説明

車両用エアーワイパー装置

【課題】騒音が発生せずフロントガラスの表面にキズも付かず、しかも、雨滴・雪の除去能力に優れ前方の視界も良好となし得る車両用エアーワイパー装置を提供する。
【解決手段】線対称に隣接して一対の扁平な区画室7a,7bを形成し、平板3a,3b間の一側を空気噴出口9としそこに区画室と連通する噴出孔11が列設された張出板10を配置し、各区画室に電気的駆動手段18a,18bにより互いに逆方向に正回転する回転羽根14a,14bを配置し、両区画室の表・裏平板間の側壁4は回転羽根の周囲を囲う円弧状部8aと空気噴出口側に向かって延びその間隔が漸次広がる直線状部8b,8cとからなり、各噴出孔11はその中心軸線Bが同一平面状に位置しかつ各中心軸線は各張出板の中央から長手方向に沿って両外側へ進むに従い外側へ傾斜する角度が漸次大きくなるようにし、各噴出孔から噴射される圧縮空気が互いに交差して渦巻き状に流れるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の一般の車両に装着され、降雨時・降雪時にもフロントガラスを通し運転者の前方の視界を良好となし得る車両用エアーワイパー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の一種である自動車例えば乗用車には、降雨時や降雪時での前方の視界をよくし安全かつ快適に運行できるようにするためフロントガラスの表面に付着する雨滴・雪を払う機械式のワイパー装置が装備されている。更に詳しくは、該機械式のワイパー装置は、駆動モータによりゴム製のワイパーブレイドをフロントガラスの表面に沿って扇状に往復回動させて該フロントガラス表面の雨滴や雪を払拭するようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2008−56218号公報(第2−3頁、図1、図10)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記機械式のワイパー装置では、該ワイパー装置を作動させることによりフロントガラスの表面から雨滴や雪を払うことができるものの、ワイパーブレイドの往復回動動作時にフロントガラスの表面を擦る動作音が発生して耳障りである。しかも、フロントガラスの表面にワイパーブレイドが擦るように接触することから、その表面に細かいキズが付き易いという課題が有った。また、該ワイパーブレイドがフロントガラスを通しての視界を遮るので、運転者にとって前方が見難いという課題も有った。
【0005】
そこで、本発明は上記課題を解決すべくなされたもので、作動時に耳障りになる騒音が発生せずフロントガラスの表面にキズも付かず、しかも、雨滴・雪の除去能力に優れ前方の視界も良好となし得る車両用エアーワイパー装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するため本発明に係る車両用エアーワイパー装置は、同一平面上に基線を中心とする線対称状に隣接させて形成され表・裏平板にそれぞれ空気取入口が開設される一対の扁平な区画室と、前記各区画室の前記表・裏平板間の同側でありかつ前記基線に対し直交する面となる各空気噴出口に沿って一直線状に配置され該各区画室と連通する多数の噴出孔が長手方向に沿って列設される張出板と、前記各区画室内に配置され電気的駆動手段により前記平板に沿って互いに逆方向に正回転する回転羽根とを備え、前記両区画室の前記表・裏平板間の側壁は前記回転羽根の周囲を囲う円弧状部と、前記円弧状部の両側から前記空気噴出口側に向かって延びかつその間隔が外側に進むに従い漸次広がる直線状部とからなり、前記各張出板における各噴出孔はそれら中心軸線が同一平面状に位置しかつ該各中心軸線は各張出板の中央から長手方向に沿って両外側に進むに従い外側へ傾斜する角度が漸次大きくなるように設定され、前記両張出板の各噴出孔から噴射される圧縮空気が互いに交差し重なり合って渦巻き状の層になって流れるようにしたことを特徴とする。
【0007】
この際、前記両区画室内の前記側壁面であって前記基線から徐々に離れる円弧状部及びこれと連なり該基線から徐々に離れる直線状部はその長手方向に対し直交する断面がくの字状に外側へ屈曲してなり、かつ、前記屈曲面のなす角度が前記空気噴出口側へ進むに従い漸次小さくなるように形成されていることが好ましい。
