説明

車両用シート及び樹脂製シートバックボード

【課題】後突時に乗員の頸部を保護することができる車両用シート及び樹脂製シートバックバネを得る。
【解決手段】車両用シート10では、後突時に、乗員が慣性によってシートバック12に押し付けられると、乗員腰部が下側樹脂バネ部を含むボード本体部40の下部側を介して左右のサイドフレーム26の下部側かつ前部側に支持されると共に、乗員胸部P2が上側樹脂バネ部46を含むボード本体部40の上部側を介して左右のサイドフレーム26の上部側かつ後部側に支持される。この際、ボード本体部40の上部側に対して乗員胸部P2から入力される荷重F2が設定値以上になると、左右の上側被支持部52に設けられた破断予定部68が破断される。これにより、乗員胸部P2がボード本体部40の上部側からシート前方側への反力を受けないようにすることができるので、乗員の第1胸椎に生じる加速度を低下させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シート及び樹脂製シートバックボードに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車両用シートの軽量化を図る観点から、シートバックフレームに設けられた左右一対のサイドフレーム間に掛け渡されるバネを、樹脂製とすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−138156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両用シートには、軽量化のみならず、車両の後面衝突時(以下、「後突時」という)の衝撃から乗員の頸部を保護する性能が求められている。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、後突時に乗員の頸部を保護することができる車両用シート及び樹脂製シートバックボードを得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明に係る車両用シートは、左右のサイドフレームを有するシートバックフレームと、前記左右のサイドフレーム間の上部側に配置された上側樹脂バネ部、前記左右のサイドフレーム間の下部側に配置された下側樹脂バネ部、及び前記各樹脂バネ部のシート後方側に配置されたバックボード部を備えると共に少なくとも前記下側樹脂バネ部と前記バックボード部とが一体又は一体的に形成されたボード本体部を有し、前記ボード本体部の下部側が前記左右のサイドフレームの前部側に支持されると共に、前記ボード本体部の上部側が前記左右のサイドフレームの後部側に支持され、且つ、前記ボード本体部の上部側に対してシート前方側から設定値以上の荷重が入力された際には、前記ボード本体部の上部側に設けられた破断予定部が破断される樹脂製シートバックボードと、を備えている。
【0007】
請求項1に記載の車両用シートでは、樹脂製シートバックバネのボード本体部が、シートバックフレームが備える左右のサイドフレーム間の上部側に配置された上側樹脂バネ部と、左右のサイドフレーム間の下部側に配置された下側樹脂バネ部と、前記各樹脂バネ部のシート後方側に配置されたバックボード部とを備えている。このボード本体部では、少なくとも下側樹脂バネ部とバックボード部とが一体又は一体的に形成されている。このボード本体部は、下部側が左右のサイドフレームの前部側に支持されると共に、上部側が左右のサイドフレームの後部側に支持されている。
【0008】
ここで、後突時に、乗員が慣性によってシートバックに押し付けられると、乗員の腰部が下側樹脂バネ部を含むボード本体部の下部側を介して左右のサイドフレームの前部側に支持されると共に、乗員の胸部が上側樹脂バネ部を含むボード本体部の上部側を介して左右のサイドフレームの後部側に支持される。この際、ボード本体部の上部側に対して乗員の胸部(シート前方側)から入力される荷重が設定値以上になると、ボード本体部の上部側に設けられた破断予定部が破断される。これにより、乗員の胸部がボード本体部の上部側からシート前方側への反力を受けないようにすることができるので、乗員の第1胸椎に生じる加速度を低下させることができる。その結果、乗員胸部と乗員頭部とに生じる相対変位を少なくすることができるので、乗員の頸部を保護することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1に記載の車両用シートにおいて、前記上側樹脂バネ部と前記バックボード部とが左右の連結部において連結されると共に、前記左右の連結部からシート幅方向外側へ延出された左右の上側被支持部が前記左右のサイドフレームの後部側に支持されており、前記破断予定部は、前記左右の上側被支持部に設けられている。
【0010】
請求項2に記載の車両用シートでは、樹脂製シートバックボードのボード本体部は、上側樹脂バネ部とバックボード部とを連結した左右の連結部からシート幅方向外側へ延出された左右の上側被支持部を備えており、これらの上側被支持部が、左右のサイドフレームの後部側に支持されている。これら左右の上側被支持部には、破断予定部が設けられており、後突時に乗員の胸部から上側樹脂バネ部に入力される荷重が設定値以上になると、左右の上側被支持部が破断予定部において破断する。これにより、左右のサイドフレームの後部側に対する上側樹脂バネ部及びバックボード部の支持を同時に解除することができるので、乗員の第1胸椎に生じる加速度を効果的に低下させることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1に記載の車両用シートにおいて、前記サイドフレームは、側壁部と、前記側壁部の後端からシート幅方向内側へ延びる後側フランジ部とを有し、当該後側フランジ部の前面に前記上側被支持部が固定されている。
【0012】
