説明

車両用ブレーキ液圧制御装置

【課題】 油圧回路を構成するための管路の穴空けの数を低減できる車両用ブレーキ液圧制御装置を提供する。
【解決手段】 4個の電磁開閉弁SREC、SMCF、SREA、STRのうち少なくとも3つが増圧制御弁PC1〜PC4が配置された列および減圧制御弁PC5〜PC8が配置された列よりも上方に配置される構成とする。これにより、車両用ブレーキ液圧制御装置の管路構成を簡素化することができる。したがって、油圧回路を構成するための管路の穴空けの数を低減できる車両用ブレーキ液圧制御装置とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属などで構成されるブロック内に管路を穴空け形成し、ブロック内に形成された管路に電磁弁などを配置することで油圧回路を構成した車両用ブレーキ液圧制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ブロック内に管路を穴空け形成し、ブロック内に形成された管路に電磁弁などを配置することで油圧回路を構成した車両用ブレーキ液圧制御装置として、特許文献1に示されるものがある。図5に、この特許文献1に示される車両用ブレーキ制御装置の油圧回路の構成を示す。
【0003】
この図に示されるように、車両用ブレーキ制御装置には、マスタシリンダMC及びレギュレータRGが備えられ、これらがブレーキペダルBPの操作に応じて駆動される。レギュレータRGには補助液圧源ASが接続されており、これらはマスタシリンダMCと共に低圧リザーバRSに接続されている。
【0004】
補助液圧源ASには、液圧ポンプHP及びアキュムレータAccが備えられている。液圧ポンプHPは、電動モータMによって駆動されるもので、低圧リザーバRSのブレーキ液を吸入吐出する。この液圧ポンプHPが吐出したブレーキ液が逆止弁CV6を介してアキュムレータAccに供給され、蓄圧される。このアキュムレータAccのブレーキ液圧は、圧力応動電気スイッチSW1、SW2に入力され、第1の所定値よりも下回ったこと、および、第1の所定値よりも高い第2の所定値を上回ったことが監視されるようになっている。
【0005】
電動モータMは、アキュムレータAcc内の液圧が第1の所定値を下回ることに応答して駆動されるようになっており、またアキュムレータAcc内の液圧が第2の所定値を上回ることに応答して停止させられる。そして、このようにアキュムレータAccに蓄積されたブレーキ液圧が、出力液圧として、適宜レギュレータRGに供給されるようになっている。
【0006】
レギュレータRGは、補助液圧源ASの出力液圧を入力し、マスタシリンダMCの出力液圧をパイロット圧として、これに比例したレギュレータ液圧に調圧するものである。なお、このレギュレータRGの基本的な構成については周知なものであるため、ここでは説明を省略する。
【0007】
マスタシリンダMCと車両前方のホイールシリンダWfr、Wflを接続する前輪側の管路MFは、2つに分岐しており、分岐した管路MF1、MF2には、それぞれ3ポートの二位置弁で構成された電磁開閉弁SA1およびSA2が備えられている。これらは管路管路MF1及びMF2を介して、それぞれ増圧制御弁PC1および減圧制御弁PC5に接続されていると共に、増圧制御弁PC2および減圧制御弁PC6に接続されている。
【0008】
電磁開閉弁SA1およびSA2は、通電が行われていない非作動時には、管路MF1、MF2を通じてマスタシリンダMCが車両前方のホイールシリンダWfr、Wflの各々と接続される弁位置となる。そして、通電が行われる作動時には、マスタシリンダMCを車両前方のホイールシリンダWfr、Wflから遮断し、車両前方のホイールシリンダWfr、Wflが後述する管路ACに接続される弁位置となる。
【0009】
また、レギュレータRGとホイールシリンダWrr、Wrl等の各々を接続する管路MRには圧力センサPSが備えられていると共に、2ポートの二位置弁で構成された電磁開閉弁SA3が備えられている。管路MRは、電磁開閉弁SA3よりも下流側において管路MR1、MR2に分岐しており、分岐したそれぞれの管路MR1、MR2には、それぞれ増圧制御弁PC3および減圧制御弁PC7が備えられていると共に、増圧制御弁PC4および減圧制御弁PC8が備えられている。
【0010】
そして、補助液圧源ASが管路AMを介して電磁開閉弁SA3の下流側に接続され、その管路AMには2ポートの二位置弁で構成された電磁開閉弁STRが備えられた構成となっている。また、電磁開閉弁てSTRと増圧制御弁PC3、PC4とを繋ぐ管路AMと、電磁開閉弁SA1、SA2とが管路ACによって接続された構成となっている。
【0011】
なお、各減圧制御弁PC5〜PC8は、管路RC1〜RC4を通じて低圧リザーバRSに接続されている。
【0012】
このように構成された車両用ブレーキ制御装置では、各種弁SA1〜SA3、STR、PC1〜PC8は、ソレノイドに通電が行われていない非作動時には、弁位置が図示位置に設定されており、ソレノイドに通電が行われた作動時には、弁位置が図示位置とは異なる位置に設定されるようになっている。そして、ソレノイドへの通電によって各種弁SA1〜SA3、STR、PC1〜PC8の弁位置を調整することにより、通常のブレーキ時のみでなく、アンチスキッド制御(以下、ABS制御という)やトラクション制御(以下、TCS制御という)さらには横滑り防止制御(以下、ESC制御という)を実行するようになっている。
【0013】
このような車両用ブレーキ液圧制御装置の油圧回路を構成する各種配管は、金属などで構成されたブロックへの穴空けによって形成され、各種弁や各センサがブロックにおける一面側に集中配置されることで、油圧回路が構成されている。図6は、ブロックBLにおける各種弁や各センサが配置された面の正面図である。
【0014】
図6に示されるように、ブロックBLの下方位置において、4つの電磁開閉弁SA1〜SA3、STRを一列に並べ、その上方に4つの増圧制御弁PC1〜PC4を一列に並べると共に、さらにその上方に4つの減圧制御弁PC5〜PC8を一列に並べた構成となっている。
【0015】
そして、ブロックBL内に形成された各種管路の模式図を3次元的に表すと、図7のようになっている。この図に示されるように、ブロックBLは六面体で構成されている。このブロックBLのうち、各種弁が配置される面を裏面、その反対側の面を表面、紙面上側に位置する面を上面、紙面左右に位置する面を左側面および右側面、紙面下側に位置する面を底面として、以下に各管路の構成について説明する。
【0016】
