説明

車両用シートの跳ね上げ機構

【課題】車両用シートの跳ね上げ機構において、安定して車体フロアに固定することができ、乗員の荷重を安定して支持可能な車両用シートの跳ね上げ機構を提供する。
【解決手段】通常の着座姿勢と、前方に傾倒させた状態で収納する収納姿勢と、にシートクッション10を切り替え可能に形成された車両用シートS1の跳ね上げ機構は、シート幅方向に離間して前後方向に延設されたリンク121と、リンク121の端部に取着されてシートクッション10を支持する取付ブラケット124と、取付ブラケット124に架設される連結部材123と、リンク121を回動自在に支持する支持機構125と、支持機構125の下方に配設されると共に車体フロア2に係止される取付板111と、を備えており、取付部材112は、リンク121よりも後方へ延設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートの跳ね上げ機構に係り、特に車体フロアに対して安定して固定可能な車両用シートの跳ね上げ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シートバックを傾倒すると共にシートクッションを跳ね上げることにより、不使用時は収納状態とすることが可能な車両用シートが知られている。例えば、特許文献1には、シートバックを前方に傾倒させ、シートクッションを前方に立てることによりタンブル状態として収納可能な車両用シートが開示されている。
【0003】
特許文献1の車両用シートのダブルフォールディング機構において、シートクッションは、回動機構を備えた連結構造を介して車室のフロアに取り付けられている。そして、シートクッションは、その収納時、回動部材を備えた回動機構によって前方に回転し、所定の位置で保持される。
【0004】
この連結構造には、車室フロアに対して固定される板状の固定部材が備えられている。そして、固定部材は、形状は互いに異なるものの、シート幅方向(左右方向)において一対で設けられており、固定部材には、補強部材が架設されている。したがって、連結構造は、平面視で略L字状の板状の固定部材を介して車室フロアに対して固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4468310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シートクッションを立て起こしてタンブル状態として収納する車両用シートにおいては、シートクッションを支持して回動する長尺の回動部材がシートの前後方向に沿って配設されている。そして、回動部材は、シートクッションを収納姿勢(跳ね上げ位置)まで跳ね上げるため、所定長さ以上の長さで形成することが必要である。
【0007】
特許文献1において開示されたダブルフォールディング機構の連結構造では、固定部材と比較して、回動部材の方が長く形成されている。すなわち、シートクッションを着座姿勢としたとき、平面視で回動部材が固定部材よりも後方に突出するように形成されている。
【0008】
特許文献1のように、固定部材が左右非対称に形成されており、さらに回動部材が大きく形成された連結構造は、シートクッションに加わる荷重が均一に分散しにくいという不都合があった。したがって、連結構造全体が固定部材の備えられていない方向へ傾倒しやすくなり、乗員の荷重を安定して支持することが難しいという問題点があった。
【0009】
また、特許文献1のダブルフォールディング機構では、シートクッションを取り付ける構造において、シート幅方向及び上下方向に複数の部材が重ねられた構成であるため、車両用シートが大型化し易いという不都合があった。
【0010】
本発明の目的は、車両用シートの跳ね上げ機構において、安定して車体フロアに固定することができ、乗員の荷重を安定して支持可能な車両用シートの跳ね上げ機構を提供することにある。また、本発明の他の目的は、車両用シートの跳ね上げ機構において、大型化することなく、省スペース化を図った車両用シートの跳ね上げ機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題は、本発明の請求項1に係る車両用シートの跳ね上げ機構によれば、通常の着座姿勢と、前方に傾倒させた状態で収納する収納姿勢と、にシートクッションを切り替え可能に形成された車両用シートの跳ね上げ機構であって、シート幅方向に離間して前後方向に延設された長尺体からなる一対のリンクと、該一対のリンクの端部に取着されて前記シートクッションを支持する一対の取付ブラケットと、該一対の取付ブラケットに架設される連結部材と、前記一対のリンクを回動自在に支持する一対の支持機構と、該一対の支持機構の下方に配設されると共に車体フロアに係止される取付板と、を備え、該取付板は、前記リンクよりも後方へ延設されてなること、により解決される。
【0012】
このように、シートクッションが着座姿勢と収納姿勢とに切り替え可能に形成された車両用シートの跳ね上げ機構において、シートクッションを回動動作させるためのリンクよりも、車体フロアに取着される取付板が後方へ延設されている。この構成により、取付板がリンクよりも後方へ長く形成されているため、各部材を車体フロアへ固定するための土台部分が大きく形成されることになる。したがって、乗員の着座時、シートクッションに加わる荷重を車体フロアに対して分散して伝達しやすくなり、その結果、シートクッションは、乗員の荷重を安定して支持することができる。
また、上記構成とすることにより、車体フロアに固定された跳ね上げ機構が車体フロアに対して荷重を分散して伝達させることができるため、跳ね上げ機構の荷重が一方向へ片寄り、傾倒するのを抑制することができる。したがって、本発明の車両用シートの跳ね上げ機構は、安定して車体フロアに固定可能である。
【0013】
また、請求項2のように、前記取付板は、シート幅方向に延在する固定部材と、該固定部材と一端側において重ねられると共に前記リンクの延在方向に沿って配設される取付部材とを備え、該取付部材は、前記固定部材の一端側で重ねられると共に、前記車体フロアに当接する取付面部を有し、該取付面部の後端部のシート幅方向内側の頂点及び前記固定部材の後端部の前記取付部材が重ねられていない側の頂点を結ぶ仮想線と、前記連結部材とが上面視で交わる点は、前記連結部材の延在方向の中心部よりも、前記固定部材の他端側に配置されてなると好適である。
このように、本発明の車両用シートの跳ね上げ機構において、連結部材の延在方向の中心部は、取付部材と固定部材の所定点を通る仮想線と、連結部材とが上面視で交わる交点よりも取付部材に近くなるように構成されている。連結部材の中心部とは、シートクッションを支持する一対の取付ブラケットの中間点であり、シートクッションからの荷重(乗員の着座荷重を含む)が最も加わりやすい点である。一方、上記仮想線と連結部材とが交わる交点は、跳ね上げ機構を構成する部材の重心位置であり、跳ね上げ部材を後方へ傾倒させる位置にある。したがって、この取付ブラケットの中間点を、跳ね上げ機構を構成する部材の重心位置よりも取付部材に近くなるように配設することにより、シートクッションが乗員の荷重を支持しやすくなる。また、連結部材の中心部にかかる荷重が、跳ね上げ機構を構成する部材が後方へ傾倒する動きを抑制する。その結果、車両用シートの跳ね上げ機構が後方へ傾倒するのをさらに抑制することが可能である。
【0014】
さらに、請求項3のように、前記一対のリンクのうち、前記取付部材が取着された側に配設されるリンクは、前記取付部材のシート幅方向の外側端部と、内側端部との間に配設されてなると好適である。
このように、シート幅方向に離間して配設されたリンクのうち、一方のリンクが取付部材の上方に配設される際、シート幅方向において、取付部材の内側端部及び外側端部の間に配設されている。このような構成とすることにより、リンクの回動時等において、取付部材に対するリンクの取着部分が捻れたりすることなく、安定して取着される。したがって、上記構成を備えることにより、リンクが安定して車体フロアに固定される。
また、リンクがシート幅方向において取付部材と重なる位置に配設されるため、車両用シートの跳ね上げ機構がシート幅方向において大型化することなく、好適である。
【0015】
また、請求項4のように、前記取付部材の一端は、前記固定部材と前記車体フロアとの間に挟まれて配設されると好ましい。
このように、取付部材の一端が、固定部材と車体フロアとの間に挟まれて配設されることにより、跳ね上げ機構が後方へ向かって傾く荷重がかかった際に、取付部材の一端が固定部材によって上方から下方へ押圧されるため、車両用シートの跳ね上げ機構が傾く動きが抑制される。
【0016】
さらに、請求項5のように、前記一対の支持機構のうち少なくとも一方は、前記固定部材上に取着されて前記リンクを付勢する渦巻きバネを有し、前記取付部材の前記固定部材と重ねられた部分は、前記渦巻きバネが取着された位置よりもシート幅方向外側に配設されてなると好適である。
このように、リンクを付勢する渦巻きバネに対して、取付部材が高さ方向において重ならないように形成されている。したがって、複数の部材が高さ方向において重ならないように配設されているため、車両用シートの跳ね上げ機構が高さ方向において大型化するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、シートクッションを回動させるリンクよりも、車体フロアに固定される取付板を後方に長く形成することにより、車両用シートの跳ね上げ機構が後方へ傾倒する動きを抑制することができる。したがって、車両用シートの跳ね上げ機構が安定して車体フロアに固定される。また、シートクッションからの荷重を分散して車体フロアに分散させることが可能であるため、乗員の荷重を安定して支持することができる。
