説明

車両用シート装置

【課題】この発明は、シートバック全体の軽量化を図りつつ、ヘッドレスト及びロック装置の支持強度を確保することができる車両用シート装置を提供することを目的とする。
【解決手段】シートバック11a、11bのパネルフレーム14、15に、その周縁部に略沿って形成された正面視で少なくとも略U字状の補強ビード部14a、15bを設け、パネルフレーム14の上部に、ヘッドレスト12aを支持する支持部材22を備えた補強プレート14、パネルフレーム15の上部には、ヘッドレスト12b、12cを支持する支持部材24、25を備えた補強プレート15を取付けるとともに、該補強プレート14、15を第1補強ビード部14a、15aに連結し、シートバック11a、11bを車体に対して起立状態に保持するストライカ5(ロック装置7)を、補強プレート14、15と近接する位置に取付けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シートバックと、該シートバックにより支持されるヘッドレストとを備えた車両用シート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されるシート装置として、シートバックのフレーム部材をパネルフレームで構成したものが知られている。このうち、下記特許文献1では、シートバックのパネルフレームに環状ビード部を形成するとともに、この環状ビード部にヘッドレスト取付部を設け、さらには、上記ヘッドスト取付部からフレームの取付部に向かって支承ビード部を形成したものが開示されている。
【0003】
このように、環状ビード部や支承ビード部といったビード部をパネルフレームに形成することで、パネルフレームの強度を確保しながらもその薄肉化を実現でき、その結果としてシートバック全体の軽量化を図ることができるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−61593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したようにパネル製フレームを薄肉化してしまうと、ヘッドレスト取付部を介して支持されたヘッドレストの支持強度を十分に確保できないという問題があった。
【0006】
また、上述したパネルフレームは、例えば、シートバックの面上に荷物等を載置できるように、シートバックが倒伏可能に構成されている所謂可倒式のものに採用されることがある。
【0007】
ここで、シートバックを可倒式とした場合には、一般的に、乗員が着座する通常使用状態においてシートバックを起立状態に保持するためのロック装置が備えられ、その一部がシートバックに備えられる。
【0008】
従って、この場合、シートバックをより安定して起立状態に保持するためには、シートバックにおけるロック装置の支持強度を十分に確保しなければならない。
【0009】
この発明は、シートバック全体の軽量化を図りつつ、ヘッドレスト及びロック装置の支持強度を確保することができる車両用シート装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の車両用シート装置は、シートバックと、該シートバックにより支持されるヘッドレストとを備えた車両用シート装置であって、上記シートバックのパネルフレームに、その周縁部に略沿って形成された正面視で少なくとも略U字状の補強ビード部を設け、上記パネルフレームの上部に、上記ヘッドレストを支持する支持部材を備えた補強部材を取付けるとともに、該補強部材を上記補強ビード部に連結し、上記シートバックを車体に対して起立状態に保持するロック装置を、上記補強部材に直接、または該補強部材と近接する位置に取付けたものである。
【0011】
この構成によれば、略U字状の補強ビード部や補強部材によって、シートバックにおけるロック装置の支持強度と、支持部材によるヘッドレストの支持強度とを確保することができる。そして、この場合、特別なパイプ部材等を設けなくても、上述した各支持強度を確保できるため、シートバック全体の軽量化を図ることができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記補強ビード部が、正面視で略環状に形成されるものである。
【0013】