この図に示されるように、ブロックBLの表面には、マスタシリンダMCに接続されるポート100が形成されている。このポート100は、ブロックBLの底面から穴空けされた管路101と、ブロックBLの左側面から穴空けされた管路102を通じて電磁開閉弁SA1、SA2が配置される凹部HSA1、HSA2に接続される。また、凹部HSA1、HSA2が、ブロックBLの底面から穴空けされた管路103、104を通じて、増圧制御弁PC1、PC2が配置される凹部HPC1、HPC2に接続されたのち、ブロックBLの上面から穴空けされた管路105、106を通じて、減圧制御弁PC5、PC6が配置される凹部HPC5、HPC6に接続されている。さらに、管路105、106に、ブロックBLの表面から穴空けされた管路107、108が接続されたのち、これら管路107、108に、ブロックBLの上面から穴空けされた管路109、110が接続されている。そして、これら管路109、110が、それぞれブロックBLの表面から穴空けされたホイールシリンダWfr、Wflに接続されるポート111、112に接続された構成となっている。
【0017】
このように、管路101、102、103、105、107、109によって管路MF1が構成され、管路101、102、104、106、108、110によって管路MF2が構成される。なお、各管路101〜110を穴空けしたときの入口となる位置は、封止栓101a〜110aで塞がれおり、液密が保たれるようになっている。
【0018】
各電磁開閉弁SA1、SA2、STRが配置される凹部HSA1、HSA2、HSTRを接続するように、ブロックBLの右側面から管路120が穴空けされている。この管路120は、ブロックBLの底面から穴空けされた管路121に接続されたのち、表面から穴空けされた管路122に接続され、さらに、底面から穴空けされた管路123と左側面から穴空けされた管路124に接続されることで、電磁開閉弁SA3が配置される凹部HSA3に接続されている。
【0019】
また、管路122は、ブロックBLの左側面から穴空けされた管路125に接続されており、この管路125を通じて、各増圧制御弁PC3、PC4が配置される凹部HPC3、HPC4に接続されている。これら各凹部HPC3、HPC4が、ブロックBLの上面から穴空けされた管路126、127を通じて減圧制御弁PC7、PC8が配置される凹部HPC7、HPC8に接続されている。そして、管路126が、ブロックBLの表面から穴空けされたホイールシリンダWrrに接続されるポート128に接続され、管路127が、ブロックBLの表面から穴空けされた管路129および上面から穴空けされた管路130を通じて、ブロックBLの表面から穴空けされたホイールシリンダWrlに接続されるポート131に接続されている。
【0020】
このように、管路120〜127、129によって管路ACおよび管路MR1、MR2が構成されている。なお、各管路120〜127、129、130を穴空けしたときの入口となる位置は、封止栓120a〜127a、129a、130aで塞がれており、液密が保たれるようになっている。
【0021】
アキュムレータAccに接続されるポート140は、ブロックBLの上面から穴空けされた管路141と右側面から穴空けされた管路142に接続されたのち、圧力応動電気スイッチSW1が配置される凹部HSW1および圧力応動電気スイッチSW2が配置される凹部HSW2に接続されている。
【0022】
また、凹部HSW1は、ブロックBLの右側面から穴空けされた管路143と、底面から穴空けされた管路145とを通じて、レギュレータRGに繋がるポート146に接続されていると共に、管路143と、ブロックBLの表面から形成された管路144とブロックBLの底面から形成された管路147を通じて、電磁開閉弁STRが配置される凹部HSTRに接続されている。
【0023】
このように、管路141〜145、147によって管路AMおよび補助液圧源AS内の管路などが構成されている。なお、各管路141〜145、147を穴空けしたときの入口となる位置は、封止栓141a〜145a、147aで塞がれており、液密が保たれるようになっている。
【0024】
さらに、凹部HSA3は、ブロックBLの底面から穴空けされた管路148と、表面から穴空けされた管路149と、左側面から穴空けされた管路150と、上面から形成された管路151と、右側面から穴空けされた管路152とを順に通って、圧力センサPSが配置される凹部HPSに接続されている。そして、管路152が、ブロックBLの上面から形成された管路153と左側面から形成された管路154を通じて、レギュレータRGに繋がるポート155に接続されている。
【0025】
また、各減圧制御弁PC5〜PC8が配置される凹部HPC5〜HPC8は、ブロックBLの左側面から穴空けされた管路156を通じて、表面から穴空けされた低圧リザーバRSに繋がるポート157に接続されている。
【0026】
このように、管路148〜151、153、154によって管路MRが構成されている。また、管路156によって管路RC、RC1〜RC4が構成されている。なお、各管路148〜151、153、154を穴空けしたときの入口となる位置は、封止栓148a〜151a、153a、154aで塞がれており、液密が保たれるようになっている。
【特許文献1】特開平11−11283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
しかしながら、上記構成の車両用ブレーキ液圧制御装置では、油圧回路を構成するために、非常に数多くの管路を形成しなければならず、管路の穴空けのために、製造工程の複雑化を招くという問題がある。このようなっ製造工程の複雑化は、ブロックのサイズ拡大や車両用ブレーキ液圧制御装置のコスト増加を招くため、さらなる改良が望まれる。
【0028】
本発明は上記点に鑑みて、油圧回路を構成するための管路の穴空けの数を低減できる車両用ブレーキ液圧制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、第1〜第4ホイールシリンダ(Wfr、Wfl、Wrr、Wrl)とマスタシリンダシリンダとの連通遮断を制御する増圧制御弁(PC1〜PC4)と、第1〜第4増圧制御弁の下流において、第1〜第4ホイールシリンダに加えられる流体圧力を発生させる流体をリザーバに逃がす第1〜第4減圧制御弁(PC5〜PC8)と、第1〜第4増圧制御弁および4つの電磁開閉弁(SREC、SMCF、SREA、STR)と、アキュムレータに蓄積された流体圧力を検出するための第1圧力センサ(11)と、マスタシリンダに発生させられた流体圧力を検出するための第2圧力センサ(12)と、第1〜第4増圧制御弁、第1〜第4減圧制御弁、4つの電磁開閉弁および第1、第2圧力センサが配置されるブロック(BL)とを備えている。そして、第1〜第4増圧制御弁、第1〜第4減圧制御弁、4つの電磁開閉弁および第1、第2圧力センサは、ブロックにおける一面に配置されていると共に、第1〜第4増圧制御弁および第1〜第4減圧制御弁は、それぞれの中心が概略1列に並べられて配置されており、4個の電磁開閉弁のうち少なくとも3つが第1〜第4増圧制御弁が配置された列および第1〜第4減圧制御弁が配置された列よりも上方に配置されていることを特徴としている。
【0030】
