車両用ドアのラッチ解除装置
【課題】操作部材と、操作部材を非操作位置側に付勢する第1のばねと、操作部材の非操作位置から第1の操作位置までの操作に応じて導通するようにして電気アクチュエータに接続されるスイッチと、第2の操作位置まで操作部材を操作するのに応じてラッチ装置にラッチ解除操作力を機械的に伝達するラッチ解除操作力伝達手段とを備える車両用ドアのラッチ解除装置において、通常操作時と非常操作時とで操作負荷に明らかな差を生じさせて不必要な非常操作を行ってしまうことを回避する。
【解決手段】操作部材24の第1の操作位置から第2操作位置への操作に連動して回動するようにしてラッチ解除操作力伝達手段56の一部を構成する回動レバー27が、第2のばね28で非回動位置側に付勢される。
【解決手段】操作部材24の第1の操作位置から第2操作位置への操作に連動して回動するようにしてラッチ解除操作力伝達手段56の一部を構成する回動レバー27が、第2のばね28で非回動位置側に付勢される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアのラッチ状態を解除するように作動する電気アクチュエータを有するとともにラッチ解除操作力に機械的な入力に応じても前記ラッチ状態の解除を可能としたラッチ装置と、操作部材と、該操作部材を非操作位置側に付勢する第1のばねと、前記操作部材の非操作位置から第1の操作位置までの操作に応じて導通するようにして前記電気アクチュエータに接続されるスイッチと、前記非操作位置からの操作量を第1の操作位置よりも大きくした第2の操作位置まで前記操作部材を操作するのに応じて前記ラッチ装置にラッチ解除操作力を機械的に伝達するラッチ解除操作力伝達手段とを備える車両用ドアのラッチ解除装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オープンボタンの操作によって電気的にも機械的にも車両用ドアのラッチ状態を解除し得るようにしたものが、特許文献1で知られており、このものでは、非操作位置側に第1のばねで付勢されているオープンボタンの先端部に設けられた接触子と、オープンボタンを所定の小ストロークだけ押し込んだときに前記接触子に接触するようにして第2のばねで支えられているスイッチ接点とで電気スイッチが構成されており、車室内に配置される前記オープンボタンを通常時は小ストローク分押し込むことで電気スイッチを導通させて電気的に車両用ドアのラッチ状態を解除し、バッテリ上がり等で電気的なラッチ解除が不能となった非常時には、前記オープンボタンを通常操作時よりもさらに押し込むことによって、前記オープンボタンに連結されたアームおよびケーブルを介してラッチ解除操作力をラッチ装置に入力するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平6−35091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1で開示されるもので、スイッチ接点を支える第2のばねは、オープンボタンを所定の小ストロークだけ押し込んだときに接触子に接触する位置にスイッチ接点を保持するばね力を発揮するものであり、第2のばねのばね力はごく小さく設定されている。このため非常時にオープンボタンを通常操作時よりもさらに押し込むときに、オープンボタンには実質的には第1のばねのばね力しか作用しておらず、またオープンボタンおよびアームは常時連動するように連結されているので、通常操作時と、非常操作時とで操作負荷に差は生じない。このため通常操作時にもオープンボタンをより深く押し込む非常操作を行ってしまうことがあり、操作上あまり好ましくない。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、通常操作時と非常操作時とで操作負荷に明らかな差を生じさせて不必要な非常操作を行ってしまうことを回避し得るようにして操作性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、車両用ドアのラッチ状態を解除するように作動する電気アクチュエータを有するとともにラッチ解除操作力の機械的な入力に応じても前記ラッチ状態の解除を可能としたラッチ装置と、操作部材と、該操作部材を非操作位置側に付勢する第1のばねと、前記操作部材の非操作位置から第1の操作位置までの操作に応じて導通するようにして前記電気アクチュエータに接続されるスイッチと、前記非操作位置からの操作量を第1の操作位置よりも大きくした第2の操作位置まで前記操作部材を操作するのに応じて前記ラッチ装置にラッチ解除操作力を機械的に伝達するラッチ解除操作力伝達手段とを備える車両用ドアのラッチ解除装置において、前記操作部材の第1の操作位置から第2操作位置への操作に連動して回動するようにして前記ラッチ解除操作力伝達手段の一部を構成する回動レバーと、該回動レバーを非回動位置側に付勢する第2のばねとを含むことを特徴とする。
【0007】
なお実施の形態の電動モータ50が本発明の電気アクチュエータに対応し、実施の形態の前部サイドドアDが本発明の車両用ドアに対応する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の上記構成によれば、操作部材が第1の操作位置からさらに第2の操作位置側に操作されるのに応じて回動レバーが操作部材に連動して回動を開始するので、操作部材を第1の操作位置まで操作する通常操作時には、操作部材には第1のばねのばね力だけが作用し、操作部材の操作を軽く行うことができる。一方、操作部材を第1の操作位置からさらに第2の操作位置側に操作する非常操作時には、操作部材および回動レバーが連動することになり、操作部材には第1のばねのばね力に加えて、第2のばねのばね力が作用することになり、通常操作時に比べて操作が重くなる。したがって通常操作時と非常操作時とで操作負荷に明らかな差が生じることになり、通常操作時に不必要な非常操作を行ってしまうことを回避することができ、操作性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施の形態の乗用車両の斜視図である。