請求項2の発明によれば、乗員の荷重がかかりやすい連結バーの中間部を、取付部材の近傍に配設することにより、乗員の荷重を支持しやすく、且つ傾倒しにくい車両用シートの跳ね上げ機構を提供することができる。
請求項3の発明によれば、取付部材のシート幅方向内側端部と、外側端部との間にリンクが配設されるため、リンクが安定して固定される。また、車両用シートの跳ね上げ機構の大型化を防止することができる。
請求項4の発明によれば、跳ね上げ機構が後傾する荷重が加わった場合、取付部材が固定部材によって上方から車体フロア側へ押圧されるため、車両用シートの跳ね上げ機構の傾倒動作を抑制することが可能である。
請求項5の発明によれば、リンクを付勢する渦巻きバネを取着する位置において複数の部材が重なることがないため、車両用シートの跳ね上げ機構の大型化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】車両用シートS1を搭載した車両後部の側面模式図である。
【図2】車両用シートS1の斜視図である。
【図3】クッションフレーム11の斜視図である。
【図4】第1実施形態に係るシートクッション跳ね上げ機構60の斜視図(第1図)である。
【図5】シートバックフレーム21を前側から見たときの図である。
【図6】ヘッドレスト30の内部フレーム31を示す図である。
【図7】ヘッドレスト回動機構50を前側から見たときの図である。
【図8】ヘッドレスト回動機構50を後側から見たときの図である。
【図9】ヘッドレスト回動機構50の斜視図である。
【図10】第1実施形態に係るシートクッション跳ね上げ機構60の斜視図(第2図)である。
【図11】第1実施形態に係るシートクッション跳ね上げ機構60を上方から見たときの図である。
【図12】シートバック支持ユニット90を側方から見たときの図である。
【図13】第1板部112の説明図である。
【図14】図13のI−I線に相当する断面図である。
【図15】支持機構125を上方から見たときの図である。
【図16】第1実施形態に係る取付ユニット110の説明図である。
【図17】第2実施形態に係る取付ユニット110の説明図である。
【図18】第3実施形態に係る取付ユニット110の説明図である。
【図19】第4実施形態に係る取付ユニット110の説明図である。
【図20】連結フレーム117の断面図である。
【図21】第5実施形態に係る取付ユニット110の説明図である。
【図22】第6実施形態に係る取付ユニット110の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態(以下、本実施形態)について、図1乃至図22を参照して説明する。なお、以降に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。さらに、以下の説明で挙げる材質や形状等は本発明の効果を発揮させるための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0020】
図1乃至図16は、第1実施形態に係る車両用シート(以下、車両用シートS1)を説明するものである。図1は、車両用シートS1を搭載した車両後部の側面模式図である。図2は、車両用シートS1の斜視図である。図3は、クッションフレーム11の斜視図である。図4は、第1実施形態に係るシートクッション跳ね上げ機構60の斜視図(第1図)である。図5は、シートバックフレーム21を前側から見たときの図である。図6は、ヘッドレスト30の内部フレーム31を示す図である。図7乃至図9は、ヘッドレスト回動機構50を示す図であり、図7は、ヘッドレスト回動機構50を前側から見たときの図であり、図8は、後側から見たときの図であり、図9は、斜視図である。図10は、第1実施形態に係るシートクッション跳ね上げ機構60の斜視図(第2図)である。図11は、第1実施形態に係るシートクッション跳ね上げ機構60を上方から見たときの図である。図12は、シートバック支持ユニット90を側方から見たときの図である。図13は、第1板部112の説明図である。図14は、図13のI−I線に相当する断面図である。図15は支持機構125を上方から見たときの図である。図16は、取付ユニット110の説明図である。図17は、第2実施形態に係る取付ユニット110の説明図、図18は、第3実施形態に係る取付ユニット110の説明図である。図19及び図20は、第4実施形態に係るもので、図19は、取付ユニット110の説明図、図20は、連結フレーム117の断面図である。図21は、第5実施形態に係る取付ユニット110の説明図、図22は、第6実施形態に係る取付ユニット110の説明図である。
【0021】
なお、図中の記号FRは車両前方を、記号RRは車両後方を、記号UPは車両上方をそれぞれ示している。また、以下の説明において、左右方向とは、車両前方を向いた状態での左右方向を意味し、後述するシートバックフレーム21の幅方向と一致する方向である。
【0022】
車両用シートS1は、乗物用シートの一例であり、図1に示すように、自動車の車体後部に荷室スペースを有する車両に後部座席として搭載されるものであって、特に、本実施形態ではワゴン型の自動車に搭載されるものである。
【0023】
車両用シートS1の構成について説明すると、本実施形態では、右側(運転席側)の車両用シートS11と、左側(助手席側)の車両用シートS12とに分かれており、各車両用シートS11,S12は、シートクッション10と、シートバック20と、ヘッドレスト30とを備えている。なお、各車両用シートS11,S12のシートバック20間にはアームレスト40が配置されており、左側の車両用シートS12においては、図2にてアームレスト40の下方に位置した台座部20aとシートバック20とが一体化されており、図2にて台座部20aの下方位置に配置された張出部10aとシートクッション10とが一体化されている。以上の点において右側の車両用シートS11と左側の車両用シートS12とは相違するものの、基本構成に関して言えば、両車両用シートS11,S12は共通する。そのため、以下の説明では、右側の車両用シートS11の構成のみを例に挙げて説明する。
【0024】
車両用シートS1は、その姿勢を、乗員が着座可能な通常の姿勢(図1にて破線で示す姿勢であり、以下、着座姿勢)から、不使用時に荷室部3が形成されるように収納された姿勢(図1にて実線で示す姿勢であり、以下、収納姿勢)へ切り替えることが可能である。つまり、車両用シートS1の姿勢が収納姿勢に切り替えるにあたって、シートクッション10が車両前方に向けて跳ね上げられる。また、シートクッション10の跳ね上げに連動して、シートバック20が前方に回動し、車体フロア2上の、跳ね上がる前のシートクッション10が配置されていた位置に倒伏するようになっている。さらに、ヘッドレスト30が、シートバック20の上方で略鉛直に配設された状態から約90度前方に回動し、シートバック20が車体フロア2上に倒れ込んだ際には、前方に跳ね上がったシートクッション10と倒伏したシートバック20との間に格納されるようになる。
【0025】
以上の一連の動作により、車両用シートS1は、コンパクトな姿勢で収納することが可能である。そして、上記構成の車両用シートS1をリアシートとして採用する車両1では、当該車両用シートS1の後方に、車体フロア2の一部を構成する荷室部3が形成され、この荷室部3は、車両用シートS1の収納動作によって利用可能なサイズになるまで拡張されるようになる。
【0026】
以上までに説明してきた通り、車両用シートS1は、その姿勢を着座姿勢及び収納姿勢に切り替え可能に構成されており、さらに、着座姿勢からヘッドレスト30のみを前方に倒した姿勢への切り替えや、収納姿勢からシートバック20のみを起こした姿勢への切り替えも可能である。こうした多彩なシートアレンジは、車両用シートS1に具備された種々の駆動機構(具体的には、ヘッドレスト回動機構50、シートクッション跳ね上げ機構60、シートバック倒伏機構70等)によって実現されるものである。以下、車両用シートS1のシートアレンジを実現するための構成について説明する。
【0027】
なお、以下の説明中、シートクッション10、シートバック20、及びヘッドレスト30の着座位置とは、車両用シートS1の姿勢が着座姿勢にある際のシートクッション10、シートバック20、及びヘッドレスト30の位置である。また、シートクッション10の跳ね上げ位置とは、車両用シートS1の姿勢が収納姿勢にある際のシートクッション10の位置であり、シートバック20及びヘッドレスト30の倒れ位置とは、それぞれ、車両用シートS1の姿勢が収納姿勢にある際のシートバック20及びヘッドレスト30の位置である。
【0028】
<<車両用シートS1の基本構成>>
車両用シートS1のシートアレンジを実現するための構成を説明するにあたり、車両用シートS1の基本構成について説明する。車両用シートS1は、前述したように、シートクッション10と、シートバック20と、ヘッドレスト30とを備えている。
【0029】
シートクッション10は、図3に示すクッションフレーム11に表皮材を取り付けることにより構成される。表皮材の取り付けは、表皮材の端末に縫製された不図示のトリムコードをクッションフレーム11の外縁に掛止することによって行われる。