各ホイールシリンダに接続されるポート(27、28、38、39)は、マスタシリンダのエア抜き性を考慮すると、ブロックの下方位置に配置される。したがって、油圧回路における下流側、すなわちホイールシリンダに接続されるポートの近くに位置する第1〜第4増圧制御弁および第1〜第4減圧制御弁をできるだけブロックの下方位置に配置するのが好ましい。
【0031】
したがって、4個の電磁開閉弁のうち少なくとも3つが第1〜第4増圧制御弁が配置された列および第1〜第4減圧制御弁が配置された列よりも上方に配置される構成とすることで、車両用ブレーキ液圧制御装置の管路構成を簡素化することができる。これにより、油圧回路を構成するための管路の穴空けの数を低減できる車両用ブレーキ液圧制御装置とすることができる。
【0032】
例えば、請求項2に示されるように、4つの電磁開閉弁が、マスタシリンダと前輪(FR、FL)に対応する第1、第2ホイールシリンダ(Wfr、Wfl)とを繋ぐ管路(MF)のうち、マスタシリンダと第1、第2増圧制御弁との間に備えられた第1電磁開閉弁(SMCF)と、マスタシリンダと、後輪(RR、RL)に対応する第3、第4ホイールシリンダ(Wrr、Wrl)とを繋ぐ管路(MR)のうち、マスタシリンダと第3、第4増圧制御弁との間に備えられた第2電磁開閉弁(SREC)と、アキュムレータと後輪に対応する第3、第4増圧制御弁とを繋ぐ管路(AM)に設けられた第3電磁開閉弁(STR)と、第3電磁開閉弁(STR)と後輪に対応する第3、第4増圧制御弁とを繋ぐ管路(AM)および第1電磁開閉弁(SMCF)と前輪に対応する第1、第2増圧制御弁とを繋ぐ管路(MF)の間を接続する管路(AC)に備えられた第4電磁開閉弁(SREA)とによって構成される場合、これら第1〜第3電磁開閉弁のうち、第1、第3、第4電磁開閉弁(SMCF、STR、SREA)が、第1〜第4増圧制御弁の中心を結ぶ直線(L1)および第1〜第4減圧制御弁の中心を結んだ概略直線(L2)よりも上方に配置される。
【0033】
マスタシリンダの流体圧力を検出するための圧力センサは、油圧回路において、第2電磁開閉弁よりも上流側に位置するため、第2電磁開閉弁を圧力センサよりも下方に配置するのが望ましい。したがって、第2電磁開閉弁以外の第1、第3、第4電磁開閉弁を第1〜第4増圧制御弁の中心を結ぶ直線(L1)および第1〜第4減圧制御弁の中心を結んだ概略直線(L2)よりも上方に配置すれば、より油圧回路を構成するための管路を簡素なものとすることができる。また、第2電磁開閉弁が大型なものになった場合、第2電磁開閉弁を最上段に配置すると第1、第3、第4電磁開閉弁の配置スペースを考慮しなければならないため、配置の自由度が制限されるが、上記のような配置とすれば、そのような制限を受けなくても済む。
【0034】
請求項3に記載の発明では、ブロックに形成された第1〜第4ホイールシリンダに繋がるポート(27、28、38、39)は、第1〜第4増圧制御弁の中心を結ぶ直線(L1)と第1〜第4減圧制御弁の中心を結ぶ概略直線(L2)との間に配置されていることを特徴としている。
【0035】
このように、第1〜第4ホイールシリンダに繋がるポートが下方位置に配置されるものに対して、上述したように、位置する第1〜第4増圧制御弁および第1〜第4減圧制御弁をできるだけブロックの下方位置に配置するのが好ましい。
【0036】
請求項4に記載の発明では、4つの電磁開閉弁のうち、第1〜第4増圧制御弁を結ぶ直線(L1)および第1〜第4減圧制御弁を結ぶ概略直線(L2)よりも上方に配置されている3つの電磁開閉弁は、それぞれの中心が一直線上からずれた配置とされていることを特徴としている。
【0037】
このように、第1〜第4増圧制御弁を結ぶ直線(L1)および第1〜第4減圧制御弁を結ぶ概略直線(L2)よりも上方に配置されている3つの電磁開閉弁の各中心が一直線上に並ばないようにすれば、各電磁開閉弁を繋ぐための管路を簡略化することが可能となる。
【0038】
例えば、請求項5に示されるように、第3電磁開閉弁(STR)を第4電磁開閉弁(SREA)よりも上方に配置し、第3電磁開閉弁(STR)と第4電磁開閉弁(SREA)とが、ブロックの上面と表面および側面に形成された管路(40、41、42)を通じて接続されるようにする。
【0039】
このように、第3電磁開閉弁を第4電磁開閉弁よりも上方に配置すれば、ブロックの上面と表面および側面に形成された管路のみによって、第3電磁開閉弁と第4電磁開閉弁とを接続することが可能となる。したがって、より油圧回路を構成する管路の簡素化を図ることが可能となり、より油圧回路を構成するための管路の穴空けの数を低減できる車両用ブレーキ液圧制御装置とすることができる。
【0040】
請求項6に記載の発明では、4つの電磁開閉弁のうち、第1〜第4増圧制御弁の中心を結ぶ直線(L1)および第1〜第4減圧制御弁の中心を結ぶ概略直線(L2)よりも上方に配置されている3つの電磁開閉弁とは異なる第2電磁開閉弁(SREC)は、第1〜第4増圧制御弁の中心を結ぶ直線(L1)および第1〜第4減圧制御弁の中心を結ぶ概略直線(L2)の間に配置されていることを特徴としている。
【0041】
このように、第2電磁開閉弁を第1〜第4増圧制御弁の中心を結ぶ直線(L1)および第1〜第4減圧制御弁の中心を結ぶ概略直線(L2)の間に配置することにより、ブロックの水平方向のサイズの小型化を図ることが可能となる。
【0042】
請求項7に記載の発明では、ブロックに形成されたマスタシリンダに繋がるポート(29)は、ブロックにおける第1〜第4増圧制御弁、第1〜第4減圧制御弁、4つの電磁開閉弁および第1、第2圧力センサが配置される一面とは反対側の表面に形成され、ブロックにおける一面側に形成された第2圧力センサが配置される凹部(H12)に直接繋がっていることを特徴としている。
【0043】
このように、マスタシリンダに繋がるポートと第2圧力センサが配置される凹部とを同じ側に配置し、これらを直接繋げば、これらを繋ぐための管路が不要となる。したがって、従来のようにマスタシリンダに繋がるポートと圧力センサが配置される凹部とが離れた場所に配置される場合と比べて、より油圧回路を構成する管路の簡素化を図ることが可能となる。これにより、より油圧回路を構成するための管路の穴空けの数を低減できる車両用ブレーキ液圧制御装置とすることができる。
【0044】
請求項8に記載の発明では、第3電磁開閉弁よりも下流側において、マスタシリンダに発生させられた流体圧力を検出するための第3圧力センサ(13)を備え、第2圧力センサおよび第3圧力センサは、共に、第1〜第4増圧制御弁および第1〜第4減圧制御弁に対して、第2電磁開閉弁が配置された方と同じ側に配置されており、第3圧力センサは、第2電磁開閉弁よりも下方に配置されていることを特徴としている。
【0045】
第3圧力センサを設ける場合、第3圧力センサが第2電磁開閉弁よりも油圧回路における下流に配置されることから、第2電磁開閉弁の下方に配置されるようにするのが望ましい。
【0046】