【0008】
また、前記張出板の外側に前記各噴出孔から噴射された圧縮空気の噴射方向を該張出板の長手方向に対し直交する面内で変更させる風向調整翼が角度調節自在に設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る車両用エアーワイパー装置は、同一平面上に基線を中心とする線対称状に隣接させて形成され表・裏平板にそれぞれ空気取入口が開設される一対の扁平な区画室と、該各区画室の表・裏平板間の同側でありかつ基線に対し直交する面となる各空気噴出口に沿って一直線状に配置され該各区画室と連通する多数の噴出孔が長手方向に沿って列設される張出板と、各区画室内に配置され電気的駆動手段により平板に沿って互いに逆方向に正回転する回転羽根とを備え、両区画室の表・裏平板間の側壁は回転羽根の周囲を囲う円弧状部と、該円弧状部の両側から空気噴出口側に向かって延びかつその間隔が外側に進むに従い漸次広がる直線状部とからなり、各張出板における各噴出孔はその中心軸線が同一平面状に位置しかつ該各中心軸線は各張出板の中央から長手方向に沿って両外側に進むに従い外側へ傾斜する角度が漸次大きくなるように設定されている。そして、回転羽根を回転させると両区画室内に取り込まれた空気が圧縮され、その圧縮空気が両張出板の各噴出孔から噴射されてフロントガラスの表面に当り該表面に付着しているまたは付着しようとする雨滴・雪を払う。
【0010】
特に、両張出板の各噴出孔から噴射される圧縮空気が互いに交差し重なり合って渦巻き状の層になって流れるので、この層によって雨滴や雪がはじかれフロントガラスへの雨滴・雪の付着がほとんどなくなり、雨滴・雪の除去能力に優れる。よって、フロントガラスを極めて視界良好に保つことができ、安全かつ快適な運転を可能とする。また、フロントガラスに圧縮空気を噴射するのみであるから、機械式のワイパー装置のような騒音が発生せず、しかも、フロントガラスの表面にキズも付かないという有益な効果がある。更に、車両用エアーワイパー装置はそのまま車両に取り付け簡単な電気配線のみで搭載でき、車両の組み立て工程にあってもその取り付けに多くの手間を要しないという効果もある。
【0011】
また、両区画室内の側壁面であって基線から徐々に離れる円弧状部及びこれと連なり基線から徐々に離れる直線状部を、その長手方向に対し直交する断面がくの字状に外側へ屈曲させ、かつ、屈曲面のなす角度を空気噴出口側へ進むに従い漸次小さくなるように形成すれば、各区画室内にあって回転羽根により圧縮される空気圧が一層高められる。これにより、雨滴・雪の除去能力が高められ両張出板に列設される噴出孔から噴射される空気の噴射力を強めることができ、フロントガラスの表面の視界を一層良好にする。
【0012】
更に、各張出板の外側に各噴出孔から噴射された圧縮空気の噴射方向を張出板の長手方向に対して直交する面内で変更させる風向調整翼を角度調節自在に設けるようにしたので、組み付ける車両の種類、例えば乗用車、大型トラック、更には電車といったように車両の種類が異なった場合も、それら車両に合った最良の圧縮空気の噴射方向を設定できる。これにより、いずれの車両にも自在に適合させることができ至便である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る車両用エアーワイパー装置(以下、単に「エアーワイパー」という。)について詳しく説明する。まず、本発明に係るエアーワイパーAは自動車、電車といった車両に適用されるが、その内、自動車、特に乗用車に適用される場合について説明する。図6は、本発明に係るエアーワイパーが適用される乗用車の斜視図である。エアーワイパーAは、例えば乗用車Cの前側のボンネット100の裏側であって、フロントガラス101側に寄せてその中央に配設される。このため、該エアーワイパーAに対応するボンネット100の部位102が上方へ突出する。
【0014】
エアーワイパーAは単体としてユニット化されており、詳しい説明は省略するが該エアーワイパーAはボンネット100の裏側またはその下方の適宜位置に螺子止めして固着される。そして、空気噴出口9がフロントガラス101と対向位置してエアーワイパーAがほぼ水平に設置される。また、エアーワイパーAから引き出される電気配線は、乗用車Cに搭載されるバッテリー(図示せず。)に接続される。そこで、エアーワイパーAが電気的に作動すると、前記空気噴出口9から圧縮空気がフロントガラス101の表面に向かって噴射され、その表面を視界良好に保つこととなる。
