説明

車両用シートのロック解除操作機構

【課題】操作部材の解除操作を行うことによってリクライニング機構及びロック機構の両者を解除状態に切換えることのできるロック解除操作機構において、操作部材に必要な操作力を軽くする。
【解決手段】シートバックの傾き角度を調整するためのリクライニング機構40と、シートを車両フロア上に係合ロックさせるためのロック機構50とを、解除ストラップUSの解除操作に伴って解除状態に切換えるロック解除操作機構である。解除ストラップUSの解除操作に伴って揺動する操作アーム10と、これに押動されて揺動しリクライニング機構40を解除状態に切換える第1従動アーム20と、操作アーム10に押動されて揺動しロック機構50を解除状態に切換える第2従動アーム30と、を有し、第2従動アーム30は、操作アーム10の揺動角度が第1従動アーム20への押動による当接状態から外れた後に操作アーム10と当接して押動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートのロック解除操作機構に関する。詳しくは、車両のシートには、背もたれ部となるシートバックの傾き角度を調整するためのリクライニング機構と、車両フロア上に設置された係合部材に対してシートを係合ロックさせるためのロック機構とが備えられ、この両機構を一つの操作部材の一連の解除操作に伴う動作によって解除状態に切換えることのできる車両用シートのロック解除操作機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両のリヤシートには、不使用時におけるシートを折畳姿勢状態として車両の前後方向や車幅方向に跳ね上げ回動させたり落とし込んだりして収納状態とすることのできる収納機構が備え付けられているものがある。この収納機構としては、例えば特許文献1に開示された技術が知られている。この開示では、シートの左右両側に、シートバックの傾き角度を調整するためのリクライニング機構がそれぞれ設けられている。更に、シートクッションの下部には、シートを車両フロア上に設置されたストライカに対して係合ロックさせるためのロック機構が設けられている。そして、リクライニング機構やロック機構には、これらを個別にロック及び解除動作させるための操作ケーブルがそれぞれ連結されている。また、これら両ケーブルは、一つの解除レバー(操作部材)に連結されている。これにより、一つの解除レバーの操作によって、リクライニング機構及びロック機構の両者を解除状態に切換えることができる。また、同開示では、解除レバーの操作を行うことにより、始めに、リクライニング機構に連結された操作ケーブルのみが牽引され、その後に、ロック機構に連結された操作ケーブルも合わせて牽引されるように設定されている。したがって、解除レバーの操作を行うと、先ず、リクライニング機構のみが解除状態に切換えられ、シートバックがシートクッション側に折り畳まれる。そして、解除レバーの操作を更に進行させることにより、次いで、ロック機構が解除状態に切換えられる。これにより、上記折畳姿勢状態とされたシートが、所定の方向に跳ね上げ回動されたり落とし込まれたりして収納状態となる。また、例えば解除レバーの操作を途中位置までに止めることにより、リクライニング機構のみを解除状態に切換えて、シートを車両フロア上で折畳姿勢としただけの途中状態として留めておくこともできる。
【0003】
【特許文献1】特許第2951878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術では、一つの解除レバー(操作部材)の操作によって、リクライニング機構及びロック機構の両者を解除状態に切換えることができるが、同時に両者の操作ケーブルを牽引して操作が行われるため、かかる操作荷重が大きくなるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記した問題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、操作部材の解除操作を行うことによってリクライニング機構及びロック機構の両者を解除状態に切換えることのできるロック解除操作機構において、操作部材に必要な操作力を軽くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の車両用シートのロック解除操作機構は次の手段をとる。
先ず、第1の発明は、車両のシートには、背もたれ部となるシートバックの傾き角度を調整するためのリクライニング機構と、車両フロア上に設置された係合部材に対してシートを係合ロックさせるためのロック機構とが備えられ、両機構を一つの操作部材の一連の解除操作に伴う動作によって解除状態に切換えることのできる車両用シートのロック解除操作機構であって、操作部材の解除操作に伴って揺動する操作アームと、揺動する操作アームに押動されて揺動することでリクライニング機構を解除状態に切換える第1従動アームと、第1従動アームとは別に揺動する操作アームに押動されて揺動することでロック機構を解除状態に切換える第2従動アームと、を有し、第2従動アームは、操作部材の解除操作に伴う操作アームの揺動回動方向への揺動角度が第1従動アームへの押動による当接状態から外れる角度位置に到達することにより、操作アームと当接して押動される配置とされているものである。