請求項9に記載の発明では、第1圧力センサは、第1〜第4増圧制御弁および第1〜第4減圧制御弁に対して、第2電磁開閉弁が配置された方と異なる側に配置おいて、第1〜第4増圧制御弁の中心を結ぶ直線(L1)および第1〜第4減圧制御弁の中心を結ぶ概略直線(L2)の間に配置されていることを特徴としている。
【0047】
このように、第1圧力センサを第1〜第4増圧制御弁および第1〜第4減圧制御弁に対して、第2電磁開閉弁が配置された方と異なる側であって、第1〜第4増圧制御弁の中心を結ぶ直線(L1)および第1〜第4減圧制御弁の中心を結ぶ概略直線(L2)の間に配置すれば、ブロックの水平方向のサイズの小型化を図ることができる。
【0048】
請求項10に記載の発明では、第1〜第4減圧制御弁の各中心は、第1〜第4増圧制御弁の各中心位置から水平方向にずれており、また、第3、第4減圧制御弁(PC7、PC8)の各中心は、垂直方向において、第1、第2減圧制御弁(PC5、PC6)の各中心からずれていることを特徴としている。
【0049】
このように、第1〜第4減圧制御弁の各中心位置を第1〜第4増圧制御弁の各中心位置から水平方向にずらし、第3、第4減圧制御弁を第1、第2減圧制御弁の中心から垂直方向にずらすことで、ブロックの上下方向のサイズを小型化することが可能となる。
【0050】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
(第1実施形態)
本発明の一実施形態が適用される車両用ブレーキ液圧制御装置の油圧回路の構成を図1に示す。
【0052】
この図に示されるように、車両用ブレーキ制御装置には、マスタシリンダMC及びレギュレータRGが備えられ、これらがブレーキペダルBPの操作に応じて駆動される。レギュレータRGには補助液圧源ASが接続されており、これらはマスタシリンダMCと共に低圧リザーバRSに接続されている。
【0053】
補助液圧源ASには、液圧ポンプHP及びアキュムレータAccが備えられている。液圧ポンプHPは、電動モータMによって駆動されるもので、低圧リザーバRSのブレーキ液を吸入吐出する。この液圧ポンプHPが吐出したブレーキ液が逆止弁CV6を介してアキュムレータAccに供給され、蓄圧される。
【0054】
電動モータMは、アキュムレータAcc内のブレーキ液圧(流体圧力)が所定の下限値を下回ることに応答して駆動されるようになっており、またアキュムレータAcc内の液圧が所定の上限値を上回ることに応答して停止させられる。そして、このようにアキュムレータAccに蓄積されたブレーキ液圧が、出力液圧として、適宜レギュレータRGに供給されるようになっている。
【0055】
レギュレータRGは、補助液圧源ASの出力液圧を入力し、マスタシリンダMCの出力液圧をパイロット圧として、これに比例したレギュレータ液圧に調圧するものである。このレギュレータ液圧は、例えば後述する液圧監視手段に相当する圧力センサ11によって検出され、常に所定範囲内に保たれる。なお、このレギュレータRGの基本的な構成については周知なものであるため、ここでは説明を省略する。
【0056】
マスタシリンダMCと前輪FR、FLに対応するホイールシリンダ(第1、第2ホイールシリンダ)Wfr、Wflの各々を接続する前輪側の管路(第1管路)MFには、2ポートの二位置弁で構成された電磁開閉弁(第1電磁開閉弁)SMCFが備えられている。この電磁開閉弁SMCFの下流側において、管路MFは2つの管路MF1、MF2に分岐しており、各管路MF1、MF2それぞれに増圧制御弁(第1、第2増圧制御弁)PC1、PC2が備えられた構成とされている。そして、各増圧制御弁PC1、PC2と前輪FR、FLに対応するホイールシリンダWfr、Wflとの間が管路RC1、RC2を通じて低圧リザーバRCに接続されている。各管路RC1、RC2それぞれには、減圧制御弁(第1、第2減圧制御弁)PC5、PC6が備えられており、これら減圧制御弁PC5、PC6によって、各管路RC1、RC2の連通遮断が制御されるようになっている。
【0057】
電磁開閉弁SMCFは、通電が行われていない非作動時には、管路MF、MF1、MF2を通じてマスタシリンダMCが前輪FR、FLに対応するホイールシリンダWfr、Wflの各々と接続される弁位置となる。そして、通電が行われる作動時には、マスタシリンダMCを車両前方のホイールシリンダWfr、Wflから遮断する弁位置となる。
【0058】
また、マスタシリンダMCと後輪RR、RLに対応するホイールシリンダ(第3、第4ホイールシリンダ)Wrr、Wrl等とを接続する管路(第2管路)MRには2ポートの二位置弁で構成された電磁開閉弁(第2電磁開閉弁)SRECが備えられている。また、管路MRは、電磁開閉弁SRECよりも下流側において管路MR1、MR2に分岐しており、分岐したそれぞれの管路MR1、MR2には、それぞれ増圧制御弁(第3増圧制御弁)PC3および減圧制御弁(第3減圧制御弁)PC7が備えられていると共に、増圧制御弁(第4増圧制御弁)PC4および減圧制御弁(第4減圧制御弁)PC8が備えられている。
【0059】
補助液圧源ASは、管路(第3管路)AMを介して電磁開閉弁SRECの下流側に接続され、管路AMには2ポートの二位置弁で構成された電磁開閉弁(第3電磁開閉弁)STRが備えられている。
【0060】
そして、管路MRのうち電磁開閉弁SRECと各増圧制御弁PC3、PC4との間は、管路(第4管路)ACを介して、管路MFにおける電磁開閉弁SMCFと各増圧制御弁PC1、PC2と接続されている。この管路ACには、2ポートの二位置弁で構成された電磁開閉弁(第4電磁開閉弁)SREAが備えられており、この電磁開閉弁SREAによって管路ACの連通遮断が制御できるようになっている。
【0061】
なお、各増圧制御弁PC1〜PC4には、逆止弁CV1〜CV4が並列接続されており、各逆止弁CV1〜CV4により、各増圧制御弁PC1〜PC4の下流側(ホイールシリンダWfr〜Wfl側)から上流側へのブレーキ液の流動のみが許容されるようになっている。また、電磁開閉弁SRECにも逆止弁CV5が並列接続されている。この逆止弁CV5により、電磁開閉弁SRECの上流側(レギュレータRG側)から下流側へのブレーキ液の流動のみが許容されるようになっている。
【0062】
さらに、車両用ブレーキ制御装置には、油圧回路内の各部位におけるブレーキ液圧を検出するための圧力センサ11〜13が備えられている。圧力センサ11は、アキュムレータAccで蓄積されているブレーキ液圧を検出するためのものである。圧力センサ12は、マスタシリンダMCに発生しているブレーキ液圧を検出するためのもので、管路MRにおける電磁開閉弁SRECよりも上流側に備えられている。圧力センサ13は、電磁開閉弁SRECの下流に発生しているブレーキ液圧を検出するためのものである。
【0063】
