説明

車両用シートリクライニング装置

【課題】 シートクッションに対するシートバックの傾斜角度が本来はアンロック状態となる所定の傾斜角度において当該傾斜角度をロックすることができる車両用シートリクライニング装置を提供する。
【解決手段】 車両用シートリクライニング装置は、シートバック側に取り付けられ、所定の角度範囲で内歯15b及び非ギヤ部15cを選択的に有するアッパアーム15と、シートクッション側に取り付けられ、外歯24aを有するロックプレート24を径方向にスライド可能に支持するロアアーム12とを備える。フック20及びロックピン27は、外歯24aが周方向において非ギヤ部15cに重なる状態でのシートクッションに対するシートバックの所定の傾斜角度をロックする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートリクライニング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シートクッションに対してシートバックを傾斜させるための車両用シートリクライニング装置として種々のものが提案されている(例えば特許文献1,2など)。こうした車両用シートリクライニング装置は、シートバックを乗員着座等に好適な所要の傾斜角度に調整・保持できるようにロック・アンロック機構を備えている。
【0003】
図3は、こうした車両用シートリクライニング装置が備えるロック・アンロック機構の一例を示す模式図である。このロック・アンロック機構は、シートバックフレーム側のアッパアーム91の内歯91aと、シートクッションフレーム側のロアアームに収容されたロックプレート92の外歯92aとを噛合することでシートクッション(シートクッションフレーム)に対しシートバック(シートバックフレーム)を所定の傾斜角度に保持(ロック)する。一方、ロック・アンロック機構は、操作レバーの回動操作などによりロックプレート92を径方向に後退させ、これら内歯91a及び外歯92aの噛合を解除することでシートクッションに対するシートバックの相対回動を許容(アンロック)し、シートバックを所要の傾斜角度に調整可能にする。
【0004】
なお、アッパアーム91の内歯91aは、上記傾斜角度の保持(ロック)を要する範囲に相当する所定の角度範囲で選択的に形成されており、内歯91aの形成されていない角度範囲(A)は非ギヤ部91bとなっている。そして、ロック・アンロック機構は、ロックプレート92の外歯92aの一部が周方向においてこの非ギヤ部91bに重なると、操作レバーの操作に関わらずシートクッションに対するシートバックの相対回動を許容(アンロック)する。従って、ロック・アンロック機構は、ロックプレート92の外歯92aの一部が周方向においてこの非ギヤ部91bに重なる範囲で連続的に上記傾斜角度のアンロック状態を維持するとともに、この範囲を超えることで再び同傾斜角度をロック可能にする。
【特許文献1】特開2001−17259号公報
【特許文献2】特開2000−312623号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、シートバックの傾斜角度を所定の高強度でロックするためには、前記内歯91a及び外歯92aの噛合力を確保すべく外歯92aに所定の周方向の幅(B)を設定する必要がある。従って、上記角度範囲A及びその両側に連続する幅Bに相当する角度範囲では、上述の態様で傾斜角度のアンロック状態になる。従って、シートバックのロック可能な傾斜角度の範囲を大きくすべく、このアンロック状態になる角度範囲を小さくする場合、上記角度範囲Aをどれだけ小さくしても少なくとも上記幅Bに相当する角度範囲で傾斜角度のアンロック状態を余儀なくされる。換言すれば、例えばシートバックを着座以外の所定の用途に流用すべく所定の傾斜角度に設定しようとしても、そのときの傾斜角度がアンロック状態に相当する場合には当該傾斜角度でのロックがかなわずその用途は自ずと制約されてしまう。
【0006】
本発明の目的は、シートクッションに対するシートバックの傾斜角度が本来はアンロック状態となる所定の傾斜角度において当該傾斜角度をロックすることができる車両用シートリクライニング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、シートクッション側及びシートバック側のいずれか一方に取り付けられ、所定の角度範囲で内歯及び非ギヤ部を選択的に有する第1アームと、前記シートクッション側及び前記シートバック側のいずれか他方に取り付けられ、外歯を有するロックプレートを径方向にスライド可能に支持する第2アームとを備え、前記外歯が周方向全体に亘って前記内歯に噛合することで前記第1及び第2アームの相対回動を規制して前記シートクッションに対する前記シートバックの傾斜角度をロックするとともに、前記外歯の少なくとも一