説明

車両用エンブレム

【課題】音出用の貫通孔を設ける必要をなくすことができる音声発生装置としての車両用エンブレムを提供する。
【解決手段】車両用エンブレム10を、車両の外面に設けられ、標章を表示する標章体(エンブレムプレート12、デザインプレート16)と、標章体を振動させて音声を発生させる圧電素子18と、から構成する。車両の外面に設けられる標章体自体を音源とするため、車外に対する音圧を確保すべく車両用エンブレム10に音出用の貫通孔を設ける必要をなくすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用エンブレムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に示されるように、車両の外装品(サイドプロテクションモールやエンブレム)の内部に圧電スピーカからなる音源を収容し、圧電スピーカによって告知音を発して車外に対して注意を促すようにしたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−110047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、圧電スピーカの車外に対する音圧を確保すべく、外装品に音出用の貫通孔を設ける必要がある。
【0005】
そこで、本発明は、音出用の貫通孔を設ける必要をなくすことができる音声発生装置としての車両用エンブレムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の車両用エンブレムは、車両の外面に設けられ、標章を表示する標章体と、前記標章体を振動させて音声を発生させる振動手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項2に記載の車両用エンブレムは、請求項1に記載の車両用エンブレムにおいて、前記標章体は、前記標章の本体部を構成し、開口部が形成される本体部材と、前記本体部材の裏側に設けられ、前記開口部から露出して前記標章の背景部を構成すると共に、前記振動手段によって振動される背景部材と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項3に記載の車両用エンブレムは、請求項2に記載の車両用エンブレムにおいて、前記背景部材に他の部分に比べて肉厚が薄くされる肉薄部を設けることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項4に記載の車両用エンブレムは、請求項2または請求項3に記載の車両用エンブレムにおいて、前記背景部材を前記本体部材との間で挟持する挟持部材を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1に記載の車両用エンブレムによれば、車両の外面に設けられる標章体を振動させることにより、音声が発生する。即ち、車両の外面に設けられる標章体自体を音源とするため、車外に対する音圧を確保すべく車両用エンブレムに音出用の貫通孔を設ける必要をなくすことができる。
【0011】
本発明の請求項2に記載の車両用エンブレムによれば、標章体は、標章の本体部を構成する本体部材と、本体部材の開口部から露出して標章の背景部を構成する背景部材と、を有する。そして、背景部材を振動手段によって振動させることにより、音声が発生する。このように簡易な構成で標章体から音声を発生させることができる。
【0012】
本発明の請求項3に記載の車両用エンブレムによれば、背景部材はその肉薄部において振動させられ、それにより音声が発生する。即ち、背景部材が振動し易くなり、音声を効果的に発生させることができる。
【0013】
本発明の請求項4に記載の車両用エンブレムによれば、背景部材は挟持部材によって本体部材との間で挟持される。このため、背景部材の振動による本体部材との干渉音の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用エンブレムの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車両用エンブレムの分解斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る車両用エンブレムの正面図である。
【図4】図3中のIV−IV線における断面図である。
【図5】図4中の一部を拡大して示す拡大図である。
【図6】図5の圧電素子に代替する振動手段の態様を示す、図5と同様の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る車両用エンブレムの実施形態について、添付の図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は本発明の実施形態に係る車両用エンブレムの斜視図であり、図2はその分解斜視図である。図3は車両用エンブレムの正面図であり、図4は図3中のIV−IV線における断面図である。図5は、図4中の一部を拡大して示す拡大図である。
【0017】
図2に示すように、本実施形態に係る車両用エンブレム10は、標章体の本体部材の一例としてのエンブレムプレート12と、エンブレムプレート12の裏側に設けられる標章体の背景部材の一例としてのデザインプレート16と、デザインプレート16をエンブレムプレート12との間で挟持するための挟持部材の一例としてのベースプレート14と、振動手段の一例としての圧電素子18と、を備える。
【0018】
