説明

車両用ストップランプスイッチ

【課題】固定コンタクト及び可動コンタクトを収容したケース内に潤滑油や無機物、有機物が浸入することのないようにして、それら固定コンタクト及び可動コンタクトの接離を行わしめ得るようにする。
【解決手段】固定コンタクト8、可動コンタクト5、及び磁性体4を収納した密閉ケース1に対し、密閉ケース1の外部に位置して車両のブレーキペダルの踏み込み操作に応動する移動子12を設けると共に、この移動子12に磁石14を一体化し、その磁石14が移動子12と共に移動することにより、磁性体4を密閉ケース1外から吸引して、可動コンタクト5を固定コンタクト8に対し動かすようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトの操作構造を改良した車両用ストップランプスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両用ストップランプスイッチとしては、一般に、固定コンタクトと可動コンタクト、並びにその可動コンタクトを常時は固定コンタクトに接触又は離間させるスプリングを収容したケースに、ロッド状の移動子を挿通して設け、その移動子が車両のブレーキペダルの踏み込み操作に応じて移動することにより、上記可動コンタクトを固定コンタクトに対し動かして離間又は接触させるようにしたものが供されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−235632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
車両用ストップランプスイッチの近辺には、様々な機構部に塗布された潤滑油や、製品に含まれた無機物、有機物が存在する。これに対して、上記従来のものにおいては、その潤滑油や無機物、有機物が、ケースの、移動子を挿通した部分からケース内に浸入し、可動コンタクトと固定コンタクトとの間に付着して、特にはシリコーン成分によりコンタクト間の導通不良の問題を惹起するおそれを有していた。
【0004】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、従ってその目的は、固定コンタクト及び可動コンタクトを収容したケース内に潤滑油などが浸入することのないようにして、それら固定コンタクト及び可動コンタクトの接離を行わしめることのできる車両用ストップランプスイッチを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の車両用ストップランプスイッチは、固定コンタクトと、この固定コンタクトと対応する可動コンタクトと、この可動コンタクトを一体化した磁性体と、これら固定コンタクト、可動コンタクト、及び磁性体を収納した密閉ケースと、この密閉ケースの外部に位置して車両のブレーキペダルの踏み込み操作に応動する移動子と、この移動子に一体化した磁石とを具備し、その磁石が移動子と共に移動することにより、前記磁性体を前記密閉ケース外から吸引して、前記可動コンタクトを固定コンタクトに対し動かすことを特徴とする(請求項1の発明)。
【発明の効果】
【0006】
上記手段によれば、密閉ケース外からの磁石から密閉ケース内の磁性体に及ぶ磁力の作用にて、密閉ケース内に進入することなく、可動コンタクトを固定コンタクトに対し動かすことができる。よって、密閉ケース内には近辺に存在する潤滑油や無機物、有機物が浸入することもなく、該密閉ケースに収納した固定コンタクト及び可動コンタクトの接離を行わしめることができるものであり、それによって、従来あった、浸入物によるコンタクト間の導通不良の問題を惹起するおそれをなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の一実施例(一実施形態)につき、図面を参照して説明する。
まず、図1には、車両用ストップランプスイッチの全体構成を示しており、密閉ケース1を主体としている。この密閉ケース1は、天井部が閉塞され、底部が開放した筒状容器のケース主体部1aと、ケース底板1bとから成るもので、そのいずれも非磁性体例えばプラスチックにより作製している。
【0008】
ケース主体部1aの最上部には、ヨーク2を埋設している。このヨーク2は、鉄等の磁性材から成るもので、例えば図2に示すように、右側ヨーク2a及び左側ヨーク2bの2本から成っており、それらをケース主体部1aの型成形時にインサートして該ケース主体部1aを型成形することにより、ケース主体部1aの最上部に該ヨーク2(右側ヨーク2a及び左側ヨーク2b)を埋設している。