このように構成される車両ブレーキ制御装置には、図2に示すように制御手段に相当するブレーキECU10が備えられている。このブレーキECU10に各圧力センサ11〜13の検出信号、車両の任意の場所に搭載されたヨーレートセンサ14、G(加速度)センサ15および操舵角センサ16の検出信号、各車輪に対して備えられた車輪速度センサ17a〜17b、エンジンECU18からの制御信号が入力されるようになっている。そして、ブレーキECU10から、各種検出信号および制御信号に基づいて各種弁SMCF、SREC、STR、SREA、PC1〜PC8や電動モータMに対して駆動信号が出力されるようになっている。これにより、レギュレータ液圧が所定範囲内に維持されるように制御したり、ホイールシリンダWfr〜Wrlに加えられるブレーキ液圧が制御される。
【0064】
そして、このような車両用ブレーキ液圧制御装置の油圧回路を構成する各種配管は、金属などで構成されたブロックへの穴空けによって形成され、各種弁や各センサがブロックにおける一面側に集中配置されることで、油圧回路が構成されている。図3は、ブロックBLにおける各種弁や各センサが配置された面の正面図である。なお、ブロックBLは、図3における紙面上方が車両上方を向くように搭載される。
【0065】
図3に示されるように、ブロックBLの下方位置において、4つの減圧制御弁PC5〜PV8を一列に並べ、その上方に4つの増圧制御弁PC1〜PC4を一列に並べると共に、さらにその上方に3つの電磁開閉弁SMCF、SREA、STRを一列に並べた構成となっている。
【0066】
具体的には、4つの減圧制御弁PC5〜PC8は、各中心が水平な概略直線上に並ぶように配置され、4つの増圧制御弁PC1〜PC4も、各中心が水平な一直線上に並ぶように配置されている。ただし、3つの電磁開閉弁SMCF、SREA、STRは、各中心が一直線上には並ばず、若干互いにずれた状態となっている。
【0067】
また、残る1つの電磁開閉弁SRECは、4つの増圧制御弁PC1〜PC4の右横において、該電磁開閉弁SRECの中心が増圧制御弁PC1〜PC4の各中心を結ぶ直線よりも若干下方に位置するように配置されている。
【0068】
圧力センサ11は、4つの増圧制御弁PC1〜PC4および4つの減圧制御弁PC5〜PC8の左横において、該圧力センサ11の中心が増圧制御弁PC1〜PC4の中心を結ぶ直線と減圧制御弁PC5〜PC8の中心を結ぶ概略直線との間に位置するように配置されている。圧力センサ12は、電磁開閉弁STRの右横において、該圧力センサ11の中心が電磁開閉弁STRの中心よりも4つの増圧制御弁PC1〜PC4の方、つまり下方寄りに位置するように配置されている。圧力センサ13は、4つの減圧制御弁PC5〜PC8の右横において、該圧力センサ13の中心が減圧制御弁PC5〜PC8の各中心を結ぶ線よりも若干下方となるように配置されている。
【0069】
また、ブロックBL内に形成された各種管路の模式図を3次元的に表すと、図4のようになっている。この図に示されるように、ブロックBLは六面体で構成されている。このブロックBLのうち、各種弁が配置される面を裏面、その反対側の面を表面、紙面上側に位置する面を上面、紙面左右に位置する面を左側面および右側面、紙面下側に位置する面を底面として、以下に各管路の構成について説明する。
【0070】
この図に示されるように、ブロックBLの表面には、マスタシリンダMCに接続されるポート20が形成されている。このポート20は、ブロックBLの裏面に形成された電磁開閉弁SMCFの配置される凹部HSMCFに接続されている。そして、凹部HSMCFには、ブロックBLの右側面から穴空けされた管路21を介して、電磁開閉弁SREAが配置される凹部HSREAに接続された構成となっている。このように、管路21によって管路MFおよび管路ACの一部が構成されている。なお、管路21を穴空けしたときの入口となる位置は、封止栓21aで塞がれおり、液密が保たれるようになっている。
【0071】
また、管路21は、凹部HSMCFよりも右側面側において、ブロックBLの表面から穴空けされた管路22に接続されたのち、上面から穴空けされた管路23に接続され、さらに、右側面に形成された管路24に接続される。そして、この管路24を通じて増圧制御弁PC1、PC2が配置される凹部HPC1、HPC2に接続された構成となっている。
【0072】
さらに、各凹部HPC1、HPC2は、それぞれ、ブロックBLの底面側から穴空けされた管路25、26に接続され、これらの管路25、26を通じて、両前輪FR、FLに対応するホイールシリンダWfr、Wflに繋がるポート27、28に接続されていると共に、減圧制御弁PC5、PC6が配置される凹部HPC5、HPC6に接続されている。
【0073】
このように、管路24〜26によって管路MF1、MF2が構成されている。なお、管路24〜26を穴空けしたときの入口となる位置は、封止栓24a〜26aで塞がれおり、液密が保たれるようになっている。
【0074】
また、ブロックBLの表面には、マスタシリンダMCに接続されるもう一つのポート29が形成されている。このポート29は、ブロックBLの裏面に形成された圧力センサ12が配置される凹部H12を通じて、上面から穴空けされた管路31に接続されたのち、電磁開閉弁SRECが配置される凹部HSRECから穴空けされた管路32に接続される。これにより、凹部HSRECに接続された構成となっている。また、凹部HSRECには、ブロックBLの底面から穴空けされた管路33に接続されており、この管路33を通じて、圧力センサ13が配置される凹部H13に接続されている。
【0075】
さらに、凹部H13は、ブロックBLの底面から穴空けされた管路34に接続されたのち、左側面から穴空けされた管路35に接続され、これら管路34、35を通じて、増圧制御弁PC3、PC4が配置される凹部HPC3、HPC4に接続されている。そして、各凹部HPC3、HPC4は、それぞれ、ブロックBLの底面側から穴空けされた管路36、37に接続され、これらの管路36、37を通じて、両後輪RR、RLに対応するホイールシリンダWrr、Wrlに繋がるポート38、39に接続されていると共に、減圧制御弁PC7、PC8が配置される凹部HPC7、HPC8に接続されている。
【0076】
このように、管路31〜37によって管路MR、MR1、MR2が構成されている。なお、管路31、33〜37を穴空けしたときの入口となる位置は、封止栓31a、33a〜37aで塞がれおり、液密が保たれるようになっている。
【0077】
また、凹部HSREAと凹部HPC7とは、ブロックBLの上面から形成された管路40を通じて接続されている。この管路40は、ブロックBLの表面から形成された管路41と、左側面から形成された管路42とを通じて、電磁開閉弁STRが配置される凹部HSTRに接続された構成となっている。この凹部HSTRは、ブロックBLの上面から穴空けされた管路43と、表面から穴空けされた管路44、および、右側面から穴空けされた管路45を通じてレギュレータRGに繋がるポート46に接続されている。さらに、管路45に、ブロックBLの底面から穴空けされた管路47が接続されることで、圧力センサ11が配置される凹部H11およびアキュムレータAccに繋がるポート48が接続された構成となっている。
