説明

車両用シート

【課題】シートバック側に巻いて格納でき且つシートクッション上に拡げて敷くことができるマットを具備した車両用シートにおいて、巻いて格納されたマットが傾動(前倒し、後倒し)するシートバックに擦れてしまうことを防止する。
【解決手段】立上り部30にはマット40をシートバック側(図示後側)に巻いて格納しておくためのマット格納凹部33が設けられている。このマット格納凹部33には、マット40を使用しない場合に巻かれたマット40を格納しておくことができるものである。このマット格納凹部33は、シートクッション20において上方に突き出すように形成された立上り部30に対して設けられている。このため、巻かれたマット40はシートクッション20の立上り部30内で格納されることとなり、シートバック11の傾動によってマット40と擦れてしまうことを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両内に設置される車両用シートに関する。詳しくは、本発明は、シートバック側に巻いて格納でき且つシートクッション上に拡げて敷くことができるマットを具備した車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両内に設置される車両用シートは、座面となるシートクッションと、背凭れとなるシートバックとを備える。これらシートクッションやシートバックは、表装としてのベースカバー部を具備して構成される。なお、このような車両用シートのシートバックは、着座者の任意で前倒ししたり後倒ししたりすることができるようになっている。
ところで、この種の車両用シートにあっては、近年、シートクッション上に敷くマットを具備するものが知られている。下記特許文献1にて開示される車両用シートは、シートバック側に巻いて格納可能とされたマットを具備する。この車両用シートにあっては、マットをシートバック側に巻いて格納する格納部が配設されている。この車両用シートによれば、シートクッションの上にマットを敷くことができて、より安定してシートクッションに荷物を置くことができる。また、マットを使用しない場合には、巻いたマットを格納部に格納しておくことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−196241
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した車両用シートにあっては、マットを巻いて格納しておくための格納部は、シートバックに配設されるものとなっている。このため、シートバックを前倒ししたり後倒ししたりすると、このシートバックの傾動によってマットはシートバックと擦れてしまう。そうすると、この擦れによってマットを傷めてしまう恐れがある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、本発明が解決しようとする課題は、シートバック側に巻いて格納でき且つシートクッション上に拡げて敷くことができるマットを具備した車両用シートにおいて、巻いて格納されたマットが傾動(前倒し、後倒し)するシートバックに擦れてしまうことを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するにあたって本発明に係る車両用シートは次の手段を採用する。
すなわち、本発明の第1の発明に係る車両用シートは、シートクッションのシートバック側(着座姿勢後側)に巻いて格納でき且つ該シートクッション上に拡げて敷くことができるマットを具備した車両用シートであって、前記シートクッションには、該シートクッションの前記シートバック側端部を座面に対して上方に突き出すように形成された立上り部が設けられており、前記立上り部には、前記マットを前記シートクッションの前記シートバック側に巻いて格納しておくための凹状に形成されるマット格納凹部が設けられていることを特徴とする。
この第1の発明に係る車両用シートによれば、立上り部にはマットをシートクッションのシートバック側に巻いて格納しておくためのマット格納凹部が設けられているので、マットを使用しない場合にはシートバック側に巻いたマットをマット格納凹部に格納しておくことができる。ここで、巻かれたマットを格納するマット格納凹部は、シートバックに対して設けられるのではなく、シートクッションにおいて上方に突き出すように形成された立上り部に対して設けられるものとなっている。これによって、シートバックを前倒ししたり後倒ししたりする等の傾動させる場合であっても、巻かれたマットはシートクッションの立上り部内で格納されることとなるので、このシートバックの傾動によってマットと擦れてしまうことはなくなる。もって、シートバックの傾動によってマットを傷めてしまうことを防止することができる。
【0007】