【0015】
次に、エアーワイパーAについて説明する。図1は本発明に係るエアーワイパーの前から見た斜視図、図2は同ケース本体の平面断面図、図3は同表平板の裏面の平面図、図4は同歯車収納室の平面断面図、図5(イ)は図2のX−X線拡大断面図、図5(ロ)は図2のY−Y線拡大断面図である。エアーワイパーAは、平面台形状をなす扁平かつ中空状のケース本体1とその裏面に一体に固着され上面が開放される歯車収納室2とから概ね構成される。ケース本体1は表側の表平板3aと裏側の裏平板3bとが所定の間隔離して平行に配置され、表・裏平板3a,3b間の周囲がフロントガラス101と対向する面を除いて側壁4により囲われている。また、表平板3aの外側に一定の間隔5離して平行に重なる表側板6が配設される。
【0016】
そして、前記ケース本体1内には、中央すなわち乗用車Cに搭載された状態で乗用車Cの車幅方向での中央にその前後方向に沿って仮想の基線としての中心線Oを配した場合、その中心線Oを中心とする線対称状に一対の区画室7a,7bが隣接して形成される。この場合、区画室7a,7bを区画するのは、表・裏平板3a,3b間に配設される帯板状の金属板8である。
【0017】
前記各区画室7a,7bの表・裏平板3a,3b間の一側であってフロントガラス101と対向する面すなわち前記中心線Oに対し直交する面をそれぞれ空気噴出口9とし、両空気噴出口9,9に該空気噴出口9を塞ぐようにかつ前記中心線Oに対し直交する面に沿って一直線状の張出板10,10が配置される。各張出板10には、その長手方向に沿って各区画室7a,7bと連通する多数の噴出孔11,11…が列設されている。各区画室7a,7b内に前記表側板6と裏平板3bとに設けられた軸受12,12により支軸13が軸支され、表・裏平板3a,3bと平行な面内で自在に回転する回転羽根14a,14bが配置される。
【0018】
回転羽根14a,14bは、裏平板3b側に設けられる円形基板15と、該円形基板15の表平板3a側に支軸13から放射線状にかつ円形基板15面上で所定量湾曲した複数の羽根16,16…と、から構成される。また、円形基板15には、その支軸13を中心とするドーナツ状の空気通口15aが開設される。回転羽根14a,14bにおける支軸13の一端は歯車収納室2内に突出しており、該各一端部にそれぞれ歯車収納室2内に収納される金属製(アルミ合金又はステンレス合金)の従動歯車17a,17bが取着される。また、ケース本体1内にモータ軸19が歯車収納室2内に突出する電気的駆動手段である一対の駆動モータ18a,18bが配置され、該各モータ軸19の先端にそれぞれ樹脂製(ナイロン樹脂)の駆動歯車20a,20bが取着される。そして、一方の駆動歯車20aが一方の従動歯車17aに噛合し、また、他方の駆動歯車20bが他方の従動歯車17bに噛合する。このように、金属製の従動歯車17a,17bと樹脂製の駆動歯車20a,20bとを噛合させているので、これら回転時の騒音がかなり抑えられ静かである。両駆動モータ18a,18bのモータ軸19,19は互いに逆方向へ正回転し、これに伴い図2実線の矢視方向に示すように前記両回転羽根14a,14bもそれぞれ逆回転するようになっている。
【0019】
図5に示すように、前記ケース本体1の裏平板3bに前記各区画室7a,7bと歯車収納室2とが連通するような円形状の第一空気取入口21が複数個開設される。これら第一空気取入口21はそれぞれ各回転羽根14a,14bの支軸13を中心とする円形状に並んで配設され、かつ、円形基板15の外周縁からその外側へ食み出ないようになっている。また、歯車収納室2の底壁2aに、前記両従動歯車17a,17bの中間位置であってしかも両駆動歯車20a,20bの中間位置に外気と連通する第二空気取入口22が開設される。
【0020】
