説明

車両用シート

【課題】第一表皮部と第二表皮部を着座性良く使用することにある。
【解決手段】表皮材6Sが、第一表皮部61と第二表皮部62を重層状態で有し、両表皮部のいずれか一方を選択してシートの着座側に向けるとともに一方とは異なる他方をクッション材4P側に向けた状態でクッション材4Pに取付け可能である車両用シートにおいて、第二表皮部62が、第一表皮部61よりも伸縮しやすい面材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リバーシブルの表皮材(第一表皮部と第二表皮部のいずれか一方を選択して着座側に使用可能な表皮材)を有する車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用シートとして、特許文献1に開示の車両用シートが公知である。この車両用シートは、シート外形をなすクッション材と、クッション材を被覆可能な表皮材を有する。
そして表皮材の一部(例えばシートバックの中央を被覆する表皮材部分)が、第一表皮部と第二表皮部を重層状態で有して、クッション材から着脱可能である。
第一表皮部は、例えばファブリック張りであり、第二表皮部は、モケット張り(パイル織物)である。そして公知技術では、両表皮部のいずれか一方を選択してシートの着座側に向けるとともに一方とは異なる他方をクッション材側(裏側)に向けた状態でクッション材に取付け可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平02-47939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで公知技術では、第一表皮部と第二表皮部のいずれも着座側に使用できる。そして第一表皮部と第二表皮部は、着座側に配置された時の状態を基準としてその外形寸法が定められるため、シート性能に若干問題が生じることがあった。
例えば第一表皮部を着座側で用いるとともに第二表皮部を裏側で用いる。このとき第一表皮部は適正な表面形状となるが、裏側の第二表皮部は若干余り気味となる(いわゆる周長差が生じる)。より具体的には、第一表皮部及び第二表皮部を、シートバックやシートクッションの緩やかな凹み面に設置する場合や、両表皮部を、吊り込み溝にて張設方向とは異なる方向に吊り込んで固定する場合に周長差が生じる。この結果として公知技術の構成では、第二表皮部に皺やヨレなどが生じるなどして、第一表皮部に部分的な凹凸が生じることがあった(着座性に劣る構成であった)。
本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、第一表皮部と第二表皮部を着座性良く使用することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段として、第1発明の車両用シートは、シートクッションとシートバック等のシート構成部材を有する。そしてシート構成部材が、シート外形をなすクッション材と、クッション材を被覆可能な表皮材を有する。
本発明では、上述の表皮材が、第一表皮部と第二表皮部とを重層状態で有する。そして両表皮部のいずれか一方を選択してシートの着座側に向けるとともに一方とは異なる他方をクッション材側に向けた状態でクッション材に取付け可能である。
この種のシート構成では、第一表皮部と第二表皮部を着座性良く使用できることが望ましい。そこで本発明では、上述の第二表皮部が、第一表皮部よりも伸縮しやすい面材であることから、第一表皮部に皺等(突部分)が生じたとしても、第二表皮部の伸縮により同突部分を極力吸収できる。
【0006】
第2発明の車両用シートは、シートクッションとシートバック等のシート構成部材を有する。そしてシート構成部材が、シート外形をなすクッション材と、クッション材を被覆可能な表皮材を有する。
本発明では、上述の表皮材が、第一表皮部と第二表皮部とを重層状態で有する。そして両表皮部のいずれか一方を選択してシートの着座側に向けるとともに一方とは異なる他方をクッション材側に向けた状態でクッション材に取付け可能である。