エンブレムプレート12は、車両の種類や製造元などを象徴する標章(エンブレム)の形状に成形加工されている。一例として、本実施形態のエンブレムプレートは、楕円状を呈する外縁部20と、外縁部20の内側に略「T」字を呈する記号部22とから構成されている。
【0019】
記号部22は、その3箇所の端部において外縁部20に接続されている。外縁部20の内方における記号部22以外の部分は、標章の背景にあたる部分であってエンブレムプレートの表裏方向において開口している。以下、この部分を「開口部24」という。
【0020】
エンブレムプレート12の裏面には、裏面側に突出する爪部26が3個形成されている。
【0021】
本実施形態のエンブレムプレート12は樹脂材からなり、その表面には装飾を意図した金属メッキが施されている。尚、エンブレムプレート12は金属材など他の材料から構成してもよい。
【0022】
ベースプレート14は樹脂材からなり、エンブレムプレート12に対応した楕円状を呈する。ベースプレート14のエンブレムプレート12に対向する側の対向面27には、エンブレムプレート12の3個の爪部26に対応する係合穴28が形成されており、爪部26が係合穴28に嵌め込まれることによってエンブレムプレート12はベースプレート14に固定されるようになっている。
【0023】
ベースプレート14の裏面には、裏面側に突出する取付片30が複数個形成されており(図中では一部の取付片30のみを示す)、取付片30が車両の外面、例えばフロントグリルに設けられた取付部(図示せず)に嵌め込まれることによってベースプレート14は車両の外面に固定される。即ち、エンブレムプレート12はベースプレート14を介して車両の外面に取り付けられる。
【0024】
ベースプレート14の対向面27であってエンブレムプレート12の開口部24に対応する位置には、対向面27から掘り下げられた裏空間としての掘下穴32が形成されている。
【0025】
デザインプレート16は弾性を有する材料、例えば肉薄の樹脂板からなると共に、エンブレムプレート12やベースプレート14に対応した楕円状を呈する。デザインプレート16の外周部付近にはエンブレムプレート12の爪部26を挿通させるための挿通孔34と切欠36が形成されている。
【0026】
デザインプレート16は、エンブレムプレート12がベースプレート14に取り付けられる際、エンブレムプレート12の爪部26がデザインプレート16の挿通孔34と切欠36に挿通されることで位置決めされる。エンブレムプレート12がベースプレート14に取り付けられると、デザインプレート16はエンブレムプレート12とベースプレート14によって挟持され、固定されることとなる。
【0027】
図1に示すように、デザインプレート16の一部は、エンブレムプレート12の開口部24から露出し、標章の背景部38を構成する。
【0028】
図5に示すように、デザインプレート16の背景部38はエンブレムプレート12とベースプレート14によって挟持されておらず、また背景部38の肉厚はデザインプレート16のエンブレムプレート12とベースプレート14によって挟持される部分の肉厚に比べて薄くされた肉薄部とされている。
【0029】
このため、デザインプレート16の背景部38は、図中の上下方向において変位可能に構成、具体的にはデザインプレート16の挟持されている部分を支持点として撓むことが可能に構成されている。そして、圧電素子18が背景部38の裏面に貼り付けられており、圧電素子18を動作させる(圧電素子18の通電をオン・オフする)ことで、背景部38が振動するようになっている。即ち、デザインプレート16の背景部38は、音声を発生させるための振動板として構成されている。
【0030】
尚、圧電素子18を動作させるための駆動回路を搭載した電子回路基板(図示省略)は、ベースプレート14の掘下穴32に収容される、あるいはベースプレート14の裏面側に取り付けられる。
【0031】
このように、車両用エンブレム10は、標章の背景が開口部24として形成されるエンブレムプレート12と、エンブレムプレート12を車両の外面に取り付けるためのベースプレート14と、エンブレムプレート12とベースプレート14の間に設けられ、エンブレムプレート12の開口部24から露出する背景部38を有するデザインプレート16と、デザインプレート16を振動させる圧電素子18と、から構成される。
【0032】
即ち、エンブレムプレート12は、開口部24を有すると共に、ベースプレート14によって車両の外面に取り付けられる。また、デザインプレート16は、エンブレムプレート12の裏側に設けられ、開口部24から露出する背景部38を有すると共に、圧電素子18によって振動させられる。それにより、デザインプレート16から音声が発生され、発生された音声はエンブレムプレート12の開口部24を通して車外に向けて出力される。
【0033】
本実施形態の車両用エンブレム10では、エンブレムプレート12の開口部24から露出する背景部38を振動板としてそのまま音源となるように構成したので、車外に対する音圧を確保するための音出用の貫通孔を設ける必要がない。従って、音出用の貫通孔によって車両の外観が損なわれるといったことがない。
【0034】
さらに、掘下穴32に別途独立した振動板を収容する必要がない。このため、背景部38(振動板)の裏側の空間(掘下穴32の内部空間)を大きくでき、出力する音声の音圧を高くできる。
【0035】
また、デザインプレート16の背景部38の肉厚を背景部38以外の部分の肉厚に比べて薄くしたので、デザインプレート16の背景部38が振動し易くなり、音声を効果的に発生させることができる。しかも、背景部38が周縁を支持されることで振動し易くなると共に、背景部38の振動が支持される位置を明確化できる。