【図2】図1の2−2線拡大断面図である。
【図3】操作部材の非操作状態での図2の3矢視拡大図である。
【図4】ラッチ解除操作手段の斜視図である。
【図5】図3の5−5線断面図である。
【図6】図3の6−6線断面図である。
【図7】図3の7−7線断面図である。
【図8】操作部材を第1の操作位置まで操作した状態での図3に対応した図である。
【図9】電動モータの制御系の構成を示す図である。
【図10】操作部材を第2の操作位置まで操作した状態での図3に対応した図である。
【図11】図3の11−11線断面図である。
【図12】第2の実施の形態の車両用ドアの一部を示す側面図である。
【図13】ラッチ解錠操作手段を車両用ドアの内面側から見た斜視図である。
【図14】図12の14−14線拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について添付の図面を参照しながら説明する。
【0011】
本発明の第1の実施の形態について図1〜図11を参照しながら説明すると、先ず図1において、この乗用車両が備える車両用ドアたとえば前部サイドドアDのアウターパネル15には、ラッチ解錠操作手段16A、シリンダ錠17およびロック用スイッチ18が配設される。また前部サイドドアDの閉じ状態を保持するラッチ状態ならびに前部サイドドアDを開放操作することを可能としたアンラッチ状態を切換可能としたラッチ装置19と、ドアミラー20とが前部サイドドアDに配設される。
【0012】
図2を併せて参照して、前記前部サイドドアDのアウターパネル15には、内方側に凹んだ凹部21が設けられており、この凹部21の上壁を構成するようにして前記アウターパネル15に一体に設けられる取付け板部22に、前記凹部21に外部から入れた手で操作することを可能として前記ラッチ解除操作手段16Aが取付けられる。
【0013】
図3〜図6を併せて参照して、前記ラッチ解除操作手段16Aは、前記アウターパネル15の前記取付け板部22に取付けられるケース23と、上下に移動することを可能として前記ケース23に摺動可能に嵌合される操作部材24と、該操作部材24および前記ケース23間に設けられる一対の第1のばね25,25と、前記操作部材24の非操作位置からの移動に応じて導通するようにして前記ケース23に取付けられるスイッチ26と、前記ケース23に回動可能に支承される回動レバー27と、該回動レバー27および前記ケース23間に設けられる第2のばね28とを備える。
【0014】
前記ケース23は、横断面形状を長円形とするとともに一端を端壁部23cで閉じた有底筒状の筒部23aと、該筒部23aの他端から外側方に張り出す鍔部23bとを一体に有するように形成され、乗用車両の前後方向で前記筒部23aの前後に配置される一対のボルト29,29が前記鍔部23bに植設される。一方、前記取付け板部22には、前記筒部23aを下方から挿入せしめる開口部31と、乗用車両の前後方向で前記筒部23aの前後に配置される一対のボルト挿通孔32,32とが設けられており、前記筒部23aを前記開口部31に下方から挿入するようにしつつ前記ボルト挿通孔32…に前記ボルト29…をそれぞれ挿通せしめて前記鍔部23bが前記取付け板部22の下面に当接され、その状態で前記ボルトに29…螺合せしめたナット30,30を前記取付け板部22の上面に当接するまで締めつけることで前記ケース23が前記アウターパネル15の前記取付け板部22に取付けられる。
【0015】
前記操作部材24は、前記ケース23における筒部23aの内面形状に対応した外面形状を有して横断面形状を長円形として一端を開放するとともに他端を端壁部24aで閉じた有底筒状に形成されるものであり、その端壁部24aを下方位置として前記ケース23の筒部23aに摺動可能に嵌合される。しかも前記操作部材24の周方向複数箇所に設けられて上下方向に延びる複数のガイド突部33…が、前記ケース23における筒部23aの内面に設けられて上下方向に延びる複数のガイド溝34…に嵌合されており、各ガイド突部33…が各ガイド溝34…でガイドされるようにして前記操作部材24が上下方向に移動可能である。また操作部材24内には、アンテナ35が収容、固定される。
【0016】
一対の第1のばね25…は、乗用車両の前後方向で前記ケース23の端壁部23cの前部および後部と、前記操作部材24の端壁部24aの前部および後部との間に縮設されるコイルばねであり、前記ケース23の端壁部23cには、第1のばね25…の一端部に挿入されるばね保持突部36,36が十字状の横断面形状を有するようにして一体に突設され、前記操作部材24の端壁部24aには、第1のばね25…の他端部を挿入せしめるばね保持筒部37,37が円形の横断面形状を有するようにして一体に突設される。而して操作部材24は、一対の第1のばね25…が発揮するばね力によって、図3で示す非操作位置側に向けて下方に付勢される。
【0017】
図7を併せて参照して、乗用車両の前後方向に沿う前記ケース23の筒部23aの前部寄り外側面にはステー39が固定されており、前記スイッチ26は、前記ステー39にねじ部材40で締結される。前記ステー39を固定するために、前記ケース23における筒部23aの外側面には、位置決めピン41および取付けボス42が突設されており、前記ステー39には、前記位置決めピン41を嵌合せしめる位置決め孔43と、前記取付けボス42を嵌合せしめる取付け孔44とが設けられる。而して位置決めピン41および取付けボス42を位置決め孔43および取付け孔44に嵌合させて前記ケース23の外側面に前記ステー39を当接させた状態で、前記取付けボス42に螺合されるねじ部材45の拡径頭部45aを前記ステー39にワッシャ46を介して係合させることによって前記ステー39が前記ケース23の筒部23aに固定される。