第2の発明に係る車両用シートは、前記第1の発明に係る車両用シートにおいて、前記マットの前記シートクッションの前記シートバック側部分は、前記マット格納凹部の内部と結合しており、前記マット格納凹部の内部に設けられた固定面ファスナと係着することにより前記マット格納凹部に対する該マットの格納状態を保持する係着面ファスナが、前記マットの裏面側の巻く方向に沿って延びるように配設されていることを特徴とする。
この第2の発明に係る車両用シートによれば、マット格納凹部の内部に設けられた固定面ファスナと係着することによりマット格納凹部に対するマットの格納状態を保持する係着面ファスナがマットに配設されているので、巻かれたマットのマット格納凹部の内部における格納状態を保持することができる。ここで、係着面ファスナはマットの裏面側の巻く方向に沿って延びるように配設されているので、マットを巻いた場合の外径が想定される外径から太くなったり細くなったりするようにマット巻取り外径長にズレが生じる場合でも、このズレを許容するように係着面ファスナを延在させることができる。これによって、マットの巻かれ方が想定される外径長からズレの生じるような巻かれ方となったとしても、これを許容するように固定面ファスナに係着面ファスナを係着させることができるようになり、巻かれたマットをマット格納凹部の内部に良好に保持することができる。
【0008】
第3の発明に係る車両用シートは、前記第2の発明に係る車両用シートにおいて、前記係着面ファスナは、前記固定面ファスナと係着する該係着面ファスナの延在部分のうち該固定面ファスナとは係着せずに外部に露出する部分が設定されて配設されており、該露出する部分の該係着面ファスナは、着脱可能な表装となるシートカバーを着ける際の係着用の面ファスナとして機能させるように、該シートカバーに配設された面ファスナと対応する位置に延在して配設されていることを特徴とする。
この第3の発明に係る車両用シートによれば、固定面ファスナとは係着せずに外部に露出する部分の係着面ファスナは、シートカバーに配設された面ファスナと対応する位置に延在して配設されて、着脱可能な表装となるシートカバーを着ける際の係着用の面ファスナとして機能させることができる。
これによって、マットに配設される係着面ファスナを、表装としてのシートカバーを着けるにあたっての係着用の面ファスナとして利用するので、部材兼用による部品点数の削減を図ることができる。つまり、このようにシートクッション上に拡げて敷くことができるマットを具備しつつも、いわゆる着せ替えシートとしても有効的に利用することができる。加えて、マット格納凹部に格納されたマットをシートカバーにて目隠しすることができるので、外観意匠も維持することができながら、シートクッション上に拡げて敷くことができるマットを具備したものとすることができる。
【発明の効果】
【0009】
第1の発明に係る車両用シートによれば、シートバックの傾動によるマットの擦れを回避することができ、マットを傷めてしまうことを防止することができる。
第2の発明に係る車両用シートによれば、マットの巻かれ方が想定される外径長からズレの生じるような巻かれ方となったとしても、これを許容するように固定面ファスナに係着面ファスナを係着させることができるようになり、巻かれたマットをマット格納凹部の内部に良好に保持することができる。
第3の発明に係る車両用シートによれば、シートクッション上に拡げて敷くことができるマットを具備しつつも、外観意匠も維持することができながら、いわゆる着せ替えシートとしても有効的に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】マットが拡げて敷かれた状態を示す車両用シートの斜視図である。
【図2】マットが格納された状態を示す車両用シートの斜視図である。
【図3】図2におけるIII−III断面矢視を示す断面図である。
【図4】シートバックを前倒しした場合の車両用シートの斜視図である。
【図5】荷物の載置状態をマットにより保持する例を示す図である。
【図6】図5におけるVI−VI断面矢視を示すマット格納凹部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る車両用シートを実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。図1および図2は、マット40を具備した車両用シート10を示している。
図1は、マット40がシートクッション20上に拡げて敷かれた状態を示している。図2は、マット40がシートバック11側に巻かれて格納された状態を示している。
なお、図中における前後左右上下の矢印は、乗員が車両用シート10に着座した場合の着座姿勢に対する前後左右上下を示すものであり、着座姿勢後側はシートバック11側に一致するものとなっている。