【0036】
また、デザインプレート16は、背景部38以外の部分においてエンブレムプレート12とベースプレート14とによって挟持されるので、デザインプレート16において背景部38のみが振動する。このため、デザインプレート16の背景部38以外の部分が振動してエンブレムプレート12やベースプレート14に干渉することによる干渉音の発生を抑制することができる。さらに、背景部38に付着した水滴や埃がベースプレート14側に入り込むことがなく、ベースプレート14側に対する防水性や防塵性を確保することができる。
【0037】
さらに、デザインプレート16の背景部38以外の部分とエンブレムプレート12との間を接着材や弾性材等の閉塞材によって閉塞する構成とするのが好ましい。それにより、背景部38の裏側(掘下穴32内)の音声が背景部38の表側に漏洩して背景部38の表側の音声と干渉することを抑制でき、車両外部に出力する音声の音圧を高くできる。
【0038】
また、圧電素子18は、デザインプレート16に対してベースプレート14の側に配置されるので、圧電素子18が車外から視認されることがなく、その点でも車両の外観が損なわれるといったことがない。
【0039】
また、本実施形態の車両用エンブレム10にあっては、露出面積が比較的広い2箇所の背景部38の背面に圧電素子18をそれぞれ設け、仮に片方が故障した場合でも他方で補えるように構成している。
【0040】
本実施形態の車両用エンブレム10は、ハイブリッド自動車や電気自動車の静音性に関する対策として、例えば時速20km以下で車を想起させる音を発生させ、車両の接近を報知するようにした車両接近報知装置として採用することができる。
【0041】
また、車両接近報知装置をエンジンルームに搭載する場合と対比すると、本実施形態の車両用エンブレム10は車両の外部に設けられるものであるため、エンジンルームに搭載スペースを確保する必要がないと共に、エンジンルームに搭載用の取付部(取付穴やブラケット)を設ける必要もない。また、車外に対しては効果的に車両の接近を報知することができると共に、車室に対しては音声が透過し難く、車室内の静穏性を確保することができる。しかも、本実施形態の車両用エンブレム10は従来と同様の方法により車両に搭載できるため、車両への搭載を容易にできると共に、故障時等の取替えを容易にできる。
【0042】
尚、上記では、振動手段として圧電素子18を採用したが、圧電素子18に代えて、図6に示すように、掘下穴32の底面に永久磁石40を設けると共に、背景部38の裏面にコイル42を貼り付けるようにしてもよい。即ち、コイル42の通電をオン・オフすることによる電磁作用で背景部38を振動させるようにしてもよい。
【0043】
また、上記では、デザインプレート16をエンブレムプレート12の外縁部20および記号部22とベースプレート14とによって挟持するように構成したが、デザインプレート16をエンブレムプレート12の外縁部20のみとベースプレート14とによって挟持するように構成し、圧電素子18をデザインプレート16の中央裏面に1個貼り付けるようにしてもよい。
【0044】
また、上記では、エンブレムプレート12の記号部22を略「T」字状としたが、エンブレムプレート12に適度な大きさの開口部24が形成されるような記号形状であればその他の形状であってもよい。
【0045】
また、上記では、エンブレムプレート12の爪部26をベースプレート14の係合穴28に嵌め入れて固定したが、エンブレムプレート12とベースプレート14の固定は爪嵌合に限らずネジ締結や接着等、他の方法でもよい。
【0046】
また、上記では、デザインプレート16の背景部38を肉薄部としたが、肉薄部は必須ではなく、無くてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10 車両用エンブレム
12 エンブレムプレート(本体部材の一例)
14 ベースプレート(挟持部材の一例)
16 デザインプレート(背景部材の一例)
18 圧電素子(振動手段の一例)
20 外縁部
22 記号部
24 開口部
26 爪部
27 対向面
28 係合穴
30 取付片
32 掘下穴
34 挿通孔
36 切欠
38 背景部
40 永久磁石
42 コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外面に設けられ、標章を表示する標章体と、
前記標章体を振動させて音声を発生させる振動手段と、
を備える車両用エンブレム。
【請求項2】
前記標章体は、
前記標章の本体部を構成し、開口部が形成される本体部材と、
前記本体部材の裏側に設けられ、前記開口部から露出して前記標章の背景部を構成すると共に、前記振動手段によって振動される背景部材と、
を有する請求項1に記載の車両用エンブレム。
【請求項3】
前記背景部材に他の部分に比べて肉厚が薄くされる肉薄部を設ける請求項2に記載の車両用エンブレム。
【請求項4】
前記背景部材を前記本体部材との間で挟持する挟持部材を備える請求項2または請求項3に記載の車両用エンブレム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−144079(P2012−144079A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2195(P2011−2195)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】