【0030】
また、シートクッション10の下部には、図4に示すシートクッション跳ね上げ機構60が配設されている。シートクッション跳ね上げ機構60は、車体フロア2上に固定されており、シートクッション10を支持すると共に、車両用シートS1を収納するにあたり、シートクッション10を着座位置から跳ね上げ位置に向けて跳ね上げるものである。
つまり、シートクッション10は、シートクッション跳ね上げ機構60を介して車体フロア2上の着座位置に固定され、シートクッション跳ね上げ機構60が作動すると、着座位置から跳ね上げ位置に向かって跳ね上がるように構成されている。換言すると、シートクッション10は、着座位置と跳ね上げ位置との間を往復移動することが可能である。
【0031】
なお、シートクッション跳ね上げ機構60は、ストライカロック機構100を備えている。ストライカロック機構100は、車両用シートS1の姿勢が着座姿勢にあるときにシートクッション10を着座位置に固定させるものである。シートクッション跳ね上げ機構60については後に詳述する。
【0032】
シートバック20は、シートバック倒伏機構70によって前方に倒れるように回動するものであり、シートバック20の上端部に設けられている操作部77を乗員が操作することにより、シートバック20のみを単独で前方に倒すことができる。そして、シートバック20は、図5に示すシートバックフレーム21にクッション材としてのウレタンを重ねて表皮材で覆うことにより構成される。シートバック20のシートバックフレーム21は、シートバックフレーム21の基部をなすパンフレーム22と、シートバックフレーム21の外枠をなすパイプフレーム23とを有する。パンフレーム22は、略矩形状の板金に対して剛性確保のためのビード加工等の加工処理を施すことにより成形される。そして、パンフレーム22の前面には、ヘッドレスト回動機構50やアレンジユニット80が取り付けられている。
【0033】
なお、ヘッドレスト回動機構50は、ピラー33を前方に回動させることにより、ヘッドレスト30を前方に倒す機構であり、乗員が上下方向に沿って収納操作用帯状部材ST1を引っ張る操作により動作させることにより、ヘッドレスト30のみを倒伏させることができる。具体的に説明すると、図7及び図8に示すように、ヘッドレスト回動機構50において、乗員によるスライド部材54をスライドさせるため操作を受け付ける収納操作用帯状部材ST1が設けられ、スライド部材54の長手方向一端部54aには収納操作用帯状部材ST1が締結される。そして、乗員が収納操作用帯状部材ST1を引っ張ることにより、スライド部材54がスライドし、これに従動する形でロック部材52が解除位置へ揺動するように形成されている。そして、スライド部材54をスライド移動させることにより、図9のように、最終的にヘッドレスト30(ピラー33)を前方に倒すことが可能となる。
【0034】
パイプフレーム23は、パンフレーム22を囲うようにパンフレーム22の外縁に沿って配設されており、パンフレーム22と溶接にて接合されている。なお、パイプフレーム23のうち、上下方向において下部に位置する部分と、左右方向において車両外に面する部分とは、シートバック20の厚み方向においてパンフレーム22との間に隙間を設けた状態で配設されている。かかる隙間が形成されている理由は、例えば、シートバックフレーム21に重ねられたクッション材としてのウレタンの端部をパンフレーム22とパイプフレーム23との間に挟み込んで保持するため等である。
【0035】
さらに、シートバックフレーム21の上端部のうち、後述するピラー33の後側に位置する部分には、下向きコの字状のブラケットからなるピラー倒れ規制部25が設けられている。ピラー倒れ規制部25は、ヘッドレスト30が着座位置に位置する時にピラー33の後方への回動(倒れ)を規制する規制部に相当する。なお、ピラー倒れ規制部25は、ピラー33毎に設けられ(すなわち、2個設けられ)、パイプフレーム23の上端部に溶接止めされている。
【0036】
以上のような構成のシートバック20は、その回動軸20bを、車体フロア2に固定されたシートバック支持ユニット90(例えば、図12参照)の孔部に嵌合させ、シートバック支持ユニット90に回動可能に支持されている。これにより、シートバック20は、車体フロア2に対して前後方向へ回動可能となり、着座位置と倒れ位置との間を移動することが可能となる。なお、本実施形態では、シートクッション10の跳ね上げ動作に連動してシートバック20が前方に倒伏するようになっている。さらに、本実施形態では、シートバック20のみを単独で前方に倒すことも可能である。
【0037】
ヘッドレスト30は、シートバック20(換言すると、シートバックフレーム21)の上方に設けられており、図6に示す逆U字状の内部フレーム31と表皮材との間に発泡剤を充填することにより構成される。逆U字状の内部フレーム31の両側にある脚部31aは中空状であり、各脚部31aの内部には中空棒状のガイド32を収容する空間が形成されている。ガイド32は、脚部31a内に収容され、内部フレーム31の脚部31aの下端フランジ部31bに設けられた挿入孔(不図示)を通じて進退自在に構成されている。なお、ヘッドレスト30の表皮材には、ガイド32の末端部が表皮材の外側に位置するように通し孔(不図示)が設けられている。
【0038】
以上のような構成のヘッドレスト30において、ガイド32が内部フレーム31の脚部31a内で最も後退した位置に位置している状態(下端フランジ32aを除き、脚部31a内に収納された状態)では、ヘッドレスト30の表皮材のうち、上記の通し孔周りの部分が、内部フレーム31の脚部31aの下端フランジ部31bとガイド32の下端フランジ32aとに挟まれるようになっている。
【0039】
また、本実施形態において、ヘッドレスト30は、金属棒からなる一対のピラー33(図5参照)がガイド32内に挿入された状態で当該ピラー33に支持され、さらに、各ピラー33はヘッドレスト回動機構50のケーシング51に回動自在に支持されている。
【0040】
そして、ヘッドレスト30は、ヘッドレスト回動機構50により、シートバック20の上方で起立した状態から前方に約90度倒れた状態になるまで回動することが可能である。なお、本実施形態では、シートクッション10の跳ね上げ動作に連動してヘッドレスト30が前方に倒れるように回動することとなっており、さらには、ヘッドレスト30のみを単独で前方に倒すことも可能である。
【0041】
<<シートクッション跳ね上げ機構>>
シートクッション跳ね上げ機構60は、乗員が車両用シートS1を収納するために行う収納操作が受け付けられると、車両用シートS1を収納するための開始動作としてシートクッション10を跳ね上げ位置に向けて跳ね上げるものである。このシートクッション跳ね上げ機構60は、不図示の樹脂カバーで覆われており、シートクッション10が着座位置に位置する際にはシートクッション10の下方位置に位置するように車体フロア2上に設置されている。
【0042】
シートクッション跳ね上げ機構60は、図4、図10、図11に示すように、2つのサブユニットから構成されており、一方のサブユニットは、車体フロア2に取り付けられる取付ユニット110であり、他方のサブユニットは、取付ユニット110上に配置され取付ユニット110(換言すると、車体フロア2)に対してスイング動作(回動動作)を実行可能な可動ユニット120である。
【0043】
取付ユニット110は、上面視でL字状の外観をなした取付板111を主たる構成要素として有する。取付板111のうち、車両1の前後方向に沿って延びた取付部材としての第1板部112は、車体フロア2に締結されたボルトBo及びワッシャWsによって車体フロア2に固定されている(図11参照)。ここで、第1板部112の後端部には長穴状の取付穴114が形成されており、予め車体フロア2に締結されたボルトBo及びワッシャWsが取付穴114に嵌め込まれることにより、取付ユニット110が車体フロア2上に配置される。
【0044】
なお、取付穴114の長手方向の中間部114bは、前端部114aや後端部114cに比して幾分幅広となっている。かかる構成を利用し、ボルトBo及びワッシャWsを取付穴114に嵌め込む際には、先ず取付穴114の長手方向の中間部114bにボルトBo及びワッシャWsを通し、その後に、ボルトBoが取付穴114の長手方向の前端部114aに嵌合するように取付ユニット110の位置をずらして取付ユニット110の位置決めを行う。
【0045】
また、第1板部112の長手方向の略中央部には、ストライカロック機構100のロック部101が取り付けられている。このロック部101は、鉤状のロック片102と、ロック片102を揺動可能な状態で収容するハウジング103とを有している。ロック片102が後述のストライカ105と係合している状態では、シートクッション10が着座位置にて車体フロア2上に固定されていることになる。一方で、ロック片102が揺動すると、ストライカ105は、ロック片102との係合状態を脱するようになり、シートクッション10は、車体フロア2上に固定された状態から解放されて可動状態となる。
【0046】
さらに、第1板部112は、その一側部に立ち壁部112aを有し、立ち壁部112aのうち、ロック部101が取付位置よりも幾分前方位置に、前述した収納操作用帯状部材ST2を通すためのスリット112bが形成されている。このスリット112bに通された収納操作用帯状部材ST2は、第1板部112と交差するように第1板部112上に配置される。また、収納操作用帯状部材ST2の端部(第1板部112から見て車両1の内側の端部)にはケーブルCの一端部が接続されており、当該ケーブルCを配策する際に配索経路を規定するための経路規定部112cが第1板部112の側部(立ち壁部112aが位置する側とは反対側の側部)に適宜な間隔で設けられている。