請求項3に記載の車両用シートでは、シートバックフレームのサイドフレームが、側壁部と、側壁部の後端からシート幅方向内側へ延びる後側フランジ部とを有している。そして、樹脂製シートバックボードのボード本体部は、上側樹脂バネ部とバックボード部との連結部からシート幅方向外側へ延びる上側被支持部が、上記後側フランジ部の前面に固定されている。これにより、通常の着座時に、乗員の胸部から上側樹脂バネ部及び上側被支持部を介してサイドフレームに入力される荷重を、サイドフレームの後側フランジ部によって良好に支持することができる。また、ボード本体部の上部側の支持を安定させることができるので、後突時に、破断予定部に良好に応力を集中させることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明に係る車両用シートは、請求項3に記載の車両用シートにおいて、前記上側被支持部は、前記後側フランジ部に固定された固定部と、前記固定部のシート幅方向内側端部からシート前方側かつシート幅方向内側へ延出された傾斜部と、を有している。
【0014】
請求項4に記載の車両用シートでは、樹脂製シートバックボードのボード本体部に設けられた上側被支持部は、サイドフレームの後側フランジ部に固定された固定部と、固定部のシート幅方向内側端部からシート前方側かつシート幅方向内側へ延出された傾斜部とを有している。このため、上側被支持部のシート幅方向内側端部に連結された上側樹脂バネ部の配置を、よりシート前方側に設定することができる。これにより、シート後方側への上側樹脂バネ部の変形代を大きく設定することができるので、通常着座時における乗員の快適性を向上させることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明に係る車両用シートは、請求項4に記載の車両用シートにおいて、前記サイドフレームは、前記後側フランジ部のシート幅方向内側端部からシート幅方向内側かつシート前方側へ延出された傾斜フランジ部を有しており、前記傾斜部は、前記傾斜フランジ部に沿うように配置されており、シート幅方向に対する前記傾斜部の傾斜角度が、シート幅方向に対する前記傾斜フランジ部の傾斜角度よりも大きく設定されている。
【0016】
請求項5に記載の車両用シートでは、シートバックフレームのサイドフレームは、後側フランジ部のシート幅方向内側端部からシート幅方向内側かつシート前部側へ延出された傾斜フランジ部を有している。このため、この傾斜フランジ部によってサイドフレームの剛性を向上させることができる。
【0017】
また、樹脂製シートバックボードのボード本体部における上側被支持部に設けられた傾斜部が、上記傾斜フランジ部に沿うように配置されており、シート幅方向に対する傾斜部の傾斜角度が、シート幅方向に対する傾斜フランジ部の傾斜角度よりも大きく設定されている。これにより、通常着座時における傾斜部と傾斜フランジ部との不用意な干渉を防止又は抑制することができる。一方、後突時には、シート幅方向内側かつシート前部側へ延出された傾斜フランジ部の先端に、傾斜部が押し付けられることになるため、例えば、傾斜部に破断予定部を設けることにより、破断予定部の破断を促進することができる。
【0018】
請求項6に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の車両用シートにおいて、前記下側樹脂バネ部と前記バックボード部とが、左右の下側被支持部に連結されており、前記左右の下側被支持部は、平断面視でシート後方側が開放された開断面形状に形成され、内側に前記左右のサイドフレームの前部側が嵌合している。
【0019】
請求項6に記載の車両用シートでは、樹脂製シートバックボードのボード本体部における下側樹脂バネ部とバックボード部とが、左右の下側被支持部に連結されている。これらの下側被支持部は、平断面視でシート後方側が開放された開断面形状に形成されており、内側に左右のサイドフレームの前部側が嵌合している。これにより、後突時に、乗員の腰部からボード本体部の下部側に過大な荷重が入力された際には、左右の下側被支持部によって左右のサイドフレームからの反力を良好に支持することができるので、乗員腰部の支持を安定させることができる。
【0020】
請求項7に記載の発明に係る樹脂製シートバックボードは、シートバックフレームが備える左右のサイドフレーム間の上部側に配置された上側樹脂バネ部、前記左右のサイドフレーム間の下部側に配置された下側樹脂バネ部、及び前記各樹脂バネ部のシート後方側に配置されたバックボード部を備えると共に少なくとも前記下側樹脂バネ部と前記バックボード部とが一体又は一体的に形成され、下部側が前記左右のサイドフレームの前部側に支持されると共に、上部側が前記左右のサイドフレームの後部側に支持されたボード本体部と、前記ボード本体部の上部側に設けられ、前記ボード本体部の上部側に対してシート前方側から設定値以上の荷重が入力された際に破断される破断予定部と、を備えている。
【0021】
請求項7に記載の樹脂製シートバックボードでは、ボード本体部が、シートバックフレームが備える左右のサイドフレーム間の上部側に配置された上側樹脂バネ部と、左右のサイドフレーム間の下部側に配置された下側樹脂バネ部と、前記各樹脂バネ部のシート後方側に配置されたバックボード部とを備えている。このボード本体部では、少なくとも下側樹脂バネ部とバックボード部とが一体又は一体的に形成されている。このボード本体部は、下部側が左右のサイドフレームの前部側に支持されると共に、上部側が左右のサイドフレームの後部側に支持されている。
【0022】
ここで、後突時に乗員がシートバックに押し付けられると、乗員の腰部が下側樹脂バネ部を含むボード本体部の下部側を介して左右のサイドフレームの前部側に支持されると共に、乗員の胸部が上側樹脂バネ部を含むボード本体部の上部側を介して左右のサイドフレームの後部側に支持される。この際、ボード本体部の上部側に対して乗員の胸部(シート前方側)から入力される荷重が設定値以上になると、ボード本体部の上部側に設けられた破断予定部が破断される。これにより、乗員の胸部がボード本体部の上部側からシート前方側への反力を受けないようにすることができるので、乗員の第1胸椎に生じる加速度を低下させることができる。その結果、乗員胸部と乗員頭部とに生じる相対変位を少なくすることができるので、乗員の頸部を保護することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明に係る車両用シート及び樹脂製シートバックボードでは、後突時に乗員の頸部を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用シートのシートバックの分解斜視図である。