部が周方向において前記非ギヤ部に重なることで前記第1及び第2アームの相対回動を許容して前記シートクッションに対する前記シートバックの傾斜角度をアンロックする車両用シートリクライニング装置において、前記外歯の少なくとも一部が周方向において前記非ギヤ部に重なる状態での前記シートクッションに対する前記シートバックの所定の傾斜角度をロックする係止手段を備えたことを要旨とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用シートリクライニング装置において、前記第2アームに回動可能に連結され、操作レバー側係合部を有する操作レバーと、前記操作レバーとは異なる回動中心で前記第2アームに回動可能に連結され、リンク側係合部を有するリンクとを備え、前記リンクは、前記操作レバーの回動操作による前記操作レバー側係合部と前記リンク側係合部との係合により回動し、前記ロックプレートを径方向に後退させて前記外歯と前記内歯との噛合を解除してなり、前記操作レバーの非操作時において、前記操作レバー側係合部と前記リンク側係合部との間に間隙が設定されていることを要旨とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の車両用シートリクライニング装置において、前記第2アームに回動可能に連結され、前記ロックプレートを径方向に後退させる操作力を伝達して前記外歯と前記内歯との噛合を解除する操作レバーを備え、前記操作力の伝達に合わせて前記係止手段による前記所定の傾斜角度のロック状態を解除する係止解除手段を備えたことを要旨とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の車両用シートリクライニング装置において、前記係止手段は、前記第1アームと一体回動するロックピンと、前記第2アームに連結され、前記所定の傾斜角度において前記ロックピンを引っ掛けるフックとを備えることを要旨とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の車両用シートリクライニング装置において、前記係止解除手段は、前記操作レバーに設けられたレバー側係合部と、前記フックに設けられ、前記操作レバーによる前記ロックプレートを径方向に後退させる操作力の伝達に合わせて前記レバー側係合部と係合して前記フックによる前記ロックピンの引っ掛けを解除するフック側係合部とを備えることを要旨とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の車両用シートリクライニング装置において、前記操作レバーの非操作時において、前記レバー側係合部と前記フック側係合部との間に間隙が設定されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0013】
以上詳述したように、請求項1に記載の発明では、前記外歯の少なくとも一部が周方向において前記非ギヤ部に重なる状態、即ち本来はアンロック状態となる前記シートクッションに対する前記シートバックの所定の傾斜角度を前記係止手段によりロックすることができる。
【0014】
請求項2に記載の発明では、前記操作レバーの非操作時において、前記操作レバー側係合部と前記リンク側係合部との間に間隙が設定されていることで、例えば製造ばらつきや組み付け誤差などが生じても、上記間隙の範囲で吸収することで、これらが直に干渉することを抑制できる。そして、前記操作レバーの非操作時において、前記操作レバー側係合部が前記外歯と前記内歯との噛合を解除する側に前記リンク側係合部と係合する、いわゆるハーフロック状態を防止することができる。
【0015】
請求項3乃至5に記載の発明では、前記操作レバーによる前記ロックプレートを径方向に後退させる操作力の伝達に合わせて、前記係止手段による前記所定の傾斜角度のロック状態が前記係止解除手段により解除される。従って、前記所定の傾斜角度のロック状態の解除時には、同時に前記外歯と前記内歯との噛合が解除される状態にあるため、前記第1及び第2アームの相対回動が許容されて前記シートクッションに対する前記シートバックの傾斜角度が調整可能となる。このように、同一の操作レバーの1回の操作で、前記所定の傾斜角度のロック状態を解除し、引き続き、前記シートバックの傾斜角度の調整へと円滑に移行することができる。
【0016】