図1および図2に示すように、車両用シート10は、乗員が着座するシートクッション20と、背凭れとなるシートバック11とを備える。シートクッション20は、適宜のブラケット類を介して骨組みとしてのクッションフレームを車両フロアに固定している。また、後に説明するが、シートバック11は、前倒しすることができるようにシートクッション20に対して連結装置19(図4参照)を介して連結されている。また、図1および図2に示すように、この車両用シート10は、シートクッション20の側部を外装するためのアウタシールド17が配設されている。このアウタシールド17は、特に図示していないが、シートバック11を前倒しの操作を行えるように、上記した連結装置19を操作するための前倒し操作部が設けられている。なお、このシートバック11には、頭凭れとなるヘッドレスト12が設けられている。
【0012】
シートクッション20について詳細に説明する。なお、図3は、図2におけるIII−III断面矢視を示すマット格納凹部の断面図である。図4は、アウタシールド17を取り外した状態でシートバック11を前倒しした場合の斜視図である。
シートクッション20は、図1および図2に示すように、乗員が着座する際の着座面となる座面21を備えて構成される。この座面21は、着座者が快適に座ることができるように、前側やサイド側を適宜に膨出させた形状にて形成されている。具体的には、座面21は、着座者の重力方向の荷重を支持する座面本体211と、着座者の重力方向の荷重のほか幅方向の荷重も支持するサイドサポート部212とを備える。
ここで図3にも示すように、シートクッション20の座面21のうち、着座姿勢後側(図示「後側」)とも一致するシートクッション20のシートバック11側端部には、この座面21に対して上方に突き出すようにした立上り部30が設けられている。この立上り部30の側部31は、図4に示すように、連結装置19を結合しており、この連結装置19を介してシートバック11のフレームの一部分(図示符号111)とも結合するようになっている。ここで、連結装置19は、これら結合する立上り部30の側部31と。シートバック11のフレーム111とが相対的に回転することができるようにしている。これによって、シートバック11は、シートクッション20の立上り部30の側部31にて、前倒し可能に傾動軸支されるように連結されるものとなる。つまり、このシートバック11が前倒し限界位置まで前倒しした場合には、シートバック11はシートクッション20に対して並列した重畳状態となり、このシートバック11の背面部分(図示符号112)をテーブルとして機能させることができるようになっている。ここで、上記したシートクッション20のうち、座面21および立上り部30を含む外部に露出する部分は、着座面側部分と設定される。
【0013】
ところで、シートクッション20は、クッションフレーム(不図示)にて支持されるクッションパッド(不図示)を被覆するベースカバー部22を備える。このベースカバー部22は、図2に示すシートカバー60を取り外した状態でも、シートクッション20を表装する最外面を形成することができるものであり、上記した座面21(座面本体211、サイドサポート部212)および立上り部30の表装をなすものである。なお、このベースカバー部22は、シートクッション20の前面部および側面部の範囲に及んで形成されるものであり、次に説明するシートカバー60と略同様な形状を有して形成される。また、ベースカバー部22は、次に説明するシートカバー60と同様、適宜の表皮部材を具備して形成される。ここで、ベースカバー部22の前面部および側面部には、スライド式ファスナ23が配設されている。このスライド式ファスナ23は、広く利用されるスライド式のファスナであり、図2に示すシートカバー60に設けられたスライド式ファスナ63と噛み合わせて一体化させることができるものである。なお、このベースカバー部22のスライド式ファスナ23と、シートカバー60のスライド式ファスナ63とを噛み合わせて一体化させた場合には、シートクッション20にシートカバー60が着けられたものとなる。また逆に、ベースカバー部22のスライド式ファスナ23と、シートカバー60のスライド式ファスナ63との噛合せを解除させた場合には、シートクッション20にシートカバー60が外されたものとなる。つまり、シートカバー60はシートクッション20に対して着脱可能となっており、シートカバー60が着けられた場合にはシートカバー60がシートクッション20の最外面の表装となり、シートカバー60が外された場合にはベースカバー部22がシートクッション20の最外面の表装となる。
【0014】
なお、図2に示すように、このシートクッション20には、着脱可能な表装となるシートカバー60を取り付けることができるようになっている。シートカバー60について説明すると、シートカバー60は、図2に示すように、ベースカバー部22と略同一形状の表装部61を有して形成されるものである。具体的には、表装部61は、上記したベースカバー部22のスライド式ファスナ23より上側部分の外形に対応した形状を有して形成されている。また、このシートカバー60の前面側および側面側の端縁部分には、ベースカバー部22のスライド式ファスナ23と噛み合わさるように対応するスライド式ファスナ63が配設されている。また、シートカバー60の裏面後側には、後に説明するマット40に配設されるカバー係着部472(格納用係着面ファスナ471のうち固定面ファスナ37とは係着せずに外部に露出する部分)に対して係着するカバー側面ファスナ65が、このカバー係着部472に対応する位置に設定されて設けられている。なお、このカバー側面ファスナ65は、後に説明するカバー係着部472と係着できるように、輪状(雌形)に形成されるカバー係着部472に対応した鉤状(雄形)に形成される面ファスナとなっている。
