説明

車両用シート

【課題】シートクッション内に配置された単一のモータによって複数の被駆動機構を駆動することができると共に、シートクッションの大型化や質量の増加を回避することができる車両用シートを得る。
【解決手段】本車両用シートでは、1モータパワーユニット48がクッションフレーム14の前部フレーム24に支持されている。つまり、シートクッション12の骨格部材が1モータパワーユニット48の支持部材としても機能するため、1モータパワーユニット48を支持するための構成を簡素化することができる。これにより、シートクッション12の質量が増加することを回避できる。しかも、1モータパワーユニット48がシートクッション12内の前部側に配置されているため、シートクッションパッド等が配置されるシートクッション12内の中央側及び後部側のスペースを、クッション性確保のために有効に利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関し、特に、シート本体に設けられた複数の被駆動機構を単一のモータによって駆動する車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に示されたパワーシートの駆動装置では、パワーシートのスライドレールを構成する左右一対のアッパレール間に、連結プレートが掛け渡されている。この連結プレート上には、クラッチボックスとモータが配置されており、このモータの駆動力によってシートの前後進、シートの前部昇降、及びシートの後部昇降の3動作を行う構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭64−30850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記構成のパワーシートの駆動装置では、大型なクラッチボックスとモータが、シート(シートクッション)の略中央部に配置されている。つまり、クッションパッドやクッションスプリング等が配置されるシートクッションの略中央部にクラッチボックスやモータが配置されているため、シートクッションのクッション性(座り心地)を良好にするためには、シートクッションを大型化しなければならない可能性がある。
【0005】
また、シートクッションの略中央部に配置されたクラッチボックスとモータが、大型な連結プレートを介してシートに支持されているため、この連結プレートによってシートの質量が増加するという問題もある。さらに、シートの前後進などがその移動範囲の限度において制限される際にはモータがロックするため、上述の連結プレートには、モータの過大なロック荷重を支持できるだけの剛性が要求される。この点、上述の連結プレートは、シート左右方向に長尺状に形成されているため、剛性を向上させるためには板厚寸法を大きく設定する必要があり、これによってもシートの質量が増加してしまう。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、シートクッション内に配置された単一のモータによって複数の被駆動機構を駆動することができると共に、シートクッションの大型化や質量の増加を回避することができる車両用シートを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明に係る車両用シートは、複数の被駆動機構が設けられると共に、シートクッションの骨格部材であるクッションフレームの前部がシート幅方向に沿った前部フレームによって構成されたシート本体と、前記シートクッション内の前部側に配置され、前記前部フレームに支持されると共に、前記複数の被駆動機構に個別に対応した複数の回転体及び単一のモータを有し、前記モータの回転力を前記複数の回転体のうち任意に選択された回転体へと伝達して当該選択された回転体を回転駆動させる1モータパワーユニットと、前記複数の回転体から前記複数の被駆動機構へ個別に駆動力を伝達する複数の駆動力伝達機構と、を備えている。
【0008】
請求項1に記載の車両用シートでは、シートクッション内の前部側に配置された1モータパワーユニットが複数の回転体及び単一のモータを有している。モータの回転力は、複数の回転体のうち任意に選択された回転体へと伝達され、当該選択された回転体が回転駆動される。この回転体の駆動力は、複数の駆動力伝達機構のうち一の駆動力伝達機構を介して、シート本体の複数の被駆動機構のうち一の被駆動機構へと伝達される。
【0009】
ここで、この車両用シートでは、シートクッションの骨格部材であるクッションフレームの前部がシート幅方向に沿った前部フレームによって構成されており、上述の1モータパワーユニットがこの前部フレームに支持されている。つまり、シートクッションの骨格部材が1モータパワーユニットの支持部材としても機能するため、1モータパワーユニットを支持するための構成を簡素化することができる。これにより、シートクッションの質量が増加することを回避できる。
【0010】
しかも、1モータパワーユニットが前部フレームに支持されてシートクッション内の前部側に配置されているため、シートクッションパッド等が配置されるシートクッション内の中央側及び後部側のスペースを、クッション性確保のために有効に利用することができる。これにより、クッション性確保のためにシートクッションが大型化することを回避できる。
【0011】
請求項2に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1に記載の車両用シートにおいて、前記複数の回転体は、シート幅方向に同軸的に並んで配置されていることを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載の車両用シートでは、シートクッション内の前部側に配置された1モータパワーユニットは、複数の回転体がシート幅方向に同軸的に並んで配置されている。これにより、1モータパワーユニットのシート前後方向の寸法を小さく設定することができるので、1モータパワーユニットをシートクッション内の前部側にコンパクトに配置させることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1又は請求項2に記載の車両用シートにおいて、前記1モータパワーユニットは、支持ブラケットを介して前記前部フレームから吊り下げられた状態で支持されていることを特徴としている。
【0014】
請求項3に記載の車両用シートでは、1モータパワーユニットが支持ブラケットを介して、クッションフレームの前部フレームから吊り下げられた状態で支持されている。これにより、前部フレームよりも上側のスペースが1モータパワーユニットの配置スペースによって侵食されることを回避できる。
【0015】
しかも、支持ブラケットには、主に1モータパワーユニットの質量による引張荷重が作用し、曲げ剛性があまり要求されないため、支持ブラケットの曲げ剛性確保のために支持ブラケットの質量等が増加することを回避できる。
【0016】
請求項4に記載の発明に係る車両用シートは、請求項3に記載の車両用シートにおいて、前記クッションフレームは、前記前部フレームの後方側でシート幅方向に沿って配置された補助フレームを有し、前記支持ブラケットは、前端側が前記前部フレームに支持され、後端側が前記補助フレームに支持されていることを特徴としている。
【0017】
請求項4に記載の車両用シートでは、1モータパワーユニットの支持ブラケットは、前端側がクッションフレームの前部フレームに支持され、後端側が前部フレームの後方側でシート幅方向に沿って配置された補助フレームに支持されている。つまり、支持ブラケットは、前後両端側がクッションフレームの構成部材に支持されているため、前部フレーム及び補助フレームの荷重負担が半減する。これにより、支持ブラケットを介したクッションフレームへの1モータパワーユニットの支持剛性を良好に確保することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明に係る車両用シートは、請求項4に記載の車両用シートにおいて、前記支持ブラケットは、前記前部フレーム及び前記補助フレームの何れか一方に引っ掛けられた引掛部と、係止手段によって前記前部フレーム及び前記補助フレームの何れか他方に係止された係止部とを有し、前記係止部が前記他方に係止されることにより前記一方からの前記引掛部の離脱が阻止されることを特徴としている。
【0019】
請求項5に記載の車両用シートでは、1モータパワーユニットを支持する支持ブラケットをクッションフレームに取り付ける際には、支持ブラケットに設けられた引掛部を前部フレーム及び補助フレームの何れか一方に引っ掛けた後で、支持ブラケットに設けられた係止部を係止手段によって前部フレーム及び補助フレームの何れか他方に係止する。これにより、上記一方からの引掛部の離脱が阻止され、支持ブラケットがシートクッションに装着されるので、1モータパワーユニットをクッションフレームに容易に取り付けることができる。
【0020】
請求項6に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の車両用シートにおいて、前記支持ブラケットは、板厚方向がシート幅方向に沿う状態でシート幅方向に並んだ複数のプレートを有し、前記1モータパワーユニットは、前記複数のプレートを貫通した状態で前記支持ブラケットに組み付けられていることを特徴としている。