【0018】
前記スイッチ26は、前記ステー39にねじ部材40で締結されるスイッチケース47と、該スイッチケース47から突出する検出子48を有しており、スイッチケース47が前記ステー39に締結された状態で前記検出子48の先端は前記ケース23内に突入される。一方、前記スイッチ26が配設される部分に対応した位置で前記操作部材24には、前記検出子48の先端に当接して該検出子48を前記スイッチケース47側に押し込む被検出面49が設けられており、この被検出面49は、前記ケース23における筒部23aの内面から離反するにつれて上方位置となるように傾斜して形成される。
【0019】
而して前記スイッチ26は、前記操作部材24が図3で示す非操作位置から図8で示す第1の操作位置まで移動したときに、前記検出子48が前記被検出面49で押されることによって導通するものである。
【0020】
図9を併せて参照して、前記ラッチ装置19は、前部サイドドアDのラッチ状態を解除するように作動する電気アクチュエータである電動モータ50を有しており、前記スイッチ26は、該電動モータ50に接続される。
【0021】
前記電動モータ50の作動は、前部サイドドアD内に配設される制御ユニット51で制御されるものであり、該制御ユニット51は、CPU52と、前記スイッチ26および電源53間に介設される第2のスイッチ54とを備える。また前記CPU52には、正規の車両ユーザが携帯する携帯器との間でのID信号の授受に用いられる前記アンテナ35およびレシーバユニット55からの信号が入力され、CPU52は、前記ID信号が正規のものであることを確認したときに前記制御ユニット51に含まれる第2のスイッチ54を導通する。すなわち車両ユーザが正規の携帯器を携帯し、前記操作部材24を第1の操作位置まで操作したときに電動モータ50に電力が供給されて該電動モータ50が作動し、それによって前部サイドドアDの開放が可能となる。
【0022】
ところで、前記操作部材24は、図3で示す非操作位置から図8で示す第1の操作位置を経て、図10で示す第2の操作位置まで操作することが可能であり、前記回動レバー27は、前記非操作位置から第2の操作位置まで前記操作部材24を操作するのに応じて前記ラッチ装置19にラッチ解除操作力を機械的に伝達するラッチ解除操作力伝達手段56の一部を構成するものである。
【0023】
乗用車両の前後方向に沿う前記ケース23の筒部23aの後部寄り外側面には、図6で示すように、支持ボス57が突設されており、この支持ボス57に一端側が圧入、固定される支軸58の前記支持ボス57からの突出部に、回動レバー27が回動可能支承される。而して回動レバー27は、前記支軸58に設けられる環状段部58aと、前記支軸58の他端をかしめて形成されるかしめ部58bが係合することで該支軸58に固定されるワッシャ59との間に挟持されるようにして、前記支軸58で回動可能に支承される。しかも第2のばね28は、前記支持ボス57を囲繞するようにして前記ケース23および前記回動レバー27間に設けられるねじりばねであり、回動レバー27は、第2のばね28のばね力によって図3、図8および図10の反時計方向に向けて回動付勢されることになり、その反時計方向の回動端すなわち非回動位置を定めるために、前記回動レバー27の一端に突設された突部27aを受ける規制部60が、前記ケース23における筒部23aの外側面に突設される。
【0024】
図11を併せて参照して、前記回動レバー27の一端部には連結孔61が設けられる。また前記ケース23における筒部23aには、前記回動レバー27の一端部に対応する位置で上下に延びるガイド孔62が設けられており、前記操作部材24に一端部が固定される連結ピン63が前記ガイド孔62に挿通される。また前記連結ピン63の他端には、前記回動レバー27の一端部の連結孔61に挿通される小径軸部63aが同軸にかつ一体に設けられており、前記小径軸部63aの先端をかしめて形成されるかしめ部63bが、前記回動レバー27の一端部に摺接するワッシャ64に当接、係合される。
【0025】
ところで前記連結孔61は、略L字状に形成されており、操作部材24が非操作位置にあって回動レバー27が非回動位置にあるときに前記連結ピン63の小径軸部63aは連結孔61の下縁部に当接しており、この状態で回動レバー27は、その一端の突部27aを前記ケース23の規制部60に上方から当接させた非回動位置に第2のばね28のばね力で保持されているので、一対の第1のばね25…で下方に向けて付勢されている前記操作部材24の下限位置が非操作位置に規制されることになる。
【0026】
前記回動レバー27が前記突部27aを前記規制部60に当接させた非回動位置にあるときに前記操作部材24が非操作位置および第1の操作位置間で移動しても、図8で示すように、前記連結ピン63の小径軸部63aは前記連結孔61内を上下に移動するだけであり、回動レバー27は、第2のばね28のばね力によって前記突部27aを前記規制部60に当接させた非回動位置を維持したままであるが、前記操作部材24が第1の操作位置からさらに第2の操作位置側に移動したときには、前記連結ピン63の小径軸部63aが前記連結孔61の上縁部に摺接することで、図10で示すように、回動レバー27が第2のばね28のばね力に抗して前記非回動位置から時計方向に回動駆動される。
【0027】
すなわち操作部材24を非操作位置から第1の操作位置まで操作する通常操作時には、操作部材24には第1のばね25…のばね力だけが作用するのに対して、操作部材24を第1の操作位置からさらに第2の操作位置側に操作したときには、操作部材24には第1のばね25…のばね力に加えて第2のばね28のばね力が作用することになり、通常操作時と、非常操作時とで操作部材24に作用するばね荷重に明らかな差が生じるように第2のばね28のばね荷重は、第1のばね25…のばね荷重以上に設定される。ここで操作部材24を非操作位置から第1の操作位置まで操作する通常操作時に操作部材24に作用するばね荷重をたとえば6Nとしたときに、操作部材24を第1の操作位置から第2の操作位置まで操作する非常操作時に操作部材24に作用するばね荷重はたとえば20Nである。