請求項6に記載の発明では、前記操作レバーの非操作時において、前記レバー側係合部と前記フック側係合部との間に間隙が設定されていることで、例えば製造ばらつきや組み付け誤差などが生じても、上記間隙の範囲で吸収することで、これらが直に干渉することを抑制できる。そして、前記操作レバーの非操作時において、前記レバー側係合部が前記フックによる前記ロックピンの引っ掛けを解除する側に前記フック側係合部と係合する、いわゆるハーフロック状態を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1は、自動車などの車両に搭載される車両用シートリクライニング装置の骨格部を示す側面図であり、図2は便宜的に図1の一部の部材を割愛して示す側面図である。図1及び図2において右側が車両の後側に相当する。そして、シートクッションに対するシートバックの図1における延出方向を直線L1で表すと、図2はシートバックの延出方向が直線L2に一致するまでこれを後方に倒した状態に相当する。この状態は、例えばシートバックを後方に倒して後部座席のテーブルとして利用する際に設定されるものである。図1及び図2で示される骨格部は、基本的に車両用シートの幅方向で対をなして配設されており、ここでは車両の前方に向かって左側に配置された骨格部を示している。
【0018】
図1及び図2に示されるように、車両用シートリクライニング装置は、シートクッションフレーム11に固着された第2アームとしてのロアアーム12及びロアブラケット13(図1参照)と、シートバックフレーム14に固着された第1アームとしてのアッパアーム15と、同アッパアーム15に固着されたアッパブラケット16と、ロック・アンロック機構17(図2参照)と、リンク18と、操作レバー19と、フック20とを備えている。なお、シートクッションフレーム11はシートクッションの骨格をなすもので、シートバックフレーム14はシートバックの骨格をなすものである。
【0019】
前記アッパアーム15は、前記ロアアーム12にロック・アンロック機構17を介して回動可能に連結されている。後述するように、ロック・アンロック機構17は、前記ロアアーム12及びアッパアーム15の相対回動を規制する状態と許容する状態とを切り替えてシートクッション(シートクッションフレーム11)に対するシートバック(シートバックフレーム14)の傾斜角度のロック・アンロックを切り替える。
【0020】
図1に示されるように、ロアアーム12には、アッパアーム15の回動中心O1の上方において車両用シートの幅方向外側(図1において紙面に直交する手前側)に延出する円弧状の係止片12aが設けられている。一方、前記アッパブラケット16には、上記係止片16aよりも回動中心O1の外周側において車両用シートの幅方向外側に延出する円弧状の係止片16aが設けられている。そして、これら係止片12a,16aには、スパイラルスプリング21の一端及び他端がそれぞれ係止されている。このスパイラルスプリング21は内周側から外周側に向かって図示時計方向に巻回されており、従ってシートバックフレーム14を車両の後方に傾斜させてアッパブラケット16を図示時計方向に回動させることで圧縮される。このスパイラルスプリング21は、シートクッションフレーム11に対してシートバックフレーム14を図示反時計方向に回動させる付勢力を発生し、後方に倒したシートバック(シートバックフレーム14)を前方に起こすときの操作力を助勢する。
【0021】
図2に示されるように、前記アッパアーム15には、回動中心O1と同心となる有底円筒状の収容部15aが形成されている。そして、この収容部15aの内周面には、所定の角度範囲で内歯15b及び非ギヤ部15cが選択的に形成されている。この非ギヤ部15cは、内歯15bの歯先円と同等の内径を有する円周面を形成している。
【0022】
一方、前記ロアアーム12には、前記収容部15aに対向して回動中心O1と同心の相反する径方向に連通する一対のガイド溝12bが形成されている。これらロアアーム12及びアッパアーム15が組み付けられた状態では、上記ガイド溝12bの径方向に収容部15aの内周面(内歯15b若しくは非ギヤ部15c)が対向するようになっている。これら内歯15b、非ギヤ部15c及びガイド溝12bは、前記ロック・アンロック機構17の一部を構成する。
【0023】
前記ロック・アンロック機構17は、カムプレート22と、カム23と、複数(2つ)のロックプレート24と、回動中心O1にてロアアーム12に対し回動可能に連結された回動軸25とを備えている。
【0024】
前記カムプレート22は、前記回動軸25と一体回動するように連結されており、相反する径方向で対をなすカム穴22aが形成されている。このカム穴22aは周方向に対して傾斜している。前記カム23は、前記カムプレート22とともに前記回動軸25と一体回動するように連結されており、相反する径方向で対をなすカム面23aが形成されている。このカム面23aは、上記カム穴22aよりも内周側に配置されている。
【0025】
前記ロックプレート24は、前記ガイド溝12bに装着される態様でロアアーム12に支持されており、同ガイド溝12bの内側面と摺接することで径方向の移動(スライド)が案内されている。このロックプレート24の先端部には、前記アッパアーム15の内歯15bと噛み合う外歯24aが形成されている。