同様に、表平板3aにも、各回転羽根14a,14bに対応位置させてそれぞれ円形状の第三空気取入口23,23が開設される。これら第三空気取入口23,23は図5(イ)に示すように回転羽根14a,14bの支軸13を中心とする円形基板15の外周縁と同心円状に開設され、しかも、該円形基板15の外周縁の外側に食み出ないようになっている。また、各第三空気取入口23の外周縁に沿って、表平板3aの外側へ突出する環状凸部24が設けられる。該各環状凸部24の先端部は表側板6の裏面に対応位置して凹設された同形状の環状凹部25に嵌合しており、この場合、環状凹部25の深さより環状凸部24の長さの方が長く設定されている。各環状凸部24におけるフロントガラス101と対向する側すなわち前側は切除されている。そして、該切除部に表平板3aと表側板4との間に各区画室7a,7bと連通する吸気口26が開設され、表平板3aと表側板4との間隔5、吸気口26及び第三空気取入口23を介して外部空気が各区画室7a,7b内に取り入れられる。
【0021】
前記各区画室7a,7bを区画形成する帯状の金属板8は、図2に示すように前記回転羽根14a,14bの周囲をほぼ同心円状に囲う円弧状部8aと、該円弧状部8aの両側から前記空気噴出口9側に向かって延びる2本の直線状部8b,8cと、からなる。各区画室7a,7bにおける中心線O側に位置する内直線状部8bとその反対側に位置する外直線状部8cは、互いにその間隔が外側すなわち空気噴出口9側に進むに従い漸次広がるようになっており、外直線状部8cはケース本体1における中心線Oに対して傾斜する側壁の内側面4aに接触して該内側面4aに沿って延設される。また、各区画室7a,7bにおける前記中心線Oから徐々に離れる円弧状部8a及びこれと連なり同じく中心線Oから徐々に離れる外直線状部8cは、その長手方向に対し直交する断面が図5(イ)に示すようにくの字状に外側へ屈曲してなり、かつ、前記屈曲面27,27のなす角度αが空気噴出口9側へ進むに従い漸次小さくなる(180から160度へ変位する。)ように形成される。すなわち、空気噴出口9側に進むに従い窪みが深くなる。
【0022】
前記各張出板10における各噴出孔11は、その中心軸線Bが同一平面上すなわち表・裏平板3a,3bと平行な面上に位置する。しかも、該各中心軸線Bは各張出板10,10の中央に位置する中心軸線B0が前記中心線Oと平行をなし、該中心軸線B0を基点にしその長手方向に沿って両外側に進むに従い外側へ傾斜する角度が漸次大きくなるように設定される。両張出板10,10の各噴出孔11における中心軸線Bの傾きは、中心線Oを中心として線対称となるので、その一側の張出板10のみを説明し他側の説明は省略する。
【0023】
例えば、図2に示すように張出板10の中央に位置する噴出孔11のそれぞれ両側に位置する第一番目の噴出孔111,111は、中心軸線B1が中心線Oに対して外側へ5度傾斜する。第二番目の内側の噴出孔112は中心軸線B2が中心軸Oに対して外側へ8度傾斜すると共に、外側の噴出孔113は中心軸線B3が中心軸Oに対して外側へ10度傾斜している。第三番目の内側の噴出孔114は中心軸線B4が中心軸Oに対して外側へ10度傾斜すると共に、外側の噴出孔115は中心軸線B5が中心軸Oに対して外側へ12度傾斜している。第四番目の両側の噴出孔116,116は、それぞれ中心軸線B6が中心軸Oに対して外側へ15度傾斜している。第五番目の内側の噴出孔117は中心軸線B7が中心軸Oに対して外側へ20度傾斜すると共に、外側の噴出孔118は中心軸線B8が中心軸Oに対して外側へ15度傾斜している。第六番目の内側の噴出孔119は中心軸線B9が中心軸Oに対して外側へ30度傾斜すると共に、外側の噴出孔120は中心軸線B11が中心軸Oに対して外側へ16度傾斜している。第七番目の内側の噴出孔121は中心軸線B12が中心軸Oに対して外側へ35度傾斜すると共に、外側の噴出孔122は中心軸線B13が中心軸Oに対して外側へ20度傾斜している。ちなみに、金属板8が当接する側壁4はそれぞれ中心軸Oに対して外側へ25度傾斜している。
【0024】