【0047】
そして、上記のケーブルCの他端部は、前述のロック片102と連結している連結片104に接続されている。これにより、収納操作用帯状部材ST2が引っ張られると、ケーブルCが連結片104を介してロック片102を引っ張るようになる結果、ロック片102が揺動し、ロック片102とストライカ105との係合が解除されることになる。
【0048】
一方、取付板111のうち、車両1の左右方向(車両用シートS1の幅方向)に沿って延びた固定部材としての第2板部113は、可動ユニット120の土台をなす部分であり、その長手方向中央部には、シートクッション10に着座した乗員が車両1の衝突事故時に腰ベルトの下に潜り込むサブマリン現象を防止するためのサブマリンブラケット115が設けられている。
【0049】
サブマリンブラケット115は、第2板部113の上面から立ち上がる板状部材からなる一対の立設部115aと、該一対の立設部115aとを連結する連結部115bとを備えている。
このように、サブマリンブラケット115は一対の立設部115aを備えているため、取着される第2板部113を補強し、乗員からの荷重に対する剛性を向上させることができる。さらに、一対の立設部115aは連結部115bによって連結されているため、立設部115a、連結部115b、第2板部113とで閉断面構造を構成する。したがって、立設部115aのみを備えた構成と比較して、さらに第2板部113の剛性を向上させることができる。
【0050】
サブマリンブラケット115の立設部115aは、後述のリンク121の回動軸126Aを挟むように前後方向に配設される。すなわち、側面視で一対の立設部115aの間に、回動軸126Aが配設される。このように、大きな荷重が加わる回動軸126Aを立設部115aによって挟むことにより、回動軸126A周辺の剛性を向上させ、リンク121を安定して回動させることが可能である。
【0051】
(可動ユニット120の構成)
可動ユニット120は、略門型の構造を有し、取付板111の第2板部113にボルト止めされる。可動ユニット120は、一対のリンク121と、一対のガイド部材としてのパイプロッド122と、シートクッション10を取り付けるための取付ブラケット124と、取付ブラケット124に架設され、リンク121間を連結する連結バー123と、リンク121及びパイプロッド122を回動自在に支持する一対の支持機構125とを有する。これらの構成要素はユニットとして一体化するように組み合わされており、取付板111の第2板部113に取り付ける際にはユニットとして一体的に取り付けることになる。
【0052】
左右方向(シート幅方向)に離間して配設された一対のリンク121の各々は、板金部材にビード加工等の処理を施して構成される長尺体であり、可動ユニット120の両側部に位置する。各リンク121は、その下端部に形成された通し穴(不図示)に回動軸126Aが嵌合することにより回動自在に支持されている。また、各リンク121の上端部には、リンク121間を連結する連結部材としての連結バー123が取り付けられている。さらに、各リンク121の上端部には、その外側表面に取付ブラケット124が取り付けられている。なお、連結バー123及び取付ブラケット124は、リンク121の上端部に共締形式でボルト止めされることによって取り付けられている。
【0053】
取付ブラケット124は、シートクッション10が固定される取付面部124aと、該取付面部124aの側方端部から延出した側面フランジ部124bとを備えている。側面フランジ部124bは、取付面部124aの左右方向いずれかの端部から延出して形成されており、取付面部124aに対して略垂直に折曲されている。
【0054】
側面フランジ部124b(より詳細には、側面フランジ部124bの内側面)には、リンク121の上端部、連結バー123の端部、及びパイプロッド122の上端部が固定されている。このように、側面フランジ部124bの内側面(車両用シートS11のシート幅方向において内側の面)にリンク121、連結バー123及びパイプロッド122の端部が取着されているため、リンク121、連結バー123及びパイプロッド122の取着部分が一か所に集中する。したがって、上記のように複数の部材を取り付ける部分においても、各部材の取着部分を大型化することなく、省スペース性が高い。
【0055】
そして、側面フランジ部124bにおいて、連結バー123の固定位置とパイプロッド122の固定位置との間には、凹部124cが形成されている。このように、側面フランジ部124bにおいて凹部124cが形成されているため、凹部124cが形成されていない場合と比較して、取付ブラケット124を軽量化することができる。
【0056】
一方、取付面部124aは平滑な平面ではなく、左右方向に沿って折り曲げられた折曲部124dを備えている。このように、取付ブラケット124の取付面部124aを平面とするのではなく、折曲部124dを設けることにより、取付ブラケット124の剛性を向上させることができる。
【0057】
取付ブラケット124に取着された一対のリンク121の上端部同士間の距離は、下端部同士間の距離よりも大きく形成されている。その結果、一対の取付ブラケット124間の距離もまた大きく確保することができるため、シートクッション10を安定して支持することができる。
【0058】
リンク121は、長手方向の中間部に第1の折曲部121cが形成されている。第1の折曲部121cは、リンク121の上端部が左右方向に拡大するように上面視Z字状に折曲されている。この構成により、対になって配設されるリンク121は、上端部間の距離が下端部間の距離よりも大きくなる。
【0059】
また、リンク121には、第1の折曲部121cに連続して形成された第2の折曲部121dが備えられている。このように、第1の折曲部121cだけでなく、第2の折曲部121dを備え、さらに第1の折曲部121cと第2の折曲部121dとが連設されることにより、リンク121の剛性が向上する。
また、第1の折曲部121cと、第2の折曲部121dとが交差するように連続して形成されているため、リンク121の剛性をさらに向上させることができる。
【0060】
さらに、図15に示すように、リンク121の下端部(回動軸126Aの近傍)には、補強用カラー121eが一体に形成されており、回動軸126A近傍が補強されているため、リンク121が安定して回動することが可能である。さらに、この補強用カラー121eの左右方向(シート幅方向)の外側においてベースブラケット127が備えられている。なお、ベースブラケット127の構成は、後述する。
【0061】
一対のリンク121間の距離は、シートバック20の上方に備えられたヘッドレスト30の幅よりも大きく形成されている。また、リンク121の第1の折曲部121cからリンク121の下端部までの距離は、ヘッドレスト30の厚みよりも大きく形成されている。
上記構成により、車両用シートS11を収納状態とするとき、ヘッドレスト30をリンク121の間に収納することが可能となるため、車両用シートS11をコンパクトに収納することが可能となる。
【0062】
一対のパイプロッド122の各々は、前後方向においてリンク121と略平行に並べて配置される長尺体であり、その下端部に形成された通し穴(不図示)に回動軸126Bが嵌合することにより、リンク121の回動方向と同じ方向に回動可能に支持されている。また、各パイプロッド122の上端部には取付ブラケット124がピン止めされている。つまり、本実施形態では、シートクッション10が取付ブラケット124を介して一対のリンク121及び一対のパイプロッド122に支持されることになる。そして、各パイプロッド122は、リンク121の回動に従動して、リンク121の回動方向と同一方向に回動することになる。
【0063】
シートクッション10が着座姿勢にあるとき(すなわち、図10の状態のとき)、取付ブラケット124に固定されるパイプロッド122の端部は、取付ブラケット124に固定されるリンク121の端部よりも前方に配置されている。このように、剛性の高いリンク121をより後方側に配設することにより、シートクッション10を着座姿勢に復帰させる際、リンク121及びパイプロッド122を安定して回転させることが可能である。
【0064】
パイプロッド122は、リンク121と略平行に配設される部材であるが、リンク121よりも短く形成されている。そして、リンク121の回動軸126Aと、パイプロッド122の回動軸126Bとが前後方向に並んで略等しい高さで組みつけられることにより、シートクッション10を収納する際、リンク121及びパイプロッド122が安定して回動可能である。
【0065】
また、パイプロッド122は主として金属製の線状部材または管状部材によって構成される。管状部材によってパイプロッド122を形成すると、剛性が向上するため好ましい。なお、パイプロッド122の両端部は、押圧して偏平形状とすることにより、他の部材との固定が容易になる。このように、パイプロッド122を線状部材や管状部材によって構成することにより、安価に製造可能である。また、パイプロッド122の構成が簡素化されるため、製造工程が煩雑になることがなく、好適である。
【0066】
