説明

車両用ドアロック構造

【課題】ケーブルの干渉を防ぎながらも、高い安全性と防盗性とを実現する車両用のドアロック構造を提供する。
【解決手段】ドア1の開放用操作部7において、開放操作が受け付けられると開放用ケーブル9が第1の移動量だけ移動してドアロック機構10には開放操作が伝達され、ドア1が開放される。ロック用操作部6において、ロック操作が受け付けられるとロック用ケーブル8が、第1の移動量よりも小さい第2の移動量だけ移動してドアロック機構10にはロック操作が伝達され、ドア1がロックされる。そして、開放用ケーブル9とロック用ケーブル8とを共にケーブルカバー20により内包するとともに、このケーブルカバー20内では、開放用ケーブル9とロック用ケーブル8とが相対移動可能となるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアをロック状態、アンロック状態、または開放可能状態にするドアロック機構及びこのドアロック機構を操作する操作部を有する車両用のドアロック構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用ドアロック構造においては、車両のドアを開放する開放手段、及びドアの開放動作が規制されるロック状態またはドアの開放動作が可能となるアンロック状態のいずれかの状態を維持するロック手段を備えたドアロック機構が設けられている。また、車室内には、ドアロック機構に対して開放操作を行う開放用操作部と、ロック操作及びアンロック操作を行うロック用操作部が設けられている。
そして、一般的な車両用ドアロック構造では、開放用操作部およびロック用操作部が、それぞれ別個のケーブルを介してドアロック機構に接続されており、開放用操作部やロック用操作部に対する操作が、各ケーブルによってドアロック機構に伝達されるようになっている。
【0003】
しかしながら、上記のようにドアロック機構と操作部とが複数本のケーブルで接続されていると、車両の走行中などにドアパネル内でケーブルが互いに干渉して異音が生じるとともに、ケーブルが摩耗して劣化するおそれがある。
そこで、特許文献1に示される車両用ドアロック構造のように、ドアロック機構と操作部とを一本のケーブルで接続するとともに、この一本のケーブルによって開放操作、ロック操作およびアンロック操作を実現することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−101041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に示される車両用ドアロック構造によれば、例えば、側突時において以下のような問題が生じるおそれがある。
すなわち、側突によりドアが凹むと、ドア内に設けられたケーブルが引っ張られてしまい、ロック手段がアンロック状態になるのと同時に、開放手段が開放動作されてしまい、乗員の安全性が脅かされるという問題があった。
また、例えばドアパネルに設けられた窓の隙間から針金などを侵入させてケーブルが引っ張られると、簡単にアンロック状態となってドアが開放されてしまい、防盗性が低下するという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、ケーブルの干渉を防ぎながらも、高い安全性と防盗性とを実現する車両用のドアロック構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車両のドアを開放する開放手段、及び前記ドアの開放動作が規制されるロック状態または前記ドアの開放動作が可能となるアンロック状態のいずれかの状態を維持するロック手段を有するドアロック機構と、前記車両の車室内に設けられ、前記開放手段に開放用ケーブルを介して接続された開放用操作部と、前記車両の車室内に設けられ、前記ロック手段にロック用ケーブルを介して接続されたロック用操作部と、を備え、前記開放手段は前記開放用操作部の開放操作によって開放動作するとともに、前記ロック手段は少なくとも前記ロック用操作部のロック操作によってロック状態となる車両用ドアロック構造を前提とする。
【0008】
上記の構成を前提として請求項1に記載の発明は、前記開放用ケーブルが、前記開放用操作部が開放操作されたとき、前記開放手段側から開放用操作部側へ第1の移動量だけ移動して前記開放手段を開放動作させ、前記ロック用ケーブルが、前記ロック用操作部がロック操作されたとき、前記ロック手段側から前記ロック用操作部側へ前記第1の移動量よりも小さい第2の移動量だけ移動して前記ロック手段をロック状態としてなり、前記開放用ケーブルおよびロック用ケーブルは、前記開放操作または前記ロック操作に対して相対移動可能に固定手段によって結束されるとともに、当該固定手段に外力が作用した場合には、当該固定手段によって一体的に移動してなることを特徴とする。