【0009】
その埋設状態は、詳細には、右側ヨーク2a及び左側ヨーク2bの各下端部と右側ヨーク2aの外側面部の大部分を除く、他の部分がケース主体部1aの壁中に位置する状態であり、上記右側ヨーク2a及び左側ヨーク2bの各下端部と右側ヨーク2aの外側面部の大部分がケース主体部1aの壁から露出している。又、その露出したうちの右側ヨーク2aの外側面部は、電気接続部2cを有している。
【0010】
ケース主体部1aの最上部の中央部には、右側ヨーク2aと左側ヨーク2bとの間に位置して穴部3を形成しており、この穴部3の底部3aは閉塞されている。
右側ヨーク2aの下端部には、磁性体4の一端部を上下に回動可能に軸支している。この磁性体4は、鉄等の磁性材であって且つ導電材から成るもので、上記一端部から左側の他端部へと延びており、その他端部から更に左側へは可動コンタクト5を一体化して設けている。可動コンタクト5は、先端部の下側に接点5aを有している。
【0011】
これに対して、ケース底板1bには、2つの接続端子6,7を挿設しており、その一方側(この場合、左側)の接続端子6は、最上部に固定コンタクト8を有している。固定コンタクト8は、上面部に接点8aを有している。
他方側(この場合、右側)の接続端子7は、最上部を導通体9によって前記右側ヨーク2aの電気接続部2cに接続し、ひいては右側ヨーク2aに電気接続している。又、右側ヨーク2aは、前記ケース主体部1aから露出した下端部を導通体10によって前記磁性体4に電気接続している。
【0012】
そして、ケース底板1bは、ケース主体部1aの底部の開放部を密に閉塞しており、それによって又、可動コンタクト5と固定コンタクト8とを接点5a,8a同士で対応させると共に、ケース主体部1aとケース底板1bとから成る密閉ケース1の内部に、固定コンタクト8と、可動コンタクト5、磁性体4、更にはヨーク2(右側ヨーク2a及び左側ヨーク2b)を収納する構造となしている。
【0013】
なお、可動コンタクト5は常時は接点5aを固定コンタクト8の接点8aに接触させるようになっている。又、接続端子6,7は下部をケース底板1bから下方へ突出させており、その突出部分に図示しないコネクタを介して図示しない導電線が接続されるようになっている。
【0014】
一方、ケース主体部1aの外部にはカバー11を装着しており、このカバー11は上部の中央部に筒部11aを有していて、この筒部11aにロッド状の移動子12を挿通している。移動子12は、筒部11aより下方の密閉ケース1とカバー11との間のスペース13に位置する下部につば部12aを有しており、このつば部12aより下方の最下部に磁石14を一体化して有している。
磁石14は、この場合、永久磁石であり、例えば図中左側部がN極、右側部がS極となっていて、上記移動子12の最下部と共に前記密閉ケース1(ケース主体部1a)の穴部3内深くに進入し得るようになっている。
【0015】
そして、密閉ケース1の上面部に形成したばね座凹環部15と、移動子12のつば部12aの下面側に形成したばね座凹環部16との間には、コイルスプリング17を介在させており、このコイルスプリング17は、常時は移動子12を押し上げ、磁石14を前記密閉ケース1の穴部3の最上部(ヨーク2より上方に離間した位置)に位置させる付勢力を呈する付勢手段として機能するようになっている。
なお、カバー11より上方に突出した移動子12の上部は、図示しない車両のブレーキペダルに対応している。又、カバー11は密閉ケース1のケース底板1bの下方に底板18を有していて、前記接続端子6,7をその底板18から下方へも突出させている。
【0016】
次に、上記構成のものの作用を述べる。
車両のブレーキペダルを踏み込み操作する前、車両用ストップランプスイッチの主要部分は図3に示す状態にあり、すなわち、上述のように移動子12がコイルスプリング17により押し上げられて、磁石14を密閉ケース1の穴部3の最上部に位置させており、可動コンタクト5は接点5aを固定コンタクト8の接点8aに接触させている。このとき、可動コンタクト5は、接続端子6,7間を、固定コンタクト8、可動コンタクト5、磁性体4、導通体10、右側ヨーク2a、及び導通体9を介する電路で導通させている。
【0017】