【0021】
請求項6に記載の車両用シートでは、支持ブラケットを構成する複数のプレートが、板厚方向をシート幅方向に沿わせた状態でシート幅方向に並んで配置されており、1モータパワーユニットがこれらのプレートを貫通した状態で支持ブラケットに組み付けられている。これにより、シート幅方向に沿った前部フレームに対して、簡素で軽量な構成の支持ブラケットにより1モータパワーユニットを支持させることができる。
【0022】
請求項7に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の車両用シートにおいて、前記シートクッションの左右両側部のうちの一方には、被操作部材が設けられ、当該被操作部材が操作された際の操作力が前記1モータパワーユニットに伝達されることにより、前記複数の回転体のうち前記モータの回転力が伝達される回転体が選択されると共に、前記1モータパワーユニットは、シート幅方向において前記被操作部材が設けられた側に配置されていることを特徴としている。
【0023】
請求項7に記載の車両用シートでは、シートクッションの左右両側部のうちの一方に設けられた被操作部材が操作されると、その操作力が1モータパワーユニットに伝達される。これにより、複数の回転体のうちモータの回転力が伝達される回転体が選択される。ここで、この発明では、1モータパワーユニットが、シート幅方向において被操作部材が設けられた側に配置されている。これにより、被操作部材から1モータパワーユニットに操作力を伝達するための構成を小型なものにすることができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明に係る車両用シートでは、シートクッション内に配置された単一のモータによって複数の被駆動機構を駆動することができると共に、シートクッションの大型化や質量の増加を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用シートの主要部の構成を示す斜視図である。
【図2】図1においてクッションフロントフレームを省略した状態の斜視図である。
【図3】図2に示される車両用シートを図2とは異なる角度から見た状態で示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る車両用シートの構成部材である1モータパワーユニット及び支持ブラケットを示す斜視図である。
【図5】図4に示される1モータパワーユニット及び支持ブラケットを図4とは異なる角度から見た状態で示す斜視図である。
【図6】本発明の実施形態に係る車両用シートのクッションフレームの部分的な構成を示す斜視図である。
【図7】支持ブラケットの引掛部を前部フレームに引っ掛ける際の状況を説明するための斜視図である。
【図8】支持ブラケットの係止部を補助フレームに係止する際の状況を説明するための斜視図である。
【図9】支持ブラケットを介して前部フレーム及び補助フレームに支持された1モータパワーユニットを示す斜視図である。
【図10】図4及び図5に示される1モータパワーユニットの構成部材であるクラッチ機構の斜視図である。
【図11】図4及び図5に示される1モータパワーユニットの構成部材であるクラッチ機構の部分的な構成を示す分解斜視図である。
【図12】本発明の実施形態に係る車両用シートに設けられたスイッチユニットの操作方法を説明するための図であり、(A)はスライド操作、(B)は前チルト操作、(C)はリフト操作、(D)はリクライナ操作、(E)はランバー操作に対応した図である。
【図13】本発明の実施形態に係る車両用シートに設けられたスライド用駆動力伝達機構の構成を示す斜視図である。
【図14】図13に示されるスライド用駆動力伝達機構の構成部材である増速ギア列を示す斜視図である。
【図15】図13に示されるスライド用駆動力伝達機構の構成部材であるアウタ側ギアボックスの構成を示し、(A)はシート左側から見た斜視図であり、(B)はシート右側から見た斜視図である。
【図16】図13に示されるスライド用駆動力伝達機構の構成部材であるインナ側ギアボックスの構成を示し、(A)はシート右側から見た斜視図であり、(B)はシート左側から見た斜視図である。
【図17】本発明の実施形態に係る車両用シートに設けられた前チルト用駆動力伝達機構の構成を示す斜視図である。
【図18】(A)図17に示される前チルト用駆動力伝達機構の構成部材である前チルト用ギアボックスの構成を示す斜視図であり、(B)は(A)に示される前チルト用ギアボックスの構成部材であるネジ歯車及びスクリューの構成を示す斜視図である。
【図19】本発明の実施形態に係る車両用シートに設けられたリフタ用駆動力伝達機構の構成を示す斜視図である。
【図20】(A)図19に示されるリフタ用駆動力伝達機構の構成部材であるリフタ用ギアボックスの構成を示す斜視図であり、(B)は(A)に示されるリフタ用ギアボックスの構成部材であるネジ歯車及びスクリューの構成を示す斜視図である。
【図21】本発明の実施形態に係る車両用シートに設けられたランバー用駆動力伝達機構の構成を示す斜視図である。
【図22】図21に示されるランバー用駆動力伝達機構の主要部の構成を示す斜視図である。
【図23】本発明の実施形態に係る車両用シートに設けられたリクライナ駆動力伝達機構の構成を示す斜視図である。
【図24】図23に示されるリクライナ用駆動力伝達機構の構成部材である前側ギアボックスの構成を示す分解斜視図である。
【図25】図23に示されるリクライナ用駆動力伝達機構の構成部材である後側ギアボックス及び増速ギア列を含む周辺部材の構成を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図1〜図25を参照して、本発明の実施形態に係る車両用シート10について説明する。なお、図中矢印FRはシート前方向を示し、矢印UPはシート上方向を示し、矢印LHはシート左方向を示し、矢印RHはシート右方向を示している。また、この車両用シート10では、シート幅方向とシート左右方向とが一致している。
【0027】
図1〜図3に示されるように、車両用シート10は、シート本体を構成するシートクッション12及びシートバック16を備えている。シートクッション12は、骨格部材であるクッションフレーム14を有しており、シートバック16は、骨格部材であるバックフレーム18を有している。
【0028】
クッションフレーム14は、シート前後方向に延びる左右一対のサイドフレーム20、22と、一対のサイドフレーム20、22の前部同士を連結する前部フレーム24(図2及び図3参照)と、一対のサイドフレーム20、22の後部同士を連結する後部フレーム26と、前部フレーム24のシート後方側に配置されて一対のサイドフレーム20、22の前後方向中間部同士を連結する補助フレーム27とを含んで構成されている。
【0029】
前部フレーム24、後部フレーム26、及び補助フレーム27は、何れも金属材料等からなるパイプ材によって形成されており、軸線方向がシート幅方向に沿う状態で配置されている。また、補助フレーム27は、前部フレーム24よりも小径に形成されており、クッションフレーム14の前後方向中央部よりもシート前方側において前部フレーム24よりも下方側に配置されている。
【0030】
一方、バックフレーム18は、シート上下方向に延びる左右一対のサイドフレーム28、30と、一対のサイドフレーム28、30の下部同士を連結する下部フレーム32と、一対のサイドフレーム28、30の上部同士を連結する上部フレーム34とを含んで構成されている。
【0031】
なお、クッションフレーム14には、クッションスプリング35が取り付けられており、このクッションスプリング35の上側には、表皮によって覆われたシートクッションパッド(何れも図示省略)が取り付けられる構成になっている。また、バックフレーム18には、バックスプリング37が取り付けられており、このバックスプリング37の前側には、表皮によって覆われたシートバックパッド(何れも図示省略)が取り付けられる構成になっている。
【0032】
この車両用シート10には、スライド機構36、前チルト機構38、リフタ機構40、ランバー機構42、及びリクライナ機構46(何れも被駆動機構)が設けられている。これらの被駆動機構は、図4及び図5に示される1モータパワーユニット48によって駆動される構成になっており、1モータパワーユニット48と上記各被駆動機構との間には、スライド用駆動力伝達機構50(図13参照)、前チルト用駆動力伝達機構52(図17参照)、リフタ用駆動力伝達機構54(図19参照)、ランバー用駆動力伝達機構56(図21参照)、及びリクライナ用駆動力伝達機構58(図23参照)が配置されている。先ず、1モータパワーユニット48について説明する。
【0033】
(1モータパワーユニット48の構成)
図4及び図5に示されるように、1モータパワーユニット48は、減速機59を備えた単一のモータ60とクラッチ機構62とがユニット化されたものである。クラッチ機構62は、全体として円柱状に形成されており、軸線方向がシート幅方向に沿う状態で配置されている。また、モータ60は、クラッチ機構62の軸線方向一端側(シート左側)に配置されており、減速機59に設けられた図示しない出力軸がクラッチ機構62と同軸的に配置されている。