【0078】
このように、管路40〜45、47によって管路AC、AMが構成されている。なお、管路40〜45、47を穴空けしたときの入口となる位置は、封止栓40a〜45a、47aで塞がれおり、液密が保たれるようになっている。
【0079】
そして、各凹部HPC5〜HPC8を繋がるように管路49が接続されることで、凹部HPC8に繋がるポート50に接続された構成となっている。
【0080】
このように、管路49によって管路RC、RC1〜RC4が構成されている。なお、管路49を穴空けしたときの入口となる位置は、封止栓49aで塞がれおり、液密が保たれるようになっている。
【0081】
以上説明したように、ブロックBL内において、本実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置の油圧回路が形成されている。
【0082】
次に、このように構成される車両用ブレーキ液圧制御装置により得られる効果について説明する。
【0083】
(1)本実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置によれば、各増圧制御弁PC1〜PC4から各ホイールシリンダWfl〜Wrrに至るまでに必要な穴空けは、管路25、26、36、37およびポート27、28、38、39のみである。つまり、各増圧制御弁P1〜PC4に対して、それぞれ2箇所の穴空けと、1箇所の封止栓25a、26a、36a、37aが必要になるだけである。
【0084】
これに対し、従来の車両用ブレーキ液圧制御装置では、図7に示されるように、各増圧制御弁PC1〜PC4から各ホイールシリンダWfl〜Wrrに至るまでに必要な穴空けは、管路105〜110、126、127、129、130およびポート111、112、128、131である。つまり、各増圧制御弁PC1〜PC4に対して、それぞれ4本の穴空けと3個の封止栓105a〜110a、126a、127a、129a、130aが必要になる。
【0085】
したがって、管路の穴空けの数を低減することが可能となり、車両用ブレーキ液圧制御装置の構成を簡略化することが可能となる。
【0086】
(2)本実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置では、ブロックBLの上方位置に4つの電磁開閉弁SMCF、SREA、STR、SRECのうちの少なくとも3つを配置した構成としている。
【0087】
各ホイールシリンダWfr〜Wrlに接続されるポート27、28、38、39は、マスタシリンダMCのエア抜き性を考慮すると、ブロックBLの下方位置に配置される。したがって、油圧回路における下流側、すなわちホイールシリンダWfr〜Wrlに接続されるポート27、28、38、39の近くに位置する増圧制御弁PC1〜PC4および減圧制御弁PC5〜PC8をできるだけブロックBLの下方位置に配置するのが好ましい。
【0088】
したがって、4個の電磁開閉弁SMCF、SREA、STR、SRECのうち少なくとも3つが増圧制御弁PC1〜PC4が配置された列および減圧制御弁PC5〜PC8が配置された列よりも上方に配置される構成とすることで、車両用ブレーキ液圧制御装置の管路構成を簡素化することができる。これにより、油圧回路を構成するための管路の穴空けの数を低減できる車両用ブレーキ液圧制御装置とすることができる。
【0089】
そして、さらに、ブロックBLの上方位置に配置された3つの電磁開閉弁SMCF、SREA、STRのそれぞれの中心が一直線上に配置されないようにずらしてある。
【0090】
例えば、これら電磁開閉弁SMCF、SREA、STRが配置される凹部HSMCF、HSREA、HSTRは、それぞれ大径部と小径部からなる2段の段付き形状とされる。そして、電磁開閉弁SMCFと電磁開閉弁SREAとは、凹部HSMCRおよび凹部HSREAにおける浅い側の段(1段目)同士が接続されることになる。これに対し、電磁開閉弁SREAと電磁開閉弁STRに関しては、凹部HSREAにおける深い側の段(2段目)と凹部HSTRにおける浅い側の段(1段目)とが接続されることになる。
【0091】
このため、電磁開閉弁SMCFと電磁開閉弁SREAとはほぼ同じ高さとなっても構わないが、電磁開閉弁SREAと電磁開閉弁STRに関しては、同じ高さにしようとすると穴空け数が増えることになる。すなわち、電磁開閉弁SREAと電磁開閉弁STRとを同じ高さにした場合、管路42に電磁開閉弁STRの配置される凹部HSTRが接続されないことになるため、これら管路42と凹部HSTRとを接続するために、ブロックBLの上面から穴空けをしなければならなくなるのである。したがって、これら電磁開閉弁SMCF、SREA、STRの中心が一直線上に配置されていない構成とすることで、ブロックBLへの穴空け、および、それの封止栓を無くすことが可能となり、車両用ブレーキ液圧制御装置の構成の簡略化を図ることが可能となる。
【0092】
(3)本実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置において、4つの増圧制御弁PC1〜PC4の中心を結んだ直線を直線L1、4つの減圧制御弁PC5〜PC8を結んだ直線を概略直線L2、電磁開閉弁STR、SRECの中心同士を結んだ直線を直線L3、電磁開閉弁SRECと減圧制御弁PC8の中心同士を結んだ直線を直線L4と定義する。ただし、減圧制御弁PC7、PC8は、図3に示されるように、減圧制御弁PC5、PC6に対して垂直方向(鉛直方向)に若干ずらされていることから、減圧制御弁PC5〜PC8のすべての中心を通過する直線ではなく、概略中心を通過するものとして、概略直線L2を定義している。
【0093】
このように定義すると、直線L1と直線L2の間に電磁開閉弁SRECが配置されている。
【0094】
このように、電磁開閉弁SRECを直線L1および概略直線L2の間に配置することにより、ブロックの水平方向のサイズの小型化を図ることが可能となる。また、電磁開閉弁SRECが大型なものになった場合、電磁開閉弁SRECを最上段に配置すると電磁開閉弁SMCF、SREA、STRの配置スペースを考慮しなければならないため、配置の自由度が制限される。しかしながら、上記のような配置とすれば、そのような制限を受けなくても済む。
【0095】
また、圧力センサ12は、直線L1よりも上方であり、かつ、直線L3に対して各種弁よりも外側に配置されている。
【0096】
マスタシリンダMCの流体圧力を検出するための圧力センサ12は、油圧回路において、電磁開閉弁SRECよりも上流側に位置するため、電磁開閉弁SRECを圧力センサ11よりも下方に配置するのが望ましい。したがって、電磁開閉弁SREC以外の電磁開閉弁SMCF、SREA、STRを増圧制御弁PC1〜PC4の中心を結ぶ直線L1および減圧制御弁PC5〜PC8の中心を結んだ概略直線L2よりも上方に配置すれば、より油圧回路を構成するための管路を簡素なものとすることができる。また、圧力センサ12がこのような配置とされることで、ブロックBLの水平方向のサイズの小型化を測ることも可能となる。
