説明

車両用シート装置

【課題】後突時の入力荷重をシート装置の骨格全体で分担できるようにすることにより、ロアアームに過大な荷重が作用しないようにした。
【解決手段】シートクッション15に取付けられたロアアーム30と、シートバック16に取付けられロアアームに対して回転可能なアッパアーム41と、アッパアームの回転を禁止/許可するリクライニング装置17とを備え、ロアアームの後部とリクライニング装置とを連結する連結部材50と、ロアアーム側に設けられ連結部材よりロアアームの後部に下方向の荷重が伝達された際に、前記アッパアーム、前記リクライニング装置および前記連結部材のいずれかに当接して荷重を受ける荷重受け部53とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両後方から他車両等に衝突された際に、ロアアームに過大な荷重が作用しないようにした車両用シート装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用シート装置においては、車両フロア側にシートクッションに取付けられたロアアームが設けられ、シートバックに取付けられたアッパアームが、ロアアームの後部にヒンジピンを中心に回転可能に支持されている。そして、ロアアームとアッパアームとの間には、アッパアームの回転を禁止/許可するリクライニング装置が設けられている。
【0003】
このような車両用シート装置では、シートに乗員が着座している状態で車両後方から他車両等に衝突された場合(以下、後突という)、後突の衝撃はシートバックで受け止められる。この際、シートバックには、図1の矢印F1方向の荷重が加わり、ロアアームには、矢印F2方向の曲げモーメントが作用する。
【0004】
このような後突時の衝撃のエネルギーを吸収するために、例えば、特許文献1に記載されているように、ロアアームの後部(リクライニング装置の略下方)に折り曲げオフセット部からなる脆弱部を設けたものが知られている。かかる特許文献1に記載のものによれば、脆弱部の変形によって後突時のエネルギーを吸収できる利点があるが、反面、脆弱部の変形によってシートバックの傾きが過大となる恐れがある。
【特許文献1】特開2003−335162号公報(段落0019〜0021、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
後突時にシートバックの傾きが過大となるのを回避するためには、後突時のシートバックからの入力に対しリクライニング装置を介して荷重を受けるロアアームの強度を高くして、後突時の大きな入力に対してロアアームが容易に変形しないようにすればよいが、そのためには、ロアアームに、例えば高い断面係数を持たせるように、絞り、ビード、フランジ等を施す必要があり、その結果、ロアアームが複雑かつ成形しずらい形状とならざるを得ず、コストアップの一因となる問題があった。
【0006】
本発明は、上述した従来の問題を解消するためになされたもので、後突時の入力荷重をシート装置の骨格全体で分担できるようにすることにより、ロアアームに過大な荷重が作用しないようにした車両用シート装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明は、シートクッションに取付けられたロアアームと、シートバックに取付けられ前記ロアアームに対して回転可能なアッパアームと、該アッパアームの回転を禁止/許可するリクライニング装置とを備えた車両用シート装置において、前記ロアアームの後部と前記リクライニング装置とを連結する連結部材と、前記ロアアーム側に設けられ前記連結部材より前記ロアアームの後部に下方向の荷重が伝達された際に、前記アッパアーム、前記リクライニング装置および前記連結部材のいずれかに当接して前記荷重を受ける荷重受け部とを有することを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1において、車両フロア側には、前記シートクッションを上下移動させるシートリフタ装置が設けられ、該シートリフタ装置は、左右一対の前記ロアアームの各々に設けられたリンク部材と、左右の前記リンク部材のうち一方のリンク部材から他方のリンク部材にトルクを伝達するトルクロッドとを有し、前記荷重受け部は前記トルクロッドからなっているものである。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1において、前記荷重受け部は、前記ロアアームと車両フロア側とを締結する締結部材に設けられているものである。