【図2】図1に示されるシートバックフレームに樹脂製シートバックバネが組み付けられた状態を示す斜視図である。
【図3】図2の3−3線に沿った切断面を示す概略的な平断面図である。
【図4】図3の4−4線に沿った切断面を示す概略的な平断面図である。
【図5】破断予定部が破断した状態を示す図4に対応した平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図1〜図5を用いて、本発明の実施形態に係る車両用シート10及び樹脂製シートバックボード20について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方を示しており、矢印UPは車両上方を示しており、矢印INは車両幅方向内方を示している。
【0026】
<全体構成>
図1には、本実施形態に係る車両用シート10の背もたれに相当するシートバック12の分解斜視図が示されている。なお、図1では、各構成要素を見る角度を若干変えて描いている。この車両用シート10は、乗員が着座する図示しないシートクッションを備えており、当該シートクッションの後端部にシートバック12が傾倒可能に連結されている。また、シートバック12の上端部には、乗員の頭部を支持する図示しないヘッドレストが上下位置調整可能に連結されている。
【0027】
図1〜図4に示されるように、上記シートバック12は、その骨格部材である金属製のシートバックフレーム14と、シートバックフレーム14に支持されたシートバックパッド16と、シートバックパッド16を覆ったシート表皮18と、シートバックフレーム14に取り付けられた樹脂製シートバックボード20(以下、単に「シートバックボード20」という)と、を備えている。以下、各構成要素について詳細に説明する。
【0028】
<シートバックフレーム14の構成>
図1及び図2に示されるように、シートバックフレーム14は、正面視(車両の正面から見た場合を指す。以下、車両の向き、車両用シート10の向き、及びシートバック12の向きは同一であるものとして説明する。)で、矩形枠状に形成されている。具体的には、シート幅方向(車両幅方向)に対向して配置された左右一対のサイドフレーム26と、左右のサイドフレーム26の上端部同士を繋ぐ逆U字状のアッパフレーム28と、左右のサイドフレーム26の下端部同士をシート幅方向に繋ぐロアフレーム30と、によって構成されている。上記シートバック12はアッパフレーム28も含めて4つの部材がすべてプレス成形によって製作されているが、他のフレーム構造を採用してもよい。例えば、アッパフレームのみを逆U字状に曲げたパイプ材で構成してもよい。
【0029】
図3及び図4に示されるように、サイドフレーム26は、側壁部26Aと、前側フランジ部26Bと、後側フランジ部26Cと、傾斜フランジ部26Dとによって構成されており、平断面視でシート幅方向内側が開口した略C字状に形成されている。側壁部26Aは、シート前後方向に沿って延在しており、前側フランジ部26B及び後側フランジ部26Cは、側壁部26Aの前端及び後端からシート幅方向内側へ延出されている。なお、図3及び図4では、説明を分かりやすくするために、シートバックパッド16の図示を省略してある。
【0030】
後側フランジ部26Cの幅は前側フランジ部26Bの幅に対して充分に広く設定されている。傾斜フランジ部26Dは、後側フランジ部26Cのシート幅方向内側端部からシート幅方向内側かつシート前方側へ向けて斜めに延出されている。また、図1に示されるように、側壁部26Aの下部には、上下に離間して複数(ここでは2つ)の取付孔32が形成されており、後側フランジ部26Cの上部には取付孔34が形成されている。これらの取付孔32、34は、シートバックボード20に対応している。
【0031】
<シートバックパッド16の構成>
図1に示されるように、シートバックパッド16は、ウレタンフォーム等の発泡体からなり、パッド中央部36と、左右一対のパッドサイド部38と、によって構成されている。パッド中央部36は、上端側がシートバックフレーム14のアッパフレーム28にシート上方側から係止されており、下端側がサイドフレーム26の下端部同士をシート幅方向に連結する図示しないコネクティングロッドにシート下方側から係止されている。また、パッド中央部36は、シートバックボード20の下側樹脂バネ部42及び上側樹脂バネ部46によってシート後方側から支持されている。
【0032】
左右のパッドサイド部38は、横断面形状が略C字状に形成されており、左右のサイドフレーム26に巻き付けられるようにして装着されている。このパッドサイド部38は、パッド中央部36よりもシート前方側へ膨出しており、乗員に対するサイドサポート性を確保する形状になっている。
【0033】
<シート表皮18の構成>
図1に示されるように、シート表皮18は、シートバックパッド16を正面側から覆うことが可能な大きさに形成されている。シート表皮18の外周部の適宜位置には、鏃形状とされた外周係止部材39(図3及び図4参照)が縫製により取り付けられている。外周係止部材39はシートバックボード20が備えるバックボード部48の外周部に係止されており、これにより、シート表皮18の外周部がシートバックボード20に取り外し可能に係止されている。また、シート表皮18の前面側には、図示しない複数の係止部が設けられており、これらの係止部がシートバックボード20の下側樹脂バネ部42及び上側樹脂バネ部46に係止されている。
【0034】
<シートバックボード20の構成>
シートバックボード20は、樹脂材料によって形成されたものであり、図1〜図4に示されるように、ボード本体部40を備えている。ボード本体部40は、左右のサイドフレーム26間の下部側に配置された下側樹脂バネ部42と、左右のサイドフレーム26間の上部側に配置された上側樹脂バネ部46と、これらの樹脂バネ部42、46のシート後方側に配置されたバックボード部48と、左右のサイドフレーム26の下部側かつ前部側に支持された左右の下側被支持部50と、左右のサイドフレーム26の上部側かつ後部側に支持された左右の上側被支持部52と、が一体に成形されることにより形成されたものである。