【0097】
そして、このような圧力センサ12が配置される凹部H12が、ブロックBLの表面から穴開けられたポート29と直接繋がった構成としている。
【0098】
このように、マスタシリンダMCに繋がるポート29と圧力センサ12が配置される凹部H12とを同じ側に配置し、これらを直接繋げば、これらを繋ぐための管路が不要となる。したがって、図7に示す従来のようにマスタシリンダMCに繋がるポート155と圧力センサPSが配置される凹部HPSとが離れた場所に配置される場合と比べて、より油圧回路を構成する管路の簡素化を図ることが可能となる。これにより、より油圧回路を構成するための管路の穴空けの数を低減できる車両用ブレーキ液圧制御装置とすることができる。
【0099】
さらに、圧力センサ13は、概略直線L2よりも下方であり、かつ、直線L4に対して各種弁よりも外側に配置されている。
【0100】
圧力センサ13を設ける場合、圧力センサ13が電磁開閉弁SRECよりも油圧回路における下流に配置されることから、電磁開閉弁SRECの下方に配置されるようにするのが望ましい。
【0101】
そして、以上のような構成にすると、マスタシリンダMCから各増圧制御弁PC3、PC4に至るまでの経路が、ポート29、管路31〜35となり、6本の穴空けと、4つの封止栓31a、33a〜35aのみで済む。
【0102】
これに対し、従来の車両用ブレーキ液圧制御装置では、ポート155、管路154、153、152、151、150、149、148、124、123、125、という11本の穴空けと、9個の封止栓154a、153a、151a、150a、149a、148a、124a、123a、125aが必要になる。
【0103】
したがって、本実施形態に示す車両用ブレーキ液圧制御装置は、従来のものと比べて、より簡素な構成とすることが可能となる。なお、本実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置の場合、図7に示す従来の車両用ブレーキ液圧制御装置と比べて、より高機能なものとすることが可能であるが、たとえば、圧力センサ13と管路33、34、および封止栓37a、38aを無くし、管路35を凹部HSRECと凹部HPC4、HPC5につなげば、従来の車両用ブレーキ液圧制御装置と同様の性能とすることも可能である。
【0104】
(5)本実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置において、増圧制御弁PC1の中心と減圧制御弁PC5の中心を結んだ直線を直線L5と定義する。すると、圧力センサ11は、上述した直線L1、L2の間であり、かつ、直線L5に対して各種弁の外側に配置されている。
【0105】
この圧力センサ11は、アキュムレータAccと電磁開閉弁STRとの間に配置されていれば良い。しかしながら、3つの電磁開閉弁SMCF、SREA、STRもしくは4つの増圧制御弁PC1〜PC4又は4つの減圧制御弁PC5〜PC8と同じ直線上に圧力センサ11を配置すると、ブロックBLの横方向のサイズを大きくしてしまう。また、電磁開閉弁SMCF、SREA、STRと4つの増圧制御弁PC1〜PC4の間に圧力センサ11を配置したのでは、電磁開閉弁SMCF、SREA、STRと4つの増圧制御弁PC1〜PC4の間を広げなければならず、ブロックBLの縦方向のサイズを大きくしてしまう。
【0106】
したがって、本実施形態のように圧力センサ11を配置することで、ブロックBLの体格を小さくすることが可能となり、より車両用ブレーキ液圧制御装置の構成の簡略化を図ることが可能となる。
【0107】
(6)本実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置では、減圧制御弁PC5〜PC8の各中心位置が、水平方向において、増圧制御弁PC1〜PC4の各中心位置からずらされている。また、減圧制御弁PC7、PC8の各中心位置が、垂直方向において、減圧制御弁PC5、PC6の各中心位置からずらされている。
【0108】
このような配置とすることで、ブロックBLの上下方向のサイズを小型化することが可能となる。
【0109】
(他の実施形態)
上記実施形態で説明した油圧回路の構成に関しては、様々な管路のレイアウト構成の1つを示したものであり、上記実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の第1実施形態における車両用ブレーキ液圧制御装置の油圧回路の構成を示す図である。
【図2】図1に示す車両用ブレーキ液圧制御装置のブレーキECUの入出力の関係を示したブロック図である。
【図3】図1に示す車両用ブレーキ液圧制御装置における油圧回路が形成されたブロックの正面図である。
【図4】図3に示すブロック内の油圧回路を3次元的に見たときの透過図である。
【図5】従来の車両用ブレーキ液圧制御装置の油圧回路の構成を示す図である。
【図6】図5に示す車両用ブレーキ液圧制御装置における油圧回路が形成されたブロックの正面図である。
【図7】図6に示すブロック内の油圧回路を3次元的に見たときの透過図である。
【符号の説明】
【0111】
AS…補助液圧源、HP…液圧ポンプ、M…電動モータ、Acc…アキュムレータ、RG…レギュレータ、MC…マスタシリンダ、RS…低圧リザーバ、BP…ブレーキペダル、STR、SREC、SMCF、SREA…電磁開閉弁、PC1〜PC4…増圧制御弁、PC5〜PC8…減圧制御弁、Wfl〜Wrr…ホイールシリンダ、MF、MR、AM、AC…管路、HSTR、HSREC、HSMCF、HSREA、HPC1〜HPC8…凹部、H11〜H13…凹部、10…ブレーキECU、11〜13…圧力センサ、20、27〜29、38、39、46、48、50…ポート、24〜26、31〜37、40〜45、47、49…管路、24a〜26a、31a、33a〜37a、40a〜45a〜47a、49a…封止栓。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、流体を貯蔵するリザーバ(RS)と、
前記リザーバに貯蔵された前記流体を所定の圧力に昇圧して吐出する液圧ポンプ(HP)と、
前記液圧ポンプの吐出液圧を蓄積するアキュムレータ(Acc)と、
前記アキュムレータの蓄積する流体圧力を検出する液圧監視手段(11)と、
前記液圧監視手段の検出結果に応じて、前記液圧ポンプを駆動し、前記アキュムレータの液圧が所定範囲内となるように制御する制御手段(10)と、
ブレーキ操作部材(BP)の操作量に応じた流体圧を発生させるマスタシリンダ(MC)と、を備えてなる車両用ブレーキ液圧制御装置において、