さらに、パイプロッド122はその一部が湾曲して形成されている。そして、その湾曲方向はリンク121が配設された側とは反対側に膨出するように形成されている。この構成により、着座位置から跳ね上げ位置までの可動範囲内において、リンク121とパイプロッド122との接触を避けることができる。その結果、より安定してリンク121とパイプロッド122とを回動させることができる。
【0067】
パイプロッド122は、シートクッション10の収納時において、連結バー123よりも下方に配置されている。より詳細には、取付ブラケット124に取着されたパイプロッド122の端部は、連結バー123よりも下方に配置される。このように、パイプロッド122を連結バー123の下方に配設することにより、シートクッション10の収納時、パイプロッド122の周辺が大型化することなく、好適である。
【0068】
さらに、一対のリンク121及びパイプロッド122のうち、車両1の外に面する側のリンク121及びパイプロッド122に取り付けられた取付ブラケット124の下面(より詳細には、取付面部124aに形成された折曲部124d)には、前述したストライカロック機構100のストライカ105が取り付けられている。そして、リンク121及びパイプロッド122が回動軸126A,126Bから見て後方に倒れるように回動すると、上記のストライカ105が、取付板111(より具体的には第1板部112)に設けられたロック部101のロック片102に係合可能な位置に到達することになる。
【0069】
ストライカ105は、側面フランジ部124bのリンク121とパイプロッド122が取着された面に対し、反対側に取着されている。そして、側面フランジ部124bの左右方向(シート幅方向)内側にリンク121とパイプロッド122が固定されており、側面フランジ部124bの左右方向(シート幅方向)外側にストライカ105が取り付けられている。このように、ストライカ105が左右方向(シート幅方向)外側に備えられているため、リンク121及びパイプロッド122に対してストライカ105が干渉することがない。さらに、リンク121及びパイプロッド122に対してストライカ105が外側に備えられているため、シート幅方向を構成する一対のリンク121間の距離、及び一対のパイプロッド122間の距離が大きくなることがなく、好適である。
【0070】
ストライカ105は、水平方向に延在するように折曲され、ロック片102に係合するフック部105aと、フック部105aの両端から取付ブラケット124側に延設され、取付ブラケット124に取着される取着部105bとを備えている。そして、フック部105aは、取付ブラケット124(より詳細には、側面フランジ部124b)に取着されたリンク121の端部と、パイプロッド122の端部との間に配設されている。
【0071】
このように、ストライカ105のフック部105aが、回動可能に取着されたリンク121の端部とパイプロッド122の端部との間に配設されるため、乗員がシートクッション10に着座した際、安定してその着座荷重を受け止めることができる。
【0072】
また、ストライカ105の取着部105bが取付ブラケット124の折曲部124dに固定されている。より詳細には、ストライカ105の取着部105bの端部(上端)は、取付ブラケット124の折曲部124dに溶接等の手法により固着される。したがって、ストライカ105の取着部105bが剛性の高い折曲部124dに固定されるため、乗員の着座荷重に対する剛性がさらに向上する。なお、取付ブラケット124に固着される取着部105bの端部は、取付ブラケット124に沿うように屈曲され、この屈曲された部分が取付ブラケット124の折曲部124dに固定されると好ましい。
【0073】
(支持機構125の構成)
一対の支持機構125の各々は、リンク121及びパイプロッド122を回動可能に支持するものであり、その下方には、第2板部113が備えられている。支持機構125は、図4、図10、図11に示すように、前述の回動軸126A,126Bの他、ベースブラケット127と、渦巻きバネ128と、ダンパーゴム129とを有する。
【0074】
ベースブラケット127は、上面視で略Z字状の板金部材であり、可動ユニット120の土台をなし、取付板111の第2板部113にボルト止めされている。また、ベースブラケット127のうち、車両1の前後方向に沿って延びている部分は立ち壁部127aになっており、この立ち壁部127aに回動軸126A,126Bが固定されている。
【0075】
そして、リンク121の回動軸126Aと、パイプロッド122の回動軸126Bとは、同一水平面上に備えられている。より詳細には、回動軸126A及び回動軸126Bの軸芯(回転中心軸)が同一水平面上に備えられている(図4,図10参照)。このように、回動軸126Aと回動軸126Bとが略同一水平面上に備えられているので、高さ方向の大型化を抑制することができる。
【0076】
リンク121とパイプロッド122は、立ち壁部127aの左右方向(シート幅方向)内側に固定されている。このように、リンク121とパイプロッド122を立ち壁部127aの内側に取着することにより、リンク121及びパイプロッド122を外力から保護することができる。また、車両用シートS11のシート幅方向の大きさを大型化することなく、好適である。
【0077】
また、ベースブラケット127は、第2板部113(車体フロア2)に固定される固定部127bもまた備えており、立ち壁部127aは、固定部127bから略垂直に折曲して形成されている。
【0078】
固定部127bは、立ち壁部127aを介して二箇所に備えられており、それぞれの固定部127bはボルト等の係止手段によって第2板部113(車体フロア2)に固定される。このとき、係止手段は対角線上に配置され、その対角線上にリンク121の回動軸127Aが配置されるように形成されている。このような構成とすることにより、リンク121を安定して回転させることが可能である。
【0079】
さらに、一方の固定部127bに締結された係止手段は、上記のサブマリンブラケット115の一対の立設部115aのうち、前方に配設された立設部115aと略同一線上に取着されている。より詳細には、前方に配設された立設部115aと第2板部113との接合点と、固定部127bに締結された係止手段とが略同一線上に配設されている。そして、立設部115aの接合点と、係止手段とを通る直線は、リンク121の延在方向に対して略垂直となるように構成されている(図15参照)。
【0080】
また、他方の固定部127bに締結された係止手段は、サブマリンブラケット115の一対の立設部115aのうち、後方に配設された立設部115aと略同一線上に取着されている。より詳細には、後方に配設された立設部115aと第2板部113との接合点と、固定部127bに締結された係止手段とが略同一線上に配設されている。そして、立設部115aの接合点(接合部分)と、係止手段とを通る直線は、リンク121の延在方向に対して略垂直となるように構成されている。
【0081】
このように、サブマリンブラケット115の立設部115aと、ベースブラケット127を固定する係止手段とが同一直線状に係止されていることにより、左右に離間して配設された一対のベースブラケット127間の第2板部113が補強されるため、荷重に対する剛性を向上させることができる。
【0082】
また、ベースブラケット127は、渦巻きバネ128と前後方向において略重なる位置に配設されている。このように、ベースブラケット127と渦巻きバネ128とが高さ方向において重ならない構成であるので、支持機構125をコンパクト化することができる。
【0083】
渦巻きバネ128は、図15に示すように、開口部113aの上方に備えられている。換言すると、開口部113aは、渦巻きバネ128と上下方向に対向する位置に備えられている。このような構成とすることにより、渦巻きバネ128と第2板部113とが接触(緩衝)することなく、高さ方向において、渦巻きバネ128を第2板部113に対して接近させることができる。したがって、渦巻きバネ128の取り付け高さが大きくなることがなく、好適である。
さらに、開口部113a内に渦巻きバネ128を配置してもよい。渦巻きバネ128を開口部113a内に配設すると、渦巻きバネ128が取り付けられる部分が高さ方向においてさらにコンパクト化されるため、好適である。
【0084】
また、第2板部113において開口部113aを形成することにより、渦巻きバネ128と第2板部113との接触を避けることができる。その結果、渦巻きバネ128と第2板部113とが接触することにより生じる異音の発生を防止することが可能であり、好適である。
【0085】
ダンパーゴム129は、リンク121が渦巻きバネ128の付勢力により前方に回動して前方限界位置に至った際にリンク121の前端と当接して、リンク121に生じる衝撃を吸収するものである。ダンパーゴム129は、リンク121の、回動支点となる部位よりも幾分前方に位置するように、前述のベースブラケット127に固定されている。
【0086】
なお、本実施形態では、ダンパーゴム129へのリンク121の当接(衝突)によるダンパーゴム129の切損を防止するため、リンク121の長手方向において、ダンパーゴム129に当接する位置にある部分(以下、当接部位121a)を折り曲げて、板厚を大きくし、ダンパーゴム129に対して当接する面積を大きく確保している。したがって、当接部位121aをダンパーゴム129に対して安定して接触させることができる。また、当接部位121aを折り曲げることにより、前端に丸みを帯びさせることができるため、ダンパーゴム129に当接部位121aが当接した際、ダンパーゴム129が損傷することを防止することができる。
