説明

車両用サイドドア構造

【課題】側突時にインパクトビームが変形しても側突荷重を受け持つことができる車両用サイドドア構造を得る。
【解決手段】車両用サイドドアの内部には、車両前後方向に沿ってインパクトビーム22が配設されており、インパクトビーム22の長手方向中間部には、車両上下にそれぞれ延出された突起部24が設けられている。インパクトビーム22の車両幅方向内側には、インパクトビーム22と所定の間隔をおいて昇降モジュール26が配設されている。昇降モジュール26の側壁面26Dには、車両側面視にて突起部24の車両前後方向両側に前後一対の爪部28が設けられている。側突時にインパクトビーム22が車両幅方向内側に押されると、2つの突起部24が前後一対の爪部28とそれぞれ係合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用サイドドア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車両のサイドドアの内部に車両前後方向に沿って伸びるインパクトビームを内蔵した構造が開示されている。インパクトビームの車両前後方向の前端部はブラケットによりドアインナパネルに固定されている。インパクトビームの車両前後方向の後端部はエクステンションによりドアインナパネルに固定されており、インパクトビームよりも車両幅方向外側に配置された厚板材がエクステンションとインパクトビームとの間に架け渡されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−190664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記先行技術による場合、車両の側面衝突時(以下、単に「側突時」という。)に側突荷重を受け持つのは主にインパクトビームであり、インパクトビームが座屈し終わると、側突荷重を受け持つことができない可能性がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、インパクトビームが変形しても側突荷重を受け持つことができる車両用サイドドア構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係る車両用サイドドア構造は、車両用サイドドア本体の内部に車両前後方向に沿って配設されたインパクトビームと、車両用サイドドア本体の内部における前記インパクトビームよりも車両幅方向内側に配設され、ウインドウガラスの昇降を行うための昇降モジュールと、前記インパクトビームに設けられ、側面衝突時の前記インパクトビームの変形によって前記昇降モジュールに設けられた被係合部と係合状態となる係合部と、を有するものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1記載の車両用サイドドア構造において、車両側面視にて前記係合部と前記被係合部との間に前記インパクトビームの長手方向に沿って間隔が設けられているものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両用サイドドア構造において、前記被係合部及び前記係合部の一方が発泡材で形成されているものである。
【0009】
請求項1記載の本発明によれば、車両用サイドドア本体の内部におけるインパクトビームよりも車両幅方向内側に昇降モジュールが配設されており、車両の側突時に車両用サイドドア本体の内部に配設されたインパクトビームが車両幅方向内側に押されると、インパクトビームの変形によってインパクトビームに設けられた係合部が昇降モジュールに設けられた被係合部と係合状態となる。これによって、インパクトビームが変形した後においても、インパクトビームの係合部が昇降モジュールの被係合部と係合することによって、側突荷重を受け持つことが可能となる。
【0010】
請求項2記載の本発明によれば、車両側面視にて係合部と被係合部との間にインパクトビームの長手方向に沿って間隔が設けられており、この間隔を側突時にインパクトビームが移動する方向に沿って設定することができる。これによって、側突時にインパクトビームが車両幅方向内側に変形すると共に車両前後方向に移動し、係合部と被係合部とが係合状態となる。その際、係合部と被係合部との間の上記間隔を適切に調整することで、側突時に荷重を発生させたいタイミングで係合部と被係合部とを係合させることができる。
【0011】
請求項3記載の本発明によれば、被係合部及び係合部の一方が発泡材で形成されており、側突時に係合部と被係合部が係合することにより、側突荷重を受け持つことができると共に、インパクトビームの車両前後方向への移動に伴って発泡材が潰れることで、側突時のエネルギーを吸収することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係る車両用サイドドア構造は、側突時にインパクトビームが変形しても側突荷重を受け持つことができるという優れた効果を有する。
【0013】