【0034】
上述の1モータパワーユニット48は、支持ブラケット64を介してクッションフレーム14の前部フレーム24及び補助フレーム27(図2及び図3参照)に支持されている。支持ブラケット64は、板金材料等によって形成された複数のプレート65A、65B、65C、65D、65E、65F、65Gを備えている。これらのプレート65A〜65Gは、主要部の板厚方向がシート幅方向に沿う状態でシート幅方向に並んで配置されており、長ナット67やビス69等によってシート幅方向に連結されている。これらのプレート65A〜65Gには、それぞれ円形の貫通孔が同軸的に形成されており、クラッチ機構62は、これらの貫通孔を貫通した状態でプレート65A〜65Gに組み付けられている。
【0035】
プレート65A〜65Gのうち左端側に配置された2枚のプレート65F、65Gは、前部側及び前後方向中間部が部分的に板厚方向に重ね合わされて締結されている。また、一番左端に配置されたプレート65Gは、後部側がクランク状に屈曲されてプレート65Fから離間している。また、左から2番目のプレート65Fの前部の上部には、板金材料等によって形成されたプレート65Hが締結されている。このプレート65Hは、シート左側へ向けて突出している。
【0036】
さらに、一番左端に配置されたプレート65Gを介してクラッチ機構62とは反対側には、モータ60が配置されている。このモータ60は、プレート65Fとプレート65Gの重ね合わせ部を貫通したビス71、73(図5参照)が減速機59のハウジングに螺合することで、プレート65F、65Gに締結されている。
【0037】
上述のプレート65A〜65Gの前端部の上端側、及びプレート65Hの左端側には、それぞれ引掛部75が設けられている。各引掛部75には、シート前方側へ向けて開口した略半円形状の切欠77が形成されている。これらの切欠77(引掛部75)は、クッションフレーム14の前部フレーム24に形成された周溝79(図6及び図7参照)に対応している。
【0038】
一方、プレート65A〜65Gの後端側は、シート後方側へ向かうに従い上下方向寸法が小さくなるように形成されている。プレート65A〜65Gの各後端部には、それぞれ係止部81が設けられている。なお、図4及び図5に示されるように、左から3番目のプレート65Eには、係止部81よりもシート後方側へ延びる延長部65E1が設けられている。この延長部65E1は、後述するランバー用駆動力伝達機構56に対応している。プレート65A〜65Gの各係止部81には、シート上方側へ向けて開口した略半円形状の切欠83が形成されている。これらの切欠83(係止部81)は、クッションフレーム14の補助フレーム27に形成された周溝85(図6参照)に対応している。
【0039】
さらに、プレート65A〜65Gの各係止部81には、図8(A)に示されるように、それぞれ係止手段を構成する回動プレート87(係止具)が取り付けられている。各回動プレート87は、切欠83よりもシート前方側に配置された一端側がプレート65A〜65Gにピン89によって回動可能に連結されている。また、回動プレート87の他端側には円孔91が形成されている。この円孔91は、切欠83よりもシート後方側でプレート65A〜65Gに形成された円孔93に対応している。
【0040】
ここで、上記構成の支持ブラケット64がクッションフレーム14に取付けられる際には、先ず、図7に示されるように、プレート65A〜65Hの引掛部75が、前部フレーム24の周溝79に嵌る状態で切欠77の内側に前部フレーム24が嵌め込まれる。これにより、プレート65A〜65Hの前端側が前部フレーム24に引っ掛けられる。
【0041】
次いで、図8(A)に示されるように、プレート65A〜65Gの係止部81が、補助フレーム27の下側から補助フレーム27側へ押し上げられると、補助フレーム27の周溝85に嵌る状態で切欠83の内側に補助フレーム27が嵌め込まれる。その後、円孔91、93が対向する位置(図8(B)に示される位置)へ回動プレート87が回動されると共に、円孔91、93にピン97が挿通され、ピン97の先端側に抜止用のクリップ99が装着される。これにより、図8(C)に示されるように、プレート65A〜65Gと回動プレート87との間に補助フレーム27が挟まれた状態で、プレート65A〜65Gに対する回動プレート87の回動が規制される。
【0042】
この状態では、プレート65A〜65Gの係止部81が補助フレーム27に係止されると共に、65A〜65Hが補助フレーム27に対するシート後方側への相対移動を規制されることにより、前部フレーム24からの各引掛部75の離脱が阻止される。これにより、図9に示されるように、支持ブラケット64がクッションフレーム14に取り付けられ、1モータパワーユニット48が支持ブラケット64を介して前部フレーム24及び補助フレーム27(のみ)に吊り下げ状態で支持される構成になっている。
【0043】
またこの状態では、図1に示されるように、1モータパワーユニット48は、前チルト機構38を構成するクッションフロントフレーム186の下方に配置される。このクッションフロントフレーム186の上部には、図示しない表皮に覆われたクッションパッドが取り付けられる構成になっている。つまり、クッションフロントフレーム186の下方に配置された1モータパワーユニット48は、シートクッション12のクッション性には影響を与えない構成になっている。
【0044】
なお、本実施形態では、図2及び図3に示されるように、1モータパワーユニット48は、クッションフレーム14のシート幅方向中央部よりもシート右側に偏って配置されており、クラッチ機構62の軸線方向一端側(左側)に設けられたモータ60がクッションフレーム14のシート幅方向中央部付近に配置されている。
【0045】
次に、クラッチ機構62について詳細に説明する。図10に示されるように、クラッチ機構62は、全体として円柱状に形成され、軸線方向がシート幅方向に沿う状態で配置されており、シート幅方向に並んで配置された複数(ここでは3つ)のクラッチユニット66、68、70と、可動シャフト72(図11参照。図10では図示省略)とを備えている。可動シャフト72は、軸線方向がシート幅方向に沿う状態でクラッチ機構62の軸心部に配置されており、スプリング73によってシート右側(後述するカム116側)へ付勢されている。この可動シャフト72には、可動シャフト72の外径寸法を縮径した3つの縮径部72A、72B、72Cが設けられている。これらの縮径部72A、72B、72Cは、可動シャフト72の軸線方向に略等間隔に離れて配置されている。
【0046】
一方、クラッチユニット66、68、70は、基本的に同様の構成とされているが、ここでは先ず中央に配置されたクラッチユニット68について説明する。このクラッチユニット68は、図11に示されるように、軸線方向がシート幅方向に沿う状態でシート幅方向に並んで配置された一対の入力軸74、76を備えている。これらの入力軸74、76は、略円柱状に形成されており、前述した支持ブラケット64のプレート65C、65Dに回転可能に支持されている。これらの入力軸74、76の内側には、前述した可動シャフト72が軸線方向に沿って相対移動可能に貫通している。
【0047】
入力軸74、76の間には、一対の環状ブラケット78、80と、複数(ここでは3つ)のピン82が配置されている。環状ブラケット78、80は、略円盤状に形成されており、軸線方向がシート幅方向に沿う状態で互いに背中合わせに突き合わされて配置されている。これらの環状ブラケット78、80の軸心部には、それぞれ円形の貫通孔が形成されており、これらの貫通孔には可動シャフト72が同心状に貫通している。
【0048】
また、3つのピン82は、軸線方向がシート幅方向に沿う状態で、可動シャフト72の周方向に等間隔に並んで配置されており、軸線方向中央部が環状ブラケット78、80に形成された貫通孔に嵌合している。3つのピン82の軸線方向一端部は、一方の入力軸74の端面に形成された図示しない円孔に嵌合されており、3つのピン82の軸線方向他端部は、他方の入力軸76の端面に形成された図示しない円孔に嵌合されている。これにより、入力軸74、76が3つのピン82を介して相対回転不能に連結されており、環状ブラケット78、80が3つのピン82を介して入力軸74、76に支持されている。
【0049】
さらに、一方の入力軸74には、リフタ駆動ギア84(回転体)が取り付けられている。リフタ駆動ギア84は、円筒状に形成され、軸線方向がシート幅方向に沿う状態で配置されており、軸線方向一側の内側に入力軸74の一部が嵌合している。これにより、リフタ駆動ギア84は、入力軸74に回転可能に支持されている。リフタ駆動ギア84の軸線方向一側の外周部には、外歯が形成されており、リフタ駆動ギア84の軸線方向他側の内周部には、内歯が形成されている。
【0050】