この第1の発明によれば、操作部材の解除操作を行うと、先ず、操作アームが第1従動アームと当接してこれを押動する。これにより、第1従動アームが揺動してリクライニング機構を解除状態に切換える。そして、操作アームを更に揺動させると、操作アームは、第1従動アームへの押動による当接状態から外され、次いで、第2従動アームと当接してこれを押動する。これにより、第2従動アームが揺動してロック機構を解除状態に切換える。すなわち、操作部材の解除操作を行うと、第1従動アームと第2従動アームとが順次別個に押動され、リクライニング機構とロック機構とが解除状態に切換えられる。なお、操作部材の解除操作をリクライニング機構を解除状態に切換える操作位置までに止めることにより、例えばシートを車両フロア上で折畳姿勢とした状態として留めることができる。
【0007】
次に、第2の発明は、上述した第1の発明において、操作アームは、操作アームを操作部材の解除操作を行う前の初期位置状態に向けて附勢する附勢手段により回動附勢されて初期位置状態で回動停止状態とされており、第1従動アームは、揺動する操作アームとの当接が外れた状態では、これらを操作アームによって押動される前の初期位置状態に向けて附勢する附勢手段により回動附勢されて初期位置状態で回動停止状態とされており、操作アームが回動附勢される附勢力は、第1従動アームが回動附勢される附勢力よりも大とされているものである。
この第2の発明によれば、第1従動アームは、操作アームの押動による当接状態から外されると、操作アームによって押動される前の初期位置状態に戻される。これにより、操作アームと第1従動アームとの押動位置関係が逆転する。しかし、この逆転した押動位置関係は、操作部材の解除操作を止めることにより、操作アームが第1従動アームの回動附勢される附勢力に打ち勝って逆方向から押動しながら初期位置状態に戻されるため、逆転する前の押動位置関係に戻される。
【0008】
次に、第3の発明は、上述した第1又は第2の発明において、第1従動アームのリクライニング機構を解除状態に切換える揺動角度位置と、操作アームの押動による当接状態が外れる揺動角度位置と、の間にリクライニング機構を解除状態に保つ領域が設定されているものである。
この第3の発明によれば、リクライニング機構を解除状態に保つ領域の設定された揺動角度領域においては、リクライニング機構が解除状態に切換えられた状態として、揺動角度が進行してもこの状態が維持される。
【発明の効果】
【0009】
本発明は上述した手段をとることにより、次の効果を得ることができる。
先ず、第1の発明によれば、操作部材の解除操作を行うことによってリクライニング機構及びロック機構の両者を解除状態に切換えることのできるロック解除操作機構において、操作部材に必要な操作力を軽くすることができる。更に、操作部材の解除操作を、シートを車両フロア上で折畳姿勢としておくためにも使用することができ、機能を使い分けることができる。
更に、第2の発明によれば、操作部材の解除操作を止めることにより、操作アームと第1従動アームとの逆転した押動位置関係を、逆転する前の初期位置状態に好適に戻すことができる。
更に、第3の発明によれば、例えばリクライニング機構が解除状態に切換えられる前に操作アームと第1従動アームとの当接状態が外れるといった誤作動を防止することができる。更に、操作部材の解除操作によって、リクライニング機構のみを解除状態に切換えた状態を作り出し易くなると共に、このリクライニング機構がロック状態に戻されないように保持しておく操作も行い易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための最良の形態の実施例について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0011】
始めに、実施例1としての車両用シートのロック解除操作機構(以下、ロック解除操作機構)について、図1〜図13を用いて説明する。図1は車両用シートのロック解除操作機構の概略構成を表した模式図、図2は図1のA部分を拡大して表した模式図、図3は図2の状態から第1従動アーム20が操作アーム10に押動されて揺動回動した状態を表した模式図、図4は図3の状態から操作アーム10の押動による第1従動アーム20との当接状態が外された状態を表した模式図、図5は図4の状態から操作アーム10が第2従動アーム30に当接した状態を表した模式図、図6は図5の状態から第2従動アーム30が操作アーム10に押動されて揺動回動した状態を表した模式図である。また、図7はリクライニング機構40の概略構成を表した側面図、図8は図3に対応するリクライニング機構40の作動状態を表した側面図、図9は図4に対応するリクライニング機構40の作動状態を表した側面図である。また、図10はロック機構50の概略構成を表した側面図、図11は図6に対応するロック機構50の作動状態を表した側面図、図12はロック機構50のロック可能状態を表した側面図である。また、図13はシート1が折畳姿勢とされた状態を表した側面図である。なお、図13は、紙面内表側が車両インナー側として表されている。
