説明

車両用ニーボルスター

【課題】荷重−変位特性を安定させることができると共に、質量を低減することができる車両用ニーボルスターを得る。
【解決手段】本車両用ニーボルスターでは、着座乗員の膝部の前方に配置されるエネルギ吸収部材14が、インパネリインフォースメントに設けられた金属製ブラケットに固定される。このエネルギ吸収部材14では、樹脂製のケース15の内側に、ダイラタント特性を有する材料からなるダイラタント部16が配設されている。これにより、通常時には軟らかいダイラタント部16の形状が保持される。一方、車両の衝突時等には、乗員の膝部からエネルギ吸収部材14に衝撃が加えられ、ダイラタント部16が瞬時に硬化する。これにより、エネルギ吸収部材14が割れることを防止できるので、荷重−変位特性を安定させることができる。また、エネルギ吸収部材14の長さ寸法を長くして、金属製ブラケット22の長さ寸法を短縮することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の衝突時等に乗員の膝部を拘束する車両用ニーボルスターに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に示された自動車用ニーボルスターでは、金属製のブラケットを介してインパネリインフォースメントに支持された硬質ウレタン製のパッド(エネルギ吸収部材)が、乗員の膝部に対向して配置される。この硬質ウレタンパッドは、自動車の衝突時に、乗員の膝部からの荷重によって潰されることにより、膝部の衝撃エネルギを吸収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−312429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、硬質ウレタンパッドは、生産技術上、発泡させられる長さに制約があり、且つ、潰れるときに折れ易い(圧縮荷重に対して割れ易い)ため、あまり長く形成することができない。そのため、硬質ウレタンパッドが固定される金属製ブラケット(固定部)の長さ寸法を短く設定することができず、質量低減の面で改善の余地がある。また、硬質ウレタンパッドは、上述の如く圧縮荷重に対して割れ易いため、荷重−変位特性のばらつきが非常に大きくなることがある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、エネルギ吸収部材の荷重−変位特性を安定させることができると共に、質量を低減することができる車両用ニーボルスターを得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明に係る車両用ニーボルスターは、車両のシートに着座した乗員の膝部の前方に配置されると共に、車体側の剛性部材に設けられた固定部に前端側が固定されたエネルギ吸収部材を備え、前記エネルギ吸収部材は、ダイラタント特性を有する材料からなるダイラタント部と、樹脂材料によって形成され、前記ダイラタント部を支持する支持部と、を有することを特徴としている。
【0007】
請求項1に記載の車両用ニーボルスターでは、車両のシートに着座した乗員の膝部の前方にエネルギ吸収部材が配置される。このエネルギ吸収部材は、車体側の剛性部材(インパネリインフォースメントなど)に設けられた固定部に前端側が固定されており、ダイラタント特性を有する材料からなるダイラタント部を有している。このダイラタント部は、樹脂製の支持部によって支持されているため、通常時には軟らかいダイラタント部の形状を保持することができる。一方、車両の衝突時等には、車両前方側へ慣性移動しようとする乗員の膝部からエネルギ吸収部材に衝撃が加えられる。これにより、ダイラタント部が瞬時に硬化して乗員の膝部を拘束すると共に、膝部の衝撃エネルギを吸収して膝部を保護する。
【0008】
しかも、ダイラタント部が瞬時に硬化することにより、樹脂製の支持部を含むエネルギ吸収部材が割れることを防止できる。これにより、荷重−変位特性を安定させることができる。さらに、ダイラタント部は形状自由度が高く且つ割れ難いため、長尺化と軽量化の両立を図ることができる。これにより、エネルギ吸収部材の長さ寸法を長くして、車体側剛性部材における固定部の構成を簡素化することができるので、装置の質量を低減することができる。つまり、例えば、インパネリインフォースメントの本体部(パイプ材等)に取り付けられた金属製のブラケットが固定部とされる場合には、当該金属製ブラケットの長さ寸法を短く設定することができる。また、例えば、インパネリインフォースメントの本体部の一部を固定部とし、当該固定部に直接エネルギ吸収部材を固定することにより、金属製ブラケットを省略することができる。これにより、装置の質量を低減することが可能になる。
【0009】