また、他方の入力軸76には、前チルト駆動ギア86(回転体)が取り付けられている。前チルト駆動ギア86は、リフタ駆動ギア84と同様の円筒状に形成され、軸線方向がシート幅方向に沿う状態で配置されている。但し、この前チルト駆動ギア86は、リフタ駆動ギア84とは反対向きに(背中合わせの状態で)配置されている。この前チルト駆動ギア86の軸線方向一側の内側には、入力軸76の一部が嵌合しており、これにより、前チルト駆動ギア86が入力軸76に回転可能に支持されている。前チルト駆動ギア86の軸線方向一側の外周部には、外歯が形成されており、前チルト駆動ギア86の軸線方向他側の内周部には、内歯が形成されている。
【0051】
リフタ駆動ギア84の内側には、一対のパウル88が配置されている。これらのパウル88は、前述した3つのピン82のうち、2つのピン82の軸線方向一端側に回転可能に取り付けられている。また、前チルト駆動ギア86の内側には、一対のパウル90が配置されている。これらのパウル90は、上述した2つのピン82の軸線方向他端側に回転可能に取り付けられている。これらのパウル88、90は、捩りコイルスプリング92によってピン82の軸線回り一方へ付勢されており、当接付勢力によって一端部が可動シャフト72の外周部に当接している。
【0052】
ここで、可動シャフト72が軸線方向に移動されることにより、パウル88の一端部が可動シャフト72の縮径部72Bに対向すると、パウル88が捩りコイルスプリング92の付勢力によってピン82回りに回転し、パウル88の他端側がリフタ駆動ギア84の内歯に噛み合うようになっている。この状態で入力軸74が回転すると、入力軸74の回転力がピン82及びパウル88を介してリフタ駆動ギア84に伝達されるようになっている。
【0053】
また、可動シャフト72が軸線方向に移動することにより、パウル90の一端部が可動シャフト72の縮径部72Bに対向すると、パウル90が捩りコイルスプリング92の付勢力によってピン82回りに回転し、パウル90の他端側が前チルト駆動ギア86の内歯に噛み合うようになっている。この状態で入力軸76が回転すると、入力軸76の回転力がピン82及びパウル90を介して前チルト駆動ギア86に伝達されるようになっている。
【0054】
上記構成のクラッチユニット68は、図10に示されるように、クラッチユニット66、70の間に配置されている。クラッチユニット68の右側に配置されたクラッチユニット66は、クラッチユニット68と基本的に同様の構成とされているが、リフタ駆動ギア84の代わりにスライド駆動ギア94(回転体)を備えており、前チルト駆動ギア86の代わりにリクライナ駆動ギア96(回転体)を備えている。
【0055】
一方、クラッチユニット68の左側に配置されたクラッチユニット70は、クラッチユニット68と基本的に同様の構成とされているが、リフタ駆動ギア84の代わりにランバー駆動ギア98(回転体)を備えており、前チルト駆動ギア86の代わりにカバー100が取り付けられている(ギアが1つ省略されている)。なお、このカバー100の代わりに前チルト駆動ギア86と同様のギアを追加することも可能である。また、本実施形態では、スライド駆動ギア94、リクライナ駆動ギア96、リフタ駆動ギア84、前チルト駆動ギア86、及びランバー駆動ギア98は、シート幅方向に同軸的に並んで配置されている。
【0056】
クラッチユニット66、68、70は、上記各駆動ギアの内側に配置された各入力軸(入力軸74、76と基本的に同様構成とされた入力軸)が互いに相対回転不能に連結されると共に、円柱状に形成されたモータ連結部材102を介してモータ60の出力軸に連結されている。これにより、モータ60の回転力が上記各入力軸に伝達されると共に、可動シャフト72の軸線方向移動によって上記各駆動ギアとモータ60との間の回転力の伝達経路が切り換えられる構成になっている。
【0057】
具体的には、可動シャフト72が軸線方向移動されることにより、クラッチユニット68に対応した縮径部72Bがリフタ駆動ギア84の内側に配置されたパウル88と対向すると、当接パウル88がリフタ駆動ギア84の内歯に噛合され、モータ60の回転力がリフタ駆動ギア84に伝達される。また、この縮径部72Bが前チルト駆動ギア86の内側に配置されたパウル90と対向すると、当接パウル90が前チルト駆動ギア86の内歯に噛合され、モータ60の回転力が前チルト駆動ギア86に伝達される。
【0058】
同様に、クラッチユニット66に対応した縮径部72Aがスライド駆動ギア94の内側に配置された図示しないパウルと対向すると、当接パウルがスライド駆動ギア94の図示しない内歯に噛合され、モータ60の回転力がスライド駆動ギア94に伝達される。また、この縮径部72Aがリクライナ駆動ギア96の内側に配置された図示しないパウルと対向すると、当接パウルがリクライナ駆動ギア96の図示しない内歯に噛合され、モータ60の回転力がリクライナ駆動ギア96に伝達される。さらに、クラッチユニット70に対応した可動シャフト72の縮径部72Cがランバー駆動ギア98の内側に配置された図示しないパウルと対向すると、当接パウルがランバー駆動ギア98の内歯に噛合され、モータ60の回転力がランバー駆動ギア98に伝達されるようになっている。
【0059】
上述の可動シャフト72は、クッションフレーム14の右側(アウタ側)のサイドフレーム22に取り付けられたスイッチユニット104(図1〜図3参照)によって軸線方向に移動される構成になっている。スイッチユニット104は、サイドフレーム22に取り付けられたスイッチノブ106を備えている。このスイッチノブ106は、シート幅方向に沿った軸線回りに回転可能とされた回転ノブ108を有している。
【0060】
回転ノブ108の回転は、ギア列112を介してカム116に伝達され、このカム116がシート幅方向に沿った軸線回りに回転される。このカム116には、シート左側(1モータパワーユニット48側)に図示しない傾斜面が設けられており、この傾斜面には、可動シャフト72の軸線方向一端側に同軸的に設けられた小径部72D(図4、図5、及び図11参照)の先端が当接している。このため、カム116が軸線回りに回転されると、上記傾斜面が小径部72Dの先端と摺接することにより、可動シャフト72が軸線方向に移動されるようになっている。これにより、着座乗員は回転ノブ108を手動にて回転操作することにより、当該操作力によって可動シャフト72を軸線方向に移動させることができ、クラッチ機構62の前記各駆動ギアとモータ60との間の回転力の伝達経路を選択的に切り換えることができる。
【0061】
具体的には、図12(A)に示される位置に回転ノブ108が配置された状態では、スライド駆動ギア94とモータ60との間で回転力の伝達が可能になり、図12(B)に示される位置に回転ノブ108が配置された状態では、前チルト駆動ギア86とモータ60との間で回転力の伝達が可能になり、図12(C)に示される位置に回転ノブ108が配置された状態では、リフタ駆動ギア84とモータ60との間で回転力の伝達が可能になり、図12(D)に示される位置に回転ノブ108が配置された状態では、リクライナ駆動ギア96とモータ60との間で回転力の伝達が可能になり、図12(E)に示される位置に回転ノブ108が配置された状態では、ランバー駆動ギア98とモータ60との間で回転力の伝達が可能になる。
【0062】
さらに、図1及び図2に示されるように、上述の回転ノブ108には並進ノブ110がスライド可能に取り付けられている。この並進ノブ110は図示しないスイッチに接続されており、スイッチはモータ60に電気的に接続されている。これにより、並進ノブ110が回転ノブ108に対して一側へスライドされるとモータ60が正転し、並進ノブ110が回転ノブ108に対して他側へスライドされるとモータ60が逆転するようになっている。
【0063】
次に、上述の1モータパワーユニット48からスライド機構36に駆動力を伝達するスライド用駆動力伝達機構50について説明する。
【0064】
(スライド用駆動力伝達機構50の構成)
図13に示されるように、スライド用駆動力伝達機構50が駆動力を伝達するスライド機構36は、スライドレール120を備えている。スライドレール120は、車体床部に固定される左右一対のロアフレーム122、124と、これらのロアフレーム122、124対してスライド可能に取り付けられると共に、クッションフレーム14のサイドフレーム20、22(図13では図示省略)に連結された左右一対のアッパフレーム126、128を備えており、車両用シート10を車体床部に対してシート前後方向にスライド可能とされている。
【0065】
右側のアッパフレーム128とクラッチ機構62との間には、リンク部材129が配置されている。このリンク部材129の前端側(下端側)は、後述するアウタ側ギアボックス144を介してアッパフレーム128の前端側に回転可能に連結されている。リンク部材129の後端側(上端側)には、図14に示されるように円孔131が形成されており、この円孔131には、前述したクラッチ機構62の軸線方向端部(右側端部)に設けられた円筒状の連結部62A(図13参照)が嵌合している。これにより、リンク部材129の後端側とクラッチ機構62とが、クラッチ機構62の軸線回り(シート幅方向に沿った軸線回りに)回転可能に連結されている。
【0066】