請求項2記載の本発明に係る車両用サイドドア構造は、側突時に荷重を発生させたいタイミングでインパクトビームの係合部と昇降モジュールの被係合部とを係合させることができるという優れた効果を有する。
【0014】
請求項3記載の本発明に係る車両用サイドドア構造は、側突時にインパクトビームが変形しても側突荷重を受け持つことができると共に、側突時のエネルギーを吸収することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態に係る車両用サイドドア構造の全体構成を示す側面図である。
【図2】図1中の2−2線に沿った車両用サイドドア構造を示す断面図である。
【図3】図1に示す車両用サイドドア構造に用いられるインパクトビームと昇降モジュールとの対向部の側突時の状態を示す斜視図である。
【図4A】第2実施形態に係る車両用サイドドア構造に用いられるインパクトビームと昇降モジュールとの対向部を示す側面図である。
【図4B】第2実施形態に係る車両用サイドドア構造に用いられるインパクトビームと昇降モジュールとの対向部の側突時の状態を示す斜視図である。
【図5】第3実施形態に係る車両用サイドドア構造の全体構成を示す断面図である。
【図6】図5に示す車両用サイドドア構造に用いられるインパクトビームと昇降モジュールとの対向部の側突時の状態を示す斜視図である。
【図7A】第4実施形態に係る車両用サイドドア構造に用いられるインパクトビームと昇降モジュールとの対向部を示す側面図である。
【図7B】第4実施形態に係る車両用サイドドア構造に用いられるインパクトビームと昇降モジュールとの対向部の側突時の状態を示す斜視図である。
【図8】第5実施形態に係る車両用サイドドア構造に用いられるインパクトビームと昇降モジュールとの対向部の側突時の状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1〜図3を用いて、本発明に係る車両用サイドドア構造の第1実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印INは車両幅方向内側を示している。
【0017】
図1には、本実施形態に係る車両用サイドドアの全体構成が車両幅方向内側から見た側面図にて示されており、図2には、この車両用サイドドアの車両下部側の構成が断面図にて示されている。これらの図に示されるように、車両用サイドドア10は、車両の側部に配設されるフロントサイドドアであり、サイドドア外側(車両幅方向外側)に配置されるドアアウタパネル12と、サイドドア内側(車両幅方向内側)に配置されるドアインナパネル14と、を備えている。ドアアウタパネル12の上縁部12Aを除く端縁部12Bは、ドアインナパネル14の上縁部14Aを除く端縁部14Bとヘミング加工によって一体化されることで、ドアアウタパネル12とドアインナパネル14とが閉断面構造に形成されている。
【0018】
また、車両用サイドドア10は、ドアアウタパネル12の上縁部12Aとドアインナパネル14の上縁部14Aとの対向部の隙間から車両用サイドドア10の内部(ドアアウタパネル12とドアインナパネル14の間)に挿入されて車両上下方向に昇降可能に配置されたウインドウガラス16を備えている。車両用サイドドア10の車両上部側には、ウインドウガラス16を昇降時に案内するためのドアフレーム18が車両側面視にて門形に取付けられている。
【0019】
ドアインナパネル14は、略矩形状の板材で形成されており、上縁部14A及び端縁部14Bから車両幅方向内側に張り出して車両上下方向に配置された縦壁部14Cを備えている。ドアインナパネル14の縦壁部14Cの中央部には、部品組付用の大きな開口部20が形成されている。
【0020】
ドアアウタパネル12とドアインナパネル14との間には、車両前後方向に沿ってインパクトビーム22が配設されており、インパクトビーム22の長手方向の前端部22Aと後端部22Bは、開口部20の車両前後で図示しないブラケットによりドアインナパネル14に固定されている。
【0021】
図2及び図3に示されるように、インパクトビーム22は、長板状の部材で形成されており、車両上下方向の中間部には、車両幅方向外側に突出する断面コ字状の突出部22Cが長手方向に沿って2本設けられている。インパクトビーム22の長手方向中間部には、車両上下にそれぞれ延出された係合部としての突起部24が設けられている。突起部24は、インパクトビーム22の本体部(長尺部)から連続して延びた板状片で形成されている。
【0022】
ドアアウタパネル12とドアインナパネル14との間には、インパクトビーム22よりも車両幅方向内側にウインドウガラス16を昇降させるための昇降機能が集約された昇降モジュール26が配設されている。なお、図1〜図3においては、昇降モジュール26のうちの支持部材(プレート)のみを図示しており、ウインドウレギュレータ等の昇降機能に関する部品の図示は省略している。昇降モジュール26は、インパクトビーム22の長手方向中間部と対向する位置に車両上下方向に沿って配置されている。昇降モジュール26を構成する支持部材は、平板状で車両側面視にて略H状に形成されており、昇降モジュール26の車両上部側と車両下部側に凹状の切り欠き部26Aが設けられている。昇降モジュール26は、切り欠き部26Aの車両前後方向両側の上端部26Bが開口部20の上方側で締結具等(図示省略)によりドアインナパネル14に固定されると共に、切り欠き部26Aの車両前後方向両側の下端部26Cが開口部20の下方側で締結具等(図示省略)によりドアインナパネル14に固定されている。