前記回転羽根14a,14bにおける羽根16の中間高さ位置と張出板10の多数の噴出孔11〜122とは同一平面状に位置し、かつ、各張出板10の中央に位置する噴出孔11の中心軸線B0が中心線Oの方向でそれぞれ各回転羽根14a,14bにおける円形基板15の外周縁から少し内側に位置する。各区画室7a,7bの張出板10の内側に噴出孔11〜122に沿ってニクロム線28が配設され、該ニクロム線28を加熱することによって多数の噴出孔11〜122から噴射される圧縮空気を温めることができるようになっている。また、各張出板10の外側には表・裏平板3a,3bが前方へ所定長さ突設され、列設される噴出孔11〜122に沿って2枚の平行な風向調整翼29,29が配置される。該各風向調整翼29は各噴出孔11〜122から噴射される圧縮空気の方向を張出板10の長手方向に対し直交する面内で変更できるようにしている。このため、両端部から外側へ突出される回転軸30,30は、両区画室7a,7b間に配設される仕切壁31と外側の両側壁4,4との対向面にそれぞれ配置され回転軸30の回転角度を調整できる自在軸受32,32を介して軸支される。前記風向調整翼29,29の水平面に対する傾斜角度は、列設される噴出孔11〜122から噴射された圧縮空気がフロントガラス101のほぼ中間高さ位置に当るように設定しておくことが好ましい。
【0025】
図8に示すように、前記駆動モータ18a,18bは制御回路ボックス33を介してバッテリー34に接続される。該制御回路ボックス33は両回転羽根14a,14bの回転速度を3段階に調節できるようにしており、第一段階は駆動モータ18a,18bの回転速度が10000rpm/min、第二段階は駆動モータ18a,18bの回転速度が20000rpm/min、第三段階は駆動モータ18a,18bの回転速度が30000rpm/minとなるように設定される。これらは、例えば切換ボタンa0,a1,a2,a3を押すことにより切り替えられ、そのうちの一個であるボタンa0を電源ボタンとしている。また、前記ニクロム線28,28もスイッチ35を介してバッテリー34に接続される。
【0026】
本発明に係るエアーワイパーAは上記構成からなり、次にその作用を説明する。例えば、乗用車Cに乗って道路を走行中に雨が降り出したら、制御回路ボックス33の切換ボタンa1を押して第一段階に設定する。これにより、両駆動モータ18a,18bが10000rpm/minの回転速度で回転する。同時に、第一・第三空気取入口21,23を介して各区画室7a,7b内に外部空気が取り入れられ、図5(イ)破線の矢視方向のように各回転羽根14a,14bにおける円形基板15に開設されたドーナツ状の空気通口15aを介してまたは上面から円形基板15上面に誘導され、図2破線の矢視方向のように各羽根16により外周へ押し出される。これに伴い、該空気は圧縮されつつ各空気噴出口9側へ送られ、各張出板10,10に列設される各噴出孔11〜122から圧縮空気が面状にかつ両側へ広がるようにして噴射されフロントガラス101の表面に当たる。そして、該フロントガラス101の表面に面状の圧縮空気の層を形成して降り掛かる雨滴を吹き飛ばす。特にこの間、図6、図7に示すように、隣接する両張出板10,10の噴出孔11〜122から噴射される圧縮空気が互いに交差し重なり合って渦巻き状の層Tになって流れるので、この層Tによってフロントガラス101への雨滴・雪の付着がほとんどなくなり、雨滴・雪の除去能力に優れる。そして、フロントガラス101を極めて視界良好に保つ。
【0027】
本発明では、各区画室7a,7bにおける中心線Oから徐々に離れる円弧状部8a及びこれと連なり同じく中心線Oから徐々に離れる外直線状部8cを、その長手方向に対し直交する断面がくの字状になるように外側へ屈曲させ、かつ、上下の屈曲面27,27のなす角度αを空気噴出口9側へ進むに従い漸次小さくなる(180から160度へ変位する。)ようにしている。よって、これにより各区画室7a,7b内で圧縮される空気圧が前記円弧状部8a及び外直線状部8cに沿って円滑にしかも速く流れるようになり、圧力が一層高められると共に列設される噴出孔11〜122から噴射される圧縮空気の噴射力が強められてフロントガラス101の表面の視界を一層良好にする。
【0028】
また、例えば寒い朝であって、フロントガラス101の表面に霜が付着したり、薄い氷が張ったり、または雪が薄く積もった場合は、エアーワイパーAを作動させると同時にニクロム線28,28に通電させて熱し、空気噴出口9から噴射される空気を温める。これにより、前記フロントガラス101の表面に付着した霜、氷、雪はたちまち融けて視界が良好になる。
【0029】