第1〜第4ホイールシリンダ(Wfr、Wfl、Wrr、Wrl)と前記マスタシリンダシリンダとの連通遮断を制御する増圧制御弁(PC1〜PC4)と、
前記第1〜第4増圧制御弁の下流において、前記第1〜第4ホイールシリンダに加えられる流体圧力を発生させる前記流体を前記リザーバに逃がす第1〜第4減圧制御弁(PC5〜PC8)と、
前記第1〜第4増圧制御弁および4つの電磁開閉弁(SREC、SMCF、SREA、STR)と、
前記液圧監視手段に相当し、前記アキュムレータに蓄積された流体圧力を検出するための第1圧力センサ(11)と、
前記マスタシリンダに発生させられた流体圧力を検出するための第2圧力センサ(12)と、
前記第1〜第4増圧制御弁、前記第1〜第4減圧制御弁、前記4つの電磁開閉弁および第1、第2圧力センサが配置されるブロック(BL)とを備え、
前記第1〜第4増圧制御弁、前記第1〜第4減圧制御弁、前記4つの電磁開閉弁および第1、第2圧力センサは、前記ブロックにおける一面に配置されていると共に、前記第1〜第4増圧制御弁および前記第1〜第4減圧制御弁は、それぞれの中心が概略1列に並べられて配置されており、前記4個の電磁開閉弁のうち少なくとも3つが前記第1〜第4増圧制御弁が配置された列および前記第1〜第4減圧制御弁が配置された列よりも上方に配置されていることを特徴とする車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項2】
前記4つの電磁開閉弁は、
前記マスタシリンダと前輪(FR、FL)に対応する前記第1、第2ホイールシリンダ(Wfr、Wfl)とを繋ぐ管路(MF)のうち、前記マスタシリンダと前記第1、第2増圧制御弁との間に備えられた第1電磁開閉弁(SMCF)と、
前記マスタシリンダと、後輪(RR、RL)に対応する前記第3、第4ホイールシリンダ(Wrr、Wrl)とを繋ぐ管路(MR)のうち、前記マスタシリンダと前記第3、第4増圧制御弁との間に備えられた第2電磁開閉弁(SREC)と、
前記アキュムレータと前記後輪に対応する前記第3、第4増圧制御弁とを繋ぐ管路(AM)に設けられた第3電磁開閉弁(STR)と、
前記第3電磁開閉弁(STR)と前記後輪に対応する前記第3、第4増圧制御弁とを繋ぐ管路(AM)と、前記第1電磁開閉弁(SMCF)と前記前輪に対応する前記第1、第2増圧制御弁とを繋ぐ管路(MF)との間を接続する管路(AC)に備えられた第4電磁開閉弁(SREA)とによって構成されており、
これら第1〜第3電磁開閉弁のうち、前記第1、第3、第4電磁開閉弁(SMCF、STR、SREA)が、前記第1〜第4増圧制御弁の中心を結ぶ直線(L1)および前記第1〜第4減圧制御弁の中心を結んだ概略直線(L2)よりも上方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項3】
前記ブロックに形成された前記第1〜第4ホイールシリンダに繋がるポート(27、28、38、39)は、前記第1〜第4増圧制御弁の中心を結ぶ直線(L1)と前記第1〜第4減圧制御弁の中心を結ぶ概略直線(L2)の間に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項4】
前記前記4つの電磁開閉弁のうち、前記第1〜第4増圧制御弁を結ぶ直線(L1)および前記第1〜第4減圧制御弁を結ぶ概略直線(L2)よりも上方に配置されている3つの電磁開閉弁は、それぞれの中心が一直線上からずれた配置とされていることを特徴とする請求項2または3に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項5】
前記第3電磁開閉弁(STR)は、前記第4電磁開閉弁(SREA)よりも上方に配置されており、
前記第3電磁開閉弁(STR)と前記第4電磁開閉弁(SREA)とが、前記ブロックの上面と表面および側面に形成された管路(40、41、42)を通じて接続されていることを特徴とする請求項4に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項6】
前記4つの電磁開閉弁のうち、前記第1〜第4増圧制御弁の中心を結ぶ直線(L1)および前記第1〜第4減圧制御弁の中心を結ぶ概略直線(L2)よりも上方に配置されている3つの電磁開閉弁とは異なる第2電磁開閉弁(SREC)は、前記第1〜第4増圧制御弁の中心を結ぶ直線(L1)および前記第1〜第4減圧制御弁の中心を結ぶ概略直線(L2)の間に配置されていることを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1つに記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項7】
前記ブロックに形成された前記マスタシリンダに繋がるポート(29)は、前記ブロックにおける前記第1〜第4増圧制御弁、前記第1〜第4減圧制御弁、前記4つの電磁開閉弁および第1、第2圧力センサが配置される一面とは反対側の表面に形成され、前記ブロックにおける前記一面側に形成された前記第2圧力センサが配置される凹部(H12)に直接繋がっていることを特徴とする請求項6に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項8】
前記第3電磁開閉弁よりも下流側において、前記マスタシリンダに発生させられた流体圧力を検出するための第3圧力センサ(13)を備え、
前記第2圧力センサおよび前記第3圧力センサは、共に、前記第1〜第4増圧制御弁および前記第1〜第4減圧制御弁に対して、前記第2電磁開閉弁が配置された方と同じ側に配置されており、前記第3圧力センサは、前記第2電磁開閉弁よりも下方に配置されていることを特徴とする請求項7に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項9】
前記第1圧力センサは、前記第1〜第4増圧制御弁および前記第1〜第4減圧制御弁に対して、前記第2電磁開閉弁が配置された方と異なる側に配置おいて、前記第1〜第4増圧制御弁の中心を結ぶ直線(L1)および前記第1〜第4減圧制御弁の中心を結ぶ概略直線(L2)の間に配置されていることを特徴とする請求項6ないし8のいずれか1つに記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項10】
前記第1〜第4減圧制御弁の各中心は、水平方向において、前記第1〜第4増圧制御弁の各中心からずれており、前記第3、第4減圧制御弁(PC7、PC8)の各中心は、垂直方向において、前記第1、第2減圧制御弁(PC5、PC6)の各中心からずれていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1つに記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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