【0087】
一対の支持機構125のうち、車両1の外側に位置する支持機構125には、渦巻きバネ128が備えてられている。渦巻きバネ128は、リンク121を前方に倒すように付勢する付勢部材である。渦巻きバネ128の一端部は、回動軸126Aに係止されており、他端部は、リンク121が後側に倒れている状態(換言すると、シートクッション10が跳ね上がる前の状態)では、リンク121の側表面から突出した突出部(不図示)に係止される。
【0088】
上記の構成により、シートクッション10は、ストライカ105とロック片102とが係合した状態にある際には、リンク121を介して渦巻きバネ128の付勢力を受けながらも(換言すると、渦巻きバネ128の付勢力に抗して)着座位置に保持されるようになる。一方で、ストライカ105とロック片102との係合が解除されると、渦巻きバネ128の付勢力により、リンク121が前方に回動する結果、シートクッション10が跳ね上げ位置に向けて跳ね上がるようになる。
【0089】
なお、図4、図10、図11に示すケースでは、一対のリンク121のうち、一方のみに対して渦巻きバネ128を設けることとしたが、これに限定されるものではなく、両方のリンク121に対して、それぞれ、渦巻きバネ128を設ける構成であってもよい。
【0090】
さらに、本実施形態では、一方のリンク121(車両1の外側に位置する方のリンク121)の長手方向中途位置には、差込孔121bが形成されており、当該差込孔121bにケーブルCの一端部が差し込まれている。このケーブルCの他端部は、アレンジユニット80に接続されている。したがって、シートクッション10を跳ね上げるにあたって、上記のリンク121が回動をすることにより、リンク121に連結されたケーブルCが牽引され、最終的には、当該ケーブルCが接続されたアレンジユニット80では、ケーブルCの牽引力を利用してユニット各部が作動するようになる。
【0091】
<<第1板部112及び第2板部113の構成>>
着座姿勢と、前方に傾倒させた状態で収納する収納姿勢と、に切り替え可能な車両用シートS1において、シートクッション10を車体フロア2に取り付ける構成に関し、図10,図11,図13乃至図16を参照して、以下、説明する。
【0092】
上記取付板111は、取付部材としての第1板部112と、第1板部112と重ねられて配設される固定部材としての第2板部113を備え、上記車体フロア2に対して組み付けられる。また、車体フロア2側に予め備えられた係止部材としてのボルトBo及びワッシャWsと、第1板部112に形成された係止部としての取付穴114とが係合し、ボルトBoが締結されることにより、第1板部112が車体フロア2に固定される。
【0093】
第1板部112はリンク121の延在方向に沿って配設されており、第1板部112の前端部は、第2板部113の端部と重なるようにして配設され、上面視L字状で車体フロア2に固定される。そして、シートクッション10を着座姿勢としたとき、第1板部112はリンク121よりも後方へ延設されている。すなわち、第1板部112は、リンク121よりも長く形成されており、リンク121の上端に取着された取付ブラケット124及び連結バー123より後方に延設されている。
【0094】
このように、前後方向に延設された第1板部112を、リンク121よりも後方まで延設し、第1板部112及び第2板部113からなる取付板111が、リンク121に対して大きくなるように形成されている。上面視L字状で車体フロア2に固定された取付板111には、その上方に可動ユニット120が備えられているため、取付板111が備えられていない側(すなわち、図16において太線で示す矢印の方向)へ傾倒しやすくなるが、第1板部112の長さを大きく確保することにより、取付板111の上方に備えられた可動ユニット120(取付ユニット110も含む)が傾倒するのを防止することができる。
その結果、シートクッション10が傾倒しやすくなるのを防止することができるため、乗員の荷重に対し、支持剛性が向上する。
【0095】
また、第1板部112の一端(前方端部)は、第2板部113の一端の下方に配設され、車体フロア2と第2板部113とに挟まれる位置に配設される。このように、第1板部112の前方端部を第2板部113によって下方へ押圧する構成とすることにより、第1板部112の前方端部が上方に持ち上がるのを防止することができ、それにより、リンク121、パイプロッド122等の部材が図16の太線矢印方向へ傾く(傾倒する)のを防止することができる。
【0096】
なお、第2板部113には、下方に突出するボス状部位(膨出部)113cが複数備えられており、係止手段によってボス状部位113cが車体フロア2に対して固定される。このとき、ボス状部位113c以外の部分(平面部)は、車体フロア2からボス状部位113cの分だけ離間した構成となるため、この離間した空間に第1板部112を嵌合させて取着することができる。
その結果、第1板部112及び第2板部113の取着構成をコンパクト化することができる。
【0097】
また、第1板部112は、一対のリンク121のうち、一方のリンク121(より詳細には、シート幅方向外側に備えられたリンク121)の下方に備えられている。このとき、リンク121は、第1板部112の左右方向(シート幅方向)の両端部(内側端部及び外側端部)の間に収まるように配設されている。
【0098】
このように、一対のリンク121のうち、一方のリンク121を第1板部112の上方に配設することにより、リンク121が安定して車体フロア2に固定され、取付ユニット110及び可動ユニット120を傾倒させにくくすることができる。
【0099】
さらに、第1板部112の前端部(第2板部113と重ねられる部分)は、完全な矩形状ではなく、一部が切り欠かれた構成である。より詳細には、第1板部112は、シート幅方向内側の縁端及び前端が切り欠かれており、この切り欠かれた部分において、渦巻きバネ128が取着される。そして、図15に示すように、渦巻きバネ128が取着される部分において、第2板部113もまた開口部113aを備えているため、渦巻きバネ128が車体フロア2に対してより近い部分に配設される。したがって、渦巻きバネ128の取着部分が高さ方向において大型化するのを抑制することができる。
【0100】
そして、渦巻きバネ128のシート幅方向外側において第1板部112の前端部が配設され、さらに第1板部112の前端部が第2板部113によって下方に押圧されるため、取付ユニット110が安定して車体フロア2に固定され、シートクッション10を支持する可動ユニット120をさらに傾倒させにくくすることができる。
【0101】
第1板部112の後方に形成された取付穴114は、第1板部112の後端部に形成された長孔であり、その長軸方向は、第1板部112の長手方向に沿って形成されている。
そして、取付穴114は、図13に示すように、その長手方向の中間部114bが、前端部114aや後端部114cに比して幾分幅広となっている。さらに詳細には、前端部114aの幅(図13中のaで示される幅)が最も小さく、次に後端部114cの幅(図13中のcで示される幅)、さらに中間部114bの幅(図13中のbで示される幅)の順に次第に大きくなるように取付穴114が形成されている。
【0102】
この最も幅が大きい中間部114bは、その内部にワッシャWsが挿通可能な程度の幅を備えるように形成されている。また、後端部114cの幅は、ボルトBoの頭部が挿通可能なように形成されている。さらに、前端部114aの幅は、ボルトBoの軸部が挿通可能であって、且つワッシャWs及びボルトBoの頭部が挿通不可能となるような幅で形成されている。
【0103】
したがって、取付穴114を、内部の幅が均一に形成された長孔とする場合よりも、上記のように内部の幅が異なる構成とすることにより、ボルトBoやワッシャWsを挿通させることが可能となると共に、ボルトBo及びワッシャWsと、車体フロア2との間で取付穴114(第1板部112)を挟んで係止することが可能となる。その結果、車体フロア2に対して第1板部112の組み付けを容易に行うことが可能となる。
【0104】
そして、上記取付穴114の少なくとも一部は、図14に示すように、車体フロア2に当接して取り付けられる取付面部112dから立ち上がるように折曲して形成された斜面部112eに形成されている。より詳細には、取付穴114のうち、最も幅広に形成された中間部114bが斜面部112eに重なるように形成されている。なお、斜面部112eよりもさらに後方側に延設された水平部112fは、略水平な平面となるように形成されている。
【0105】
このように、中間部114bが斜面部112eにかかるように形成されていることにより、車体フロア2から略垂直に上方へ突出したボルトBoに向かって第1板部112を車体フロア2上でスライドさせることにより、取付穴114とボルトBoを係合させることができる。
【0106】
そして、前端部114aは、取付面部112dにおいて形成されており、この前端部114aの適当な位置にボルトBoの軸部を挿通して締結することにより、車体フロア2に第1板部112が取着される。
【0107】