【0028】
図2に注目して、前記ラッチ解除操作力伝達手段56は、前記回動レバー27と、たとえば該回動レバー27の他端部およびラッチ装置19間を結ぶロッド66とで構成されるものであり、操作部材24を第1の操作作位置から第2の操作位置まで操作するのに応じたラッチ解除操作力が、前記回動レバー27および前記ロッド66を介して前記ラッチ装置19に機械的に伝達されることになる。
【0029】
ところで前記ラッチ解除操作手段16Aよりも前方で前記前部サイドドアDに設けられたシリンダ錠17に正規のメカニカルキーを差し込んで回動操作するのに応じた回動力は、図2で示すように、ラッチ装置19に伝達されるものであり、ラッチ装置19は、前記シリンダ錠17から回動力が伝達された状態で前記ラッチ解除操作力伝達手段56からラッチ解錠操作力が入力されるのに応じてラッチ状態を解除し、それによって前部サイドドアDの開放が可能となる。
【0030】
次にこの第1の実施の形態の作用について説明すると、操作部材24は第1のばね25…で非操作位置側に付勢されており、非操作位置からの操作量を第1の操作位置よりも大きくした第2の操作位置まで前記操作部材24を操作したときには、ラッチ解除操作力伝達手段56からラッチ装置19にラッチ解除操作力が機械的に伝達されるのであるが、操作部材24の第1の操作位置から第2操作位置への操作に連動して回動するようにしてラッチ解除操作力伝達手段56の一部を構成する回動レバー27が、第2のばね28で非回動位置側に付勢されるので、操作部材24を第1の操作位置まで操作する通常操作時には、操作部材24には第1のばね25…のばね力だけが作用し、操作部材24の操作を軽く行うことができる。一方、操作部材24を第1の操作位置からさらに第2の操作位置側に操作する非常操作時には、操作部材24および回動レバー27が連動することになり、操作部材24には第1のばね25…のばね力に加えて、第2のばね28のばね力が作用することになり、通常操作時に比べて操作が重くなる。したがって通常操作時と非常操作時とで操作負荷に明らかな差が生じることになり、通常操作時に不必要な非常操作を行ってしまうことを回避することができ、操作性の向上を図ることができる。
【0031】
なお上記第1の実施の形態では、操作部材24およびケース23間に一対の第1のばね25…が設けられる構成としたが、単一である第1のばね25が操作部材24およびケース23間に設けられる構成とすることもできる。
【0032】
本発明の第2の実施の形態について図12〜図14を参照しながら説明するが、上記第1の実施の形態に対応する部分には同一の参照符号を付して図示するのみとし、詳細な説明は省略する。
【0033】
前部サイドドアDには、該前部サイドドアDのアウターパネル15に設けられる開口部67を塞ぐととももに前記アウターパネル15の外面から内方に凹んだ凹部68を形成する化粧カバー69が取付けられ、この化粧カバー69に、ラッチ解除操作手段16B、シリンダ錠17およびロック用スイッチ18が配設される。
【0034】
前記ラッチ解除操作手段16Bは、前記化粧カバー69に一体に設けられるケース70と、上下に移動することを可能として前記ケース70に摺動可能に嵌合される操作部材24と、該操作部材24および前記ケース70間に設けられる単一の第1のばね25と、前記操作部材24の非操作位置からの移動に応じて導通するようにして前記ケース70に取付けられるスイッチ26と、前記ケース70に回動可能に支承される回動レバー27と、該回動レバー27および前記ケース70間に設けられる第2のばね28とを備え、第1の実施の形態のラッチ解除操作手段16Bと同様に構成される。
【0035】
またアンテナ35が前記ラッチ解除操作手段16Bの下方で前記化粧カバー69の内面側に固定され、前記シリンダ錠17を化粧カバー69の表面から隠すカバー71が前記化粧カバー69に着脱可能に取付けられる。
【0036】
この第2の実施の形態によれば、化粧カバー69に、ラッチ解除操作手段16B、シリンダ錠17およびロック用スイッチ18が配設されるので、ラッチ解除操作手段16B、シリンダ錠17およびロック用スイッチ18を化粧カバー69に予め組み付けた状態で前部サイドドアDへの組み付けを行うことができ、組付けが容易となる。
【0037】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0038】
19・・・ラッチ装置
24・・・操作部材
25・・・第1のばね
26・・・スイッチ
27・・・回動レバー
28・・・第2のばね
50・・・電気アクチュエータである電動モータ
56・・・ラッチ解除操作力伝達手段
D・・・車両用ドアである前部サイドドア
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアのラッチ状態を解除するように作動する電気アクチュエータを有するとともにラッチ解除操作力に機械的な入力に応じても前記ラッチ状態の解除を可能としたラッチ装置と、操作部材と、該操作部材を非操作位置側に付勢する第1のばねと、前記操作部材の非操作位置から第1の操作位置までの操作に応じて導通するようにして前記電気アクチュエータに接続されるスイッチと、前記非操作位置からの操作量を第1の操作位置よりも大きくした第2の操作位置まで前記操作部材を操作するのに応じて前記ラッチ装置にラッチ解除操作力を機械的に伝達するラッチ解除操作力伝達手段とを備える車両用ドアのラッチ解除装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オープンボタンの操作によって電気的にも機械的にも車両用ドアのラッチ状態を解除し得るようにしたものが、特許文献1で知られており、このものでは、非操作位置側に第1のばねで