【0026】
また、ロックプレート24の中央部には、軸方向と平行に突出する突起24bが形成されている。上記ロックプレート24は、この突起24bが前記カムプレート22のカム穴22aに挿入されることでこれと係合する。さらに、ロックプレート24の内周側の端面は、ロックプレートカム面24cを形成している。このロックプレートカム面24cは、外歯24aのピッチ円に対して傾斜角を持つように伸びている。上記ロックプレート24は、このロックプレートカム面24cに前記カム23のカム面23aが当接することでこれと係合する。
【0027】
ここで、前記ロックプレート24の外歯24aが周方向全体に亘って前記アッパアーム15の内歯15bに噛合する状態では、ロアアーム12及びアッパアーム15の相対回動が規制されシートクッションに対するシートバックの傾斜角度がロックされるようになっている。この状態において、カムプレート22及びカム23が一側方向(図2において反時計回転方向)に回動するとき、ロックプレート24は突起24bがカムプレート22のカム穴22aに押圧されることでガイド溝12bに沿って径方向に引き込むように移動する。このとき、ロックプレート24の外歯24aとアッパアーム15の内歯15bとの噛み合いが解除されることで、ロアアーム12及びアッパアーム15の相対回動が許容される。そして、シートクッションに対するシートバックの傾斜角度が調整可能になる。
【0028】
一方、カムプレート22及びカム23が他側方向(図2において時計回転方向)に回動するとき、ロックプレート24は突起24bがカムプレート22のカム穴22aに押圧され、且つ、ロックプレートカム面24cがカム面23aに押圧されることでガイド溝12bに沿って径方向に飛び出すように移動する。このとき、前記ロックプレート24の外歯24aが周方向全体に亘って前記アッパアーム15の内歯15bに重なる場合には、これら外歯24a及び内歯15bが噛み合い、ロアアーム12及びアッパアーム15の相対回動が規制される。そして、シートクッションに対するシートバックの傾斜角度がロックされる。また、前記外歯24aの少なくとも一部が周方向において前記アッパアーム15の非ギヤ部15cに重なる場合(図2の状態)には、前記外歯24a及び内歯15bが噛み合えず、ロアアーム12及びアッパアーム15の相対回動が許容される。そして、シートクッションに対するシートバックの傾斜角度がアンロックされる。つまり、前記ロック・アンロック機構17は、前記外歯24aの少なくとも一部が周方向において前記アッパアーム15の非ギヤ部15cに重なる状態では、対応する傾斜角度でのシートバックのロックを行わない。
【0029】
なお、上記ロック・アンロック機構17は、ロックプレート24(外歯24a)を径方向に飛び出す側、即ち収容部15aの内周面(内歯15b、非ギヤ部15c)側に付勢する付勢部材(図示略)を備えている。従って、ロック・アンロック機構17は、前記ロックプレート24の外歯24aが周方向全体に亘って前記アッパアーム15の内歯15bに重なるとき、これらの噛み合いを上記付勢部材にて保持し、シートバックの対応する傾斜角度を維持する。
【0030】
前記リンク18は、上記回動軸25と一体回動するように連結されており、下方に延出するその先端部には、リンク側係合部としてのリンク側係合ピン18aが突設されている。
【0031】
前記操作レバー19は、前記回動中心O1の下部後方の回動中心O2にて前記ロアブラケット13に対し回動可能に連結されている。つまり、操作レバー19は、ロアブラケット13を介してロアアーム12に対し回動可能に連結されている。この操作レバー19は、回動中心O2の前方に配置され図示時計方向の回動において前記リンク18のリンク側係合ピン18aに対向する操作レバー側係合部としての第1押圧面19aを有している。この第1押圧面19aは、回動中心O2の径方向に沿う平坦面となっている。従って、上記操作レバー19を図示時計方向に回動操作すると、これに伴い第1押圧面19aがリンク側係合ピン18aを押圧することでリンク18が図示反時計方向に回動し、これに連動したカムプレート22及びカム23の回動等による前述の態様でシートクッションに対するシートバックの傾斜角度が調整可能になる。また、上記操作レバー19は、回動中心O2の後方に配置されたレバー側係合部としての第2押圧面19bを有している。この第2押圧面19bは、回動中心O2の径方向に突出する突出面となっている。
【0032】
なお、上記操作レバー19は、図示しない付勢部材にてその回動位置が保持されており、当該位置において前記第1押圧面19aとリンク側係合ピン18aとの間に間隙C1が設定されている。従って、通常(操作レバー19の非操作時)は、操作レバー19がリンク18と干渉することはない。
【0033】
