との間で連結部15によってスイッチ4が押下される。
【0073】
検知部5は、スイッチ4が押下されることにより、吊手10のうちのスイッチ4が設けられている吊手10を乗客が把持したことを検知する。制御部27は、検知部5の検知に基づき、スイッチ4が設けられている吊手10を乗客が把持しているか否かを判断する。
【0074】
本実施形態によれば、検知部5は、複数の吊手10のうちの検知部5が設けられた吊手10の把持部18を乗客が把持しているか否かをスイッチ4によって検知することができる。そのため、スイッチ4が設けられた吊手10を乗客が把持する場合は、車両1の中が混雑した状態であることが推測される。この推測により、乗客の数を推定することができる。
【0075】
以上のように、本実施形態によれば、比較的簡易な方法で鉄道等の車両1の乗客の数が推定され且つ推定された乗客の数に応じてイオン発生装置2が制御される。これにより、イオン発生装置2は、車両1の内部の空気を効率よく浄化することができる。
【0076】
(第3実施形態)
イオン発生装置2のさらに他の例について、以下に説明する。
なお、前記各実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0077】
図9に示すように、スイッチ4は、パイプ14と連結部15との間に設けられている。詳細には、スイッチ4は、パイプ14の上側に配置されている。連結部15がパイプ14の上部に巻き掛けられており、スイッチ4は連結部15とパイプ14との間に配置されている。これにより、乗客が把持部18を下向きに引っ張る場合は、連結部15とパイプ14との間で連結部15によってスイッチ4が押下される。制御部27は、検知部5の検知に基づき、スイッチ4が設けられている吊手10を乗客が把持しているか否かを判断する。
【0078】
本実施形態によれば、比較的簡易な方法で鉄道等の車両1の乗客の数が推定され且つ推定された乗客の数に応じてイオン発生装置2が制御される。これにより、イオン発生装置2は、車両1の内部の空気を効率よく浄化することができる。
【0079】
(その他の実施形態)
図示は省略するが、第2実施形態と第3実施形態とは、それぞれ組み合わされていてもよい。つまり、図8に示す形態と図9に示す形態とが組み合わされることにより、スイッチ4は、把持部18と連結部15との間、および、パイプ14と連結部15との間に設けられていてもよい。
【0080】
把持部18と連結部15との間、および、パイプ14と連結部15との間にスイッチ4が設けられている場合は、いずれかのスイッチ4が押下されることにより、検知部5は吊手10のうちのスイッチ4が設けられている吊手10を乗客が把持したことを検知する。そのため、制御部27は、検知部5の検知に基づき、スイッチ4が設けられている吊手10を乗客が把持しているか否かを確実に判断することができる。また、本実施形態のような場合は、いずれかのスイッチ4が故障したときでも、制御部27は、検知部5の検知に基づき、スイッチ4が設けられている吊手10を乗客が把持しているか否かを確実に判断することができる。
【0081】
以上に開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正と変形を含むものである。
【符号の説明】
【0082】
1:車両、2:イオン発生装置(車両用イオン発生装置)、3:センサ、4:スイッチ、5:検知部、10:吊手、10a:吊手(第1の吊手)、10b:吊手(第2の吊手)、10c:吊手(第2の吊手)、10d:吊手(第3の吊手)、10e:吊手(第4の吊手)、12a:乗降ドア(第1の乗降ドア)、12b:乗降ドア(第2の乗降ドア)、13:網棚、14:パイプ(支持部材)、15:連結部、18:把持部、21:送風機、22:イオン発生器、23:吹出口、24:吸込口、25:フィルタ、26:通風経路、27:制御部、28:ケース


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の上部に設けられた複数の吊手のうちの少なくとも一つの吊手に設けられ、前記車両の乗客が前記少なくとも一つの吊手を把持しているか否かを検知する検知部と、
前記車両の内部にイオンを供給するイオン供給部と、
前記検知部による検知に基づいて前記少なくとも一つの吊手を前記乗客が把持しているか否かを判断することに応じ、前記イオン供給部を制御する制御部と、