また、リンク部材129の後端側には、上記円孔131よりも前端側にシャフト130が取り付けられている。このシャフト130は、軸線方向がシート幅方向に沿う状態で配置されており、リンク部材129からシート幅方向内側へ向けて突出している。シャフト130の軸線方向一端側は、リンク部材129に対して回転可能に支持されており、シャフト130の軸線方向他端側にはギア132が固定されている。このギア132は、前述したスライド駆動ギア94の外歯に噛合されている。このため、スライド駆動ギア94が回転すると、ギア132がシャフト130と一体で軸線回りに回転するようになっている。
【0067】
シャフト130の軸線方向一端側は、リンク部材129を介してクラッチ機構62とは反対側へ突出しており、当接突出部分には、図14に示される増速ギア列134を構成するギア136が固定されている。この増速ギア列134は、ギア136の回転を増速し、リンク部材129の前端部に配置されたギア138に伝達する。このギア138は、図15(A)に示される伝達ギア列142に対応している。なお、増速ギア列134は、リンク部材129に取り付けられたカバー140(図14参照)によって覆われている。
【0068】
伝達ギア列142は、アッパフレーム128の前端部に取り付けられたアウタ側ギアボックス144に取り付けられており、増速ギア列134のギア138と同軸的かつ一体的に回転するギア146を備えている。このギア146の回転は、アウタ側ギアボックス144の上端部に設けられて伝達ギア列142を構成するギア148に伝達される。このギア148のシート幅方向外側には、ネジ歯車150(図15(B)参照)が同軸的に配置されており、ギア148とネジ歯車150とが一体で回転するようになっている。
【0069】
ネジ歯車150の下側には、当該ネジ歯車150に噛合された別のネジ歯車152が配置されている。このネジ歯車152は、アウタ側スクリュー154の前端部に固定されている。アウタ側スクリュー154は、外周部に雄ねじが形成された長尺棒状の部材であり、図13に示されるように軸線方向がシート前後方向に沿う状態でアッパフレーム128の上側に配置されている。アウタ側スクリュー154の前端部は、アウタ側ギアボックス144に回転可能に支持されており、アウタ側スクリュー154の後端部は、アッパフレーム128の後端部に取り付けられた支持部材156に回転可能に支持されている。また、アウタ側スクリュー154の中間部には、略ブロック状に形成されたアウタ側ナット158が螺合しており、このアウタ側ナット158はブラケット160を介してロアフレーム124に固定されている。
【0070】
一方、前述した伝達ギア列142のギア146には、図13に示されるトルクケーブル164の軸線方向一端部が連結されている。このトルクケーブル164は、軸線方向がシート幅方向に沿う状態で配置されており、軸線方向他端部がインナ側のアッパフレーム126の前端部に取り付けられたインナ側ギアボックス166内に挿入されている。このインナ側ギアボックス166内には、図16(A)に示されるように伝達ギア列168が配置されており、当該伝達ギア列168を構成するギア170がトルクケーブル164の軸線方向一端部に連結されている。これにより、ギア146の回転がトルクケーブル164を介してギア170に伝達されるようになっている。このギア170の回転は、インナ側ギアボックス166の上端部に設けられたギア172に伝達される。このギア172のシート幅方向外側には、ネジ歯車174が同軸的に配置されており、ギア172とネジ歯車174とが一体で回転するようになっている。
【0071】
ネジ歯車174の下側には、当該ネジ歯車174に噛合された別のネジ歯車176が配置されている。このネジ歯車176は、インナ側スクリュー178の前端部に固定されている。インナ側スクリュー178は、アウタ側スクリュー154と同様の部材であり、前端部がインナ側ギアボックス166に回転可能に支持され、後端部がアッパフレーム126の後端部に取り付けられた支持部材180に回転可能に支持されている。また、アウタ側スクリュー154の中間部には、略ブロック状に形成されたインナ側ナット182が螺合しており、このインナ側ナット182はブラケット184を介してロアフレーム122に固定されている。
【0072】
ここで、前述した回転ノブ108が図12(A)に示される位置に配置された状態で並進ノブ110がスライド操作されると、モータ60の回転力がスライド駆動ギア94に伝達され、スライド駆動ギア94が回転する。このスライド駆動ギア94の回転は、ギア132、シャフト130、増速ギア列134、伝達ギア列142、及びネジ歯車150、152を介してアウタ側スクリュー154に伝達されると共に、トルクケーブル164、伝達ギア列168、及びネジ歯車174、176を介してインナ側スクリュー178に伝達される。これにより、アウタ側スクリュー154及びインナ側スクリュー178が軸線回りに回転すると、アウタ側ナット158がアウタ側スクリュー154に対して軸線方向に相対移動すると共に、インナ側ナット182がインナ側スクリュー178に対して軸線方向に相対移動する。これにより、アウタ側ナット158が固定されたロアレール124に対してアッパレール128がスライドされると共に、インナ側ナット182が固定されたロアレール122に対してアッパレール126がスライドされ、車両用シート10が車体床部に対して前後にスライドされる。
【0073】
なおこの場合、並進ノブ110が図12(A)の矢印FORWARD方向に操作されると、車両用シート10が車両前方側へスライドされ、並進ノブ110が図12(A)の矢印BACK方向に操作されると、車両用シート10が車両後方側へスライドされるようになっている。
【0074】
次に、1モータパワーユニット48から前チルト機構38に駆動力を伝達する前チルト用駆動力伝達機構52について説明する。
【0075】
(前チルト用駆動力伝達機構52の構成)
図17に示されるように、前チルト用駆動力伝達機構52が駆動力を伝達する前チルト機構38は、サイドフレーム20、22の前部間に掛け渡された板状のクッションフロントフレーム186(図1参照)を備えている。このクッションフロントフレーム186の後端側の左右両側には、連結部材188、190が固定されており、これらの連結部材188、190は、ピン192を介してサイドフレーム20、22に回転可能に連結されている。
【0076】
クッションフロントフレーム186の下側でクラッチ機構62のシート前方側には、前チルト用駆動力伝達機構52を構成する前チルト用ギアボックス194が配置されている。この前チルト用ギアボックス194は、図4及び図5に示されるプレート65B、65C間に挟まれて両者に締結されている。図17に示されるように、前チルト用ギアボックス194のシート幅方向内側には、シート前後方向に並んだ一対のギア196、198が互いに噛合された状態で配置されている。これらのギア196、198は、軸線方向がシート幅方向に沿う状態で、前チルト用ギアボックス194に回転可能に支持されている。
【0077】
後側のギア196は、前述した前チルト駆動ギア86に噛合されており、前側のギア198は、前チルト用ギアボックス194内に配置されたネジ歯車200(図18(A)参照)に連結されている。このネジ歯車200は前チルト用ギアボックス194に回転可能に支持されており、このネジ歯車200には別のネジ歯車202が噛合されている。このネジ歯車202は、円筒状に形成されており、前チルト用ギアボックス194に対して軸線方向に相対移動不能でかつ軸線回りに回転可能に支持されている。このネジ歯車202の内側には雌ねじが形成されており、当該雌ねじには外周部に雄ねじが形成されたスクリュー204が螺合されている。このスクリュー204の上端側には、平板状の連結部204Aが設けられており、当該連結部204Aは、前チルト機構38を構成するアウタ側アーム206(図17参照)の前端部にピンを介して連結されている。このアウタ側アーム206は、インナ側アーム208と対をなしており、両者の後端部は、クッションフレーム14の前部フレーム24に対してシート幅方向に沿った軸線回りに回転可能に取り付けられている。アウタ側アーム206及びインナ側アーム208は、各中間部が連結棒210を介してシート幅方向に連結されると共に、各前端側がブラケット212、214を介してクッションフロントフレーム186の下面に結合されている。
【0078】
ここで、前述した回転ノブ108が図12(B)に示される位置に配置された状態で並進ノブ110がスライド操作されると、モータ60の回転力が前チルト駆動ギア86に伝達され、前チルト駆動ギア86が回転する。この前チルト駆動ギア86の回転は、ギア196、198、及びネジ歯車200を介してネジ歯車202に伝達され、ネジ歯車202が回転する。ネジ歯車202が回転すると、ネジ歯車202の内側に螺合されたスクリュー204がネジ歯車202に対して軸線方向(略上下方向)に移動される。これにより、アウタ側アーム206及びインナ側アーム208の前端側が前部フレーム24を中心として上下に揺動されると共に、クッションフロントフレーム186がピン192を中心として上下に揺動される。これにより、シートクッション12の座面の前部側の傾斜角度が調整される。
【0079】
なおこの場合、並進ノブ110が図12(B)の矢印UP方向に操作されると、シートクッション12の座面前部側の傾斜角度が大きくされ、並進ノブ110が図12(B)の矢印DOWN方向に操作されると、シートクッション12の座面前部側の傾斜角度が小さくされるようになっている。