この構成によれば、補強ビード部を略環状に形成したことで、パネルフレームの補強部位をその周縁部において途切れることなく形成することができる。これにより、ロック装置及びヘッドレストの支持強度をさらに向上させることができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記補強部材が、車幅方向の左右に配置される2つのヘッドレストを支持する上記支持部材を備えた第1、第2の補強部材からなり、上記パネルフレームの上部の車幅方向略中央部において上記第1、第2の補強部材を重ね合せた部位に上記ロック装置を取付けたものである。
【0015】
この構成によれば、2枚の補強部材を重ね合わせるという簡素な構成でありながら、ロック装置の支持強度を向上させることができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、上記パネルフレームの上部の車幅方向略中央部に、上記ロック装置に対応した開口部を備え、上記補強ビード部は、上記開口部から離間した位置まで延びて形成されているものである。
【0017】
例えば、補強ビード部をロック装置に対応する開口部まで及ぶように形成した場合を考えると、この場合、開口部側の端部が脆弱になることによって補強ビード部による補強の効果が低下する虞がある。
【0018】
この構成によれば、補強ビード部を開口部から離間した位置まで延びるように形成しているため、上述したような補強効果の低下を防止できる。
【0019】
この発明の一実施態様においては、上記補強ビード部を、上記補強部材と正面視で重なる位置に形成するとともに、上記補強ビードの、上記補強部材と重なる部位のビード高さを他より低くなるように形成したものである。
【0020】
この構成によれば、補強部材を補強ビード部と正面視で重なるように配置したとしても、シートバックの厚みを抑制することができ、その大型化を防止できる。
【0021】
この発明の一実施態様においては、上記補強ビード部のうち、ビード高さが高い部位の端部同士を、上記補強部材を介して連結したものである。
【0022】
この構成によれば、補強ビード部による補強の効果を補強部材によってさらに高めることができ、ロック装置及びヘッドレストの支持強度をさらに向上させることができる。
【0023】
この発明の一実施態様においては、上記パネルフレームが、金属製であり、上記補強部材は、上記金属製のパネルフレームにスポット溶接されているものである。
【0024】
パネルフレームの薄肉化によってシートバック全体の軽量化を図る場合において、ヘッドレストの支持部材を、例えばアーク溶接等の方法でパネルフレームに直接取付けようとすると、溶接の途中でパネルフレームに穴が空くといった不都合が生じ、上記支持部材の取付けが困難になる虞がある。
【0025】
この構成によれば、ヘッドレストの支持部材を、パネルフレームに連結された補強部材にスポット溶接で取付けるようにすることで、溶接による接合が容易に行える。
【0026】
この発明の一実施態様においては、上記シートバックを車体に対して起立状態に保持している保持点同士を結んだ仮想線と略直交する方向に延びる補助ビード部を、上記パネルフレームの、上記補強ビード部よりも内側の領域に複数形成したものである。
【0027】
この構成によれば、シートバックを保持する保持点から大きく離間した部位の剛性を向上させることができる。
【0028】
この発明の一実施態様においては、上記パネルフレームが、後方にトランクルームが備えられるリヤシートのシートバックに備えられるものである。
【0029】
リヤシートのシートバックでは、例えば、これを倒伏状態にした時、その背面部が荷物等を載置するための載置面として使用されることがある。そこで、補強ビード部や補強部材によってパネルフレームを補強することにより、荷物の荷重に対するシートバックの耐久性を向上させることができ、補強ビード部や補強部材による補強の効果がより顕著なものとなる。
【発明の効果】
【0030】
この発明によれば、略U字状の補強ビード部や補強部材によって、シートバックにおけるロック装置の支持強度と、支持部材によるヘッドレストの支持強度とを確保することができる。そして、この場合、特別なパイプ部材等を設けなくても、上述した各支持強度を確保できるため、シートバック全体の軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明の実施形態に係るシート装置を備えた車両の後部側面図。
【図2】シートバックの内部構造を車両前方から見た図。
【図3】シートバックの内部構造を車両後方から見た図。
【図4】図2のX−X線矢視断面図。
【図5】この発明の他の実施形態に係るシート装置を示す図であり、シートバックの内部構造を車両前方から見た図。