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項3において、前記荷重受け部は、車両フロア側に設けられたシートスライドアジャスタ装置のアッパレールと前記ロアアームとを締結する締結部材に設けられているものである。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、前記連結部材は、前記荷重受け部に常時当接されているものである。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、前記連結部材と前記荷重受け部との間には、隙間が設けられているものである。
【発明の効果】
【0013】
上記のように構成した請求項1に係る発明によれば、ロアアームの後部とリクライニング装置とを連結する連結部材と、ロアアーム側に取付けられ連結部材よりロアアームの後部に下方向の荷重が伝達された際に、アッパアーム、リクライニング装置および連結部材のいずれかに当接して荷重を受ける荷重受け部とを有しているので、後突による荷重がロアアームに伝達されても、アッパアーム、リクライニング装置あるいは連結部材に当接する荷重受け部によって直接荷重を受けることができ、ロアアームの後部には過大な荷重が作用しない。従って、ロアアーム自体を強固にする必要がなく、ロアアームを成形の容易な形状にすることが可能となり、ロアアーム、延いては車両用シート装置のコストを低減することができる。
【0014】
上記のように構成した請求項2に係る発明によれば、車両フロア側には、シートクッションを上下移動させるシートリフタ装置が設けられ、シートリフタ装置は、左右一対のロアアームの各々に設けられたリンク部材と、左右のリンク部材のうち一方のリンク部材から他方のリンク部材にトルクを伝達するトルクロッドとを有し、荷重受け部は前記トルクロッドからなっているので、後突によってロアアームに伝達される荷重を、シートリフタ仕様の既存の構成部品を利用して受けることができ、簡単な構成によってロアアームの後部に過大な荷重が作用しないようにすることができる。
【0015】
上記のように構成した請求項3に係る発明によれば、荷重受け部は、ロアアームと車両フロア側とを締結する締結部材に設けられているので、締結部材に荷重受け部を設けるだけの簡単な構成によって、シートリフタ装置を装備していない車両用シート装置にも、容易に適用することができる。
【0016】
上記のように構成した請求項4に係る発明によれば、荷重受け部は、車両フロア側に設けられたシートスライドアジャスタ装置のアッパレールとロアアームとを締結する締結部材に設けられているので、部品点数を増加させることなく、シートリフタ装置を装備していない車両用シート装置においても、ロアアームの後部に過大な荷重を作用させないようにすることができる。
【0017】
上記のように構成した請求項5に係る発明によれば、連結部材は、荷重受け部に常時当接されているので、後突によってロアアームに伝達される荷重を、ロアアームの後部を殆ど変形させることなく、荷重受け部によって直接受けることができ、ロアアームの強度を高くする必要がない。
【0018】
上記のように構成した請求項6に係る発明によれば、連結部材と荷重受け部との間に隙間が設けられているので、後突によってロアアームに伝達される荷重によって、ロアアームの後部を僅かに変形させた後、荷重受け部によって受けることができ、ロアアームの変形によって衝突エネルギーを緩和することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の第1の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1および図2において、車両用シート装置10は、シートスライドアジャスタ装置11により、車両フロア12上に車両前後方向(図2の左右方向)にスライド可能に、かつシートリフタ装置13により、車両フロア12に対して上下方向(図2の上下方向)に昇降可能に載置されており、座面を形成するシートクッション15および背もたれ面を形成するシートバック16を備えている。シートバック16は、シートバック16の回転を禁止/許可するリクライニング装置17により、シートクッション15に対して車両前後方向に回動自在かつ所定の調整角度位置で保持可能に、シートクッション15の後部に取付けられている。
【0020】
