説明

車両用シート

【課題】不快感を与えることなく快適性を高めることができる車両用シートを提供すること。
【解決手段】車両用シート1には、着座者に対してエアを吹き当てるファン42がシートクッション2および/またはシートバックに組み付けられている。このファン42は、その残響音を抑制可能なボックスB(34、36)で覆われている。このボックスB(34、36)には、ファン42が吹き当てるエアを取り込むための吸気口36bが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関し、詳しくは、着座者に対してエアを吹き当てるファンがシートクッションおよび/またはシートバックに組み付けられている車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートクッションおよび/またはシートバックにファンが組み付けられている車両用シートが既に知られている。ここで、下記特許文献1には、シートクッションの表面およびシートバックの表面からファンによってエアを吹き出させることができる車両用シートが開示されている。これにより、着座者にエアを吹き当てることができるため、例えば、夏場において、着座者に蒸れが生じることを防止できる。したがって、着座者の快適性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−327362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術では、例えば、図6に示すように、シートクッション102において、エアを吹き出させるファン142が、車両フロアfに対して露出する格好(ファン142と車両フロアfとが向かい合う格好)で設けられている。そのため、ファン142の風切り音やファン142のモータ音が車両フロアfに跳ね返って、これら風切り音やモータ音が着座者に不快感を与えることとなっていた。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、不快感を与えることなく快適性を高めることができる車両用シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、着座者に対してエアを吹き当てるファンがシートクッションおよび/またはシートバックに組み付けられている車両用シートであって、ファンは、その残響音を抑制可能なボックスで覆われており、ボックスには、ファンが吹き当てるエアを取り込むための吸気口が形成されていることを特徴とする構成である。
この構成によれば、従来技術と同様に、着座者にエアを吹き当てることができるため、着座者に蒸れが生じることを防止できる。したがって、着座者の快適性を高めることができる。また、この構成によれば、ボックスによって、ファンの風切り音やファンのモータ音が吸音される。したがって、これら風切り音やモータ音が着座者に不快感を与えることがない。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用シートであって、ボックスおよびその吸気口は、レゾネータとそのポートとを兼ねていることを特徴とする構成である。
この構成によれば、ヘルムホルツの原理により、例えば、ボックスの内部のエアを「316Hz」で振動させることができる。このように振動させることができると、例えば、ロードノイズに起因する騒音(「315Hz」)を打ち消すことができる。したがって、車内の騒音を抑制できる。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1〜2に記載の車両用シートであって、ボックスの壁面は、シートクッションおよび/またはシートバックのクッション材から突出するように形成されていることを特徴とする構成である。
この構成によれば、遮音壁をクッション材に接合させる作業が不要となる。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3に記載の車両用シートであって、ファンは、その両側がボックスの対向する壁面に嵌め込みされる格好で組み付けられていることを特徴とする構成である。
この構成によれば、ファンをボックスの対向する壁面に組み付けるとき、すなわち、ファンをクッション材に組み付けるとき、この組み付けを簡便に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の実施例に係るフロントシートのシートクッションの分解斜視図である。
【図2】図2は、図1の組み付け状態における平面図である。
【図3】図3は、図2のIII−III線断面図である。
【図4】図4は、図2のIV−IV線断面図である。
【図5】図5は、図2のV−V線断面図である。
【図6】図6は、従来技術に係るフロントシートのシートクッションの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、図1〜5を用いて説明する。なお、以下の説明にあたって、『車両用シート』の例として、『フロントシート(運転席、助手席等)1』を例に説明していく。また、以下の説明にあたって、上、下、前、後、左、右とは、上述した図に記載した、上、下、前、後、左、右の方向、すなわち、フロントシート1を基準にしたときの上、下、前、後、左、右の方向を示している。
【0012】
まず、図1〜5を参照して、本発明の実施例に係るフロントシート1の構成を説明する。このフロントシート1は、シートクッション2と、シートバック(図示しない)とから構成されている。以下、このシートクッション2について説明していく。なお、シートバック(図示しない)については、公知のものでよいため、その詳細な説明は省略することとする。