従来技術では、車体フロア2に予め形成されているボルト穴に対して、略円形の穴が設けられたブラケットを介して車両用シートS11(S1)を取り付ける技術が多く用いられていた。そして、このとき、車両用シートS11(S1)は重量物であるため、車体フロア2の組み付け位置に正確に載置することが難しく、取付作業を容易に行うことができないという問題点があった。
【0108】
しかし、本発明の車両用シートS11(S1)の取付構造によれば、一度、車体フロア2上に取り付けられたボルトBo及びワッシャWsに対して取付穴114を挿通させた状態で取付板111(第1板部112)を載置してからスライドさせて位置調整が可能となる。その結果、容易に車両用シートS11(S1)の組み付け作業を行うことが可能となる。
【0109】
なお、第1板部112の上方には、予めシートクッション10(さらに、取付ユニット110及び可動ユニット120)が取着されているため、ボルトBoの締結前(車体フロア2に第1板部112を載置しただけの状態において)は、第1板部112はシートクッション10の荷重によって、前方に傾倒しやすい構成となっている。したがって、車体フロア2側に取着されたボルトBoが、取付穴114の前端部114aに挿通して係合することにより、第1板部112の前方への傾倒を防止することができ、その結果、車体フロア2に対して容易に位置決めや組み付け作業を行うことが可能である。
【0110】
さらに、第1板部112は、その側方(より詳細には、取付穴114が形成された部分の側方)において、上方に折曲されたフランジ112gを備えている。
このように、取付穴114の近傍にフランジ112gを設けることにより、取付穴114の近傍の剛性が低下することなく、好適である。
【0111】
また、第1板部112において、フランジ112gだけでなく、取付面部112d、斜面部112eを備えることにより、第1板部112は凹凸を備える構成となるため、第1板部112の外力に対する剛性が向上する。その結果、車体フロア2に組み付ける際、高い剛性を備えることができる。
【0112】
さらに、第1板部112において、取付穴114が形成された部分(後端部)の幅は、他の部分(具体的には、取付面部112d)よりも幅広に形成されている。そして、当該部分には、ケーブルC等を取着するためのクリップ等が挿通可能な取着孔112hが複数形成されている。
【0113】
このように、取付穴114が形成された部分の第1板部112の幅を広く形成することにより、取付穴114によって第1板部112の剛性が低下することを防止する。
さらに、幅広に形成した部分(主として水平部112f)に取着孔112hを備えることにより、車両用シートS11において備えられる他の部材(例えば、ケーブルC)の組み付けを行うことができる。したがって、第1板部112の後端部に取付穴114を設け、その部分を幅広に形成することにより、取付穴114に起因する剛性の低下を防止するだけでなく、その他の部材の配設を好適に行うことができる。
【0114】
さらにまた、第1板部112には、斜面部112eが備えられているが、さらに後方の水平部112fは車体フロア2から離間して略水平に延設されている。したがって、第1板部112の斜面部112eよりもさらに後方側(水平部112f)は、車体フロア2に対して所定距離離間して配設されているため、クリップ等のその他の部材を配設する空間が確保されている。したがって、第1板部112の後端部において、取着孔112hを形成すると、斜面部112eにより水平部112fと車体フロア2との間に形成される空間が有効に活用されるため好ましい。
【0115】
(第1実施形態)
以下、図16を参照して第1板部112、第2板部113、連結バー123の構成に関し、第1実施形態について説明する。なお、平面視の状態(図16)において、第1板部112の取付面部112dの後端部のシート幅方向内側(図16の右側)の頂点を第1の頂点112iとし、第2板部113の、第1板部112が重ねられていない(交差していない)側の端部における後端部(後方の頂点)を第2の頂点113bとする。なお、第1の頂点112i及び第2の頂点113bは、乗員の着座時、第1板部112と第2板部113のそれぞれにおいて、最も荷重が加わりやすい点である。
【0116】
第1実施形態において、第1板部112と第2板部113は、それぞれ略矩形状に形成されている。そして、第1の頂点112i及び第2の頂点113bを結ぶ仮想線(図16において線X)と、連結バー123(より詳細には、連結バー123の中心軸)との交点P1よりも、連結バー123の延在方向の中心部P2が第1板部112に対して近い位置に配置される。すなわち、交点P1は、中心部P2よりも第2板部113の第1板部112が重ねられていない側の端部側に配置されている。さらに換言すると、交点P1は、中心部P2よりも第2の頂点113b側に備えられている。
【0117】
このように、乗員の着座時に最も荷重が係る位置である連結バー123の中心部P2よりも、交点P1が取付板111(第1板部112)に対して遠い位置に配置されることで、シートクッション10の荷重バランスが取りやすくなり、可動ユニット120が傾倒しにくくすることができる。
すなわち、シートクッション10を支持する一対の取付ブラケット124の中間点(中心部P2)を、交点P1よりも第1板部112側に配設することにより、シートクッション10に加わる乗員の荷重を支持しやすくなる。
【0118】
(第2実施形態)
さらに、図17を参照して第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第2板部113が略矩形状に形成された第1実施形態と異なり、第2板部213が平面視L字状に形成されている点を特徴とする。また、これ以外の点(部材形状、部材配置)は、上記第1実施形態と共通であるため、その説明を省略する。
【0119】
第2板部213は、第1板部112と重ねられた端部と反対側の端部において、後方側に延設された延設部213aを備えている。延設部213aは、第1板部112の延在方向に対して平行に延設されており、平面状の板材によって構成されている。延設部213aの前後方向の長さは、第1板部112の前後方向の長さに対して略半分となるように形成されている。
【0120】
そして、上記第1実施形態と同じく、第1の頂点112i及び第2の頂点213b(第2の頂点213bとは、延設部213aの後端部であって、シート幅方向外側の頂点を指すものである)を結ぶ仮想線(図17において線X)と、連結バー123との交点P1よりも、連結バー123の延在方向の中心部P2が第1板部112に対して近い位置に配置される。すなわち、交点P1は、中心部P2よりも第2板部213の第1板部112が重ねられていない側の端部側に配置されている。さらに換言すると、交点P1は、中心部P2よりも第2の頂点213b側に備えられている。
【0121】
このように、第2板部213に延設部213aを備えることにより、車体フロア2に固定される部分(すなわち、第1板部112、第2板部213、延設部213aが車体フロア2に当接する面積)が第1実施形態と比較して大きく形成され、交点P1が第1板部112から遠ざかるため、より安定性が向上し、上方に備えられる可動ユニット120が傾倒しにくくなる。
【0122】
なお、図17においては、延設部213aが、シート幅方向に延在する第2板部213と一体に形成された構成を図示しているが、別体で構成されていても良い。延設部213aが第2板部213と別体で形成される場合は、延設部213aの一端がシート幅方向に延設された第2板部213の下方に配設される構成とすると良い(後述の第3実施形態参照)。このように、第2板部213と車体フロア2との間に延設部213aが挟まれる構成とすると、第2板部213の他端側の下方にもまた第1板部112が配設されているため、第2板部213が水平に配設されやすくなるため、安定させることができる。
【0123】
(第3実施形態)
以下、図18を参照して第3実施形態について説明する。第3実施形態は、略矩形状の第1板部112と第2板部113が組み合わされて平面視L字状に形成された第1実施形態と異なり、さらに第3板部116を備えていることを特徴とする。また、これ以外の点(部材形状、部材配置)は、上記第1実施形態と共通であるため、その説明を省略する。
【0124】
第3板部116は、第1板部112と略平行に延設されており、第1板部112と略等しい長さに形成されている。そして、略矩形状に形成された第2板部113の両端部において、互いに略同じ幅で形成された第1板部112、第3板部116がそれぞれ重ねられて配設されている。したがって、第1板部112、第2板部113、第3板部116が組み合わされることにより、平面視略コ字状に形成されている。
【0125】
第3板部116は、第1板部112と同じく、前端部が第2板部113の下方に配設され、第2板部113が略水平に保持された構成とすると好ましいが、第3板部116と第2板部113とを一体に形成しても良い。一体に形成した場合は、部品点数が少なくなるため、組み付け性が向上する。
【0126】
このように、第1板部112、第2板部113、第3板部116を組み合わせることにより、左右方向(シート幅方向)において対称な平面視略コ字状に形成されるため、第1板部112、第2板部113、第3板部116の上方に配設されるリンク121、パイプロッド122等を安定して保持することができる。
【0127】
(第4実施形態)
さらに、図19を参照して第4実施形態について説明する。第4実施形態は、略矩形状の第1板部112と第2板部113が組み合わされて平面視L字状に形成された第1実施形態に加えて、さらに第1板部112と第2板部113の各端部を連結する連結フレーム117を備えていることを特徴とする。また、これ以外の点(部材形状、部材配置)は、上記第1実施形態と共通であるため、その説明を省略する。