そこで本発明では、上述の第一表皮部と第二表皮部の双方をメッシュ状の面材として、各表皮部を、その配設状況に応じて伸縮可能とした(周長差の生じにくい構成とした)。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る第1発明によれば、第一表皮部と第二表皮部を着座性良く使用することができる。また第2発明によれば、第一表皮部と第二表皮部を更に確実に着座性良く使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】車両用シートの斜視図である。
【図2】シートバック一部の縦断面図である。
【図3】実施例2のシートバック一部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態を、図1〜図3を参照して説明する。各図には、適宜、車両用シート前方に符号F、車両用シート後方に符号B、車両用シート上方に符号UP、車両用シート下方に符号DWを付す。
図1の車両用シート2は、シート構成部材(シートクッション4、シートバック6、ヘッドレスト8)を有する。これらシート構成部材は、各々、クッション材(4P,6P,8P)と、表皮材(4S,6S,8S)を有する。
【0010】
<実施例1>
シートバック6は、クッション材6Pと、表皮材6Sを有する(図1を参照)。
本実施例では、シートバック6一部の表皮材部分が、二枚の面材(第一表皮部61と第二表皮部62)を有する(詳細後述)。そして両表皮部のいずれか一方を選択してシートの着座側に配置した状態で、クッション材6Pに直接的又は間接的に取付け可能である。
この種のシート構成では、第一表皮部61と第二表皮部62を着座性良く使用できることが望ましい。そこで本実施例では、後述の構成によって、第一表皮部61と第二表皮部62を着座性良く使用することとした。以下、各構成について詳述する。
【0011】
(クッション材)
クッション材6Pは、シート外形をなす部材であり、着座部6aと、サイドサポート部6bと、後述の係合部材30の一部を有する(図2を参照)。着座部6aは、乗員の着座部となる凹み部位であり、シート中央に形成できる。またサイドサポート部6bは、着座部6a両側の凸状部位であり、乗員(図示省略)の側部を支持できる。
クッション材6Pの材質は特に限定しないが、典型的にはポリウレタンフォームなどの樹脂である。
【0012】
(表皮材)
表皮材6Sは、第一表皮部61と、第二表皮部62と、基本表皮部63と、後述の係合部材30の他部を有する(図2を参照)。
基本表皮部63は、クッション材6P全体(着座部6aやサイドサポート部6b等)を被う面材である。基本表皮部63(面材)の種類は特に限定しないが、布帛(織物,編物,不織布)、皮革(天然皮革,合成皮革)、これらの複合材を例示できる。なお基本表皮部63の裏側には、パッド材や裏基布などの補完部材(図示省略)を配設することができる。パッド材として、クッション材6Pよりも柔軟な弾性体を用いることができ、裏基布として不織布を用いることができる。
ここで布帛は、典型的に天然繊維又は合成繊維にて構成できる。天然繊維として、羊毛や絹などの動物繊維、麻や綿などの植物繊維を例示できる。また合成繊維として、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、セルロース系繊維又はこれらの混繊糸を例示できる。
本実施例では、基本表皮部63によって、着座部6aやサイドサポート部6bを被う。なお基本表皮部63の端部は、他の係止部材(図示省略)によって、図示しないフレーム部材(シート骨格をなす部材)に係止することができる。
【0013】
(第一表皮部)
第一表皮部61は、着座部6aの中央を被覆可能な面材である(図2を参照)。第一表皮部61(面材)の種類は、基本表皮部63と同一でもよく異なっていてもよい。典型的な第一表皮部61として、天然繊維又は合成繊維の布帛(織物,編物,不織布)、皮革(天然皮革,合成皮革)、これらの複合材を例示できる。第一表皮部61の裏側には、パッド材や裏基布を配設できる。
本実施例の第一表皮部61は略矩形の面材であり、着座側に配置された時の状態を基準としてその外形寸法が定められる。このため第一表皮部61を着座側として使用する場合には適正な表面形状(クッション材の外形形状に沿った形状であり皺等の極力生じない形状)となる。一方、着座側とは異なる裏面側で用いる場合には、第一表皮部61が若干余り気味となる(周長差が生じる)。