前記フック20は、回動中心O2にて前記ロアブラケット13に対し回動可能に連結されている。つまり、フック20は、ロアブラケット13を介してロアアーム12に対し回動可能に連結されている。このフック20は回動中心O2の後方に延出しており、一端が前記ロアブラケット13に係止されたコイルスプリング26の他端が係止されることで図示反時計方向に回動する側に付勢されている。なお、上記フック20は、図示しない規制手段にて当該方向への回動が規制されて、その回動位置が位置決めされている。そして、上記フック20の先端面は、回動中心O1の周方向に対して傾斜するガイド面20aを形成している。また、上記フック20は、このガイド面20aに連続して回動中心O2の周方向一側(図1の右側)に凹設された係止溝20bを有している。
【0034】
ここで、前記アッパブラケット16には、回動中心O1の周方向一側(図1の右側)にロックピン27が突設されている。このロックピン27は、前記フック20の位置決めされた回動位置で、回動中心O1の周方向において前記ガイド面20a及び前記係止溝20bの略最深部が対向している。従って、前記ロアアーム12に対してアッパブラケット16とともに前記アッパアーム15が図示時計方向に回動すると、前記ロックピン27はガイド面20aを押圧し、コイルスプリング26に抗してフック20を図示時計方向に回動させる。そして、ロックピン27がガイド面20aに沿ってその先端に到達すると、コイルスプリング26が弾性復帰することで同ロックピン27は係止溝20bに嵌入してフック20に係止される(引っ掛かる)。そして、ロアアーム12及びアッパアーム15の相対回動が規制され、シートクッションに対するシートバックの所定の傾斜角度(シートバックの延出方向が直線L2に一致する図2で示した傾斜角度)がロックされる。
【0035】
図2に示されるように、ロックピン27がフック20に係止される状態では、前記外歯24aが周方向において前記アッパアーム15の非ギヤ部15cに重なっている。つまり、前記ロックピン27及びフック20は、前記ロック・アンロック機構17においてシートクッションに対するシートバックの傾斜角度がアンロックされる状態での所定の傾斜角度をロックする。
【0036】
なお、上記フック20は、回動中心O2の周方向一側において前記第2押圧面19bが対向するフック側係合部としてのフック側係合ピン20cを有している。従って、前記操作レバー19を図示時計方向に回動操作すると、これに伴い第2押圧面19bがフック側係合ピン20cを押圧することでフック20が図示時計方向に回動し、係止溝20bがロックピン27から外れてフック20によるロックピン27の係止(引っ掛け)が解除される。このとき、前記ロック・アンロック機構17において、シートクッションに対するシートバックの傾斜角度がアンロックの状態にあることから、当該傾斜角度が調整等が併せて可能になる。
【0037】
ちなみに、上記操作レバー19が保持される前述の回動位置においては、前記第2押圧面19bとフック側係合ピン20cとの間に間隙C2が設定されている。従って、通常(操作レバー19の非操作時)は、操作レバー19がフック20と干渉することはない。
【0038】
次に、車両用シートリクライニング装置の動作を総括して説明する。まず、前記ロックプレート24の外歯24aが周方向全体に亘って前記アッパアーム15の内歯15bに噛合しており、シートクッションに対するシートバックの傾斜角度がロックされる状態にあるとする。この状態において、前記操作レバー19を図示時計方向に回動操作すると、これに伴い第1押圧面19aがリンク側係合ピン18aを押圧することでリンク18が図示反時計方向に回動する。そして、前記カムプレート22及びカム23が回動軸25を介してリンク18と一体回動することで、ロックプレート24はガイド溝12bに沿って径方向に引き込むように移動(スライド)する。このとき、ロックプレート24の外歯24aとアッパアーム15の内歯15bとの噛み合いが解除され、シートクッションに対するシートバックの傾斜角度が調整可能になる。
【0039】
この状態で所要の傾斜角度の調整を行った後、前記操作レバー19の操作力を解放すると、ロックプレート24(外歯24a)は径方向に飛び出す側、即ち収容部15aの内周面(内歯15b、非ギヤ部15c)側に付勢されて移動(スライド)する。このとき、前記ロックプレート24の外歯24aが再び周方向全体に亘って前記アッパアーム15の内歯15bに噛合すれば、そのときの傾斜角度がロックされる。一方、前記外歯24aの少なくとも一部が周方向において前記アッパアーム15の非ギヤ部15cに重なる場合には、前記外歯24a及び内歯15bが噛み合えず、シートクッションに対するシートバックの傾斜角度がアンロックされる。つまり、この状態では、基本的にシートクッションに対してシートバックが回動(傾斜)自在となる。
【0040】