【0012】
本実施例のシート1は、車両のリヤシートとして適用されている。このシート1は、図13に良く示されるように、背もたれ部となるシートバック2を着座部となるシートクッション3に対して傾動可能に連結支持するリクライニング機構40と、シート1を車両フロアF上に設置されたストライカTに対して係合ロックさせるためのロック機構50と、を備えている。ここで、ストライカTが本発明の係合部材に相当する。
前者のリクライニング機構40は、シート1の左右両側位置にそれぞれ配設されており、常時はシートバック2を傾動不能とするロック状態とされて保持されている。そして、リクライニング機構40は、解除状態に切換えられることにより、シートバック2を傾動可能な状態となる。このリクライニング機構40の解除状態では、シートバック2をシートクッション3側に倒し込んで、シート1を折畳姿勢状態(実線状態)とすることができる。
後者のロック機構50は、シートクッション3の下部における車両インナー側の前後位置にそれぞれ配設されており、常時はストライカTに係合ロックした状態とされて保持されている。また、シートクッション3の車両アウター側の位置には、シート1を車両フロアFに対して起倒回動可能に支持するヒンジ機構(図示省略)が配設されている。これにより、シート1は、ロック機構50が解除状態に切換えられた状態では、車両アウター側に向けて起こし上げることのできる構成とされている。この、シート1が車両アウター側に起こし上げられる際には、上記シートバック2がシートクッション3側に倒し込まれた折畳姿勢の状態で行われる。これにより、折畳姿勢状態のシート1を車両アウター側に起こし上げて退けた収納状態とすることができ、このシート1の退避移動によって例えば荷室空間の拡張を図ることができる。
【0013】
ところで、上記リクライニング機構40やロック機構50は、シートバック2の背裏側から垂れ出して設けられた解除ストラップUSの引張操作に伴って、それぞれロック状態から解除状態に切換えられる。具体的には、解除ストラップUSの引張操作(解除操作)を行うと、先ず、リクライニング機構40のみが解除状態に切換えられる。そして、解除ストラップUSを更に引張り込む操作を行うと、次にロック機構50が解除状態に切換えられる。ここで、解除ストラップUSが本発明の操作部材に相当する。
本実施例のロック解除操作機構では、上記両機構を解除状態に切換えることのできる解除ストラップUSの引張操作荷重を軽くすることのできる構成となっている。以下、各構成について詳しく説明する。
【0014】
先ず、リクライニング機構40の構成を説明する。すなわち、リクライニング機構40は、図7及び図8に良く示されるように、シートバック2を回動可能に軸支する回動軸41と、この回動軸41と一体に連結された回動操作部材42と、を有する。この構成により、リクライニング機構40は、回動操作部材42による回動軸41の回動操作に伴って、ロック状態と解除状態とに切換えられるようになっている。具体的には、リクライニング機構40は、回動操作部材42が図7に示される回動位置にある状態では、ロック状態とされて保持されている。そして、リクライニング機構40は、回動操作部材42が図7の回動位置から図8の仮想線で示される解除位置まで回動操作されることにより、解除状態に切換えられる。なお、回動操作部材42は、解除ストラップUSの引張操作によって、同図の実線で示される上限回動位置まで回動操作されるようになっている。この、回動操作部材42の回動位置が解除位置(仮想線位置)と上限回動位置(実線位置)との間にある状態では、リクライニング機構40は解除状態に切換えられた状態として維持される。ここで、回動操作部材42は、その回動端部の連結部位42aに連結されたケーブルKcにより後述するロック解除操作機構と連結されており、解除ストラップUSの引張操作に連動してリクライニング機構40が解除される方向(図8で示す反時計回り方向)に回動操作される。
また、図13に良く示されるように、リクライニング機構40には、シートバック2をシートクッション3側に倒し込む方向に回動附勢する図示しないバネ部材が設けられている。したがって、リクライニング機構40を解除状態に切換えることにより、上記の回動附勢作用によって、シートバック2をシートクッション3側に倒し込む方向に附勢回動させることができる。ここで、図9に良く示されるように、リクライニング機構40には、上記ケーブルKcによって回動操作部材42を解除方向(反時計回り方向)に回動させる解除操作を止めても、回動操作部材42がロック方向(時計回り方向)に戻されることなくリクライニング機構40の解除状態が維持されるフリーゾーンが設定されている。このフリーゾーンは、乗員がシート1に着座する際には使用することのない回動領域、例えばシートバック2がシートクッション3(図13参照)に対して車両の前方側寄りに傾倒した姿勢となる回動領域に設定されている。したがって、このフリーゾーンの設定された領域では、ケーブルKcによる解除操作を止めても、シートバック2をシートクッション3側に附勢回動させることができる。