シートスライドアジャスタ装置11は、図4に示すように、左右一対のロアレール21およびアッパレール22を備え、ロアレール21は車両前後方向(シート前後方向)に延在する長尺状のもので、車両フロア12に固定されている。ロアレール21は、図3に示すように、断面略U字状を呈しており、その断面両端に左右一対の係合フランジ21aが形成されている。アッパレール22は車両前後方向に延在する長尺状のもので、断面略逆T字状を呈しており、その断面両端に左右一対の係合フランジ22aが形成されている。アッパレール22の係合フランジ22aは、ロアレール21の係合フランジ21aに車両前後方向に摺動可能に係合され、これによって、車両用シート装置10は、車両前後方向にスライド可能に、かつ所定の前後調整位置で図略のロック機構により固定保持可能に載置されている。一対のアッパレール22上には、断面J字状の連結フレーム23が溶接等によって固定されている。
【0021】
シートリフタ装置13は、図4に示すように、シートクッション15の左右(アウタ側およびインナ側)に固定された一対のロアアーム30と、一対のアッパレール22上に固定された連結フレーム23とを連結する左右一対の前方リンク部材31および左右一対の後方リンク部材32を備えている。一対のロアアーム30の上端には、図3にも示すように、互いに内側に折り曲げられた上部フランジ部30aが形成され、下端には、互いに外側に折り曲げられた下部フランジ部30bが形成されている。上部フランジ部30aと下部フランジ部30bは互いにつながっておらず、車両前後方向に開放された単純な形状となっており、その成形性を向上させている。
【0022】
左右一対の前方および後方リンク部材31、32の各上端側は、一対のロアアーム30の前部および後部に形成された前方および後方貫通孔30c、30dを回転可能に貫通するパイプ状のトルクロッド33、34によって互いに結合され、左右一対の前方および後方リンク部材31、32の各下端側は、ヒンジピン35、36によってアッパレール22上の連結フレーム23に回動可能に支持されている。前方および後方リンク部材31、32と、ロアアーム30と、アッパレール22上の連結フレーム23とによって、平行リンク機構37(図2参照)が構成され、前方リンク部材31および後方リンク部材32の回動によって、ロアアーム30が上下方向に平行移動されるようになっている。
【0023】
左右一対の後方リンク部材32を結合し、左右一方のリンク部材32から他方のリンク部材32にトルクを伝達するトルクロッド34の両端部は、図3に示すように、ロアアーム30の外側面よりも両側に大きく突出され、この突出部が後述する連結部材50に当接する荷重受け部53を構成している。
【0024】
また、一対の後方リンク部材32の左右何れか一方には、後方リンク部材32の回動中心(トルクロッド34)を中心とするセクタギヤ38が一体的に設けられ、セクタギヤ38にはロアアーム30に回転可能に支持されたピニオンギヤ39が噛合されている。ピニオンギヤ39には操作ハンドル40(図4参照)が連結され、操作ハンドル40の操作によるピニオンギヤ39の回転によって、セクタギヤ38を介して後方リンク部材32がヒンジピン36を中心にして回動される。かかる後方リンク部材32の回動により、平行リンク機構37によって前方リンク部材31および後方リンク部材32の傾き角が調整され、ロアアーム30を適宜の高さ位置に調整できるようになっている。
【0025】
リクライニング装置17は、図4に示すように、シートバック16の左右に取付けられた一対のアッパアーム41の両側に配置された左右一対のリクライニングアジャスタ42を備えている。リクライニングアジャスタ42は、図3に示すように、円盤状のロアプレート43とアッパプレート44とからなっており、アッパプレート44はロアプレート43に相対回動可能に嵌合されている。ロアプレート43は、後述する連結部材50を介してシートクッション15に取付けられたロアアーム30に結合され、アッパプレート44は、アッパアーム41に溶接等によって固定されている。
【0026】