【0013】
シートクッション2は、クッションフレーム10と、このクッションフレーム10に包着状に組み付けられるクッションパッド30と、このクッションパッド30の表面をカバーリングする公知の表皮70(図1において、図示しない)とから構成されている。以下に、これらクッションフレーム10と、クッションパッド30とを個別に説明していく。
【0014】
はじめに、クッションフレーム10から説明していく。クッションフレーム10は、左のサイドフレーム12と、右のサイドフレーム14と、フロントパネル16と、ロアロッド18とから略矩形枠状を成すように構成されている。これらフロントパネル16とロアロッド18との間には、左右方向に適宜の間隔で4本のSバネ20が掛け渡されている。これにより、クッションフレーム10に後述するクッションパッド30を組み付けたとき、このクッションパッド30に着座した乗員(着座者)の沈み込みを防止できる。
【0015】
なお、上述した左右のサイドフレーム12、14は、左右のロアアーム50、52に対して昇降可能に組み付けられている。また、この左右のロアアーム50、52も左右のスライドレール60、62に対してスライド可能に組み付けられている。これにより、フロントシート1を車両フロアF(図1〜2、図4〜5において、図示しない)に対して昇降できると共に前後にスライドできる。クッションフレーム10は、このように構成されている。
【0016】
次に、クッションパッド30を説明していく。クッションパッド30は、本体32と、この本体32の底面から突出するように一体的に対を成すように形成された遮音壁34、34とから構成されている。この本体32と遮音壁34とが、特許請求の範囲に記載の「クッション材」と「ボックスの壁面」とに相当する。この遮音壁34、34には、ファンユニット40に形成されたガイド40a、40aを差し込み可能なガイド溝34a、34aが形成されている。
【0017】
これにより、ファンユニット40を遮音壁34、34、すなわち、ファンユニット40をクッションパッド30の本体32に組み付けることができる。この記載が、特許請求の範囲に記載の「ファンは、その両側がボックスの対向する壁面に嵌め込みされる格好で組み付けられている」に相当する。
【0018】
ここで、ファンユニット40について詳述すると、このファンユニット40は、その内部にモータ(図示しない)によって駆動するファン42を備えたユニットである。そして、このファンユニット40は、そのファン42を動作させると、その下部の開口40bから取り込んだエアを吹出口40cから吹き出させることができるように形成されている。これにより、この吹き出させたエアを略Y字状に形成されたダクト44を介して本体32の前面に形成された吹出孔32a、32aから吹き出させることができる。
【0019】
なお、遮音壁34、34には、そのガイド溝34a、34aに差し込んで組み付けたファンユニット40を覆うように略コ字状に形成された遮音カバー36が接合されている。これにより、ファンユニット40を遮音壁34、34と遮音カバー36とによって覆うことができる。なお、この接合は、例えば、接着によって行われている。また、この遮音壁34、34に遮音カバー36を接合させたものを、説明の便宜上、「ボックスB」と記す。
【0020】
この遮音カバー36は、遮音壁34と同様に、クッションパッド30の本体32と同じ素材(クッション性を有するパッド素材)から形成されている。この遮音カバー36の前面には、上述したダクト44を通すダクト差込孔36aと、エアを取り込むための吸気口36bとが形成されている。
【0021】
ここで、このボックスBの各種サイズについて詳述すると、このボックスBは、その各種サイズが「吸気口36bの半径r=16mm」であり、「遮音カバー36の前面の厚みD=10mm」であり、「ボックスBの内部の奥行L=130mm」であり、「ボックスBの内部の幅W=130mm」であり、「ボックスBの内部の高さH=40mm」となるように形成されている。このようなボックスBの内部のサイズが、特許請求の範囲に記載の「残響音を抑制可能」に相当する。
【0022】
このように形成すると、ヘルムホルツの原理により、ボックスBの内部のエアを「316Hz」で振動させることができる。このように振動させることができると、例えば、ロードノイズに起因する騒音(「315Hz」)を打ち消すことができる。これらの記載が、特許請求の範囲に記載の「レゾネータ」に相当する。このように、「ボックスB」が、「レゾネータ」に相当すると、「吸気口36b」が「ポート」に相当することとなる。クッションパッド30は、このように構成されている。
【0023】
これらクッションフレーム10と、クッションパッド30と、公知の表皮(図1において、図示しない)とから構成されているシートクッション2と、公知のシートバック(図示しない)とからフロントシート1は構成されている。
【0024】
続いて、上述した構成から成るフロントシート1の動作を説明する。ファンユニット40のファン42を動作させると、ボックスB(遮音壁34、34と遮音カバー36)の吸気口36bからエアが取り込まれ、この取り込まれたエアはファンユニット40の開口40bを介して同吹出口40cから吹き出される。すると、吹き出されたエアは、ダクト44を介してクッションパッド30の本体32の左右の吹出孔32a、32aから吹き出される。これにより、従来技術と同様に、着座者にエアを吹き当てることができるため、着座者に蒸れが生じることを防止できる。したがって、着座者の快適性を高めることができる。
【0025】