付勢されているオープンボタンの先端部に設けられた接触子と、オープンボタンを所定の小ストロークだけ押し込んだときに前記接触子に接触するようにして第2のばねで支えられているスイッチ接点とで電気スイッチが構成されており、車室内に配置される前記オープンボタンを通常時は小ストローク分押し込むことで電気スイッチを導通させて電気的に車両用ドアのラッチ状態を解除し、バッテリ上がり等で電気的なラッチ解除が不能となった非常時には、前記オープンボタンを通常操作時よりもさらに押し込むことによって、前記オープンボタンに連結されたアームおよびケーブルを介してラッチ解除操作力をラッチ装置に入力するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平6−35091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1で開示されるもので、スイッチ接点を支える第2のばねは、オープンボタンを所定の小ストロークだけ押し込んだときに接触子に接触する位置にスイッチ接点を保持するばね力を発揮するものであり、第2のばねのばね力はごく小さく設定されている。このため非常時にオープンボタンを通常操作時よりもさらに押し込むときに、オープンボタンには実質的には第1のばねのばね力しか作用しておらず、またオープンボタンおよびアームは常時連動するように連結されているので、通常操作時と、非常操作時とで操作負荷に差は生じない。このため通常操作時にもオープンボタンをより深く押し込む非常操作を行ってしまうことがあり、操作上あまり好ましくない。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、通常操作時と非常操作時とで操作負荷に明らかな差を生じさせて不必要な非常操作を行ってしまうことを回避し得るようにして操作性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、車両用ドアのラッチ状態を解除するように作動する電気アクチュエータを有するとともにラッチ解除操作力の機械的な入力に応じても前記ラッチ状態の解除を可能としたラッチ装置と、操作部材と、該操作部材を非操作位置側に付勢する第1のばねと、前記操作部材の非操作位置から第1の操作位置までの操作に応じて導通するようにして前記電気アクチュエータに接続されるスイッチと、前記非操作位置からの操作量を第1の操作位置よりも大きくした第2の操作位置まで前記操作部材を操作するのに応じて前記ラッチ装置にラッチ解除操作力を機械的に伝達するラッチ解除操作力伝達手段とを備える車両用ドアのラッチ解除装置において、前記操作部材の第1の操作位置から第2操作位置への操作に連動して回動するようにして前記ラッチ解除操作力伝達手段の一部を構成する回動レバーと、該回動レバーを非回動位置側に付勢する第2のばねとを含むことを特徴とする。
【0007】
なお実施の形態の電動モータ50が本発明の電気アクチュエータに対応し、実施の形態の前部サイドドアDが本発明の車両用ドアに対応する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の上記構成によれば、操作部材が第1の操作位置からさらに第2の操作位置側に操作されるのに応じて回動レバーが操作部材に連動して回動を開始するので、操作部材を第1の操作位置まで操作する通常操作時には、操作部材には第1のばねのばね力だけが作用し、操作部材の操作を軽く行うことができる。一方、操作部材を第1の操作位置からさらに第2の操作位置側に操作する非常操作時には、操作部材および回動レバーが連動することになり、操作部材には第1のばねのばね力に加えて、第2のばねのばね力が作用することになり、通常操作時に比べて操作が重くなる。したがって通常操作時と非常操作時とで操作負荷に明らかな差が生じることになり、通常操作時に不必要な非常操作を行ってしまうことを回避することができ、操作性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施の形態の乗用車両の斜視図である。
【図2】図1の2−2線拡大断面図である。
【図3】操作部材の非操作状態での図2の3矢視拡大図である。
【図4】ラッチ解除操作手段の斜視図である。
【図5】図3の5−5線断面図である。
【図6】図3の6−6線断面図である。
【図7】図3の7−7線断面図である。
【図8】操作部材を第1の操作位置まで操作した状態での図3に対応した図である。
【図9】電動モータの制御系の構成を示す図である。
【図10】操作部材を第2の操作位置まで操作した状態での図3に対応した図である。
【図11】図3の11−11線断面図である。
【図12】第2の実施の形態の車両用ドアの一部を示す側面図である。
【図13】ラッチ解錠操作手段を車両用ドアの内面側から見た斜視図である。
【図14】図12の14−14線拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について添付の図面を参照しながら説明する。
【0011】
本発明の第1の実施の形態について図1〜図11を参照しながら説明すると、先ず図1において、この乗用車両が備える車両用ドアたとえば前部サイドドアDのアウターパネル15には、ラッチ解錠操作手段16A、シリンダ錠17およびロック用スイッチ18が配設される。また前部サイドドアDの閉じ状態を保持するラッチ状態ならびに前部サイドドアDを開放操作することを可能としたアンラッチ状態を切換可能としたラッチ装置19と、ドアミラー20とが前部サイドドアDに配設される。
【0012】
図2を併せて参照して、前記前部サイドドアDのアウターパネル15には、内方側に凹んだ凹部21が設けられており、この凹部21の上壁を構成するようにして前記アウターパネル15に一体に設けられる取付け板部22に、前記凹部21に外部から入れた手で操作することを可能として前記ラッチ解除操作手段16Aが取付けられる。
【0013】