ロアプレート43とアッパプレート44との間には内部空間45が形成され、ロアプレート43およびアッパプレート44には内部空間45を横切って回転シャフト46が貫通されている。回転シャフト46の一端には、シートクッション15に対してシートバック16を角度調整するための操作レバー47(図4参照)が取付けられている。内部空間45内には、シートバック16を調整された角度位置にロックするロック機構が配設されている。かかるロック機構は、例えば、特開2003−9978号公報に記載されているように公知の技術であるので、その詳細については省略するが、主として、ロアプレート43に形成された内歯に係脱可能に噛合う係合歯を有するポールと、操作レバー47の操作によって回転シャフト46を介し回動されるポールプレートと、ポールプレートの回動によってポールを内歯に対して係脱させるカムとによって構成されている。
【0027】
上記した構成のリクライニング装置17により、ロアアーム30(シートクッション15)に対して、アッパアーム41(シートバック16)の回転を禁止/許可するとともに、アッパアーム41(シートバック16)を調整された角度位置に保持するようになっている。
【0028】
左右一対のリクライニングアジャスタ42のロアプレート43には、プレート状の一対の連結部材50の上部がボルト締めあるいはリベット締め等によってそれぞれ締結され、一対の連結部材50の下部はロアアーム30の後部外側面に、車両前後方向に離間した2点51、52でボルト締めあるいはリベット締め等によって締結されている。車両前後方向に離間した2点51、52は、後方締結点(52)のほうが前方締結点(51)よりも僅かに下方に配置され、2点51、52を結ぶ直線L1は、車両後方に向かって下方に傾斜するように定められている。一対の連結部材50の下端には、一対の後方リンク部材32を連結するトルクロッド34の荷重受け部53に当接する当接部50aが形成されており、当接部50aは直線L1に略平行に構成されている。トルクロッド34の荷重受け部53は、後突時に、連結部材50の当接部50aに当接してロアアーム30に伝達された荷重を受承する機能を有する。
【0029】
なお、トルクロッド34と連結部材50の当接部50aを互いに常時当接した関係に構成することは、各部品の寸法公差および組付け誤差等から事実上難しく、実際上は、各部品の寸法公差および組付け誤差等を考慮して僅かな隙間を有するように設計される。しかしながら、本実施の形態においては、このような各部品の寸法公差および組付け誤差等から生ずる隙間は無視し、見掛け上、トルクロッド34と連結部材50の当接部50aとは常時当接されているものとする。
【0030】
逆に、トルクロッド34と連結部材50の当接部50aとを、予め微小もしくは適切なクリアランスを有して配置しておくこともでき、この場合には、ロアアーム30に僅かな変形を生起させた後、トルクロッド34と連結部材50の当接部50aとを当接させることになり、ロアアーム30の変形による衝撃吸収効果が期待できるようになる。
【0031】
図3に示すように、アッパアーム41に固定されたブラケット55には、リターンスプリング56の一端が係止され、リターンスプリング56の他端は、ロアアーム30側に連結されている。リターンスプリング56は、アッパアーム41にシートバック16が前方に倒れる方向の付勢力を常に作用しており、従って、操作レバー47の操作によってリクライニングアジャスタ42のロック機構のロックが解除されると、シートバック16はリターンスプリング56の付勢力によって前方に戻されるようになる。
【0032】
次に、上記した第1の実施の形態における動作について説明する。車両用シート装置10に乗員が着座している状態で、後突(車両後方から他車両等に衝突)された場合、後突による荷重はまずシートバック16に入力され、シートバック16には図1の矢印F1方向の荷重が作用される。この荷重はリクライニング装置17とロアアーム30とを連結する連結部材50を介してロアアーム30の後部に伝達される。これにより、連結部材50は、前方締結点51を支点にして図2の矢印F2方向(時計回り)の曲げモーメントが作用し、ロアアーム30の後部(後方締結点52近傍)を変形させようとする力が作用する。
【0033】
しかしながら、連結部材50に作用する前方締結点51を支点にした曲げモーメントによって、連結部材50の当接部50aがトルクロッド34の荷重受け部53に当接し、連結部材50よりトルクロッド34を介して直接シート装置の骨格(シートリフタ装置13および/あるいはシートスライドアジャスタ装置11)部分に荷重が伝達される。従って、シート装置の骨格全体で荷重を分担することができ、ロアアーム30の後部には過大な荷重が入力されることがない。それゆえに、ロアアーム30自体を強固な構造にする必要がなく、ロアアーム30のフランジ形状を成形が容易な開放形状とすることができ、ロアアーム30を低コストで成形することが可能となる。