【0009】
本発明において、開放操作がなされたときに開放用ケーブルが開放手段側から開放用操作部側へ移動し、また、ロック操作がなされたときにロック用ケーブルがロック手段側からロック用操作部側へ移動する構成であれば、ドアロック機構、開放用操作部およびロック用操作部の具体的な構造は特に限定されない。
また、ロック操作がなされたときのロック用ケーブルの移動量が、開放操作がなされたときの開放用ケーブルの移動量よりも小さいという関係性を維持していれば、両ケーブルの接続の態様や具体的な移動量についても特に限定されるものではない。
【0010】
本発明において、開放操作やロック操作がなされた場合には、開放用ケーブルとロック用ケーブルとが互いに相対移動可能であり、外力が作用した場合には、開放用ケーブルとロック用ケーブルとが一体的に移動する構成であれば、固定手段の具体的な構成すなわち両ケーブルの結束の態様は特に限定されない。
また、固定手段によって両ケーブルが結束される範囲も特に限定されるものではなく、ドアロック機構と両操作部との接続間全域にわたって両ケーブルを結束してもよいし、接続間の一部の領域のみを両ケーブルで結束することとしてもよい。
【0011】
本発明によれば、側突時や盗難時などにケーブルに外力が作用した場合に、開放用ケーブルとロック用ケーブルとが一体となって移動する。このとき、ロック操作がなされたときのロック用ケーブルの移動量<開放操作がなされたときの開放用ケーブルの移動量という関係性により、ドアの開放動作に先んじてロック状態が確保されることとなる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記ドアロック機構を収容する収容体をさらに備え、前記開放用ケーブルおよび前記ロック用ケーブルのうち少なくとも前記収容体の外部に露出する部分が前記固定手段によって結束されてなることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記開放用ケーブルおよび前記ロック用ケーブルのうち、前記ドアロック機構と前記開放用操作部との接続部近傍および前記ドアロック機構と前記ロック用操作部との接続部近傍を除く部分が前記固定手段によって結束されてなることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明は、前記車両のドアは、ドアアウタパネルと、前記ドアアウタパネルよりも車室側に設けられ、当該ドアアウタパネルとの間に前記ドアロック機構を収容するとともに、前記開放用ケーブルおよび前記ロック用ケーブルが挿通可能な開口部が形成されたドアインナパネルと、前記ドアインナパネルのさらに車室側に接合されるとともに、前記開放用操作部および前記ロック用操作部が設けられるドアトリムと、を備え、前記開放用ケーブルおよび前記ロック用ケーブルは、前記開口部を介して前記ドアロック機構と前記開放用操作部および前記ロック用操作部とに接続されるとともに、少なくとも前記開口部よりも前記ドアアウタパネル側に位置する部分が前記固定手段によって結束されてなることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明は、前記固定手段が、前記開放用ケーブルおよび前記ロック用ケーブルを相対移動可能に内包するケーブルカバーによって構成されてなることを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の発明は、前記固定手段が、前記開放用ケーブルを摺動自在に内包する開放用ケーブルカバーと、前記ロック用ケーブルを摺動自在に内包するロック用ケーブルカバーと、前記開放用ケーブルカバーおよび前記ロック用ケーブルカバーを一体的に固定するカバー固定手段と、によって構成されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、開放用ケーブルとロック用ケーブルとが固定手段によって結束されるので、走行時に両ケーブルが干渉することがなくなり、異音や摩耗による劣化を低減することができる。しかも、ケーブルに外力が作用した場合には、ドアの開放動作に先んじてロック状態が確保されるので、側突や盗難の際にドアが開放されてしまうことがなく、乗員の安全性や防盗性を向上することができる。
【0018】
請求項2および3に記載の発明によれば、両ケーブルがほぼ全域にわたって結束されるので、特に盗難の際に、開放用ケーブルとロック用ケーブルとが個別に引っ張られてしまうのを防ぐことができ、防盗性を一層向上することができる。