【0035】
バックボード部48は、シートバックフレーム14よりも一回り小さく形成された板状本体部48Aと、この板状本体部48Aの外周部からシート前方側へ延びるカバー係止部48Bと、によって構成されている。板状本体部48Aは、矩形枠状に形成されたシートバックフレーム14の開口部の内周縁よりも一回り小さい略矩形平板状に形成されており、シートバックフレーム14の内側を通過可能とされている。この板状本体部48Aは、板厚方向がシート前後方向に沿う状態でシートバック12の背面に配置されており、シートバック12の背面の意匠面を構成している。
【0036】
カバー係止部48Bは、板状本体部48Aの外周部における上端部及びシート幅方向両端部に設けられており、シート前後方向から見て逆U字状に形成されている。このカバー係止部48Bは、シート後方側が開放された断面略U字状とされている。このカバー係止部48Bは、前述したようにシート表皮18の外周部に取り付けられた外周係止部材54を係止するために用いられるが、板状本体部48Aを補強してバックボード部48全体の面剛性を高める機能をも有している。
【0037】
左右の下側被支持部50は、図3に示されるように、平断面視でシート後方側が開放された開断面形状に形成されており、内側に左右のサイドフレーム26の前部側が嵌合している。具体的には、各下側被支持部50は、サイドフレーム26の前側フランジ部26Bに支持される前壁部50Aと、前壁部50Aのシート幅方向外側端部からシート後方側へ延びる外壁部50Bと、前壁部50Aのシート幅方向内側端部からシート後方側かつシート幅方向内側へ斜めに延びる内壁部50Cと、を備えており、サイドフレーム26の前部側に嵌合している。これにより、ボード本体部40の下部(下側樹脂バネ部42及びバックボード部48の下部)が、左右のサイドフレーム26の下部側かつ前部側に支持されている。なお、下側被支持部50がサイドフレーム26の前部側に直接嵌合せず、両者の間に別部材(例えば、弾性部材)が介在された構成(下側被支持部50がサイドフレーム26の前部側に間接的に嵌合した構成)にしてもよい。
【0038】
前壁部50Aは、前側フランジ部26Bに対してシート前方側から対向(当接)しており、外壁部50Bは、側壁部26Aに対してシート幅方向外側から対向(当接)している。この外壁部50Bには、上下一対の貫通孔54(図1参照)が形成されており、各貫通孔54に挿通された樹脂クリップ56(図2参照)が側壁部26Aの取付孔32に嵌入係止されている。これにより、外壁部50Bが側壁部26Aに固定されている。なお、外壁部50Bを側壁部26Aに固定する固定手段としては、外壁部50Bに樹脂クリップ(固定具)を一体に形成して取付孔32に嵌入させる構成や、リベット、スクリュー、ネジ又はボルトとウエルドナット等の締結具で締結する構成、構造用接着剤で接着する構成等、種々の態様が適用可能である。
【0039】
内壁部50Cは、シート後方側へ向かうに従いシート幅方向内側へ向かうようにシート前後方向に対して傾斜しており、サイドフレーム26に対してシート幅方向内側から対向している。内壁部50Cの後端部には、バックボード部48におけるカバー係止部48Bの前端部が連結されている。
【0040】
なお、シートバックボード20がシートバックフレーム14に組み付けられる際には、シートバックボード20がシートバックフレーム14に対してシート前方側から装着される。この際、バックボード部48がシートバックフレーム14の内側を通してシートバックフレーム14の背面側に配置され、左右の下側被支持部50が、左右のサイドフレーム26の前側に嵌合される構成になっている。
【0041】
一方、下側樹脂バネ部42は、シートバック高さ方向に上下三段に平行に並んで配置された3本のバックバネ本体部58によって構成されている。これらのバックバネ本体部58は、全体として長尺な板状に形成されており、長手方向がシート幅方向に沿い且つ板厚方向がシート前後方向に沿う状態で配置されている。これらのバックバネ本体部58の長手方向両端部(シート幅方向両端部)は、左右の下側被支持部50が備える左右の内壁部50Cに連結されている。これにより、3本のバックバネ本体部58が、左右の下側被支持部50間に掛け渡されており、左右の下側被支持部50によってシートバック高さ方向に連結されている。これらのバックバネ本体部58は、車両用シート10に着座した乗員の腰部P1と対向する位置に設けられている。なお、下側樹脂バネ部42を何本のバックバネ本体部58で構成するかは任意であり、要求されるクッション性能との関係で適宜変更される。従って、下側バックバネ本体部の上下幅を広げて1本にしてもよいし、逆に2本又は4本以上の複数本にしてもよい。
【0042】
バックバネ本体部58のシート幅方向中央側には、左右一対の弛み部58Aが形成されている。これらの弛み部58Aは、バックバネ本体部58の長手方向中央部を介した左右両側に形成されている。これらの弛み部58Aは、図3に示される平断面視で見た場合にシート幅方向に複数個の曲面を連続させることにより波状に形成されている。このため、バックバネ本体部58は、バックボード部48側(シート後方側)への荷重が作用することにより弛み部58Aが弾性的に伸長し、これにより荷重作用方向であるバックボード部48側へ撓み変形(弾性変形)するようになっている。
【0043】
なお、バックバネ本体部58は、上述したバックボード部48のシート前方側に所定距離だけ離間した位置に配置されており、両者の間に形成された隙間60の範囲内で撓み変形可能とされている。つまり、バックボード部48は、バックバネ本体部58の撓み量を所定量以下に制限する制限部材としても機能する。また、上記バックバネ本体部58の弛み部58Aには、図示しないスライド型を使って樹脂成形する際に、スライド型をシートバック高さ方向のいずれか一方(ここでは下側)へ脱型できるように抜き勾配(テーパ形状)が設定されている。