請求項2に記載の発明に係る車両用ニーボルスターは、請求項1に記載の車両用ニーボルスターにおいて、前記支持部は、中空状に形成されたケースとされ、前記ダイラタント部は、前記ケースの内側に配設されていることを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の車両用ニーボルスターでは、通常時には軟らかいダイラタント部が、中空状に形成された樹脂製のケース内に配設されているため、ダイラタント部の形状を良好に保持することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明に係る車両用ニーボルスターは、請求項2に記載の車両用ニーボルスターにおいて、前記ケース及び前記ダイラタント部は、前記固定部側が開口した有底筒状に形成されていることを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載の車両用ニーボルスターでは、ケース及びダイラタント部の双方が有底筒状に形成されているため、一体成形等によりエネルギ吸収部材を容易に成形することができる。また、ダイラタント部が有底筒状とされることにより、ダイラタント特性を有する材料の使用量を少なくすることができるので、低コスト化及び軽量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明に係る車両用ニーボルスターでは、エネルギ吸収部材の荷重−変位特性を安定させることができると共に、質量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両用ニーボルスターの構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る車両用ニーボルスターの部分的な構成を示す分解斜視図である。
【図3】図2の3−3線に沿った切断面を示す拡大断面図である。
【図4】図3の4−4線に沿った切断面を示す断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る車両用ニーボルスターの構成部材であるエネルギ吸収部材の変形例を示す斜視図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る車両用ニーボルスターの構成部材であるエネルギ吸収部材を示す図3に対応した断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る車両用ニーボルスターの構成部材であるエネルギ吸収部材の正面図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る車両用ニーボルスターの部分的な構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
以下、図1〜図5を参照して、本発明の第1実施形態に係る車両用ニーボルスター10について説明する。なお、各図中矢印FRは車両前方向を示し、矢印UPは車両上方向を示し、矢印LHは車両左方向を示し、矢印RHは車両右方向を示している。
【0016】
本第1実施形態に係る車両用ニーボルスター10は、右ハンドルの車両の運転席(シート)に着座した乗員の両膝部を拘束するための装置(下肢拘束装置)であり、図1に示されるように、インパネリインフォースメント12と、左右一対のエネルギ吸収部材14とによって構成されている。インパネリインフォースメント12は、車室内の前部に設けられた図示しないインストルメントパネルの内側に配置されており、車両幅方向に延びて左右の車体パネル間を連結している(なお、図1では、インパネリインフォースメント12の一部のみが図示されている)。
【0017】
このインパネリインフォースメント12の本体部18は、金属製の長尺なパイプ材で形成されている。この本体部18は、強度を必要とする運転席側の部分が太く、強度をあまり必要としない助手席側の部分が細く形成されている。本体部18の運転席側の部分には、ステアリングコラムを取り付けるための金属製のコラム支持部20(コラムブラケット)が取り付けられている。このコラム支持部20の左右両側には、エネルギ吸収部材固定用の固定部である左右一対の金属製ブラケット22が配置されている。
【0018】
これらの金属製ブラケット22は、金属板が曲げ加工されることにより開断面形状(断面コ字状)に形成されており、図2に示されるように上壁22A、下壁22B及び縦壁22Cを備えている。但し、これらの金属製ブラケット22は、左右対称に形成されており、何れもがコラム支持部20側へ開口している。これらの金属製ブラケット22は、前端側へ向かうに従い上下方向寸法が小さくなるように形成されており、前端部がインパネリインフォースメント12の本体部18に溶接されている。
【0019】