請求項4に記載の発明によれば、両ケーブルのうち少なくともドアアウタパネル側が結束されるので、窓から針金などを侵入させた際に、開放用ケーブルとロック用ケーブルとが個別に引っ張られてしまうのを防ぐことができ、防盗性を一層向上することができる。
【0019】
請求項5および6に記載の発明によれば、簡易な構造で両ケーブルを結束することができるので、組み付け作業時の作業効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】車両用ドアの分解斜視図である。
【図2】車両用ドアの概略断面図である。
【図3】操作部とロック用ケーブル及び開放用ケーブルとドアロック機構との接続について説明する車両用ドアの側面図である。説明図である。
【図4】ドアロック機構及び操作部(ロック用操作部、開放用操作部)に接続されるケーブル(ロック用ケーブル、開放用ケーブル)について説明する図である。
【図5】ロック用ケーブル及び開放用ケーブルの動作について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1〜図5を用いて本発明の実施形態について説明する。
図1及び図2に示すように、車両用ドア1(以下、「ドア1」という)は、ドアアウタパネル2、ドアインナパネル3及びドアトリム4から構成される。ドアアウタパネル2には、ドアインナパネル3が取り付けられ、さらに車室側からドアトリム4がドアインナパネル3に取り付けられる。
【0022】
ドアアウタパネル2とドアインナパネル3との間に形成された空間13には、ドアガラス14が配設され上下方向に出入りすることが可能になっている(図2参照)。
【0023】
ドアトリム4には、操作部5が装着可能となっている。この操作部5には、ドア1をロックさせた状態(以下、「ロック状態」という)及び、このロック状態を解除した状態(以下、「アンロック状態」という)に切り替える操作を受け付け可能なロック用操作部6(図3において後述する)と、ドア1を開放させるための操作を受け付け可能な開放用操作部7(図3において後述する)と、が設けられている。
なお、以下では、ドア1をロック状態にする操作をロック操作といい、ドア1をアンロック状態にする操作をアンロック操作という。同様に、ドア1を開放する操作を開放操作という。
【0024】
図3は、ドアアウタパネル2の側面図であり、図4は、操作部5及びドアロック機構10及びこれらを接続するケーブルについて説明する図である。
図3及び図4に示すように、ロック用操作部6には、ロック用ケーブル8が接続されている。このロック用ケーブル8は、ロック用ケーブルカバー15に内包されると共に、このロック用ケーブルカバー15内を摺動可能となっている。
そして、ロック操作が受け付けられたときに、ロック用ケーブル8が所定ストローク量(第2の移動量)だけロック用操作部6方向に移動する(引っ張られる)ことにより、後述するドアロック機構10にロック操作が伝達されるものとなっている。
一方、アンロック操作が受け付けられたときには、上記所定ストローク量だけ移動した(引っ張られた)ロック用ケーブル8が、この所定ストローク量だけドアロック機構10方向に移動することにより、ドアロック機構10にアンロック操作が伝達されるものとなっている。
【0025】
また、開放用操作部7には、開放用ケーブル9が接続されている。この開放用ケーブル9は、開放用ケーブルカバー16に内包されると共に、この開放用ケーブルカバー16内を摺動可能となっている。
そして、開放操作が受け付けられたときに、開放用ケーブル9が特定ストローク量(第1の移動量)だけ開放用操作部7方向に移動する(引っ張られる)ことにより、ドアロック機構10に開放操作が伝達されるものとなっている。この特定ストローク量(第1の移動量)は、上記所定ストローク量(第2の移動量)よりも長く設定されている。
【0026】
ロック用ケーブル8及び開放用ケーブル9は、ロック用ケーブル8がロック用操作部6に接続された接続部6a近傍、及び、開放用ケーブル9が開放用操作部7に接続された接続部7a近傍からドアロック機構10側に向けて、一本のケーブルカバー20内に収められる。すなわち、操作部5からは、その近傍(つまり、接続部6a及び接続部7aの近傍)を除いて、あたかも一本のケーブル(ロック用ケーブル8及び開放用ケーブル9がケーブルカバー20内に納められることにより、一本のケーブルのように形成される)がドアロック機構10側に向けて延びるように配される。
そして、ケーブルカバー20内に納められたロック用ケーブル8及び開放用ケーブル9は、該ケーブルカバー20内を互いに干渉することなく相対移動可能に収められると共に、ドアインナパネル3に設けられた開口部11を介して、ドアアウタパネル2に設けられたドアロック機構10に接続される。