図3〜図6を併せて参照して、前記ラッチ解除操作手段16Aは、前記アウターパネル15の前記取付け板部22に取付けられるケース23と、上下に移動することを可能として前記ケース23に摺動可能に嵌合される操作部材24と、該操作部材24および前記ケース23間に設けられる一対の第1のばね25,25と、前記操作部材24の非操作位置からの移動に応じて導通するようにして前記ケース23に取付けられるスイッチ26と、前記ケース23に回動可能に支承される回動レバー27と、該回動レバー27および前記ケース23間に設けられる第2のばね28とを備える。
【0014】
前記ケース23は、横断面形状を長円形とするとともに一端を端壁部23cで閉じた有底筒状の筒部23aと、該筒部23aの他端から外側方に張り出す鍔部23bとを一体に有するように形成され、乗用車両の前後方向で前記筒部23aの前後に配置される一対のボルト29,29が前記鍔部23bに植設される。一方、前記取付け板部22には、前記筒部23aを下方から挿入せしめる開口部31と、乗用車両の前後方向で前記筒部23aの前後に配置される一対のボルト挿通孔32,32とが設けられており、前記筒部23aを前記開口部31に下方から挿入するようにしつつ前記ボルト挿通孔32…に前記ボルト29…をそれぞれ挿通せしめて前記鍔部23bが前記取付け板部22の下面に当接され、その状態で前記ボルトに29…螺合せしめたナット30,30を前記取付け板部22の上面に当接するまで締めつけることで前記ケース23が前記アウターパネル15の前記取付け板部22に取付けられる。
【0015】
前記操作部材24は、前記ケース23における筒部23aの内面形状に対応した外面形状を有して横断面形状を長円形として一端を開放するとともに他端を端壁部24aで閉じた有底筒状に形成されるものであり、その端壁部24aを下方位置として前記ケース23の筒部23aに摺動可能に嵌合される。しかも前記操作部材24の周方向複数箇所に設けられて上下方向に延びる複数のガイド突部33…が、前記ケース23における筒部23aの内面に設けられて上下方向に延びる複数のガイド溝34…に嵌合されており、各ガイド突部33…が各ガイド溝34…でガイドされるようにして前記操作部材24が上下方向に移動可能である。また操作部材24内には、アンテナ35が収容、固定される。
【0016】
一対の第1のばね25…は、乗用車両の前後方向で前記ケース23の端壁部23cの前部および後部と、前記操作部材24の端壁部24aの前部および後部との間に縮設されるコイルばねであり、前記ケース23の端壁部23cには、第1のばね25…の一端部に挿入されるばね保持突部36,36が十字状の横断面形状を有するようにして一体に突設され、前記操作部材24の端壁部24aには、第1のばね25…の他端部を挿入せしめるばね保持筒部37,37が円形の横断面形状を有するようにして一体に突設される。而して操作部材24は、一対の第1のばね25…が発揮するばね力によって、図3で示す非操作位置側に向けて下方に付勢される。
【0017】
図7を併せて参照して、乗用車両の前後方向に沿う前記ケース23の筒部23aの前部寄り外側面にはステー39が固定されており、前記スイッチ26は、前記ステー39にねじ部材40で締結される。前記ステー39を固定するために、前記ケース23における筒部23aの外側面には、位置決めピン41および取付けボス42が突設されており、前記ステー39には、前記位置決めピン41を嵌合せしめる位置決め孔43と、前記取付けボス42を嵌合せしめる取付け孔44とが設けられる。而して位置決めピン41および取付けボス42を位置決め孔43および取付け孔44に嵌合させて前記ケース23の外側面に前記ステー39を当接させた状態で、前記取付けボス42に螺合されるねじ部材45の拡径頭部45aを前記ステー39にワッシャ46を介して係合させることによって前記ステー39が前記ケース23の筒部23aに固定される。
【0018】
前記スイッチ26は、前記ステー39にねじ部材40で締結されるスイッチケース47と、該スイッチケース47から突出する検出子48を有しており、スイッチケース47が前記ステー39に締結された状態で前記検出子48の先端は前記ケース23内に突入される。一方、前記スイッチ26が配設される部分に対応した位置で前記操作部材24には、前記検出子48の先端に当接して該検出子48を前記スイッチケース47側に押し込む被検出面49が設けられており、この被検出面49は、前記ケース23における筒部23aの内面から離反するにつれて上方位置となるように傾斜して形成される。
【0019】
而して前記スイッチ26は、前記操作部材24が図3で示す非操作位置から図8で示す第1の操作位置まで移動したときに、前記検出子48が前記被検出面49で押されることによって導通するものである。
【0020】
図9を併せて参照して、前記ラッチ装置19は、前部サイドドアDのラッチ状態を解除するように作動する電気アクチュエータである電動モータ50を有しており、前記スイッチ26は、該電動モータ50に接続される。
【0021】
前記電動モータ50の作動は、前部サイドドアD内に配設される制御ユニット51で制御されるものであり、該制御ユニット51は、CPU52と、前記スイッチ26および電源53間に介設される第2のスイッチ54とを備える。また前記CPU52には、正規の車両ユーザが携帯する携帯器との間でのID信号の授受に用いられる前記アンテナ35およびレシーバユニット55からの信号が入力され、CPU52は、前記ID信号が正規のものであることを確認したときに前記制御ユニット51に含まれる第2のスイッチ54を導通する。すなわち車両ユーザが正規の携帯器を携帯し、前記操作部材24を第1の操作位置まで操作したときに電動モータ50に電力が供給されて該電動モータ50が作動し、それによって前部サイドドアDの開放が可能となる。
【0022】