なお、上記フリーゾーンを設定するための構成や、リクライニング機構40をロック状態及び解除状態に切換えるためのロック構造(内部構造)については、例えば特開2002−360368号公報に開示されているような公知の構成が適用可能であるため、詳細な説明を省略する。
【0015】
次に、ロック機構50の構成を説明する。すなわち、ロック機構50は、図10に良く示されるように、ストライカTに係合ロック可能な顎形状のフック部材51が、シート1と一体のベース部材52に回動可能に連結されている。このフック部材51は、同図で示す時計回り方向に回動させることにより、その上顎51aと下顎51bとの間に形成された開口51cがストライカTに掬い掛けられて掛着し、ストライカTと係合ロックする。このフック部材51がストライカTに係合ロックした状態では、フック部材51の回動端部に形成された係止部51dがベース部材52に連結された爪部材53の回動端部53aと当接して係止するようになっているため、フック部材51の反時計回り方向の回動、すなわちストライカTとの係合ロックを解除する方向の回動が規制される。すなわち、この状態では、ロック機構50がストライカTに係合ロックした状態として保持される。
このロック機構50のロック状態は、解除ストラップUSの解除操作を行うことによって解除状態に切換えることができる。具体的には、上記フック部材51の係止部51dと係止可能な爪部材53は、ベース部材52に回動可能に連結されている。この爪部材53は、爪部材53と一体に連結された回動操作部材54の連結部位54aに連結されたケーブルKdにより後述するロック解除操作機構と連結されており、解除ストラップUSの引張操作に連動して、係止部51dとの係止状態を解除する方向(反時計回り方向)に回動操作される。したがって、ロック機構50は、爪部材53が図10の回動位置から図11の仮想線で示される解除位置、すなわち係止部51dと係止不能となる離間位置まで反時計回り方向に回動操作されることにより、解除状態に切換えられる。ここで、フック部材51は、爪部材53との間に連結されたバネ部材55によって、ストライカTとの係合ロックを外す回動方向(反時計回り方向)に附勢されている。したがって、フック部材51は、爪部材53が解除位置まで回動操作されることにより、上記の回動附勢作用によって、図10に示される回動位置から図11の仮想線で示される解除位置、すなわちストライカTとの係合ロックが外される状態位置まで回動する。これにより、ロック機構50が解除状態に切換えられる。なお、爪部材53は、解除ストラップUSの引張操作に伴う回動操作によって、同図の実線で示される上限回動位置まで回動可能とされている。この、爪部材53の回動位置が解除位置(仮想線位置)と上限回動位置(実線位置)との間にある状態では、ロック機構50は解除状態に切換えられた状態として維持される。
ところで、爪部材53は、上記フック部材51との間に連結されたバネ部材55と、ベース部材52との間に連結されたバネ部材56と、によって、フック部材51の係止部51dと当接する方向の時計回り方向に回動附勢されている。したがって、図12に良く示されるように、ロック機構50が解除状態に切換えられた状態で解除ストラップUSの引張操作を止めると、爪部材53は、時計回り方向に附勢されて回動し、その回動側面53bがフック部材51の係止部51dに当接する。この当接状態では、爪部材53は、フック部材51の回動を規制することなく、時計回り方向に回動附勢された状態の回動停止状態とされる。そして、この状態から、図10に良く示されるように、フック部材51をストライカTに係合ロックさせるべく時計回り方向に回動させることにより、爪部材53が上記当接状態から外れて時計回り方向に回動するため、爪部材53の回動端部53aをフック部材51の係止部51dと係止可能なロック状態とすることができる。すなわち、ロック機構50は、図12に示される爪部材53の回動停止状態では、解除状態とされていながらもフック部材51をストライカTに係合ロックさせるべく時計回り方向に回動させることによってロック状態に切換えることのできる係合ロック可能状態とされている。
この解除位置にあるフック部材51を時計回り方向に回動させる操作は、例えば、図13を参照して、シート1を車両フロアF上に向けて押込む操作によって行うことができる。すなわち、上記の押込み操作を行うと、図12に良く示されるように、解除位置にあるフック部材51の上顎51aがストライカTに当接し、更に、ストライカTから受ける押圧反力によって時計回り方向に回動する。これにより、図10に良く示されるように、フック部材51がストライカTに掬い掛けられて掛着する。