【0128】
連結フレーム117は、上記第1実施形態の第1の頂点112iと第2の頂点113bとの間を連結する部材であり、第1板部112及び第2板部113の剛性を向上させるために備えられている。連結フレーム117は、第1板部112の後端部と、第2板部113の第1板部112が重ねられた端部に対して反対側の端部との間に架設されている。
【0129】
連結フレーム117は、金属製や樹脂性等の長尺部材であり、図20に示すように、底面117a及び側壁117bを備えた断面コ字状の板材によって形成されている。そして、底面117aには、連結フレーム117の剛性を向上させるため、延在方向に沿ってビード117cが形成されている。
【0130】
さらに、底面117aには、ビード117cの延在方向に沿って、凹溝117dが複数形成されている。このように、連結フレーム117の底面117aに凹凸形状を形成することにより、連結フレーム117の合成を向上させることができる。なお、連結フレーム117の剛性を向上させるために、連結フレーム117をモナカ構造(閉断面構造)としても良い。
【0131】
連結フレーム117は、第1板部112及び第2板部113に架設される際、底面117aを下方に向けて配設される。そして、底面117aの両端部が第1板部112及び第2板部113(さらには、車体フロア2)に対してそれぞれ係止手段によって固定される。
【0132】
このように、平面視略L字状に配設された第1板部112及び第2板部113の各端部を連結フレーム117で連結することにより、全体として平面視略三角形状となり、取付ユニット110の剛性がさらに向上する。そして、取付ユニット110の剛性が向上することにより、車体フロア2に対して取付ユニット110が強固に固定される。したがって、取付ユニット110の上方に備えられる可動ユニット120が傾倒するのを抑制することが可能となる。
【0133】
(第5実施形態)
さらに、図21を参照して第5実施形態について説明する。第5実施形態は、略矩形状の第1板部112と略L字状の第2板部213が組み合わされた第2実施形態に加えて、さらに第1板部112と第2板部213の各端部を連結する連結フレーム117を備えていることを特徴とする。なお、これら以外の点(部材形状、部材配置)は、上記の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0134】
連結フレーム117は、第1の頂点112i及び第2の頂点213bとの間を連結するように配設されている。より詳細には、連結フレーム117は、第1板部112の後端部と、延設部213aの後端部との間に架設されている。この構成により、第1板部112及び第2板部213の剛性を向上させることができる。
【0135】
このように、第1板部112と延設部213aの間に連結フレーム117が架設されることにより、全体として平面視略台形状となり、第1板部112と延設部213aの剛性をさらに向上させることができる。したがって、取付ユニット110が車体フロア2に対して強固に取着され、その結果、可動ユニット120が傾倒するのを防止することができる。
【0136】
(第6実施形態)
さらにまた、図22を参照して第6実施形態について説明する。第6実施形態は、略矩形状の第1板部112、第2板部113、第3板部116が組み合わされた第3実施形態に加えて、さらに第1板部112と第3板部116の各端部を連結する連結フレーム117を備えていることを特徴とする。なお、これら以外の点(部材形状、部材配置)は、上記の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0137】
連結フレーム117は、第1板部112と第3板部116の各後端部との間を連結するように配設されている。換言すると、連結フレーム117は、第2板部113及び連結バー123の延在方向と略平行に備えられている。より詳細には、連結フレーム117は、第1板部112の後端部と、第3板部116の後端部との間に架設されている。この構成により、第1板部112、第2板部113、第3板部116の剛性を向上させることができる。
【0138】
このように、第1板部112と第3板部116の間に連結フレーム117が架設されることにより、取付ユニット110が全体として平面視略矩形状となり、第1板部112と第3板部116の剛性をさらに向上させることができる。したがって、取付ユニット110が車体フロア2に対して強固に取着され、その結果、可動ユニット120が傾倒するのを防止することができる。
【符号の説明】
【0139】
1 車両、2 車体フロア、3 荷室部
10 シートクッション、10a 張出部
11 クッションフレーム
20 シートバック、20a 台座部、20b 回動軸
21 シートバックフレーム
22 パンフレーム
23 パイプフレーム
25 ピラー倒れ規制部
30 ヘッドレスト
31 内部フレーム、31a 脚部、31b 下端フランジ部
32 ガイド、32a 下端フランジ
33 ピラー
40 アームレスト
50 ヘッドレスト回動機構
51 ケーシング
52 ロック部材
54 スライド部材,54a 長手方向一端部
60 シートクッション跳ね上げ機構
70 シートバック倒伏機構
77 操作部
80 アレンジユニット
90 シートバック支持ユニット
100 ストライカロック機構
101 ロック部
102 ロック片
103 ハウジング
104 連結片
105 ストライカ、105a フック部、105b 取着部
110 取付ユニット
111 取付板
112 第1板部(取付部材)、112a 立ち壁部、112b スリット、112c 経路規定部、112d 取付面部、112e 斜面部、112f 水平部、112g フランジ、112h 取着孔、112i 第1の頂点
113,213 第2板部(固定部材)、113a 開口部、113b,213b 第2の頂点、113c ボス状部位、213a 延設部
114 取付穴(係止部)、114a 前端部、114b 中間部、114c 後端部
115 サブマリンブラケット、115a 立設部、115b 連結部
116 第3板部
117 連結フレーム、117a 底面、117b 側壁、117c ビード、117d 凹溝
120 可動ユニット
121 リンク、121a 当接部位、121b 差込孔、121c 第1の折曲部、121d 第2の折曲部、121e 補強用カラー
122 パイプロッド(ガイド部材)
123 連結バー(連結部材)
124 取付ブラケット、124a 取付面部、124b 側面フランジ部、124c 凹部、124d 折曲部
125 支持機構
126A,126B 回動軸
127 ベースブラケット、127a 立ち壁部、127b 固定部
128 渦巻きバネ
129 ダンパーゴム
Bo ボルト(係止部材)、Ws ワッシャ(係止部材)、C ケーブル
S1,S11,S12 車両用シート
ST1,ST2 収納操作用帯状部材
P1 交点、P2 中心部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常の着座姿勢と、前方に傾倒させた状態で収納する収納姿勢と、にシートクッションを切り替え可能に形成された車両用シートの跳ね上げ機構であって、
シート幅方向に離間して前後方向に延設された長尺体からなる一対のリンクと、
該一対のリンクの端部に取着されて前記シートクッションを支持する一対の取付ブラケットと、
該一対の取付ブラケットに架設される連結部材と、
前記一対のリンクを回動自在に支持する一対の支持機構と、
該一対の支持機構の下方に配設されると共に車体フロアに係止される取付板と、を備え、
該取付板は、前記リンクよりも後方へ延設されてなることを特徴とする車両用シートの跳ね上げ機構。
【請求項2】
前記取付板は、シート幅方向に延在する固定部材と、該固定部材と一端側において重ねられると共に前記リンクの延在方向に沿って配設される取付部材とを備え、
該取付部材は、前記固定部材の一端側で重ねられると共に、前記車体フロアに当接する取付面部を有し、
該取付面部の後端部のシート幅方向内側の頂点及び前記固定部材の後端部の前記取付部材が重ねられていない側の頂点を結ぶ仮想線と、前記連結部材とが上面視で交わる点は、
前記連結部材の延在方向の中心部よりも、前記固定部材の他端側に配置されてなることを特徴とする請求項1に記載の車両用シートの跳ね上げ機構。
【請求項3】
前記一対のリンクのうち、前記取付部材が取着された側に配設されるリンクは、前記取付部材のシート幅方向の外側端部と、内側端部との間に配設されてなることを特徴とする請求項2に記載の車両用シートの跳ね上げ機構。
【請求項4】
前記取付部材の一端は、前記固定部材と前記車体フロアとの間に挟まれて配設されることを特徴とする請求項2または3に記載の車両用シートの跳ね上げ機構。
【請求項5】
前記一対の支持機構のうち少なくとも一方は、前記固定部材上に取着されて前記リンクを付勢する渦巻きバネを有し、
前記取付部材の前記固定部材と重ねられた部分は、前記渦巻きバネが取着された位置よりもシート幅方向外側に配設されてなることを特徴とする請求項4に記載の車両用シートの跳ね上げ機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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