【0015】
次に、シートバック11側に巻いて格納でき且つシートクッション20上に拡げて敷くことができるマット40について説明する。このマット40は、ユーザの手で巻くことができるような、適宜の可撓性を有したシート状に形成されるものである。このマット40は、例えば、汚れても容易に拭き取り掃除ができる防汚マットとして構成されるものであり、例えば、適宜の樹脂材料により成形されるものとなっている。図1に示すように、このマット40の大きさとしては、シートクッション20上に拡げて敷いた場合に、シートクッション20の座面21の座面本体211の全てを覆うような大きさに設定されている。具体的には、マット40の幅長(図示左右方向の長さ)は、座面21の座面本体211の幅長に合わされており、マット40の前後長は、座面21の座面本体211の前後長よりも長くなる長さに設定されている。このため、図示するように、マット40をシートクッション20上に拡げて敷いた場合には、マット40の先端縁42は、シートクッション20の前端から垂れ下がることができるようになっている。なお、後にも説明するが、マット40の基端縁41は、立上り部30に設けられたマット格納凹部33の内部と結合している。
【0016】
ところで、上記した立上り部30には、図1に示すように、上記したマット40を格納するためのマット格納凹部33が設けられている。このマット格納凹部33は、マット40をシートバック11側と一致する立上り部30側に向けて巻いていった場合に、この巻かれたマット40を格納しておくことができるように形成されている。具体的には、マット格納凹部33は、図3にも示すように、立上り部30を形成するクッションパッド32の前面側を凹状に切り欠くようにして形成されている。このマット格納凹部33の凹状の横幅としては、上記したマット40の幅長に対応した幅長に設定されている。これに対して、マット格納凹部33の凹状の深さとしては、巻かれたマット40がマット格納凹部33の開口端から僅かに食み出すことができる深さに設定されている。つまり、通常想定されるような巻かれた方で巻かれたマット40をマット格納凹部33に格納した場合には、この巻かれたマット40は、図3に示すように、マット格納凹部33から僅かに食み出して格納されるように、マット格納凹部33の深さは設定されるものとなっている。
また、マット格納凹部33の内部となる上側内周面34は、上記したマット40のシートバック側部分となる基端縁41を結合している。すなわち、図3に示すように、マット40のシートバック側部分の基端縁41は、縫合糸35にて縫合されることによって、マット格納凹部33の内部のうち上側に位置する上側内周面34に対して結合されている。
また、図3に示すように、マット格納凹部33の内部となる上側内周面34には、マット40の格納状態を保持するための固定面ファスナ37が設けられている。この固定面ファスナ37は、マット格納凹部33の上側内周面34のうち、マット格納凹部33の開口個所の近接部位に対して設けられるものであり、マット40に配設される係着面ファスナ47と係着するものである。この固定面ファスナ37は、面状に拡がる面ファスナとして鉤状(雄形)に形成されるものである。
【0017】
図5は、シートクッション20上の本等の荷物Lの載置状態をマット40により保持する例を示す図である。図6は、図5におけるVI−VI断面矢視を示すマット格納凹部33の断面図である。
マット40の裏面側には、上記したマット格納凹部33に設けられる固定面ファスナ37と係着する係着面ファスナ47が配設されている。この係着面ファスナ47は、上記したこの鉤状(雄形)に形成される固定面ファスナ37に対して係着することができるように、面状に拡がる面ファスナとして輪状(雌形)に形成されるものである。この係着面ファスナ47としては、格納用係着面ファスナ471と、載置保持用係着面ファスナ475とを含む。格納用係着面ファスナ471は、上記した固定面ファスナ37と係着することにより、マット格納凹部33に対するマット40の格納状態を保持する面ファスナである。このため、格納用係着面ファスナ471は、巻いた場合のマット40の外周露出部分に位置するように、マット40の裏面側の基端縁41側に近い部分に配設されるものとなっている。
【0018】