【0044】
一方、上側樹脂バネ部46は、図1及び図2に示されるように、下側樹脂バネ部42に対してシートバック高さ方向に所定距離だけ離間して配置されており、車両用シート10に着座した乗員の胸部P2と対向する位置に設けられている。この上側樹脂バネ部46は、上述したバックバネ本体部58と基本的に同様の構成とされており、全体として長尺な板状に形成され、長手方向がシート幅方向に沿い且つ板厚方向がシート前後方向に沿う状態で配置されている。上側樹脂バネ部46のシート幅方向中央側には、左右一対の弛み部46Aが形成されている。これらの弛み部46Aは、前述した弛み部58Aと同様の構成とされており、上側樹脂バネ部46の長手方向中央部(シート幅方向中央部)を介した左右両側に形成されている。
【0045】
図4に示されるように、上側樹脂バネ部46のシート後方側でバックボード部48のシート幅方向両端部には、カバー係止部48Bの前端部からシート前方側へ延出された左右の前延部48Cが設けられている。これらの前延部48Cは、左右の連結部62において上側樹脂バネ部46のシート幅方向両端部と連結されている。また、左右の連結部62からは、それぞれシート幅方向外側へ向けて上側被支持部52が延出されている。
【0046】
上側被支持部52は、サイドフレーム26の後側フランジ部26Cの前面と面接触した状態で配置された固定部52Aと、固定部52Aのシート幅方向内側端部からシート幅方向内側かつシート前方側へ向けて延出された傾斜部52Bと、傾斜部52Bのシート幅方向内側端部と連結部62との間にシート幅方向に沿って延在した横延部52Cとによって構成されている。
【0047】
固定部52Aには、貫通孔64(図1参照)が形成されており、当該貫通孔64に挿通された樹脂クリップ66(図2参照)が後側フランジ部26Cの取付孔34(図1参照)に嵌入係止されている。これにより、上側被支持部52が後側フランジ部26Cの前面に固定されており、ボード本体部40の上部(上側樹脂バネ部46及びバックボード部48の上部)が左右のサイドフレーム26の上部側かつ後部側に支持されている。なお、固定部52Aを後側フランジ部26Cに固定する固定手段としては、固定部52Aに樹脂クリップ(固定具)を一体に形成して取付孔34に嵌入させる構成や、リベット、スクリュー、ネジ又はボルトとウエルドナット等の締結具で締結する構成、構造用接着剤で接着する構成等、種々の態様が適用可能である。
【0048】
傾斜部52Bは、傾斜フランジ部26Dに対してシート前方側から対向する位置に配置されており、傾斜フランジ部26Dに沿うように傾斜している。但し、シート幅方向に対する傾斜部52Bの傾斜角度は、シート幅方向に対する傾斜フランジ部26Dの傾斜角度よりも大きく設定されており、両者の間には平断面視で楔状の隙間が設けられている(傾斜部52Bと傾斜フランジ部26Dとが非接触状態で配置されている)。この傾斜部52Bが設けられることにより、上側樹脂バネ部46は、固定部52Aよりもシート前方側に配置されており、上側樹脂バネ部46とバックボード部48との間の隙間61が拡大されている。上側樹脂バネ部46は、この隙間61の範囲内で撓み変形可能とされており、バックボード部48によって撓み量を所定量以下に制限される構成になっている。
【0049】
ここで、本実施形態では、図1,2,4に示されるように、左右の上側被支持部52における傾斜部52Bには、それぞれ破断予定部68(弱化部)が設けられている。左右の破断予定部68は、傾斜フランジ部26Dの先端部(シート幅方向内側端部)に対してシート前方側から対向しており、傾斜フランジ部26Dの先端部に沿うようにシートバック高さ方向に延びている。これらの破断予定部68は、上側被支持部52の一部が他の部位よりも脆弱に形成されたものである。このため、上側樹脂バネ部46に対してシート前方側から荷重が入力された際には、左右の破断予定部68に応力が集中するようになっており、上記荷重が設定値以上になると、左右の破断予定部68が破断するように構成されている。この設定値は、後突時に乗員の胸部P2から上側樹脂バネ部46に入力される荷重F2(図4参照)に基づいて設定される。
【0050】
なお、上側被支持部52に破断予定部68を設ける方法としては、種々の方法を採用することができる。例えば、上側被支持部52にスリットや孔を形成したり、或いは、上側被支持部52の一部を他の部位よりも薄肉に形成することにより、破断予定部68を形成することができる。
【0051】
<作用及び効果>
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0052】
本実施形態に係る車両用シート10では、樹脂製シートバックボード20のボード本体部40が、乗員の腰部に対向して配置される下側樹脂バネ部42と、乗員の胸部に対向して配置される上側樹脂バネ部46と、これらの樹脂バネ部42、46のシート後方側に配置されたバックボード部48とを一体に備えている。このボード本体部40では、下側樹脂バネ部42のシート幅方向外側に設けられた左右の下側被支持部50が左右のサイドフレーム26の前部側(すなわち前側フランジ部26B)に支持されると共に、上側樹脂バネ部46のシート幅方向外側に設けられた左右の上側被支持部52が左右のサイドフレーム26の後部側(すなわち後側フランジ部26C)に支持されている。
【0053】
ここで、後突時に、乗員が慣性によってシートバック12に押し付けられると、乗員の腰部P1が下側樹脂バネ部42を含むボード本体部40の下部側を介して左右のサイドフレーム26の前部側に支持されると共に、乗員の胸部P2が上側樹脂バネ部46を含むボード本体部40の上部側を介して左右のサイドフレーム26の後部側に支持される。この際、上側樹脂バネ部46に対して乗員の胸部P2(シート前方側)から入力される荷重F2が設定値以上になると、図5に示されるように、左右の上側被支持部52に設けられた左右の破断予定部68が破断される。これにより、乗員の胸部P2がボード本体部40の上部側からシート前方側への反力を受けないようにすることができるので、乗員の第1胸椎に生じる加速度を低下させることができる。その結果、乗員胸部P2と乗員頭部とに生じる相対変位を少なくすることができるので、乗員の頸部を保護することができる。
