説明

車両用ウォーニング構造

【課題】シート本体を車体側構造体に対して移動させた各設置位置において係合ロックされているかどうかの確認を簡便に行えるようにする。
【解決手段】シート本体1は、車体フロアF上の使用位置と車体天井C下の格納位置との間で移動可能とされ、使用位置での係合ロック用のバックロック装置9と格納位置での係合ロック用の天井ロック装置8とを有する。各ロック装置8,9は共に操作レバー7の開き操作によって一斉に解除操作される。操作レバー7の開き操作時に露呈する裏面部には警告表示面7bが付設されている。警告表示面7bは両ロック装置8,9がいずれも係合ロックしていない状態を異常状態として警告表示するものであり、両ロック装置8,9が解除状態となる時に操作レバー7が開き操作位置に保持される構成によって警告表示状態に保たれ、一方が係合ロックした時に操作レバー7が閉じ操作される構成によって警告表示しない状態となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ウォーニング構造に関する。詳しくは、着座部となるシート本体が車体側構造体に係合ロックしていない状態を異常状態として警告表示する警告表示部を有する車両用ウォーニング構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートにおいて、シート本体を車体フロア上の使用位置から車体天井下の格納位置まで跳ね上げて格納できるようになっている構造が知られている。ここで、下記特許文献1には、上述した天井格納式シートの構成が一例として開示されている。この開示では、シート本体が車体天井に対してリンク連結されており、このリンクの回転運動に伴って車体フロア上の使用位置と車体天井下の格納位置との間を移動することのできる構成となっている。
【0003】
【特許文献1】米国特許第6224132号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記開示の従来技術では、シート本体が車体フロア上の使用位置や車体天井下の格納位置に確実に係合ロックされているかどうかを把握するためには、そのロック部を覗き込んでロック状態を確認する必要があり、確認に手間のかかる構成となっている。
【0005】
本発明は、上記した問題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、シート本体を車体側構造体に対して移動させた各設置位置において係合ロックされているかどうかの確認を簡便に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の車両用ウォーニング構造は次の手段をとる。
先ず、第1の発明は、着座部となるシート本体が車体側構造体に係合ロックしていない状態を異常状態として警告表示する警告表示部を有する車両用ウォーニング構造である。シート本体は、車体側構造体に対する設置位置が移動によって第1の設置位置と第2の設置位置とに切り換えられるようになっている。シート本体には、これを第1の設置位置に係合ロックさせるための第1のロック装置と、第2の設置位置に係合ロックさせるための第2のロック装置と、が設けられている。各ロック装置は、共に、シート本体に設けられた一の操作部材を操作することによって、シート本体を各設置位置に係合ロックさせた状態が解除されるようになっている。警告表示部は、操作部材の設定箇所に設けられており、両ロック装置が解除状態となることで警告表示した状態となり、どちらか一方側のロック装置が係合ロック状態となることで警告表示しない状態となる。
【0007】
この第1の発明によれば、警告表示部が両ロック装置の解除操作用に設けられた操作部材の設定箇所に設けられていることにより、どちらか一方側のロック装置が車体側構造体に係合ロックした状態となっているかどうかの確認は、操作者がこの操作部材の設定箇所を見ることで行うことができる。したがって、警告表示部が各ロック装置毎に設けられていたり、各ロック装置の設定箇所に設けられていたりする構成と比べると、警告表示状態の確認をより簡便に行えるようにすることができる。
【0008】
次に、第2の発明は、上述した第1の発明において、シート本体は、背凭れとなるシートバックが車体天井に回転可能にリンク連結されており、シートバックを前方上方に起こし上げ回転させる態様で、第1の設置位置となる車体フロア上の使用位置から第2の設置位置となる車体天井下の格納位置に格納移動できるようになっている。操作部材は、シートバックの背面部に配置設定されている。
【0009】
この第2の発明によれば、操作部材がシートバックの背面部に設定されていることにより、シート本体が車体フロア上の使用位置にある時には、操作者が車両後部側に立った位置から目や手を届かせ易くなる。また、シート本体が車体天井下の格納位置にある時には、操作者が車内から目や手を届かせ易くなる。したがって、操作部材の操作や警告表示状態の確認を簡便に行うことができる。