金属製ブラケット22の上壁22Aの後端からは、上方へ向けて上側締結片22Dが延出されており、金属製ブラケット22の下壁22Bの後端からは、下方へ向けて下側締結片22Eが延出されている。これらの上側締結片22D及び下側締結片22Eには、エネルギ吸収部材14が締結固定されている。
【0020】
エネルギ吸収部材14は、図2〜図4に示されるように、ケース15を備えている。このケース15は、樹脂材料によって薄肉な有底筒状に形成されたものであり、開口15Aが金属製ブラケット22と対向し、底壁15Bが図示しないインストルメントパネルと対向する状態で配置されている。このケース15は、金属製ブラケット22側から見た断面形状が楕円形に形成されており、底壁15B側(後端側)へ向かうに従い周壁15Cの周長が小さくなるテーパー状(略円錐台状)に形成されている。また、このケース15は、楕円形断面の長径が車両上下方向に沿う状態で配置されている。
【0021】
ケース15の開口縁部における上端部からは、上方側へ向けて上側締結部15Dが延出されており、ケース15の開口縁部における下端部からは、下方側へ向けて下側締結部15Eが延出されている。上側締結部15Dには、円形の貫通孔24が形成されている。この円形の貫通孔24に挿入されたボルト28が、金属製ブラケット22の上側締結片22Dに形成されたネジ孔32に螺合することにより、上側締結部15Dが上側締結片22Dに締結固定されている。同様に、下側締結部15Eには、円形の貫通孔26が形成されている。この円形の貫通孔26に挿通されたボルト30が、金属製ブラケット22の下側締結片22Eに形成されたネジ孔34に螺合することにより、下側締結部15Eが下側締結片22Eに締結固定されている。これにより、ケース15が金属製ブラケット22に固定されている。
【0022】
ケース15の内側には、ケース15と共にエネルギ吸収部材14を構成するダイラタント部16が配設されている。このダイラタント部16は、ダイラタント特性を有する材料、例えば、英国のd3oTMlab社が製造する「d3oTM」からなり、本実施形態ではケース15と一体成形されたものである。この「d3oTM」は、衝撃が加わっていないときや衝撃が弱いときは柔軟であるが、強い衝撃が加えられると瞬時に硬化すると共に、優れたエネルギ吸収性能を発揮する材料である。
【0023】
ダイラタント部16は、金属製ブラケット22側が開口した有底筒状に形成されており、開口16Aが金属製ブラケット22と対向する状態で配置されている。このダイラタント部16は、金属製ブラケット22側から見た断面形状が楕円形に形成されており、底壁16Bがケース15の底壁15Bにおける金属ブラケット22側の面に密着すると共に、周壁16Cがケース15の周壁15Cの内周面に密着している。なお、図2においては、説明の都合上、底壁16B及び周壁16Cの図示が省略されている。
【0024】
上記構成の車両用ニーボルスター10では、乗員Pが車両の運転席に着座した状態では、図1に示されるように、左側のエネルギ吸収部材14が、当該乗員Pの左側の膝部P1の前方に配置され、右側のエネルギ吸収部材14が、当該乗員Pの右側の膝部P1の前方に配置される構成になっている。
【0025】
次に、本第1実施形態の作用及び効果について説明する。
【0026】
上記構成の車両用ニーボルスター10では、エネルギ吸収部材14を構成するダイラタント部16が樹脂製のケース15内に配設されているため、通常時にはケース15によってダイラタント部16の形状を保持することができる。一方、車両の衝突時等には、車体に対して前方側へ慣性移動しようとする乗員の膝部P1がインパネリインフォースメントを介してエネルギ吸収部材14に衝突する。これにより、ダイラタント部16が瞬時に硬化して乗員Pの膝部P1を拘束すると共に、膝部P1の衝撃エネルギを吸収して膝部P1を保護する。
【0027】
しかも、ダイラタント部16が瞬時に硬化することにより、樹脂製のケース15を含むエネルギ吸収部材14が割れることを防止できる。これにより、荷重−変位特性を安定させることができる。さらに、上述の如くエネルギ吸収部材14が割れることを防止できるので、エネルギ吸収部材14の長さ寸法L(図3参照)を長く設定することが可能になる(長さ寸法Lに制約がない)。これにより、金属製ブラケット22の長さ寸法を大幅に短縮することができるので、装置の質量を低減することができる。
【0028】
さらに、本実施形態では、通常時には軟らかいダイラタント部16が、有底筒状(中空状)に形成された樹脂製のケース15内に配設されているため、ダイラタント部16の形状を良好に保持することができる。
【0029】
また、本実施形態では、ケース15及びダイラタント部16の双方が有底筒状に形成されているため、一体成形によりエネルギ吸収部材14を容易に成形することができる。また、ダイラタント部16が有底筒状に形成されているため、良好な膝拘束性能を確保しつつ、装置の低コスト化及び軽量化を図ることができる。
【0030】
つまり、エネルギ吸収部材14に乗員Pの膝部P1が衝突した際には、ダイラタント部16の底壁16Bに衝撃が加えられることにより、ダイラタント部16の材料の分子同士が瞬時に結合し、底壁16B及び周壁16Cの全体が瞬時に硬化する。このように、底壁16Bがダイラタント部16を硬化させるためのセンサのように機能するため、ダイラタント部16を迅速かつ良好に硬化させることができる。しかも、断面楕円状に形成された周壁部16Cによって良好に荷重を生じさせることができる。これにより、良好な膝拘束性能を確保できる。さらに、ダイラタント部16が中空状であるため、ダイラタント特性を有する材料の使用量を低減することができる。これにより、装置の低コスト化及び軽量化を図ることができる。
【0031】
またさらに、本実施形態に係るエネルギ吸収部材14は、楕円形断面の長径が車両上下方向に沿う状態で金属製ブラケット22に固定されている。つまり、エネルギ吸収部材14の上下方向寸法が大きく設定されているため、乗員の体格差などによる膝部の配置高さのばらつきに関わらず、エネルギ吸収部材14を膝部に良好に対向させることができる。また、エネルギ吸収部材14がステアリングコラム等と干渉することを回避できるので、エネルギ吸収部材14の配置スペースを確保する上でも好適である。
【0032】
また、本実施形態では、エネルギ吸収部材14の長さ寸法、断面形状、肉厚などを変更することによって、エネルギ吸収部材14が潰れる際に発生する荷重の大きさや、エネルギ吸収部材14が潰れる際のストロークを自由に調整することができるので、設計自由度が高いというメリットもある。
【0033】
なお、上記第1実施形態では、エネルギ吸収部材14(ケース15及びダイラタント部16)が楕円形断面に形成された構成にしたが、請求項1〜請求項3に係る発明はこれに限らず、エネルギ吸収部材14の断面形状は適宜変更することができる。例えば、図5に示される変形例のように、エネルギ吸収部材14が略矩形断面に形成された構成にしてもよい。また、図示はしないが、エネルギ吸収部材14を円形断面に形成された構成にしてもよい。
【0034】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。なお、前記第1実施形態と基本的に同様の構成・作用については、前記第1実施形態と同符号を付与し、その説明を省略する。
【0035】
<第2の実施形態>
図6には、本発明の第2の実施形態に係る車両用ニーボルスターの構成部材であるエネルギ吸収部材40の断面図が示されている。このエネルギ吸収部材40は、前記第1実施形態に係るエネルギ吸収部材14と基本的に同様の構成とされているが、このエネルギ吸収部材40では、ダイラタント部15が前記第1実施形態よりも薄肉に形成されている。また、ケース15の周壁15Cには、軸線方向中間部に段部42が設けられており、ダイラタント部16の周壁16Cには、ケース15の段部42に対応する部位に段部44が形成されている。なお、他の部品構成は、前記第1実施形態と基本的に同様の構成とされている。
【0036】
この実施形態では、乗員Pの膝部P1がインストルメントパネルを介してエネルギ吸収部材40に衝突すると、ケース15及びダイラタント部16が段部42、44において座屈する。この座屈の際にはダイラタント部16が優れたエネルギ吸収性能を発揮するので、膝部P1を良好に保護することができる。なお、段部42、44を省略すると共に、ダイラタント部16の軸線方向中間部に脆弱部(薄肉部など)を設ける構成にしてもよい。
【0037】
<第3の実施形態>
図7には、本発明の第3の実施形態に係る車両用ニーボルスターの構成部材であるエネルギ吸収部材50の正面図が示されている。このエネルギ吸収部材50は、前記第1実施形態に係るエネルギ吸収部材14と基本的に同様の構成とされている。但し、このエネルギ吸収部材50では、ケース15の上側締結部15Dが楕円形断面の短径方向一側へ向けて突出しており、下側締結部15Eが楕円形断面の短径方向他側へ向けて突出している。このように上側締結部15D及び下側締結部15Eが配置されることにより、楕円形断面の長径方向に沿ったエネルギ吸収部材50の寸法を小さく設定することができる。したがって、エネルギ吸収部材50の成形金型を小型で低コストなものにすることができる。なおこの場合、金属製ブラケット22の上側締結片22D及び下側締結片22Eの配置を、上側締結部15D及び下側締結部15Eの配置に対応して変更する必要がある。
<第4の実施形態>
図8には、本発明の第4の実施形態に係る車両用ニーボルスターの部分的な構成が斜視図にて示されている。この実施形態は、前記第1実施形態と基本的に同様の構成とされているが、この実施形態では、前記第1実施形態に係る金属製ブラケット22が省略されている。また、この実施形態では、エネルギ吸収部材60の構成が前記第1実施形態に係るエネルギ吸収部材14とは異なっている。
【0038】
このエネルギ吸収部材60のケース15は、底壁15B側(後端側)へ向かうに従い周壁15Cの周長が拡大するテーパー状(略円錐台状)に形成されている。なお、図示は省略するが、ダイラタント部16も底壁16B側へ向かうに従い周壁16Cの周長が拡大するテーパー状に形成されている。
【0039】
エネルギ吸収部材60の前端部は、インパネリインフォースメント12の本体部18に設けられた固定部62に当接している。ケース15の上側締結部15Dは、本体部18の上面に密着するように湾曲しており、上側締結部15Dを貫通したスクリュー28が、固定部62の上部に形成された図示しないネジ孔に螺合している。これにより、上側締結部15Dが固定部62(本体部18の一部)に締結固定されている。また、下側締結部15Eは、固定部62の下面に密着するように湾曲しており、下側締結部15Eを貫通したスクリュー30が、固定部62の下部に形成された図示しないネジ孔に螺合している。これにより、下側締結部15Eが固定部62(本体部18の一部)に締結固定されている。
【0040】
このように、この実施形態では、インパネリインフォースメント12の本体部18の一部がエネルギ吸収部材固定用の固定部62とされており、本体部18が直接エネルギ吸収部材60の反力を受ける構成になっている。これにより、金属製ブラケット22を省略することができるので、装置の質量を大幅に低減することができる。
【0041】
なお、上記各実施形態では、ケース15(支持部)及びダイラタント部16が有底筒状に形成された構成にしたが、請求項1及び請求項2に係る発明はこれに限らず、ケース及びダイラタント部の形状は適宜変更することができる。例えば、ケースが箱状に形成された構成にしてもよいし、ダイラタント部がハニカム状又は格子状に形成されてケース内に嵌め込まれた構成にしてもよい。
【0042】
また、上記各実施形態では、ケース15とダイラタント部16が一体成形された構成にしたが、請求項1〜請求項3に係る発明はこれに限らず、ケース及びダイラタント部の成形方法は適宜変更することができる。例えば、ケースとダイラタント部が別々に成形され、ダイラタント部がケースに接着された構成にしてもよい。
【0043】
さらに、上記各実施形態では、支持部としてのケース15によってダイラタント部16が支持された構成にしたが、請求項1に係る発明はこれに限らず、支持部は、通常時にダイラタント部が不用意に変形しないように支持するものであればよく、その形状は適宜変更することができる。例えば、ダイラタント部の中に支持部が埋設された構成にしてもよい。
【0044】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記各実施形態に限定されないことはいうでもない。
【符号の説明】
【0045】
10 車両用ニーボルスター
12 インパネリインフォースメント
14 エネルギ吸収部材
15 ケース(支持部)
16 ダイラタント部
22 金属製ブラケット(固定部)
40 エネルギ吸収部材
50 エネルギ吸収部材
60 エネルギ吸収部材
62 固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のシートに着座した乗員の膝部の前方に配置されると共に、車体側の剛性部材に設けられた固定部に前端側が固定されたエネルギ吸収部材を備え、
前記エネルギ吸収部材は、
ダイラタント特性を有する材料からなるダイラタント部と、
樹脂材料によって形成され、前記ダイラタント部を支持する支持部と、
を有することを特徴とする車両用ニーボルスター。
【請求項2】
前記支持部は、中空状に形成されたケースとされ、前記ダイラタント部は、前記ケースの内側に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ニーボルスター。
【請求項3】
前記ケース及び前記ダイラタント部は、前記固定部側が開口した有底筒状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用ニーボルスター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−116438(P2012−116438A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270612(P2010−270612)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】