【0016】
次に、ロック解除操作機構の構成を説明する。
すなわち、本実施例のロック解除操作機構は、図1に良く示されるように、シートクッション3の構造内部に配置されている。このロック解除操作機構は、解除ストラップUSの引張操作に伴って揺動操作される操作アーム10と、この揺動した操作アーム10に順次押動されて揺動する第1従動アーム20及び第2従動アーム30と、を有する。これら操作アーム10、第1従動アーム20及び第2従動アーム30は、板状のリンク部材として形成されており、シートクッション3と一体とされたベース部材3aに対し、互いに平行な回動軸11,21,31によってそれぞれ回動可能に取付けられている。
ここで、解除ストラップUSによる操作アーム10の揺動操作は、これらに連結された状態として設けられたリンク部材60を介して行われる。このリンク部材60は、ベース部材3aに対し、回動軸61によって回動可能に取付けられている。そして、このリンク部材60の回動端部の連結部位62には、解除ストラップUSに連結されたケーブルKaが連結されている。また、上記回動端部と回動軸61との間の連結部位63には、操作アーム10に連結されたケーブルKbが連結されている。ここで、ケーブルKbが本発明の操作ケーブルに相当する。すなわち、両ケーブルKa,Kbの連結構造において、操作アーム10に連結されたケーブルKbの引張変位量に対する解除ストラップUSの操作変位量が拡大されるてこが構成されている。これにより、操作アーム10を揺動させるために必要な引張操作力が、解除ストラップUSの操作変位量の拡大によって弱められている。
【0017】
上記操作アーム10は、図2に良く示されるように、回動軸11に対する紙面内左側の回動端部の連結部位12にケーブルKbが連結されている。したがって、操作アーム10は、ケーブルKbの引張操作が行われることによって、時計回り方向に揺動回動する。この操作アーム10は、ベース部材3aとの間に配設されたバネ部材Sa(トーションバネ)によって、上記揺動操作が行われる前の初期位置状態(同図の仮想線位置状態)に向けて回動附勢されており、常時は、この初期位置状態で回動停止状態とされている。ここで、バネ部材Saが本発明の附勢手段に相当する。また、操作アーム10は、回動軸11に対する紙面内右側の回動端部が、上記揺動に伴って第1従動アーム20及び第2従動アーム30を押動する押動部位13とされている。
次いで、第1従動アーム20は、図2に良く示されるように、回動軸21を節として略L字状に折曲した形状に形成されており、回動軸21に対する紙面内上側の回動端部の連結部位23にケーブルKcが連結されている。このケーブルKcは、図7に良く示されるように、前述したリクライニング機構40における回動操作部材42の連結部位42aに連結されており、第1従動アーム20(図2参照)の反時計回り方向の揺動に伴って引張操作されることで、リクライニング機構40を解除状態に切換えることができる。また、図2に良く示されるように、第1従動アーム20は、ベース部材3aとの間に配設されたバネ部材Sb(トーションバネ)によって、上記揺動操作が行われる前の初期位置状態(同図で示される位置状態)に向けて回動附勢されており、常時は、この初期位置状態で回動停止状態とされている。この第1従動アーム20は、回動軸21に対する紙面内左側の回動端部が、上記揺動した操作アーム10に押動される被押動部位22とされている。ここで、バネ部材Sbが本発明の附勢手段に相当する。なお、バネ部材Sbの回動附勢力は、操作アーム10に設けられたバネ部材Saの回動附勢力よりも小さく設定されている。
次いで、第2従動アーム30は、図2に良く示されるように、回動軸31を節として略L字状に折曲した形状に形成されており、回動軸31に対する紙面内下側の回動端部の連結部位33にケーブルKdが連結されている。このケーブルKdは、図10に良く示されるように、前述したロック機構50における回動操作部材54の連結部位54aに連結されており、第2従動アーム30(図2参照)の反時計回り方向の揺動に伴って引張操作されることで、ロック機構50を解除状態に切換えることができる。また、図2に良く示されるように、第2従動アーム30は、ベース部材3aとの間に配設されたバネ部材Sc(トーションバネ)によって、上記揺動操作が行われる前の初期位置状態(同図に示される位置状態)に向けて回動附勢されており、常時は、この初期位置状態で回動停止状態とされている。この第2従動アーム30は、回動軸31に対する紙面内左側の回動端部が、上記揺動した操作アーム10に押動される被押動部位32とされている。
【0018】