【0034】
上記した第1の実施の形態によれば、後突による荷重が連結部材50を介してロアアーム30に伝達されると、連結部材50がロアアーム30側に設けた荷重受け部53に当接し、直接荷重受け部53によって荷重を受けることができるので、ロアアーム30の後部には過大な荷重が作用せず、ロアアーム30自体を強固にする必要がない。このため、ロアアーム30に高い強度を持たせる複雑な成形が必要なくなるので、ロアアーム30のコストを低減することができ、延いては車両用シート装置10のコストを低減することができる。また、従来のようにシートバックの傾きが過大となることもない。
【0035】
しかも、荷重受け部53として、車両フロア12側に設けられたシートリフタ装置13を構成するトルクロッド34を利用しているので、後突によってロアアーム30に伝達される荷重を、シートリフタ仕様の既存の構成部品(34)で受けることができる、部品点数を殆ど増加させることない。
【0036】
なお、連結部材50と荷重受け部53が常時当接状態におかれている場合には、後突によってロアアーム30に荷重が伝達されても、ロアアーム30の後部を殆ど変形させることなく、荷重受け部53によって直接荷重を受けることができる。また、連結部材50と荷重受け部53との間に少量もしくは適切な隙間が設けられている場合には、後突によってロアアーム30に荷重が伝達されると、ロアアーム30の後部が僅かに変形された後、荷重受け部53によって荷重が受けられるようになる。従って、この場合には、ロアアーム30の変形によって衝突エネルギーを緩和する効果が期待できるようになる。
【0037】
上記した第1の実施の形態においては、連結部材50の下端に、トルクロッド34からなる荷重受け部53に当接する当接部50aを形成したが、連結部材50の下部に荷重受け部53を貫通する孔を設け、この孔の上部を当接部としてもよい。
【0038】
また、上記した第1の実施の形態においては、荷重受け部53(トルクロッド34)に連結部材50を当接させるようにしたが、荷重受け部53には、アッパアーム41あるいはリクライニング装置17を当接させるようにしてもよい。
【0039】
図5および図6は、本発明の第2の実施の形態を示すもので、第1の実施の形態で述べたシートリフタ装置13を装備しない車両用シート装置10に適用したものである。なお、その他の構成は第1の実施の形態と同じであるので、同一部品には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0040】
第2の実施の形態における車両用シート装置10は、シートスライドアジャスタ装置11のロアレール21が車両フロア12に固定され、ロアレール21にアッパレール22が車両前後方向(シート前後方向)に摺動可能に係合されている。
【0041】
アッパレール22上には、車両前後方向に離間した左右一対の締結部材61、62の下端部がボルト締めもしくはリベット締め等によって締結され、締結部材61、62の上端部は左右一対のロアアーム130の外側面の前部および後部にボルト締めもしくはリベット締め等によって締結されている。後方側の締結部材62の上端は左右外方に折り曲げられ、リクライニング装置17(リクライニングアジャスタ42のロアプレート43)と、ロアアーム130とを連結する連結部材50の当接部50aに当接する荷重受け部53を構成している。
【0042】
なお、第2の実施の形態においては、一対のロアアーム130の上端部および下端部に形成された上部フランジ部130aおよび下部フランジ部130bは、互いに内側に折り曲げられているが、上部フランジ部130aと下部フランジ部130bが互いにつながっておらず、車両前後方向に開放された単純な形状となっている点で、第1の実施の形態におけるロアアーム30と共通している。
【0043】
上記した第2の実施の形態においても、先に述べた第1の実施の形態と同様に、後突による荷重がシートバック16に入力されると、この荷重はリクライニング装置17とロアアーム130とを連結する連結部材50を介してロアアーム130の後部に伝達されるが、連結部材50の当接部50aがロアアーム130の後部に締結された後方側の締結部材62の荷重受け部53に当接し、連結部材50より締結部材62を介して直接シート装置の骨格部分に荷重が伝達される。従って、シート装置の骨格全体で荷重を分担することができ、ロアアーム130の後部には過大な荷重が入力されることがなく、ロアアーム130自体を強固な構造にする必要がない。それゆえに、ロアアーム130のフランジ形状を成形が容易な開放形状とすることができ、ロアアーム130を低コストで成形することが可能となる。