本発明の実施例に係るフロントシート1は、上述したように構成されている。この構成によれば、上述したように、従来技術と同様に、着座者の快適性を高めることができる。また、この構成によれば、ファンユニット40は、ボックスB(遮音壁34、34と遮音カバー36)によって覆われている。そのため、このボックスBによって、ファン42の風切り音やファン42のモータ音が吸音される。したがって、これら風切り音やモータ音が着座者に不快感を与えることがない。
【0026】
また、この構成によれば、「ボックスB」およびその「吸気口36b」が、「レゾネータ」およびその「ポート」に相当する。そのため、ヘルムホルツの原理により、例えば、ボックスBの内部のエアを「316Hz」で振動させることができる。このように振動させることができると、例えば、ロードノイズに起因する騒音(「315Hz」)を打ち消すことができる。したがって、車内の騒音を抑制できる。
【0027】
また、この構成によれば、遮音壁34、34は、クッションパッド30の本体32の底面から突出するように一体的に形成されている。そのため、遮音壁34、34をクッションパッド30の本体32に接合させる作業が不要となる。
【0028】
また、この構成によれば、クッションパッド30の遮音壁34、34には、ファンユニット40に形成されたガイド40a、40aを差し込み可能なガイド溝34a、34aが形成されている。そのため、ファンユニット40を遮音壁34、34に組み付けるとき、すなわち、ファンユニット40をクッションパッド30の本体32に組み付けるとき、この組み付けを簡便に行うことができる。
【0029】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
実施例では、『車両用シート』の例として、『フロントシート1』を例に説明した。しかし、これに限定されるものでなく、『後部座席』であっても構わない。
【0030】
また、実施例では、ボックスBの例として、遮音壁34、34に遮音カバー36を接合させたものを説明した。しかし、これに限定されるものでなく、単に、箱形状のボックスでも構わない。その場合、このボックスの内部にファンユニット40を組み付けることになる。また、このボックスは、例えば、Sバネ20に掛け留めてシートクッション2に組み付けることとなる。
【0031】
また、実施例では、ファンユニット40がシートクッション2に組み付けられている例を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、ファンユニット40がシートバック(図示しない)に組み付けられていても構わない。その場合、例えば、ファンユニット40は、バックボード(図示しない)の内部に配置される格好でシートバック(図示しない)に組み付けられることとなる。
【0032】
また、実施例では、ボックスBの各種サイズが「吸気口36bの半径r=16mm」であり、「遮音カバー36の前面の厚みD=10mm」であり、「ボックスBの内部の奥行L=130mm」であり、「ボックスBの内部の幅W=130mm」であり、「ボックスBの内部の高さH=40mm」となるように形成されている例を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、略「315Hz」になるような数値であれば、幾つであっても構わない。
【0033】
また、実施例では、遮音カバー36の吸気口36bが1つの例を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、遮音カバー36の吸気口36bが2つであっても構わない。その場合、例えば、ボックスBの各種サイズが「吸気口36bの半径r=12mm」であり、「遮音カバー36の前面の厚みD=10mm」であり、「ボックスBの内部の奥行L=150mm」であり、「ボックスBの内部の幅W=75mm」であり、「ボックスBの内部の高さH=40mm」となるように形成される形態が考えられる。
【符号の説明】
【0034】
1 フロントシート(車両用シート)
2 シートクッション
3 シートバック
30 クッションパッド(クッション材)
36b 吸気口
42 ファン
B ボックス



【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座者に対してエアを吹き当てるファンがシートクッションおよび/またはシートバックに組み付けられている車両用シートであって、
ファンは、その残響音を抑制可能なボックスで覆われており、
ボックスには、ファンが吹き当てるエアを取り込むための吸気口が形成されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートであって、
ボックスおよびその吸気口は、レゾネータとそのポートとを兼ねていることを特徴とする車両用シート。
【請求項3】
請求項1〜2に記載の車両用シートであって、
ボックスの壁面は、シートクッションおよび/またはシートバックのクッション材から突出するように形成されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項4】
請求項1〜3に記載の車両用シートであって、
ファンは、その両側がボックスの対向する壁面に嵌め込みされる格好で組み付けられていることを特徴とする車両用シート。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−1212(P2013−1212A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133013(P2011−133013)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】