【0080】
次に、1モータパワーユニット48からリフタ機構40に駆動力を伝達する前リフタ用駆動力伝達機構54について説明する。
【0081】
(リフタ用駆動力伝達機構54の構成)
図19に示されるように、リフタ用駆動力伝達機構54が駆動力を伝達するリフタ機構40は、左右一対のフロントリンク216、218及び左右一対のリヤリンク220、222を備えている。フロントリンク216、218及びリヤリンク220、222は、前端側(下端側)がスライドレール120のアッパフレーム126、128(図19では図示省略)に対してシート幅方向に沿った軸線回りに回転可能に連結されており、後端側(上端側)がクッションフレーム14のサイドフレーム20、22に対してシート幅方向に沿った軸線回りに回転可能に連結されている。
【0082】
右側のフロントリンク218とクラッチ機構62との間には、リフタ用駆動力伝達機構54を構成するリフタ用ギアボックス224が配置されている。リフタ用ギアボックス224は、図4及び図5に示されるプレート65A、65Bの間に挟まれて両者に締結されている。リフタ用ギアボックス224のシート幅方向内側には、シャフト226が突出している。このシャフト226は、軸線方向がシート幅方向に沿う状態で、リフタ用ギアボックス224及び前述したプレート65Cに回転可能に支持されており、このシャフト226の先端にはギア228が固定されている。
【0083】
ギア228は、前述したリフタ駆動ギア84に噛合されており、シャフト226は、リフタ用ギアボックス224内に配置されたネジ歯車230(図20(A)参照)に固定されている。このリフタ用ギアボックス224は、前述した前チルト用ギアボックス194と同様の構成とされており、ネジ歯車230が回転すると、当該ネジ歯車230に噛合されたネジ歯車232が回転し、スクリュー234がネジ歯車232に対して軸線方向(ここでは略シート前後方向)に移動される。スクリュー234の後端部には平板状の連結部234Aが設けられており、当該連結部234Aには連結パイプ236の前端部が固定されている。連結パイプ236の後端部は、右側のリヤリンク222の上端部(後端部)に対して図示しないピンを介して回転可能に連結されている。
【0084】
ここで、前述した回転ノブ108が図12(C)に示される位置に配置された状態で並進ノブ110がスライド操作されると、モータ60の回転力がリフタ駆動ギア84に伝達され、リフタ駆動ギア84が回転する。このリフタ駆動ギア84の回転は、ギア228、シャフト226、及びネジ歯車230、232を介してスクリュー234に伝達され、スクリュー234がネジ歯車232に対して軸線方向(略シート前後方向)に移動される。これにより、連結パイプ236が略シート前後方向に移動され、リヤリンク222が前端側(下端側)を中心として上下に揺動されると共に、当該リヤリンク222に連動して、リヤリンク220及びフロントリンク216、218が各前端側を中心として上下に揺動される。これにより、クッションフレーム14が上下に移動され、シートクッション12の座面高さが上下方向に調整される。
【0085】
なおこの場合、並進ノブ110が図12(C)の矢印UP方向に操作されると、シートクッション12の座面が上昇され、並進ノブ110が図12(C)の矢印DOWN方向に操作されると、シートクッション12の座面が下降されるようになっている。
【0086】
次に、1モータパワーユニット48からランバー機構42に駆動力を伝達するランバー用駆動力伝達機構56について説明する。
【0087】
(ランバー用駆動力伝達機構56の構成)
図21に示されるように、ランバー用駆動力伝達機構56が駆動力を伝達するランバー機構42は、バックフレーム18の左側のサイドフレーム28に一端部が係止されたワイヤ238を備えている。このワイヤ238の中間部は、シートバック16のバックスプリング37の後側に掛け回され、右側のサイドフレーム30とバックスプリング37との間からバックフレーム18の前方側へ引き出されている。バックフレーム18の前方側へ引き出されたワイヤ238の中間部は、サイドフレーム30に一端部が係止されたワイヤチューブ242の内側に挿入されている。ワイヤチューブ242は、他端側がシートクッション12(図21では図示省略)内に配置されており、他端部がプレート65Eの延長部65E1(図4及び図5参照)に係止されている。このワイヤチューブ242の他端部からは、ワイヤ238の他端部が引き出されている。このワイヤ238の他端部は、ランバー用ギアボックス244に設けられたスクリュー246に係止されている。
【0088】
ランバー用ギアボックス244は、前述した前チルト用ギアボックス194及びリフタ用ギアボックス224と基本的に同様の構成とされており、図22に示されるように、ランバー駆動ギア98に噛合されたギア248の回転が、当該ギア248の下側に配置されたギア250及び図示しない一対のネジ歯車を介してスクリュー246に伝達され、スクリュー246がシート前後方向に移動される構成になっている。スクリュー246の後端側は、当該スクリュー246の回止めとして機能するリンク252を介して図4及び図5に示される延長部65E1に連結されており、スクリュー246の後端部にはワイヤ238の他端部が係止されている。
【0089】
ここで、前述した回転ノブ108が図12(E)に示される位置に配置された状態で並進ノブ110がスライド操作されると、モータ60の回転力がランバー駆動ギア98に伝達され、ランバー駆動ギア98が回転する。このランバー駆動ギア98の回転は、ギア248、250、及び図示しないネジ歯車を介してスクリュー246に伝達され、スクリュー246が略シート前後方向に移動される。これにより、スクリュー246の後端部に他端部が係止されたワイヤ238が押し引きされ、ワイヤ238の中間部が後側に巻き掛けられたバックスプリング37がシートバック16の前後方向に揺動される。これにより、シートバック16の背凭れ面の下部側が前後に移動され、ランバー調整がなされる。
【0090】
なおこの場合、並進ノブ110が図12(E)の矢印FORWARD方向に操作されると、シートバック16の背凭れ面の下部側がシートバック16の前方側に押し出され、並進ノブ110が図12(E)の矢印BACK方向に操作されると、シートバック16の背凭れ面の下部側がシートバック16の後方側に退避するようになっている。
【0091】
次に、1モータパワーユニット48からリクライナ機構46に駆動力を伝達するリクライナ用駆動力伝達機構58について説明する。
【0092】
(リクライナ用駆動力伝達機構58の構成)
図23に示されるように、リクライナ用駆動力伝達機構58が駆動力を伝達するリクライナ機構46は、アウタ側リクライナユニット254及びインナ側リクライナユニット256(左右一対のリクライナユニット)を備えている。アウタ側リクライナユニット254、車両用シート10の右側(アウタ側)においてサイドフレーム22とサイドフレーム30との間に配置されており、インナ側リクライナユニット256は、車両用シート10の左側(インナ側)においてサイドフレーム20とサイドフレーム28との間に配置されている。また、このリクライナ機構46は、アウタ側リクライナユニット254とインナ側リクライナユニット256との間に掛け渡された連結シャフト258を有している。
【0093】
上述のリクライナ機構46は、従来周知のものであり、連結シャフト258がシート幅方向に沿った軸線回りに回転されると、アウタ側リクライナユニット254及びインナ側リクライナユニット256に設けられた図示しない遊星歯車機構が回転し、バックフレーム18がクッションフレーム14に対してリクライニングする構成になっている。
【0094】
アウタ側リクライナユニット254と1モータパワーユニット48との間には、リクライナ用駆動力伝達機構58が配置されている。このリクライナ用駆動力伝達機構58は、サイドフレーム22(図1参照)に対してシート幅方向外側に配置された前側ギアボックス260及び後側ギアボックス262を備えている。前側ギアボックス260は、クラッチ機構62の側方でサイドフレーム22の前端側にネジ261(図24参照)により固定されており、後側ギアボックス262は、アウタ側リクライナユニット254のフレーム264(図25参照)の前端側にネジ263により固定されている。なお、フレーム264はサイドフレーム22の後端部に固定されている。
【0095】
図24に示されるように、前側ギアボックス260は、アウタ側ボックス266とインナ側ボックス268とがネジ270によって締結されることにより箱状に形成されたものであり、この前側ギアボックス260の内部には、互いに噛合された上側ネジ歯車272と下側ネジ歯車274とが配置されている。上側のネジ歯車272は、軸線方向がシート幅方向に沿う状態で配置されており、同じく軸線方向がシート幅方向に沿う状態で配置されたシャフト276の軸線方向一端部に固定されている。このシャフト276は、アウタ側ボックス266に形成された軸受孔278及びインナ側ボックス268に形成された図示しない軸受孔に回転可能に支持されている。シャフト276の軸線方向他端側は、インナ側ボックス268からシート幅方向内側(クラッチ機構62側)へ向けて突出しており、シャフト276の軸線方向他端部にはギア280が取り付けられている。このギア280は、前述したリクライナ駆動ギア96に噛合されている。これにより、リクライナ駆動ギア96の回転力がギア280及びシャフト276を介してネジ歯車272に伝達されるようになっている。