【図6】図5の状態から補強プレートを取外した状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図1は、本発明の一実施形態に係るシート装置としてのリヤシート1を備えた車両Vの後部側面図である。図1では、4ドアセダンタイプの車両Vが示されており、車両Vの車室内には、運転席シート及び助手席シートからなる不図示の1列目シートが配設されるとともに、この1列目シートの後方側には、2列目シートとしてのリヤシート1が配設されている。そして、リヤシート1の後方には、トランクリッド2によって上方が覆われるトランクルーム3が配設されている。なお、図中において矢印(F)は車体前方、矢印(R)は車体後方を示す。
【0033】
リヤシート1は、図1に示すように、車体フロアの上方に、シートクッション10と、シートバック11と、ヘッドレスト12とを備えたシート装置である。
【0034】
このうち、リヤシート1を構成するシートバック11は、回動軸13を中心に回動することで、図1にて実線で示す起立(通常使用)状態から図中二点鎖線で示すようにシートクッション10側に倒伏可能な可倒式のシートバックとされている。
【0035】
ここで、リヤシート1のシートバック11を倒伏させた時には、その背面部が略水平に延びた状態となる。これにより、二点鎖線で示すように、シートバック11の背面部を載置面としてこれに荷物Wを載置することが可能になっている。
【0036】
また、シートバック11の背面部には、シートバック11を車体4へ係止するストライカ5が備えられている。一方、車体4側には、シートバック11が起立状態にある時に、ストライカ5を不図示の上記係合爪と係合させることによってシートバック11を車体4に対して起立状態に保持する公知のキャッチ機構6が配設されている。本実施形態では、上述したシートバック11側のストライカ5と、車体4側のキャッチ機構6とによってシートバック11のロック装置7が構成されている。
【0037】
図2、図3は、それぞれシートバック11の内部構造を車両前方、後方から見た図であり、図4は、図2のX−X線矢視断面図である。リヤシート1は、図2、図3に示すように、互いに独立した右側シート1A及び左側シート1Bから構成されており、これら2つの右側シート1A、左側シート1Bは、そのシートバック11a、11bが独立して倒伏可能とされている。
【0038】
また、本実施形態では、左側シート1Bの長さが右側シート1Aよりも長く設定されており、左側シート1Bには、中央席及び左側方席のシートクッション、シートバックが一体に形成されている。
【0039】
このため、左側シート1Bには、中央席と左側方席とが形成され、左側シート1Bは2人の乗員が並列に着座可能なベンチ型シートとなっている。一方、右側シート1Aでは、右側方席のみが形成され、1人の乗員が着座可能となっている。従って、リヤシート1は、各シート1A、1Bによって三人掛けが可能になっており、各乗員に対応して3つのヘッドレスト12a、12b、12cがシートバック11に支持されている。
【0040】
但し、本発明は、右側シート1A、左側シート1Bの車幅方向の長さが異なるように構成することに必ずしも限定されるものではなく、例えば、右側シート1A、左側シート1Bを左右対称に構成し、2つのシート1A、1Bの車幅方向中央側端部によって中央席を形成してもよい。
【0041】
ところで、右側、左側の各シート1A、1Bを構成するシートバック11a、11bの内部には、略矩形状をなす金属製のパネルフレーム14、15が備えられている。
【0042】
パネルフレーム14、15は、その車幅方向両端下部においてヒンジ部材16〜19により回動可能に支持されている。ヒンジ部材16〜19は、上述した回動軸13と、該回動軸13を車体に取付けるための車体取付けプレート16a、17a、19aと、回動軸13により車体取付けプレート16a、17a、19aに対して回動自在に枢支された回動プレート16b〜19bと、該回動プレート16b〜19bに連結され、溶接によってパネルフレーム14、15の車幅方向両端下部に接合されたヒンジブラケット16c〜19cとにより構成されている。
【0043】
パネルフレーム14、15を含むシートバック11a、11bは、このヒンジ部材16〜19により回動可能に支持されており、これによって、シートクッション10側に倒伏可能となっている。
【0044】
また、各パネルフレーム14、15は、図2、図3に示すように、それぞれプレス成形(深絞り成形)によりその車幅方向両側部及び下部の周縁部に略沿って形成された、正面視で略U字状をなす第1ビード部14a、15aを有している。