【0023】
昇降モジュール26の車両幅方向外側の側壁面26Dには、車両側面視にてインパクトビーム22の2つの突起部24の車両前後方向両側に、車両幅方向外側に突出する被係合部としての前後一対の爪部28が設けられている。図3に示されるように、爪部28には、車両側面視にてインパクトビーム22が配置された側に向かって下り勾配となる傾斜面28Aが形成されている。
【0024】
図3には、車両の側突時にインパクトビーム22が車両幅方向内側(昇降モジュール26側)に移動した状態が示されている。すなわち、図2に示されるように、通常の状態では、インパクトビーム22は昇降モジュール26よりも車両幅方向外側の離れた位置に配置されており(図3中の想像線を参照)、インパクトビーム22の上下の突起部24と昇降モジュール26の前後一対の爪部28とは係合していない。図3に示されるように、車両の側突時にインパクトビーム22が押されて車両幅方向内側に移動すると、インパクトビーム22の車両上下の突起部24が昇降モジュール26の前後一対の爪部28に挟まれて係合されるようになっている。インパクトビーム22の車両上下の突起部24が昇降モジュール26の前後一対の爪部28にそれぞれ係合されることで、係合状態ではインパクトビーム22の車両上下方向の動きが規制される(拘束される)ようになっている。また、インパクトビーム22が車両幅方向内側に移動するときに、爪部28の傾斜面28Aに当たることで、上下の突起部24が昇降モジュール26の前後一対の爪部28に係合しやすくなる構成となっている。
【0025】
インパクトビーム22と昇降モジュール26との車両幅方向の距離を適切に調整することで、車両の側突において荷重を出したいタイミングでインパクトビーム40の突起部42と前後一対の爪部28とを係合させることができる。
【0026】
本実施形態では、インパクトビーム22は鋼板等の金属で形成され、昇降モジュール26を構成する支持部材は繊維強化樹脂等で形成されているが、これに限定するものではない。
【0027】
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0028】
車両の側突時に車両用サイドドア10の内部に配設されたインパクトビーム22が車両幅方向内側に押されると、図3に示されるように、インパクトビーム22の変形等によってインパクトビーム22の上下の突起部24が昇降モジュール26の前後一対の爪部28とそれぞれ係合される。これによって、インパクトビーム22の上下の突起部24が昇降モジュール26の前後一対の爪部28と係合した後においても、側突荷重を受け持つことができる。
【0029】
一般的な車両用サイドドアでは、インパクトビームが座屈し終わると、インパクトビーム本体では側突荷重を受け持つことができない。また、ドアインナパネル14に大きな開口部20を設けると、ドアインナパネル14の面積が減った分だけ軽量化することができ、組立て工程での作業性が良好となるが、側突時にドアインナパネル14が側突荷重を負担することができないため、側突性能が低下する可能性がある。これに対して、本実施形態の車両用サイドドア10では、インパクトビーム22が座屈しても、インパクトビーム22の上下の突起部24が昇降モジュール26の前後一対の爪部28と係合状態となることで、継続的に側突荷重を受け持つことができる。すなわち、インパクトビーム22の上下の突起部24が昇降モジュール26の前後一対の爪部28と係合状態となることで、側突荷重がインパクトビーム22から昇降モジュール26に移り、さらにドアインナパネル14を介してボディー本体に伝達される。このため、ドアインナパネル14に大きな開口部20を設けた車両用サイドドア10でも側突性能を向上することができる。
【0030】
また、インパクトビーム22の車両上下の突起部24が昇降モジュール26の前後一対の爪部28にそれぞれ係合されることで、係合状態ではインパクトビーム22の車両上下方向の動きを規制する(拘束する)ことができる。また、インパクトビーム22が車両幅方向内側に押されたときに、爪部28の傾斜面28Aに当たることで、車両上下の突起部24が昇降モジュール26の前後一対の爪部28に係合しやすい。
【0031】
次に、図4A、図4Bを用いて、本発明に係る車両用サイドドアの第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0032】