ところで、前記操作部材24は、図3で示す非操作位置から図8で示す第1の操作位置を経て、図10で示す第2の操作位置まで操作することが可能であり、前記回動レバー27は、前記非操作位置から第2の操作位置まで前記操作部材24を操作するのに応じて前記ラッチ装置19にラッチ解除操作力を機械的に伝達するラッチ解除操作力伝達手段56の一部を構成するものである。
【0023】
乗用車両の前後方向に沿う前記ケース23の筒部23aの後部寄り外側面には、図6で示すように、支持ボス57が突設されており、この支持ボス57に一端側が圧入、固定される支軸58の前記支持ボス57からの突出部に、回動レバー27が回動可能支承される。而して回動レバー27は、前記支軸58に設けられる環状段部58aと、前記支軸58の他端をかしめて形成されるかしめ部58bが係合することで該支軸58に固定されるワッシャ59との間に挟持されるようにして、前記支軸58で回動可能に支承される。しかも第2のばね28は、前記支持ボス57を囲繞するようにして前記ケース23および前記回動レバー27間に設けられるねじりばねであり、回動レバー27は、第2のばね28のばね力によって図3、図8および図10の反時計方向に向けて回動付勢されることになり、その反時計方向の回動端すなわち非回動位置を定めるために、前記回動レバー27の一端に突設された突部27aを受ける規制部60が、前記ケース23における筒部23aの外側面に突設される。
【0024】
図11を併せて参照して、前記回動レバー27の一端部には連結孔61が設けられる。また前記ケース23における筒部23aには、前記回動レバー27の一端部に対応する位置で上下に延びるガイド孔62が設けられており、前記操作部材24に一端部が固定される連結ピン63が前記ガイド孔62に挿通される。また前記連結ピン63の他端には、前記回動レバー27の一端部の連結孔61に挿通される小径軸部63aが同軸にかつ一体に設けられており、前記小径軸部63aの先端をかしめて形成されるかしめ部63bが、前記回動レバー27の一端部に摺接するワッシャ64に当接、係合される。
【0025】
ところで前記連結孔61は、略L字状に形成されており、操作部材24が非操作位置にあって回動レバー27が非回動位置にあるときに前記連結ピン63の小径軸部63aは連結孔61の下縁部に当接しており、この状態で回動レバー27は、その一端の突部27aを前記ケース23の規制部60に上方から当接させた非回動位置に第2のばね28のばね力で保持されているので、一対の第1のばね25…で下方に向けて付勢されている前記操作部材24の下限位置が非操作位置に規制されることになる。
【0026】
前記回動レバー27が前記突部27aを前記規制部60に当接させた非回動位置にあるときに前記操作部材24が非操作位置および第1の操作位置間で移動しても、図8で示すように、前記連結ピン63の小径軸部63aは前記連結孔61内を上下に移動するだけであり、回動レバー27は、第2のばね28のばね力によって前記突部27aを前記規制部60に当接させた非回動位置を維持したままであるが、前記操作部材24が第1の操作位置からさらに第2の操作位置側に移動したときには、前記連結ピン63の小径軸部63aが前記連結孔61の上縁部に摺接することで、図10で示すように、回動レバー27が第2のばね28のばね力に抗して前記非回動位置から時計方向に回動駆動される。
【0027】
すなわち操作部材24を非操作位置から第1の操作位置まで操作する通常操作時には、操作部材24には第1のばね25…のばね力だけが作用するのに対して、操作部材24を第1の操作位置からさらに第2の操作位置側に操作したときには、操作部材24には第1のばね25…のばね力に加えて第2のばね28のばね力が作用することになり、通常操作時と、非常操作時とで操作部材24に作用するばね荷重に明らかな差が生じるように第2のばね28のばね荷重は、第1のばね25…のばね荷重以上に設定される。ここで操作部材24を非操作位置から第1の操作位置まで操作する通常操作時に操作部材24に作用するばね荷重をたとえば6Nとしたときに、操作部材24を第1の操作位置から第2の操作位置まで操作する非常操作時に操作部材24に作用するばね荷重はたとえば20Nである。
【0028】
図2に注目して、前記ラッチ解除操作力伝達手段56は、前記回動レバー27と、たとえば該回動レバー27の他端部およびラッチ装置19間を結ぶロッド66とで構成されるものであり、操作部材24を第1の操作作位置から第2の操作位置まで操作するのに応じたラッチ解除操作力が、前記回動レバー27および前記ロッド66を介して前記ラッチ装置19に機械的に伝達されることになる。
【0029】
ところで前記ラッチ解除操作手段16Aよりも前方で前記前部サイドドアDに設けられたシリンダ錠17に正規のメカニカルキーを差し込んで回動操作するのに応じた回動力は、図2で示すように、ラッチ装置19に伝達されるものであり、ラッチ装置19は、前記シリンダ錠17から回動力が伝達された状態で前記ラッチ解除操作力伝達手段56からラッチ解錠操作力が入力されるのに応じてラッチ状態を解除し、それによって前部サイドドアDの開放が可能となる。
【0030】
次にこの第1の実施の形態の作用について説明すると、操作部材24は第1のばね25…で非操作位置側に付勢されており、非操作位置からの操作量を第1の操作位置よりも大きくした第2の操作位置まで前記操作部材24を操作したときには、ラッチ解除操作力伝達手段56からラッチ装置19にラッチ解除操作力が機械的に伝達されるのであるが、操作部材24の第1の操作位置から第2操作位置への操作に連動して回動するようにしてラッチ解除操作力伝達手段56の一部を構成する回動レバー27が、第2のばね28で非回動位置側に付勢されるので、操作部材24を第1の操作位置まで操作する通常操作時には、操作部材24には第1のばね25…のばね力だけが作用し、操作部材24の操作を軽く行うことができる。一方、操作部材24を第1の操作位置からさらに第2の操作位置側に操作する非常操作時には、操作部材24および回動レバー27が連動することになり、操作部材24には第1のばね25…のばね力に加えて、第2のばね28のばね力が作用することになり、通常操作時に比べて操作が重くなる。したがって通常操作時と非常操作時とで操作負荷に明らかな差が生じることになり、通常操作時に不必要な非常操作を行ってしまうことを回避することができ、操作性の向上を図ることができる。