【0045】
そして、各パネルフレーム14、15には、第1ビード部14aの両端部、第1ビード部15aの両端部をそれぞれ結ぶ第2ビード部14b、15bが車幅方向に延びるように形成されている。パネルフレーム14、15では、これら第1、第2ビード部14a、15a、14b、15bによって、正面視で略環状をなすビード部が形成されている。
【0046】
ここで、第1、第2ビード部14a、14bは、図4に示すように、パネルフレーム14の前面側が凸部となるように形成されており、パネルフレーム15の第1、第2ビード部15a、15bについても同様に、パネルフレーム15の前面側が凸部となるように形成されている。そして、第1、第2ビード部14a、15a、14b、15bのビード高さ、つまりは車両前方への突出量は、第2ビード部14b、15bのほうが、第1ビード部14a、15aよりも低く(突出量が小さく)設定されている。
【0047】
また、第1、第2ビード部14a、15a、14b、15bよりも内側の領域、即ち第1、第2ビード部14a、15a、14b、15bにより囲まれたパネルフレーム14、15の内部領域には、側方かつ上方に向かって斜めに延び、第1ビード部14a、15aの車幅方向両側部及び下部を結ぶ直線状またはV字状の第3ビード部14c、…、15c、…が複数形成されている。
【0048】
また、パネルフレーム14、15の前面側上部には、第2ビード部14b、15bと正面視で重なる位置に車幅方向に延びる補強パネル20、21が取付けられている。補強パネル20、21は、その車幅方向の複数箇所に亘ってパネルフレーム14、15にスポット溶接され、互いに連結されている。
【0049】
図2では、パネルフレーム14、15と補強パネル20、21との接合ポイントを×印で示しており、本実施形態では、図2に示すように、第1ビード部14a、15aの各両端部に接合ポイントが設定されている。つまり、本実施形態では、第1ビード部14aの両端部、及び第1ビード部15aの両端部が、それぞれ補強パネル20、21を介して連結されている。
【0050】
ここで、パネルフレーム14の上部では、補強プレート20に形成された平面部20aに、右側方席用のヘッドレスト12aを支持するためのヘッドレスト支持部材22が溶接によって2つ取付けられている。
【0051】
ヘッドレスト支持部材22は、筒状のパイプ部材であり、それぞれの中空部分に、ヘッドレスト12aの下端部に取付けられた2本のステー23を挿入することで、図示のようにヘッドレスト12aが、シートバック11aの上方の所定位置に支持されている。
【0052】
一方、パネルフレーム15の上部では、補強プレート21に形成された平面部21aに、中央席用及び左側方席用のヘッドレスト12b、12cを支持するためのヘッドレスト支持部材24、25が溶接によって2つづつ取付けられている。
【0053】
ヘッドレスト支持部材24、25も、ヘッドレスト支持部材22と同型のパイプ部材であり、それぞれの中空部分に、ヘッドレスト12b、12cの下端部に取付けられた2本のステー26、27を挿入することで、図示のようにヘッドレスト12b、12cが、シートバック11b、11cの上方の所定位置に支持されている。
【0054】
また、パネルフレーム14には、上述したロック装置7を構成するストライカ5が、図4に示すように補強プレート20に近接した位置に取付けられている。
【0055】
ストライカ5は、図1、図4に示すように、側面視で略コ字状をなす部材であり、その上下両端部が、ヘッドレスト支持部材22の間でパネルフレーム14に溶接された取付けブラケット28(図2、図4参照)に固定されている。
【0056】
また、パネルフレーム14では、第2ビード部14bの途中に、ストライカ5の位置に対応して図3、図4に示すようなスリット状の開口部29が形成されている。ストライカ5は、この開口部29を貫通してシートバック11aの背面部から後方に突出している。
【0057】
一方、パネルフレーム15においても、ストライカ5が、補強プレート21に近接した位置に取付けられており、その上下両端部が、ヘッドレスト支持部材24、25の間でパネルフレーム15に溶接された取付けブラケット30(図2参照)に固定されている。
【0058】
そして、パネルフレーム15では、第2ビード部15bの途中に、ストライカ5の位置に対応して図3に示すようなスリット状の開口部31が形成されている。ストライカ5は、この開口部31を貫通してシートバック11bの背面部から後方に突出している。