【0010】
次に、第3の発明は、上述した第1又は第2の発明において、操作部材は、シート本体にヒンジ連結されており、附勢に抗した回転操作によって閉じた位置から開き操作される開閉式の操作レバーとして形成されている。警告表示部は、操作部材の開き操作時に露呈する露呈部に赤色等の警告表示色が付設された警告表示面として形成されている。操作部材は、その開き操作によって両ロック装置が解除状態となることにより、その開き操作をやめても開き操作された状態に保たれて警告表示面が露呈した状態に保たれるが、どちらか一方側のロック装置が係合ロック状態となることで閉じられる構成である。
【0011】
この第3の発明によれば、警告表示部は、操作部材が開き操作された際に、その露呈部に赤色等の警告表示色を表示するように構成される。この警告表示部は、両ロック装置が解除状態となっている時には、操作部材が開き操作された状態に保たれることによって、警告表示色を表示した状態に保たれる。そして、警告表示部は、どちらか一方側のロック装置が係合ロック状態となることで操作部材が閉じられることにより、警告表示しない状態に切り換えられる。このように、警告表示部を、操作部材の露呈部に警告表示色を付設した合理的な構成として具現化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための最良の形態の実施例について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0013】
始めに、実施例1の車両用ウォーニング構造の構成について、図1〜図8を用いて説明する。ここで、図1には、本実施例の車両用ウォーニング構造が適用された天井格納式車両用シートの概略構成が示されている。この車両用シートは、車両の最後部側座席として配設されており、着座部となるシート本体1を車体フロアF上の使用位置から車体天井C下の格納位置まで持ち上げて格納できるように構成されている。
【0014】
ここで、シート本体1は、背凭れとなるシートバック2と、着座部となるシートクッション3と、頭受けとなるヘッドレスト4とを有する。詳しくは、シートクッション3は、その左右両側の後端部が、リクライニング装置5によってシートバック2の下端部に起倒回転可能にヒンジ連結されている。これらリクライニング装置5は、シートクッション3をシートバック2の前方側に倒し込む動作によって、その内部に設けられたロック機構がロック作動して、シートクッション3の回転姿勢をその倒し込んだ回転位置にロックできるようになっている。
【0015】
そして、このシートクッション3を回転ロックした状態は、操作者Pがシートバック2の背面側の下部位置に設けられた小型の第1操作レバー7か、若しくは同背面側の中央位置に設けられた大型の第2操作レバー30かのどちらかをシートバック2の背面側に開く操作によって解除される。これにより、シートクッション3は、シートバック2との間に掛着された図示しない附勢ばねのばね力によって、リクライニング装置5の中心軸5aまわりに回転し、シートバック2の前面部位置まで起こし上げられて保持されるようになっている。
【0016】
ここで、第1操作レバー7は、図2に示されるように、連結軸7aによってシートバック2に回転可能にヒンジ連結されている。そして、第1操作レバー7は、常時はシートバック2との間に掛着された捩りばね7cのばね力によって、シートバック2の背面部に畳み込まれた閉じ位置に保持されている。ここで、第1操作レバー7が本発明の操作部材に相当する。
【0017】
そして、第1操作レバー7は、上記した捩りばね7cのばね力に抗して図示時計回りに開き操作されることにより、この第1操作レバー7に繋がれた図示しないケーブルの牽引操作を介して、リクライニング装置5(図1参照)のロック状態を解除操作するようになっている。ここで、図1〜図2に示されるように、第1操作レバー7には、シートバック2の背面部に設けられた後述するバックロック装置9のロック解除の操作を行う解除ケーブル9aや、シートバック2の下端部に設けられた後述する天井ロック装置8のロック解除の操作を行う解除ケーブル8aが繋がれている。
【0018】
なお、図示は省略されているが、第2操作レバー30にも、同様にリクライニング装置5のロック状態を解除操作するケーブルや、天井ロック装置8やバックロック装置9のロック状態を解除操作する解除ケーブル8a,9aがそれぞれ繋がれている。
【0019】