【0027】
ドアロック機構10は、フック(不図示、開放手段)が回転可能に設けられており、このフックがピラー(不図示)に固定されたストライカ(不図示)にドア1の後方の貫通孔18を介して係止されることで、ドア1が車体側にロックされている。このドア1が車体側にロックされた状態を「閉鎖状態」という。そして、開放操作がドアロック機構10に伝達される(つまり、開放用ケーブル9が特定ストロークだけ開放用操作部7方向に移動する)と、このフックが回転してストライカに係止された状態が解除され、ドア1を開放することが可能となる。
また、ドアロック機構10には、阻止部(不図示、ロック手段)が設けられており、阻止部はフックの回転を阻止可能にされている。すなわち、ロック用ケーブル8が所定ストロークだけロック用操作部6方向に移動してロック操作がドアロック機構10に伝達されると、阻止部はフックの回転を阻止したロック状態になる。一方、ロック用ケーブル8が反対方向に所定ストロークだけ移動してアンロック操作がドアロック機構10に伝達されると、阻止部はフックの回転を阻止した状態を解除する(つまり、アンロック状態となる)。
【0028】
また、ドアロック機構10において、ロック用ケーブル8及び開放用ケーブル9が接続される接続部10a及び接続部10bは、収容体12により覆われている。そして、ケーブルカバー20は収容体12にまで臨んで収容され、収容体12内にて、ロック用ケーブル8及び開放用ケーブル9がそれぞれ対応する接続部10a及び10bに接続される。すなわち、ロック用ケーブル8及び開放用ケーブル9において、収容体12の外部に露出した部分はケーブルカバー20に収容されていることになる。
【0029】
ここで、本実施形態の特徴である、ロック用ケーブル8におけるストローク量と、開放用ケーブル9におけるストローク量とを異ならせた点について説明する。
【0030】
図5は、ロック用ケーブル8及び開放用ケーブル9の動作について説明する図である。図中において、ロック用操作部6に接続されるロック用ケーブル8の一端を端部8aで示し、ドアロック機構10に接続されるロック用ケーブル8の他端を端部8bで示している。同様に、開放用ケーブル9についても、開放用操作部7に接続される開放用ケーブル9の一端を端部9aで示し、ドアロック機構10に接続される開放用ケーブル9の他端を端部9bで示している。なお、各接続部6a,7a,10a,10b等については図示を省略している。
また、図中におけるロック及びアンロック、開放及び閉鎖は、ロック用操作部6及び開放用操作部7が操作されたことを概念的に示している。
【0031】
図5(a)は、ドア1がアンロック状態にあるときのロック用ケーブル8の様子を示している。このアンロック状態から、ロック操作が受け付けられると、図5(b)に示すように、ロック用ケーブル8が所定ストローク量Sだけ車両の前方側へ移動する。これにより、ドアロック機構10において、ドア1がロック状態にされる。
【0032】
図5(c)は、ドア1が閉鎖状態にあるときの開放用ケーブル9の様子を示している。この閉鎖状態から、開放操作が受け付けられると、図5(d)に示すように、開放用ケーブル9が特定ストローク量Lだけ車両の前方側へ移動する。これにより、ドアロック機構10において、ドア1が開放可能な状態(つまり、フックが回転してストライカに係止された状態が解除された状態)にされる。
【0033】
このように、ロック用操作部6及び開放用操作部7において各種操作が受け付けられた場合には、該操作に基づいて対応するロック用ケーブル8及び開放用ケーブル9がそれぞれ移動するため、それぞれの操作(ロック操作、アンロック操作、開放操作)が的確に行われる。
【0034】
一方、側突時において、ドア1が凹むことにより、ケーブルカバー20ごと、ロック用ケーブル8及び開放用ケーブル9が車室側に押圧されることにより、ロック用ケーブル8及び開放用ケーブル9が引っ張られた場合や、盗難時において、ケーブルカバー20ごと、ロック用ケーブル8及び開放用ケーブル9が引っ張られた場合には、ロック用ケーブル8及び開放用ケーブル9は以下のように動作する。なお、盗難時とは、図2のTで示されるドアガラス14とドアアウタパネル2との隙間から針金等を挿入してロック用ケーブル8や開放用ケーブル9を引っ張り上げるなどの行為がなされたときのことをいう。
【0035】
すなわち、側突時や盗難時において、ケーブルカバー20ごと、ロック用ケーブル8及び開放用ケーブル9が共に引っ張られるような場合、ロック用ケーブル8及び開放用ケーブル9が同時に動作する(移動する)ことになる。