【0014】
(第二表皮部)
第二表皮部62は、着座部6aの中央を被覆可能な面材であり、第一表皮部61に重層することができる(図2を参照)。
第二表皮部62は、上述の第一表皮部61よりも伸縮しやすい面材である。第二表皮部62として、ジャージなどの伸縮性に優れる編物、ネット体(繊維を網目状に織製した部材、メッシュ状の面材)を例示できる。ネット体は、繊維(天然繊維や合成繊維)を二次元的に交絡させてもよく、繊維を三次元的に交絡させてもよい。なお三次元的に交絡したネット体(3Dネット体、スペースラッセル)は、内部に隙間があることから通気性に優れる。このため3Dネット体の第二表皮部62は、例えば夏場に蒸れ(ムレ)などの不快感を生じさせることなく、良好な着座性を維持することができる。
本実施例の第二表皮部62は略矩形の面材であり、第一表皮部61と同一の外形寸法を有してもよく、第一表皮部61よりも若干小さい外形寸法を定めることもできる。そして第二表皮部62を着座側として使用する場合には、第二表皮部62がそのままの状態で又は若干伸長して適正な表面形状となる。また着座側とは異なる裏面側で用いる場合には、第二表皮部62が縮小又はそのままの外形寸法で適正な表面形状となる。
【0015】
なお本実施例では、第一表皮部61と第二表皮部62の間に隙間部CLを形成したが、他部材を配置することもできる。
他部材の種類は特に限定しないが、パッド材、断熱材、保冷材、保温材、各種センサ類を例示することができる。
【0016】
(係合部材)
本実施例では、スライドファスナ構造の係合部材30によって、第一表皮部61及び第二表皮部62を基本表皮部63に(クッション材6Pに間接的に)取付けることができる。そして係合部材30は、一対のファスナ片32,34を有する(図2(a)を参照)。
例えば一方のファスナ片32を、第一表皮部61と第二表皮部62の両端に取付ける。このとき第一表皮部61の端部(内折り状)と、第二表皮部62の端部(内折り状)を対面させつつ、両端部の間に、一方のファスナ片32を挟み込み状態で縫着する。
また他方のファスナ片34を、一方のファスナ片32を臨む向きで基本表皮部63に取付ける。
【0017】
[表皮材の取付け作業]
図2を参照して、基本表皮部63にてクッション材6Pを被覆したのち、第一表皮部61と第二表皮部62を取付ける。
例えば第二表皮部62を着座側に向けつつ、一方のファスナ片32を他方のファスナ片34に係合する。第一表皮部61と第二表皮部62は、基本表皮部63を介して(間接的に)クッション材6Pに取付けられる。このとき第一表皮部61が、若干余り気味の状態で(周長差が生じた状態で)着座側とは異なる裏面側に配置される。このため第一表皮部61に若干の皺等が生じることとなるが、本実施例では、第一表皮部61の皺等(突部分W)を、第二表皮部62の伸長により吸収できる。このため表皮材6Sの表面に凹凸ができにくく、良好な着座性を極力維持できる。
また第一表皮部61を着座側に向けつつ、一方のファスナ片32を他方のファスナ片34に係合する。このように第一表皮部61を着座側として使用する場合には適正な表面形状となる。また裏面側の第二表皮部62が縮小又はそのままの外形寸法で適正な表面形状となる。
【0018】
以上説明したとおり本実施例によれば、上述の第二表皮部62が、第一表皮部61よりも伸縮しやすい面材であることから、第一表皮部61に皺等(突部分W)が生じたとしても、第二表皮部62の伸縮により同突部分Wを極力吸収できる。このため本実施例によれば、第一表皮部61と第二表皮部62を着座性良く使用することができる。
【0019】
<実施例2>
本実施例の車両用シートは、実施例1の車両用シート2とほぼ同一の基本構成を備えるため、共通の構造は対応する符号を付す等して詳細な説明を省略する。
本実施例では、上述の第一表皮部61と第二表皮部62の双方がメッシュ状の面材である(図3を参照)。このため第一表皮部61を着座側として使用する場合には、第一表皮部61がそのままの外形寸法で又は伸長して適正な表面形状となる。また第一表皮部61を着座側とは異なる裏面側で用いる場合には、第一表皮部61が縮小又はそのままの外形寸法で適正な表面形状となる。