したがって、図2の実線で示されるように、ケーブルKbの引張操作が行われると、操作アーム10は、同図の仮想線で示された回動位置から時計回り方向に揺動し、第1従動アーム20の被押動部位22に当接する。そして、図3の仮想線で示されるように、操作アーム10は、図2の実線で示される回動位置から更に時計回り方向に揺動することにより、第1従動アーム20を押動して反時計回り方向に揺動させる。これにより、ケーブルKcが第1従動アーム20の反時計回り方向の揺動に伴って引張操作され、図8の仮想線で示されるように、回動操作部材42が解除方向(反時計回り方向)に回動操作されてリクライニング機構40が解除状態に切換えられる。そして、これにより、図13に良く示されるように、シートバック2がシートクッション3側に倒し込まれる方向に附勢されて回動する。
そして、図3の実線で示されるように、操作アーム10が同図の仮想線で示される回動位置から更に時計回り方向に揺動することにより、第1従動アーム20は、更に反時計回り方向に押動されて揺動し、図8の実線で示されるように、回動操作部材42を上限回動位置まで回動させる。そして、図4の実線で示されるように、操作アーム10が図3の実線で示される回動位置(図4の仮想線位置)から更に時計回り方向に揺動すると、操作アーム10は、第1従動アーム20との押動による当接状態から外される。これにより、第1従動アーム20は、バネ部材Sbの回動附勢作用によって時計回り方向に揺動し、操作アーム10に押動される前の初期位置状態(実線位置状態)に戻される。このとき、操作アーム10と第1従動アーム20との押動位置関係は逆転した状態となる。
また、このとき、第1従動アーム20がリクライニング機構40を解除状態に切換えた揺動角度位置(図3の仮想線位置)と、操作アーム10との押動による当接状態が外される揺動角度位置(図4の仮想線位置)と、の間にあるときには、図13に良く示されるように、シートバック2は、シートクッション3側に倒し込み移動させることのできる状態となっている。すなわち、操作アーム10が上記遊びの設定された間位置(揺動角度領域)にあるときには、リクライニング機構40が解除状態に保たれるため、シートバック2をシートクッション3側に倒し込んで折畳姿勢状態とすることができる。或いは、シートバック2をシートクッション3側に向けて倒し込み移動させることにより、リクライニング機構40の作動状態をフリーゾーンに入った状態に切換えることができる。この場合には、第1従動アーム20によって引張り込まれていたケーブルKcは、第1従動アーム20が初期位置状態に戻されることにより、図9に良く示されるように、回動操作部材42がロック方向(時計回り方向)に戻されないため、弛緩した状態となる。このリクライニング機構40は、シートバック2の倒し込み角度位置を変化させることによってフリーゾーンから抜け出すことにより、回動操作部材42をロック方向に戻すことのできる状態となる。これにより、リクライニング機構40をロック状態に切換えることができる。
【0019】
そして、図5の実線で示されるように、操作アーム10は、同図の仮想線で示される回動位置(図4の実線位置)から更に時計回り方向に揺動することにより、第2従動アーム30の被押動部位32に当接する。そして、図6の仮想線で示されるように、操作アーム10は、図5の実線で示される回動位置から更に時計回り方向に揺動することにより、第2従動アーム30を押動して反時計回り方向に揺動させる。これにより、ケーブルKdが第2従動アーム30の反時計回り方向の揺動に伴って引張操作され、図11の仮想線で示されるように、回動操作部材54及び爪部材53が解除方向(反時計回り方向)に回動操作されてロック機構50が解除状態に切換えられる。
そして、図6の実線で示されるように、操作アーム10が同図の仮想線で示される回動位置から更に時計回り方向に揺動することにより、第2従動アーム30は、更に反時計回り方向に押動されて揺動し、図11の実線で示されるように、回動操作部材54を上限回動位置まで回動させる。
【0020】
以上の一連の操作によって、リクライニング機構40及びロック機構50を解除状態に切換えることができる。なお、以上の操作過程において、いずれの段階においても、図2に良く示されるように、解除ストラップUSの引張操作を止めることにより、操作アーム10、第1従動アーム20及び第2従動アーム30を、各操作を行う前の初期位置状態に戻すことができる。
すなわち、例えば、図4の実線で示されるように、操作アーム10と第1従動アーム20との押動位置関係が逆転した状態で解除ストラップUSの引張操作を止めると、操作アーム10は、バネ部材Saの回動附勢作用によって、反時計回り方向に回動する。これにより、操作アーム10は、第1従動アーム20と逆方向から当接するが、第1従動アーム20に設けられたバネ部材Sbの回動附勢作用に打ち勝って、第1従動アーム20と当接する前の初期位置状態(図2の仮想線位置状態)に戻される。
また、図6に良く示されるように、ロック機構50を解除状態に切換えた状態で解除ストラップUSの引張操作を止めても、同様に、操作アーム10、第1従動アーム20及び第2従動アーム30を初期位置状態に戻すことができる。このとき、第2従動アーム30によって引張り込まれていたケーブルKdは、第2従動アーム30が初期位置状態に戻されることにより、図12に良く示されるように、ロック機構50が係合ロック可能な状態となる弛緩状態として維持される。