【0054】
つまり、破断予定部68が設けられていない場合、シートバック12に押し付けられた乗員胸部P2は、ボード本体部40の上部側から受ける反力によってシート前方側へ移動し始める一方、乗員頭部は慣性でそのままの状態を保持しようとする。その結果、乗員の鞭打ち傷害の傷害値の1つであるNIC(Neck Injury Criteria)を決定する第1胸椎の加速度(以下、「T1G」という)の値が上昇するが、本実施形態では、T1Gの上昇を抑制することができる。これにより、乗員の頸部を保護することができる。
【0055】
しかも、本実施形態では、上側樹脂バネ部46とバックボード部48とを連結した左右の連結部62よりもシート幅方向外側に破断予定部68が設けられている。このため、破断予定部68が破断することにより、左右のサイドフレーム26に対する上側樹脂バネ部46及びバックボード部48の上部側の支持を同時に解除することができ、上側樹脂バネ部46及びバックボード部48の上部側を一体のままシート後方側へ移動させることができる(図5の矢印R参照)。これにより、T1Gの上昇を効果的に抑制することができる。
【0056】
また、本実施形態では、下側樹脂バネ部42のシート幅方向両端部が、下側被支持部50を介してサイドフレーム26の前部側(前側フランジ部26B)に支持されているのに対し、上側樹脂バネ部46のシート幅方向両端部は上側被支持部52を介してサイドフレーム26の後部側(後側フランジ部26C)に支持されている。このため、後突時に乗員胸部P2にかかる加速度の立ち上がりを遅らせることができる。つまり、仮に上側樹脂バネ部46のシート幅方向両端部が下側樹脂バネ部42と同様に左右一対のサイドフレーム26の前部側に支持されていたとすると、支持位置が本実施形態構造よりもシートバック前方にある分、乗員胸部P2にかかる加速度の立ち上がりが早くなる。これに対し、本実施形態のように上側樹脂バネ部46のサイドフレーム26への支持位置をシートバック後方側へずらすと、その分、乗員胸部P2にかかる加速度の立ち上がりを遅らせることができる。よって、乗員胸部P2にかかる加速度の立ち上がりを乗員頭部の加速度の立ち上がりに近づけることができる。したがって、これによっても乗員の頸部の負荷を低減することができる。
【0057】
しかも、本実施形態では、ボード本体部40に破断予定部68を設けると共に、上側樹脂バネ部46と下側樹脂バネ部42のサイドフレームへ26の支持位置にシートバック前後方向の差を設けるという構成であるので、特別に部品点数が増えるということもない。その結果、本実施形態に係る車両用シート10及びシートバックボード20によれば、簡素な構成で後突時の乗員頚部への負荷を軽減することができる。また、本実施形態では、下側樹脂バネ部42及び上側樹脂バネ部46が樹脂製とされている。このため、これらのバネ部が金属製のシートバックスプリングで構成されている場合と比較して軽量化を図ることができる。また、下側樹脂バネ部42がバックボード部48と一体に形成されているため、これらが別体に形成されている場合と比較して、部品点数及びシートバックフレーム14への部品の組付工数を削減することができ、結果として低コスト化を図ることができる。この点は、上側樹脂バネ部46とバックボード部48とが一体に形成されていることについても同様である。
【0058】
また、本実施形態では、シートバックフレーム14のサイドフレーム26が、側壁部26Aの後端からシート幅方向内側へ延びる後側フランジ部26Cを有している。そして、シートバックボード20のボード本体部40は、上側樹脂バネ部46とバックボード部48との連結部62からシート幅方向外側へ延びる上側被支持部52が、後側フランジ部26Cの前面に固定されている。これにより、通常着座時に上側被支持部52を介してサイドフレーム26に入力される荷重を、後側フランジ部26Cによって良好に支持することができると共に、後突によってシートバック後方側への荷重F2が作用した際に上側被支持部52に余長が生じることを抑制できる。
【0059】
つまり、例えば、上側被支持部52をサイドフレーム26の側壁部26Aに固定する場合、上側被支持部を平断面視でL字状に形成することにより、側壁部26Aのシート幅方向内側面と面接触する部位を上側被支持部52に設け、当該部位を側壁部26Aに固定することになる。そのような構成の場合、上側樹脂バネ部46に対してシート前方側から荷重が作用すると、上側被支持部におけるL字状の屈曲部がシート斜め後方側へ引っ張られて延ばされる。その結果、破断予定部68を破断させる荷重が狙い値からずれることが予想される。これに対し、本実施形態では、破断予定部68を破断させる荷重をほぼ狙い通りにすることができ、誤差を少なくすることができる。それにより、本実施形態では、後突時の乗員頚部への負荷を軽減することに対する精度を高めることができる。
【0060】
また、本実施形態では、上側被支持部は、後側フランジ部26Cに固定された固定部52Aと、固定部52Aのシート幅方向内側端部からシート前方側かつシート幅方向内側へ延出された傾斜部52Bとを有している。このため、上側被支持部52のシート幅方向内側端部に連結された上側樹脂バネ部46の配置を、よりシート前方側に設定することができる。これにより、シート後方側への上側樹脂バネ部46の変形代を大きく設定することができるので、通常着座時における乗員の快適性を向上させることができる。
【0061】
さらに、本実施形態では、サイドフレーム26が、後側フランジ部26Cのシート幅方向内側端部からシート幅方向内側かつシート前部側へ延出された傾斜フランジ部26Dを有している。このため、この傾斜フランジ部26Dによってサイドフレーム26の剛性を向上させることができる。
【0062】