これにより、第1操作レバー7や第2操作レバー30の開き操作に伴って、両解除ケーブル8a,9aが一斉に牽引操作されて、バックロック装置9や天井ロック装置8のロック解除の操作が一斉に行われるようになっている。ここで、図2に示されるように、第1操作レバー7の開き操作時に外部に露呈する第1操作レバー7の裏面部(露呈部)には、上述した両ロック装置8,9がいずれもロック状態となっていない状態を異常状態として警告表示する警告表示面7bが付設されている。
【0020】
この警告表示面7bは、操作者Pに視覚により危険状態を察知させ易くする赤色等の警告表示色を帯びて形成されている。この警告表示面7bは、第1操作レバー7が開き操作される前の閉じ状態時には、シートバック2の背面部に隠された状態として、操作者Pからは見えない状態とされる。しかし、警告表示面7bは、第1操作レバー7が開き操作されることにより、外部に対して露呈して、特に車両後方側に立つ操作者Pに対して見やすいように上記した異常状態を警告表示するようになっている。
【0021】
詳しくは、警告表示面7bは、シート本体1が車体天井C下の格納位置付近に位置する時に第1操作レバー7が開き操作された状態では、車両後方側に面を向けるようになっている。また、警告表示面7bは、シート本体1が車体フロアF上の使用位置付近に位置する時に第1操作レバー7が開き操作された状態では、車両後方側に立つ操作者Pから覗き見しやすいように上方側に面を開き向けるようになっている。
【0022】
ここで、図2に示されるように、第1操作レバー7は、その開き操作によって両ロック装置8,9が共にロック解除された状態となることにより、これらロック装置8,9に繋がれたウォーニングケーブル23を介して牽引操作されて、開き操作された状態に保たれるようになっている。これにより、第1操作レバー7は、両ロック装置8,9がいずれも係合ロック状態にない異常状態時には、警告表示面7bを常に操作者Pに向けて警告表示した状態として、操作者Pに異常状態を認識させられるようになっている。
【0023】
また、第1操作レバー7は、第2操作レバー30が開き操作された場合にも、両ロック装置8,9が共にロック解除された状態となることによって、同様にウォーニングケーブル23を介して牽引操作されて、開き操作された状態に切換えられるようになっている。なお、これらの構成については後に詳しく説明することとする。
【0024】
ところで、図1に戻って、上述したシート本体1は、シートバック2の両肩口に一体的に連結された左右一対のリンク部材6によって、車体天井Cに回転可能にリンク連結されている。これにより、シート本体1は、リンク部材6が車体天井Cとの連結点(連結軸6a)を中心に回転する動きに伴って、車体フロアF上の使用位置(第1の設置位置)と車体天井C下の格納位置(第2の設置位置)との間で移動操作されるようになっている。
【0025】
ここで、シート本体1は、常時は、シートバック2の背面部に設けられたバックロック装置9を、車体側部Tに設置されたストライカS1に係合ロックさせることによって、車体フロアF上の使用位置に保持されている。ここで、バックロック装置9は、シートバック2の背面部の左右両側の縁部に配設されており、ストライカS1は、このバックロック装置9の配設位置に対応した車体側部Tの左右両側の位置に設けられている。ここで、バックロック装置9が本発明の第1のロック装置に相当し、天井ロック装置8が本発明の第2のロック装置に相当する。
【0026】
上述したバックロック装置9は、通常時は、シート本体1を車体フロアF上に落とし込む動作によってストライカS1と係合ロックすることのできるロック可能状態となっている。ここで、バックロック装置9とストライカS1との係合ロック状態は、前述した第1操作レバー7や第2操作レバー30の開き操作によって解除できるようになっている。そして、バックロック装置9とストライカS1との係合ロック状態が解除されることにより、シート本体1を車体フロアF上の使用位置から押し動かして車体天井C下の格納位置まで格納移動させられる状態となる。
【0027】
そして、このシート本体1の格納移動は、シートバック2の左右両側の下端部に設けられた天井ロック装置8が、車体天井C下に設置された対応するストライカS2にそれぞれ押し付けられて係合ロックすることによって、車体天井C下の格納位置に止められて保持される。ここで、天井ロック装置8は、常時は前述したバックロック装置9と同じように、シート本体1の格納移動によってストライカS2に押し付けられることでストライカS2に係合ロックすることのできるロック可能状態とされて保持されている。
【0028】
そして、この天井ロック装置8とストライカS2との係合ロック状態も、前述した第1操作レバー7や第2操作レバー30の開き操作によって解除操作されるようになっている。ここで、上述したシート本体1の格納移動は、第1操作レバー7や第2の操作レバー30が開き操作されて行われるため、同操作によってシートクッション3がシートバック2の前面部に起こし上げられた状態で行われるようになっている。