【0021】
続いて、本実施例の使用方法を説明する。
例えば、図13の仮想線に示されるように、シート1が乗員の着座可能な使用位置にある状態で、解除ストラップUSの引張操作を行うと、先ず、リクライニング機構40が解除状態に切換えられる。これにより、シートバック2がシートクッション3側に倒し込まれる方向に附勢されて回動する。このとき、解除ストラップUSの操作状態を、例えば図3に良く示されるように、ケーブルKcを引張り込んだ状態で保持する位置状態に止めておくことにより、図13に良く示されるように、シートバック2をシートクッション3側に折り畳まれる位置まで回動させることができる。なお、上記の操作状態は、少なくともリクライニング機構40がフリーゾーンに入るまで止めておけば足りる。また、上記のようにシートバック2がシートクッション3側に折り畳まれた時点で解除ストラップUSの引張操作を止めることにより、シート1を車両フロアF上で折畳姿勢としただけの途中状態として留めておくことができる。
そして、解除ストラップUSを、上記リクライニング機構40が解除状態に切換えられた位置から更に引張り込むことにより、次にロック機構50が解除状態に切換えられる。したがって、折畳姿勢とされたシート1を、車両アウター側に向けて起こし上げることができる。これにより、シート1を収納状態として、荷室空間を拡張することができる。
【0022】
このように、本実施例のロック解除操作機構によれば、一つの解除ストラップUSの引張操作を行うことにより、操作アーム10を第1従動アーム20と第2従動アーム30とに順に当接させて揺動させ、リクライニング機構40とロック機構50の両者を解除状態に切換えることができる。すなわち、操作アーム10によって第1従動アーム20と第2従動アーム30とを一斉に押動することなく順次別個に押動することができるため、解除ストラップUSに必要な操作力を軽くすることができる。更に、解除ストラップUSによる引張操作を、シート1を車両フロアF上で折畳姿勢としておくためにも使用することができ、機能を使い分けることができる。更に、操作アーム10と第1従動アーム20との当接構造にリクライニング機構40の解除状態を維持することのできる遊びが設定されているため、例えばリクライニング機構40が解除状態に切換えられる前に操作アーム10と第1従動アーム20との当接状態が外れるといった誤作動を防止することができる。更に、解除ストラップUSの引張操作において、リクライニング機構40のみを解除状態に切換えた状態を作り出し易くなると共に、このリクライニング機構40がロック状態に戻されないように保持しておく操作も行い易くなる。更に、解除ストラップUSと操作アーム10との連結がリンク部材60を用いたてこを介して行われているため、解除ストラップUSの引張操作に必要な操作力を一層軽くすることができる。更に、リクライニング機構40に設定されたフリーゾーンによって、解除ストラップUSの操作によって第1従動アーム20をリクライニング機構40が解除状態に切換えられる揺動角度位置に保持しなくても、シートバック2をシートクッション3側に倒し込む操作を簡便に行うことができる。
【0023】
以上、本発明の実施形態を1つの実施例により説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施ができるものである。
例えば、ロック解除操作機構の配設位置は、上記実施例で示した位置に限定されず、各種シート構造に合わせて適宜位置に設定することができる。
また、解除ストラップの引張操作によって、操作アームを第2従動アームとの押動位置関係が逆転する回動位置まで揺動させるようにしてもよい。但し、この場合には、解除ストラップの引張操作を止めた際に、操作アームを押動位置関係の逆転する前の状態に戻せるようにするために、例えば第2従動アームに設けられるバネ部材の回動附勢力を、操作アームに設けられたバネ部材の回動附勢力よりも小さく設定するなどの手段を講じる必要がある。
また、操作アームと第1従動アームとの当接構造にリクライニング機構の解除状態を維持するための遊びが設定されていない構成であってもよい。なお、この場合には、解除ストラップの引張操作によって、リクライニング機構のみを解除状態に切換えた状態を作り出す操作や、このリクライニング機構がロック状態に戻されないように保持しておく操作が行い難くなることに留意が必要である。
また、解除ストラップの引張操作に必要な操作力を軽くするためのてこが設けられていなくても構わないが、この場合には、解除ストラップの引張操作量が少なくて済む代わりに、操作力が重くなることに留意が必要である。
また、操作アーム、第1及び第2従動アームを回動附勢する附勢手段は、トーションバネに限らず、引張バネ等の各種のものを適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】車両用シートのロック解除操作機構の概略構成を表した模式図である。