これにより、ロック用ケーブル8及び開放用ケーブル9が所定ストローク量Sに相当する長さSだけ引っ張られたときに、ドアロック機構10においてはロック操作が受け付けられたのと同様に、ドア1がロック状態にされる。このため、さらに特定ストローク量Lに相当する長さLに到達するまで、ロック用ケーブル8及び開放用ケーブル9を引っ張ったことにより、ドア1が閉鎖状態から開放可能な状態になったとしても、ドア1のロック状態は維持される。つまり、ドア1のロック状態は、所定ストローク量Sを超えてロック用ケーブル9を引っ張ったとしても解除されない(アンロック状態とならない)ため、側突時や盗難時においてドア1を開放することは不可能となる。
【0036】
以上のように、本実施形態によれば、ロック用ケーブル8と開放用ケーブル9を一つのケーブルカバー20により結束して、あたかも1本のケーブルのようにする一方で、ケーブルカバー20内においては、ロック用ケーブル8と開放用ケーブル9が互いに干渉することなく移動可能としたことにより、以下の効果を奏することができる。
すなわち、ドア1に対する通常の操作(操作部5における操作)では、この操作に対応する動作のみをドアロック機構10に的確に伝達することができる。
また、側突時や盗難時において、ケーブルカバー20ごと引っ張られるといった外力が作用した場合には、ロック操作及び開放操作が共にドアロック機構10に伝達されることとなるため、ドア1が開放可能な状態となるよりも前にロック状態となるため、ドア1が開放されてしまうことがない。したがって、側突時や盗難時において、ロック用ケーブル8及び開放用ケーブル9が共に引っ張られたときに、ドアが開放してしまうことを防止することができる。
【0037】
なお、上記実施形態において、ロック用ケーブル8及び開放用ケーブル9は、それぞれロック用ケーブルカバー15及び開放用ケーブルカバー16に内包されるものとしたが、これに限られない。例えば、ロック用ケーブル8及び開放用ケーブル9がケーブルカバー20に直接内包されるものとしてもよい。なお、ケーブルカバー20内に納められたロック用ケーブル8及び開放用ケーブル9が、該ケーブルカバー20内を互いに干渉することなく相対移動可能に収められる形態であれば、ロック用ケーブルカバー15及び開放用ケーブルカバー16については、該ケーブルカバー20内を互いに干渉することなく相対移動可能であってもなくてもどちらでもよい。
また、ロック用ケーブルカバー15及び開放用ケーブルカバー16を、例えば結束バンドのような何らかのカバー固定手段によって一体的に固定するようにしても構わない。
【0038】
また、上記実施形態において、ロック用ケーブル8及び開放用ケーブル9は、操作部5の近傍(接続部6a及び接続部7aを除いて)からドアロック機構10の収容体12までケーブルカバー20に内包されるものとしたがこれに限られない。例えば、ドアインナパネル3(開口部11)からドアロック機構10にかけてケーブルカバー20により内包するものとしてもよい。つまり、ドアアウタパネル2に設けられた窓枠から針金等を侵入した場合には、開口部11よりもドアアウタパネル2側においてロック用ケーブル8や開放用ケーブル9が引っ張られることとなる。したがって、開口部11よりもドアアウタパネル2側を結束しておけば、盗難時にロック用ケーブル8や開放用ケーブル9が個別に操作されることがなくなり、上記のように防盗性を十分に確保することができる。
【0039】
また、ロック用ケーブル8と開放用ケーブル9とを結束する際に、部分的(例えば、数か所に亘り)に紐などでひとまとめに括る(結束する)ようにしてもよい。ただし、紐などによりひとまとめに括る場合には、ロック用ケーブル8と開放用ケーブル9が互いに干渉しあうことの無いよう、例えば緩く括るなどする必要がある。
【0040】
なお、上記実施形態において、ケーブルカバー20内にロック用ケーブルカバー15及び開放用ケーブルカバー16を収める場合において、このロック用ケーブルカバー15及び開放用ケーブルカバー16を相対移動可能に収めるものとしてもよい。このようにすれば、ロック用ケーブル8または開放用ケーブル9が移動するときに、対応するロック用ケーブルカバー15または開放用ケーブルカバー16も共に移動する形態の場合、本実施形態と同様の効果を奏することができる。
また、ロック用ケーブル8または開放用ケーブル9と共に、対応するロック用ケーブルカバー15または開放用ケーブルカバー16が移動する形態の場合、ロック用ケーブル8または開放用ケーブル9の移動量に比べて少ない移動量だけ移動するものとしてもよい。
さらには、ロック用ケーブルカバー15または開放用ケーブルカバー16は、ロック用ケーブル8または開放用ケーブル9と共に移動しないものとしてもよい。