【0059】
なお、ここで言う「近接」の程度としては、例えば図2、図4に示すように、補強プレート20、21が正面視でストライカ5と重なる程度に近接しているのが好ましい。
【0060】
ところで、右側シート1Aでは、シートバック11aがその起立状態において、主に車幅方向両端下部のヒンジ部材16、17とストライカ5を含むロック装置7とにより3点で保持されている。上述した第3ビード部14cは、シートバック11aを保持している保持点(ヒンジ部材16、17、ロック装置7)同士を結んだ仮想線α(図2、図3にて太い二点鎖線で示す。)に対して略直交する方向に延びている。
【0061】
また、左側シート1Bにおいても、シートバック11bがその起立状態において、主に車幅方向両端下部のヒンジ部材18、19とロック装置7とにより3点で保持されている。そして、上述した第3ビード部15cは、シートバック11bを保持している保持点(ヒンジ部材17、18、ロック装置7)同士を結んだ仮想線β(図2、図3にて二点鎖線で示す。)に対して略直交する方向に延びている。
【0062】
本実施形態では、パネルフレーム14、15に略U字状をなす第1ビード部14a、15aに補強プレート20、21を連結して、この補強プレート20、21にヘッドレスト支持部材22、24、25を取付けたことにより、これらヘッドレスト支持部材22、24、25によるヘッドレスト12a〜12cの支持強度を確保できる。
【0063】
さらに、補強プレート20、21に近接してロック装置7を構成するストライカ5を配設したことにより、第1ビード部14a、15aや補強プレート20、21によって、シートバック11a、11bにおけるロック装置7の支持強度を確保することができる。
【0064】
そして、この場合、特別なパイプ部材等を設けなくても、上述した各支持強度を確保できるため、シートバック11全体の軽量化を図ることができる。
【0065】
また、第1、第2ビード部14a、14b、15a、15bにより略環状のビードを形成したことで、パネルフレーム14、15の補強部位をその周縁部において途切れることなく形成することができる。これにより、上述した各支持強度をさらに向上させることができる。
【0066】
また、第2ビード部14b、15bに関し、そのビードの高さを第1ビード部14a、15aよりも低く設定したことで、本実施形態のように補強プレート20、21を第2ビード部14b、15bと正面視で重なるように配置したとしても、シートバック11の厚みを抑制することができ、その大型化を防止できる。
【0067】
また、相対的にビード高さが高い第1ビード部14a(第1ビード部15a)の両端部を連結するようにして補強プレート20(補強プレート21)を取付けたことにより、第1ビード部14a、15aによる補強の効果を補強プレート20、21によってさらに高めることができ、上述した各支持強度をさらに向上させることができる。
【0068】
ところで、上記特許文献1では、環状ビード部と、ヘッドレスト取付部と、支承ビード部とを備えることで、パネルフレームの薄肉化を図り、ひいてはシートバック全体の軽量化を図っているが、パネルフレームを薄肉化した場合、ヘッドレスト支持部材を、例えばアーク溶接等の方法でパネルフレームに直接取付けようとすると、溶接の途中でパネルフレームに穴が空くといった不都合が生じ、ヘッドレスト支持部材の取付けが困難になる虞がある。
【0069】
これに対し、本実施形態では、ヘッドレスト支持部材22、24、25を、金属製(鋼板製)のパネルフレーム14、15に連結された鋼板製の補強プレート20、21にスポット溶接で取付けるようにしたため、溶接による接合が容易に行えるという利点がある。
【0070】
また、シートバック11a、11bを起立状態に保持する保持点(ヒンジ部材16〜19、ロック装置7)を結んだ仮想線α、βに対して略直交する方向に延びる第3ビード部14c、15cを形成したことで、上記保持点から大きく離間した部位の剛性を向上させることができる。このため、例えば、パネルフレーム14、15の車幅方向両端上部にて大きなモーメントが作用したとしても、パネルフレーム14、15の折れ曲りを効果的に抑制することができる。
【0071】
また、上述したパネルフレーム14、15を、後方にトランクルーム3(図1参照)が配設されたリヤシート1のシートバック11に備えることで、図1に示すようにシートバック11を倒伏状態にしてその背面部を、荷物Wを載置する載置面として使用する場合、荷物Wの荷重に対する耐久性を向上させることができる。このような理由から、セダン系の車両Vに備えられたリヤシート1において、そのシートバック11のパネルフレーム14、15を第1ビード部14a、15aや補強プレート20、21によって補強する効果はより顕著なものになると言える。