【0044】
上記した第2の実施の形態によれば、後突による荷重が連結部材50を介してロアアーム130に伝達されると、ロアアーム130の後部とシートスライドアジャスタ装置11のアッパレール22とを締結する締結部材62に形成した荷重受け部53によって直接荷重を受けることができるので、締結部材62に荷重受け部53を形成するだけの簡単な構成によって、シートリフタ装置を装備していない車両用シート装置10にも、本発明を容易に適用することができる。
【0045】
上記した第2の実施の形態においては、シートリフタ装置を装備していない車両用シート装置10において、荷重受け部53を、ロアアーム130とアッパレール22とを締結する締結部材62に形成したが、荷重受け部53を形成する部位は、必ずしもロアアーム130とアッパレール22とを締結する締結部材62に限定されるものではなく、ロアアーム130と車両フロア12側とを締結する他の締結部材に設けることもできる。
【0046】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】車両用シート装置を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を示す車両用シート装置の側面図である。
【図3】図2のA−A線に沿って切断した断面図である。
【図4】第1の実施の形態における車両用シート装置の分解斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態を示す車両用シート装置の断面図である。
【図6】第2の実施の形態における車両用シート装置の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0048】
10…車両用シート装置、11…シートスライドアジャスタ装置、12…車両フロア、13…シートリフタ装置、15…シートクッション、16…シートバック、17…リクライニング装置、21…ロアレール、22…アッパレール、30、300…ロアアーム、31、32…リンク部材、33、34…トルクロッド、37…平行リンク機構、41…アッパアーム、42…リクライニングアジャスタ、43…ロアプレート、44…アッパプレート、50…連結部材、50a…当接部、53…荷重受け部、61、62…締結部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションに取付けられたロアアームと、シートバックに取付けられ前記ロアアームに対して回転可能なアッパアームと、該アッパアームの回転を禁止/許可するリクライニング装置とを備えた車両用シート装置において、
前記ロアアームの後部と前記リクライニング装置とを連結する連結部材と、前記ロアアーム側に設けられ前記連結部材より前記ロアアームの後部に下方向の荷重が伝達された際に、前記アッパアーム、前記リクライニング装置および前記連結部材のいずれかに当接して前記荷重を受ける荷重受け部とを有することを特徴とする車両用シート装置。
【請求項2】
請求項1において、車両フロア側には、前記シートクッションを上下移動させるシートリフタ装置が設けられ、該シートリフタ装置は、左右一対の前記ロアアームの各々に設けられたリンク部材と、左右の前記リンク部材のうち一方のリンク部材から他方のリンク部材にトルクを伝達するトルクロッドとを有し、前記荷重受け部は前記トルクロッドからなっている車両用シート装置。
【請求項3】
請求項1において、前記荷重受け部は、前記ロアアームと車両フロア側とを締結する締結部材に設けられている車両用シート装置。
【請求項4】
請求項3において、前記荷重受け部は、車両フロア側に設けられたシートスライドアジャスタ装置のアッパレールと前記ロアアームとを締結する締結部材に設けられている車両用シート装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、前記連結部材は、前記荷重受け部に常時当接されている車両用シート装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、前記連結部材と前記荷重受け部との間には、隙間が設けられている車両用シート装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate