説明

車両用ドア

【課題】窓枠の下端側がドア本体に収容されて接合された構成を有して製造容易な車両用ドアを提供する。
【解決手段】ドア本体11と窓枠15とを備え、窓枠15の下端部をドア本体11内に収容して接合した車両用ドアであり、窓枠15は、車外側に設けた意匠面部21と、意匠面部21の裏側に設けたドアフレーム部23と、意匠面部21とドアフレーム部23との間のドア周縁側に設けたストリップ用凹部25と、意匠面部21とドアフレーム部23との間のドア内側に設けたガラスラン用凹部27とを有して、板材のロール成形により形成され、ドアフレーム部23のドア周縁側に平坦側面41を有し、ストリップ用凹部25が平坦側面41からドア内側に凹んで設けられ、窓枠15の下端側で平坦側面41がドア本体11のインナーパネル19の内側に当接して接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓枠の下端部がドア本体内に収容されて接合され、窓枠及びドア本体にウェザストリップが装着された車両用ドアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ドア本体と下端部がドア本体内に収容されて接合された窓枠とを備えた車両用ドアが使用されている。窓枠としては、ロール成形により形成されたものが多数提案されている。
【0003】
特許文献1には、サッシュ型材をロール成形手段にて形成し、曲げ加工にて成形したドアサッシュが記載されている。図4に示すように、ドアサッシュ80はガラスランチャンネル81が収納される溝部82と、溝部82の背面側に設けられるリテーナ部83と、溝部82とリテーナ部83との間に設けられてドア外板面の一部を形成するフランジ部84と、溝部82のフランジ部84側とは反対の側に形成されるフレーム部85と、からなる。リテーナ部83はロール成形された板材の端縁98e側に形成され、ドアウェザストリップ86が嵌合されている。
このドアサッシュ80では、曲げ加工時に溝部82の開口が内側に倒れ込むことが防止されている。
【0004】
特許文献2には、図5に示すような車両用ドアフレームが記載されている。この車両用ドアフレームでは、見切りウェザストリップ嵌合部91とドアウェザストリップ嵌合部92とが設けられて、ドアウェザストリップ86が嵌合されている。見切りウェザストリップ嵌合部91はロール成形された板材の端縁98e側に形成されている。
この車両用ドアフレームでは、ロール成形の工程数の増大を抑制しつつ、シール性能及び意匠性を向上している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−170740号公報
【特許文献2】特開2006−298323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のドアサッシュ80のような窓枠では、リテーナ83や見切りウェザストリップ嵌合部91などのドアウェザストリップ86の嵌合部位がフレーム部85からドア周縁側に突出して設けられていた。
このような窓枠80Aの場合、車両用ドアを製造する際、図6に示すように、ドア本体95のアウターパネル96とインナーパネル97とに囲まれるドア本体95内部に窓枠80Aを収容して接合するために、フレーム部85からドア周縁側に突出している嵌合部位の一部98を切除しなければならず、車両用ドアの製造に手間を要していた。
【0007】
また、このような窓枠では、鋼板をロール成形したものであるため、図4に示すように、ドアサッシュ80の外表面に配置される端縁98eや、鋼材が積層された境界部分等に錆が生じる可能性があった。そのため防錆処理を施さなければならず、外観品質が低下する上、製造の手間も嵩んでいた。
【0008】
そこで、本発明は、窓枠の下端側がドア本体に収容されて接合された構成を有し製造容易な車両用ドアを提供することを目的とする。また、製造時の防錆処理を軽減できる車両用ドアを提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明の車両用ドアは、ドア本体と窓枠とを備え、窓枠の下端部がドア本体内に収容されて接合された車両用ドアであって、窓枠は、車外側に設けられた意匠面部と、意匠面部より車内側に設けられたドアフレーム部と、意匠面部とドアフレーム部との間のドア周縁側に設けられてドアウェザストリップが嵌合されるストリップ用凹部と、意匠面部とドアフレーム部との間のドア内側に設けられてガラスランチャンネルが嵌合されるガラスラン用凹部とを有して、板材のロール成形により形成され、ドアフレーム部のドア周縁側に平坦側面を有し、ストリップ用凹部が平坦側面からドア内側に凹んで設けられ、窓枠の下端側で平坦側面がドア本体のインナーパネル内側に当接して接合されている。
【0010】
この車両用ドアでは、窓枠の外表面に配置された板材の端縁は、ガラスラン用凹部の底部に配置されているのがよい。このようにすることで製造時の防錆処理を軽減できる。
ストリップ用凹部は、平坦側面から平坦に連続した係止片と意匠面部の裏面に設けられた突部との間に設けられているのがよい。
【0011】
この車両用ドアでは、ストリップ用凹部が、ガラスラン用凹部の底部と当接してドアフレーム部側に設けられた第1底部と、第1底部より意匠面部側に、ガラスラン用凹部の底部から離間して設けられた第2底部とを有し、インナーパネルが第2底部に当接して接合され、第2底部とインナーパネルとに連続してドアウェザストリップのシールラインが設けられているのがよい。
その場合、ストリップ用凹部とインナーパネルとに、連続したドアウェザストリップが装着されているのが好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ストリップ用凹部がドアフレーム部の平坦側面からドア内側に凹んで設けられているので、ストリップ用凹部を構成する部位がドアフレーム部よりドア周縁側に突出しない。そのため窓枠の下端部をドア本体内に収容してドアフレーム部の平坦側面をドア本体のインナーパネル内側に当接させて接合する際、枠材の下端側をドア本体内にそのまま収容して接合することができる。よって車両用ドアの製造が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】車両用ドアの正面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車両用ドアの窓枠の断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る車両用ドアの窓枠とドア本体との接合部位を示す概略斜視図である。
【図4】従来の車両用ドアに係る窓枠の断面図である。
【図5】従来の他の車両用ドアに係る窓枠の断面図である。
【図6】従来の車両用ドアに係る窓枠とドア本体との接合部位を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1乃至図3を用いて本発明の一実施形態を詳細に説明する。
この実施形態の車両用ドア10は、図1に示すように、ドア本体11とウインドウ13周りに配置された窓枠15とを備える。
ドア本体11は、車外側に配置されたアウターパネル17と車内側に配置されたインナーパネル19とを備え、内部には図示しない補強部材が配設されている。インナーパネル19の車内側の表面にはトリム材のような各種の内装部材が装着されているが、詳細な図示は省略している。
窓枠15は、ウインドウ13の周縁形状と対応した形状に形成されており、下端部がドア本体11内に収容されてドア本体11と強固に接合されている。
【0015】
窓枠15は、図2及び図3に示すように、車外側に設けられた車両用ドア10の外表面の一部を構成する意匠面部21と、意匠面部21より車内側に設けられたドアフレーム部23と、意匠面部21とドアフレーム部23との間のドア周縁側に設けられたストリップ用凹部25と、意匠面部21とドアフレーム部23との間のドア内側に設けられたガラスラン用凹部27と、を有する。
意匠面部21、ドアフレーム部23、ストリップ用凹部25及びガラスラン用凹部27は、ドア本体11の上方に配置される窓枠15の全長に長手方向に連続して設けられている。
【0016】
この窓枠15は、板材をロール成形及び折り曲げ加工することにより作製されている。ロール成形では、例えば1枚の板材を用い、意匠面部21の裏側付近に相当する位置に配置される内側端縁31aから、多数の屈曲部や折り返し部を設けることで、ガラスラン用凹部27の底部33及び一方の側部、ドアフレーム部23、ストリップ用凹部25、意匠面部21、ガラスラン用凹部27の他方の側部が、外側端縁31bまでの間に形成されている。
ここでは、板材の内側端縁31a側でガラスラン用凹部27の一方の側部を形成するように屈曲させて成形することで、窓枠15の外表面に配置される板材の外側端縁31bをガラスラン用凹部27の底部33に配置している。
【0017】
ガラスラン用凹部27は、ドア内側に向けて略コ字状に開口し、ウインドウ13側の開口端が底部33より狭く形成されている。ガラスラン用凹部27にはガラスランチャンネル35が嵌合されて接着等の固定方法で固定されている。
【0018】
ドアフレーム部23は、中空の平断面形状に形成されており、意匠面部21側がガラスラン用凹部27の一方の側部とストリップ用凹部25の一方の側部となっている。この実施形態では、ガラスラン用凹部27の底部33とストリップ用凹部25の第1底部37aとが溶接等により接合されることで、ドアフレーム部23の強度が向上されている。
ドアフレーム部23のドア周縁側の表面は平坦に形成されて平坦側面41となっており、図3に示すように、窓枠15をドア本体11内に収容した状態では、平坦側面41とインナーパネル19の内側面とが当接して溶接等により接合されている。
【0019】
ストリップ用凹部25は、ドアフレーム部23に隣接する係止片43と意匠面部21の裏側に突設する突部45との間に設けられている。係止片43は、ドアフレーム部23の平坦側面41を構成する板材を折り返して重ねることで形成されており、表面が平坦側面41から平坦に連続している。係止片43の裏面側は大きく窪んだ空間となっており、これによりストリップ用凹部25が平坦側面41からドア内側に凹んだ状態で設けられている。
一方、突部45は意匠面部21の裏面に配置される板材を車幅方向内側へ向けて突出させて形成されている。
【0020】
このストリップ用凹部25には、ドアフレーム部23側に第1底部37aが設けられ、第1底部37aより意匠面部21側に第2底部37bが設けられている。第1底部37aはガラスラン用凹部27の底部33と接合されている。第2底部37bはガラスラン用凹部27の底部33から離間し、その間に空間部が設けられている。第2底部37bの表面は平坦に形成されており、図3に示すように、窓枠15をドア本体11内に収容した状態では、インナーパネル19の内側面と当接して接合されている。
【0021】
ストリップ用凹部25の意匠面部21側では、第2底部37bと突部45との間が平坦面に形成されている。なお、図3に示すように、ストリップ用凹部25の突部45は窓枠15のドア本体11内に収容される部位より上方に設けられている。
【0022】
このようなストリップ用凹部25にはドアウェザストリップ47が嵌合されている。ドアウェザストリップ47は窓枠15及びドア本体11に連続するように装着されている。
窓枠15では、基部47aの一方の側部が係止片43に係止され、基部47aの他方の側部が突部45に係止され、接着等の固定手段により基部47aがストリップ用凹部25に固定されている。ドア本体11では、基部47aをインナーパネル19の外面に接着等の固定手段により固定されている。
第2底部37bの表面にインナーパネル19の内側面が当接して接合されることで、第2底部37bとインナーパネル19とが略平坦に連続しているため、ドアウェザストリップ47の第1シールライン51aが窓枠15とドア本体11とに連続している。
【0023】
ストリップ用凹部25の意匠面部21側では、第2底部37bと突部45との間の平坦面がドアウェザストリップ47の第2シールライン51bとなっている。後述する意匠面部21の裏面にインナーパネル19が当接して接合されているため、ドアウェザストリップ47の第2シールライン51bも、窓枠15とドア本体11とに連続している。
【0024】
意匠面部21は、窓枠15の外側となる表面が車両の外観を構成する意匠面となっており、ここでは平面に形成されている。意匠面部21の両側縁は、それぞれ板材が折り返し状に成形されて、裏側にガラスラン用凹部27又はストリップ用凹部25の一部が設けられている。
この意匠面部21は、図3に示すように、窓枠15をドア本体11内に収容した状態で、意匠面を形成するための表面にドア本体11のアウターパネル17が当接して接合されており、裏面にはインナーパネル19が当接して接合されている。なお、裏面にストリップ用凹部25の突部45が設けられていないため、平坦な形状となっており、インナーパネル19は、ストリップ用凹部25の第2底部37bと意匠面部21の端縁との間の広い範囲に当接して接合されている。
【0025】
このような車両用ドア10はボディ53のドア開口に開閉可能に装着して使用される。車両用ドア10を閉じた状態では、図2に示すように、窓枠15及びドア本体11に連続して装着されたドアウェザストリップ47がボディ53の対応する位置に当接して弾性により密着する。さらにボディ53に装着されたオープニングウェザストリップ55が、ドアフレーム部23及びドア本体11の対応位置に当接して弾性により密着する。
【0026】
以上のような構成を有する車両用ドア10では、ストリップ用凹部25がドアフレーム部23の平坦側面41からドア内側に凹んで設けられているので、ストリップ用凹部25の構成部位がドアフレーム部23側でドアフレーム部23よりドア周縁側に突出しない。そのため、窓枠15の下端側をドア本体11内に収容して、ドアフレーム部23の平坦側面41をドア本体11のインナーパネル19の内側に当接させて接合する際、窓枠15の下端をそのままドア本体11内に収容して接合することができる。従来のようにストリップ用凹部25の構成部位を切除する必要がない。それ故、車両用ドア10の製造が容易である。
【0027】
特に、意匠面部21とドアフレーム部23との間に配置されたストリップ用凹部25が、平坦側面41から平坦に連続した係止片43と意匠面部21の裏面に設けられた突部45との間に設けられているので、ドアフレーム部23の平坦側面41と係止片43とにドア本体11のインナーパネルを容易に連続して当接させることができる。
【0028】
窓枠15を構成する板材の内側端縁31aがガラスラン用凹部27とストリップ用凹部25と意匠面部21とで囲まれる内部に配置されていることに加え、窓枠15の外表面に配置された板材の外側端縁31bがガラスラン用凹部27の底部33に配置されている。ガラスランチャンネル35をガラスラン用凹部27の底部33に嵌合すれば、ロール成形された板材の外側端縁31bが窓枠15の外側に露出しない。そのため、使用時に内側端縁31aや外側端縁31bにおいて錆が生じて外観品質が低下するようなことを確実に防止できる。
しかも窓枠15は、板材を内側端縁31aから外側端縁31bまでを屈曲させて形成されたものであって、板材が積層された境界部分が外側に露出していないため、境界部分における錆の発生も防止できる。
その結果、防錆処理等を簡略化でき、より容易に安価に車両用ドア10を製造することができる。
【0029】
ストリップ用凹部25に、ドアフレーム部23側の第1底部37aと意匠面部21側の第2底部37bとが設けられ、インナーパネル19が第2底部37bに当接して接合されることで、第2底部37bとインナーパネル19とに連続したドアウェザストリップ47の第1シールライン51aが設けられている。そのため、窓枠15とドア本体11との境界部分のシール性をドアウェザストリップ47により容易に確保できる。
【0030】
窓枠15及びドア本体11に連続した第1シールライン51aが設けられていて、ストリップ用凹部25とインナーパネル19とに連続したドアウェザストリップ47が装着されているので、窓枠15とドア本体11との境界部分におけるシール性を向上することができる。
【0031】
上記実施の形態は、本発明の範囲内において適宜変更可能である。例えば上記では、ドアフレーム部23の平坦側面41が車幅方向に対して斜め、即ち意匠面部に対して斜めに傾斜して設けた例について説明した。しかし、ドアフレーム部23の平坦側面41の向きは車幅方向に沿って意匠面部21に対して直交する向きや、逆方向に傾斜する向きであっても本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0032】
10 車両用ドア
11 ドア本体
13 ウインドウ
15 窓枠
17 アウターパネル
19 インナーパネル
21 意匠面部
23 ドアフレーム部
25 ストリップ用凹部
27 ガラスラン用凹部
31a 内側端縁
31b 外側端縁
33 底部
35 ガラスランチャンネル
37a 第1底部
37b 第2底部
41 平坦側面
43 係止片
45 突部
47 ドアウェザストリップ
47a 基部
51a 第1シールライン
51b 第2シールライン
53 ボディ
55 オープニングウェザストリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア本体と窓枠とを備え、該窓枠の下端部が上記ドア本体内に収容されて接合された車両用ドアであって、
該窓枠は、車外側に設けられた意匠面部と、該意匠面部より車内側に設けられたドアフレーム部と、上記意匠面部と上記ドアフレーム部との間のドア周縁側に設けられてドアウェザストリップが嵌合されるストリップ用凹部と、上記意匠面部と上記ドアフレーム部との間のドア内側に設けられてガラスランチャンネルが嵌合されるガラスラン用凹部とを有して、板材のロール成形により形成され、
上記ドアフレーム部のドア周縁側が平坦側面を有し、
上記ストリップ用凹部が上記平坦側面からドア内側に凹んで設けられ、
上記窓枠の下端側で上記平坦側面が上記ドア本体のインナーパネル内側に当接して接合されている、車両用ドア。
【請求項2】
前記窓枠の外表面に配置された前記板材の端縁は、上記ガラスラン用凹部の底部に配置されている、請求項1に記載の車両用ドア。
【請求項3】
前記ストリップ用凹部は、前記平坦側面から平坦に連続した係止片と前記意匠面部の裏面に形成された突部との間に設けられている、請求項1又は2に記載の車両用ドア。
【請求項4】
前記ストリップ用凹部は、前記ドアフレーム部側に前記係止片と対向するように設けられた第1底部と、該第1底部より前記意匠面部側に、前記ガラスラン用凹部の底部から離間して設けられた第2底部と、を有し、
上記第2底部が前記インナーパネルに当接して接合され、上記第2底部と上記インナーパネルとに連続して前記ドアウェザストリップのシールラインが設けられている、請求項1乃至3の何れかに記載の車両用ドア。
【請求項5】
前記ストリップ用凹部と前記インナーパネルとに、連続したドアウェザストリップが装着されている、請求項4に記載の車両用ドア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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