を備えた、車両用イオン発生装置。
【請求項2】
前記車両には、前記車両の幅方向の一側に配置された第1の乗降ドアと、前記車両の幅方向に関して前記第1の乗降ドアと同じ側に設けられ、前記車両の長手方向に関して前記第1の乗降ドアと隣り合い、前記車両の長手方向に関して前記第1の乗降ドアから距離を隔てて配置された第2の乗降ドアと、が備えられ、
前記複数の吊手のうちのいずれか一つの吊手である第1の吊手と前記第1の乗降ドアとの間は、前記車両の長手方向に関して第1の距離で互いに離間し、
前記第1の吊手と前記第2の乗降ドアとの間は、前記車両の長手方向に関して第2の距離で互いに離間し、
前記第1の吊手は、前記第1の距離と前記第2の距離との差が前記複数の吊手のうちで最も小さい位置に配置され、
前記検知部は、前記第1の吊手、または前記車両の長手方向に関して前記第1の吊手と隣り合う第2の吊手に設置されている、
請求項1に記載の車両用イオン発生装置。
【請求項3】
前記車両には、前記車両の長手方向の一端に配置された壁が備えられ、
前記複数の吊手のうちのいずれか一つの吊手である第3の吊手と前記壁との間は、前記車両の長手方向に関して第3の距離で互いに離間し、
前記第3の吊手は、前記第3の距離が前記複数の吊手のうちで最も小さい位置に配置され、
前記検知部は、前記第3の吊手、または前記車両の長手方向に関して前記第3の吊手と隣り合う第4の吊手に設置されている、
請求項1に記載の車両用イオン発生装置。
【請求項4】
前記複数の吊手のそれぞれには、前記乗客の手によって把持される把持部が含まれ、
前記検知部は、前記少なくとも一つの吊手の前記把持部を前記乗客が把持しているときと前記少なくとも一つの吊手の前記把持部を前記乗客が把持していないときとで異なる出力を生じるように構成されたセンサを有している、
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の車両用イオン発生装置。
【請求項5】
前記車両には、前記吊手を懸架する支持部材が備えられ、
前記複数の吊手のそれぞれには、前記乗客の手によって把持される把持部と、前記支持部材と前記把持部とを連結する連結部と、が含まれ、
前記検知部は、前記少なくとも一つの吊手の前記把持部を前記乗客が把持しているときと前記少なくとも一つの吊手の前記把持部を前記乗客が把持していないときとで異なる出力を生じるように構成され、前記把持部または前記支持部材と前記連結部との間に配置されたプッシュ式のスイッチを有している、
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の車両用イオン発生装置。
【請求項6】
前記イオン供給部は、イオンを発生させるイオン発生器と、前記イオン発生器を覆うケースと、前記ケースから外方に向かって開口し、前記イオン発生器で発生したイオンが吹き出される吹出口と、を有し、
前記少なくとも一つの吊手を前記乗客が把持していることを前記制御部が判断する場合は、前記制御部は、前記イオン発生器が発生させるイオンの量を増加させるように前記イオン発生器を制御する、
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の車両用イオン発生装置。
【請求項7】
前記イオン供給部は、イオンを発生させるイオン発生器と、前記イオン発生器を覆うケースと、前記ケースから外方に向かって開口し、前記イオン発生器で発生したイオンが吹き出される吹出口と、風を発生させ、前記イオン発生器が発生させたイオンを前記吹出口から吹き出させる送風機と、を有し、
前記少なくとも一つの吊手を前記乗客が把持していることを前記制御部が判断する場合は、前記制御部は、前記送風機が発生させる風量を増加させるように前記送風機を制御する、
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の車両用イオン発生装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の車両用イオン発生装置を備えた車両。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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