【0072】
また、ロック装置7のストライカ5をシートバック11側に取付けたことにより、パネルフレーム14、15の開口部29、31の大きさは、図3に示すようにストライカ5を貫通させることができる程度の小さなものにとどめることができる。このため、開口部29、31によって第2ビード部14b、15bが途切れることがなくなり、略環状のビードをパネルフレーム14、15に容易に形成することができる。
【0073】
ところで、本発明は、上述した図1〜図4に示す実施形態のように、ロック装置を補強プレートに近接して設けることに必ずしも限定されない。例えば、図5、図6に示すように、補強プレート70、71に、ロック装置(ここでは、図中二点鎖線で示すキャッチ機構56)を直接取付けてもよい。
【0074】
図5は、本発明の他の実施形態に係るシートバック61の内部構造を車両前方から見た図であり、図6は、図5の状態から補強プレート70、71を取外した状態を示す図である。なお、図5、図6において、上述した最初の実施形態と同様の構成要素については、同一の番号を付して説明を省略する。
【0075】
図5、図6に示す実施形態では、図1〜図4に示す最初の実施形態と同様、シートバック61のパネルフレーム65が、その両側部及び下部の周縁部に略沿って形成された、正面視で略U字状をなす第1ビード部65aと、該第1ビード部65aの両端部を結ぶように形成された、車幅方向に延びる第2ビード部65bとを有している。パネルフレーム65では、これら第1、第2ビード部65bにより、略環状のビード部が形成されている。
【0076】
なお、第1、第2ビード部65a、65bのビード高さは、第2ビード部65bのほうが、第1ビード部65aよりも低く設定されている。
【0077】
また、パネルフレーム65には、第1、第2ビード部65a、65bより内側の領域に、第3ビード部15cに相当する第3ビード部65c、…が複数形成されている。
【0078】
ところで、上述した最初の実施形態のようにシートバック11側にストライカ5を取付けた場合、シートバック11を倒伏した状態では、図1にて二点鎖線で示すようにストライカ5が上方に起立した状態となってしまう。このため、荷物Wよりもさらに大きな物品をシートバック11の背面部に載置しようとすると、ストライカ5が邪魔になる虞がある。
【0079】
そこで、本実施形態では、ロック装置を構成するストライカ(ここでは不図示)は車体側に取付けられる一方、キャッチ装置56はシートバック61側に取付けられている。そして、パネルフレーム65の上部には、その車幅方向の略中央部に、キャッチ機構56に対応した開口部81が形成されている。
【0080】
また、本実施形態では、パネルフレーム65の前面側上部に、最初の実施形態の補強プレート21に相当する第1、第2補強プレート70、71が取付けられている。
【0081】
補強プレート70、71は、それぞれパネルフレーム65の車幅方向中央側の端部が折り曲げられ、その先端が、車両前方に延びるフランジ部70b、71bとされている。補強プレート70、71は、両フランジ部70b、71bを重ね合わせて互いを連結することにより一体化されている。
【0082】
ここで、上述したキャッチ機構56は、フランジ部70b、71bが重なり合った部位にボルト、ナット等の連結部材を用いて取付けられている。
【0083】
なお、図5、図6に示すパネルフレーム65は、パネルフレーム15に相当するものであり、例えば、補強プレート70には、中央席用のヘッドレストを支持するためのヘッドレスト支持部材を取付けるための平面部70a、70aが形成される一方、補強プレート71には、左側席用のヘッドレストを支持するヘッドレスト支持部材を取付けるための平面部71a、71aが形成されている。
【0084】
このように、本実施形態では、2枚の補強プレート70、71を備え、両補強プレート70、71を重ね合わせた部位にキャッチ機構56を取付けたため、補強プレート70、71を重ね合わせるという簡素な構成でありながら、ロック装置(キャッチ機構56)の支持強度を向上させることができる。
【0085】