しかも、上側被支持部52の傾斜部52Bが、傾斜フランジ部26Dに沿うように配置されており、シート幅方向に対する傾斜部52Bの傾斜角度が、シート幅方向に対する傾斜フランジ部26Dの傾斜角度よりも大きく設定されている。これにより、通常着座時における傾斜部52Bと傾斜フランジ部26Dとの不用意な干渉を防止又は抑制することができる。一方、後突時には、シート幅方向内側かつシート前部側へ延出された傾斜フランジ部26Dの先端に、傾斜部52Bが押し付けられることになるため、傾斜部52Bに設けられた破断予定部68の破断を効果的に促進することができる。
【0063】
また、本実施形態では、下側樹脂バネ部42とバックボード部48とを連結した左右の下側被支持部50が、平断面視でシート後方側が開放された開断面形状に形成されており、内側に左右のサイドフレーム26の前部側が嵌合している。これにより、後突時に、乗員の腰部P1からボード本体部40の下部側に荷重F1(図3参照)が入力された際には、左右の下側被支持部50によって左右のサイドフレーム26からの反力を良好に支持することができるので、乗員腰部P1の支持を安定させることができる。
【0064】
さらに、本実施形態では、下側樹脂バネ部42が、シートバック高さ方向に並んだ複数本のバックバネ本体部58によって構成されており、乗員の腰部P1から入力される荷重F1の大半はこれらのバックバネ本体部58で分散して受けることになる。従って、各バックバネ本体部58の荷重負担を軽減することができる。また、複数本のバックバネ本体部58で乗員腰部P1を支持するので、着座時のクッション性が向上される。よって、下側樹脂バネ部42の耐久性を向上させることができると共に着座時のクッション性を向上させ疲労を軽減することができる。
【0065】
また、本実施形態では、シートバックフレーム14の背面側には樹脂の板材で形成されたバックボード部48が配置されている。下側樹脂バネ部42は左右一対の下側被支持部50を介してこのバックボード部48に一体に設けられているので、下側樹脂バネ部42の撓み量を規制する制限部材としてバックボード部48を用いることが可能になる。さらに、乗員腰部P1が下側樹脂バネ部42を介してバックボード部48に当接した際には、その荷重をバックボード部48でも受けることができる。つまり、乗員腰部P1側での荷重伝達経路を、下側樹脂バネ部42から一対の下側被支持部50を介してサイドフレーム26に伝達する経路とバックボード部48から一対の下側被支持部50を介してサイドフレーム26に伝達する経路の複数にすることができる。よって、樹脂製である下側樹脂バネ部42に過負荷がかかることを抑制又は防止することができると共に、シートバックボード16の全体を使って乗員からの荷重を支持することができる。
【0066】
<各実施形態の補足説明>
上記実施形態では、左右の上側被支持部52に破断予定部68が設けられた構成にしたが、請求項1に係る発明はこれに限らず、破断予定部の数及び配置は、「後突時に、乗員の胸部がボード本体部の上部から反力を受けないようにすることができる」という作用効果が得られるものであれば、適宜変更することができる。例えば、上記実施形態における上側樹脂バネ部46の長手方向中央部と、バックボード部48の左右の前延部48Cとに、それぞれ破断予定部を設ける構成にしてもよい。この場合、ボード本体部40の上部側に対して乗員胸部から設定値以上の荷重が入力されると、先ず上側樹脂バネ部46が長手方向中央部の破断予定部において破断し、その後に乗員胸部からの荷重がバックボード部48に入力されることにより、左右の前延部48Cが破断予定部において破断する構成になる。このような構成においても、ボード本体部40の上部側を介したサイドフレーム26への荷重伝達が遮断されるので、乗員胸部がボード本体部40の上部側から反力を受けないようにすることができ、前述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0067】
また、上記実施形態では、下側被支持部50が平断面視でシート後方側が開放された開断面形状に形成され、内側にサイドフレーム26の前部側が嵌合した構成にしたが、請求項1−5,7に係る発明はこれに限らず、下側被支持部の構成は適宜変更することができる。例えば、上記実施形態における外壁部50Bが省略され、前壁部50Aがクリップ等によって前側フランジ部26Bに固定される構成にしてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、上側被支持部52における傾斜部52Bのシート幅方向に対する傾斜角度が、サイドフレーム26における傾斜フランジ部26Dのシート幅方向に対する傾斜角度よりも大きく設定された構成にしたが、請求項1−4に係る発明はこれに限らず、傾斜部のシート幅方向に対する傾斜角度が、傾斜フランジ部のシート幅方向に対する傾斜角度と同じに設定された構成にしてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、サイドフレーム26が傾斜フランジ部26Dを備えた構成にしたが、請求項1−4に係る発明はこれに限らず、傾斜フランジ部が省略された構成にしてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、上側被支持部52が傾斜部52Bを備えた構成にしたが、請求項1−3に係る発明はこれに限らず、上側被支持部の構成は適宜変更することができる。
【0071】
さらに、上記実施形態では、上側被支持部52がサイドフレーム26の後側フランジ部26Cの前面に固定された構成にしたが、請求項1−2に係る発明はこれに限らず、上側被支持部がサイドフレームの後側フランジ部の後面に固定された構成にしてもよい。また、上記実施形態では、サイドフレーム26が後側フランジ部26Cを備えた構成にしたが、請求項1−2に係る発明はこれに限らず、サイドフレームの構成は適宜変更することができる。
【0072】