また同様に第二表皮部62を着座側として使用する場合には、第二表皮部62がそのままの外形寸法で又は伸長して適正な表面形状となる。また第二表皮部62を着座側とは異なる裏面側で用いる場合には、第二表皮部62が縮小又はそのままの外形寸法で適正な表面形状となる。
【0020】
このように本実施例では、第一表皮部61と第二表皮部62の双方を、その配設状況に応じて伸縮可能とした(周長差の生じにくい構成とした)。そして第一表皮部61と第二表皮部62(メッシュ状の面材)は内部に空間を有し、他の面材よりも伸縮性(特に縮小性)に優れるため、その配設状況に応じてさらに適切に伸縮することができる。
このため本実施例によれば、第一表皮部61と第二表皮部62を更に確実に着座性良く使用することができる。
【0021】
本実施形態の車両用シートは、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。
(1)本実施形態では、シートバック6一部の表皮材部分が、第一表皮部61と第二表皮部62を有する例を説明した。これとは異なり、シートバック6全部の表皮材部分が、第一表皮部61と第二表皮部62を有する構成でもよい。
(2)また本実施形態では、スライドファスナ構造の係合部材30を例示したが、係合部材の構成を限定する趣旨ではない。例えば係合部材として、面ファスナ、ボタン、ホグリング部材(リング部材と、リング部材に挿入可能な線材)などの各種部材を使用することができる。
(3)また本実施形態では、シートバック6を、シート構成部材の一例として説明した。本実施例の構成は、シートクッション4やヘッドレスト等の各種シート構成部材に適用可能である。
(4)また本実施形態では、専ら車両用シート2の構成について説明した。本実施例の構成は、家庭用の座席などの各種座席に適用可能である。
(5)また本実施例では、第一表皮部61と第二表皮部62を、基本表皮部63を介して(間接的に)クッション材6Pに取付ける例を説明した。これとは異なり、第一表皮部61と第二表皮部62を、直接的にクッション材6Pに取付けることもできる。例えば第一表皮部61と第二表皮部62を、基本表皮部63を介してクッション材6Pに取付ける場合、他方のファスナ片34をクッション材6Pに設け、基本表皮部63にあけた孔から同ファスナ片34を突出させ、一方のファスナ片32に係合する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0022】
2 車両用シート
4 シートクッション
6 シートバック
8 ヘッドレスト
30 係合部材
32,34 ファスナ片
61 第一表皮部
62 第二表皮部
63 基本表皮部
4S,6S,8S 表皮材
4P,6P,8S クッション材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションとシートバック等のシート構成部材を有するとともに、前記シート構成部材が、シート外形をなすクッション材と、前記クッション材を被覆可能な表皮材を有し、
前記表皮材が、第一表皮部と第二表皮部を重層状態で有し、前記両表皮部のいずれか一方を選択してシートの着座側に向けるとともに前記一方とは異なる他方を前記クッション材側に向けた状態で前記クッション材に取付け可能である車両用シートにおいて、
前記第二表皮部が、前記第一表皮部よりも伸縮しやすい面材である車両用シート。
【請求項2】
シートクッションとシートバック等のシート構成部材を有するとともに、前記シート構成部材が、シート外形をなすクッション材と、前記クッション材を被覆可能な表皮材を有し、
前記表皮材が、第一表皮部と第二表皮部とを重層状態で有するとともに、前記両表皮部のいずれか一方を選択してシートの着座側に向けるとともに前記一方とは異なる他方を前記クッション材側に向けた状態で前記クッション材に取付け可能である車両用シートにおいて、
前記第一表皮部と前記第二表皮部の双方がメッシュ状の面材である車両用シート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−116288(P2012−116288A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266768(P2010−266768)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】