ただし、この状態でシートバックを後方に傾斜させていくと、前記アッパブラケット16に設けられたロックピン27は、コイルスプリング26に抗してガイド面20aを押圧しつつ係止溝20bに嵌入してフック20に係止される。このとき、ロアアーム12及びアッパアーム15の相対回動が規制され、このときのシートクッションに対するシートバックの所定の傾斜角度(シートバックの延出方向が直線L2に一致する図2で示した傾斜角度)がロックされる。
【0041】
また、この状態において、前記操作レバー19を図示時計方向に回動操作すると、これに伴い第2押圧面19bがフック側係合ピン20cを押圧することでフック20が図示時計方向に回動する。このとき、フック20によるロックピン27の係止が解除される。同時に、前記ロック・アンロック機構17においてシートクッションに対するシートバックの傾斜角度がアンロック状態にあることから、引き続き、上記傾斜角度の調整等が可能になる。
【0042】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、前記外歯24aの少なくとも一部が周方向において前記非ギヤ部15cに重なる状態、即ち本来はアンロック状態となる前記シートクッションに対する前記シートバックの所定の傾斜角度を前記フック20及びロックピン27によりロックすることができる。従って、例えば前記所定の傾斜角度を、シートバックを着座以外の所定の用途に流用し得る傾斜角度(本実施形態ではテーブルとして利用する傾斜角度)に設定して当該傾斜角度でロックすることでその用途の自由度を増大することができる。
【0043】
(2)本実施形態では、前記操作レバー19の非操作時において、前記第1押圧面19aと前記リンク側係合ピン18aとの間に間隙C1が設定されていることで、例えば製造ばらつきや組み付け誤差などが生じても、上記間隙C1の範囲で吸収することで、これらが直に干渉することを抑制できる。そして、前記操作レバー19の非操作時において、前記第1押圧面19aが前記外歯24aと前記内歯15bとの噛合を解除する側に前記リンク側係合ピン18aと係合する、いわゆるハーフロック状態を防止することができる。
【0044】
(3)本実施形態では、前記操作レバー19による前記ロックプレート24を径方向に後退させる操作力の伝達に合わせて、前記フック20及びロックピン27による前記所定の傾斜角度のロック状態が前記第2押圧面19b及びフック側係合ピン20cの係合により解除される。従って、前記所定の傾斜角度のロック状態の解除時には、同時に前記外歯24aと前記内歯15bとの噛合が解除される状態にあるため、前記ロアアーム12及びアッパアーム15の相対回動が許容されて前記シートクッションに対する前記シートバックの傾斜角度が調整可能となる。このように、同一の操作レバーの1回の操作で、前記所定の傾斜角度のロック状態を解除し、引き続き、前記シートバックの傾斜角度の調整へと円滑に移行することができる。
【0045】
(4)本実施形態では、前記操作レバー19の非操作時において、前記第2押圧面19bと前記フック側係合ピン20cとの間に間隙C2が設定されていることで、例えば製造ばらつきや組み付け誤差などが生じても、上記間隙C2の範囲で吸収することで、これらが直に干渉することを抑制できる。そして、前記操作レバー19の非操作時において、前記第2押圧面19bが前記フック20による前記ロックピン27の引っ掛けを解除する側に前記フック側係合ピン20cと係合する、いわゆるハーフロック状態を防止することができる。
【0046】
(5)本実施形態では、アッパアーム15の内歯15bとロックプレート24の外歯24aとの噛合力を十分に確保し、所要の強度でシートバックの傾斜角度を保持することができる。
【0047】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記実施形態において、非ギヤ部として、アッパアーム15の内歯15bとロックプレート24の外歯24aとを軸方向にずらして噛合不能にする形状を採用してもよい。
【0048】
・前記実施形態において、ロアアーム12に内歯及び非ギヤ部を設け、アッパアーム15にロックプレート等を支持させてもよい。
・前記実施形態においては、フック20及びロックピン27により、シートバックを後方に倒した所定の傾斜角度をロックしたが、例えばシートバックを前方に倒した所定の傾斜角度でロックさせるようにしてもよい。このような変更は、これらフック20及びロックピン27等の配置を変更することで容易に対応することができる。
【0049】
・前記実施形態においては、例えば、ロックプレート24の個数を1個や3個以上にしてもよい。
・前記実施形態において、フック20及びロックピン27による所定の傾斜角度のロックは、例えば前側席の着座者(運転者など)の後方視界を良好にするための用途であってもよい。
【0050】
・前記実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態を示す側面図。
【図2】同実施形態を示す側面図。
【図3】従来形態を示す模式図。
【符号の説明】
【0052】
12…第2アームとしてのロアアーム、15…第1アームとしてのアッパアーム、15b…内歯、15c…非ギヤ部、18…リンク、18a…リンク側係合部としてのリンク側係合ピン、19…操作レバー、19a…操作レバー側係合部としての第1押圧面、19b…係止解除手段を構成するレバー側係合部としての第2押圧面、20…係止手段を構成するフック、20c…係止解除手段を構成するフック側係合部としてのフック側係合ピン、24…ロックプレート、24a…外歯、27…係止手段を構成するロックピン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッション側及びシートバック側のいずれか一方に取り付けられ、所定の角度範囲で内歯及び非ギヤ部を選択的に有する第1アームと、
前記シートクッション側及び前記シートバック側のいずれか他方に取り付けられ、外歯を有するロックプレートを径方向にスライド可能に支持する第2アームとを備え、
前記外歯が周方向全体に亘って前記内歯に噛合することで前記第1及び第2アームの相対回動を規制して前記シートクッションに対する前記シートバックの傾斜角度をロックするとともに、前記外歯の少なくとも一部が周方向において前記非ギヤ部に重なることで前記第1及び第2アームの相対回動を許容して前記シートクッションに対する前記シートバックの傾斜角度をアンロックする車両用シートリクライニング装置において、
前記外歯の少なくとも一部が周方向において前記非ギヤ部に重なる状態での前記シートクッションに対する前記シートバックの所定の傾斜角度をロックする係止手段を備えたことを特徴とする車両用シートリクライニング装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートリクライニング装置において、
前記第2アームに回動可能に連結され、操作レバー側係合部を有する操作レバーと、
前記操作レバーとは異なる回動中心で前記第2アームに回動可能に連結され、リンク側係合部を有するリンクとを備え、
前記リンクは、前記操作レバーの回動操作による前記操作レバー側係合部と前記リンク側係合部との係合により回動し、前記ロックプレートを径方向に後退させて前記外歯と前記内歯との噛合を解除してなり、
前記操作レバーの非操作時において、前記操作レバー側係合部と前記リンク側係合部との間に間隙が設定されていることを特徴とする車両用シートリクライニング装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用シートリクライニング装置において、
前記第2アームに回動可能に連結され、前記ロックプレートを径方向に後退させる操作力を伝達して前記外歯と前記内歯との噛合を解除する操作レバーを備え、
前記操作力の伝達に合わせて前記係止手段による前記所定の傾斜角度のロック状態を解除する係止解除手段を備えたことを特徴とする車両用シートリクライニング装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用シートリクライニング装置において、
前記係止手段は、
前記第1アームと一体回動するロックピンと、
前記第2アームに連結され、前記所定の傾斜角度において前記ロックピンを引っ掛けるフックとを備えることを特徴とする車両用シートリクライニング装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用シートリクライニング装置において、
前記係止解除手段は、
前記操作レバーに設けられたレバー側係合部と、
前記フックに設けられ、前記操作レバーによる前記ロックプレートを径方向に後退させる操作力の伝達に合わせて前記レバー側係合部と係合して前記フックによる前記ロックピンの引っ掛けを解除するフック側係合部とを備えることを特徴とする車両用シートリクライニング装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用シートリクライニング装置において、
前記操作レバーの非操作時において、前記レバー側係合部と前記フック側係合部との間に間隙が設定されていることを特徴とする車両用シートリクライニング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−6740(P2006−6740A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−190399(P2004−190399)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】