【0096】
一方、ネジ歯車272に噛合された下側のネジ歯車274は、軸線方向がシート前後方向に沿う状態で配置されており、棒材であるスピンドル282の前端部(軸線方向一端部)に固定されている。スピンドル282は、長尺な円柱状に形成されており、図1に示されるようにサイドフレーム22に対してシート幅方向外側に配置されている。このスピンドル282は、軸線方向がシート前後方向に沿う状態でシートクッション12内に配置されており、前側ギアボックス260及び後側ギアボックス262を介してサイドフレーム22に支持されている。なお、本実施形態では、スピンドル282は、前端側へ向かうに従い緩やかに降下するようにシート前後方向に対して僅かに傾斜した状態で配置されている。また、本実施形態では、スピンドル282は、シートクッション12内のサイドフレーム22側(シート幅方向一端側)のみに設けられており、シートクッション12内のサイドフレーム20側(シート幅方向他端側)にはスピンドルが設けられていない構成になっている。
【0097】
スピンドル282の前端部は、前側ギアボックス260に設けられた前後一対の軸受部284、286に回転可能に軸支されている。なお、軸受部284は、アウタ側ボックス266に形成された半円状の凹部288とインナ側ボックス268に形成された半円状の凹部290とが組み合わされることで形成されたものであり、軸受部286は、アウタ側ボックス266に形成された図示しない半円状の凹部とインナ側ボックス268に形成された半円状の凹部292とが組み合わされることで形成されたものである。また、軸受部284の前側にはリング状のカバー294が取り付けられており、軸受部286の後側には同様のカバー296が取り付けられている。
【0098】
スピンドル282の後端部は、図25に示されるように、後側ギアボックス262の内部に挿入され、当該後側ギアボックス262によって回転可能に支持されている。この後側ギアボックス262は、前側ギアボックス260と基本的に同様の構成とされており、アウタ側リクライナユニット254のフレーム264に対してシート幅方向内側に配置されている。なお、図25では、後側ギアボックス262において、前側ギアボックス260と同様の構成については同符号を付している。
【0099】
後側ギアボックス262の内側に挿入されたスピンドル282の後端部にはネジ歯車298(第1歯車)が固定されており、このネジ歯車298は、当該ネジ歯車298の下側に配置された別のネジ歯車300(第2歯車)に噛合されている。このネジ歯車300は、軸線方向がシート幅方向に沿う状態で配置されており、同じく軸線方向がシート幅方向に沿う状態で配置されたシャフト302の軸線方向中間部に固定されている。このシャフト302は、軸線方向一端側が後側ギアボックス262のインナ側ボックス268に回転可能に軸支されており、軸線方向他端側が後側ギアボックス262のアウタ側ボックス266に回転可能に軸支されている。さらに、シャフト302の軸線方向他端側は、アウタ側リクライナユニット254のフレーム264を貫通して当該フレーム264のシート幅方向外側へ突出している。
【0100】
フレーム264のシート幅方向外側には、減速ギア列304が配置されており、シャフト302の上記突出部分には、減速ギア列304を構成するギア306が固定されている。このギア306の回転は、ギア308、310を介して減速ギア列304の最終のギア312に伝達されるようになっている。このギア312は、前述した連結シャフト258の軸線方向一端部に固定されている。なお、ギア308、310は、同軸的に配置されており、フレーム264に設けられた支軸314によって回転可能に支持されている。また、減速ギア列304のギア306、308、310、312は、長尺板状の保持プレート316が係止具318(例えば、Eリングなど)によってシャフト302、支軸314、及び連結シャフト258に係止されることにより、シャフト302、支軸314、及び連結シャフト258に保持されている。
【0101】
ここで、前述した回転ノブ108が図12(D)に示される位置に配置された状態で並進ノブ110がスライド操作されると、モータ60の回転力がリクライナ駆動ギア96に伝達され、リクライナ駆動ギア96が回転する。このリクライナ駆動ギア96の回転は、ギア280、シャフト276、ネジ歯車272、274を介してスピンドル282に伝達され、スピンドル282がシート前後方向に沿った軸線回りに回転される。スピンドル282が回転されると、スピンドル282の後端部に固定されたネジ歯車298が回転し、当該ネジ歯車298に噛合されたネジ歯車300がシャフト302及び減速ギア列304のギア306と一体で回転する。ギア306の回転は、減速ギア列304によって減速されて最終のギア312に伝達され、当該ギア312が連結シャフト258と一体で回転される。これにより、アウタ側リクライナユニット254及びインナ側リクライナユニット256が作動し、バックフレーム18がクッションフレーム14に対してリクライニングされる。
【0102】
なおこの場合、並進ノブ110が図12(D)の矢印FORWARD方向に操作されると、バックフレーム18がクッションフレーム14に対してシート前方側へ傾倒され、並進ノブ110が図12(D)の矢印BACK方向に操作されると、バックフレーム18がクッションフレーム14に対してシート後方側へ傾倒されるようになっている。
【0103】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0104】
(本実施形態の作用及び効果)
上記構成の車両用シート10では、シートクッション12内の前部側に配置された1モータパワーユニット48がクラッチ機構62及び単一のモータ60を有している。モータ60の回転力は、クラッチ機構62のスライド駆動ギア94、リクライナ駆動ギア96、リフタ駆動ギア84、前チルト駆動ギア86、及びランバー駆動ギア98のうち、スイッチユニット104によって任意に選択されたギアへと伝達され、当該選択されたギアが回転駆動される。このギアの駆動力は、スライド用駆動力伝達機構50、前チルト用駆動力伝達機構52、リフタ用駆動力伝達機構54、ランバー用駆動力伝達機構56、及びリクライナ用駆動力伝達機構58のうち一の駆動力伝達機構を介して、スライド機構36、前チルト機構38、リフタ機構40、ランバー機構42、及びリクライナ機構46のうち一の被駆動機構へと伝達される。
【0105】
ここで、この車両用シート10では、シートクッション12の骨格部材であるクッションフレーム14の前部がシート幅方向に沿った前部フレーム24によって構成されており、上述の1モータパワーユニット48がこの前部フレーム24及び補助フレーム27に支持されている。つまり、シートクッション12の骨格部材が1モータパワーユニット48の支持部材としても機能するため、1モータパワーユニット48を支持するための構成を簡素化することができる。これにより、シートクッション12の質量が増加することを回避できる。
【0106】
しかも、クッションフレーム14の前部フレーム24は、強度が高いパイプ材によって形成されているため、モータ60のロック荷重を良好に支持することができる。つまり、上記各被駆動機構が強制的に停止される際(例えば、シートスライドがそのスライド範囲の限度において制限される際)にはモータ60がロックするが、本車両用シート10では、強度が高い前部フレーム24によってモータ60のロック荷重を良好に支持することができるので、上記ロック荷重の支持のために剛性部材を追加する必要がない。したがって、これによってもシートクッション12の質量が増加することを回避できる。
【0107】
また、この車両用シート10では、シートクッション12内で最もスペースに余裕がある前部側に1モータパワーユニット48が配置されているため、図示しないシートクッションパッド等が配置されるシートクッション12内の中央側及び後部側のスペースを、クッション性確保のために有効に利用することができる。これにより、シートクッション12のクッション性を良好に確保しつつ、1モータパワーユニット48が搭載されたシートクッション12が大型化することを回避できる。
【0108】
さらに、この車両用シート10では、1モータパワーユニット48のスライド駆動ギア94、リクライナ駆動ギア96、リフタ駆動ギア84、前チルト駆動ギア86、及びランバー駆動ギア98がシート幅方向に同軸的に並んで配置されている。これにより、1モータパワーユニット48のシート前後方向の寸法を小さく設定することができるので、1モータパワーユニット48をシートクッション12内の前部側にコンパクトに配置させることができる。したがって、これによってもシートクッション12内のスペースを有効利用することができる。
【0109】