また、第2ビード部65bに関し、これをキャッチ機構56に対応する開口部81まで及ぶように形成した場合を考えると、この場合、開口部81側の端部が脆弱になることによって第2ビード部65bによる補強の効果が低下する虞があるが、本実施形態では、図6に示すように、第2ビード部65bを開口部81から離間した位置まで延びるように形成しているため、上述したような補強効果の低下を防止できる。
【0086】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の、略U字状の補強ビード部は、第1ビード部14a、15a、65aに対応し、
以下同様に、
補強部材は、補強プレート20、21、70、71に対応し、
第1、 第2の補強部材は、補強プレート70、71に対応し、
補助ビード部は、第3ビード部14c、15c、65cに対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
例えば、上述した実施形態では、ロック装置をパネルフレームの車幅方向略中央部に取付けるようにしているが、これに替えてロック装置をパネルフレームの車幅方向側部において補強プレートに直接、または該補強プレートと近接する位置に取付けてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1…リヤシート
3…トランクルーム
7…ロック装置
11、11a、11b、61…シートバック
14、15、65…パネルフレーム
14a、15a、65a…第1ビード部
14b、15b、65b…第2ビード部
14c、15c、65c…第3ビード部
16〜19…ヒンジ部材
20、21、70、71…補強プレート
22、24、25…ヘッドレスト支持部材
81…開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックと、該シートバックにより支持されるヘッドレストとを備えた車両用シート装置であって、
上記シートバックのパネルフレームに、その周縁部に略沿って形成された正面視で少なくとも略U字状の補強ビード部を設け、
上記パネルフレームの上部に、上記ヘッドレストを支持する支持部材を備えた補強部材を取付けるとともに、該補強部材を上記補強ビード部に連結し、
上記シートバックを車体に対して起立状態に保持するロック装置を、上記補強部材に直接、または該補強部材と近接する位置に取付けた
車両用シート装置。
【請求項2】
上記補強ビード部は、正面視で略環状に形成される
請求項1記載の車両用シート装置。
【請求項3】
上記補強部材は、車幅方向の左右に配置される2つのヘッドレストを支持する上記支持部材を備えた第1、第2の補強部材からなり、
上記パネルフレームの上部の車幅方向略中央部において上記第1、第2の補強部材を重ね合せた部位に上記ロック装置を取付けた
請求項1または2記載の車両用シート装置。
【請求項4】
上記パネルフレームの上部の車幅方向略中央部に、上記ロック装置に対応した開口部を備え、
上記補強ビード部は、上記開口部から離間した位置まで延びて形成されている
請求項3記載の車両用シート装置。
【請求項5】
上記補強ビード部を、上記補強部材と正面視で重なる位置に形成するとともに、
上記補強ビードの、上記補強部材と重なる部位のビード高さを他より低くなるように形成した
請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両用シート装置。
【請求項6】
上記補強ビード部のうち、ビード高さが高い部位の端部同士を、上記補強部材を介して連結した
請求項5記載の車両用シート装置。
【請求項7】
上記パネルフレームは、金属製であり、
上記補強部材は、上記金属製のパネルフレームにスポット溶接されている
請求項1〜6のいずれか一項に記載の車両用シート装置。
【請求項8】
上記シートバックを車体に対して起立状態に保持している保持点同士を結んだ仮想線と略直交する方向に延びる補助ビード部を、上記パネルフレームの、上記補強ビード部よりも内側の領域に複数形成した
請求項1〜7のいずれか一項に記載の車両用シート装置。
【請求項9】
上記パネルフレームは、後方にトランクルームが備えられるリヤシートのシートバックに備えられるものである
請求項1〜8のいずれか一項に記載の車両用シート装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−105050(P2011−105050A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259456(P2009−259456)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】