【0029】
次に、前述したバックロック装置9や天井ロック装置8の構成について図3〜図4を用いて説明する。なお、両ロック装置8,9は、実質的には互いに同一のロック構造10を備えているため、以下ではこれらのロック構造10についてまとめて説明することとする。
【0030】
すなわち、図3に示されるように、各ロック装置8,9は、シートバック2の骨格部に固定設置されたベース板11と、このベース板11に対して回転可能に軸支連結されたラッチ12及びポール13と、このラッチ12とポール13との間に掛着された引張ばね14と、前述した第1操作レバー7や第2操作レバー30に繋がれた解除ケーブル15(解除ケーブル8a,9a)と、操作ケーブル16(操作ケーブル8c,9c)とによって構成されている。これらロック装置8,9は、ストライカS(ストライカS1,S2)がベース板11に形成された受入口11aの内部に押し込まれることによって、このストライカSにラッチ12を係合ロックさせる構成となっている。
【0031】
具体的に説明すると、先ず、ラッチ12は、支軸12eによってベース板11に回転可能に軸支連結されている。そして、ラッチ12は、常時はその掛部12cとポール13の掛部13cとの間に掛着された引張ばね14の附勢力を受けて、図示反時計回りに回転附勢された状態として、ベース板11に形成されたストッパ11bと当接した初期位置の姿勢状態に保持されている。
【0032】
このラッチ12には、その初期位置の姿勢状態時に、ベース板11に形成された受入口11aの口内に張り出す上顎12aと、ラッチ12が初期位置から時計回りに回転(図4参照)した際に、受入口11aを塞ぐように移動する下顎12bと、が形成されている。そして更に、ラッチ12には、これが初期位置から時計回りに回転した際(図4参照)に、ポール13に形成された爪部13bと係止し合う角部12dが形成されている。
【0033】
一方、図3に戻って、ポール13は、支軸13eによってベース板11に回転可能に軸支連結されている。そして、ポール13は、常時は前述したラッチ12との間に掛着された引張ばね14の附勢力を受けて、図示時計回りに回転附勢された状態として、ラッチ12の角部12dに押し当てられた初期位置の姿勢状態に保持されている。このポール13には、解除ケーブル15の右側端部と連結されて作動操作される操作腕13aと、ラッチ12が初期位置から時計回りに回転した際に、その角部12dと係止し合う爪部13bとが一体的となって形成されている。
【0034】
上記構成のロック装置8,9は、ストライカS(ストライカS1,S2)がベース板11の受入口11aの内部に押し込まれる動きによって、この口内に上顎12aを露出させているラッチ12が図示時計回り方向に押し動かされる。これにより、図4に示されるように、ラッチ12が、引張ばね14の附勢力によって、その角部12dにポール13の爪部13bが引き寄せられて互いに係止し合った状態となってその回転がロックされる。
【0035】
そして、この時計回り方向の回転に伴って、下顎12bがストライカSの背後に回り込むかたちで移動して、受入口11aを塞ぎ込む。これにより、ストライカSが受入口11aの内部において、ラッチ12によって係合ロックされた状態として保持される。すなわち、上記構成のロック構造10は、解除ケーブル15が牽引操作される前の状態では、これをストライカSに押し込む操作によって互いに係合ロックすることのできるロック可能状態となっている。
【0036】
そして、このストライカSの係合ロック状態は、第1操作レバー7や第2操作レバー30(図1参照)によって解除ケーブル15(解除ケーブル8a,9a)を牽引操作することによって解除することができる。具体的には、図3に示されるように、解除ケーブル15が牽引操作されることにより、操作腕13aが操作されてポール13が図示反時計回り方向に回転操作される。これにより、ポール13の爪部13bとラッチ12の角部12dとの係止状態が外されて、ラッチ12が引張ばね14の附勢力によって反時計回りに回転する。
【0037】
これにより、ストライカSがラッチ12の上顎12aによって押し出される格好で受入口11aから吐き出され、両者の係合ロック状態が解除される。そして、第1操作レバー7や第2操作レバー30(図1参照)による解除ケーブル15の牽引操作状態が解除されることにより、ポール13が再びラッチ12の角部12dに押し当てられた状態となり、各ロック装置8,9が再びストライカSと係合ロックすることのできるロック可能状態に戻される。
【0038】
ここで、図4に示されるように、前述したラッチ12には、その回転軸となる支軸12eに、操作アーム12f(操作アーム8b,9b)が一体的に連結されている。これにより、操作アーム12fは、ラッチ12と一体的に連結された状態として、支軸12eを中心にラッチ12と回転を共にするようになっている。この操作アーム12fには、後述するウォーニング操作機構20に繋げられた操作ケーブル16(操作ケーブル8c,9c)の端部が繋がれている。
【0039】
ここで、操作ケーブル16は、図4に示されるように、ラッチ12がストライカSに係合ロックした回転位置にある状態では、牽引操作される前の状態として保持されている。そして、操作ケーブル16は、第1操作レバー7や第2操作レバー30(図1参照)によって解除ケーブル15が牽引操作されて、ラッチ12による係合ロック状態が解除されることにより、ラッチ12が図3に示されるように反時計回り方向に回転する動きに伴って、操作アーム12fにより牽引操作されるようになっている。
【0040】
次に、これら操作ケーブル8c,9cが牽引操作された操作力を、図2で前述した第1操作レバー7を開き操作した位置に保持する操作力として伝達するためのウォーニング操作機構20の構成について図5〜図8を用いて説明する。このウォーニング操作機構20は、図5に示されるように、シートバック2の骨格部に固定設置された基板21と、この基板21に対してスライド可能に組み付けられた操作板22と、この操作板22に繋がれたウォーニングケーブル23とを有して構成されている。
【0041】
詳しくは、操作板22は、基板21に貫通形成された長孔21hにピン22pによってスライド可能に連結されている。これにより、操作板22は、ピン22pが長孔21h内をスライド可能とされる範囲内で、基板21に対してスライド可能かつ回転可能な状態とされている。そして、この操作板22の図示右側の縁部には、前述した天井ロック装置8に繋がれた操作ケーブル8cの端部が連結されており、図示左側の縁部には、バックロック装置9に繋がれた操作ケーブル9cの端部が連結されている。
【0042】
これら操作ケーブル8c,9cは、それらの端部が、それぞれ操作板22に貫通形成された長孔22a,22bにピンによってスライド可能かつ回転可能な状態に連結されている。そして、上述した操作板22を基板21に連結するピン22pには、ウォーニングケーブル23の端部が連結されている。このウォーニングケーブル23は、その他端が、図2で前述したように第1操作レバー7に繋がれており、常時は第1操作レバー7が捩りばね7cのばね力によって閉じ位置に保持されようとする力によって、第1操作レバー7側から引っ張られた状態として保持されている。
【0043】
ここで、図5に戻って、前述した操作板22は、図1で前述したバックロック装置9が車体フロアF上の使用位置でストライカS1に係合ロックしている状態では、解除状態となっている天井ロック装置8に繋がれた操作ケーブル8cが牽引状態となることにより、同操作ケーブル8cの繋がれた右側の縁部が、図示上方側に引き込み操作された状態となる。しかし、このとき操作板22は、前述した第1操作レバー7側から引っ張られた状態となっているウォーニングケーブル23によって、これとの連結点であるピン22pを中心に図示反時計回り方向に回転動作するようになっており、全体としては図示上方側にはスライド操作されないようになっている。
【0044】
そして、このときバックロック装置9に繋がれた操作ケーブル9cは、操作板22が上記のように回転操作されても、この操作板22との連結点が長孔22b内でスライドすることで、操作板22の動きを逃がせるようになっている。また、同様に、図7に示されるように、天井ロック装置8が車体天井C下の格納位置でストライカS2に係合ロックしている状態(図1参照)では、解除状態となっているバックロック装置9に繋がれた操作ケーブル9cが牽引された状態となることにより、同操作ケーブル9cの繋がれた左側の縁部が、図示上方側に引き込み操作された状態となる。
【0045】
しかし、この場合には、天井ロック装置8に繋がれた操作ケーブル8cは、操作板22が上記のように回転操作されても、この操作板22との連結点が長孔22a内でスライドすることで、操作板22の動きを逃がすようになっている。このように、一方側の操作ケーブル8c(操作ケーブル9c)のみが牽引操作される場合には、操作板22全体が図示上方側に引き込まれるのではなく、ウォーニングケーブル23との連結点(ピン22p)を中心に回転する運動に留められるため、ウォーニングケーブル23は牽引されないようになっている。
【0046】
しかし、図6に示されるように、操作板22は、両ロック装置8,9が解除状態となることにより、両操作ケーブル8c,9cによって両側の縁部が図示上方側に引き込み操作されて、全体が上方側にスライド操作された状態となる。これにより、ウォーニングケーブル23も同方向に牽引操作され、図2に示されるようにその他端側に繋がれた第1操作レバー7を引張り込んで、第1操作レバー7を開き操作した位置に保持した状態となる。
【0047】
なお、第1操作レバー7は、前述したバックロック装置9か天井ロック装置8かのいずれかが再び係合ロックされた状態となることにより、図5或いは図7で示したようにウォーニングケーブル23の牽引操作状態が解かれるのに合わせて、捩りばね7cのばね力によって閉じ操作されるようになっている。ここで、図8には、上述した第1操作レバー7を開き位置に保持するための操作力が各ロック装置8,9から伝達される伝達経路が、ブロック図によって示されている。
【0048】
このように、本実施例の車両用ウォーニング構造によれば、警告表示面7bが両ロック装置8,9の解除操作用に設けられた第1操作レバー7の設定箇所に設けられていることにより、どちらか一方側のロック装置8,9が車体側構造体に係合ロックした状態となっているかどうかの確認は、操作者Pがこの第1操作レバー7の設定箇所を見ることで行うことができる。したがって、警告表示面7bが各ロック装置8,9毎に設けられていたり、各ロック装置8,9の設定箇所に設けられていたりする構成と比べると、警告表示状態の確認をより簡便に行えるようにすることができる。
【0049】
また、第1操作レバー7がシートバック2の背面部に設定されていることにより、シート本体1が車体フロアF上の使用位置にある時には、操作者Pが車両後部側に立った位置から目や手を届かせ易くなる。また、シート本体1が車体天井C下の格納位置にある時には、操作者Pが車内から目や手を届かせ易くなる。したがって、第1操作レバー7の操作や警告表示状態の確認を簡便に行うことができる。
【0050】
また、警告表示面7bは、第1操作レバー7が開き操作された際に、その露呈部となる第1操作レバー7の裏面部に赤色等の警告表示色を表示するように形成されている。この警告表示面7bは、両ロック装置8,9が解除状態となっている時には、第1操作レバー7が開き操作された状態に保たれることによって、警告表示色を表示した状態に保たれる。そして、警告表示面7bは、どちらか一方側のロック装置8,9が係合ロック状態となることで第1操作レバー7が閉じられることにより、警告表示しない状態に切り換えられる。このように、警告表示面7bを、第1操作レバー7の露呈部に警告表示色を付設した合理的な構成として具現化することができる。
【0051】
また、第1操作レバー7とは別に、操作者Pが車両後方側に立った位置から解除操作を行い易いシートバック2の背面部位置に、大型の第2操作レバー30が設けられていることにより、第1操作レバー7がシートバック2の下方側位置に設けられていて操作者Pが車両後方側に立った位置から操作しづらい場合であっても、かかる解除操作を第2操作レバー30を用いて簡便に行うことができる。そして、この第2操作レバー30を用いて操作を行う場合であっても、第1操作レバー7を連動作動させて警告表示させられるようにしたことにより、どちらか一方側のロック装置8,9が車体側構造体に係合ロックした状態となっているかどうかの確認を行えるようにすることができる。
【0052】
以上、本発明の実施形態を一つの実施例について説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施できるものである。すなわち、本発明が対象とする車両用ウォーニング構造は、着座部となるシート本体が車体側構造体に係合ロックしていない状態を異常状態として警告表示する警告表示部を有する構造であれば、上記実施例で示した用途以外にも、各種の形態で実施が可能である。
【0053】
例えば、シート本体を車体フロア上の使用位置から車両側方や前後方向に起こし上げた格納位置に係合ロックさせる形式のシート構造や、シート本体を車体フロアに凹み形成した凹部内に格納して係合ロックさせる形式のシート構造にも、本発明のウォーニング構造を適用することができる。また、格納式シート以外でも、例えばシート本体を車体側構造体に対して異なる二箇所の位置で係合ロックさせられるようになっている構成にも、本発明のウォーニング構造を適用することができる。
【0054】
また、警告表示部が、第1操作レバー7を開き操作した際に露呈する裏面部に、赤色等の警告表示色が表示されるようにした警告表示面7bとして形成されたものを示したが、別途、出没式の警告表示部品を設けて、両ロック装置8,9が解除状態となることで突出して警告表示を行うような構成としてもよい。また、第1操作レバー7自体を警告表示部として構成してもよい。すなわち、上記実施例で示したように、両ロック装置8,9が解除状態となっているときに第1操作レバー7が開き操作された位置に保持される構成とすることにより、この第1操作レバー7の状態によって、警告表示状態である旨を確認できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施例1の車両用ウォーニング構造の概略構成を表した側面図である。