図4Aに示されるように、インパクトビーム40の長手方向中間部には、車両上下にそれぞれ延出された板状片からなる突起部42(係合部)が設けられており、車両側面視にて突起部42と昇降モジュール26の車両前方側の爪部28(被係合部)との間に間隙44が設けられている。間隙44は、インパクトビーム40の長手方向に沿って設けられており、車両の側突時にインパクトビーム40がスライドする方向に設けられている。インパクトビーム40は、長手方向の前端部22Aと後端部22Bが固定されており(図1参照)、インパクトビーム40の長手方向の中間部が車両幅方向内側に変形したときに、インパクトビーム40が車両前後方向に沿ってスライドしやすい。本実施形態では、車両の側突時にインパクトビーム40が車両前方側(矢印A方向)にスライドするため、車両側面視にて突起部42と車両前方側の爪部28との間に間隙44が設けられている。
【0033】
この間隙44の寸法は、車両の側突において荷重を出したいタイミングでインパクトビーム40の突起部42と車両前方側の爪部28とが係合するように調整されている。
【0034】
図4Aに示される状態では、インパクトビーム40は昇降モジュール26よりも車両幅方向外側の離れた位置に配置されているが、車両の側突時には、図4Bに示されるように、インパクトビーム40が車両幅方向内側に押されると共に車両前方側(矢印A方向)にスライドし、突起部42と昇降モジュール26の車両前方側の爪部28とが係合するようになっている。
【0035】
本実施形態の車両用サイドドアでは、図4Aに示されるように、車両側面視にてインパクトビーム40の突起部42と昇降モジュール26の車両前方側の爪部28との間に間隙44が設けられており、図4Bに示されるように、車両の側突時にインパクトビーム40が車両幅方向内側に押されると共に車両前方側にスライドすると、突起部42と昇降モジュール26の車両前方側の爪部28とが係合する。これによって、側突において狙い通りのタイミングで突起部42と昇降モジュール26の車両前方側の爪部28とが係合し、側突荷重を受け持つことができる。
【0036】
次に、図5及び図6を用いて、本発明に係る車両用サイドドアの第3実施形態について説明する。なお、前述した第1及び第2実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0037】
図5及び図6に示されるように、車両用サイドドア50では、インパクトビーム52の長手方向中間部に車両上下にそれぞれ板状片からなる突起部52Aが延出されており、突起部52Aの車両前後方向両側に係合部としての円形状の孔部54が設けられている。昇降モジュール56の車両幅方向外側の側壁面26Dには、車両側面視にてインパクトビーム52の孔部54とそれぞれ対向する位置に、側突時に孔部54と係合可能な被係合部としてのピン58が設けられている。
【0038】
車両の側突時に車両用サイドドア50の内部に配設されたインパクトビーム52が車両幅方向内側に押されると、図6に示されるように、インパクトビーム52の変形等によってインパクトビーム52の突起部52Aに設けられた車両前後方向両側の孔部54が昇降モジュール56のピン58とそれぞれ係合される。これによって、インパクトビーム52が変形した後においても、インパクトビーム52の孔部54が昇降モジュール56のピン58とそれぞれ係合状態となることで、継続的に側突荷重を受け持つことができる。
【0039】
次に、図7A、図7Bを用いて、本発明に係る車両用サイドドアの第4実施形態について説明する。なお、前述した第1〜第3実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0040】
図7Aに示されるように、インパクトビーム62の突起部52Aの車両前後方向両側には、車両前後方向に長く形成された矩形状の孔部64(係合部)が設けられている。車両側面視にて孔部64の車両後方側の壁面と昇降モジュール56のピン58との間には、車両の側突時にインパクトビーム62がスライドする方向(本実施形態では車両前方側である矢印A方向)にそれぞれ間隙66が設けられている。
【0041】
この間隙66の車両前後方向の寸法は、車両の側突において荷重を出したいタイミングでインパクトビーム62の孔部64の車両後方側の壁面と昇降モジュール56のピン58とが係合するように調整されている。
【0042】
図7Aに示される状態では、インパクトビーム62は昇降モジュール56よりも車両幅方向外側の離れた位置に配置されているが、車両の側突時には、図7Bに示されるように、インパクトビーム62が車両幅方向内側に押されると共に車両前方側(矢印A方向)にスライドし、孔部64の車両後方側の壁面と昇降モジュール56のピン58とが係合するようになっている。
【0043】
本実施形態の車両用サイドドアでは、図7Aに示されるように、車両側面視にてインパクトビーム62の孔部64の車両後方側の壁面と昇降モジュール56のピン58との間に間隙66が設けられており、図7Bに示されるように、車両の側突時にインパクトビーム62が車両幅方向内側に押されると共に車両前方側にスライドすると、孔部64の車両後方側の壁面と昇降モジュール56のピン58とが係合する。これによって、側突において狙い通りのタイミングでインパクトビーム62の孔部64の車両後方側の壁面と昇降モジュール56のピン58とが係合し、側突荷重を受け持つことができる。