またさらに、この車両用シート10では、1モータパワーユニット48が支持ブラケット64を介して、クッションフレーム14の前部フレーム24から吊り下げられた状態で支持されている。これにより、前部フレーム24よりも上側のスペースが1モータパワーユニット48の配置スペースによって不必要に侵食されることを回避でき、クッションフロントフレーム186の配置の自由度を確保することができる。
【0110】
しかも、支持ブラケット64には、主に1モータパワーユニット48の質量による引張荷重が作用し、曲げ剛性があまり要求されないため、支持ブラケット64の曲げ剛性確保のために支持ブラケットの質量等が増加することを回避できる。
【0111】
また、この車両用シート10では、1モータパワーユニット48の支持ブラケット64は、前端側がクッションフレーム14の前部フレーム24に支持され、後端側が前部フレーム24の後方側でシート幅方向に沿って配置された補助フレーム27に支持されている。つまり、支持ブラケット64の前後両端側がクッションフレーム14の構成部材に支持されているため、前部フレーム24及び補助フレーム27の荷重負担が半減する。これにより、支持ブラケット64を介したクッションフレーム14への1モータパワーユニット48の支持剛性を良好に確保することができ、モータ60のロック荷重等を良好に支持することができる。
【0112】
さらに、この車両用シート10では、1モータパワーユニット48を支持する支持ブラケット64をクッションフレーム14に取り付ける際には、支持ブラケット64に設けられた引掛部75を前部フレーム24に引っ掛けた後で、支持ブラケット64に設けられた係止部81を回動プレート87によって補助フレーム27に係止する。これにより、前部フレーム24からの引掛部75の離脱が阻止され、支持ブラケット64がクッションフレーム14に装着されるので、1モータパワーユニット48をクッションフレーム14に容易に取り付けることができる。
【0113】
また、この車両用シート10では、支持ブラケット64を構成する複数のプレート65A〜65Gが、板厚方向をシート幅方向に沿わせた状態でシート幅方向に並んで配置されており、1モータパワーユニット48がこれらのプレートを貫通した状態で支持ブラケット64に組み付けられている。これにより、シート幅方向に沿った前部フレーム24に対して、簡素で軽量な構成の支持ブラケット64によって1モータパワーユニット48を支持させることができる。
【0114】
また、この車両用シート10では、1モータパワーユニットが、シート幅方向においてスイッチユニット104が設けられた側(シート右側)に偏って配置されている。したがって、スイッチユニット104から1モータパワーユニット48に操作力を伝達するための構成を小型で簡素なものにすることができる。
【0115】
なお、上記実施形態では、1モータパワーユニット48がシート幅方向においてシート右側に偏って配置された構成にしたが、請求項1〜請求項6に係る発明はこれに限らず、1モータパワーユニット48がシート幅方向中央部に配置された構成にしてもよいし、シート左側に偏って配置された構成にしてもよい。
【0116】
また、上記実施形態では、支持ブラケット64が複数のプレート65A〜65Gを備え、1モータパワーユニット48がこれらのプレート65A〜65Gを貫通した状態で支持ブラケット64に組み付けられた構成にしたが、請求項1〜請求項5に係る発明はこれに限らず、支持ブラケット64の構成は適宜変更することができる。
【0117】
さらに、上記実施形態では、支持ブラケット64は、前端側に設けられた引掛部75が前部フレーム24に引っ掛けられると共に、後端側に設けられた係止部81が補助フレーム27に係止されることによりクッションフレーム14に取り付けられる構成にしたが、請求項1〜請求項4に係る発明はこれに限らず、支持ブラケット64がネジ等の締結具によって前部フレーム24等に締結される構成にしてもよい。
【0118】
また、上記実施形態では、クッションフレーム14が前部フレーム24のシート後方側に配置された補助フレーム27を有し、支持ブラケット64の後端側が補助フレーム27に係止される構成にしたが、請求項1〜請求項3に係る発明はこれに限らず、補助フレーム27が省略された構成(支持ブラケット64が前部フレーム24のみに支持される構成)にしてもよい。また、補助フレーム27が1モータパワーユニット48の下方側に配置された構成にしてもよい。
【0119】
また、上記実施形態では、1モータパワーユニット48が、支持ブラケット64を介して前部フレーム24から吊り下げられた状態で支持された構成にしたが、請求項1〜請求項2に係る発明はこれに限らず、1モータパワーユニット48の前部フレーム24への支持構造は適宜変更することができる。
【0120】
さらに、上記実施形態では、1モータパワーユニット48のスライド駆動ギア94、リクライナ駆動ギア96、リフタ駆動ギア84、前チルト駆動ギア86、及びランバー駆動ギア98が、シート幅方向に同軸的に並んで配置された構成にしたが、請求項1に係る発明はこれに限らず、1モータパワーユニット48の構成は適宜変更することができる。
【0121】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記各実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0122】
10 車両用シート
12 シートクッション(シート本体)
14 クッションフレーム
16 シートバック(シート本体)
24 前部フレーム
27 補助フレーム
36 スライド機構(被駆動機構)
38 前チルト機構(被駆動機構)
40 リフタ機構(被駆動機構)
42 ランバー機構(被駆動機構)
46 リクライナ機構(被駆動機構)
48 1モータパワーユニット
50 スライド用駆動力伝達機構
52 前チルト用駆動力伝達機構
54 リフタ用駆動力伝達機構
56 ランバー用駆動力伝達機構
58 リクライナ用駆動力伝達機構
60 モータ
64 支持ブラケット
65A〜65G プレート
75 引掛部
81 係止部
87 回動プレート(係止手段)
97 ピン(係止手段)
99 クリップ(係止手段)
84 リフタ駆動ギア(回転体)
86 前チルト駆動ギア(回転体)
94 スライド駆動ギア(回転体)
96 リクライナ駆動ギア(回転体)
98 ランバー駆動ギア(回転体)
104 スイッチユニット(被操作部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の被駆動機構が設けられると共に、シートクッションの骨格部材であるクッションフレームの前部がシート幅方向に沿った前部フレームによって構成されたシート本体と、
前記シートクッション内の前部側に配置され、前記前部フレームに支持されると共に、前記複数の被駆動機構に個別に対応した複数の回転体及び単一のモータを有し、前記モータの回転力を前記複数の回転体のうち任意に選択された回転体へと伝達して当該選択された回転体を回転駆動させる1モータパワーユニットと、
前記複数の回転体から前記複数の被駆動機構へ個別に駆動力を伝達する複数の駆動力伝達機構と、
を備えた車両用シート。
【請求項2】
前記複数の回転体は、シート幅方向に同軸的に並んで配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記1モータパワーユニットは、支持ブラケットを介して前記前部フレームから吊り下げられた状態で支持されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記クッションフレームは、前記前部フレームの後方側でシート幅方向に沿って配置された補助フレームを有し、前記支持ブラケットは、前端側が前記前部フレームに支持され、後端側が前記補助フレームに支持されていることを特徴とする請求項3に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記支持ブラケットは、前記前部フレーム及び前記補助フレームの何れか一方に引っ掛けられた引掛部と、係止手段によって前記前部フレーム及び前記補助フレームの何れか他方に係止された係止部とを有し、前記係止部が前記他方に係止されることにより前記一方からの前記引掛部の離脱が阻止されることを特徴とする請求項4に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記支持ブラケットは、シート幅方向に並んだ複数のプレートを有し、前記1モータパワーユニットは、前記複数のプレートを貫通した状態で前記支持ブラケットに組み付けられていることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の車両用シート。
【請求項7】
前記シートクッションの左右両側部のうちの一方には、被操作部材が設けられ、当該被操作部材が操作された際の操作力が前記1モータパワーユニットに伝達されることにより、前記複数の回転体のうち前記モータの回転力が伝達される回転体が選択されると共に、前記1モータパワーユニットは、シート幅方向において前記被操作部材が設けられた側に配置されていることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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