【図2】図1のA部分を拡大して表した模式図である。
【図3】図2の状態から第1従動アームが操作アームに押動されて揺動回動した状態を表した模式図である。
【図4】図3の状態から操作アームの押動による第1従動アームとの当接状態が外された状態を表した模式図である。
【図5】図4の状態から操作アームが第2従動アームに当接した状態を表した模式図である。
【図6】図5の状態から第2従動アームが操作アームに押動されて揺動回動した状態を表した模式図である。
【図7】リクライニング機構の概略構成を表した側面図である。
【図8】図3に対応するリクライニング機構の作動状態を表した側面図である。
【図9】図4に対応するリクライニング機構の作動状態を表した側面図である。
【図10】ロック機構の概略構成を表した側面図である。
【図11】図6に対応するロック機構の作動状態を表した側面図である。
【図12】ロック機構のロック可能状態を表した側面図である。
【図13】シートが折畳姿勢とされた状態を表した側面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 シート
2 シートバック
3 シートクッション
3a ベース部材
10 操作アーム
11 回動軸
12 連結部位
13 押動部位
20 第1従動アーム
21 回動軸
22 被押動部位
23 連結部位
30 第2従動アーム
31 回動軸
32 被押動部位
33 連結部位
40 リクライニング機構
41 回動軸
42 回動操作部材
42a 連結部位
50 ロック機構
51 フック部材
51a 上顎
51b 下顎
51c 開口
51d 係止部
52 ベース部材
53 爪部材
53a 回動端部
53b 回動側面
54 回動操作部材
54a 連結部位
55 バネ部材
56 バネ部材
60 リンク部材
61 回動軸
62 連結部位
63 連結部位
US 解除ストラップ(操作部材)
F フロア
T ストライカ(係合部材)
Sa バネ部材(附勢手段)
Sb バネ部材(附勢手段)
Sc バネ部材
Ka ケーブル
Kb ケーブル(操作ケーブル)
Kc ケーブル
Kd ケーブル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のシートには、背もたれ部となるシートバックの傾き角度を調整するためのリクライニング機構と、車両フロア上に設置された係合部材に対してシートを係合ロックさせるためのロック機構とが備えられ、該両機構を一つの操作部材の一連の解除操作に伴う動作によって解除状態に切換えることのできる車両用シートのロック解除操作機構であって、
前記操作部材の解除操作に伴って揺動する操作アームと、該揺動する操作アームに押動されて揺動することで前記リクライニング機構を解除状態に切換える第1従動アームと、該第1従動アームとは別に前記揺動する操作アームに押動されて揺動することで前記ロック機構を解除状態に切換える第2従動アームと、を有し、
該第2従動アームは、前記操作部材の解除操作に伴う前記操作アームの揺動回動方向への揺動角度が前記第1従動アームへの押動による当接状態から外れる角度位置に到達することにより、前記操作アームと当接して押動される配置とされていることを特徴とする車両用シートのロック解除操作機構。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートのロック解除操作機構であって、
前記操作アームは、該操作アームを前記操作部材の解除操作を行う前の初期位置状態に向けて附勢する附勢手段により回動附勢されて前記初期位置状態で回動停止状態とされており、
前記第1従動アームは、前記揺動する操作アームとの当接が外れた状態では、これらを該操作アームによって押動される前の初期位置状態に向けて附勢する附勢手段により回動附勢されて前記初期位置状態で回動停止状態とされており、
前記操作アームが回動附勢される附勢力は、前記第1従動アームが回動附勢される附勢力よりも大とされていることを特徴とする車両用シートのロック解除操作機構。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用シートのロック解除操作機構であって、
前記第1従動アームの前記リクライニング機構を解除状態に切換える揺動角度位置と、前記操作アームの押動による当接状態が外れる揺動角度位置と、の間に前記リクライニング機構を解除状態に保つ領域が設定されていることを特徴とする車両用シートのロック解除操作機構。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−69754(P2007−69754A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−259279(P2005−259279)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】