【0044】
次に、図8を用いて、本発明に係る車両用サイドドアの第5実施形態について説明する。なお、前述した第1〜第4実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0045】
図8に示されるように、昇降モジュール76の車両幅方向外側の側壁面26Dには、車両上下方向の離れた位置に2つの直方体状の突起78(被係合部)が設けられている。この突起78は、発泡樹脂等の発泡材で形成されている。
【0046】
インパクトビーム72には、車両の側突時に昇降モジュール76の突起78と係合可能な段差部74(係合部)が形成されている。段差部74は、インパクトビーム72の本体部から車両上下方向に延びた外側縦壁部74Aと、外側縦壁部74Aの車両後端部から車両幅方向内側に屈曲された後側縦壁部74Bと、後側縦壁部74Bの下端部から車両後方側に屈曲されると共にインパクトビーム72の端縁から車両幅方向内側に屈曲された横壁部74Cと、後側縦壁部74Bの内側端部から車両後方側に屈曲されると共に後側縦壁部74Bの内側端部から車両上方側に屈曲された内側縦壁部74Dと、で構成されている。
【0047】
車両の側突時にインパクトビーム72が車両幅方向内側に押されると、インパクトビーム72の車両上下に設けられた段差部74の外側縦壁部74Aと後側縦壁部74Bが昇降モジュール76の突起78とそれぞれ係合される。その際、インパクトビーム72が車両前方側(矢印A方向)にスライドすることで、発泡材からなる突起78が潰れ、エネルギーが吸収される。このため、段差部74の外側縦壁部74Aと後側縦壁部74Bが昇降モジュール76の突起78と係合することで、側突荷重を受け持つことができると共に、インパクトビーム72のスライドに伴って側突時のエネルギーも吸収することができる。
【0048】
なお、第3及び第4実施形態では、インパクトビームに孔部54、64を設け、昇降モジュールにピン58を設けたが、これに限定されず、逆の構成(インパクトビームにピンなどの突起を設け、昇降モジュールに孔部を設ける構成)により両者を係合させるようにしてもよい。また、孔部に変えて突起と係合可能な凹部を設けてもよい。
【0049】
なお、第2及び第4実施形態では、車両側面視にて側突時にインパクトビームが移動する車両前方側に係合部(突起部、孔部)と被係合部(爪、ピン)との間隙44、66を設けたが、側突時にインパクトビームが車両後方側に移動する場合には、車両後方側に係合部(突起部、孔部)と被係合部(爪、ピン)との間隙を設けることが好ましい。
【0050】
また、第5実施形態では、インパクトビームに段差部74を設け、昇降モジュールに突起78を設けたが、これに限定されず、逆の構成(インパクトビームに突起を設け、昇降モジュールに段差部を設ける構成)により両者を係合させると共に突起を潰れ変形させるようにしてもよい。なお、第5実施形態では、突起78を側突時に潰れ変形可能な発泡材で形成したが、これに限定されず、突起を側突時に潰れ変形しない材料で形成し、突起と段差部を係合させる構成でもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 車両用サイドドア
16 ウインドウガラス
22 インパクトビーム
24 突起部(係合部)
26 昇降モジュール
28 爪部(被係合部)
40 インパクトビーム
42 突起部(係合部)
44 間隙(間隔)
50 車両用サイドドア
52 インパクトビーム
54 孔部(係合部)
56 昇降モジュール
58 ピン(被係合部)
62 インパクトビーム
64 孔部(係合部)
66 間隙(間隔)
72 インパクトビーム
74 段差部(係合部)
76 昇降モジュール
78 突起(被係合部、発泡材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用サイドドア本体の内部に車両前後方向に沿って配設されたインパクトビームと、
車両用サイドドア本体の内部における前記インパクトビームよりも車両幅方向内側に配設され、ウインドウガラスの昇降を行うための昇降モジュールと、
前記インパクトビームに設けられ、側面衝突時の前記インパクトビームの変形によって前記昇降モジュールに設けられた被係合部と係合状態となる係合部と、
を有する車両用サイドドア構造。
【請求項2】
車両側面視にて前記係合部と前記被係合部との間に前記インパクトビームの長手方向に沿って間隔が設けられている請求項1に記載の車両用サイドドア構造。
【請求項3】
前記被係合部及び前記係合部の一方が発泡材で形成されている請求項1又は請求項2に記載の車両用サイドドア構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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