【図2】第1操作レバーの操作構造を模式的に表した側面図である。
【図3】バックロック装置や天井ロック装置の解除状態を表した構成図である。
【図4】バックロック装置や天井ロック装置の係合ロック状態を表した構成図である。
【図5】バックロック装置が係合ロック状態となっている時のウォーニング操作機構の状態を表した模式図である。
【図6】天井ロック装置が係合ロック状態となっている時のウォーニング操作機構の状態を表した模式図である。
【図7】両ロック装置の係合ロック状態が解除されている時のウォーニング操作機構の状態を表した模式図である。
【図8】ウォーニング操作機構の操作力の伝達の流れを表したブロック図である。
【符号の説明】
【0056】
1 シート本体
2 シートバック
3 シートクッション
4 ヘッドレスト
5 リクライニング装置
5a 中心軸
6 リンク部材
6a 連結軸
7 第1操作レバー(操作部材)
7a 連結軸
7b 警告表示面
7c 捩りばね
8 天井ロック装置(第2のロック装置)
8a 解除ケーブル
8b 操作アーム
8c 操作ケーブル
9 バックロック装置(第1のロック装置)
9a 解除ケーブル
9b 操作アーム
9c 操作ケーブル
10 ロック構造
11 ベース板
11a 受入口
11b ストッパ
12 ラッチ
12a 上顎
12b 下顎
12c 掛部
12d 角部
12e 支軸
12f 操作アーム
13 ポール
13a 操作腕
13b 爪部
13c 掛部
13e 支軸
14 引張ばね
15 解除ケーブル
16 操作ケーブル
S ストライカ
20 ウォーニング操作機構
21 基板
21h 長孔
22 操作板
22p ピン
22a 長孔
22b 長孔
23 ウォーニングケーブル
30 第2操作レバー
F 車体フロア
T 車体側部
C 車体天井
S1 ストライカ
S2 ストライカ
P 操作者


【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座部となるシート本体が車体側構造体に係合ロックしていない状態を異常状態として警告表示する警告表示部を有する車両用ウォーニング構造であって、
前記シート本体は車体側構造体に対する設置位置が移動によって第1の設置位置と第2の設置位置とに切り換えられるようになっており、該シート本体にはこれを第1の設置位置に係合ロックさせるための第1のロック装置と第2の設置位置に係合ロックさせるための第2のロック装置とが設けられており、当該各ロック装置は共に前記シート本体に設けられた一の操作部材を操作することによって該シート本体を各設置位置に係合ロックさせた状態が解除されるようになっており、
前記警告表示部は前記操作部材の設定箇所に設けられており、前記両ロック装置が解除状態となることで警告表示した状態となり、どちらか一方側のロック装置が係合ロック状態となることで警告表示しない状態となることを特徴とする車両用ウォーニング構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用ウォーニング構造であって、
前記シート本体は背凭れとなるシートバックが車体天井に回転可能にリンク連結されており、該シートバックを前方上方に起こし上げ回転させる態様で前記第1の設置位置となる車体フロア上の使用位置から前記第2の設置位置となる車体天井下の格納位置に格納移動できるようになっており、前記操作部材は前記シートバックの背面部に配置設定されていることを特徴とする車両用ウォーニング構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用ウォーニング構造であって、
前記操作部材は前記シート本体にヒンジ連結されて附勢に抗した回転操作によって閉じた位置から開き操作される開閉式の操作レバーとして形成されており、前記警告表示部は前記操作部材の開き操作時に露呈する露呈部に赤色等の警告表示色が付設された警告表示面として形成されており、前記操作部材はその開き操作によって前記両ロック装置が解除状態となることによりその開き操作をやめても開き操作された状態に保たれて前記警告表示面が露呈した状態に保たれるが、どちらか一方側のロック装置が係合ロック状態となることで閉じられる構成であることを特徴とする車両用ウォーニング構造。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−6213(P2010−6213A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167181(P2008−167181)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】