なお、上記実施形態は一例に過ぎず、各形状や構造は本発明の作用をもたらす限りにおいて適宜設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 ドア
2 ドアアウタパネル
3 ドアインナパネル
4 ドアトリム
5 操作部
6 ロック用操作部
7 開放用操作部
8 ロック用ケーブル
9 開放用ケーブル
10 ドアロック機構
11 開口部
12 収容体
15 ロック用ケーブルカバー
16 開放用ケーブルカバー
20 ケーブルカバー(固定手段、カバー固定手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアを開放する開放手段、及び前記ドアの開放動作が規制されるロック状態または前記ドアの開放動作が可能となるアンロック状態のいずれかの状態を維持するロック手段を有するドアロック機構と、
前記車両の車室内に設けられ、前記開放手段に開放用ケーブルを介して接続された開放用操作部と、
前記車両の車室内に設けられ、前記ロック手段にロック用ケーブルを介して接続されたロック用操作部と、を備え、
前記開放手段は前記開放用操作部の開放操作によって開放動作するとともに、前記ロック手段は少なくとも前記ロック用操作部のロック操作によってロック状態となる車両用ドアロック構造であって、
前記開放用ケーブルは、
前記開放用操作部が開放操作されたとき、前記開放手段側から前記開放用操作部側へ第1の移動量だけ移動して前記開放手段を開放動作させ、
前記ロック用ケーブルは、
前記ロック用操作部がロック操作されたとき、前記ロック手段側から前記ロック用操作部側へ前記第1の移動量よりも小さい第2の移動量だけ移動して前記ロック手段をロック状態としてなり、
前記開放用ケーブルおよび前記ロック用ケーブルは、
前記開放操作または前記ロック操作に対して相対移動可能に固定手段によって結束されるとともに、当該固定手段に外力が作用した場合には、当該固定手段によって一体的に移動してなることを特徴とする車両用ドアロック構造。
【請求項2】
前記ドアロック機構を収容する収容体をさらに備え、
前記開放用ケーブルおよびロック用ケーブルのうち少なくとも前記収容体の外部に露出する部分が前記固定手段によって結束されてなることを特徴とする請求項1記載の車両用ドアロック構造。
【請求項3】
前記開放用ケーブルおよびロック用ケーブルのうち、前記ドアロック機構と開放用操作部との接続部近傍および前記ドアロック機構とロック用操作部との接続部近傍を除く部分が前記固定手段によって結束されてなることを特徴とする請求項1または2記載の車両用ドアロック構造。
【請求項4】
前記車両のドアは、
ドアアウタパネルと、
前記ドアアウタパネルよりも車室側に設けられ、当該ドアアウタパネルとの間に前記ドアロック機構を収容するとともに、前記開放用ケーブルおよびロック用ケーブルが挿通可能な開口部が形成されたドアインナパネルと、
前記ドアインナパネルのさらに車室側に接合されるとともに、前記開放用操作部および前記ロック用操作部が設けられるドアトリムと、を備え、
前記開放用ケーブルおよび前記ロック用ケーブルは、
前記開口部を介して前記ドアロック機構と前記開放用操作部および前記ロック用操作部とに接続されるとともに、少なくとも前記開口部よりも前記ドアアウタパネル側に位置する部分が前記固定手段によって結束されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両用ドアロック構造。
【請求項5】
前記固定手段は、
前記開放用ケーブルおよび前記ロック用ケーブルを相対移動可能に内包するケーブルカバーによって構成されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の車両用ドアロック構造。
【請求項6】
前記固定手段は、
前記開放用ケーブルを摺動自在に内包する開放用ケーブルカバーと、
前記ロック用ケーブルを摺動自在に内包するロック用ケーブルカバーと、
前記開放用ケーブルカバーおよびロック用ケーブルカバーを一体的に固定するカバー固定手段と、によって構成されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の車両用ドアロック構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−72578(P2012−72578A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217064(P2010−217064)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】