以上のように、本発明に係るエアーワイパーAは、回転羽根14a,14bを回転させると、圧縮空気が両張出板10,10の各噴出孔11〜122から噴射され、フロントガラス101の表面に当り該表面に付着しようとする雨滴を払う。特に、各噴出孔11〜122から噴射される圧縮空気が互いに交差し重なり合って渦巻き状の層Tになって流れるので、この渦巻き状の層Tによって降雨・雪を跳ね返してフロントガラス101への雨滴・雪の付着をほとんどなくす。よって、雨滴・雪の除去能力に優れる。そして、これによりフロントガラスを極めて視界良好に保つことができ、安全かつ快適な運転が可能となる。また、フロントガラス101に圧縮空気を噴射するのみであるから、機械式のワイパー装置のような騒音が発生せず、しかも、フロントガラス101の表面にキズも付かない。更に、エアーワイパーAは、そのまま乗用車Cに取り付け簡単な電気配線のみで搭載できる。
【0030】
また、各張出板10の外側に各噴出孔11〜122から噴射された圧縮空気の噴射方向を張出板10の長手方向に対し直交する面内で変更させる風向調整翼29を角度調整自在に設けるようにしたので、組み付ける車両の種類、例えば乗用車、大型トラック、更には電車といったように車両の種類が異なった場合も、それら車両に合った最良の圧縮空気の噴射方向を設定できる。これにより、いずれの車両にも自在に適合させることができ至便である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係るエアーワイパーの前から見た斜視図。
【図2】同ケース本体の平面断面図。
【図3】同表平板の裏側の平面図。
【図4】同歯車収納室の平面断面図。
【図5】(イ)は図2のX−X線拡大断面図、(ロ)は図2のY−Y線拡大断面図。
【図6】本発明に係るエアーワイパーが適用される乗用車の斜視図。
【図7】同作用を示す側面断面図。
【図8】同電気回路図。
【符号の説明】
【0032】
3a 表平板
3b 裏平板
4 側壁
7a 区画室
7b 区画室
8a 円弧状部
8b (内)直線状部
8c (外)直線状部
9 空気噴出口
10 張出板
11 噴出孔
18a 電気的駆動手段(駆動モータ)
18b 電気的駆動手段(駆動モータ)
21 第一空気取入口
22 第二空気取入口
23 第三空気取入口
27 屈曲面
29 風向調整翼
A エアーワイパー
B 中心軸線
C 車両(乗用車)
O 基線(中心線)
T 渦巻状の層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一平面上に基線を中心とする線対称状に隣接させて形成され表・裏平板にそれぞれ空気取入口が開設される一対の扁平な区画室と、
前記各区画室の前記表・裏平板間の同側でありかつ前記基線に対し直交する面となる各空気噴出口に沿って一直線状に配置され該各区画室と連通する多数の噴出孔が長手方向に沿って列設される張出板と、
前記各区画室内に配置され電気的駆動手段により前記平板に沿って互いに逆方向に正回転する回転羽根とを備え、
前記両区画室の前記表・裏平板間の側壁は前記回転羽根の周囲を囲う円弧状部と、前記円弧状部の両側から前記空気噴出口側に向かって延びかつその間隔が外側に進むに従い漸次広がる直線状部とからなり、
前記各張出板における各噴出孔はそれら中心軸線が同一平面状に位置しかつ該各中心軸線は各張出板の中央から長手方向に沿って両外側に進むに従い外側へ傾斜する角度が漸次大きくなるように設定され、前記両張出板の各噴出孔から噴射される圧縮空気が互いに交差し重なり合って渦巻き状の層になって流れるようにしたことを特徴とする車両用エアーワイパー装置。
【請求項2】
前記両区画室内の前記側壁面であって前記基線から徐々に離れる円弧状部及びこれと連なり該基線から徐々に離れる直線状部はその長手方向に対し直交する断面がくの字状に外側へ屈曲してなり、かつ、前記屈曲面のなす角度が前記空気噴出口側へ進むに従い漸次小さくなるように形成されている請求項1記載の車両用エアーワイパー装置。
【請求項3】
前記張出板の外側に前記各噴出孔から噴射された圧縮空気の噴射方向を該張出板の長手方向に対し直交する面内で変更させる風向調整翼が角度調節自在に設けられている請求項2記載の車両用エアーワイパー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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