また、この格納用係着面ファスナ471は、マット40を通常のように巻いた場合の外径が通常想定される外径から太くなったり細くなったりする場合であっても、このマット巻取り外径長のズレを許容することができるように、マット40の裏面側の巻く方向に沿って延びるように延在して配設されている。ここで、この固定面ファスナ37と係着する格納用係着面ファスナ471の延在部分のうち、固定面ファスナ37とは係着せずに外部に露出する部分は、上記したシートカバー60のカバー側面ファスナ65と係着するカバー係着部472として設定されるものとなっている。つまり、この外部に露出するカバー係着部472は、シートカバー60を着けるに際して、このシートカバー60のカバー側面ファスナ65と係着する面ファスナとして機能も発揮するようになっており、このシートカバー60に配設されたカバー側面ファスナ65と対応する位置に延在するものとなっている。
これに対して、図5および図6に示すように、載置保持用係着面ファスナ475は、拡げたマット40の裏面側の先端縁42側に近い部分に配設されるものとなっている。この載置保持用係着面ファスナ475も、上記した格納用係着面ファスナ471と同様、マット格納凹部33の固定面ファスナ37と係着するように形成されるものである。具体的には、上記した格納用係着面ファスナ471と同様、面状に拡がる面ファスナとして輪状(雌形)に形成され、係着位置を適宜に調節することができるように、マット40の裏面側の巻く方向に沿って延びるように延在している。
【0019】
上記したように構成される車両用シート10によれば、次のような作用効果を奏することができる。
すなわち、上記した車両用シート10によれば、立上り部30にはマット40をシートバック11側に巻いて格納しておくためのマット格納凹部33が設けられているので、マット40を使用しない場合にはシートバック11側に巻いたマット40をマット格納凹部33に格納しておくことができる。ここで、巻かれたマット40を格納するマット格納凹部33は、シートバック11に対して設けられるのではなく、シートクッション20において上方に突き出すように形成された立上り部30に対して設けられるものとなっている。これによって、シートバック11を前倒ししたり後倒ししたりする等の傾動させる場合であっても、巻かれたマット40はシートクッション20の立上り部30内で格納されることとなるので、このシートバック11の傾動によってマット40と擦れてしまうことはなくなる。もって、シートバック11の傾動によってマット40を傷めてしまうことを防止することができる。
【0020】
また、上記した車両用シート10によれば、マット格納凹部33の内部に設けられた固定面ファスナ37と係着することによりマット格納凹部33に対するマット40の格納状態を保持する格納用係着面ファスナ471がマット40に配設されているので、巻かれたマット40のマット格納凹部33の内部における格納状態を保持することができる。ここで、格納用係着面ファスナ471はマット40の裏面側の巻く方向に沿って延びるように配設されているので、マット40を巻いた場合の外径が想定される外径から太くなったり細くなったりするようにマット巻取り外径長にズレが生じる場合でも、このズレを許容するように格納用係着面ファスナ471を延在させることができる。これによって、マット40の巻かれ方が想定される外径長からズレの生じるような巻かれ方となったとしても、これを許容するように固定面ファスナ37に格納用係着面ファスナ471を係着させることができるようになり、巻かれたマット40をマット格納凹部33の内部に良好に保持することができる。
【0021】
また、上記した車両用シート10によれば、固定面ファスナ37とは係着せずに外部に露出する部分の格納用係着面ファスナ471は、シートカバー60に配設された面ファスナと対応する位置に延在して配設されて、着脱可能な表装となるシートカバー60を着ける際の係着用の面ファスナとして機能させることができる。これによって、マット40に配設される格納用係着面ファスナ471を、表装としてのシートカバー60を着けるにあたっての係着用の面ファスナとして利用するので、部材兼用による部品点数の削減を図ることができる。つまり、このようにシートクッション20上に拡げて敷くことができるマット40を具備しつつも、いわゆる着せ替えシートとしても有効的に利用することができる。加えて、マット格納凹部33に格納されたマット40をシートカバー60にて目隠しすることができるので、外観意匠も維持することができながら、シートクッション20上に拡げて敷くことができるマット40を具備したものとすることができる。
【0022】
また、上記した車両用シート10によれば、図3に示すように、マット格納凹部33の凹状の深さとしては、巻かれたマット40がマット格納凹部33の開口端から僅かに食み出すことができる深さに設定されている。これによって、巻かれたマット40はマット格納凹部33から僅かに食み出して膨出したものとなり、ランバーサポート(腰当て)のように機能させることができる。なお、巻かれたマット40をマット格納凹部33に格納した後に上記したシートカバー60を取り付けた場合には、巻かれたマット40と立上り部30との間の境界を覆うことができる。これによって、シートカバー60の表装にて、段差の無い無端状態とすることができ、見た目も良くなるばかりか、ランバーサポート(腰当て)としての機能もより優れたものとすることができる。