この状態から、車両のブレーキペダルが踏み込み操作されると、それに応じて移動子12がコイルスプリング17を圧縮して磁石14を伴い図4に矢印Aで示すように移動する。よって、磁石14は密閉ケース1の穴部3内深くに進入し、右側ヨーク2aと左側ヨーク2bとの間に位置するようになるから、それら右側ヨーク2a及び左側ヨーク2bが磁化されて、磁力を磁性体4に及ぼすようになる。このため、磁性体4が左側ヨーク2bに吸引され、ひいては磁石14に吸引される。これにより、磁性体4を一体化した可動コンタクト5が固定コンタクト8から離れ、接点5aを固定コンタクト8の接点8aから離間させるので、前記接続端子6,7間の電路が遮断される。かくして、車両用ストップランプスイッチが車両のブレーキペダルが踏み込み操作に応動するものであり、もって、図示しない車両のストップランプを点灯させるに至る。
【0018】
なお、車両のブレーキペダルの踏み込み操作が解除されれば、すべては原状態に復帰し、可動コンタクト5が接点5aを固定コンタクト8の接点8aに接触させることにより、車両のストップランプが消灯されるに至る。
【0019】
このように本構成のものでは、密閉ケース1外からの磁石14から密閉ケース1内の磁性体4に及ぶ磁力の作用にて、密閉ケース1内に進入することなく、可動コンタクト5を固定コンタクト8に対し動かすことができる。よって、密閉ケース1内には車両用ストップランプスイッチの近辺に存在する潤滑油や無機物、有機物が浸入することはなく、該密閉ケース1に収納した固定コンタクト8及び可動コンタクト5の接離を行わしめることができるものであり、それによって、従来あった、浸入物によるコンタクト8,5間の導通不良の問題を惹起するおそれをなくすことができる。
【0020】
加えて、本構成のものの場合、密閉ケース1は、磁性体4に対応してヨーク2を有し、磁石14の磁力がそのヨーク2を介して磁性体4に及ぶようにしている。これにより、磁石14の磁力による磁性体4の吸引がより強力にできるから、可動コンタクト5を固定コンタクト8に対して動かすことも、より確実に行うことができる。
【0021】
なお、本発明は上記し且つ図面に示した実施例にのみ限定されるものではなく、特に、固定コンタクト8と可動コンタクト5の上下関係を逆にして、可動コンタクト5が常時は固定コンタクト8から離間し、車両のブレーキペダルの踏み込み操作に応じて可動コンタクト5が固定コンタクト8に接触するように変えても良く、又、磁性体4は、磁石(特には永久磁石)から成るもので、それを磁石14に吸引される極性の関係に配置するものであっても良いものであり、そのほか、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施例を示す車両用ストップランプスイッチ全体の縦断面図
【図2】磁石から磁性体にかけての斜視図
【図3】主要部分のブレーキペダルの踏み込み操作前状態の縦断面図
【図4】主要部分のブレーキペダルの踏み込み操作後状態の縦断面図
【符号の説明】
【0023】
図面中、1は密閉ケース、2はヨーク、4は磁性体、5は可動コンタクト、8は固定コンタクト、12は移動子、14は磁石を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定コンタクトと、
この固定コンタクトと対応する可動コンタクトと、
この可動コンタクトを一体化した磁性体と、
これら固定コンタクト、可動コンタクト、及び磁性体を収納した密閉ケースと、
この密閉ケースの外部に位置して車両のブレーキペダルの踏み込み操作に応動する移動子と、
この移動子に一体化した磁石とを具備し、
その磁石が移動子と共に移動することにより、前記磁性体を前記密閉ケース外から吸引して、前記可動コンタクトを固定コンタクトに対し動かすことを特徴とする車両用ストップランプスイッチ。
【請求項2】
密閉ケースが磁性体に対応してヨークを有し、磁石の磁力がそのヨークを介して磁性体に及ぶようにしたことを特徴とする請求項1記載の車両用ストップランプスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−84584(P2008−84584A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260584(P2006−260584)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】