【0031】
なお上記第1の実施の形態では、操作部材24およびケース23間に一対の第1のばね25…が設けられる構成としたが、単一である第1のばね25が操作部材24およびケース23間に設けられる構成とすることもできる。
【0032】
本発明の第2の実施の形態について図12〜図14を参照しながら説明するが、上記第1の実施の形態に対応する部分には同一の参照符号を付して図示するのみとし、詳細な説明は省略する。
【0033】
前部サイドドアDには、該前部サイドドアDのアウターパネル15に設けられる開口部67を塞ぐととももに前記アウターパネル15の外面から内方に凹んだ凹部68を形成する化粧カバー69が取付けられ、この化粧カバー69に、ラッチ解除操作手段16B、シリンダ錠17およびロック用スイッチ18が配設される。
【0034】
前記ラッチ解除操作手段16Bは、前記化粧カバー69に一体に設けられるケース70と、上下に移動することを可能として前記ケース70に摺動可能に嵌合される操作部材24と、該操作部材24および前記ケース70間に設けられる単一の第1のばね25と、前記操作部材24の非操作位置からの移動に応じて導通するようにして前記ケース70に取付けられるスイッチ26と、前記ケース70に回動可能に支承される回動レバー27と、該回動レバー27および前記ケース70間に設けられる第2のばね28とを備え、第1の実施の形態のラッチ解除操作手段16Bと同様に構成される。
【0035】
またアンテナ35が前記ラッチ解除操作手段16Bの下方で前記化粧カバー69の内面側に固定され、前記シリンダ錠17を化粧カバー69の表面から隠すカバー71が前記化粧カバー69に着脱可能に取付けられる。
【0036】
この第2の実施の形態によれば、化粧カバー69に、ラッチ解除操作手段16B、シリンダ錠17およびロック用スイッチ18が配設されるので、ラッチ解除操作手段16B、シリンダ錠17およびロック用スイッチ18を化粧カバー69に予め組み付けた状態で前部サイドドアDへの組み付けを行うことができ、組付けが容易となる。
【0037】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0038】
19・・・ラッチ装置
24・・・操作部材
25・・・第1のばね
26・・・スイッチ
27・・・回動レバー
28・・・第2のばね
50・・・電気アクチュエータである電動モータ
56・・・ラッチ解除操作力伝達手段
D・・・車両用ドアである前部サイドドア
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ドア(D)のラッチ状態を解除するように作動する電気アクチュエータ(50)を有するとともにラッチ解除操作力の機械的な入力に応じても前記ラッチ状態の解除を可能としたラッチ装置(19)と、操作部材(24)と、該操作部材(24)を非操作位置側に付勢する第1のばね(25)と、前記操作部材(24)の非操作位置から第1の操作位置までの操作に応じて導通するようにして前記電気アクチュエータ(50)に接続されるスイッチ(26)と、前記非操作位置からの操作量を第1の操作位置よりも大きくした第2の操作位置まで前記操作部材(24)を操作するのに応じて前記ラッチ装置(19)にラッチ解除操作力を機械的に伝達するラッチ解除操作力伝達手段(56)とを備える車両用ドアのラッチ解除装置において、前記操作部材(24)の第1の操作位置から第2操作位置への操作に連動して回動するようにして前記ラッチ解除操作力伝達手段(56)の一部を構成する回動レバー(27)と、該回動レバー(27)を非回動位置側に付勢する第2のばね(28)とを含むことを特徴とする車両用ドアのラッチ解除装置。
【請求項1】
車両用ドア(D)のラッチ状態を解除するように作動する電気アクチュエータ(50)を有するとともにラッチ解除操作力の機械的な入力に応じても前記ラッチ状態の解除を可能としたラッチ装置(19)と、操作部材(24)と、該操作部材(24)を非操作位置側に付勢する第1のばね(25)と、前記操作部材(24)の非操作位置から第1の操作位置までの操作に応じて導通するようにして前記電気アクチュエータ(50)に接続されるスイッチ(26)と、前記非操作位置からの操作量を第1の操作位置よりも大きくした第2の操作位置まで前記操作部材(24)を操作するのに応じて前記ラッチ装置(19)にラッチ解除操作力を機械的に伝達するラッチ解除操作力伝達手段(56)とを備える車両用ドアのラッチ解除装置において、前記操作部材(24)の第1の操作位置から第2操作位置への操作に連動して回動するようにして前記ラッチ解除操作力伝達手段(56)の一部を構成する回動レバー(27)と、該回動レバー(27)を非回動位置側に付勢する第2のばね(28)とを含むことを特徴とする車両用ドアのラッチ解除装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−219530(P2012−219530A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87209(P2011−87209)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000155067)株式会社ホンダロック (164)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000155067)株式会社ホンダロック (164)
【Fターム(参考)】
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