また、上記した車両用シート10によれば、図6に示すように、載置保持用係着面ファスナ475は、固定面ファスナ37と係着するように形成されるものであり、係着位置を適宜に調節することができるようにマット40の裏面側の巻く方向に沿って延びるように延在している。これによって、本や買い物袋等の様々な荷物Lに対してマット40を帯のようにして巻くことにより、この荷物Lの載置状態をマット40により保持することができる。なお、帯のようにして巻くマット40の長さは、固定面ファスナ37に対する載置保持用係着面ファスナ475の係着位置によって、適宜に変更することができる。
【0023】
なお、本発明に係る車両用シートにあっては、上記した実施の形態に限定されるものではなく、次のように適宜個所を変更して構成するようにしてもよい。
例えば、本発明に係るマットの大きさとしては、上記した実施の形態にて説明したマットの大きさに限定されることなく、例えば座面21(座面本体211、サイドサポート部212)全体を覆うことができる大きさに設定されるものであってもよく、適宜の大きさを選択することができる。
また、マット40のシートバック11側部分となる基端縁41が結合する部分としては、上記した上側内周面34に限定されることなく、マット格納凹部33の内部の適宜の部分に設定されるものであってよい。
また、シートクッション20、マット40、シートカバー60に配設される面ファスナは、適宜の用途に応じて適宜の部分に加えられて配設されるものであってもよい。例えば、防汚目的でシートクッション20やシートバック11に対してマット40を固定させておきたい位置があるならば、その固定させておきたい位置に応じて適宜に面ファスナが加えられて配設されるものであってよい。
【符号の説明】
【0024】
10 車両用シート
11 シートバック
111 シートバックのフレーム
12 ヘッドレスト
17 アウタシールド
19 連結装置
20 シートクッション
21 座面
211 座面本体
212 サイドサポート部
22 ベースカバー部
23 スライド式ファスナ
30 立上り部
31 側部
32 クッションパッド
33 マット格納凹部
34 上側内周面
35 縫合糸
37 固定面ファスナ
40 マット
41 基端縁
42 先端縁
47 係着面ファスナ
471 格納用係着面ファスナ
472 カバー係着部
475 載置保持用係着面ファスナ
60 シートカバー
61 表装部
63 スライド式ファスナ
65 カバー側面ファスナ
L 荷物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションのシートバック側に巻いて格納でき且つ該シートクッション上に拡げて敷くことができるマットを具備した車両用シートであって、
前記シートクッションには、該シートクッションの前記シートバック側端部を座面に対して上方に突き出すように形成された立上り部が設けられており、
前記立上り部には、前記マットを前記シートクッションの前記シートバック側に巻いて格納しておくための凹状に形成されるマット格納凹部が設けられていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートにおいて、
前記マットの前記シートクッションの前記シートバック側部分は、前記マット格納凹部の内部と結合しており、
前記マット格納凹部の内部に設けられた固定面ファスナと係着することにより前記マット格納凹部に対する該マットの格納状態を保持する係着面ファスナが、前記マットの裏面側の巻く方向に沿って延びるように配設されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用シートにおいて、
前記係着面ファスナは、前記固定面ファスナと係着する該係着面ファスナの延在部分のうち該固定面ファスナとは係着せずに外部に露出する部分が設定されて配設されており、該露出する部分の該係着面ファスナは、着脱可能な表装となるシートカバーを着ける際の係着用の面ファスナとして機能させるように、該シートカバーに配設された面ファスナと対応する位置に延在して配設されていることを特徴とする車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−11852(P2012−11852A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148864(P2010−148864)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】