また、上記実施形態では、上側樹脂バネ部46のシート幅方向両端部が、左右の連結部62においてバックボード部48と一体に連結された構成にしたが、請求項1−7に係る発明はこれに限らず、上側樹脂バネ部とバックボード部との連結構造(固定構造)は適宜変更することができる。例えば、上側樹脂バネ部とバックボード部とが熱溶着又は接着等の手段によって一体的に連結された構成にしてもよい。また例えば、上側樹脂バネ部とバックボード部とがクリップ等の固定具又はボルト及びナット等の締結具によって連結(固定)された構成にしてもよい。そのような構成の場合、上側樹脂バネ部を下側樹脂バネ部及びバックボード部とは別に成形することができるので、成形金型の構成を簡素化することができる。また、請求項2に係る発明においては、上側樹脂バネ部とバックボード部との連結部(固定部)からシート幅方向外側へ延出された左右の上側被支持部に、破断予定部が設けられていればよい。つまり、上側樹脂バネ部とバックボード部とが別々に成形される場合には、バックボード部と上側被支持部とが一体に成形された構成にしてもよいし、上側樹脂バネ部と上側被支持部とが一体に成形された構成にしてもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、下側樹脂バネ部42と、上側樹脂バネ部46と、バックボード部48と、左右の下側被支持部50と、左右の上側被支持部52とが一体に成形された構成にしたが、請求項1−7に係る発明はこれに限らず、上記各部が別々に成形されて熱溶着等の手段によって一体化された構成(上記各部が一体的に設けられた構成)にしてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、上側樹脂バネ部46が下側樹脂バネ部42に対してシートバック高さ方向に離間して配置された構成にしたが、請求項1〜請求項7に係る発明はこれに限らず、上側樹脂バネ部と下側樹脂バネ部とがバックボード部等を介さずに一体又は一体的に連結された構成にしてもよい。
【0075】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0076】
10 車両用シート
12 シートバック
14 シートバックフレーム
20 樹脂製シートバックボード
26 サイドフレーム
26A 側壁部
26C 後側フランジ部
26D 傾斜フランジ部
40 ボード本体部
42 下側樹脂バネ部
46 上側樹脂バネ部
48 バックボード部
50 下側被支持部
52 上側被支持部
52A 固定部
52B 傾斜部
62 連結部
68 破断予定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右のサイドフレームを有するシートバックフレームと、
前記左右のサイドフレーム間の上部側に配置された上側樹脂バネ部、前記左右のサイドフレーム間の下部側に配置された下側樹脂バネ部、及び前記各樹脂バネ部のシート後方側に配置されたバックボード部を備えると共に少なくとも前記下側樹脂バネ部と前記バックボード部とが一体又は一体的に形成されたボード本体部を有し、前記ボード本体部の下部側が前記左右のサイドフレームの前部側に支持されると共に、前記ボード本体部の上部側が前記左右のサイドフレームの後部側に支持され、且つ、前記ボード本体部の上部側に対してシート前方側から設定値以上の荷重が入力された際には、前記ボード本体部の上部側に設けられた破断予定部が破断される樹脂製シートバックボードと、
を有する車両用シート。
【請求項2】
前記上側樹脂バネ部と前記バックボード部とが左右の連結部において連結されると共に、前記左右の連結部からシート幅方向外側へ延出された左右の上側被支持部が前記左右のサイドフレームの後部側に支持されており、前記破断予定部は、前記左右の上側被支持部に設けられている請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記サイドフレームは、側壁部と、前記側壁部の後端からシート幅方向内側へ延びる後側フランジ部とを有し、当該後側フランジ部の前面に前記上側被支持部が固定されている請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記上側被支持部は、前記後側フランジ部に固定された固定部と、前記固定部のシート幅方向内側端部からシート前方側かつシート幅方向内側へ延出された傾斜部と、を有する請求項3に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記サイドフレームは、前記後側フランジ部のシート幅方向内側端部からシート幅方向内側かつシート前方側へ延出された傾斜フランジ部を有しており、前記傾斜部は、前記傾斜フランジ部に沿うように配置されており、シート幅方向に対する前記傾斜部の傾斜角度が、シート幅方向に対する前記傾斜フランジ部の傾斜角度よりも大きく設定されている請求項4に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記下側樹脂バネ部と前記バックボード部とが、左右の下側被支持部に連結されており、前記左右の下側被支持部は、平断面視でシート後方側が開放された開断面形状に形成され、内側に前記左右のサイドフレームの前部側が嵌合している請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の車両用シート。
【請求項7】
シートバックフレームが備える左右のサイドフレーム間の上部側に配置された上側樹脂バネ部、前記左右のサイドフレーム間の下部側に配置された下側樹脂バネ部、及び前記各樹脂バネ部のシート後方側に配置されたバックボード部を備えると共に少なくとも前記下側樹脂バネ部と前記バックボード部とが一体又は一体的に形成され、下部側が前記左右のサイドフレームの前部側に支持されると共に、上部側が前記左右のサイドフレームの後部側に支持されたボード本体部と、
前記ボード本体部の上部側に設けられ、前記ボード本体部の上部側に対してシート前方側から設定値以上の荷重が入力された際に破断される破断予定部と、
を有する樹脂製シートバックボード。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−107490(P2013−107490A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253790(P2011−253790)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】